説明

光モジュール

【課題】調芯精度の許容範囲を大きくし、調芯作業を容易にした、四波多重信号を合分波する光モジュール。
【解決手段】第1の波長の光と第2の波長の光を合分波する第1のフィルタユニット20の偏光ビームフィルタ20aが、第1及び第2の光半導体素子12aおよび14aと光学的に結合されている。第3の波長の光と第4の波長の光を合分波する第2のフィルタユニット22の第2の合分波フィルタ22aが、第3及び第4の光半導体素子16a及び18aと光学的に結合されている。WDMユニット24のWDMフィルタ24bは、第1及び第2の波長を含む波長帯の光と第3及び第4の波長を含む波長帯の光を合分波する。WDMフィルタ24bは、第2の合分波フィルタ22aに光学的に結合されており、ミラーを介して偏光ビームフィルタ20aに光学的に結合されている。WDMフィルタ24bは光ファイバに光学的に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関するものであり、より詳細には複数の光サブアセンブリを搭載した発光モジュール又は受光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光モジュールには、特許文献1に記載されているように、複数の波長の光を受光する受光モジュールがある。特許文献1に記載の光モジュールは、各々が受光素子を有する四つの光サブアセンブリ、四つの波長多重分割フィルタ(第1〜第4のWDMフィルタ)、及び、金属ブロックを備えている。四つの光サブアセンブリ、及び、四つの薄膜波長多重分割フィルタ(薄膜WDMフィルタ)は、金属ブロックに対して組立てられている。
【0003】
この光モジュールでは、第1のWDMフィルタが波長λの信号光を波長λ〜λの信号光から分別し、第1の光サブアセンブリの受光素子へと結合する。第2のWDMフィルタが波長λの信号光を波長λ〜λの信号光から分別し、第2の光サブアセンブリの受光素子へと結合する。第3のWDMフィルタが波長λの信号光を波長λの信号光から分別し、第3の光サブアセンブリの受光素子へと結合する。そして、第4のWDMフィルタが波長λの光を第4の光サブアセンブリの受光素子へと結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国公開特許第2006−088255A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光モジュールでは、最後に弁別される波長λの信号光については全てのWDMフィルタから諸々の影響を累積的に受けていることになる。これは、下流側のWDMフィルタ及び光サブアセンブリの光軸調整を困難なものとする。また、WDMフィルタに僅かの撓みが生じても、下流側で検知される光ビームには大きな発散が生じてしまう。
【0006】
本発明は、異なる波長の複数の光信号を送信又は受信する複数の光サブアセンブリを有し、光学調芯の精度の許容範囲を大きくすることができ、調芯作業を容易にすることのできる光モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光モジュールは、第1の光サブアセンブリ、第2の光サブアセンブリ、第3の光サブアセンブリ、第1の光サブアセンブリ、第4の光サブアセンブリ、第1のフィルタユニット、第2のフィルタユニット、波長分割多重ユニット、及びスリーブアセンブリを備える。第1の光サブアセンブリは、第1の波長の光を出射又は受光する第1の光半導体素子を有する。第2の光サブアセンブリは、第2の波長の光を出射又は受光する第2の光半導体素子を有する。第3の光サブアセンブリは、第3の波長の光を出射又は受光する第3の光半導体素子を有する。第4の光サブアセンブリは、第4の波長の光を出射又は受光する第4の光半導体素子を有する。第1のフィルタユニットは、第1の波長の光と第2の波長の光を合分波し得る第1の合分波フィルタを有する。第1の合分波フィルタは、第1の光半導体素子及び第2の光半導体素子と光学的に結合されている。第2のフィルタユニットは、第3の波長の光と第4の波長の光を合分波し得る第2の合分波フィルタを有する。第2の合分波フィルタは、第3の光半導体素子及び第4の光半導体素子と光学的に結合されている。波長分割多重ユニットは、ミラー、及び、波長分割多重フィルタを有する。波長多重分割フィルタは、第1の波長及び第2の波長を含む波長帯の光と第3の波長及び第4の波長を含む波長帯の光を合分波し得る。波長分割多重フィルタは、第2の合分波フィルタに光学的に結合されており、ミラーを介して第1の合分波フィルタに光学的に結合されている。スリーブアセンブリは、筒状のスリーブ、及び、当該スリーブの内孔に設けられた光ファイバを有している。光ファイバは、波長分割多重フィルタに光学的に結合されている。
