説明

保護膜塗布装置

【課題】洗浄時に洗浄液が環状フレーム押さえに当たってウエーハ上面に飛散することのない保護膜塗布装置を提供することである。
【解決手段】環状フレーム押さえ手段49は、強磁性体からなる錘部92と、錘部に連結され環状フレームを抑える爪部94とを含む振り子体90と、スピンナテーブルの外周部に配設されて振り子体を回動可能に支持する支持部88と、爪部が環状フレームを押さえる押さえ位置と爪部が環状フレームを解放する解放位置との間で回動可能なように振り子体を支持部に回動可能に取り付ける振り子軸95と、錘部に対面して支持部に固定され、爪部が解放位置に位置付けられた状態で錘部を所定の磁力で固定する永久磁石からなる錘固定部96とを有する。スピンナテーブルの回転速度が所定速度以下の時には、永久磁石の磁力が振り子体の遠心力に打ち勝って錘固定部が錘部を固定することにより爪部が解放位置に位置付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハの表面に水溶性樹脂の保護膜を塗布する保護膜塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の複数のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画され表面に形成されたシリコンウエーハ、サファイヤウエーハ等のウエーハは、加工装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
ウエーハの分割には、ダイサーと呼ばれる切削装置を用いたダイシング方法が広く採用されている。ダイシング方法では、ダイアモンド等の砥粒を金属や樹脂で固めて厚さ30μm程度とした切削ブレードを、30000rpm程度の高速で回転させつつウエーハへ切り込ませることでウエーハを切削し、個々のデバイスへと分割する。
【0004】
一方、近年では、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザビームをウエーハに照射することでレーザ加工溝を形成し、ブレーキング装置でウエーハに外力を付与してレーザ加工溝に沿ってウエーハを割断して個々のデバイスへと分割する方法が提案されている(例えば、特開平10−305420号公報参照)。
【0005】
レーザ加工装置によるレーザ加工溝の形成は、ダイサーによるダイシング方法に比べて加工速度を早くすることができるとともに、サファイアやSiC等の硬度の高い素材からなるウエーハであっても比較的容易に加工することができる。また、加工溝を例えば10μm以下等の狭い幅とすることができるので、ダイシング方法で加工する場合に対してウエーハ1枚当たりのデバイス取り量を増やすことができる。
【0006】
ところが、ウエーハにパルスレーザビームを照射すると、パルスレーザビームが照射された領域に熱エネルギーが集中してデブリが発生する。このデブリがデバイス表面に付着するとデバイスの品質を低下させるという問題が生じる。
【0007】
そこで、例えば特開2004−322168号公報には、このようなデブリによる問題を解消するために、ウエーハの加工面にPVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PEG(ポリ・エチレン・グリコール)等の水溶性樹脂を塗布して保護膜を被覆し、この保護膜を通してウエーハにパルスレーザビームを照射するようにしたレーザ加工装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2004−322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウエーハは外周部が環状フレームに装着された粘着テープに貼着された状態でレーザ加工装置に供給される。レーザ加工装置に搭載された従来の保護膜塗布装置では、振り子式のクランプが環状フレームを抑えた状態でウエーハ上に保護膜の塗布が行われる装置がよく使用されている。
【0010】
ところが、振り子式のクランプが環状フレームを抑えた状態で環状フレームに付着した保護膜の洗浄を行うと、洗浄液がクランプに当たってウエーハ上面に飛散し、飛散した洗浄液がウエーハに塗布された保護膜を局所的に溶解するという問題がある。このような保護膜を有するウエーハをレーザ加工すると、レーザ加工で発生したデブリが局所的に保護膜が形成されなかった部分に付着してデバイス不良等を引き起こす。