説明

信号伝送回路及びその特性調整方法、メモリモジュール、並びに、回路基板の製造方法

【課題】伝送線路間のインピーダンス不整合を検出する。
【解決手段】メモリモジュール104とMCH102とを相互に接続する伝送線路301,302と、伝送線路301のインピーダンスを記憶するBIOS108と、伝送線路302のインピーダンスを記憶するSPDチップ220とを備え、CPU101は、BIOS108に記憶されたインピーダンスとSPDチップ220に記憶されたインピーダンスとの整合情報をMCH102に出力する。MCH102は、これに応じてDRAM200へのモードレジスタセットを実行し、DRAM200のODTインピーダンスを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号伝送回路及びその特性調整方法に関し、特に、伝送線路間のインピーダンス不整合を検出可能な信号伝送回路及びその特性調整方法に関する。また、本発明はメモリモジュールに関し、特に、伝送線路のインピーダンスを読み出し可能なメモリモジュールに関する。さらに、本発明は、回路基板の製造方法に関し、特に、伝送線路のインピーダンスを読み出し可能な回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやサーバなどの情報処理システムにおいては、マザーボード上にCPU(Central Processing Unit)やメモリコントローラなどのコントロール系チップのほか、DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される半導体メモリなど、多数の半導体チップが実装される。このうち、DRAMについては、DIMM(Dual Inline Memory Module)と呼ばれるメモリモジュールに実装され、ソケットを介してマザーボードに搭載されるのが一般的である。
【0003】
近年、メモリコントローラとDRAMとの間のデータ転送速度は、ますます高速化している。データ転送速度が高速化すると信号品質の劣化が顕著となるため、現在では、出力バッファのインピーダンス調整機能や、ODT(On Die Termination)機能などをDRAMに搭載することによって、信号品質の劣化を抑制している。尚、出力バッファのインピーダンス調整機能や、ODT機能などについては、特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
【0004】
しかしながら、最近ではデータ転送速度のさらなる向上が求められており、例えば3.2Gbps程度のデータ転送速度が要求されている。データ転送速度を3.2Gbps程度まで高めると、信号品質の劣化はさらに顕著となり、伝送線路間のインピーダンス不整合に起因する反射ノイズが無視できなくなる。
【0005】
このようなインピーダンス不整合は、主に、マザーボードに形成された伝送線路と、メモリモジュールに形成された伝送線路との間において問題となる。インピーダンス不整合が生じる原因は、製造ばらつきなどを考慮して伝送線路のインピーダンスに所定の許容範囲が認められているためである。インピーダンスの許容範囲としては、±15%程度に設定されることが一般的である。
【0006】
図15は、インピーダンス不整合に起因する信号品質の劣化を説明するためのグラフであり、図16に示すメモリコントローラ10がDRAM21に対してデータ書き込みを行った場合の信号品質を示している。
【0007】
図16に示すように、コントローラ10は信号線路31に接続されており、DRAM21は信号線路32に接続されている。信号線路31はマザーボードに形成された信号線路であり、信号線路32はメモリモジュールに形成された信号線路である。これら信号線路31,32は、コネクタ40を介して相互に接続されている。メモリモジュールには、他のDRAM22も実装されているが、このDRAMは非選択である。
【0008】
図15において、X軸は非選択のDRAM22(Off Rank DRAM)の終端抵抗値を示し、Y軸は書き込み対象となるDRAM21(On Rank DRAM)に入力される書き込みデータの振幅(Eye Height)を示している。より正確には、Y軸に示すEye Heightは、DRAM21の入力バッファに供給される信号の振幅を表している。
【0009】
DRAM22の終端抵抗値は、ODT機能によって例えば40Ωに設定されるが、温度変化や電源電圧変動などによって、終端抵抗値にもある程度のばらつきが生じる。本例では、温度変化や電源電圧変動などに起因する終端抵抗値の変動を±15%と見積もっている。また、Eye Heightは大きいほど好ましく、ここでは200mVを最低許容値に設定している。
【0010】
図15に示す特性Aは、伝送線路31のインピーダンスが設計値(=Zmp)と一致しており、且つ、伝送線路32のインピーダンスも設計値(=Zdp)と一致しているケースを示している。このケースでは、DRAM22の終端抵抗値が設計値(=40Ω)である場合に、Eye Heightは最大値をとる。Eye Heightは、DRAM22の終端抵抗値が40Ωから離れるにつれて低下するが、終端抵抗値の変動幅である±15%の範囲内においては十分に大きな値が得られている。このため、温度変化や電源電圧変動などに対して十分なマージンが確保される。
【0011】
これに対し、図15に示す特性Bは、伝送線路31のインピーダンスが許容範囲内の最小値(=Zmn)であり、且つ、伝送線路32のインピーダンスが許容範囲内の最大値(=Zdx)であるケースを示している。したがって、インピーダンスの許容範囲が±15%であるとすると、
Zmn=Zmp×0.85
Zdx=Zdp×1.15
であり、合計で約30%のインピーダンス不整合が生じている。
【0012】
このケースでは、DRAM22の終端抵抗値が設計値(=40Ω)である場合のEye Heightは、特性Aと比べて低下していることが分かる。このケースにおいては、終端抵抗値が設計値よりも低い約36.5Ωである場合にEye Heightは最大値を取り、終端抵抗値が36.5Ωから離れるにつれて低下する。このため、DRAM22の終端抵抗値が高くなるとEye Heightは大幅に減少し、終端抵抗値が設計値よりも15%高くなると、Eye Heightは最低許容値(=200mV)の近傍まで低下する。このように、本ケースでは、DRAM22の終端抵抗値が高くなると、Eye Heightのマージンが大幅に低下することになる。
