説明

作業車両のフェンダカバー取付構造

【課題】フェンダカバーをフェンダに取り付ける際の組立性が良好となる作業車両のフェンダカバー取付構造を提供する。
【解決手段】フェンダ20または当該フェンダ20に取り付けられたシール部材21に、フェンダカバー25との対向面から突出する突出部材23を少なくとも一つ設けて、前記突出部材23を挿通させることが可能な貫通孔25aを前記フェンダカバー25に形成し、前記突出部材23を前記貫通孔25aに挿通させて、前記フェンダカバー25を前記フェンダ20または前記シール部材21に取り付けるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のフェンダに取り付けられるフェンダカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座席側方に配置された後輪用フェンダに座席側からフェンダカバーが取り付けられたトラクタは公知である(例えば、特許文献1参照)。このようなトラクタなどの作業車両において、フェンダにフェンダカバーを取り付ける際には、フェンダの表面に複数の両面テープを貼着したあと、フェンダカバーをフェンダの所定の位置に押し当てることによってフェンダに取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようなフェンダカバーの取付構造を作業車両に適用する場合、フェンダカバーを押し当てたとき、フェンダカバーがフェンダの所定の位置に対してずれることがあった。そして、このずれを修正する際には両面テープがフェンダの表面から剥がれることがあった。そのため、フェンダカバーの位置決めを慎重に行い、それを誤った場合には手間がかかる修正を行わねばならず、組立性が悪いという問題があった。また、フェンダの表面の複数箇所に両面テープを貼る作業も手間がかかり、同様に組立性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、フェンダカバーをフェンダに取り付ける際の組立性が良好となる作業車両のフェンダカバー取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、フェンダまたは当該フェンダに取り付けられたシール部材に、フェンダカバーとの対向面から突出する突出部材を少なくとも一つ設けて、前記突出部材を挿通させることが可能な貫通孔を前記フェンダカバーに形成し、前記突出部材を前記貫通孔に挿通させて、前記フェンダカバーを前記フェンダまたは前記シール部材に取り付ける作業車両のフェンダカバー取付構造である。
【0008】
請求項2においては、前記シール部材は、コ字形状のシールプレートと、このシールプレートの開口部を被覆するシールプレートカバーとを備え、前記シールプレートの開口部側に前記突出部材を設け、この突出部材に、フェンダカバーを取り付けた状態で、前記シールプレートカバーを締結部材により固定することにより、前記フェンダカバーを押圧するものである。
【0009】
請求項3においては、前記フェンダカバーの一部は、レバーガイド、および、ステップや機体カバーの上面を覆うマット部材の少なくとも一方の部材によりに押圧するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、貫通孔に突出部を挿通させることによって、フェンダまたはシール部材に対するフェンダカバーの位置を容易に決定して、フェンダカバーを、フェンダまたはシール部材に簡単に取り付けることが可能となる。したがって、フェンダカバーをフェンダまたはシール部材に取り付ける際の組立性を良好にすることができる。
【0012】
請求項2においては、フェンダカバーをシールプレートカバーにより押圧しながら、シール部材に取り付けることが可能となる。したがって、部品点数の増加を抑制しながら、フェンダカバーをシール部材に確実に取り付けることができ、その際の組立性も良好に維持することができる。
【0013】
請求項3においては、フェンダカバーを周辺に配置される部材により押圧しながら、フェンダまたはシール部材に取り付けることが可能となる。したがって、部品点数の増加を抑制しながら、フェンダカバーをフェンダまたはシール部材に確実に取り付けることができ、その際の組立性も良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る作業車両の全体側面図。
【図2】本発明の第一実施形態に係る作業車両のキャビン内斜視図。
【図3】フェンダカバーの取付構造を示す断面図。
【図4】(a)フェンダカバーの正面図。(b)フェンダカバーの側面図。
【図5】本発明の第二実施形態に係る作業車両のキャビン内斜視図。