【0008】
本発明の光モジュールでは、第1のフィルタユニットに対する第1の光サブアセンブリ及び第2の光サブアセンブリの調芯と、第2のフィルタユニットに対する第3の光サブアセンブリ及び第4の光サブアセンブリを、互いに独立して行うことができる。また、フィルタユニットに二つの光サブアセンブリを組み付けた後に、フィルタユニットと二つの光サブアセンブリを各々含む二つのアセンブリを、WDMユニットに対して互いに独立して調芯することができる。また、各光サブアセンブリと光ファイバとを結合するフィルタの数が少ない。さらに、第1の波長の光及び第2の波長の光がミラーで反射されて波長分割多重(WDM)フィルタに入力されるので、第1の波長の光及び第2の波長の光のWDMフィルタへの入射角を小さくすることができる。ここで、WDMフィルタへの光の入射角が小さい場合には、WDMフィルタのカットオフ特性の入射角の変化に対する変動が小さくなる。したがって、本発明の光モジュールでは、光サブアセンブリ等の部品の光学調芯の精度の許容範囲が大きくなっている。故に、本発明の光モジュールによれば、光サブアセンブリ等の部品の調芯作業が容易となる。
【0009】
本発明の光モジュールでは、第1〜第4の光半導体素子は、半導体レーザであってもよい。この場合に、第1の合分波フィルタは、第1の波長の光及び第2の波長の光のうち一方を透過し、第1の波長の光及び第2の波長の光のうち他方を反射して、第1の波長の光及び第2の波長の光を合波する偏光ビームフィルタであることが好適である。また、第2の合分波フィルタは、第3の波長の光及び第4の波長の光のうち一方を透過し、第3の波長の光及び第4の波長の光のうち他方を反射して、第3の波長の光及び第4の波長の光を合波する偏光ビームフィルタであることが好適である。この光モジュールでは、ミラーは、第1の合分波フィルタによって合波された光を波長分割多重フィルタへと反射し、波長分割多重フィルタは、ミラーによって反射された光を光ファイバへと反射し、第2の合分波フィルタによって合波された光をファイバへと透過する。この構成の光モジュールによれば、偏光ビームフィルタを採用しているので、合波すべき光信号を効率良く合成することができる。
【0010】
また、本発明の光モジュールでは、第1〜第4の光半導体素子は、受光素子であってもよい。この場合に、波長分割多重フィルタは、光ファイバから受けた第1の波長の光及び第2の波長の光を反射し、光ファイバから受けた第3の波長の光及び第4の波長の光を透過する。波長分割多重ユニットのミラーは、波長分割多重フィルタによって反射された第1の波長の光及び前記第2の波長の光を更に反射する。第1の合分波フィルタは、波長分割多重ユニットのミラーによって反射された第1の波長の光を透過して第1の光半導体素子に結合し、波長分割多重ユニットのミラーによって反射された第2の波長の光を反射する。第1のフィルタユニットは、第1の合分波フィルタによって反射された第2の波長の光を反射して、第2の光半導体素子に結合するミラーを更に有することが好ましい。第2の合分波フィルタは、波長分割多重フィルタを透過した第3の波長の光を透過して第3の光半導体素子に結合し、波長分割多重フィルタを透過した第4の波長の光を反射する。第2のフィルタユニットは、第2の合分波フィルタによって反射された第4の波長の光を反射して、第4の光半導体素子に結合するミラーを更に有することが好ましい。ミラーを有することにより、合分波フィルタへの入射光の入射角を小さく保ちつつ、光サブアセンブリの配置の自由度が高められる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、異なる波長の複数の光信号を送信又は受信する複数の光サブアセンブリを有し、光学調芯の精度の許容範囲を大きくすることができ、調芯作業を容易にすることのできる光モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る光モジュールの斜視図である。
【図2】図1に示す光モジュールを一部破断して示す斜視図である。
【図3】図1に示す光モジュールにおける部品の光学配置を概略的に示す図である。
