説明

光ファイバプローブ、流動現象計測装置および流動現象計測方法

【課題】液層中の気泡または気層中の液滴の径が小さい場合にも流動現象を高精度に計測することができる装置,方法,光ファイバプローブを提供する。
【解決手段】流動現象計測装置1は、光ファイバプローブ10,光源部20,受光部30および解析部40を備える。光ファイバプローブ10は、第1端11aと第2端11bとの間に延在する光ファイバ11が加工されて構成されたもので、その第1端11a側において第1検知部14および第2検知部15を有する。第1検知部14および第2検知部15それぞれは、ファイバ軸方向について互いに離間した位置に設けられている。第1検知部14および第2検知部15それぞれでは、光ファイバ10の第2端11bから第1端11aに向かう導波光の反射率が接触物の屈折率によって異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動現象を計測する装置および方法、ならびに、これら装置または方法において用いられる光ファイバプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉、バイオリアクター、化学反応装置、熱交換器、燃料電池およびエンジン等の、気体と液体とが混在する流動現象を有する機器において、その機器内における流動現象(液層中の気泡または気層中の液滴の様相)を計測することは、その機器における安定した動作や反応を確保する上で重要である。
【0003】
液層中の気泡の計測について説明すると以下のとおりである。気泡界面速度および気泡弦長を同時に計測するには、複数本のプローブを組み合わせて使用することで可能である。しかし、このように複数本のプローブを用いる場合には、幾何学的形状の制約により、計測可能な最小気泡径に限界があった。そこで、このような問題を解消することを意図した発明が特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示された発明では、ファイバ軸に垂直な方向に対して傾斜している端面を有する光ファイバを気泡検出用の光ファイバプローブとして用い、測定対象物である気泡が該端面を通過する際の同端面で反射される光の強度の時間的変化を計測し、その計測結果に基づいて該気泡の並進速度、界面速度、気泡弦長および気泡体積率を同時に求めることができるというものである。この発明では、1本の光ファイバプローブを用いて、気泡の並進速度、界面速度、気泡弦長および気泡体積率を同時に計測することができる。
【特許文献1】特開2000−136962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、液層中の気泡または気層中の液滴の径が小さい場合に測定精度が悪いという問題があることを、本発明者は見出した。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、液層中の気泡または気層中の液滴の径が小さい場合にも流動現象を高精度に計測することができる装置および方法、ならびに、これら装置または方法において好適に用いられる光ファイバプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ファイバプローブは、コア部およびクラッド部を有する光ファイバの第1端側において、ファイバ軸方向について互いに離間した第1位置および第2位置それぞれに、光ファイバの第2端から第1端に向かう導波光の反射率が接触物の屈折率によって異なる第1検知部および第2検知部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光ファイバプローブにおいて、第1検知部または第2検知部は、光ファイバの第1端においてファイバ軸方向に垂直な面に対して傾斜している傾斜面を有するものであるのが好適であり、或いは、光ファイバのクラッド部が一部領域において除去されたものであるのが好適であり、或いは、光ファイバのクラッド部が一部領域において屈折率を変化させられたものであるのが好適である。
【0009】
本発明に係る光ファイバプローブ製造方法は、上記の本発明に係る光ファイバプローブを製造する方法であって、光ファイバの第1位置または第2位置に対してフェムト秒レーザ光を照射して加工をすることによって第1検知部または第2検知部を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る流動現象計測装置は、上記の本発明に係る光ファイバプローブと、光を出力する光源部と、この光源部から出力される光を導いて光ファイバプローブの第2端に入力させる入力光学系と、光ファイバプローブの第2端から出力される光を導く出力光学系と、出力光学系により導かれた光を受光して当該受光強度に応じた値の電気信号を出力する受光部と、受光部から出力される電気信号の値の時間的変化に基づいて光ファイバプローブの第1端の周辺の流動現象を解析する解析部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る流動現象計測方法は、上記の本発明に係る光ファイバプローブの第1端を測定対象物の流動体に挿入して、光源部から出力される光を光ファイバプローブの第2端に入力させ、光ファイバプローブの第2端から出力される光を受光部により受光して当該受光強度に応じた値の電気信号を受光部から出力させ、受光部から出力される電気信号の値の時間的変化に基づいて光ファイバプローブの第1端の周辺の流動現象を解析する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る流動現象計測装置または流動現象計測方法では、光源部から出力された光は、光ファイバプローブの第2端に入力され、光ファイバプローブにより導波されて第1端側の第1検知部および第2検知部に達し、第1検知部および第2検知部それぞれで反射される。