【0013】
一方、図15に示す特性Cは、伝送線路31のインピーダンスが許容範囲内の最大値(=Zmx)であり、且つ、伝送線路32のインピーダンスが許容範囲内の最小値(=Zdn)であるケースを示している。したがって、インピーダンスの許容幅が±15%であるとすると、
Zmx=Zmp×1.15
Zdn=Zdp×0.85
であり、合計で約30%のインピーダンス不整合が生じている。
【0014】
このケースにおいても、DRAM22の終端抵抗値が設計値(=40Ω)である場合のEye Heightは、特性Aと比べて低下する。このケースにおいては、終端抵抗値が設計値よりも高い約44Ωである場合にEye Heightは最大値をとり、終端抵抗値が44Ωから離れるにつれて低下する。このため、DRAM22の終端抵抗値が低くなるとEye Heightは大幅に減少し、終端抵抗値が設計値よりも15%低くなると、Eye Heightは最低許容値(=200mV)の近傍まで低下する。このように、本ケースでは、DRAM22の終端抵抗値が低くなると、Eye Heightのマージンが大幅に低下することになる。
【特許文献1】特開2000−332591号公報
【特許文献2】特開2003−223784号公報
【特許文献3】特開2005−333222号公報
【特許文献4】特開2006−140548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、伝送線路間にインピーダンス不整合が存在すると、信号品質が劣化するため、温度変化や電源電圧変動などに対するマージンが低下するという問題があった。
【0016】
このような問題を根本的に解決するためには、インピーダンス不整合がそもそも生じないよう、マザーボードやメモリモジュールの設計精度・作製精度を高める必要がある。しかしながら、この場合には、マザーボードやメモリモジュールの製造歩留まりの低下や、大幅な価格上昇が避けられないことから、解決策としては現実的でない。このため、インピーダンス不整合が現実に存在することを許容しつつ、このようなインピーダンス不整合の存在を実使用時において認識可能な技術が求められる。
【0017】
したがって、本発明の目的は、伝送線路間のインピーダンス不整合を検出可能な信号伝送回路及びその特性調整方法を提供することである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、伝送線路のインピーダンスを読み出し可能なメモリモジュールを提供することである。
【0019】
また、本発明のさらに他の目的は、伝送線路のインピーダンスを読み出し可能な回路基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明による信号伝送回路は、相互に接続された第1及び第2の伝送線路と、第1の伝送線路のインピーダンスを記憶する第1のインピーダンス記憶回路と、第2の伝送線路のインピーダンスと第1のインピーダンス記憶回路に記憶されたインピーダンスとの整合情報を出力する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、第1の伝送線路と第2の伝送線路とのインピーダンス不整合を検出することが可能となる。
【0022】
インピーダンス不整合が検出された場合の対策については特に限定されないが、信号経路上に接続された半導体チップの入出力回路の回路特性を変化させることが好ましい。これによれば、インピーダンス不整合に起因する信号品質の劣化を抑制することが可能となる。特に、入出力回路が可変終端抵抗回路を備えている場合、その終端抵抗値を変化させることがより好ましい。これによれば、Off Rank側の終端抵抗値を補正することによって、On Rank側に入力される信号のEye Heightを高めることが可能となる。
【0023】
或いは、インピーダンス不整合が検出された場合、その旨をユーザに報知することもまた好ましい。これによれば、メモリモジュールの交換などによる根本的な改善をユーザに促すことが可能となる。
【0024】
また、本発明によるメモリモジュールは、モジュール基板と、モジュール基板に実装された複数の半導体メモリと、半導体メモリに関する情報が記録された不揮発性メモリと、モジュール基板に形成され、少なくとも半導体メモリに接続された伝送線路とを備え、不揮発性メモリには、伝送線路のインピーダンスに関する情報が記録されていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、メモリコントローラによって伝送線路のインピーダンスを読み出すことが可能となる。このため、当該メモリモジュールをマザーボードに搭載した後、メモリモジュールに形成された伝送線路と、マザーボードに形成された伝送線路とのインピーダンス不整合を検出することが可能となる。
【0026】
さらに、本発明による信号伝送回路の特性調整方法は、相互に接続された第1及び第2の伝送線路と、第1及び第2の伝送線路を含む信号経路上に接続された半導体チップと、を有する信号伝送回路の特性調整方法であって、第1及び第2の伝送線路のインピーダンスを取得する第1のステップと、第1のステップにて取得したインピーダンスに基づいて、半導体チップに含まれる入出力回路の回路特性を変化させる第2のステップと、を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、インピーダンス不整合に起因する信号品質の劣化を抑制することが可能となる。
【0028】
さらに、本発明による回路基板の製造方法は、基板上に伝送線路及び伝送線路のインピーダンスを測定するための測定パターンを形成するステップと、測定パターンを用いて伝送線路のインピーダンスを測定するステップと、測定されたインピーダンスを基板上に搭載された不揮発性メモリに記録するステップと、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、実使用時において伝送線路のインピーダンスを読み出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明によれば、実際に生じているインピーダンス不整合を実使用時において検出可能であることから、コントローラまたはユーザ自身によって、適切な処置を施すことが可能となる。このため、マザーボードやメモリモジュールの製造歩留まりの低下や、大幅な価格上昇をもたらすことなく、インピーダンス不整合に起因する諸問題を解決することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の適用が好適な情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示す情報処理システム100は、CPU101と、メモリコントロールハブ(MCH)102及びインターフェースコントロールハブ(ICH)103を介してCPU101に接続された各種デバイスとを備えている。