【図4】別の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。
【図5】図4に示す光モジュールの部品の光学配置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0014】
図1は、一実施形態に係る光モジュールの斜視図である。図2は、図1に示す光モジュールを一部破断して示す斜視図である。図3は、図1に示す光モジュールの部品の光学配置を概略的に示す図である。なお、図3では、第2及び第4の光サブアセンブリが、それぞれの光軸が実際の光軸に対して90度回転するように、描かれている。
【0015】
図1〜図3に示す光モジュール10は、発光モジュールであり、第1の光サブアセンブリ12、第2の光サブアセンブリ14、第3の光サブアセンブリ16、第4の光サブアセンブリ18、第1のフィルタユニット20、第2のフィルタユニット22、波長多重分割(WDM偏光、及びスリーブアセンブリ26を備えている。
【0016】
第1の光サブアセンブリ12、第2の光サブアセンブリ14、第3の光サブアセンブリ16、第4の光サブアセンブリ18は、光送信サブアセンブリである。第1の光サブアセンブリ12、第2の光サブアセンブリ14、第3の光サブアセンブリ16、第4の光サブアセンブリ18は、半導体レーザ12a、14a、16a、18aをそれぞれ有している。半導体レーザ12a、14a、16a、18aはそれぞれ、第1の波長(λ1)の光、第2の波長(λ2)の光、第3の波長(λ3)の光、第4の波長(λ4)の光を出射する。
【0017】
第1の光サブアセンブリ12は、半導体レーザ12aからの光を実質的に平行光へと変換するレンズ12b、半導体レーザ12aを収容するパッケージ12cを有し得る。第2の光サブアセンブリ14は、半導体レーザ14aからの光を実質的に平行光へと変換するレンズ14b、半導体レーザ14aを収容するパッケージ14cを有し得る。第3の光サブアセンブリ16は、半導体レーザ16aからの光を実質的に平行光へと変換するレンズ16b、半導体レーザ16aを収容するパッケージ16cを有し得る。また、第4の光サブアセンブリ18は、半導体レーザ18aからの光を実質的に平行光へと変換するレンズ18b、半導体レーザ18aを収容するパッケージ18cを有し得る。
【0018】
このような第1の光サブアセンブリ12、第2の光サブアセンブリ14、第3の光サブアセンブリ16、第4の光サブアセンブリ18は、所謂CANタイプの光サブアセンブリである。パッケージ12cは、CANケース12d及びステム12e及びを有している。CANケース12dは略円筒状の部材であり、その一端には上述したレンズ12bが装着されている。また、CANケース12dの他端は、ステム12eに接合している。ステム12eは、略円板状の部材であり、半導体レーザ12aを支持している。ステム12eは、当該ステム12eに設けられた孔を通過し半導体レーザ12aに電気的に接続するリードピンを含んでいる。半導体レーザ12aは、CANケース12d及びステム12eによって画成される内部空間に収容されている。
【0019】
パッケージ14c、16c、18cも同様に、CANケース及びステムを有している。パッケージ14cのCANケース14d、パッケージ16cのCANケース16d、パッケージ18cのCANケース18dは、CANケース12dと同様の部材である。また、パッケージ14cのステム14e、パッケージ16cのステム16e、パッケージ18cのステム18eは、ステム12eと同様の部材である。
【0020】
ステム12e、14e、16e、18eには、マーク12f、14f、16f、18fがそれぞれ設けられている。本実施形態では、マーク12f、14f、16f、及び18fはステムの周縁に設けられた切り欠きとなっている。マーク12f、14f、16f、及び18fは、対応のパッケージ内に収容された半導体レーザの偏光方向に対して位置が規定されたものである。マーク12f、14f、16f、及び18fは、後述するように、偏光ビームフィルタに対する光サブアセンブリの光学的調芯のために用いられる。
【0021】
光サブアセンブリ12及び14は、第1のフィルタユニット20に組み付けられている。第1のフィルタユニット20は、偏光ビームフィルタ20aを有している。また、第1のフィルタユニット20は、筐体20bを有し得る。筐体20bは筒状の部材であり、その内部空間に、偏光ビームフィルタ20aを収容している。
【0022】
