説明

光偏向装置

【課題】可動部を低い駆動力で揺動させることが可能な光偏向装置を提供すること。
【解決手段】光偏向装置は、基板と、平板形状の可動部220と、可動部220の端部242aに接続されている突出部241aと、突出部241aと同一の中心軸240を有するように、可動部220の端部242bに接続されている突出部241bと、基板上に設置されており、突出部241aの中心軸240の周囲を取り囲んでいる規制部250aと、基板上に設置されており、突出部241bの中心軸240の周囲を取り囲んでいる規制部250bと、可動部220を揺動させる固定電極204a、204bと、を備える。規制部250aで突出部241aが支持されており、規制部250bで突出部241bが支持されていることで、可動部220が基板の上方に離反した位置で中心軸240の周りに揺動可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光ビームを偏向させる(光ビームの反射方向を変化させることをいう)光偏向装置であって、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、光ビームを偏向させる静電駆動型の光偏向装置1000が開示されている。図86および図87に見られるように、基板1101上に絶縁膜1102を介し、複数(この例では2個)の電極1103、支点部材1106、規制部材1108、着地部材1109が形成されている。図87において、1107はミラー部材としての板状部材である(図86は板状部材1107を除いた状態を示している)。板状部材1107は、その上面に光反射領域を有し、また、その少なくとも裏面は導体層とされている。支点部材1106は、板状部材1107に電位を付与するための電極を兼ねるものであり、少なくとも頂部に導体が露出しており、板状部材1107と電気的に接触する。板状部材1107は、支点部材1106の頂部を支点として図87に示す向きに傾斜させ、あるいは、その逆向きに傾斜させることができる。具体的には、板状部材1107と、一対の電極1103の一方との間に駆動電圧を印加すると、駆動電圧を印加した電極1103と板状部材1107との間に静電引力が作用し、両者が接近するように板状部材1107が傾斜する。板状部材1107の基板面方向の移動範囲は規制部材1108によって制限される。また、板状部材1107の飛び出しを防止するため、規制部材1108の頂部に傘状のストッパ部1108aが設けられている。規制部材1108およびストッパ部1108aによって、板状部材1107が紛失してしまうことが防止されている。
【0003】
特許文献1の光偏向装置1000は、板状部材1107を支持するための支持梁等の固定部を有さない。よって、板状部材1107を傾斜させる際の抵抗力(支持梁の捻り抵抗など)を小さくすることができるため、板状部材1107を低電圧で駆動させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−225363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光偏向装置1000では、規制部材1108およびストッパ部1108aによって、板状部材1107の角部の移動が規制されている。板状部材1107の角部は、支点部材1106から最も離れている部位であるため、板状部材1107を傾斜させたときの移動距離が最も大きくなる。すると、角部の移動距離に合わせて規制部材1108およびストッパ部1108aを作成する必要があるため、規制部材1108やストッパ部1108aが大型化する。これにより、光偏向装置1000を平面視したときに、光偏向装置1000が占有する面積に対して板状部材1107の面積が占める割合(開口率)が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の光偏向装置は、基板と、平板形状の可動部と、可動部の第1の端部に接続されている第1の突出部と、第1の突出部と同一の中心軸を有するように、可動部の第2の端部に接続されている第2の突出部と、基板上に設置されており、第1の突出部が回転可能に第1の突出部の中心軸の周囲を取り囲んでいる第1の規制部と、基板上に設置されており、第2の突出部が回転可能に第2の突出部の中心軸の周囲を取り囲んでいる第2の規制部と、可動部を揺動させるアクチュエータと、を備えている。そして、第1の規制部で第1の突出部が支持されており、第2の規制部で第2の突出部が支持されていることで、可動部が基板の上方に離反した位置で中心軸の周りに揺動可能に支持されている。
【0007】
アクチュエータは、可動部に駆動トルクを与えることで、可動部を揺動させる機構である。アクチュエータの駆動方式の例としては、静電駆動式、電磁駆動式、熱駆動式、などが挙げられる。
【0008】
比較対象として、可動部の移動範囲を規制する場合に、中心軸から離れた部位を規制する場合を説明する。この場合、可動部が揺動するときの規制部位の移動距離は、規制部位が中心軸から離れることに従って大きくなる。そして、規制部位の移動距離に合わせて規制部を作成する必要があるため、移動距離が大きくなるほど規制部が大型化してしまう。本願の光偏向装置では、第1の突出部および第2の突出部によって中心軸が形成されている。そして、第1の突出部の周囲を第1の規制部で取り囲むとともに、第2の突出部の周囲を第2の規制部で取り囲むことで、中心軸に垂直な方向への中心軸の移動範囲を規制することができる。可動部が揺動するときには中心軸の周りに揺動するため、可動部の揺動時においても、中心軸の位置は移動しない。よって、中心軸から離れた部位を規制する場合に比して、規制部を小さくすることができる。これにより、光偏向装置を平面視したときに、光偏向装置が占有する面積に対して可動部の面積が占める割合(開口率)を高めることができる。
【0009】