【0034】
MCH102には、メモリモジュール104及びグラフィックコントローラ105が接続されている。後述するように、メモリモジュール104は、複数のDRAMが実装されたDIMMによって構成されている。図1に示すように、メモリモジュール104とMCH102はメモリシステム109を構成し、MCH102はメモリモジュール104に対するコントローラ機能を有している。
【0035】
ICH103には、ストレージデバイス106、I/Oデバイス107、及びBIOS(Basic Input/Output System)108が接続されている。ストレージデバイス106は、ハードディスクドライブなどの磁気ドライブや、CD−ROMドライブなどの光学ドライブなどが含まれる。また、I/Oデバイス107は、キーボード、マウスなどの入力デバイスや、スピーカなどの出力デバイス、さらには、モデム、LANなどのネットワークデバイスが含まれる。BIOS108は、当該情報処理システム100に関する基本的な各種情報を記憶する一種のファームウェアであり、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって構成される。
【0036】
このような構成を有する情報処理システム100のうち、少なくともCPU101、メモリモジュール104、BIOS108などの半導体デバイスについては、マザーボード上に実装され、マザーボードに形成された伝送線路を介して相互に接続される。以下、メモリモジュール104及びMCH102によって構成されるメモリシステム109に着目して説明を進める。
【0037】
図2は、メモリシステム109が形成された部分におけるマザーボードの構造を模式的に示す斜視図である。
【0038】
図2に示すように、マザーボード110にはソケット111が設けられており、ソケット111にメモリモジュール104が挿入されている。一方、MCH102は、マザーボード110に直接実装されている。
【0039】
メモリモジュール104は、複数のDRAM200がモジュール基板210に実装された構成を有している。DRAM200の実装数については特に限定されない。
【0040】
DRAM200は、いわゆるODT機能を有している。ODT機能とは、非選択のDRAM(Off Rank DRAM)の入出力回路を終端抵抗として利用できる機能である。DRAM200にODT機能を持たせれば、チップ外部に終端抵抗器を設ける必要がなくなるため、部品点数を削減することができる。しかも、信号の反射をより効果的に防止することができることから、外部バス上の信号品質を高めることも可能となる。ODTインピーダンス(終端抵抗値)は、DRAM200の内部に設けられたモードレジスタ内のデータを参照することで変化させることが可能である。
【0041】
図2に示すように、モジュール基板210には、DRAM200の他にSPD(Serial Presence Detect)チップ220が実装されている。SPDチップ220は、メモリモジュール104のメモリ容量や、クロック周波数などのアクセス速度、さらにはアクセス方法など、メモリモジュール104に関する各種情報が記録されたチップである。SPDチップ220としては、EEPROMなどの不揮発性メモリが用いられる。
【0042】
本実施形態では、上記の各種情報に加え、メモリモジュール104に形成された伝送線路302のインピーダンスがSPDチップ220に記憶されている。したがって、SPDチップ220は、本発明におけるインピーダンス記憶回路として機能する。
【0043】
さらに、モジュール基板210には測定パターン230が形成されている。測定パターン230は、メモリモジュール104に形成された伝送線路302のインピーダンスを測定するためのパターンであり、特に限定されるものではないが、TDR(Time Domain Reflectometry)法によるインピーダンス測定が可能なパターンである。測定パターン230は、伝送線路302のインピーダンスを直接的に測定可能なパターンではないが、伝送線路302と測定パターン230はモジュール基板210の作製時において同時に形成され、且つ、両者は十分に近接していることから、測定パターン230を用いて測定されたインピーダンスは、伝送線路302のインピーダンスとほぼ一致するものとみなすことができる。つまり、測定パターン230を用いることにより、伝送線路302のインピーダンスを間接的に測定することが可能である。
【0044】
一方、図2に示すように、マザーボード110にも測定パターン130が形成されている。測定パターン130は、マザーボード110に形成された伝送線路301のインピーダンスを測定するためのパターンである。測定パターン130についても、メモリモジュール104に設けられた測定パターン230と同様、TDR法によるインピーダンス測定が可能なパターンを用いることができる。したがって、測定パターン130を用いることにより、マザーボード110に形成された伝送線路301のインピーダンスを間接的に測定することができる。
【0045】
図3は、メモリシステム109に含まれる伝送線路を説明するための模式図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は模式的な平面図である。
【0046】
図3に示すように、メモリモジュール104に実装されたDRAM200と、マザーボード110に実装されたMCH102は、複数の伝送線路からなる信号経路上に接続されている。信号経路には、マザーボード110に形成された伝送線路301と、メモリモジュール104に形成された伝送線路302と、ソケット111に形成された伝送線路303が存在している。その他、DRAM200のパッケージ内に形成された伝送線路304、MCH102のパッケージ内に形成された伝送線路305も存在する。