第1の光サブアセンブリ12は、筐体20bの一端(後端)に取り付けられている。より詳細には、CANケース12dが筐体20bの一端から当該筐体20bの内孔へと挿入されることにより、第1の光サブアセンブリ12は筐体20bに装着される。このように装着された状態では、第1の光サブアセンブリ12の光軸は、筐体20bの中心軸と実質的に平行となり、半導体レーザ12aが偏光ビームフィルタ20aに光学的に結合される。
【0023】
第2の光サブアセンブリ14は、フィルタユニット20の中央部に取り付けられている。より詳細には、筐体20bの側面は、略平面の搭載面20cを含んでいる。第2の光サブアセンブリ14は、この搭載面20c上に搭載される。このように取り付けられた状態では、第2の光サブアセンブリ14の光軸は、第1の光サブアセンブリ12の光軸と実質的に直交している。また、搭載面20cには筐体20bの内部空間に繋がる開口が設けられており、第2の光サブアセンブリ14の半導体レーザ14aはこの開口を介して偏光ビームフィルタ20aに光学的に結合される。
【0024】
偏光ビームフィルタ20aは、半導体レーザ12aからの第1の波長の光を透過し、半導体レーザ14aからの第2の波長の光を反射する。この偏光ビームフィルタ20aにより、半導体レーザ12aからの第1の波長及び半導体レーザ14aからの第2の波長が合波される。したがって、第1の光サブアセンブリ12は、その出射光の偏光方向が二つの光サブアセンブリ12及び14の光軸で形成される仮想面内に位置するように、偏光ビームフィルタ20aに対してセットされる必要がある。一方、第2の光サブアセンブリ14は、その出射光の偏光面が第1の光サブアセンブリ12の偏光面と実質的に垂直となるように偏光ビームフィルタ20aに対して装着される必要がある。
【0025】
ここで、第1の光サブアセンブリ12の光軸方向をZ方向、第2の光サブアセンブリ14の光軸方向をX方向、Z−X平面に直交する方向をY方向とする。本光モジュール10では、第1の光サブアセンブリ12は、その出射光の偏光方向がX方向となるように、フィルタユニット20に装着され、第2の光サブアセンブリ14は、その出射光の偏光方向がY方向となるように、フィルタユニット20に装着される。このような光学配置は、フィルタユニット20に対して第1の光サブアセンブリ12及び第2の光サブアセンブリ14を装着する際に、これら光サブアセンブリをそれぞれ光軸周りに回転させ、マーク12f、14fを所定の位置に合わせることにより、達成される。この光学配置により、光サブアセンブリ12からの出射光と光サブアセンブリ14からの出射光がフィルタユニット20で効率良く結合される。
【0026】
本光モジュール10では、また、光サブアセンブリ16及び18が、第2のフィルタユニット22に組み付けられる。第2のフィルタユニット22は、偏光ビームフィルタ22a及び筐体22bを有している。筐体22bは、筐体20bと同様の部材である。筐体22bの一端には光サブアセンブリ16が装着され、筐体22bの中央部、即ち、平面状の搭載面22cには光サブアセンブリ18が装着される。光サブアセンブリ16及び18は、マーク16f及びマーク18fを所定の位置に合わせつつ、第2のフィルタユニット22に装着される。これにより、光サブアセンブリ16の半導体レーザ16aからの出射光及び光サブアセンブリ18の半導体レーザ18aからの出射光は、偏光ビームフィルタ22aによって、結合される。即ち、光サブアセンブリ12からの出射光と光サブアセンブリ14からの出射光の結合と同様に、光サブアセンブリ16からの出射光と光サブアセンブリ18からの出射光は、フィルタユニット22の偏光ビームフィルタ22bによって、効率良く結合される。
【0027】
第1のフィルタユニット20及び第2のフィルタユニット22は、WDMユニット24に取り付けられている。WDMユニット24は、ミラー24a、及び、WDMフィルタ24bを有している。また、WDMユニット24は、レンズ24c、光アイソレータ24d、及び筐体24eを有し得る。筐体24eは、略箱形の部材であり、その内部空間に、ミラー24a、WDMフィルタ24b、レンズ24c、及び、光アイソレータ24dを収容している。
【0028】