また、本願の光偏向装置では、第1の突出部が第1の端部から中心軸に沿って突出している距離、および、第2の突出部が第2の端部から中心軸に沿って突出している距離の各々は、可動部の第1の端部と第1の規制部との間の中心軸に沿った第1の離反距離と、可動部の第2の端部と第2の規制部との間の中心軸に沿った第2の離反距離を合計した距離よりも大きいとしてもよい。第1の端部と第1の規制部が接触するまで、中心軸に沿って可動部が移動した場合には、第2の端部と第2の規制部との距離が最大距離となる。この最大距離は、第1の離反距離と第2の離反距離を合計した距離となる。そして本願の光偏向装置では、第2の突出部が突出している距離が、第1の離反距離と第2の離反距離を合計した距離(最大距離)よりも大きくされているため、第2の突出部が第2の規制部から外れてしまうことを防止できる。同様にして、第2の端部と第2の規制部が接触するまで、中心軸に沿って可動部が移動した場合においても、第1の突出部が突出している距離が、第1の離反距離と第2の離反距離を合計した距離(最大距離)よりも大きくされているため、第1の突出部が第1の規制部から外れてしまうことを防止できる。
【0010】
また、本願の光偏向装置では、中心軸に垂直な断面における第1の突出部の下面の形状が、曲面を有して基板側へ突出している形状とされており、中心軸に垂直な断面における第2の突出部の下面の形状が、曲面を有して基板側へ突出している形状とされているとしてもよい。第1の突出部の下面が、第1の規制部によって支持されている状態で、可動部が揺動する場合を説明する。第1の突出部の下面と、第1の規制部を支持している第1の規制部の支持面が共に平面の場合には、平面と平面とが接することになる。すなわち、中心軸に垂直な断面において、両者が線接触する。すると、中心軸を中心にして可動部を揺動させると、第1の突出部と第1の規制部との接触部で引っかかりが発生するため、スムーズに可動部を揺動させることができない。一方、本願の光偏向装置では、中心軸に垂直な断面において、第1の突出部の下面の形状が、曲面を有して基板側へ突出している形状とされている。すると、第1の突出部の下面と第1の規制部の支持面が接触する際に、曲面と平面との接触となる。すなわち、中心軸に垂直な断面において、両者が常に点接触する。よって、可動部が揺動する際に、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。なお、第2の突出部と第2の規制部においても、同様にして、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0011】
また、本願の光偏向装置では、第1の規制部の中心軸に垂直な断面において、第1の突出部の下面と対向する面が曲面を有して窪んでいる形状とされており、第2の規制部の中心軸に垂直な断面において、第2の突出部の下面と対向する面が曲面を有して窪んでいる形状とされており、第1の突出部の下面の曲率が、第1の規制部の第1の突出部の下面と対向する面の曲率以上とされており、第2の突出部の下面の曲率が、第2の規制部の第2の突出部の下面と対向する面の曲率以上とされているとしてもよい。これにより、第1の突出部の下面と、第1の規制部の第1の突出部の下面と対向する面とが噛み合うことになる。よって、第1の突出部が、基板に平行な方向であって中心軸に垂直な方向へ移動することを規制することができる。すなわち、第1の突出部の第1の規制部上での位置決めをすることができる。また、第1の突出部の下面と、第1の規制部の第1の突出部の下面と対向する面とは、共に曲面で形成されている。よって、両者の面が噛み合った状態で、中心軸を中心にして可動部を揺動させる場合においても、噛み合い部で引っかかりが発生しないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。なお、第2の突出部と第2の規制部においても、同様にして、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0012】
また、本願の光偏向装置では、第1の突出部の中心軸に垂直な断面の形状が円形状とされており、第2の突出部の中心軸に垂直な断面の形状が円形状とされているとしてもよい。可動部に静電引力などの様々な力が作用することにより、第1の突出部の外周面が、第1の規制部の内壁の側面部分や上面部分に接触した状態で、可動部が揺動する場合がある。本願の光偏向装置では、第1の突出部の中心軸に垂直な断面の形状が円形状であるため、第1の突出部の外周面は全て曲面とされている。よって、このような場合においても、第1の突出部の外周面と第1の規制部の内壁との接触部分で引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。なお、第2の突出部と第2の規制部においても、同様にして、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0013】
また、本願の光偏向装置では、基板上に設置され、外部と電気的に接続される端子部と、第1の突出部の基板に沿った方向の幅よりも小さい幅を有し、導電材料で形成されており、一端が端子部に電気的に接続され、他端が第1の突出部の端部に電気的に接続されている導通部と、をさらに備えてもよい。また、アクチュエータは、基板上の、中心軸を通り基板に垂直な面に対して対称な位置に、一対の下部電極を備えるとしてもよい。また、可動部および第1の突出部は、導電材料で形成されており、第1の突出部と可動部とが電気的に接続されているとしてもよい。導通部、第1の突出部、可動部は導電材料で形成されている。導電材料の一例としては、ポリシリコンが挙げられる。導通部、第1の突出部、可動部は、導電材料が表面に露出していてもよいし、表面がシリコン酸化膜等の絶縁材料で被覆されていてもよい。
【0014】
端子部、導通部、第1の突出部および可動部は、互いに電気的に導通している。そして、端子部と一方の下部電極との間に駆動電圧を印加することにより、可動部と一方の下部電極との間に静電引力を作用させることができる。これにより、一方の下部電極に向かい合う範囲の可動部を基板に向けて引き付けることができるため、可動部を基板に対して揺動させることが可能となる。
【0015】