このときの反射率は、第1検知部および第2検知部それぞれに接しているものの屈折率によって異なり、例えば、液体および気体の何れが接しているかによって異なる。第1検知部および第2検知部それぞれで反射された光は、光ファイバプローブにより逆方向に導波され、光ファイバプローブの第2端から出力され、受光部により受光される。受光部から当該受光強度に応じた値の電気信号が出力される。そして、受光部から出力される電気信号の値の時間的変化に基づいて光ファイバプローブの第1端の周辺の流動現象が解析される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液層中の気泡または気層中の液滴の径が小さい場合にも流動現象を高精度に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る流動現象計測装置1の構成例を示す図である。この図に示される流動現象計測装置1は、光ファイバプローブ10,光源部20,受光部30および解析部40を備える。また、流動現象計測装置1は、光ファイバプローブ10,光源部20および受光部30の間の光学系を構成する要素として、光分岐器51,集光系52および偏光子53を備える。
【0016】
光ファイバプローブ10は、第1端11aと第2端11bとの間に延在する光ファイバ11が加工されて構成されたもので、その第1端11a側において第1検知部14および第2検知部15を有する。第1検知部14および第2検知部15それぞれは、ファイバ軸方向について互いに離間した位置に設けられている。第1検知部14および第2検知部15それぞれでは、光ファイバ10の第2端11bから第1端11aに向かう導波光の反射率が接触物の屈折率によって異なる。光ファイバプローブ10の詳細については後述する。
【0017】
光源部20は、光ファイバプローブ10の第2端11bに入力されるべき光をコリメートして出力するものである。光源部20は、単色光を出力する光源であるのが好ましく、レーザ光源であるのが更に好ましい。
【0018】
光分岐器51は、光源部20から出力されて到達した光を集光系52へ出力し、また、集光系52から到達した光を偏光子53へ出力する。集光系52は、光分岐器51から到達した光を集光して光ファイバプローブ10の第2端11bの端面におけるコア部に入力させ、また、光ファイバプローブ10の第2端11bの端面におけるコア部から発散して出力されて到達した光をコリメートして光分岐器51へ出力する。偏光子53は、光分岐器51から到達した光を入力し、その入力した光のうち特定の直線偏光成分を選択的に透過させることで散乱光成分を除去して、その透過させた特定の直線偏光成分の光を受光部30の光検出器31へ出力する。
【0019】
光源部20から光分岐器51および集光系52を経て光ファイバプローブ10の第2端11bに至るまでの光学系は、光源部20から出力される光を導いて光ファイバプローブ10の第2端11bに入力させる入力光学系を構成している。また、光ファイバプローブ10の第2端11bから集光系52および偏光子53を経て受光部30の光検出器31に至るまでの光学系は、光ファイバプローブ10の第2端11bから出力される光を光検出器31まで導く出力光学系を構成している。
【0020】
受光部30は、出力光学系により導かれた光を受光して当該受光強度に応じた値の電気信号を解析部40へ出力する。受光部30は、光検出器31,検出回路32,高圧電圧33,アンプ電源34およびシールドケース35を含む。光検出器31は、高感度測定が可能でものであるのが好ましく、例えば光電子増倍管やフォトトランジスタ等である。以下では光検出器31は光電子増倍管であるとする。検出回路32は、高圧電源33から供給される高圧直流電圧を光電子増倍管31の各電極に対して印加するとともに、受光に応じて光電子増倍管31から出力される電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を解析部40へ出力する。アンプ電源34は、検出回路32において電流信号から電圧信号へ変換するアンプを駆動するための電力を供給する。また、光電子増倍管31はシールドケース35により保護されている。
【0021】
解析部40は、受光部30から出力される電気信号の値の時間的変化に基づいて光ファイバプローブ10の第1端11aの周辺の流動現象を解析する。解析部40は、A/D変換器41および計算部42を含む。A/D変換器41は、受光部30の検出回路32から出力される電圧信号(アナログ信号)を入力し、その電圧信号をデジタル信号に変換して、そのデジタル信号を計算部42へ出力する。計算部42は、A/D変換器41から出力されるデジタル信号を入力して、そのデジタル信号の値の時間的変化に基づいて光ファイバプローブ10の第1端11aの周辺の流動現象を解析する。計算部42における処理内容の詳細については後述する。
【0022】