第1のフィルタユニット20及び第2のフィルタユニット22は、筐体24eの一面に取り付けられている。この一面には、二つの開口が設けられており、第1のフィルタユニット20からの合成光は、二つの開口のうち一方を通って、ミラー24aに結合される。また、第2のフィルタユニット22からの合成光は、二つの開口のうち他方を通って、WDMフィルタ24bに結合される。即ち、第1のフィルタユニット20から出力される合成光は、WD偏光に入りミラー24aによって反射された後、WDMフィルタ24bに向かう。一方、第2のフィルタユニット22から出力される合成光は、WD偏光に入り、直接WDMフィルタ24bに向かう。
【0029】
ここで、四つ光サブアセンブリ12,14,16,18が出力する光の波長をそれぞれλ1,λ2,λ3,λ4とし、λ1<λ2<λ3<λ4の関係が存在するものとする。この場合に、WDMフィルタ24bのカットオフ波長は、λ2とλ3の間に設定される。即ち、WDMフィルタ24bは、光サブアセンブリ12及び14が発する光を実質的に全反射し、光サブアセンブリ16及び18が発する光を実質的に全て透過する。なお、λ2<λ1の関係が存在していてもよく、また、λ3<λ4の関係が存在していてもよい。この場合には、WDMフィルタ24bのカットオフ波長はλ1とλ4の間に設定される。また、四つの波長の関係は、(λ3、λ4)<(λ1、λ2)の関係であってもよい。
【0030】
WDMフィルタ24bには、薄膜多層膜フィルタを採用することができる。多層膜フィルタの特性は、各層の材質及び厚さ、或いは、層数といったパラメータにより決定される。特に、カットオフ波長と遮断特性(カットオフの急峻性)は、これらパラメータにより調整することができる。
【0031】
WDMフィルタ24bを透過/反射することにより生成された合成光は、スリーブアセンブリ26の光ファイバ26aに結合される。スリーブアセンブリ26は、上述した筐体24eの一面に対向する当該筐体24eの別の一面に取り付けられている。スリーブアセンブリ26は、スリーブ26b、スリーブ26c、弾性スリーブ26d、及び、スタブ26eを含んでいる。スリーブ26b、スリーブ26c、及び、弾性スリーブ26dは、筒状の部材である。弾性スリーブ26dは、その中心軸線方向と同方向に割りスリットを有している割スリーブであってもよい。弾性スリーブ26dの内孔の一端側には、光ファイバ26aを保持したスタブ26eが嵌め込まれている。弾性スリーブ26dは、その内孔の他端側に挿入される光コネクタを保持することにより、光コネクタ内の光ファイバと光ファイバ26aとを光学的に結合する。弾性スリーブ26dの基端部(一端側)は、筒状のスリーブ26bの内孔において当該スリーブ26bによって保持されている。このスリーブ26bは上述した筐体24eの別の一面に接合されている。スリーブ26b及び弾性スリーブ26dは、筒状のスリーブ26cによって覆われている。
【0032】
本実施形態では、スリーブアセンブリ26とWDMフィルタ24bとの間に、レンズ24c及び光アイソレータ24dが設けられている。レンズ24cは、WDMフィルタ24bからの合成光を、光ファイバ26aに向けて集光する。光アイソレータ24dは、光ファイバ26aの端部で反射された光が戻り光となって光サブアセンブリへと向かうことを防いでいる。このように、光モジュール10では、四つの光サブアセンブリ12、14、16、及び18が発する波長の異なる四つの光信号が、光ファイバ26aに結合される。
【0033】
以下、別の実施形態に係る光モジュールについて説明する。図4は、別の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。図5は、図4に示す光モジュールの部品の光学配置を概略的に示す図である。なお、図5では、第2及び第4の光サブアセンブリが、それぞれの光軸が実際の光軸に対して90度回転するように、描かれている。
【0034】
図4及び図5に示す光モジュール10Aは、第1の光サブアセンブリ12A、第2の光サブアセンブリ14A、第3の光サブアセンブリ16A、第4の光サブアセンブリ18A、第1のフィルタユニット20A、第2のフィルタユニット22A、WD偏光A、及びスリーブアセンブリ26を備えている。
【0035】
光モジュール10Aは、異なる四つの波長の光を受光する受光モジュールである。光モジュール10Aは、光ファイバ26aを伝搬してきた光を互いに波長の異なる複数の光信号に分離し、当該複数の光信号を複数の光サブアセンブリ内に搭載されたフォトダイオードに導く。以下、光モジュール10Aが、発光モジュールである光モジュール10と異なる点について説明する。なお、光モジュール10と同様の構成については、説明を省略する。
【0036】