また、本願の光偏向装置では、基板上に設置され、外部と電気的に接続される端子部をさらに備えてもよい。また、アクチュエータは、基板上の、中心軸を通り基板に垂直な面に対して対称な位置に、一対の下部電極を備えていてもよい。また、第1の規制部は、導電材料で形成され、端子部に電気的に接続されていてもよい。また、可動部および第1の突出部は、導電材料で形成されていてもよい。また、第1の突出部と可動部とが電気的に接続されており、第1の突出部の表面、および、第1の規制部の第1の突出部を取り囲んでいる部位の内壁面は、導電材料が露出しているとしてもよい。
【0016】
第1の突出部の表面、および、第1の規制部の第1の突出部を取り囲んでいる部位の内壁面は、導電材料が露出している。よって、第1の突出部を第1の規制部で支持する際に、導電材料同士が接触することで、電気的に導通を取ることができる。すると、端子部、第1の規制部、第1の突出部および可動部が、互いに電気的に導通する。
そして、端子部と一方の下部電極との間に駆動電圧を印加することにより、可動部と一方の下部電極との間に静電引力を作用させることができる。これにより、一方の下部電極に向かい合う範囲の可動部を基板に向けて引き付けることができるため、可動部を基板に対して揺動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低い駆動力でミラーを揺動させることが可能な光偏向装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の光偏向装置の平面図である。
【図2】図1に示す光偏向装置のII−II線における断面図である。
【図3】図1に示す光偏向装置のIII−III線における断面図である。
【図4】図1に示す光偏向装置のIV−IV線における断面図である。
【図5】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図6】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図7】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図8】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図9】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図10】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図11】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図12】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図13】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図14】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図15】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図16】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図17】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図18】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図19】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図20】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図21】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図22】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図23】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図24】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図25】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図26】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図27】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図28】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図29】図1に示す光偏向装置のXXIX−XXIX線における断面図である。
【図30】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図31】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図32】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図33】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図34】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図35】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図36】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図37】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図38】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図39】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図40】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