説明

傾動装置

【課題】傾動台の中心を傾動中心とすることが可能であり、しかも傾装置を大型化させずに傾動台の傾動角度を大きくすることができる。
【解決手段】傾動装置1は、基台3に対して傾動台2を傾動可能に支持する傾動台支持部4と、基台3の上面3aに対して略平行となる方向に延在し、その延在方向に伸縮可能な一対の圧電素子5と、各圧電素子5の伸縮による第1の変位を自身の変形により基台3の上面3aに略直交する方向に拡大させるとともに、この拡大による第2の変位を傾動台2に伝えるV溝部66を有する変位拡大部材6とを備えている。傾動台支持部4は、支柱41と、支柱41に対して第1軸線を中心にして回転可能に支持された回動リングとを有し、傾動台2が回動リングに対して第2軸線を中心にして回転可能に支持される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面形状や透過波面を検査する検査装置に用いられる傾動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板状の傾動台上に支持された被検査物の表面形状や透過波面を検査する検査装置が知られている。この検査装置は、傾動台の上方、或いは下方から検査光を照射し、その反射光や透過光等を測定することにより、被検査物の表面形状や透過波面を検査するものである。そして、一般的には、被検査物の表面形状や透過波面を検査する際に、傾動台を適宜傾動させることにより、検査光に対する傾きの調整を行なっている。その傾動機構としては、ピエゾ素子等の駆動部の変形作用を利用し、傾動台を傾動させる構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図16は、特許文献1に記載されている傾動機構を示す側面図である。すなわち、図16に示す傾動装置100は、平板状の基台101に支点部103を介して取り付けられた傾動台102と基台101の少なくとも1箇所に設けられるとともに、基台101に対して略平行な面に沿って移動可能な圧電素子の変形を利用した駆動部104と、傾動台102に支持されるとともに、駆動部104の移動に伴い基台101に対して略鉛直方向に移動可能な接触部材105と、傾動台102と基台101とを近接離反する方向に付勢する付勢部材106とを備え、駆動部104の先端には、接触部材105が接触しながら相対的に移動可能な傾斜面104aが形成された構成となっている。
つまり、駆動部104を駆動させることにより、傾斜面104aが基台101に対して略平行方向に移動し、この移動に伴い、傾斜面104aに接触している接触部材105が略鉛直方向に移動し、傾動台102が支点部103を支点として基台101に対して傾斜する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−170957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す従来の傾動装置では、以下のような問題があった。
すなわち、圧電素子を駆動源として使用する図16に示すような傾動装置100では、駆動部104を基台101に対して略平行に配置することで傾動装置の小型化を図ることが可能であるが、一般的に圧電素子の変位量は数μm〜数十μmと微小であり、その変位に伴って変位する接触部材105の変位量も同様に微小量となるため、傾動台102の傾動角度が大きく取れないという問題があった。
【0006】
ところで、鉛直方向(上下方向)の変位量に対して傾動台102の傾動角度を大きくするためには、支点部103と上下方向(鉛直方向)に変位する接触部材105との間の距離を短くする必要がある。また傾動の支点部103の位置を傾動台102の中心とすると、傾動動作に伴う被検査物の上下方向および左右方向の変位を小さくすることができ、調整が容易になるとされている。これに対して、傾動台102の中央に載せた被検査物に検査光を照射して、被検査物を透過した検査光を傾動台102の下方より分析する場合においては、傾動台102及び基台101に前記検査光を通過させるための開口を設ける必要がある。その場合、基台101の中心には開口があるので、傾動台102の支点部103を配置することができないことから、その点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、傾動台の中心を傾動中心とすることが可能であり、しかも傾動装置を大型化させずに傾動台の傾動角度を大きくすることができる傾動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る傾動装置では、基台の上方に所定間隔をもって配置された傾動台を備えた傾動装置であって、基台に対して傾動台を傾動可能に支持する傾動台支持部と、傾動台と基台との間で、基台の上面に対して略平行となる方向に延在するとともに、その延在方向に伸縮可能な一対の駆動体と、一対の駆動体のそれぞれに対応して設けられ、各駆動体の伸縮による第1の変位を、自身の変形により基台の上面に略直交する方向に拡大させるとともに、この拡大による第2の変位を傾動台に伝える伝達部を有する変位拡大部材とを備え、傾動台及び基台には、それぞれに同軸に貫通する開口部が形成されてなり、傾動台支持部は、基台の開口部に同軸に設けられた筒状の支柱と、基台の上面に平行であって支柱の中心軸線に直交する第1軸線を中心にして、支柱に対して回転可能に支持された回転体とを有し、傾動台は、回転体の中心軸線に直交する第2軸線を中心にして、回転体に対して回転可能に支持され、第1軸線と第2軸線とがなす角が交差することを特徴としている。