【図6】フェンダカバー取り付け前のフェンダの斜視図。
【図7】フェンダカバー取り付け後のフェンダの斜視図。
【図8】フェンダカバーの取付構造を示す断面図。
【図9】(a)フェンダカバー側部の押圧を示す図。(b)フェンダカバー後上部の押圧を示す図。(c)フェンダカバー前部の押圧を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る作業車両のフェンダカバー取付構造を適用したトラクタ1の全体構成について説明する。作業車両は、本実施形態においてはトラクタとするが、本発明が適用可能な作業車両であれば特に限定するものではない。
【0016】
図1に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その前部でフロントアクスルを介して左右一対の前輪5・5に支持されるとともに、その後部でリアアクスルを介して左右一対の後輪6・6に支持される。機体フレーム2の前部にはエンジン3が設けられ、ボンネット8によって覆われている。機体フレーム2の後部には変速装置4が設けられている。
【0017】
そして、エンジン3の動力が変速装置4で変速されたあと、フロントアクスルを経て左右一対の前輪5・5に伝達可能とされるとともに、リアアクスルを経て左右一対の後輪6・6に伝達可能とされる。エンジン3の動力が伝達されることによって、左右一対の前輪5・5および左右一対の後輪6・6が回転駆動され、トラクタ1の走行が行われる。
【0018】
さらに、エンジン3の動力が変速装置4で変速されたあと、機体フレーム2に対して装着された図示しない耕耘装置等の作業機にも伝達可能とされる。エンジン3の動力が伝達されることによって、作業機が駆動される。
【0019】
機体フレーム2の前後中途部および後部には操向ハンドル71や変速操作具や座席72などを有する運転操作部が設けられ、キャビン7によって覆われている。操向ハンドル71はその回動操作量に応じて左右一対の前輪6・6の操舵角を変更し、トラクタ1を操舵することができるように構成される。変速操作具はその操作量に応じて変速装置4の変速比を変更し、走行速度を調整することができるように構成される。
【0020】
キャビン7は、操向ハンドル71や座席72の上方に配設されるルーフユニット9や、操向ハンドル71や座席72の周囲に立設されるサイドフレームユニット10等で構成される。サイドフレームユニット10は、後輪6・6用の左右のフェンダ20・20と、左右のフロントピラー11・11と、左右のサイドピラー12・12と、左右のリヤピラー13・13と、左右のドア14・14と、左右のサイドガラス15・15と、フロントガラスと、リヤガラス16とで主に構成される。
【0021】
各フェンダ20は、側面視略扇形状に形成され、後輪6を前上方から覆うように機体フレーム2の後部側に設けられる。この各フェンダ20により、後輪6の回転時に跳ね上げられる土や泥等の座席72側(キャビン7)への侵入が防止される。
【0022】
フロントピラー11は機体フレーム2の前後中途部から上下方向に立設される。サイドピラー12はフェンダ20の前後中途部から上下に立設され、リヤピラー13はフェンダ20の後部から上下方向に立設される。
【0023】
ドア14はフロントピラー11とサイドピラー12の間に配置され、サイドガラス15はサイドピラー12とリヤピラー13の間に配置される。フロントガラスは左右のフロントピラー11・11の間に配置され、リヤガラス16は左右のリヤピラー13・13に配置される。
【0024】
キャビン7内では、座席72が左右のドア14・14の内側後方で左右のフェンダ20・20の内側側方に配置される。そして、この座席72の左右両側方に位置するフェンダ20・20に、フェンダカバー25・25が座席72側から取り付けられる。
【0025】
次に、本発明の第一実施形態に係るフェンダカバー25・25の取付構造について説明する。
なお、フェンダカバー25・25の取付構造は左右の後輪6用フェンダ20・20に対して同様に適用されるため、以下ではフェンダカバー25の取付構造を左フェンダ20(トラクタ1の背面視において、左側のフェンダ)に対して適用した場合の説明のみを行う。
【0026】
図2に示すように、フェンダ20の上部から前部にかけての表面に、複数の、本実施形態では五つの突出部材23・23・・・が長手方向に一列に所定間隔ごとに突設される。
各突出部材23は略L字形状の部材で構成され、突出部材23の一側は固定部23cとして溶接等でフェンダ20の表面に固定され、その他側は突出部23aとして固定部23cの右側端部から略前上方(後輪6の径方向)に突出される。