図41】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図42】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図43】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図44】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図45】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図46】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図47】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図48】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図49】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図50】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図51】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図52】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図53】実施例2の光偏向装置の平面図である。
【図54】図53に示す光偏向装置のLIV−LIV線における断面図である。
【図55】図53に示す光偏向装置のLV−LV線における断面図である。
【図56】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図57】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図58】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図59】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図60】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図61】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図62】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図63】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図64】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図65】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図66】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図67】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図68】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図69】図53に示す光偏向装置のLXIX−LXIX線における断面図である。
【図70】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図71】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図72】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図73】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図74】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図75】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図76】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図77】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図78】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図79】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図80】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図81】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図82】突出部および規制部の変形例を示す図である。
【図83】突出部および規制部の変形例を示す図である。
【図84】光偏向装置の変形例を示す図である。
【図85】突出部および規制部の変形例を示す図である。
【図86】従来例の光学装置を示す図である。
【図87】従来例の光学装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に説明する実施例の主要な特徴を以下に列記する。
(特徴1)導通部は折り返し形状を有している。これにより、導通部の捻り抵抗力が、突出部の捻り抵抗力よりも小さくされている。よって、可動部の揺動動作に対して導通部の捻り抵抗力が与える影響を、小さくすることができる。
(特徴2)基板下層に第1の柱状部および第2の柱状部が形成されている。第1および第2の柱状部の外周の一端から、第1および第2の突出部が突出している。可動部の端部に第1および第2の規制部が形成されている。第1の規制部は、第1の突出部の中心軸の周囲を取り囲んでいる。第2の規制部は、第2の突出部の中心軸の周囲を取り囲んでいる。
