説明

保護回路

【課題】
本発明は、FET1の劣化ないし破壊を防止するための保護回路を提供することを目的とする。
【解決手段】
主スイッチ2をONすると+電源3および−電源4に電圧が供給されコンデンサC3およびC4により+電源と−電源は徐々に立ち上がる。この時電子スイッチ21はOFFに設定されている。−電源4が規定値まで立ち上がると電子スイッチ21はONとなりFET1のドレインに+電源3が印加される。主スイッチ2をOFFとすると+電源3と−電源4はコンデンサC3およびC4により徐々に電圧は下がり始める。−電源が下がり始めると電子スイッチ21はOFFとなりFET1のドレイン電圧7はOFFとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアス電圧を供給するタイミングに制約があるFETを使用した高周波素子回路において、そのタイミングを制御する制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波素子にFETが使用されるようになって来た。このFETはゲート、ドレイン、ソースの3端子にバイアス電圧を供給するタイミングに制約があり、この制約を守らなかった場合、FET内部で電流が過大に流れ、FETの性能劣化ないし破壊を引き起こす。
【0003】
このため、従来は次のような方法によりFETに供給する電圧を管理している。図4は従来技術の構成図である。図4において入力電圧1がスイッチ2を介して+電源3と−電源4に接続されている。+電源3の出力電圧は+V1で、この電圧はスイッチ5と抵抗R3を介してFET1のドレイン電圧7となる。また、−電源4の出力電圧は−V2で、この電圧はスイッチ6と抵抗R1を介してFET1のゲート電圧9となる。
【0004】
また、「主スイッチ2 ON情報」13と「主スイッチ2をOFFする直前の情報」14が制御部15に送られると、制御部15はスイッチ5とスイッチ6をON、OFFするための制御信号10と制御信号11をスイッチ5とスイッチ6に送出してスイッチ5とスイッチ6を制御する。この例ではFET1は高周波素子12として使用されている例である。
【0005】
FET1を破損させないためには、電源供給時はFET1のゲート電圧9を供給した後で、ドレイン電圧7を供給しなければならない。また、電源供給停止時はFET1のドレイン電圧7の供給を停止した後で、ゲート電圧9の供給を停止しなければならないが、この電圧の供給タイミングを図4の従来技術の構成図、図5の従来の技術の立ち上がり時のタイムチャ−ト及び図6の従来の技術の立下り時のタイムチャ−トで説明する。
【0006】
最初に立ち上がり時について図4で説明する。主スイッチ2をONとすると「主スイッチON情報」13が制御部15に送られ、制御部15は制御信号11でスイッチ6をONとすると−電源4の電圧−V2がスイッチ6とR1を介してFET1にゲート電圧9が供給される。次に制御部15は制御信号10をスイッチ5に送り、スイッチ5をONとすると+電源3の電圧+V1がスイッチ5とR3を介してFET1にドレイン電圧7が供給される。
【0007】
図5は立ち上がり時の+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2 とFET1のドレイン電圧7とFET1のゲート電圧9の立ち上がりのタイミングを示す。図5の(1)の時に主スイッチ2をONとして、(2)の時にスイッチ6をONとして、(3)の時にスイッチ5をONとすることにより、FET1のゲート電圧9を供給後にFET1のドレイン電圧を供給するようにして、FET1の破損を防いでいる。
【0008】
通常主スイッチ2は手動スイッチであり、このスイッチのON情報を受けて、制御部15は制御信号11と制御信号10をスイッチ6とスイッチ5に図5の(2)と(3)のタイミングで送出してスイッチ6とスイッチ5をONとしている。このように手動の主スイッチ2のON情報でスイッチ6とスイッチ5のONのタイミングを制御部15で調整している。
【0009】
次に立ち下がり時について図4で説明する。「主スイッチ2をOFFする直前の情報」14を制御部15に送る。制御部15は制御信号10をスイッチ5に送りスイッチ5をOFFするとFET1のドレイン電圧7はOFFとなる。次に、制御部15は制御信号11をスイッチ6に送ると、スイッチ6はOFFとなりFET1のゲート電圧9はOFFとなる。最後に主スイッチ2をOFFにする。
【0010】
図6は立ち下がり時の+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2 とFET1のドレイン電圧7とFET1のゲート電圧9の立ち下がりのタイミングを示す。図6の(1)でスイッチ5をOFFとして、FET1のドレイン電圧7をOFFとして、その後、(2)でスイッチ6をOFFとしてFET1のゲート電圧9をOFFとして、最後に(3)で主スイッチ2をOFFとする。このように主スイッチ2をOFFとする前に、制御部15からの制御信号10と制御信号11をスイッチ5とスイッチ6に送出してスイッチ5とスイッチ6のOFFのタイミングを制御部15で調整して、最後に主スイッチ2をOFFとして、FET1の破損を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−335945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような従来例にあっては、主スイッチ2をON、OFFする時の電源供給時の電圧の立ち上がり時および立ち下がり時に主スイッチ2の「主スイッチ2 ON情報」13や「主スイッチ2をOFFする直前の情報」14を制御部15に送り、この情報により制御部15からスイッチ5やスイッチ6を制御するための制御信号10や制御信号11をこれらのスイッチに送りON、OFFするタイミングを調整する必要があり制御が煩雑となってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