WD偏光Aは、集光レンズではなくコリメートレンズであるレンズ24gを有する点、また、光アイソレータを有していない点で、WD偏光と異なっている。本実施形態では、光ファイバ26aからの光は、レンズ24gによって平行光へと変換された後、WDMフィルタ24bへと向かう。このWDMフィルタ24bは、第1の波長(λ1)及び第2の波長(λ2)を含む波長帯の光と、第3の波長(λ3)及び第4の波長(λ4)を含む波長帯の光とを分離する。即ち、前者の波長帯の光(λ1及びλ2を含む波長帯の光)は、WDMフィルタ24bによって実質的に全反射される。一方、後者の波長帯の光の大部分は、WDMフィルタ24bを透過する。なお、後者の波長帯の光が全反射され、前者の波長帯の光が透過する光学体系が採用されてもよい。以下の説明では、前者の波長帯の光が反射され、後者の波長帯の光が透過する例を説明する。
【0037】
λ1及びλ2を含む波長帯の光は、WDMフィルタ24bで反射された後、ミラー24aへ向かう。ミラー24aで反射された光は、第1のフィルタユニット20Aへ向かう。一方、WDMフィルタ24bを透過した光、即ち、λ3及びλ4を含む波長帯の光は、WDMフィルタ24bを透過して、第2のフィルタユニット22Aへ向かう。
【0038】
フィルタユニット20A及びフィルタユニット22Aは、フィルタユニット20及び22と同様に、WD偏光Aの筐体24eに取り付けられている。上述したように、光モジュール10Aでは、光ファイバ26aを伝播してきた光を、互いに波長の異なる複数の光信号に分離し、光サブアセンブリ内に搭載されたフォトダイオードに導く。ここで、光ファイバを伝播する光の偏光方向は一意に定まらず、且つ、一定ではなく変化する。これは、スリーブアセンブリ26に挿入される光ファイバといった伝送ファイバが、捻られることがあり、また、ファイバ中を伝播する光の偏光方向はその伝送条件に左右されてしまうからである。それ故、光モジュール10Aのフィルタユニットの構成は、光モジュール10のフィルタユニットの構成とは異なっている。
【0039】
上述したように、受光モジュールである光モジュール10Aでは、光ファイバ26aからの光の偏光方向が規定することができないので、第1のフィルタユニット20Aは、偏光ビームフィルタではなく、薄膜フィルタ20dを有している。薄膜フィルタ20dは、第1の波長の光を透過し、第2の波長の光を反射する。
【0040】
ここで、薄膜フィルタの反射率及び透過率の偏光依存性は、当該薄膜フィルタへの入射光の入射角を大きくすると、大きくなる。したがって、薄膜フィルタへの光の入射角は可能な限り小さくする必要がある。例えば、薄膜フィルタへの入射光の入射角は約10度以下とする必要がある。しかしながら、薄膜フィルタ20dへの入射光の入射角を制限すると、薄膜フィルタ20dからの反射光を受ける第2の光サブアセンブリ14Aの位置が制限されてしまう。このため、第1のフィルタユニット20Aは、ミラー20eを更に有している。
【0041】
かかる第1のフィルタユニット20Aでは、WD偏光Aからの第1の波長の光が薄膜フィルタ20dを透過して、第1の光サブアセンブリ12Aへと向かう。一方、WD偏光Aからの第2の波長の光は、薄膜フィルタ20dによって反射された後、ミラー20eによって反射されて、第2の光サブアセンブリ14Aへと向かう。このように、本光モジュール10Aは、薄膜フィルタ20dに対する入射角を、薄膜フィルタ20dの反射/透過特性の偏光依存性を回避できるよう、浅い角度に維持しつつ、ミラー20eにより、光サブアセンブリの搭載位置の制限を緩和している。
【0042】
同様に、第2のフィルタユニット22Aも、薄膜フィルタ22d及びミラー22eを有している。薄膜フィルタ22dは、第3の波長の光を透過し、第4の波長の光を反射する。第2のフィルタユニット22Aでは、WD偏光Aからの第3の波長の光が薄膜フィルタ22dを透過して、第3の光サブアセンブリ16Aへと向かう。一方、WD偏光Aからの第4の波長の光は、薄膜フィルタ22dによって反射された後、ミラー22eによって反射されて、第4の光サブアセンブリ18Aへと向かう。
【0043】
本実施形態では、光サブアセンブリ12Aは、フォトダイオード12gを有している。また、第1の光サブアセンブリ12Aは、フォトダイオード12gへと光を集光する集光レンズ12hを有している。フォトダイオード12gは、光サブアセンブリ12と同様にパッケージ12cに収容されている。第2の光サブアセンブリ14Aも同様に、パッケージ14c内に収容されたフォトダイオード14g及び集光レンズ14hを有している。第3の光サブアセンブリ16Aも同様に、パッケージ16c内に収容されたフォトダイオード16g及び集光レンズ16hを有している。また、第4の光サブアセンブリ18Aも同様に、パッケージ18c内に収容されたフォトダイオード18g及び集光レンズ18hを有している。