【実施例1】
【0020】
実施例1に係る光偏向装置20について説明する。図1は、光偏向装置20の平面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、図1のIII−III線断面図である。図4は、図1のIV−IV線断面を拡大した図である。図4は、規制部250aの、中心軸240に垂直な断面についての断面図に相当する。図29は、図1のXXIX−XXIX線断面を拡大した図である。
【0021】
可動部220は、導電層225と、導電層225の周囲に形成された絶縁層223、224とを含んでいる。絶縁層223の上面に導電層225が形成されており、導電層225の上面および側面に絶縁層224が形成されている。また可動部220の上層に、反射層(図示せず)が形成されることで、可動部220はミラーとして機能する。可動部220の端部242aに、突出部241aが形成されている。また、可動部220の端部242bに、突出部241bが形成されている。突出部241aおよび241bは、同一の中心軸240を有している。図3に示すように、1対の突出部241a、241bは、絶縁層223、224および導電層225を備えている。図1および図3に示すように、突出部241a、241bは細長く形成されている。突出部241a、241bの長手方向軸が、可動部220の中心軸240となる。
【0022】
図1および図3に示すように、基板下層200上には、規制部250aおよび250bが設置されている。規制部250aは、突出部241aが回転可能となるような適度の間隙を有して、突出部241aの中心軸240の周囲を取り囲んでいる。同様にして、規制部250bは、突出部241bが回転可能なように、突出部241bの中心軸240の周囲を取り囲んでいる。これにより、規制部250aで突出部241aが支持されており、規制部250bで突出部241bが支持されている。そして可動部220が、基板下層200の上方に離反した位置で、中心軸240の周りに揺動可能に支持されている。
【0023】
図1に示すように、突出部241aは、端部242aから中心軸240に沿って、距離Laだけ突出している。同様に、突出部241bは、端部242bから中心軸240に沿って、距離Lbだけ突出している。規制部250aの可動部220側の端部と、可動部220の端部242aとの間の距離を、距離Daとする。同様に、規制部250bの可動部220側の端部と、可動部220の端部242bとの間の距離を、距離Dbとする。ここで、距離Laおよび距離Lbの各々は、距離Daと距離Dbを合計した距離よりも大きくされている。
【0024】
図2に示すように、基板下層200は、ウェハ層201と、絶縁層202、203と、固定電極204a、204bとを含んでいる。ウェハ層201と、ウェハ層201の上面全体に形成されている絶縁層202と、固定電極204a、204bとは、平面状である。固定電極204a、204bは、可動部220の中心軸240を含み可動部220に垂直な面に対して対称に形成されている。また固定電極204a、204bは互いに絶縁されている。外部端子231a、231bの各々は、絶縁層203、223および224を貫通している。固定電極204aは外部端子231aと電気的に接続されており、固定電極204bは外部端子231bと電気的に接続されている。固定電極204a、204bおよび絶縁層202の上面には、絶縁層203が形成されている。そして基板下層200は、その全体が平面状となっている。
【0025】
図1および図3に示すように、基板下層200上には柱状部210が形成されている。柱状部210の外周の一端から、導通部270が伸びており、突出部241aの端部244に電気的に接続されている。導通部270は、突出部241aの幅Waよりも小さい幅を有している。また導通部270は、折り返し形状を有している。これにより、導通部270の捻り抵抗力が、突出部241aの捻り抵抗力よりも小さくされている。よって、可動部220を揺動させる際に必要な駆動力に対して、導通部270の捻り抵抗力が与える影響を、小さくすることができる。また、導通部270の捻り抵抗力の影響を小さくすることで、可動部220が固定電極204aに近づくように傾く場合と固定電極204bに近づくように傾く場合での、各々の傾き角度を揃えることができる。
【0026】
図3に示すように、柱状部210は、絶縁層223および224と、絶縁層223と絶縁層224との間に形成されている導電層225とを備えている。外部端子232から引き出された導電層は、絶縁層224を貫通して、導電層225と電気的に接続されている。柱状部210の絶縁層223と、可動部220の絶縁層223とは、導通部270および突出部241aの絶縁層223によって連続している。また、柱状部210の絶縁層224と、可動部220の絶縁層224とは、導通部270および突出部241aの絶縁層224によって連続している。また、柱状部210の導電層225と、可動部220の導電層225とは、導通部270および突出部241aの導電層225によって連続している。これにより、外部端子232、導通部270、突出部241aおよび可動部220は、互いに電気的に導通している。
【0027】
図4において、突出部241aの中心軸240に垂直な断面は円形状とされており、その直径はR1である。また、規制部250aの中心軸240に垂直な断面は、突出部241aの周囲を円形状に取り囲んでいる形状とされている。規制部250aの内壁の直径はR2である。突出部241aの直径R1は、規制部250aの内壁の直径R2よりも小さくされている。突出部241aの断面は、中心軸240に沿った全長に渡って円形状とされている。なお突出部241bにおいても、同様にして、中心軸240に沿った全長に渡って断面が円形状とされている。規制部250aは、基板下層200の絶縁層202の上に設置された、導電層204の上方に形成されている。規制部250aは、その内部に存在する導電層254および導電層295、導電層の外周を被覆する絶縁層253および絶縁層296、導電層の内周を被覆する絶縁層255および絶縁層294を備えている。規制部250aの内壁の最下点(最も基板下層200に近い点)と、絶縁層203との距離は、距離Hとされている。距離Hは、可動部220が絶縁層203表面から離反する距離の最小値である。また、突出部241aは、中心部に存在する導電層225、導電層の外周を被覆する絶縁層223および絶縁層224を備えている。なお、規制部250bおよび突出部241bの構造は、規制部250aおよび突出部241aの各々と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0028】