FETのドレイン用+電源およびゲート用−電源を有し、前記+電源および−電源に入力電圧を供給するためのON、OFFスイッチを有し、前記+電源と−電源の出力側にはコンデンサを有し、前記+電源の出力とFETのドレイン間には第一の電子スイッチを有し、前記ON、OFFスイッチをONすることにより前記+電源および−電源が徐々に立ち上がり、前記−電源の出力電圧が規定値となると前記第一の電子スイッチをONとして前記+電源を前記FETのドレインにONする。
【0014】
FETのドレイン用+電源およびゲート用−電源を有し、前記+電源および−電源に入力電圧を供給するためのON、OFFスイッチを有し、前記+電源と−電源の出力側にはコンデンサを有し、前記+電源の出力とFETのドレイン間には第一の電子スイッチを有し、前記ON、OFFスイッチをOFFすることにより前記+電源および−電源が徐々に下がり始め、前記−電源の出力電圧が下がり始めた電圧情報により前記第一の電子スイッチをOFFとして前記+電源を前記FETのドレイン電圧をOFFする。
【0015】
また、前記第一の電子スイッチの出力側とア−ス間に第二の電子スイッチを有し、前記ON、OFFスイッチのOFF情報により前記第二の電子スイッチをONすることにより前記+電源の出力電圧の立下りを早める。
【0016】
また、前記ON、OFFスイッチを電子回路で構成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、デジタル制御による煩雑な制御を避けてアナログ処理による簡単な回路で高周波素子回路等に使用されているFETの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の構成図
【図2】本発明の立ち上がり時のタイムチャ−ト
【図3】本発明の立ち下がり時のタイムチャ−ト
【図4】従来技術の構成図
【図5】従来技術の立ち上がり時のタイムチャ−ト
【図6】従来技術の立ち下がり時のタイムチャ−ト
【図7】本発明の他の例の構成図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
本発明の実施例を図1に示す構成図で説明する。最初に電源供給時の立ち上がり時の動作を説明する。主スイッチ2をONとすると入力電圧1は+電源3と−電源4に供給される。また、+電源3の出力電圧+V1はIC1に供給される。IC1の+端子にはR10とR12による分割電圧が供給される。また、R16とR17による分割電圧はR10とR12による分割電圧より大きく設定してある。
【0020】
従って、IC1の−端子がIC1の+端子より電圧が高いので、IC1の出力はLOWとなりR14を介して電子スイッチ22のゲートには電圧が印加されないので電子スイッチ22はOFF
となる。一方、−電源4の出力電圧−V2はコンデンサC4の影響で徐々に立ち上がる。この電圧−V2はR1とR2により分割されFET1のゲート電圧9となる。また、−電源4の出力電圧−V2はR9を介して電子スイッチ21のゲート電圧となるので電子スイッチ21がONとなり+電源3の出力電圧はR3を介してFET1のドレイン電圧7となる。
【0021】
FET1のゲート電圧9が印加された後電子スイッチ21がONしてFET1のドレイン電圧7が印加されるようにC4、R8、R9、R1、R2の値を決めれば良い。
【0022】
この立ち上がり時のタイミングについて図2で説明する。図2は立ち上がり時の+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2 とFET1のドレイン電圧7とFET1のゲート電圧9の立ち上がりのタイミングを示す。図2の(1)で主スイッチ2をONするとC3とC4の影響で+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2とFET1のゲート電圧9は徐々に立ち上がる。
【0023】
図2の(2)で電子スイッチ21がONするがC6があるため図のように徐々に立ち上がる。図2の(3)でFET1のドレイン電圧7が印加される。図2に示すようにFET1のゲート電圧9が印加されてからFET1のドレイン電圧7が印加されるので、FET1を破損から防いでいる。
【0024】
次に電源供給停止時の立ち下がり時の動作を図1と図3で説明する。主スイッチ2をOFFとすると入力電圧1は+電源3と−電源4への供給が停止されるがC3とC4により+電源3の出力電圧+V1と−電源4の出力電圧−V2とFET1のゲート電圧9とFET1のドレイン電圧7は一時保持されたままとなる。