【0047】
これらの伝送線路301〜305は、互いにインピーダンスが整合するように設計される。しかしながら、既に説明したように、これら伝送線路のインピーダンスには、製造ばらつきなどを考慮してある程度の許容範囲が認められている。このため、実際には、これら伝送線路のインピーダンスが正しく整合するとは限らない。つまり、伝送線路301〜305間には、インピーダンス不整合が存在する可能性があり、これが信号品質を劣化させる原因となる。
【0048】
信号品質の劣化をもたらすインピーダンス不整合は、主に、伝送線路301,302にて生じる。これは、他の伝送線路303〜305に比べて、伝送線路301,302の線路長が長いことから、信号品質に対して大きな影響を与えるからである。また、伝送線路303〜305は、そもそも製造ばらつきによるインピーダンスの変動が小さいのに対し、伝送線路301,302は、製造ばらつきがインピーダンスに大きな影響を与える点も、上記の理由の一つである。
【0049】
このようなインピーダンス不整合を検出可能とすべく、本実施形態では、図1に示した情報処理システム100の内部に伝送線路301,302のインピーダンスが記憶されている。
【0050】
具体的には、伝送線路301のインピーダンスについては、図1に示したBIOS108に記憶され、伝送線路302のインピーダンスについてはSPDチップ220に記憶されている。したがって、情報処理システム100の起動時において、記憶されたこれらインピーダンスを読み出すことにより、インピーダンス不整合の存在を認識することが可能となる。
【0051】
伝送線路301,302のインピーダンスは、上述した測定パターン130,230を用いて測定され、それぞれBIOS108及びSPDチップ220に記録される。このような測定及び記録は、マザーボード110やモジュール基板210の製造時において行われる。
【0052】
図4は、伝送線路302のインピーダンスをSPDチップ220に記録する方法を説明するためのフローチャートである。
【0053】
図4に示すように、まず、多層基板上に伝送線路302及び測定パターン230を形成する。つまり、モジュール基板210を作製する(ステップS11)。伝送線路302と測定パターン230は、それぞれ別個の工程で形成されるのではなく、伝送線路302を形成する工程において測定パターン230が同時に形成される。このため、両者の距離が十分に近ければ、両者のインピーダンスはほぼ一致することになる。
【0054】
モジュール基板210の作製においては、通常、図5に示すように複数個のモジュール基板210を含む基板240を作製し、その後、個々のモジュール基板210に分割することによって多数個取りされる。個々のモジュール基板210への分割は、スクライブ線290に沿って切断することによって行われる。測定パターン230は、図5に示すように個々のモジュール基板210ごとに設けることが最も好ましいが、測定対象となる伝送線路302との距離が十分に近ければ、複数のモジュール基板210に対して1個の測定パターン230を割り当てても構わない。
【0055】
図6に示す例では、隣接する2個のモジュール基板210a,210bに対して1個の測定パターン230が割り当てられている。図6に示すように、モジュール基板210a,210bの平面形状は長方形であることから、モジュール基板210aの長辺の端部近傍に測定パターン230を配置すれば、当該測定パターン230は、モジュール基板210aに形成された伝送線路302のみならず、モジュール基板210bに形成された伝送線路302との距離も十分に近くなる。このような配置によれば、2個のモジュール基板210a,210bに対して1個の測定パターン230を割り当てることが可能となる。
【0056】
また、図7に示す例では、図6に示した例と同様、隣接する2個のモジュール基板210a,210bに対して1個の測定パターン230を割り当てるとともに、この測定パターン230をスクライブ線290上に配置している。これによれば、個々のモジュール基板上における測定パターン230の占有面積をゼロとすることが可能となる。このように、測定パターン230は、製造後においてモジュール基板210に残存している必要はない。
【0057】
次に、測定パターン230を用いて伝送線路302のインピーダンスを測定する(ステップS12)。具体的には、TDR法を用いて測定パターン230のインピーダンスを直接測定し、その値を伝送線路302のインピーダンスに決定する。つまり、測定パターン230を用いて伝送線路302のインピーダンスを間接的に測定する。
【0058】
そして、測定されたインピーダンスを対応するSPDチップ220に記憶させる(ステップS13)。これにより、伝送線路302のインピーダンスをSPDチップ220に正しく記録される。
【0059】
ここで、図5に示したように、個々のモジュール基板210に測定パターン230が割り当てられている場合には、ステップS12にて得られたインピーダンス値は、それぞれのモジュール基板210に実装されるSPDチップ220に記録される。したがって、この場合、SPDチップ220には、伝送線路302のインピーダンスが非常に正確に記録されることになる。
【0060】
一方、図6及び図7に示したように、複数個のモジュール基板210a,210bに対して同じ測定パターン230が共通に割り当てられている場合には、ステップS12にて得られたインピーダンス値は、対応する複数のSPDチップ220に対して共通に記録される。したがって、この場合は、測定パターン230を用いたインピーダンス測定回数が少なくなることから、製造効率を高めることが可能となる。
【0061】
以上、伝送線路302のインピーダンスをSPDチップ220に記録する方法について説明したが、マザーボード110に形成される伝送線路301のインピーダンスをBIOS108に記録する方法についても、上記と同様に行えばよい。
【0062】
次に、実使用時における情報処理システム100の動作について説明する。
【0063】
図8は、情報処理システム100のリセット時における動作を説明するためのフローチャートである。
【0064】