【0009】
本発明では、駆動体をその延在方向を基台に対して略平行に配置させ、駆動体の第1の変位を変位拡大部材によって基台の上面に対して略直交する方向に拡大することができるので、傾動台の傾動角度を大きくすることができる。さらに、駆動体の伸縮方向を傾動装置の厚さ方向に対して略直交する方向に向けて配置する構成であることから、傾動台と基台との間隔を小さくすることができ、傾動装置の小型化を図ることができる。
また、傾動装置を上下方向に貫通して形成される開口を使用し、例えば傾動台の開口部に載せた被検査物の上方から検査光を照射して、その被検査物を透過した検査光を基台の下方より分析することができる。
【0010】
また、本発明に係る傾動装置では、第1軸線と第2軸線とは同一平面内にあることが好ましい。
本発明によれば、傾動台における第1軸線と第2軸線の2軸線周りのそれぞれの回転中心を一致させることが可能となるので、変位拡大部材の上下方向の変位に対応して傾動台を傾動させることができ、その傾動精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る傾動装置では、伝達部は、傾動装置の平面視で第1軸線及び第2軸線のうちいずれか一方の軸線上に重なる位置に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、1つの駆動体の伸縮による変位が傾動台に作用する1つの軸線周りのみの回転(傾動)に対応するので、そのときの傾動が他方の軸線周りの傾動に影響を与えることがなく、傾動精度を向上させることができ、傾動制御が容易となる利点がある。
【0012】
また、本発明に係る傾動装置では、一端が基台に固定され、他端が傾動台に固定された付勢部材が設けられ、付勢部材による付勢力の方向は、第1軸線または第2軸線と交わる向きであって、基台と傾動台を近接または離間する方向に付勢することが好ましい。
本発明によれば、1つの付勢部材による付勢力が傾動台に作用する1つの軸線周りの回転力に対応するため、その付勢力が他方の軸線周りの傾動に影響を与えることのない傾動装置を実現することができる。
【0013】
また、本発明に係る傾動装置では、変位拡大部材には、駆動体をその伸縮方向に押圧する押圧部材を設けていてもよい。
本発明によれば、最も収縮した状態の駆動体に対して、押圧部材によってその延在方向に圧縮力を加えておくことができるので、駆動体の全伸縮範囲にわたって変位拡大部材を追従させて動かすことができる。
【0014】
また、本発明に係る傾動装置では、変位拡大部材は、弾性ヒンジと、駆動体の変位を受けたときに弾性ヒンジを支点として変形する変形部と、変形部に一体に設けられるとともに変形部から離れる方向の先端側に伝達部を有するアーム部とを備えていることが好ましい。
本発明によれば、駆動体による第1の変位に伴って、変形部が弾性ヒンジを支点として回動するようにして変形し、その変形部に一体に設けられたアーム部も回動する。このとき、伝達部が回動するアーム部の先端側に位置することから、伝達部の第2の変位が第1の変位に比べて十分に拡大したものとなり、傾動台の傾動角度を大きくすることができる。
【0015】
また、本発明に係る傾動装置では、傾動台には、伝達部が対応する位置において、傾動台の下面からの突出量を調整可能な突出部材を設けていてもよい。
本発明によれば、突出部材の突出量を調整することで、伝達部の位置に対応して傾動台の傾動角度を適宜設定することが可能となる。例えば駆動体の伸縮範囲における中間長さの状態で、傾動台を基台に対して平行となるように調整することで、駆動体の伸縮範囲を有効に使って傾動台を上下方向に傾動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の傾動装置によれば、駆動体の第1の変位を変位拡大部材によって基台の上面に対して略直交する方向に拡大することができるので、装置を大型化させずに傾動台の傾動角度を大きくすることができる。また、傾動台支持部には傾動台と基台とを貫通する開口が設けられるので、その開口を用いて傾動台上の被検査物等に対する検査光を通過させた検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態による傾動装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す傾動台を省略した傾動装置の平面図である。
【図3】傾動装置の側面図であって、図2に示すA−A線矢視図である。
【図4】図2に示すB−B線断面図である。
【図5】傾動台支持部の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5に示す傾動台支持部を組み立てた状態の側面図である。
【図7】図6に示すC−C線断面図である。
【図8】傾動台を一方向に傾斜させた状態を示す側面図である。
【図9】図8に示すD−D線断面図である。
【図10】傾動台を他方向に傾斜させた状態を示す側面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による傾動装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】図11に示す傾動台を省略した傾動装置の平面図である。