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フレーム洗浄時に洗浄液が振り子式のクランプに当たってウエーハ上面に飛散することのない保護膜塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、環状フレームに装着された粘着シート上に貼着された板状物を吸引保持する吸引保持面を有する回転可能なスピンナテーブルと、該スピンナテーブルの外周に互いに所定の間隔を有して複数配設され該スピンナテーブルの回転によって生じる遠心力によって該環状フレームを押さえる環状フレーム押さえ手段と、該スピンナテーブルで吸引保持された板状物に保護膜を塗布する保護膜塗布手段と、該環状フレーム上に飛散した保護膜を除去する除去液を回転する該環状フレームへ供給して該環状フレームを洗浄する環状フレーム洗浄手段と、を備えた保護膜塗布装置であって、該環状フレーム押さえ手段は、少なくとも一部に強磁性体を含む錘部と、該錘部に連結され該環状フレームを抑える爪部とを含む振り子体と、該スピンナテーブルの外周部に配設されて該振り子体を回動可能に支持する支持部と、該爪部が該環状フレームを押さえる押さえ位置と該爪部が該環状フレームを解放する解放位置との間で回動可能なように、該振り子体を該支持部に回動可能に取り付ける振り子軸と、該錘部に対面して該支持部に固定され、該爪部が該解放位置に位置付けられた状態で該錘部を所定の磁力で固定する永久磁石からなる錘固定部とを有し、該スピンナテーブルの回転速度が所定速度以下の時には、該永久磁石の磁力が該振り子体の遠心力に打ち勝って該錘固定部が該錘部を固定することにより該爪部が該解放位置に位置付けられ、該スピンナテーブルの回転速度が該所定速度より速い時には、該振り子体の遠心力が該錘固定部の磁力に打ち勝って該錘部が該錘固定部から外れて該爪部が該押さえ位置に位置付けられるように該永久磁石の磁力、該強磁性体の種類及び該振り子体の質量が設定され、該環状フレーム洗浄手段で該環状フレームが洗浄されるときの該スピンナテーブルの回転速度は該所定速度以下に設定されることを特徴とする保護膜塗布装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保護膜塗布装置によると、スピンナテーブルの回転速度が所定速度以下の時には振り子式のクランプが解放位置に位置付けされて環状フレームがクランプされないため、スピンナテーブルの回転速度が所定速度以下でフレーム洗浄を実施することで、洗浄液がクランプに当たってウエーハ上面に飛散することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】レーザ加工装置の外観斜視図である。
【図2】ダイシングテープを介して環状フレームに支持されたウエーハの斜視図である。
【図3】レーザビーム照射ユニットのブロック図である。
【図4】保護膜塗布装置の一部破断斜視図である。
【図5】環状フレーム押さえ手段の側面図である。
【図6】スピンナテーブルが上昇された状態の保護膜被覆装置の縦断面図である。
【図7】スピンナテーブルが下降されて液状樹脂を吐出後ウエーハ全面に液状樹脂をスピンコーティングして保護膜を塗布している状態の縦断面図である。
【図8】フレーム洗浄時の縦断面図である。
【図9】ウエーハをレーザ加工後、ウエーハを洗浄して保護膜を除去している状態の縦断面図である。
【図10】保護膜除去後ウエーハを乾燥している状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の保護膜被覆装置を具備し、ウエーハにレーザー加工を施すことのできるレーザー加工装置2の外観を示している。
【0016】
レーザー加工装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示されるCRT等の表示手段6が設けられている。
【0017】
図2に示すように、加工対象の半導体ウエーハWの表面においては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交して形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画された領域に多数のデバイスDが形成されている。
【0018】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、図1に示したウエーハカセット8中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0019】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8からレーザー加工前のウエーハWを搬出するとともに、加工後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。
【0020】
ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12にはウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0021】
30は本発明実施形態に係る保護膜被覆装置であり、この保護膜被覆装置30は加工後のウエーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されている。