光偏向装置20の動作を説明する。光偏向装置20は、静電駆動式の装置である。光偏向装置20では、固定電極204aに印加する駆動電圧と固定電極204bに印加する駆動電圧とを制御することによって、可動部220を中心軸240の周りに揺動させる。例えば、外部端子232を接地し、外部端子231a、231bを駆動信号生成器(図示しない)に接続する場合を説明する。外部端子232、導通部270、突出部241aおよび可動部220は、互いに電気的に導通しているため、可動部220の電位は接地電位とされる。
【0029】
駆動信号生成器を用いて、固定電極204aに駆動電圧を印加する場合には、可動部220の導電層225と固定電極204aとの間に静電引力が発生する。よって、固定電極204aに対向する位置の可動部220が、基板下層200に吸引される。よって図2において、可動部220の第1端部227aの下端が固定電極204aに近づくとともに、第2端部227bが固定電極204bから離れるように、可動部220が傾く。
【0030】
次に、固定電極204bに駆動電圧を印加する場合には、導電層225と固定電極204bとの間に静電引力が発生する。よって、可動部220の第2端部227bの下端が固定電極204bに近づくとともに、第1端部227aが固定電極204aから離れるように、可動部220が傾く。
【0031】
実施例1に係る光偏向装置20の効果を説明する。本願の光偏向装置20では、突出部241aおよび突出部241bによって中心軸240が形成されている。そして、突出部241aの周囲を規制部250aで取り囲むとともに、突出部241bの周囲を規制部250bで取り囲むことで、中心軸240に垂直な方向への中心軸240の移動範囲を規制することができる。可動部220が揺動するときには中心軸240の周りに揺動するため、可動部220の揺動時においても、中心軸240の位置は移動しない。よって、図86および図87に示す特許文献1の光偏向装置1000のように、中心軸から離れた部位を規制する場合に比して、規制部を小さくすることができる。これにより、光偏向装置20を平面視したときに、光偏向装置20が占有する面積に対して可動部220の面積が占める割合(開口率)を高めることができる。
【0032】
また、本願の光偏向装置20では、距離Laおよび距離Lbの各々は、距離Daと距離Dbを合計した距離よりも大きくされている。端部242aと規制部250aが接触するまで、中心軸240に沿って可動部220が図1の左側へ移動した場合には、端部242bと規制部250bとの離反距離が最大となる。この離反距離の最大値は、距離Daと距離Dbを合計した距離となる。そして本願の光偏向装置20では、突出部241bが突出している距離Lbが、距離Daと距離Dbを合計した距離よりも大きくされているため、突出部241bが規制部250bから外れてしまうことを防止できる。同様にして、端部242bと規制部250bが接触するまで、中心軸240に沿って可動部220が図1の右側へ移動した場合においても、突出部241aが突出している距離Laが、距離Daと距離Dbを合計した距離よりも大きくされているため、突出部241aが規制部250aから外れてしまうことを防止できる。
【0033】
また、突出部241aおよび241bが、規制部250aおよび250bによって支持されている状態で、可動部220が揺動する場合を説明する。本願の光偏向装置20では、中心軸240に垂直な断面において、突出部241aの断面は円形である。よって、突出部241aの下面の形状が、曲面を有して基板下層200側へ突出している。すると、突出部241aの下面と規制部250aの内壁が接触する際に、曲面で接触することになる。すなわち、中心軸240に垂直な断面(図4)で見た場合に、両者が常に点接触する。よって、可動部220が揺動する際に、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部220を揺動させることができる。なお、突出部241bと規制部250bにおいても、同様にして、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部220を揺動させることができる。
【0034】
また、本願の光偏向装置20では、突出部241aおよび突出部241bは、中心軸240に垂直な断面の形状が円形状とされている。可動部220に静電引力などの様々な力が作用することにより、突出部241aの外周面が、規制部250aの内壁の側面部分や上面部分など様々な部分に接触した状態で、可動部220が揺動する場合がある。本願の光偏向装置20では、突出部241aの中心軸240に垂直な断面の形状が円形状であるため、突出部241aの外周面は全て曲面とされている。よって、突出部241aの外周面が、規制部250aの内壁の何れの位置に接触する場合においても、両者の接触部分で引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部220を揺動させることができる。なお、突出部241bと規制部250bにおいても、同様にして、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部220を揺動させることができる。
【0035】