図8に示すように、情報処理システム100がリセットされると(ステップS21)、CPU101はまずBIOS108にアクセスし、システムの初期化を行う(ステップS22)。上述の通り、BIOS108には情報処理システム100に関する基本的な各種情報が記憶されており、CPU101はこれを読み出すことによって、システムの各種設定や診断を行う。この時、BIOS108に記憶されている伝送線路301のインピーダンスも読み出される。
【0065】
次に、CPU101は、MCH102を介してメモリモジュール104上のSPDチップ220へアクセスし、SPDチップ220に記憶された各種情報を読み出す(ステップS23)。この時、SPDチップ220に記憶されている伝送線路302のインピーダンスも読み出される。その後、MCH102がメモリモジュール104上のDRAM200にアクセスし、メモリシステム109の初期化を行う(ステップS24)。
【0066】
そして、CPU101は、読み出された伝送線路301,302のインピーダンスを参照し、これに基づいてMCH102に整合情報を供給する(ステップS25)。整合情報とは、伝送線路301のインピーダンスと伝送線路302のインピーダンスとの相対的な関係を示す情報であり、データの形式については限定されない。したがって、読み出されたインピーダンス値をそのものであっても構わないし、それぞれの設計値からのずれ方向及びずれ量を示すものであっても構わない。また、後述するモードレジスタセットを実行するための信号も、整合情報を構成する。
【0067】
このような整合情報がMCH102に供給されると、MCH102はメモリモジュール104上のDRAM200へのモードレジスタセットを実行し、終端抵抗値を調整する(ステップS26)。具体的には、伝送線路301,302のインピーダンスがほぼ一致していれば、終端抵抗値を設計値通りに設定し、伝送線路301,302のインピーダンスが実質的に不一致であれば、終端抵抗値を設計値に対してオフセットさせる。モードレジスタセットを実行するための信号は、CPU101からMCH102に供給された整合情報に基づくものであり、したがって当該信号も整合情報を構成する。
【0068】
図9は、伝送線路301,302のインピーダンスと、設定すべき終端抵抗値との関係を示す表である。図9に示す例では、マザーボード110に形成された伝送線路301のインピーダンス設計値が45Ωであり、メモリモジュール104に形成された伝送線路302のインピーダンス設計値が40Ωである場合を示している。
【0069】
上述の通り、これらのインピーダンスには、製造ばらつきなどを考慮して±15%程度の許容範囲が認められている。図9に示す例では、インピーダンスのばらつきが設計値の−15%〜−5%であるケース(ケース1)と、±5%以内であるケース(ケース2)と、+5%〜+15%であるケース(ケース3)の3つに場合分けしている。したがって、伝送線路301,302のインピーダンスの組み合わせパターンとしては9通り存在することになる。
【0070】
このうち、伝送線路301,302のインピーダンスがいずれもケース2である場合(パターン5)、つまり、伝送線路301,302ともほぼ設計値通りのインピーダンスを有している場合には、終端抵抗値のオフセットは不要である。したがって、終端抵抗値は、設計値通り(本例では40Ω)に設定される。
【0071】
また、伝送線路301,302のインピーダンスがいずれもケース1である場合(パターン1)や、いずれもケース3である場合(パターン9)である場合は、設計値からずれているものの、インピーダンスの不整合は実質的に生じていない。したがって、この場合も終端抵抗値のオフセットは不要であり、設計値通り(=40Ω)に設定される。
【0072】
これに対し、他のパターン2〜4,6〜8においては、伝送線路301,302間に実質的なインピーダンス不整合が生じている。インピーダンス不整合の度合いは、パターン3及びパターン7において最大(最悪)となる。パターン3とは、伝送線路301のインピーダンスがケース3であるのに対し、伝送線路302のインピーダンスがケース1であるパターンである。また、パターン7とは、伝送線路301のインピーダンスがケース1であるのに対し、伝送線路302のインピーダンスがケース3であるパターンである。
【0073】
このようなインピーダンス不整合が検出されると、インピーダンス不整合に起因する信号品質の劣化を抑制すべく、終端抵抗値を設計値に対してオフセットさせる。オフセットの方向及びオフセット量については、どのようなインピーダンス不整合が生じているかによって異なる。図9に示す例では、伝送線路301のインピーダンスに対して伝送線路302のインピーダンスが高すぎる場合には(パターン4,7,8)、終端抵抗値を設計値よりも低く設定し、逆に、伝送線路301のインピーダンスに対して伝送線路302のインピーダンスが低すぎる場合には(パターン2,3,6)、終端抵抗値を設計値よりも高く設定する。
【0074】
次に、図3(b)に示したMCH102がDRAM201に対してデータ書き込みを行う場合を例に、Off Rank DRAMであるDRAM202の終端抵抗値と、On Rank DRAMであるDRAM201に入力される書き込みデータの振幅(Eye Height)との関係についてグラフを用いて説明する。
【0075】
図10は、パターン5における終端抵抗値とEye Heightとの関係を示すグラフである。パターン5とは、伝送線路301,302ともほぼ設計値通りのインピーダンスを有しており、実質的なインピーダンス不整合が生じていないパターンである。この場合、得られる特性は、図15に示した特性Aと一致する。
【0076】
このようなパターンにおいては、DRAM202の終端抵抗値は、設計値通り(=40Ω)に設定される。このパターンでは、DRAM202の終端抵抗値が設計値(=40Ω)である場合に、Eye Heightは最大値をとる。このため十分な最低許容値である200mVを大きく上回るEye Heightを確保することができる。
【0077】
但し、既に説明しているように、終端抵抗値は温度変化や電源電圧変動などによって±15%程度変動する。終端抵抗値が40Ωから離れるにつれて、Eye Heightは低下するが、終端抵抗値の変動幅である±15%の範囲内においては十分に大きな値が得られている。このため、温度変化や電源電圧変動などに対して十分なマージンを確保することが可能となる。
【0078】