【0022】
仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されて保護膜被覆装置30に搬送される。保護膜被覆装置30では、後で詳細に説明するようにウエーハWの加工面に保護膜が被覆される。
【0023】
加工面に保護膜が被覆されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、チャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段(クランプ)19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0024】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWのレーザー加工すべきストリートを検出するアライメント手段20が配設されている。
【0025】
アライメント手段20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像手段22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によってレーザー加工すべきストリートを検出することができる。撮像手段22によって取得された画像は、表示手段6に表示される。
【0026】
アライメント手段20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対してレーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24が配設されている。レーザビーム照射ユニット24のケーシング26中には後で詳細に説明するレーザビーム発振手段等が収容されており、ケーシング26の先端にはレーザビームを加工すべきウエーハ上に集光する集光器28が装着されている。
【0027】
レーザビーム照射ユニット24のケーシング26内には、図3のブロック図に示すように、レーザビーム発振手段34と、レーザビーム変調手段36が配設されている。
【0028】
レーザビーム発振手段34としては、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器を用いることができる。レーザビーム変調手段36は、繰り返し周波数設定手段38と、レーザビームパルス幅設定手段40と、レーザビーム波長設定手段42を含んでいる。
【0029】
レーザビーム変調手段36を構成する繰り返し周波数設定手段38、レーザビームパルス幅設定手段40及びレーザビーム波長設定手段42は周知の形態のものであり、本明細書においてはその詳細な説明を省略する。
【0030】
レーザビーム照射ユニット24によりレーザー加工が終了したウエーハWは、チャックテーブル18をX軸方向に移動してから、Y軸方向に移動可能な搬送手段32により保持されて洗浄装置を兼用する保護膜被覆装置30まで搬送される。保護膜被覆装置30では、洗浄ノズルから水を噴射しながらウエーハWを低速回転(例えば800〜1000rpm)させることによりウエーハを洗浄する。
【0031】
洗浄後、ウエーハWを高速回転(例えば1500〜2000rpm)させながらエアノズルからエアを噴出させてウエーハWを乾燥させた後、搬送手段16によりウエーハWを吸着して仮置き領域12に戻し、更に搬出入手段10によりウエーハカセット8の元の収納場所にウエーハWは戻される。
【0032】
次に、本発明実施形態に係る保護膜被覆装置30について図4乃至図10を参照して詳細に説明する。まず図4を参照すると、保護膜被覆装置30の一部破断斜視図が示されている。
【0033】
保護膜被覆装置30は、スピンナテーブル機構44と、スピンナテーブル機構44を包囲して配設された洗浄水受け機構46を具備している。スピンナテーブル機構44は、スピンナテーブル48と、スピンナテーブル48を回転駆動する電動モータ50と、電動モータ50を上下方向に移動可能に支持する支持機構52とから構成される。
【0034】
スピンナテーブル48は多孔性材料から形成された吸着チャック48aを具備しており、吸着チャック48aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナテーブル48は、吸着チャック48aにウエーハを載置し図示しない吸引手段により負圧を作用させることにより、吸着チャック48a上にウエーハを吸引保持する。
【0035】
スピンナテーブル48は、電動モータ50の出力軸50aに連結されている。支持機構52は、複数の(本実施形態においては3本)の支持脚54と、支持脚54にそれぞれ連結され電動モータ50に取り付けられた複数(本実施形態においては3本)のエアシリンダ56とから構成される。
【0036】