【0044】
光モジュール10Aでは、フィルタユニット20Aからの第1の波長の光は、集光レンズ12hによって集光されフォトダイオード12gによって受光される。フィルタユニット20Aからの第2の波長の光は、集光レンズ14hによって集光されフォトダイオード14gによって受光される。フィルタユニット22Aからの第3の波長の光は、集光レンズ16hによって集光されフォトダイオード16gによって受光される。またフィルタユニット22Aからの第4の波長の光は、集光レンズ18hによって集光されフォトダイオード18gによって受光される。
【0045】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る光モジュールによれば、第1のフィルタユニットに対する第1の光サブアセンブリ及び第2の光サブアセンブリの調芯と、第2のフィルタユニットに対する第3の光サブアセンブリ及び第4の光サブアセンブリを、互いに独立して行うことができる。また、フィルタユニットに二つの光サブアセンブリを組み付けた後に、フィルタユニットと二つの光サブアセンブリを各々含む二つのアセンブリを、WDMユニットに対して互いに独立して調芯することができる。また、各光サブアセンブリと光ファイバとを結合するフィルタの数が少ない。さらに、第1の波長の光及び第2の波長の光がミラーで反射されて波長分割多重(WDM)フィルタに入力されるので、第1の波長の光及び第2の波長の光のWDMフィルタへの入射角を小さくすることができる。したがって、上述した実施形態の光モジュールでは、光サブアセンブリ等の部品の光学調芯の精度の許容範囲が大きくなっている。故に、これら光モジュールによれば、光サブアセンブリ等の部品の調芯作業が容易となる。
【0046】
また、光モジュール10Aでは、フィルタユニットにミラーを採用しているので、薄膜フィルタへの入射光の入射角を小さく保ちつつ、光サブアセンブリの配置の自由度が高められる。
【符号の説明】
【0047】
10…光モジュール(発光モジュール)、10A…光モジュール(受光モジュール)、12…第1の光サブアセンブリ(光送信サブアセンブリ)、14…第2の光サブアセンブリ(光送信サブアセンブリ)、16…第3の光サブアセンブリ(光送信サブアセンブリ)、18…第4の光サブアセンブリ(光送信サブアセンブリ)、12A…第1の光サブアセンブリ(光受信サブアセンブリ)、14A…光サブアセンブリ(光受信サブアセンブリ)、16A…第3の光サブアセンブリ(光受信サブアセンブリ)、18A…第4の光サブアセンブリ(光受信サブアセンブリ)、12a…半導体レーザ、12b…レンズ、12c…パッケージ、12d…CANケース、12e…ステム、12f…マーク、12g…フォトダイオード、12h…レンズ、14a…半導体レーザ、14b…レンズ、14c…パッケージ、14d…CANケース、14e…ステム、14f…マーク、14g…フォトダイオード、14h…レンズ、16a…半導体レーザ、16b…レンズ、16c…パッケージ、16d…CANケース、16e…ステム、16f…マーク、16g…フォトダイオード、16h…レンズ、18a…半導体レーザ、18b…レンズ、18c…パッケージ、18d…CANケース、18e…ステム、18f…マーク、18g…フォトダイオード、18h…レンズ、20…第1のフィルタユニット、20A…第1のフィルタユニット、20a…偏光ビームフィルタ、20a…偏光ビームフィルタ、20b…筐体、20c…搭載面、20d…薄膜フィルタ、20e…ミラー、22…第1のフィルタユニット、22A…第1のフィルタユニット、22a…偏光ビームフィルタ、22b…筐体、22b…偏光ビームフィルタ、22c…搭載面、22d…薄膜フィルタ、22e…ミラー、24…波長多重分割(WDM)ユニット、24A…WDMユニット、24a…ミラー、24b…WDMフィルタ、24c…レンズ、24d…光アイソレータ、24e…筐体、24g…レンズ、26…スリーブアセンブリ、26a…光ファイバ、26b…スリーブ、26c…スリーブ、26d…弾性スリーブ、26e…スタブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の光を出射又は受光する第1の光半導体素子を有する第1の光サブアセンブリと、