また、比較例として、可動部が支持梁によって支持され、固定端を有する光偏向装置を説明する。当該光偏向装置では、支持梁を基板下層の垂直上下方向へたわみにくくするには、支持梁断面の可動部に垂直な方向の厚さを厚くする必要がある。しかし、支持梁断面の可動部に垂直な方向の厚さを厚くするほど、支持梁の捻り抵抗力が大きくなるため、可動部を揺動させる際に必要な駆動力が大きくなってしまう。よって、支持梁のたわみにくさと駆動力とのバランスを取る必要があるため、光偏向装置の設計が困難となるなどの問題があった。一方、本願の光偏向装置20では、突出部241aおよび241bの周囲を、規制部250aおよび250bで取り囲んでいる構造であるため、可動部220を支持している突出部241aおよび241bの端部が固定されていない。よって、支持梁の捻り抵抗がないため、突出部241aおよび241bを基板下層200の垂直上下方向へたわみにくくするために、突出部241aおよび241bの断面の可動部220に垂直な方向の厚さを厚くした場合においても、可動部を揺動させる際に必要な駆動力が大きくならない。よって、可動部220の基板下層200の垂直上下方向への移動量を小さくすることと、少ない駆動力によって大きな揺動角を得ることを両立することが可能となる。これにより、光偏向装置20の組み立て時や、光偏向装置20の落下時など、ウェハ表面に垂直な方向を有する大きな加速度が可動部220に印加される場合においても、可動部220が基板下層200方向に沈み込む量を小さくすることができる。よって、可動部220下面が基板下層200上面に張り付いてしまう、いわゆるスティッキングの発生を防止することができる。
【0036】
次に、規制部250aおよび250bを備えている光偏向装置20の製造方法について、図4〜図52を用いて説明する。図5〜図28は、光偏向装置20の製造工程の各工程における材料ウェハ、または材料ウェハの上面に絶縁層等を積層した積層体の状態を、図4と同じ断面で図示している。また、図30〜51は、積層体の状態を、図29と同じ断面で図示している。尚、光偏向装置20のその他の構成については、従来用いられている一般的なMEMS技術を用いた光偏向装置の製造方法を適用することができる。
【0037】
最初に基板下層200を構成する各層を形成する。まず、図5に示すような材料ウェハ201を準備する。材料ウェハ201の材料には、例えば単結晶シリコン基板を用いることができる。次に、熱酸化等を行い、材料ウェハ201の上面に酸化膜から成る絶縁層202を形成する。次に、絶縁層202の上面にポリシリコン等を材料とする導電層204を成膜し、フォトエッチングを行ってパターニングして、規制部250aの土台部分を形成する。またこのフォトエッチングによって、固定電極204a、204b(図1、図2参照)も同時に形成される。ここで、フォトエッチングとは、フォトリソグラフィーからエッチングまでの一連の処理を意味する。さらに、絶縁層202、導電層204、固定電極204a、204bの上面に、絶縁層203を形成する。これにより、図6に示す基板下層200を形成することができる。
【0038】
図6に示す積層体に、ポリシリコン等を材料とする第1犠牲層251を形成する。次に、熱酸化等を行い、第1犠牲層251の上面に酸化膜から成るエッチング用マスク261を成膜する。フォトエッチングによりエッチング用マスク261にパターニング処理することによって、エッチングホール262を形成する。これにより、図7および図30に示すように、エッチングホール262を有する、エッチング用マスク261が形成される。図7において、エッチングホール262の中心位置は、規制部250aの中心位置と一致している。また、エッチングホール262の開口幅W5は、規制部250aの幅W1(図4参照)よりも小さい。これは後述するように、等方性エッチングにより、エッチングホール262の横方向へのエッチングが発生するためである。
【0039】
次に、エッチングホール262を通して、第1犠牲層251に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチングの例としては、XeF(二フッ化キセノン)ガス等を用いたドライエッチングが挙げられる。また、界面活性剤入りTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)等を用いたウェットエッチングが挙げられる。等方性エッチング処理により、図8および図31に示すように、エッチングホール262の開口部を中心として、窪み部263が形成される。等方性エッチングでは、縦横方向に同時にエッチングされるため、アンダーカット(エッチングホール262の横方向へのエッチング)が発生する。よって図8に示すように、エッチングによって第1犠牲層251に形成される窪み部263の断面形状を、半円形状にすることができる。また、窪み部263の半円形状における半径の値は、等方性エッチング処理の処理時間によって調整することができる。また、窪み部263は、図52の平面図に示すように、可動部220、突出部241aおよび241b、規制部250aおよび250b、導通部270を含む領域の全体を掘り下げるように形成される。その後、エッチング用マスク261を除去することにより、図9および図32に示すように、第1犠牲層251に窪み部263が形成されている形状が得られる。
【0040】
次に、第1犠牲層251上にレジスト層(不図示)を塗布する。そして、窪み部263の底部に開口部が形成されるように、レジスト層をフォトエッチングによりパターニング処理する。パターニングされたレジスト層を通して、第1犠牲層251および絶縁層203を異方性エッチング処理する。異方性エッチングの例としては、RIE(Reactive Ion Etching)が挙げられる。その後、レジスト層を除去する。これにより、図10および図33に示すように、窪み部263の底面の第1犠牲層251および絶縁層203が除去され、孔部264が形成される。
【0041】
図10および図33に示す積層体に熱酸化処理を行い、第1犠牲層251および導電層204の表面に、酸化膜からなる絶縁層253を成膜する。これにより、図11および図34に示す積層体が得られる。
【0042】
図11および図34に示す積層体に対して、CMP(Chemical Mechanical Polishing)によって平坦化が行われる。これにより、第1犠牲層251の上面に形成されている絶縁層253が除去されることで、窪み部263および孔部264の表面のみに絶縁層253が残存する。また、孔部264の底面のみが露出しているレジスト層(不図示)を形成し、異方性エッチング処理を行った後に、当該レジスト層を除去する。これにより、孔部264の底面の絶縁層253が除去され、導電層204が露出する。よって、図12および図35に示す積層体が得られる。