このように構成された支持機構52は、エアシリンダ56を作動することにより、電動モータ50及びスピンナテーブル48を図6に示す上昇位置であるウエーハ搬入・搬出位置と、図7に示す下降位置である作業位置に位置付け可能である。
【0037】
洗浄水受け機構46は、洗浄水受け容器58と、洗浄水受け容器58を支持する3本(図4には2本のみ図示)の支持脚60と、電動モータ50の出力軸50aに装着されたカバー部材62とから構成される。
【0038】
洗浄水受け容器58は、図6に示すように、円筒状の外側壁58aと、底壁58bと、内側壁58cとから構成される。底壁58bの中央部には、電動モータ50の出力軸50aが挿入される穴51が設けられており、内側壁58cはこの穴51の周辺から上方に突出するように形成されている。
【0039】
また、図4に示すように、底壁58bには廃液口59が設けられており、この廃液口59にドレンホース64が接続されている。カバー部材62は円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部62aを備えている。
【0040】
このように構成されたカバー部材62は、電動モータ50及びスピンナテーブル48が図7に示す作業位置に位置付けられると、カバー部62aが洗浄水受け容器58を構成する内側壁58cの外側に隙間を持って重合するように位置付けられる。
【0041】
保護膜塗布装置30は、スピンナテーブル48に保持された加工前の半導体ウエーハに液状樹脂を塗布する塗布手段66を具備している。塗布手段66は、スピンナテーブル48に保持された加工前のウエーハの加工面に向けて液状樹脂を吐出する吐出ノズル68と、吐出ノズル68を支持する概略L形状のアーム70とを含んでいる。
【0042】
塗布手段66は更に、アーム70に支持された吐出ノズル68をスピンナテーブル48に支持されたウエーハWの中心部に対応する液状樹脂吐出位置と、スピンナテーブル48から外れた図4に示す退避位置との間で揺動する正転・逆転可能な電動モータ72とを含んでいる。吐出ノズル68はアーム70を介して図示しない液状樹脂供給源に接続されている。
【0043】
保護膜塗布装置30はレーザー加工後のウエーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。よって、保護膜塗布装置30は、スピンナテーブル48に保持された加工後のウエーハを洗浄するための洗浄水供給手段74及びエア供給手段76を具備している。
【0044】
洗浄水供給手段74は、スピンナテーブル48に保持された加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴出する洗浄水ノズル78と、洗浄水ノズル78を支持するアーム80と、アーム80に支持された洗浄水ノズル78を揺動する正転・逆転可能な電動モータ82とから構成される。洗浄水噴射ノズル78はアーム80を介して図示しない洗浄水供給源に接続されている。
【0045】
エア供給手段76は、スピンナテーブル48に保持された洗浄後のウエーハに向けてエアを噴出するエアノズル84と、エアノズル84を支持するアーム86と、アーム86に支持されたエアノズル84を揺動する正転・逆転可能な電動モータ(図示せず)を備えている。エアノズル84はアーム86を介して図示しないエア供給源に接続されている。
【0046】
スピンナテーブル48には、環状フレームFを押さえる4個の振り子式の環状フレーム押さえ手段49が配設されている。環状フレーム押さえ手段49は、スピンナテーブル48に固定された支持部88と、支持部88に回動可能に取り付けられた振り子体(クランプ)90を含んでいる。振り子体90は振り子軸95を介して支持部88に回動可能に取り付けられている。98は振り子軸98の抜けを防止するスナップリングである。
【0047】
振り子体90は例えば鉄等の強磁性体から形成されており、錘部92と、錘部92と一体的に形成された環状フレームFを押さえる爪部94とから構成される。支持部88には永久磁石から構成された錘固定部96が取り付けられている。
【0048】
振り子体90は、スピンナテーブル48の回転速度が所定速度以下の時には、錘固定部96の磁力が振り子体90の遠心力に打ち勝って錘部92が錘固定部96に吸着されて固定され、爪部94は図5に示す解放位置に位置付けられ、スピンナテーブル48の回転速度が所定速度より速い時には、振り子体90の遠心力が錘固定部96の磁力に打ち勝って錘部90が錘固定部96から外れて爪部94が環状フレームFを押さえる押さえ位置に位置付けられるように、錘固定部96の磁力と振り子体90の強磁性体の種類及びその質量が設定されている。
【0049】
振り子体90は、その全体が強磁性体から形成される必要はなく、錘固定部96の磁力により吸着される錘部92の一部が強磁性体から形成されていればよい。本実施形態では前記所定速度を1000rpmに設定した。
【0050】