なお、突出部材23の数は限定するものではない。
【0027】
図2及び図4に示すように、フェンダカバー25は樹脂素材で構成される。フェンダカバー25は、フェンダ20の座席72側の表面形状にあわせて形成され、キャビン7内でフェンダ20に座席72側から取り付けられる。
【0028】
フェンダカバー25の左端部25fには、突出部材23と同数のスリット状貫通孔25a・25a・・・が上下方向に貫通するように形成され、その上側から前側にかけて一列に所定間隔ごとに配置される。隣り合う貫通孔25a・25a・・・同士の間隔は、隣り合う突出部材23・23・・・同士の間隔と同一に設定される。
【0029】
一つの貫通孔25aは、一つの突出部23aを挿通させることができるように、フェンダ20の表面の湾曲方向に沿って所定幅だけ延伸される。なお、貫通孔25aの形状は、スリット状に限定するものではなく、突出部23aを挿通させることができる形状であればよい。
【0030】
そして、フェンダカバー25において、一つの貫通孔25aの延伸方向における両端部近傍に、貫通孔25b・25bがそれぞれ上下方向に貫通し、かつ当該貫通孔25aと連続するように形成される。これにより、フェンダカバー25の素材によっては生じるおそれがあるスリット状貫通孔25aの裂けが防止される。さらに、スリット状貫通孔25aの視認性が高められ、フェンダカバー25取付時における作業性の向上が図られる。
【0031】
このような構成において、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付ける際には、突出部材23の突出部23aがフェンダ20から突出した状態で、フェンダカバー25をフェンダ20の上方まで移動させて、左端部25fをシールプレート22内に挿入し、当該フェンダカバー25のスリット状貫通孔25aに突出部23aに挿通させる(図3参照)。こうして、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付けるのである。
【0032】
次に、本発明の第二実施形態に係るフェンダカバー25の取付構造について説明する。ただし、第一実施形態の構成の部材と同一部材については同一の符号を付し、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0033】
図5及び図6に示すように、フェンダ20の上部から前部にかけての表面に、ドア用シール部材21が当該フェンダ20の表面形状に沿って延伸しながら溶接等で一体的に固設される。ドア用シール部材21は、ドア14とフェンダ20との間をシールするためのものであり、シールプレート22とシールプレートカバー24とで構成される。
【0034】
図6、図8に示すように、シールプレート22は、下板22aと側板22bと上板22cとを有し、帯板材を座席72側、即ち右側を向いて開口する断面視コ字形状に屈曲して構成される。シールプレート22は、ドア用シール部材21の側面視において、フェンダ20の表面に沿って湾曲する円弧状に形成される。シールプレート22は、リヤピラー13から後述する第二マット部材34までフェンダ20の表面の湾曲方向に沿って延伸される。
【0035】
シールプレート22の下板22aはフェンダ20の表面に固定される。下板22aの左右幅は、フェンダ20の左右幅よりも短く設定される。この下板22aの右端部の表面、即ちシールプレート22の開口部側におけるフェンダカバー25との対向面には、複数の、本実施形態では五つの突出部材23・23・・・が下板22aの長手方向に一列に所定間隔ごとに突設される。各突出部材23の突出幅は、下板22aと上板22cとの間の幅よりも短く設定される。
【0036】
各突出部材23は略L字形状の部材で構成され、その右端部が下板22aの右端部と揃うように配置される。突出部材23の一側は固定部23cとして溶接等でシールプレート22の下板22aの表面に固定され、その他側は突出部23aとして固定部23cの右側端部から略前上方(後輪6の径方向)に突出される。また、突出部23aの中央部には、貫通孔23bが左右方向に貫通するように形成される。
【0037】
シールプレート22の側板22bは、下板22aの左端部から略前上方(後輪6の径方向)に突出される。この側板22bには、ドア14の外周縁部に貼着されたゴム製のウェザーストリップ14aを介して、ドア14が当接可能とされる(図1参照)。
【0038】
シールプレート22の上板22cは、側板22bの上端部から右方向に突出され、下板22aと平行に対向配置される。上板22cの左右幅は、下板22aの左右幅と同一に設定される。
【0039】