【図13】図11に示す変位拡大部材と圧電素子の正面図である。
【図14】図13に示すE−E線断面図である。
【図15】変位拡大部材の変形状態を示す図である。
【図16】従来の傾動装置の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態による傾動装置について、図1乃至図10に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による傾動装置を示す斜視図、図2は図1に示す傾動台を省略した傾動装置の平面図、図3は傾動装置の側面図であって、図2に示すA−A線矢視図、図4は図2に示すB−B線断面図、図5は傾動台支持部の構成を示す分解斜視図、図6は図5に示す傾動台支持部を組み立てた状態の側面図、図7は図6に示すC−C線断面図、図8は傾動台を一方向に傾斜させた状態を示す側面図、図9は図8に示すD−D線断面図、図10は傾動台を他方向に傾斜させた状態を示す側面図である。
なお、これら図1〜図10においては、以下の説明に関係のない部材は一部省略している。
【0019】
図1に示す本第1の実施の形態による傾動装置1は、平板状のサンプル支持板(以下、傾動台2とする)上に支持された被検査物の表面形状や透過波面を検査する検査装置(図示省略)に用いられるものである。この検査装置は、傾動台2の上方、或いは下方から図示しない検査光を照射し、その反射光や透過光等を検出装置で測定することにより、被検査物の表面形状や透過波面を検査するものである。そして、被検査物の表面形状や透過波面を検査する時に、傾動台2を傾動させることにより、検査光に対する被検査物の傾きの調整を行うように構成されている。
【0020】
図1乃至図4に示すように、傾動装置1は、基台3の上方に所定間隔をもって配置された傾動台2と、基台3の上面3aの略中央に配置されるとともに基台3に対して傾動台2を傾動可能に支持する傾動台支持部4と、傾動台2と基台3との間で、基台3の上面3aに対して略平行となる方向に延在するとともに、その延在方向に伸縮可能な一対の圧電素子5(5A、5B)(駆動体)と、この一対の圧電素子5A、5Bのそれぞれに対応して設けられ、各圧電素子5の伸縮による変位(第1の変位)を自身の変形により基台3の上面3aに略直交する方向(傾動装置1の略厚さ方向)に拡大させるとともに、この拡大による変位(第2の変位)を傾動台2に伝達する変位拡大部材6(6A、6B)と、基台3に対して傾動台2を離反する方向に付勢する圧縮ばね7(7A、7B)(付勢部材)とを備えて概略構成されている。
【0021】
図5に示すように、傾動台2は、中央部に円形の開口部21(図1参照)が形成されており、この開口部21には後述する回動リング42(回転体)に取り付けられた第2回転軸部42b、42bを挿入させて回転可能に支持するための第2回転係合穴部21a、21aが設けられている。そのため、傾動台2の開口部21の内径寸法は、回動リング42の外径寸法より大きくなっている。なお、第2回転係合穴部21a、21aの中心軸線は、円形の開口部21の中心軸線に対して直交している。
【0022】
図3及び図4に示すように、傾動台2の下面2aの後述するV溝部66の上方に位置する部分には、先端が球状に加工された調整ねじ22(突出部材)が螺合されており、その球状頂部に位置する係止部22aがV溝部66により保持されている。
また、傾動台2の下面2aには、調整ねじ22(係止部22a)に対してそれぞれ後述する第1軸線X、または第2軸線Y(図2参照)を挟んで線対称となる位置に、それぞれ傾動台凹部23が形成されている。この第1軸線X、第2軸線Yは、円形の開口部21の中心軸線に直交する向きとなっている。そして、この傾動台凹部23には、下端7bが基台3に固定された圧縮ばね7を圧縮させた状態でその一端(上端7a)が固定され、ばねの両固定端における傾動台2と基台3とが離反する方向に付勢された状態で保持されている。圧縮ばね7による付勢方向(付勢力)は、符号7Aが後述する第1軸線、符号7Bが後述する第2軸線とそれぞれ交差する向きとなっている。
【0023】
基台3は、傾動装置1のベースをなし、平面視矩形の平板状に形成され、傾動台2に対して所定間隔をもって対向して配置されている。そして、基台3の中央部には、傾動台2の開口部21と同軸でその開口部21より小さい所定の大きさをもつ円形の開口部31が形成されている。
【0024】
このように、傾動装置1は、傾動台2と基台3とがそれぞれに形成された開口部21、31によって上下方向に貫通しているので、傾動台2に設けた開口部21上に配置された図示しない被検査物に対して上方から検査光等を照射し、その被検査物を透過した検査光を開口部21、31から基台3の下方に導くことが可能となる構成となっている。そして、図2に示すように、圧電素子5A、5B、変位拡大部材6A、6B、及び圧縮ばね7A、7Bは、これら両開口部21、31(図4参照)の周囲の位置に配置されている。具体的には、変位拡大部材6A、6Bは、基台3上の1つの隅部の位置と該隅部に隣り合う隣接隅部の位置とに配置され、この変位拡大部材6A、6Bに沿うようにして開口部31側に圧電素子5A、5Bがそれぞれ配置され、さらに開口部31を挟んだ位置に圧縮ばね7A、7Bがそれぞれ配置されている。そのため、前記検査光を傾動台2から基台3まで遮られずに傾動装置1を通過させることができ、本傾動装置1においては、この検査光を分析することにより、被検査物の検査等を行うことができる構成となっている。