以下、このように構成された保護膜塗布装置30の作用について説明する。ウエーハ搬送手段16の旋回動作によって加工前の半導体ウエーハWは保護膜塗布装置30のスピンナテーブル48に搬送され、吸着チャック48aにより吸引保持される。
【0051】
この時、スピンナテーブル48は図6に示すウエーハ搬入・搬出位置に位置付けられており、吐出ノズル68、洗浄ノズル78及びエアノズル84は図4及び図6に示すように、スピンナテーブル48の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0052】
加工前のウエーハWが保護膜塗布装置30のスピンナテーブル48上に保持されたならば、ウエーハWの加工面である表面に液状樹脂を吐出して保護膜を塗布する保護膜塗布工程を実行する。
【0053】
保護膜塗布工程を実施するには、エアシリンダ56を駆動してスピンナテーブル48を図7で矢印A方向に移動して作業位置に位置付ける。更に、塗布手段66の吐出ノズル68を図7に示す位置に位置付けて液状樹脂をウエーハW上に吐出してから、電動モータ50を駆動してスピンナテーブル48をR1方向に2000rpmで回転させて吐出された液状樹脂をウエーハWの全面にスピンコーティングする。
【0054】
スピンナテーブル48は2000rpmという比較的高速で回転されるので、振り子体90の遠心力が錘固定部96の磁力に打ち勝って錘部92が錘固定部96から外れて振り子体90の爪部94が環状フレームFをクランプする(押さえる)。
【0055】
このように環状フレームFが振り子体90の爪部94でクランプされた状態でスピンナテーブル48が2000rpmの回転速度で回転されるため、液状樹脂のウエーハW上へのスピンコーティング時に環状フレームFがスピンナテーブル48に対して固定され、液状樹脂をウエーハW表面に満遍なくスピンコーティングして保護膜を形成することができる。
【0056】
保護膜を形成する液状樹脂としては、PVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PEG(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等の水溶性のレジストが望ましい。
【0057】
保護膜塗布後、図8に示すように、純水源とエア源に接続された洗浄水ノズル78から純水とエアとからなる洗浄水79を環状フレームFに供給しながらスピンナテーブル48を100〜200rpmの低速で回転させて環状フレームFを洗浄する。
【0058】
この洗浄工程ではスピンナテーブル48が低速で回転されるため、錘固定部96の磁力が振り子体90の遠心力に打ち勝って錘部92が錘固定部96に吸着されて固定され、振り子体90の爪部94は解放位置に位置付けられる。
【0059】
よって、環状フレームFの洗浄時に、従来のように洗浄水が振り子体90の爪部94に当たってウエーハ上面に飛散することが防止され、飛散した洗浄水がウエーハWに塗布された保護膜を局所的に溶解することが防止される。
【0060】
保護膜塗布工程によって半導体ウエーハWの表面に保護膜が塗布されたならば、スピンナテーブル48を図6に示すウエーハ搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナテーブル48に保持されているウエーハWの吸引保持を解除する。
【0061】
そして、スピンナテーブル48上のウエーハWは、ウエーハ搬送手段16によってチャックテーブル18に搬送され、チャックテーブル18により吸引保持される。更に、チャックテーブル18がX軸方向に移動してウエーハWは撮像手段22の直下に位置付けられる。
【0062】
撮像手段22でウエーハWの加工領域を撮像して、レーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24の集光器28と第1のストリートS1との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理が実行され、第1のストリートS1についてレーザビーム照射位置のアライメントが実施される。チャックテーブル18を90度回転して、第2のストリートS2についても同様なアライメントを実施する。
【0063】
このようにして、チャックテーブル18上に保持されているウエーハWの第1及び第2のストリートS1,S2を検出し、レーザビーム照射位置のアライメントが実施されたならば、チャックテーブル18をレーザビームを照射する集光器28が位置するレーザビーム照射領域に移動し、ウエーハWの第1のストリートS1又は第2のストリートS2に沿って集光器28からウエーハWに対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のレーザビームを保護膜を通してウエーハWに照射して、レーザ加工溝を形成する。
【0064】
この時、レーザビームの照射によりデブリが発生しても、このデブリは保護膜によって遮断され、デバイスDの電子回路及びボンディングパッド等に付着することはない。