シールプレートカバー24は、例えばエチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)からなり、帯板状であってシールプレート22の開口部を覆うことができる形状に形成される。シールプレートカバー24は、上板22cおよび下板22aの右側方で側板22bと略平行に対向配置され、シールプレート22に対して座席72側、即ち右側から着脱可能に取り付けられる。
【0040】
シールプレートカバー24の上部には、嵌合部24aが形成される。この嵌合部24aは、シールプレート22の上板22cの右端部を上下に挟むように、当該上板22cの右端部を嵌合することができるように構成される。
【0041】
シールプレートカバー24の下部には、押圧部24cが形成される。この押圧部24cは、当該シールプレートカバー24の上下中途部に対して右側に屈曲され、シールプレートカバー24がシールプレート22に取り付けられたとき、フェンダカバー25をフェンダ20側に押圧することができるように構成される。
【0042】
また、シールプレートカバー24には、複数の、本実施形態では五つの貫通孔24b・24b・・・が左右方向に貫通するように形成され、当該シールプレートカバー24の長手方向に所定間隔ごとに配置される。隣り合う貫通孔24b・24b・・・同士の間隔は、突出部材23・23・・・における隣り合う貫通孔23b・23b・・・同士の間隔と同一に設定される。
【0043】
ここで、シールプレートカバー24がシールプレート22に対して取り付けられたとき、シールプレートカバー24とシールプレート22との間には空間21aが形成される。つまり、ドア用シール部材21が中空状となる。よって、このドア用シール部材21内にエアコンのホースや、ハーネス等が収納可能となっている。
【0044】
このような構成において、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付ける際には、図6に示すように、突出部材23の突出部23aがフェンダ20に固設されたシールプレート22の下板22aから突出した状態で、図7に示すように、フェンダカバー25をフェンダ20の上方まで移動させて、左端部25fをシールプレート22内に挿入し、当該フェンダカバー25のスリット状貫通孔25aに突出部23aに挿通させる。こうして、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付ける。
【0045】
そして、図8に示すように、シールプレートカバー24の嵌合部24aを、シールプレート22の上板22cの右端部に嵌合させるとともに、シールプレートカバー24の貫通孔24bとシールプレート22に設けられた突出部材23に形成された貫通孔23bとの位置を合わせたあと、これらの貫通孔24b・23bにリベット等の締結部材26を座席72側から螺嵌して、シールプレートカバー24と突出部材23とを締結固定する。こうして、シールプレートカバー24をシールプレート22に取り付け、シールプレート22の開口部を被覆する。
【0046】
また、この際には、フェンダカバー25は、その左端部25f、即ち突出部23aを挿通させた貫通孔25a付近でシールプレートカバー24の押圧部24cにより、フェンダ20側に向けて(図8における矢印の方向に)押圧されることとなる。これにより、フェンダカバー25がフェンダ20に押さえつけられた状態となり、フェンダカバー25の浮き上がりが防止される。
【0047】
次に、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付ける際に、座席72周辺に配置された部材を利用する構成について説明する。
【0048】
図2及び図5に示すように、操向ハンドル71と座席72との間の下方には、足を乗せるステップ36が配置される。座席72の下方には、機体フレーム2に固設された機体カバー(ダストカバー)35が配置され、これにより座席72の下方からの土や泥等の侵入が防止されている。
【0049】
そして、機体カバー35の上面には、ゴム等の弾性素材からなる第一マット部材32が機体カバー35の上面を覆うように載置される。この第一マット部材32の上面には、板金素材からなる副変速レバーガイド30が載置される。副変速レバーガイド30は、ボルトナット等により第一マット部材32とともに機体カバー35に固設される。副変速レバーガイド30と第一マット部材32は、フェンダカバー25の座席72側、即ち右側の側部25cの右側方に配置される。
【0050】
図9(a)に示すように、副変速レバーガイド30の左端部は、正面視においてクランク状に形成され、その機体カバー35に対して立ち上がった左側が押圧部30aとされる。そして、この押圧部30aが、フェンダカバー25の側部25cと圧接される。