【0025】
また、図4に示すように、基台3の上面3aにおいて、傾動台凹部23に対向する位置には、基台凹部32が形成されている。この基台凹部32には、一端(上端7a)が傾動台凹部23に固定された圧縮ばね7を圧縮させた状態でその下端7bが固定され、ばねの両固定端7a、7bにおける傾動台2と基台3とが離反する方向に付勢された状態で保持されている。
【0026】
次に、傾動台2の支点をなす傾動台支持部4について図面に基づいて説明する。
図4乃至図7に示すように、傾動台支持部4は、基台3の上面3a側に固定された開口部31と同軸をなす円筒状の支柱41と、支柱41の中心軸線に直交する第1軸線X(基台3の上面3aに平行であって支柱41に設けられた所定の軸線)を中心にして支柱41に対して回動(傾動)可能な回動リング42(回動体)とを有している。
支柱41には、第1軸線X方向において支柱41の上部側面から突出する一対の第1回転軸部41a、41aが設けられている。つまり、一対の第1回転軸部41a、41aは、支柱41の中心軸線を挟んで対向する位置に配置され、第1軸線Xを中心軸線として、それぞれが丸棒ピン状をなしている。
【0027】
回動リング42は、平面視円環状をなし、内径寸法が支柱41の外径寸法より大きく、支柱41の外周部に対して同軸に設けられている。そして、回動リング42には、支柱41の第1回転軸部41a、41aを回転可能に支持する第1回転係合穴部42a、42aが設けられるとともに、回動リング42の中心軸線に直交する第2軸線Y方向においてリング外周面から突出する一対の第2回転軸部42b、42bが設けられている。第2軸線Yを中心軸線とする丸棒ピン状の第2回転軸部42b、42bが上述した傾動台2の第2回転係合穴部21a、21aに挿嵌された状態で、第2軸線Yに対して傾動台2が回動リング42に対して回動可能に支持されている。
そして、上述した第1軸線Xと第2軸線Yは、互いになす角が交差(ここでは、90度)をなし、それぞれが同一平面内に位置している。
【0028】
なお、支柱41の第1回転軸部41a、41aには、リング状のスペーサ43、43(図5参照)が挿通されている。つまり、支柱41と回動リング42との間にスペーサ43が介挿されるので、支柱41に対する回動リング42の第1軸線X方向への移動が規制されるようになっている。
これにより、傾動台2は、基台3に対して、互いに直交する2つの軸線(第1軸線X、第2軸線Y)のそれぞれを中心にして回動可能(傾動可能)となっている。
【0029】
なお、図2に示すように、一対の圧電素子5A、5Bと一対の変位拡大部材6A、6Bとがそれぞれ対応する組になっており、それら2組のうち第1軸線X周りの傾動に関するものを第1傾動部10Aとし、第2軸線Y周りの傾動に関するものを第2傾動部10Bとして以下説明する。さらに、必要に応じて第1傾動部10Aに関する部材には符号Aを付し、一方、第2傾動部10Bに関する部材には符号Bを付す。
【0030】
次に、圧電素子5A、5Bの具体的な構成について図面に基づいて説明する。
図2及び図3に示すように、圧電素子5は、長方形の箱状に形成された積層構造をなしており、図示しない電圧発生装置によって印加する電圧が制御される。圧電素子5は、印加する電圧が大きくなるに従い、その長さが長手方向(延在方向に相当)に伸びる構造になっており、これにより、印加する電圧を制御することで伸縮動作が可能となっている。第1傾動部10Aにおける圧電素子5Aが第1軸線Xに平行な方向に延在し、第2傾動部10Bにおける圧電素子5Bが第2軸線Yに平行な方向に延在している。そして、各圧電素子5A、5Bは、基台3の上面3aから傾動台2側に僅かに離間した位置に配置されている。
【0031】
さらに、圧電素子5は、一端(基端部5a)が基台3上に固定された固定ベース8に接着され、他端(先端部5b)が変位拡大部材6の押圧部材65(後述する)に当接した状態で係止され、圧電素子5の伸縮により押圧部材65との接点が圧電素子5の延在方向に変位(第1の変位)する構成となっている。例えば圧電素子5が伸張したときには、その先端部5bが押圧部材65を押圧する方向に変位し、押圧部材65を押圧することになる。
【0032】
次に、変位拡大部材6の構成について図面に基づいて説明する。
図1乃至図3に示すように、変位拡大部材6は、略箱形状をなしていて一部が基台3に固定された本体部61と、この本体部61の側面から外方に向けて伸びる棒状のアーム部62とからなり、そのアーム部62の長手方向を圧電素子5の長手方向に略平行にして配置させた状態で、本体部61の一部に圧電素子5の先端部5bを後述する押圧部材65を介して係止させた構成となっている。これら本体部61及びアーム部62は、単一の部材から一体形成され、平面視(図2)が略L字形となっている。なお、本第1の実施の形態では、変位拡大部材6の部材として、ステンレス製板材等の金属製弾性部材が採用されている。
【0033】
本体部61は、その幅方向に沿った切込み溝63が形成されており、その切込み溝63を挟んで基端側(圧電素子5側と反対側)の下面6a(図3、図8参照)が基台3に固定されている。そして、切込み溝63の底部に位置する薄肉部には、弾性変形可能な弾性ヒンジ64が形成されている。つまり、本体部61は、弾性ヒンジ64を介して基端部61aと変形部61bとが一体に連結された構造となっている。そして、変形部61bの圧電素子5側の側面61cには、幅方向の一方側寄りにアーム部62が設けられるとともに、同じく他方側寄りに押圧部材65を介して圧電素子5の先端部5bが当接した状態で係止している。