図2は、本実施形態に係る光ファイバプローブ10の構成例を示す図である。同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。この図に示される光ファイバプローブ10は、第1端11aと第2端11bとの間に延在する光ファイバ11が加工されて構成されたものである。光ファイバ11は、コア部12と、そのコア部12を取り囲むクラッド部13とを有する。コア部12の屈折率は、クラッド部13の屈折率より高い。光ファイバ11は、例えば石英ガラス(SiO)を主成分としていて、コア部12に屈折率上昇剤(例えばGeO)が添加されている。
【0023】
光ファイバ11の第1端11a側は、先端(第1位置)に近いほど断面積が小さくなるように円錐形状に引き伸ばされて、ファイバ軸方向に垂直な面に対して傾斜している傾斜面が形成されていて、これにより第1検知部14が構成されている。また、光ファイバ11の第1端11a側(好適には、円錐形状とされた範囲)の何れかの位置(第2位置)において、光ファイバ11のクラッド部13が一部領域において除去されていて、これにより第2検知部15が形成されている。この第2検知部15は、フェムト秒レーザ光を照射して微細加工をすることによって形成されるのが好適である。なお、光ファイバプローブ10の第2端11bでは、その端面はファイバ軸に対して垂直となっている。
【0024】
図3は、本実施形態に係る光ファイバプローブ10の他の構成例を示す図である。同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。図2に示されたものと比較すると、この図3に示される光ファイバプローブ10では、光ファイバ11の第1端11a側(好適には、円錐形状とされた範囲)の何れかの位置(第2位置)において、光ファイバ11のクラッド部13が一部領域において屈折率を変化させられていて、これにより第2検知部15が形成されている点で相違する。
【0025】
図2および図3の何れに示された光ファイバプローブ10においても、第1検知部14および第2検知部15それぞれは、ファイバ軸方向について互いに離間した位置に設けられている。第1検知部14と第2検知部15との間の距離は、測定対象物である気泡または液滴の径に応じて適切に設定される。
【0026】
また、図2および図3の何れに示された光ファイバプローブ10においても、第1検知部14および第2検知部15それぞれでは、光ファイバ10の第2端11bから第1端11aに向かう導波光の反射率が接触物の屈折率によって異なる。すなわち、第1検知部14に接しているものが液体であるときには、第2端11bから第1端11aに向かう導波光は第1検知部14において液体中に漏れ易いので、第1検知部14における反射率は相対的に小さい。これに対して、第1検知部14に接しているものが気体であるときには、第2端11bから第1端11aに向かう導波光は第1検知部14において気体中に漏れ難いので、第1検知部14における反射率は相対的に大きい。第2検知部15においても同様である。
【0027】
次に、本実施形態に係る流動現象計測装置1の動作の概略について説明する。光源20から出力された光は、光分岐器51および集光系52を含む入力光学系により導かれて、光ファイバプローブ10の第2端11bの端面におけるコア部12に集光され、コア部12内に入力される。第2端11bにおいてコア部12内に入力された光は、第2端11bから第1端11aに向かって導波して、第1検知部14および第2検知部15それぞれで反射される。
【0028】
第1検知部14および第2検知部15それぞれで反射された光は、第2端11bに向かって導波して、第2端11bから外部へ出力される。光ファイバプローブ10の第2端11bの端面から出力された反射光は、集光系52および偏光子53を含む出力光学系により導かれて、受光部30により受光される。その受光強度に応じた値の電気信号が受光部30から解析部40へ出力される。そして、解析部40において、受光部30から出力された電気信号の値の時間的変化に基づいて、光ファイバプローブ10の第1端11aの周辺の流動現象が解析される。
【0029】
前述したように、第1検知部14に液体が接しているときには第1検知部14における反射率は小さく、第1検知部14に気体が接しているときには第1検知部14における反射率は大きい。同様に、第2検知部15に液体が接しているときには第2検知部15における反射率は小さく、第2検知部15に気体が接しているときには第2検知部15における反射率は大きい。
【0030】
光ファイバプローブ10の第1検知部14および第2検知部15を含む一定範囲が気液二相流の主流方向に対して平行に設置され、液層中の気泡が第1検知部14側から第2検知部15側へ移動していくとする。気泡が第1検知部14に接触すると、第1検知部14で反射される光の強度が増加し、受光部30から出力される電気信号の値が増加する。さらに、気泡が第2検知部15に接触すると、第2検知部15で反射される光の強度が増加し、受光部30から出力される電気信号の値が増加する。
【0031】
気泡界面が第1検知部14を通過し離脱することで、第1検知部14が液体に接触し、第1検知部14で反射される光の強度が減少し、受光部30から出力される電気信号の値が減少する。また、気泡界面が第2検知部15を通過し離脱することで、第2検知部15が液体に接触し、第2検知部15で反射される光の強度が減少し、受光部30から出力される電気信号の値が減少する。また、受光部30から出力される電気信号の値の時間的変化は、ファイバ軸方向における第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPおよび測定対象物である気泡の径DBに依存する。
【0032】