【0051】
第一マット部材32の左端部は、正面視において開口部を下方とするU字状に湾曲して副変速レバーガイド30の押圧部30aの下面に接するように形成され、その上下方向に延伸する左側が押圧部32aとされる。そして、この押圧部32aが、フェンダカバー25の側部25cと圧接される。
【0052】
こうして、副変速レバーガイド30の押圧部30aと、第一マット部材32の押圧部32aにより、フェンダカバー25の側部25cが座席72側からフェンダ20側に向けて(図9(a)における矢印の方向に)押圧される。これにより、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付けた際に、フェンダカバー25がフェンダ20に押さえつけられた状態となり、フェンダカバー25がフェンダ20の右側に浮いたり、フェンダカバー25が右側にずれたりすることが防止される。
【0053】
ここで、前記のように、第一マット部材32の左端部が湾曲され、押圧部32aが上下方向に形成されるため、フェンダカバー25の側部25cと当接する面積が、湾曲されない場合と比較して大きくなる。こうして、フェンダカバー25をフェンダ20に押圧する力の増加が図られている。
【0054】
また、弾性素材からなる第一マット部材32の左端部が湾曲されるため、その復元力により押圧される力が増加する。こうして、フェンダカバー25をフェンダ20に押圧する力の増加が図られている。
【0055】
なお、前記第一マット部材32の左端部がU字形状に湾曲されるため、この中央には空間32bが形成される。これにより、この空間32bにハーネス等を収納することが可能となっている。
【0056】
また、図2に示すように、機体カバー35の前面に設けられたPTOレバーガイド31は、フェンダカバー25の側部25cに対しては副変速レバーガイド30と同様に、その左端部に押圧部を有する構成とされる。これにより、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付けた際に、フェンダカバー25が右側に浮いたり、フェンダカバー25が右側にずれたりすることが防止される。
【0057】
但し、本実施形態では、副変速レバーガイド30とPTOレバーガイド31を座席72の左側に配置しているが、ポジションレバーガイドやその他のレバーガイドやスイッチカバーやダイヤルカバー等を座席72の左右一方側に配置し、これらを利用して、前記同様にフェンダカバー25の側部25cを座席72側から押圧する構成とすることも可能である。また、副変速レバーガイド30とPTOレバーガイド31を右側に配置する構成とすることもできる。
【0058】
図2及び図9(b)に示すように、キャビン7内側を向いて開口する凹状のリヤピラー13が、フェンダ20の後上部から上方に向けて立設される。このリヤピラー13の開口部には、リヤピラーカバー33がキャビン7内側から嵌装される。リヤピラーカバー33は、フェンダカバー25の後上部25d上に配置される。そして、リヤピラーカバー33の下端部に押圧部33aが形成され、この押圧部33aがフェンダカバー25の後上部25dと圧接される。
【0059】
こうして、リヤピラーカバー33の押圧部33aにより、フェンダカバー25の後上部25dがフェンダ20側に向けて(図9(b)における矢印の方向に)押圧される。これにより、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付けた際に、フェンダカバー25がフェンダ20に押さえつけられた状態となり、フェンダカバー25がフェンダ20の上方に浮くことが防止される。
【0060】
図2及び図9(c)に示すように、ステップ36の上面には、ゴム等の弾性素材からなる第二マット部材34がステップ36の上面を覆うように載置される。この第二マット部材34は、フェンダカバー25の前部25eの前方に配置される。そして、第二マット部材34の左後端に押圧部34aが形成され、この押圧部34aがフェンダカバー25の前部25eと圧接される。
【0061】
こうして、第二マット部材34の押圧部34aにより、フェンダカバー25の前部25eがフェンダ20側に向けて(図9(c)における矢印の方向に)押圧される。これにより、フェンダカバー25をフェンダ20に取り付けた際に、フェンダカバー25がフェンダ20に押さえつけられた状態となり、フェンダカバー25がフェンダ20の前方に浮くことが防止される。
【0062】