押圧部材65は、先端65aが半球状に形成された押圧ねじであり、変形部61bに対して切込み溝63側からねじ込み、変形部61bの側面61cより突出させることで、その先端65aを圧電素子5の先端部5bに係止させて圧電素子5の伸縮力を本体部61に伝達させるためのものである。
【0034】
このように、変位拡大部材6は、基端部61aが基台3に固定されているので、変形部61bが弾性ヒンジ64を支点にして切込み溝63の溝幅を増減させるようにして屈曲可能となっている。なお、切込み溝63の加工としては、例えば放電加工を用いることができる。
【0035】
アーム部62は、無負荷時(本体部61が変形しない状態)において、その長手方向が基台3の上面3aに略平行になるように配置されており、その先端には傾動台2の下面2aから下方に突出した係止部22を下方から支持するV溝部66(伝達部)が設けられている。そして、アーム部62は、本体部61の変形部61bの屈曲に伴って回動し、V溝部66が略上下方向に移動する構成となっている。
【0036】
V溝部66の溝方向は、第1傾動部10Aにおける第1の変位拡大部材6Aでは第2軸線Y方向であり、第2傾動部10Bにおける第2の変位拡大部材6Bでは第1軸線X方向となっている。そして、弾性ヒンジ64とV溝部66との間の上下方向の距離は、弾性ヒンジ64と押圧部材65との間の距離に対して長くなっており、その比率に応じて圧電素子5の変位が拡大される構成となっている。そして、V溝部66の位置は、圧電素子5の変位方向に対して略90度の角度をもった略上下方向に拡大されて変位(第2の変位)する(変位した状態を図8乃至図10に示す)。
【0037】
図4に示すように、圧縮ばね7(7A、7B)は、上端7aを傾動台2の第1軸線X上または第2軸線Y上に位置する傾動台凹部23に固定させるとともに、下端7bを基台凹部32に固定させ、ばねの傾動台2側の固定端が位置する第1軸線Xまたは第2軸線Yに対して、基台3を離間する方向に付勢する構成となっている。つまり、圧縮ばね7A、7Bのそれぞれの傾動台支持部4を挟んで反対側の位置において、傾動台2と基台3との間が常に圧縮した状態で保持されることから、各圧縮ばね7の張力により、調整ねじ22の係止部22aがV溝部66に対して常に当接した状態となっている(図2参照)。
このようにしてV溝部66と係止部22aとが係合することで、傾動台2の第1軸線X方向、及び第2軸線Y方向への移動が規制され、傾動台2がずれることなく支持され、高精度な傾動装置1を実現することができる構成となっている。
【0038】
次に、このように構成される傾動装置1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2及び図3は、圧電素子5の初期状態H0における傾動装置1の状態を示す図である。初期状態H0においては、押圧部材65が圧電素子5の先端部5bに当て付き、その押圧力による本体部61の変形によりアーム部62の長手方向が基台3の上面に対して傾いた状態になっている。また、圧電素子5には、図示しない電圧発生装置により所定の電圧が加えられている。図示しない電圧発生装置で圧電素子5に加える電圧を上げると、図8及び図9に示すように、圧電素子5が延在方向に伸張して圧電素子5の先端部5bの位置が押圧部材65側に所定の伸びだけ変位する。続いて、押圧部材65が押圧されると、薄肉で変形し易い弾性ヒンジ64を支点として本体部61の変形部61bが切込み溝63の幅寸法を小さくする方向(矢印E1方向)に回動するようにして変形する。そして、変形部61bの変形に伴って、アーム部62も弾性ヒンジ64を支点にして先端のV溝部66が上方に持ち上がる方向に回動する。このときのV溝部66における上方への変位(第2の変位)は、圧電素子5の変位(第1の変位)を拡大したものとなる。
【0039】
続いて、変位拡大部材6A、6BのそれぞれのV溝部66の変位により、傾動台2の調整ねじ22の係止部22aが上向きに押され、この動作により、傾動台2が圧縮ばね7をその付勢に抗して圧縮させながら基台3に対して傾斜することになる。つまり、図2に示すように、第1傾動部10Aにおいては、傾動台支持部4の第1回転軸部41aを支点として係止部22aが上がる方向に第1軸線X周りに回動する。また、図示しないが、第2傾動部10Bにおいては、傾動台支持部4の第2回転軸部42bを支点として係止部22aが上がる方向に第2軸線Y周りに回動する。このとき、傾動台支持部4は、変位拡大部材6の第2の変位に追従させて傾動台2を2軸線(第1軸線X、第1軸線Y)を中心に回動(傾動)させるための支点として機能することになる。
【0040】
また、図2、図3及び図10に示すように、図3に示す初期状態H0からV溝部66における傾動台2を下げる方向に傾動させる場合には、図示しない電圧発生装置によって圧電素子5に印加される電圧を下げることで、圧電素子5を延在方向に収縮させる。これにより、圧電素子5の先端部5bの位置が押圧部材65側から離反する方向に変位する。続いて、押圧部材65は初期状態H0において圧電素子5によって予圧された状態であるので、前記収縮による圧電素子5の変位に対して押圧部材65が追従する。そのため、弾性ヒンジ64を支点として本体部61の変形部61bが切込み溝63の幅寸を元に戻す方向に回動するようにして変形する。そして、変形部61bの変形に伴って、アーム部62も弾性ヒンジ64を支点にして先端のV溝部66が下がる方向(矢印E2方向)に回動する。このときのV溝部66における下方への変位(第2の変位)は、圧電素子5の変位(第1の変位)を拡大したものとなる。