図11は、パターン7における終端抵抗値とEye Heightとの関係を示すグラフである。パターン7とは、伝送線路301のインピーダンスが設計値よりも低く、伝送線路302のインピーダンスが設計値よりも高いパターンである。この場合、得られる特性は、図15に示した特性Bと一致する。
【0079】
このようなパターンである場合、DRAM202の終端抵抗値は、設計値よりも低い値(=36.5Ω)にオフセットされる。これは、パターン7に示すインピーダンス不整合が生じている場合、終端抵抗値が設計値よりも低い約36.5Ωである場合にEye Heightが最大値となるからである。つまり、このような特性変動を見越して、終端抵抗値を36.5Ωにオフセットさせているのである。これにより、インピーダンス不整合による特性変動が生じているにもかかわらず、高いEye Heightを得ることが可能となる。
【0080】
この場合、終端抵抗値が36.5Ωから離れるにつれてEye Heightは低下するが、終端抵抗値の変動幅である±15%の範囲内においては十分に大きな値が得られている。これに対し、図15の特性Bに示したように、終端抵抗値を設計値通りに設定した場合は、終端抵抗値が高くなるとEye Heightのマージンが大幅に低下してしまう。本実施形態では、終端抵抗値をあらかじめオフセットさせることにより、このような問題を解決しているのである。
【0081】
図12は、パターン3における終端抵抗値とEye Heightとの関係を示すグラフである。パターン3とは、伝送線路301のインピーダンスが設計値よりも高く、伝送線路301のインピーダンスが設計値よりも低いパターンである。この場合、得られる特性は、図15に示した特性Cと一致する。
【0082】
このようなパターンである場合、DRAM202の終端抵抗値は、設計値よりも高い値(=44Ω)にオフセットされる。これは、パターン3に示すインピーダンス不整合が生じている場合、終端抵抗値が設計値よりも高い約44Ωである場合にEye Heightが最大値となるからである。つまり、このような特性変動を見越して、終端抵抗値を44Ωにオフセットさせているのである。これにより、インピーダンス不整合による特性変動が生じているにもかかわらず、高いEye Heightを得ることが可能となる。
【0083】
この場合も、終端抵抗値が44Ωから離れるにつれてEye Heightは低下するが、終端抵抗値の変動幅である±15%の範囲内においては十分に大きな値が得られている。これに対し、図15の特性Cに示したように、終端抵抗値を設計値通りに設定した場合は、終端抵抗値が低くなるとEye Heightのマージンが大幅に低下してしまう。本実施形態では、終端抵抗値をあらかじめオフセットさせることにより、このような問題を解決している。
【0084】
図13は、DRAM200に含まれる入出力回路の出力部を示す回路図である。
【0085】
図13に示すように、入出力ピンDQと電源電位VDDとの間には、並列接続されたPチャンネル型MOSトランジスタP0〜P4と抵抗RPが直列に接続されている。また、入出力ピンDQと接地電位VSSとの間には、Nチャンネル型MOSトランジスタN0と抵抗RNが直列に接続されている。これらトランジスタP0〜P4,N0のオン/オフは、リードデータData、切り替え信号Term、及びODTインピーダンス調整信号Bit2〜Bit0によって制御される。
【0086】
図13に示す出力部は、リード動作(出力動作)及びODT動作(VDD Termination)の両方を行うことが可能である。これら動作の切り替えは、切り替え信号Termによって行われる。具体的には、リード動作を行う場合には切り替え信号TermがL(ロー)レベルに設定され、ODT動作を行う場合には切り替え信号TermがH(ハイ)レベルに設定される。
【0087】
図14は、図13に示す各種信号の論理レベルと、オンするトランジスタP0〜P4,N0との関係を示す真理値表である。
【0088】
図14に示すように、切り替え信号TermがLレベルである場合は、リードデータDataの論理レベルに応じてVDD又はVSSに駆動される。具体的には、リードデータDataがLレベルであればトランジスタN0がオンし、入出力ピンDQがLレベルに駆動される。逆に、リードデータDataがHレベルであればトランジスタP0〜P2がオンし、入出力ピンDQがHレベルに駆動される。これにより、リードデータDataが外部に出力される。このような動作は、当該DRAM200がOn Rank DRAMである場合に実行される。この場合、ODTインピーダンス調整信号Bit2〜Bit0は無効となる。
【0089】
一方、当該DRAM200がOff Rank DRAMである場合は、切り替え信号TermがHレベルに設定される。この場合、リードデータDataは無効となり、ODTインピーダンス調整信号Bit2〜Bit0に応じて、オンするトランジスタP0〜P4の組み合わせが決まる。ODTインピーダンス調整信号Bit2〜Bit0による終端抵抗値の調整は、図示しないモードレジスタに対する設定により行われる。ODTインピーダンス調整信号Bit0〜Bit2のうち、Bit2は終端抵抗値の調整方向を決めるビットであり、これをLレベルに設定すれば終端抵抗値は高くなり、Hレベルに設定すれば終端抵抗値は低くなる。また、Bit1,0は、終端抵抗値の調整量を決めるビットである。
【0090】
図14に示す例では、終端抵抗値を設計値通りに設定する場合には、ODTインピーダンス調整信号Bit2〜Bit0をL,H,H又はH,L,Lに設定する。この場合、トランジスタP0〜P2がオンすることになる。
【0091】
これに対し、終端抵抗値を設計値よりも高く設定する場合には、Bit2をLレベルとし、Bit1,0の少なくとも一方をLレベルとする。終端抵抗値を最大に設定する場合には、Bit0〜Bit2を全てLレベルとする。この場合、オンするのはトランジスタP0のみとなり、インピーダンスは最大となる。逆に、終端抵抗値を設計値よりも低く設定する場合には、Bit2をHレベルとし、Bit1,0の少なくとも一方をHレベルとする。終端抵抗値を最小に設定する場合には、Bit0〜Bit2を全てHレベルとする。この場合、トランジスタP0〜P4が全てオンし、インピーダンスは最小となる。
【0092】