このようにして、フェンダカバー25の側部25c、後上部25d、前部25eは、座席の周辺に配置される部材、すなわち、操作レバーのレバーガイド(副変速レバーガイド30やPTOレバーガイド31)やマット部材(第一マット部材32と第二マット部材34)、フレームカバー(リヤピラーカバー33)等により、フェンダカバー25の一部をフェンダ20側に押圧しながら、当該フェンダカバー25をフェンダ20に取り付けるようになっている。
【0063】
以上のように、フェンダカバー取付構造において、フェンダ20または当該フェンダ20に取り付けられたシール部材21に、フェンダカバー25との対向面から突出する突出部材23を少なくとも一つ設けて、前記突出部材23を挿通させることが可能な貫通孔25aを前記フェンダカバー25に形成し、前記突出部材23を前記貫通孔25aに挿通させて、前記フェンダカバー25を前記フェンダ20または前記シール部材21に取り付けるものであるので、貫通孔25aに突出部23aを挿通させることによって、フェンダ20またはシール部材21に対するフェンダカバー25の位置を容易に決定して、フェンダカバー25を、フェンダ20またはシール部材21に簡単に取り付けることが可能となる。したがって、フェンダカバー25をフェンダ20またはシール部材21に取り付ける際の組立性を良好にすることができる。
【0064】
また、前記シール部材21は、コ字形状のシールプレート22と、このシールプレート22の開口部を被覆するシールプレートカバー24とを備え、前記シールプレート22の開口部側に前記突出部材23を設け、この突出部材23に、フェンダカバー25を取り付けた状態で、前記シールプレートカバー24を締結部材26により固定することにより、前記フェンダカバー25を押圧するものであるので、フェンダカバー25をシールプレートカバー24により押圧しながら、シール部材21に取り付けることが可能となる。したがって、部品点数の増加を抑制しながら、フェンダカバー25をシール部材21に確実に取り付けることができ、その際の組立性も良好に維持することができる。
【0065】
また、前記フェンダカバー25の一部は、レバーガイド30・31、および、ステップ36や機体カバー35の上面を覆うマット部材32・34の少なくとも一方の部材によりに押圧するものであるので、フェンダカバー25を座席周辺に配置される部材により押圧しながら、フェンダ20またはシール部材21に取り付けることが可能となる。したがって、部品点数の増加を抑制しながら、フェンダカバー25をフェンダ20またはシール部材21に確実に取り付けることができ、その際の組立性も良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 トラクタ
7 キャビン
72 座席
20 フェンダ
21 シール部材
22 シールプレート
22b シール部
23 突出部材
23a 突出部
24 シールプレートカバー
24c 押圧部
25 フェンダカバー
25a 貫通孔
26 締結部材
30 副変速レバーガイド
31 PTOレバーガイド
32 第一マット部材
34 第二マット部材
35 機体カバー
36 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダまたは当該フェンダに取り付けられたシール部材に、フェンダカバーとの対向面から突出する突出部材を少なくとも一つ設けて、前記突出部材を挿通させることが可能な貫通孔を前記フェンダカバーに形成し、前記突出部材を前記貫通孔に挿通させて、前記フェンダカバーを前記フェンダまたは前記シール部材に取り付けることを特徴とする作業車両のフェンダカバー取付構造。
【請求項2】
前記シール部材は、コ字形状のシールプレートと、このシールプレートの開口部を被覆するシールプレートカバーとを備え、前記シールプレートの開口部側に前記突出部材を設け、この突出部材に、フェンダカバーを取り付けた状態で、前記シールプレートカバーを締結部材により固定することにより、前記フェンダカバーを押圧することを特徴とする請求項1に記載の作業車両のフェンダカバー取付構造。
【請求項3】
前記フェンダカバーの一部は、レバーガイド、および、ステップや機体カバーの上面を覆うマット部材の少なくとも一方の部材によりに押圧することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両のフェンダカバー取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−264927(P2010−264927A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119340(P2009−119340)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】