次いで、変位拡大部材6のV溝部66の下向きの変位により、傾動台2が圧縮ばね7A、7Bの付勢により傾動台支持部4を支点にして基台3に対して傾動することになる。
【0041】
本傾動装置1では、第1軸線Xと第2軸線Yとが同一平面内にあり、傾動台2における第1軸線Xと第2軸線Yの2軸線周りのそれぞれの回転中心を一致させることが可能となるので、変位拡大部材6によるV溝部66の上下方向の変位に対応して傾動台2を傾動させることができ、その傾動精度を向上させることができる。
また、V溝部66は、平面視で第1軸線X及び第2軸線Yのうちいずれか一方の軸線上に重なる位置であることから、1つの圧電素子5の伸縮による第1の変位が傾動台2に作用する1つの軸線周りのみの回転(傾動)に対応するので、そのときの傾動が他方の軸線周りの傾動に影響を与えることがなく、傾動精度を向上させることができ、傾動制御が容易となる利点がある。
さらに、1つの付勢部材7による付勢力が傾動台2に作用する1つの軸線周りの回転力に対応するため、その付勢力が他方の軸線周りの傾動に影響を与えることのない傾動装置を実現することができる。
【0042】
本傾動装置1では、押圧部材65のねじ込み量を適宜調整することで、変形部61bの側面61cに対する突出量を調整することができる。具体的には、押圧部材65を圧電素子5に向かうようにしてねじ込んでいくと、所定箇所で押圧部材65の先端が圧電素子5に接触し、その状態からさらに押圧部材65をねじ込むと、アーム部62が図8に矢印E1で示す方向に変位していく。この状態においては、圧電素子5には、押圧部材65を通じて弾性ヒンジ64の反力と、圧縮ばね7による付勢力が圧縮力として加わる。圧電素子5が最も収縮した状態でもこの圧縮力が加わる状態となるように押圧部材65で調整することで、圧電素子5の全伸縮範囲にわたって変位拡大部材6が追従して動くことになる。
【0043】
また、第1傾動部10Aにおいて、圧電素子5の伸縮による傾動台2の第1軸線X周りの傾動範囲は調整ねじ22で調整される。例えば、圧電素子5に最大の半分の電圧を加えた状態で基台3に対して第2軸線Yが平行になるようにする場合には、圧電素子5に最大の半分の電圧を加えた状態で、基台3に対して第2軸線Yが平行になるように調整ねじ22を使って傾動台2の傾きを調整すれば良い。つまり、調整ねじ22の突出量を調整することで、V溝部66の位置に対応して傾動台2の傾動角度を適宜設定することが可能となり、上述したように圧電素子5の伸縮範囲における中間長さの半分を伸張させた状態で、傾動台2を基台3に対して平行となるように調整することで、圧電素子5の伸縮範囲を有効に使って傾動台2を上下方向に傾動させることができる。
【0044】
なお、ここまで第1軸線X周りの回転に関係する第1傾動部10Aの第1圧電素子5A、第1の変位拡大部材6A、第1圧縮ばね7Aについて説明してきたが、これは、第2軸線Y周りの回転に関係する第2傾動部10Bにおける第2圧電素子5B、第2の変位拡大部材6B、第2圧縮ばね7Bについても軸が異なる以外の構成、及び作用は同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0045】
また、本傾動装置1では、開口部21、31が設けられているので、その開口部の下方から傾動台2上の図示しない被検査物を測定することができる。
【0046】
上述のように本第1の実施の形態による傾動装置では、圧電素子5の第1の変位を変位拡大部材6によって基台3の上面3aに対して略直交する方向に拡大することができるので、装置を大型化させずに傾動台2の傾動角度を大きくすることができる。
また、傾動台支持部4には傾動台2と基台3とを貫通する開口が設けられるので、その開口を用いて傾動台2上の被検査物等に対する検査光を通過させた検査を行うことができる。
【0047】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
図11は本発明の第2の実施の形態による傾動装置の概略構成を示す斜視図、図12は図11に示す傾動台を省略した傾動装置の平面図、図13は図11に示す変位拡大部材と圧電素子の正面図、図14は図13に示すE−E線断面図、図15は変位拡大部材の変形状態を示す図である。
【0048】
図11に示す第2の実施の形態による傾動装置1Aは、第1の実施の形態の変位拡大部材6(図3参照)の構造を代えたものである。
図11及び図12に示すように、第2の実施の形態の傾動装置1Aは、第1の実施の形態と同様に傾動台2の平面視中央には厚さ方向に貫通する円形の開口部21が設けられ、基台3にも同様に前記開口部21に同軸となる開口部31が形成され、基台3の開口部31に固定された支柱41に対して支柱41の中心軸線に直交するX軸線(第1軸線X)を中心にして回転する回動リング42が設けられ、さらに傾動台2が回動リング42に対してX軸線に直交するY軸線(第2軸線Y)周りに回転するように傾動台支持部4が構成されている。そして、傾動台2と基台3との間で傾動台支持部4の周囲には、変位拡大部材9(9A、9B)、圧電素子5(5A、5B)、および圧縮ばね7(7A、7B)が配置されている。