したがって、解析部40において、受光部30から出力される電気信号の値の増減に基づいて、第1検知部14に接しているものが液体から気体に変化する時刻t11、第1検知部14に接しているものが気体から液体に変化する時刻t12、第2検知部15に接しているものが液体から気体に変化する時刻t21、および、第2検知部15に接しているものが気体から液体に変化する時刻t22 が判定される。さらに、これらの時刻および距離LPに基づいて、液層中の気泡または気層中の液滴の並進速度,界面速度,弦長および体積率が得られる。
【0033】
次に、解析部40における処理内容の詳細について説明する。以下では、第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPと気泡径DBとの大小関係に応じて2つの場合に分けて説明する。図4は、「LP>DB」の場合に受光部30から出力される電気信号の値の時間的変化の一例を示す図である。図5は、「LP<DB」の場合に受光部30から出力される電気信号の値の時間的変化の一例を示す図である。なお、これらの図には、各時刻における第1検知部14,第2検知部15および気泡90それぞれの位置関係も示されている。
【0034】
図4に示されるように、第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPが気泡径DBより大きい場合、受光部30から出力される電気信号の値は、第1検知部14に気泡90が接する時刻t11に増加し、第1検知部14から気泡90が離脱する時刻t12に減少し、第2検知部15に気泡90が接する時刻t21に再び増加し、第2検知部15から気泡90が離脱する時刻t22に減少する。なお、この場合、「t11<t12<t21<t22」である。
【0035】
図5に示されるように、第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPが気泡径DBより小さい場合、受光部30から出力される電気信号の値は、第1検知部14に気泡90が接する時刻t11に増加し、第2検知部15に気泡90が接する時刻t21に更に増加し、第1検知部14から気泡90が離脱する時刻t12に減少し、第2検知部15から気泡90が離脱する時刻t22に更に減少する。なお、この場合、「t11<t21<t12<t22」である。
【0036】
すなわち、受光部30から出力される電気信号の値の時間変化のパターンが図4および図5の何れであるかによって、距離LPと気泡径DBとの大小関係が判別される。また、その電気信号の値が増減する時刻t11,t12,t21およびt22に基づいて、以下のようにして、気泡の並進速度,界面速度,弦長および体積率が得られる。
【0037】
気泡90が距離LPを移動するのに時間(t21−t11)を要するのであるから、気泡界面速度UBは「UB=LP/(t21−t11)」なる式で得られる。気泡90が第1検知部14を通過するのに時間(t12−t11)を要するのであるから、気泡弦長LBは「LB=UB(t12−t11)」なる式で得られる。このようにして、1本の光ファイバプローブ10を用いて、気泡界面速度、気泡並進速度および気泡弦長を計測することができる。また、気泡体積率は、光ファイバプローブ10の検出端面が気泡に覆われていた時間と全計測時間との比により求めることができる。これらの演算は、パーソナルコンピュータ等により構成される解析部40により行われる。
【0038】
次に、本実施形態に係る流動現象計測装置1および光ファイバプローブ10の具体的な実施例および実験結果について説明する。光ファイバプローブ10の外径(光ファイバ11の外径)は230μmであり、その光ファイバ11のコア径は190μmであった。光ファイバ11は石英光ファイバであり、コア部12の屈折率が1.463であり、クラッド部13の屈折率が1.446であった。第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPは350μmであり、フェムト秒レーザ光の照射により微細加工されて第2検知部15が形成された。第2検知部15におけるクラッド部13の厚みは5μmであった。光源部20は、波長635nmで最大出力パワー3mWのレーザ光を出力する半導体レーザを含むものとした。
【0039】
このような流動現象計測装置1を用いて、形状及び速度が既知である微小気泡(気泡界面速度0.813m/s、プローブ通過弦長320μm)の計測を行った。その計測の結果、気泡界面速度として0.782m/sが得られ、プローブ通過弦長として298μmが得られた。このように、測定対象物である気泡の径が小さい場合であっても、計測値が実際値とよく一致していることが確認された。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では液層中の気泡の計測について説明したが、本発明は、気層中の液滴の計測も可能であり、気体と液体とが混在する流動現象に対して計測ができる。
【0041】
光ファイバプローブの先端の第1検知部は、ファイバ軸方向に垂直な面に対して傾斜している傾斜面を有していればよく、上記実施形態のように円錐形状であってもよいし、ファイバ軸方向に垂直な面に対して傾斜している1つ又は複数の平坦な傾斜面を有するものであってもよい。後者の場合、例えば、第1検知部は、ファイバ軸方向に垂直な直線を共有し互いに直角である2つの平坦面からなる直角プリズムであってもよいし、互いに直角である3つの平坦面からなるコーナーキューブであってもよい。これら直角プリズムまたはコーナーキューブからなる第1検知部は、気体に接しているときには導波光を全反射させることができ、液体に接しているときには導波光の反射率が小さい。