特に限定されるものではないが、トランジスタP0〜P4のインピーダンスには、重み付けがされていることが好ましい。これによれば、ODT動作時において終端抵抗値をより広範囲且つ高精度に変化させることが可能となる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態による情報処理システム100においては、伝送線路301のインピーダンスがBIOS108に記録され、伝送線路302のインピーダンスがSPDチップ220に記録されている。そして、これらインピーダンスの整合情報がCPU101からMCH102へ供給され、これに基づいてDRAM200の終端抵抗値を最適化していることから、インピーダンス不整合に起因する信号品質の劣化が低減される。その結果、温度変化や電源電圧変動などに対するマージンを拡大することが可能となる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0095】
例えば、上記実施形態では、伝送線路301,302のインピーダンス整合情報に基づいてDRAM200の終端抵抗値を変化させているが、本発明においてインピーダンス不整合が検出された場合の処置としてはこれに限定されるものではない。したがって、終端抵抗値を変化させる代わりに、MCH102やOn Rank DRAMの出力バッファのインピーダンスなどを変化させても構わない。また、インピーダンス不整合の程度に応じて、クロック周波数を低下させても構わない。
【0096】
或いは、インピーダンス不整合に応じて入出力回路の回路特性を変化させるのではなく、インピーダンス不整合が生じている旨をユーザに報知しても構わない。ユーザへの報知は、図1に示したグラフィックコントローラ105を用い、例えばディスプレイにその旨を表示すればよい。これにより、ユーザはインピーダンス不整合の存在を認識できることから、メモリモジュール104の交換など、根本的な改善を行うことが可能となる。
【0097】
また、上記実施形態では、伝送線路301,302のインピーダンスをそれぞれBIOS108,SPDチップ220に記録させているが、比較対象となる2つインピーダンスの両方を記憶させておくことは必須でない。したがって、比較対象となる2つインピーダンスの少なくとも一方を記憶させておけば足りる。例えば、伝送線路301のインピーダンスを記憶させることなく、伝送線路302のインピーダンスのみをSPDチップ220に記憶させても構わない。この場合、伝送線路301のインピーダンスについては設計値を用いて比較を行えばよい。このような方法は、片方の伝送線路におけるインピーダンスばらつきが小さい場合に有効である。
【0098】
さらに、上記実施形態では、インピーダンスの比較対象となる2つの伝送線路がそれぞれマザーボード110,メモリモジュール104に形成されているが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、メモリモジュール104に形成された伝送線路302と、DRAM200のパッケージ内に形成された伝送線路304を比較対象としても構わない。或いは、メモリモジュール104に形成された伝送線路302と、ソケット111に形成された伝送線路303を比較対象としても構わない。
【0099】
さらには、比較対象となる伝送線路は2つに限らず、3つ以上の伝送線路のインピーダンスを比較することも可能である。この場合、より詳細な整合情報が得られることから、より効果的な対処を施すことが可能となる。
【0100】
また、上記実施形態では、互いに異なる基板(マザーボード110とメモリモジュール104)に形成された伝送線路を比較の対象としているが、同一基板に形成された伝送線路を比較の対象としても構わない。これは、マザーボードのように基板面積が大きく、インピーダンスに面内ばらつきが存在するケースなどにおいて有効である。
【0101】
さらに、上記実施形態では、測定されたインピーダンスをフラッシュメモリやEEPROMなどの不揮発性メモリに記憶させているが、インピーダンスの格納方法としてはこれに限定されない。また、記憶させるデータの形式についても限定されず、インピーダンスの実測値をそのまま記憶させても構わないし、設計値からのずれ量を記憶させても構わないし、図9に示したケース番号のみを記憶させても構わない。
【0102】
また、上記実施形態では、TDR法による測定が可能なパターンを用いて間接的なインピーダンス測定を行っているが、インピーダンス測定の方法としてはこれに限定されない。したがって、対象となる伝送線路のインピーダンスを直接的に測定しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の適用が好適な情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
【図2】メモリシステム109が形成された部分におけるマザーボードの構造を模式的に示す斜視図である。
【図3】メモリシステム109に含まれる伝送線路を説明するための模式図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は模式的な平面図である。
【図4】伝送線路302のインピーダンスをSPDチップ220に記録する方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】モジュール基板210が個々に分割される前の状態を示す図であり、測定パターン230が個々のモジュール基板210に配置された例を示している。
【図6】モジュール基板210が個々に分割される前の状態を示す図であり、2個のモジュール基板210に1個の測定パターン230が割り当てられた例を示している。
【図7】モジュール基板210が個々に分割される前の状態を示す図であり、測定パターン230がスクライブ線290上に配置された例を示している。
【図8】情報処理システム100のリセット時における動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】伝送線路301,302のインピーダンスと、設定すべき終端抵抗値との関係を示す表である。
【図10】パターン5における終端抵抗値とEye Heightとの関係を示すグラフである。
【図11】パターン7における終端抵抗値とEye Heightとの関係を示すグラフである。
【図12】パターン3における終端抵抗値とEye Heightとの関係を示すグラフである。
【図13】DRAM200に含まれる入出力回路の出力部を示す回路図である。