なお、第1傾動部10Aの第1圧電素子5Aは第1軸線X方向に平行に配置され、第2傾動部10Bの第2圧電素子5Bは第2軸線Y方向に平行に配置されている。
【0049】
図13及び図14に示すように、第2の実施の形態による変位拡大部材9(9A、9B)は、同一部材からの連続した一体形成とされており、側面視で略パンタグラフ状をなす横長の八角形に形成した枠組み構造となっている。そして、変位拡大部材9の枠内に圧電素子5がその長手方向(伸縮方向)を横方向(基台3の上面3aに略平行な方向)に向けて配置させた構成となっている。さらに具体的に変位拡大部材9は、八角形をなす辺部に相当する剛体部91a、91b、…91hと、各剛体部91a、91b、…91hの角部に位置する弾性ヒンジ92a、92b、…92hとからなる。つまり、剛体部は、左右方向に対向する剛体側部91a、91bと、上下方向に対向する剛体上部91c、剛体下部91dと、剛体側部91a、91b及び剛体上下部91c、91dに隣接して斜め方向に配される剛体斜部91e、91f、91g、91hとからなる。
【0050】
そして、剛体部91a〜91h同士の隣り合う連続部には外周側に開口する切込みが設けられ、その切込みの底部に弾性ヒンジ92a、92b、92c、92d、92e、92f、92g、92hが形成されている。これにより、変位拡大部材9は、上下方向(圧電素子5の延在方向を含む基台3に平行な面に直交する方向)及び左右方向(圧電素子5の延在方向)に撓む変形が可能となっている。
【0051】
剛体下部91dは、基台3の上面3aの、支柱41の中心軸線に対して所定の距離だけ離れた支柱41の外側の所定位置に固定されている。そして、剛体上部91cの上面には、V溝部93が形成されており、このV溝部93が傾動台2の下面から突出する係止部22aに係止することで、変位拡大部材9は傾動台2を下方より支持する構成となっている。
図12に示すように、V溝部93の溝方向は、第1傾動部10Aにおける第1変位拡大部材9Aでは第2軸線Y方向に平行であり、第2傾動部10Bにおける第2変位拡大部材9Bでは第1軸線X方向に平行となっている。
【0052】
そして、対向する剛体側部91a、91b同士の間には、基端部5aを一方の剛体側部91aに固定し、先端部5bが押圧部材94を介して他方の剛体側部91bに固定した圧電素子5がその延在方向を剛体側部91a、91b同士の離間方向に向けて配置されている。なお、上述した一方(図13、図14では左側)の剛体側部91bには、先端が球状に加工されたねじ部材をなす押圧部材94が剛体部内側に向けてねじ込まれており、ねじ先端部94aが圧電素子5の先端部5bに当接するようになっている。この状態において、圧電素子5は、剛体上下部91c、91dに対して所定の間隔をもった状態で配置される。その後、本傾動装置1Aの使用に先立って圧電素子5に所定の電圧が印加され、圧電素子5が所定量伸張された状態となる。この状態を初期状態H0(図13参照)とする。
【0053】
これにより本傾動装置1Aの使用に際しては、圧電素子5の伸縮に伴って、剛体側部91a、91b同士が近接離反する方向(左右方向)に変位し、これに伴って剛体上下部91c、91dも上下方向に移動することになるが、剛体下部91dが基台3に固定されているので、剛体上部91cのみが上下方向に移動し、傾動台2を傾動台支持部4を支点にして傾動させる構成となっている。
【0054】
次に、第2の実施の形態による傾動装置1Aの作用について説明する。
なお、図15に示すに二点鎖線は、傾動台2に被検査物を配置して検査する際に先立って、圧電素子5に所定の電圧が加えられた初期状態H0の変位拡大部材9の外形輪郭を表している。
図15に示すように、圧電素子5に電圧が加えられて伸張すると、両剛体側部91a、91bが離間する方向に移動する。このときの圧電素子5の伸張量をNとすると、両剛体側部91a、91bの移動量はそれぞれN/2となる。これにより、変位拡大部材9は、各弾性ヒンジ9a〜9hが撓むことで変形する。そして、変位拡大部材9の変形による拡大量は、圧電素子5の伸縮方向に対する剛体斜部91e〜91hの傾斜角度が小さいほど大きくなる。
【0055】
圧電素子5の変位は、変位拡大部材9の剛体上部91cの変位(第2の変位)として出力され、その方向は圧電素子5の伸縮方向に対してその伸縮方向を含む面に直交する方向となる。その剛体上部91cの変位量Pは、圧電素子5の変位量よりも大きくなり、変位拡大部材9が変位を拡大する機構として機能する。図15に示すように、圧電素子5が伸張したときには、変位拡大部材9全体が左右方向(圧電素子5の伸縮方向)に伸張するように撓み、圧電素子5の伸縮量に対して拡大された量で、剛体上部91cが下方向に移動する。一方、図示しないが、圧電素子5が収縮したときには、変位拡大部材9全体が左右方向(圧電素子5の伸縮方向)に縮小するように撓み、圧電素子5の収縮量に対して拡大された量で、剛体上部91cが上方向に移動する。
そして、図11に示すように、剛体上部91cの移動に伴って、V溝部93に係止する係止部22aを介して傾動台2を傾動させることができ、第1傾動部10Aにおいては傾動台2を第1軸線X周りに回動させて傾動させ、また第2傾動部10Bにおいては傾動台2を第2軸線Y周りに回動させて傾動させる。
【0056】