【0065】
このようにして、半導体ウエーハWの第1のストリートS1及び第2のストリートS2に沿ってレーザ加工溝を形成したら、チャックテーブル18は最初にウエーハWを吸引保持した位置に戻され、ここでウエーハWの吸引保持を解除する。
【0066】
そして、ウエーハWは搬送手段32によって保護膜塗布装置30のスピンナテーブル48に搬送され、吸着チャック48aにより吸引保持される。この時、吐出ノズル68、洗浄水ノズル78及びエアノズル84は、図4及び図6に示すように、スピンナテーブル48の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0067】
そして、図9に示すように、純水源とエア源に接続された洗浄水ノズル78から純水とエアとからなる洗浄水79を噴射しながらスピンナテーブル48を矢印R1方向に例えば800rpmで回転させることによりウエーハWを洗浄して保護膜を除去する。スピンナテーブル48が所定速度以下の低速で回転されるため、振り子体90の爪部94は解放位置に位置付けられてウエーハWの洗浄が遂行される。
【0068】
洗浄工程が終了したら、乾燥工程を実行する。即ち、洗浄水ノズル78を待機位置に位置付けるとともに、エアノズル84の噴出口をスピンナテーブル48上に保持されたウエーハWの上方に位置付ける。
【0069】
そして、図10に示すように、スピンナテーブル48を所定速度より早い1500〜2000rpmで回転しつつエアノズル84からスピンナテーブル48に保持されているウエーハWに向けてエアを噴出し、ウエーハWの表面を乾燥する。
【0070】
この乾燥工程では、スピンナテーブル48が所定速度より速い1500〜2000rpmで回転されるため、振り子体90の爪部94は図10に示すように環状フレームFをクランプしながら乾燥工程が実施される。
【0071】
ウエーハWを乾燥させた後、搬送手段16によりウエーハWを吸着して仮置き領域12に戻し、更に搬出入手段10によりウエーハカセット8の元の収納場所にウエーハWは戻される。
【符号の説明】
【0072】
2 レーザ加工装置
18 チャックテーブル
24 レーザビーム照射ユニット
28 集光器
30 保護膜塗布装置
48 スピンナテーブル
49 環状フレーム押さえ手段
66 液状樹脂塗布手段
68 吐出ノズル
74 洗浄手段
78 洗浄水ノズル
76 乾燥手段
84 エアノズル
90 振り子体
92 錘部
94 爪部
96 錘固定部
噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状フレームに装着された粘着シート上に貼着された板状物を吸引保持する吸引保持面を有する回転可能なスピンナテーブルと、該スピンナテーブルの外周に互いに所定の間隔を有して複数配設され該スピンナテーブルの回転によって生じる遠心力によって該環状フレームを押さえる環状フレーム押さえ手段と、該スピンナテーブルで吸引保持された板状物に保護膜を塗布する保護膜塗布手段と、該環状フレーム上に飛散した保護膜を除去する除去液を回転する該環状フレームへ供給して該環状フレームを洗浄する環状フレーム洗浄手段と、を備えた保護膜塗布装置であって、
該環状フレーム押さえ手段は、少なくとも一部に強磁性体を含む錘部と、該錘部に連結され該環状フレームを抑える爪部とを含む振り子体と、
該スピンナテーブルの外周部に配設されて該振り子体を回動可能に支持する支持部と、
該爪部が該環状フレームを押さえる押さえ位置と該爪部が該環状フレームを解放する解放位置との間で回動可能なように、該振り子体を該支持部に回動可能に取り付ける振り子軸と、
該錘部に対面して配設され、該爪部が該解放位置に位置付けられた状態で該錘部を所定の磁力で固定する永久磁石からなる錘固定部とを有し、
該スピンナテーブルの回転速度が所定速度以下の時には、該永久磁石の磁力が該振り子体の遠心力に打ち勝って該錘固定部が該錘部を固定することにより該爪部が該解放位置に位置付けられ、該スピンナテーブルの回転速度が該所定速度より速い時には、該振り子体の遠心力が該錘固定部の磁力に打ち勝って該錘部が該錘固定部から外れて該爪部が該押さえ位置に位置付けられるように該永久磁石の磁力、該強磁性体の種類及び該振り子体の質量が設定され、
該環状フレーム洗浄手段で該環状フレームが洗浄されるときの該スピンナテーブルの回転速度は該所定速度以下に設定されることを特徴とする保護膜塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−200673(P2012−200673A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67622(P2011−67622)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】