【図14】図13に示す各種信号の論理レベルと、オンするトランジスタP0〜P4,N0との関係を示す真理値表である。
【図15】インピーダンス不整合に起因する信号品質の劣化を説明するためのグラフである。
【図16】メモリコントローラ10に複数のDRAM21,22が接続された回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0104】
100 情報処理システム
101 CPU
102 MCH
103 ICH
104 メモリモジュール
105 グラフィックコントローラ
106 ストレージデバイス
107 I/Oデバイス
108 BIOS
109 メモリシステム
110 マザーボード
111 ソケット
130,230 測定パターン
210 モジュール基板
220 SPDチップ
290 スクライブ線
301〜305 伝送線路
DQ 入出力ピン
MOS チャンネル型
P0〜P4,N0 トランジスタ
RN,RP 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接続された第1及び第2の伝送線路と、
前記第1の伝送線路のインピーダンスを記憶する第1のインピーダンス記憶回路と、
前記第2の伝送線路のインピーダンスと、前記第1のインピーダンス記憶回路に記憶されたインピーダンスとの整合情報を出力する制御回路と、を備えることを特徴とする信号伝送回路。
【請求項2】
前記第2の伝送線路のインピーダンスを記憶する第2のインピーダンス記憶回路をさらに備え、
前記制御回路が出力する前記整合情報は、前記第1のインピーダンス記憶回路に記憶されたインピーダンスと、前記第2のインピーダンス記憶回路に記憶されたインピーダンスとの関係を示していることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送回路。
【請求項3】
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路は、互いに異なる基板上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の信号伝送回路。
【請求項4】
前記第1の伝送線路が形成された基板には、前記第1の伝送線路のインピーダンスを測定するための測定パターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の信号伝送回路。
【請求項5】
前記第1及び第2の伝送線路を含む信号経路上に接続された半導体チップをさらに備え、
前記半導体チップは、前記信号経路を介してデータを入出力する入出力回路を有しており、
前記制御回路は、前記整合情報を前記半導体チップに供給することにより、前記入出力回路の回路特性を変化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の信号伝送回路。
【請求項6】
前記入出力回路は、終端抵抗値を変化させる可変終端抵抗回路を有しており、
前記制御回路は、前記整合情報を前記半導体チップに供給することにより、前記可変終端抵抗回路の終端抵抗値を変化させることを特徴とする請求項5に記載の信号伝送回路。
【請求項7】
前記半導体チップが半導体メモリであることを特徴とする請求項5又は6に記載の信号伝送回路。
【請求項8】
前記制御回路は、前記整合情報をユーザに報知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の信号伝送回路。
【請求項9】
前記半導体チップはモジュール基板に実装されており、前記第1及び第2の伝送線路の一方は前記モジュール基板上に形成されており、前記第1及び第2の伝送線路の他方は前記モジュール基板が搭載されたマザーボード上に形成されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の信号伝送回路。
【請求項10】
前記第1のインピーダンス記憶回路は、前記モジュール基板上に実装された不揮発性メモリによって構成されていることを特徴とする請求項9に記載の信号伝送回路。
【請求項11】
モジュール基板と、前記モジュール基板に実装された複数の半導体メモリと、前記半導体メモリに関する情報が記録された不揮発性メモリと、前記モジュール基板に形成され、少なくとも前記半導体メモリに接続された伝送線路とを備え、
前記不揮発性メモリには、前記伝送線路のインピーダンスに関する情報が記録されていることを特徴とするメモリモジュール。
【請求項12】
前記モジュール基板に形成され、前記伝送線路のインピーダンスを測定するための測定パターンをさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のメモリモジュール。
【請求項13】
前記半導体メモリはODT機能を有していることを特徴とする請求項11又は12に記載のメモリモジュール。
【請求項14】
相互に接続された第1及び第2の伝送線路と、前記第1及び第2の伝送線路を含む信号経路上に接続された半導体チップとを有する信号伝送回路の特性調整方法であって、
前記第1及び第2の伝送線路のインピーダンスを取得する第1のステップと、
前記第1のステップにて取得したインピーダンスに基づいて、前記半導体チップに含まれる入出力回路の回路特性を変化させる第2のステップと、を備えることを特徴とする信号伝送回路の特性調整方法。
【請求項15】
前記入出力回路は、終端抵抗値を変化させる可変終端抵抗回路を有しており、
前記第2のステップは、前記可変終端抵抗回路の終端抵抗値を変化させることを特徴とする請求項14に記載の信号伝送回路の特性調整方法。
【請求項16】
基板上に伝送線路及び前記伝送線路のインピーダンスを測定するための測定パターンを形成するステップと、
前記測定パターンを用いて前記伝送線路のインピーダンスを測定するステップと、
測定されたインピーダンスを前記基板上に搭載された不揮発性メモリに記録するステップと、を備えることを特徴とする回路基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−135644(P2009−135644A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308571(P2007−308571)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】