【0042】
また、光ファイバプローブは、第1検知部および第2検知部の双方とも、クラッド部が一部領域において除去されたもの又はクラッド部が一部領域において屈折率を変化させられたものであってもよい。
【0043】
また、気体と液体とが混在する流動現象を有する装置内に光ファイバプローブを挿入して計測してもよいし、装置内で光ファイバプローブを相対的に移動させることで計測してもよい。また、複数本の光ファイバプローブを組み合わせることで、測定対象物である気泡または液滴の三次元運動を計測することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る流動現象計測装置1の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る光ファイバプローブ10の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る光ファイバプローブ10の他の構成例を示す図である。
【図4】第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPが気泡径DBより大きい場合に受光部30から出力される電気信号の値の時間的変化の一例を示す図である。
【図5】第1検知部14と第2検知部15との間の距離LPが気泡径DBより小さい場合に受光部30から出力される電気信号の値の時間的変化の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…流動現象計測装置、10…光ファイバプローブ、11…光ファイバ、11a…第1端、11b…第2端、12…コア部、13…クラッド部、14…第1検知部、15…第2検知部、20…光源部、30…受光部、31…光検出器、32…検出回路、33…高圧電源、34…アンプ電源、35…シールドケース、40…解析部、41…A/D変換器、42…計算部、51…光分岐器、52…集光系、53…偏光子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部およびクラッド部を有する光ファイバの第1端側において、ファイバ軸方向について互いに離間した第1位置および第2位置それぞれに、前記光ファイバの第2端から前記第1端に向かう導波光の反射率が接触物の屈折率によって異なる第1検知部および第2検知部を有する、ことを特徴とする光ファイバプローブ。
【請求項2】
前記第1検知部または前記第2検知部は、前記光ファイバの前記第1端においてファイバ軸方向に垂直な面に対して傾斜している傾斜面を有するものである、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバプローブ。
【請求項3】
前記第1検知部または前記第2検知部は、前記光ファイバのクラッド部が一部領域において除去されたものである、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバプローブ。
【請求項4】
前記第1検知部または前記第2検知部は、前記光ファイバのクラッド部が一部領域において屈折率を変化させられたものである、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバプローブ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光ファイバプローブを製造する方法であって、前記光ファイバの前記第1位置または前記第2位置に対してフェムト秒レーザ光を照射して加工をすることによって前記第1検知部または前記第2検知部を形成する、ことを特徴とする光ファイバプローブ製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光ファイバプローブと、
光を出力する光源部と、
この光源部から出力される光を導いて前記光ファイバプローブの前記第2端に入力させる入力光学系と、
前記光ファイバプローブの前記第2端から出力される光を導く出力光学系と、
前記出力光学系により導かれた光を受光して当該受光強度に応じた値の電気信号を出力する受光部と、
前記受光部から出力される電気信号の値の時間的変化に基づいて前記光ファイバプローブの前記第1端の周辺の流動現象を解析する解析部と、
を備えることを特徴とする流動現象計測装置。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光ファイバプローブの前記第1端を測定対象物の流動体に挿入して、
光源部から出力される光を前記光ファイバプローブの前記第2端に入力させ、
前記光ファイバプローブの前記第2端から出力される光を受光部により受光して当該受光強度に応じた値の電気信号を前記受光部から出力させ、
前記受光部から出力される電気信号の値の時間的変化に基づいて前記光ファイバプローブの前記第1端の周辺の流動現象を解析する、
ことを特徴とする流動現象計測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−14564(P2009−14564A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177607(P2007−177607)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】