なお、本第2の実施の形態による変位拡大部材9の幅寸法(図14に示す符号Q)が、上述した第1の実施の形態による変位拡大部材6の幅寸法(図2に示すQ´参照)より小さくすることができる。そのため、傾動装置1Aの横幅寸法を小さくすることができる。また、傾動装置1Aの横幅寸法を第1の実施の形態と同じにした場合には、傾動装置1Aの平面視中央に設けた傾動台支持部4の支柱41の外径寸法をさらに大きくすることができ、基台3から傾動台2にわたる範囲で開けられた開口をより大きくすることが可能となる。
【0057】
以上、本発明による傾動装置の第1及び第2の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では駆動体として積層型の圧電素子5を採用しているが、これに限定されることはなく、例えば磁歪素子等の他の固体状の変形素子を用いてもよい。
また、本実施の形態においては、圧縮ばね7の付勢力の方向を基台3の上面3aに対して略直交する方向としているが、これに限るものではなく、例えば圧縮ばね7の付勢力の方向が第1軸線X、或いは第2軸線Yに向かう方向であれば同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、付勢手段として圧縮ばね7を使用し、この圧縮ばね7は傾動台2のV溝部66に対応する位置(調整ねじ22が配置される位置)に対して、傾動台支持部4を挟んで反対側に設けているが、これに限定されることはなく、例えば、調整ねじ22と傾動台支持部4との間の位置において引張ばねを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1、1A 傾動装置
2 傾動台
2a 下面
3 基台
4 傾動台支持部
5、 5A、5B 圧電素子(駆動体)
5b 先端部
6、 6A、6B 変位拡大部材
7、7A、7B 圧縮ばね(付勢部材)
9、9A、9B 変位拡大部材
10A 第1傾動部
10B 第2傾動部
21 開口部
22 調整ねじ(突出部材)
22a 係止部
31 開口部
41 支柱
42 回動リング(回転体)
61 本体部
61b 変形部
62 アーム部
63 切込み溝
64 弾性ヒンジ
65 押圧部材
66 V溝部(伝達部)
H0 初期状態
X 第1軸線
Y 第2軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の上方に所定間隔をもって配置された傾動台を備えた傾動装置であって、
前記基台に対して前記傾動台を傾動可能に支持する傾動台支持部と、
前記傾動台と前記基台との間で、前記基台の上面に対して略平行となる方向に延在するとともに、その延在方向に伸縮可能な一対の駆動体と、
該一対の駆動体のそれぞれに対応して設けられ、各駆動体の伸縮による第1の変位を、自身の変形により前記基台の上面に略直交する方向に拡大させるとともに、この拡大による第2の変位を前記傾動台に伝える伝達部を有する変位拡大部材と、
を備え、
前記傾動台及び前記基台には、それぞれに同軸に貫通する開口部が形成されてなり、
前記傾動台支持部は、前記基台の開口部に同軸に設けられた筒状の支柱と、前記基台の上面に平行であって前記支柱の中心軸線に直交する第1軸線を中心にして、前記支柱に対して回転可能に支持された回転体とを有し、
前記傾動台は、前記回転体の中心軸線に直交する第2軸線を中心にして、前記回転体に対して回転可能に支持され、
前記第1軸線と前記第2軸線とがなす角が交差することを特徴とする傾動装置。
【請求項2】
前記第1軸線と前記第2軸線とは同一平面内にあることを特徴とする請求項1に記載の傾動装置。
【請求項3】
前記伝達部は、前記傾動装置の平面視で前記第1軸線及び前記第2軸線のうちいずれか一方の軸線上に重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の傾動装置。
【請求項4】
一端が前記基台に固定され、他端が前記傾動台に固定された付勢部材が設けられ、
該付勢部材による付勢力の方向は、前記第1軸線または前記第2軸線と交わる向きであって、前記基台と前記傾動台を近接または離間する方向に付勢することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の傾動装置。
【請求項5】
前記変位拡大部材には、前記駆動体をその伸縮方向に押圧する押圧部材を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の傾動装置。
【請求項6】
前記変位拡大部材は、弾性ヒンジと、前記駆動体の変位を受けたときに前記弾性ヒンジを支点として変形する変形部と、該変形部に一体に設けられるとともに前記変形部から離れる方向の先端側に前記伝達部を有するアーム部とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の傾動装置。
【請求項7】
前記傾動台には、前記伝達部が対応する位置において、前記傾動台の下面からの突出量を調整可能な突出部材を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の傾動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−165303(P2010−165303A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9073(P2009−9073)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】