【0025】
この時IC1の−端子はR17により0VとなるのでIC1の出力電圧はHIGHとなりR14を介して電子スイッチ22がONとなり、R15を介してC3とC6にチャ−ジしていた電荷は急激に放電される。また、同時に−電源4の出力電圧−V2もC4の放電により規定電圧より下がり始めるとR9を介して電子スイッチ21のゲートに印加した電圧も下がり電子スイッチ21がOFFとなりFET1に印加していたドレイン電圧7は急激にOFFとなる。
【0026】
前記のように−電源4の出力電圧−V2がC4の放電により徐々に下がり始め最後にはFET1のゲート電圧9がOFFとなる。このように、FET1のドレイン電圧7がOFF後にゲート電圧9がOFFになるようにC3、C4、R8、R9、R1、R2の値を決めれば良い。
【0027】
図3は立ち下がり時の+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2 とFET1のドレイン電圧7とFET1のゲート電圧9の立ち下がりのタイミングを示す。図3の(1)で主スイッチ2をOFFとすると、コンデンサC3とC4の影響で+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2 とFET1のドレイン電圧7とFET1のゲート電圧9は徐々に下がり始める。−電源4の電圧−V2が規定値より下がると電子スイッチ21はOFFとなり、電子スイッチ22がC6の電荷を放電するのでFET1のドレイン電圧7は急激に下がる。
【0028】
この急激に下がる点が図3の電子スイッチ21 OFFの点である。図3の(2)の点でFET1のドレイン電圧7はOFFとなる。その後、+電源3の電圧+V1 と−電源4の電圧−V2 とFET1のゲート電圧9が徐々にさがりOFFとなる。
【0029】
このようにして、主スイッチ2をOFFにするとアナログ処理によりFET1のドレイン電圧7がOFF後にFET1のゲート電圧9がOFFとなりFET1の破損を防ぐことができる。
【0030】
図7は図1の本発明の他の例の構成図を示す。図7は図1に示す主スイッチ2を主スイッチ12と電子スイッチ23に置き換えたものである。この時の動作は図1で説明した内容と同じであるのでここでは説明を割愛する。
【0031】
図1の本発明の構成図および図7の本発明の他の例の構成図では高周波素子12は1個の場合を示しているが複数の高周波素子があっても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1 入力電圧
2、12 主スイッチ
3 +電源
4 −電源
5、6 スイッチ
7 ドレイン電圧
9 ゲート電圧
10、11 制御信号
12 高周波素子
13 「主スイッチ2 ON情報」
14 「主スイッチをOFFする直前の情報」
15 制御部
21、22、23 スイッチ
C3、C4、C5、C6 コンデンサ
R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17 抵抗
FET1 FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FETのドレイン用+電源およびゲート用−電源を有し、前記+電源および−電源に入力電圧を供給するためのON、OFFスイッチを有し、前記+電源と−電源の出力側にはコンデンサを有し、前記+電源の出力とFETのドレイン間には第一の電子スイッチを有し、前記ON、OFFスイッチをONすることにより前記+電源および−電源が徐々に立ち上がり、前記−電源の出力電圧が規定値となると前記第一の電子スイッチをONとして前記+電源を前記FETのドレインにONすることを特徴とする保護回路。
【請求項2】
FETのドレイン用+電源およびゲート用−電源を有し、前記+電源および−電源に入力電圧を供給するためのON、OFFスイッチを有し、前記+電源と−電源の出力側にはコンデンサを有し、前記+電源の出力とFETのドレイン間には第一の電子スイッチを有し、前記ON、OFFスイッチをOFFすることにより前記+電源および−電源が徐々に下がり始め、前記−電源の出力電圧が下がり始めた電圧情報により前記第一の電子スイッチをOFFとして前記+電源からの前記FETへのドレイン電圧をOFFすることを特徴とする保護回路。
【請求項3】
請求項2の保護回路において、前記第一の電子スイッチの出力側とア−ス間に第二の電子スイッチを有し、前記ON、OFFスイッチのOFF情報により前記第二の電子スイッチをONすることにより前記+電源の出力電圧の立下りを早めることを特徴とする保護回路。
【請求項4】
請求項1および請求項2の保護回路において前記ON、OFFスイッチを電子回路で構成することを特徴とする保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−10156(P2012−10156A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145085(P2010−145085)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】