第2の波長の光を出射又は受光する第2の光半導体素子を有する第2の光サブアセンブリと、
第3の波長の光を出射又は受光する第3の光半導体素子を有する第3の光サブアセンブリと、
第4の波長の光を出射又は受光する第4の光半導体素子を有する第4の光サブアセンブリと、
前記第1の波長の光と前記第2の波長の光を合分波し得る第1の合分波フィルタであって、前記第1の光半導体素子及び前記第2の光半導体素子と光学的に結合された該第1の合分波フィルタを有する第1のフィルタユニットと、
前記第3の波長の光と前記第4の波長の光を合分波し得る第2の合分波フィルタであって、前記第3の光半導体素子及び前記第4の光半導体素子と光学的に結合された該第2の合分波フィルタを有する第2のフィルタユニットと、
ミラー、並びに、前記第1の波長及び前記第2の波長を含む波長帯の光と前記第3の波長及び前記第4の波長を含む波長帯の光を合分波し得る波長分割多重フィルタを有する波長分割多重ユニットであって、前記波長分割多重フィルタが、前記第2の合分波フィルタに光学的に結合されており、前記ミラーを介して前記第1の合分波フィルタに光学的に結合されている、該波長分割多重ユニットと、
筒状のスリーブ、及び、該スリーブの内孔に設けられた光ファイバを有し、該光ファイバが前記波長分割多重フィルタに光学的に結合されている、スリーブアセンブリと、
を備える光モジュール。
【請求項2】
前記第1〜第4の光半導体素子は、半導体レーザであり、
前記第1の合分波フィルタは、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光のうち一方を透過し、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光のうち他方を反射して、該第1の波長の光及び該第2の波長の光を合波する偏光ビームフィルタであり、
前記第2の合分波フィルタは、前記第3の波長の光及び前記第4の波長の光のうち一方を透過し、前記第3の波長の光及び前記第4の波長の光のうち他方を反射して、該第3の波長の光及び該第4の波長の光を合波する偏光ビームフィルタであり、
前記ミラーは、前記第1の合分波フィルタによって合波された光を前記波長分割多重フィルタへと反射し、
前記波長分割多重フィルタは、前記ミラーによって反射された光を前記光ファイバへと反射し、前記第2の合分波フィルタによって合波された光を前記光ファイバへと透過する、
請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第1〜第4の光半導体素子は、受光素子であり、
前記波長分割多重フィルタは、前記光ファイバから受けた前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射し、前記光ファイバから受けた前記第3の波長の光及び前記第4の波長の光を透過し、
前記波長分割多重ユニットの前記ミラーは、前記波長分割多重フィルタによって反射された前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を更に反射し、
前記第1の合分波フィルタは、前記波長分割多重ユニットの前記ミラーによって反射された前記第1の波長の光を透過して前記第1の光半導体素子に結合し、前記波長分割多重ユニットの前記ミラーによって反射された前記第2の波長の光を反射し、
前記第1のフィルタユニットは、前記第1の合分波フィルタによって反射された前記第2の波長の光を反射して、前記第2の光半導体素子に結合するミラーを更に有し、
前記第2の合分波フィルタは、前記波長分割多重フィルタを透過した前記第3の波長の光を透過して前記第3の光半導体素子に結合し、前記波長分割多重フィルタを透過した第4の波長の光を反射し、
前記第2のフィルタユニットは、前記第2の合分波フィルタによって反射された前記第4の波長の光を反射して、前記第4の光半導体素子に結合するミラーを更に有する、
請求項1記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−61139(P2010−61139A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203739(P2009−203739)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】