【0043】
図12および図35に示す積層体に、ポリシリコンの導電層254を成膜する。そして、CMPによる平坦化により、第1犠牲層251の上面に形成されている導電層254のみを除去する。そして、可動部220、規制部250aおよび250bの形状に合わせたレジスト層265を形成する。そしてフォトエッチング処理により、導電層254をパターニングする。これにより、図13および図36に示す積層体が得られる。また、図36に示すように、可動部220の領域の導電層254と、突出部241bの領域の導電層254とが、分離される。
【0044】
図13および図36に示す積層体からレジスト層265を除去する。そして、導電層254の上面に、熱酸化膜からなる絶縁層255を成膜する。さらに、CMPによる平坦化により、第1犠牲層251の上面に形成されている絶縁層255のみを除去する。これにより、図14および図37に示す積層体が得られる。
【0045】
図14および図37に示す積層体の上面に、可動部220、規制部250aおよび250bの形状に合わせたレジスト層266を形成する。そしてフォトエッチング処理により、絶縁層255および絶縁層253をパターニングする。これにより、図15および図38に示す積層体が得られる。また、図38に示すように、可動部220の領域の絶縁層253および255と、規制部250bの領域の絶縁層253および255とが、分離される。
【0046】
図15および図38に示す積層体の上面に、ポリシリコンを用いて、第2犠牲層256を形成する。そしてCMP工程により平坦化することで、窪み部257(図16)内および窪み部263(図39)内の第2犠牲層256のみが残される。これにより、図16および図39に示す積層体が得られる。
【0047】
次に熱酸化等を行い、図16および図39に示す積層体の上面に、酸化膜から成るエッチング用マスク280を成膜する。フォトエッチングによりエッチング用マスク280にパターニング処理することによって、エッチングホール282を形成する。エッチングホール262の形状は、図52の上面図のハッチング部に示すように、可動部220、突出部241aおよび241bに対応した形状とされる。突出部241aに対応しているエッチングホール282の中心位置は、突出部241aの中心位置と一致している。次に、エッチングホール282を通して、第2犠牲層256に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチング処理により、図17および図40に示すように、エッチングホール282の開口部を中心として、窪み部283が形成される。等方性エッチングでは、縦横方向に同時にエッチングされるため、突出部241aに対応する領域では、図17に示すように、窪み部283の断面形状を半円形状にすることができる。また、窪み部283の半円形状における半径は、等方性エッチング処理の処理時間によって調整することができる。図17における窪み部283の半径は、突出部241a断面の円の半径と一致するように決めればよい。
【0048】
図17および図40に示す積層体からエッチング用マスク280を除去した上で、エッチングホール268を有するレジスト層267を形成する。エッチングホール268は、図17および図40に示す積層体を上面から観測した場合に、可動部220が形成される領域内に位置するように形成される。そしてフォトエッチング処理により、第2犠牲層256をパターニングする。これにより、トレンチ部269が形成される。また、トレンチ部269の底面には、絶縁層255が露出する。そして、図18および図41に示す積層体が得られる。
【0049】
図18および図41に示す積層体からレジスト層267を除去した上で、酸化膜からなる絶縁層223を成膜する。このとき、トレンチ部269内が絶縁層223で充填される。そして、トレンチ部269に充填された絶縁層223が、トレンチ部269の下面に露出している絶縁層255に接続される。その後、CMP工程により平坦化することで、窪み部283内の絶縁層223のみが残される。これにより、図19および図42に示す積層体が得られる。
【0050】
図19および図42に示す積層体に、ポリシリコンの導電層225を成膜する。そしてCMPにより平坦化する。これにより、図20および図43に示す積層体が得られる。
【0051】
図20および図43の積層体に、レジスト層258を塗布する。次に、レジスト層258を、グレースケールマスクという特殊なマスクを用いて露光をすることで、パターニング処理を行う。パターニングは、突出部241aの導電層の大きさおよび形状に合わせて行われる。グレースケールマスクは、マスク部分に濃淡を有しており、濃淡により露光時の光の透過量を制御することが可能なマスクである。レジスト層258の露光工程では、マスクの光の透過量が大きい部分ほど、より深い部分のレジストが露光される。すると、ポジ型のレジスト(露光されると現像液に対して溶解性が増大し、露光部が除去されるレジスト)を用いる場合には、光の透過量が大きい部分ほど、現像後に残るレジスト層258の高さが低くなる。これにより、図21および図44に示す積層体が得られる。
【0052】
実施例1で用いられるグレースケールマスクは、突出部241aの導電層の上面の中央部(図21、点P1)での光の透過量が小さく、突出部241aの導電層の両端部(図21、点P2)に行くほど光の透過量が大きくなるように作られている。すると、露光後のレジスト層258を現像することで、図21に示すように、突出部241aを形成する領域の上面に、曲面を有して突起している3次元形状のレジスト層258を形成することができる。
【0053】
なお、ネガ型のレジスト(露光されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に露光部分が残るレジスト)を用いることも可能である。この場合は、突出部241aの上面の中央部(図21、点P1)での光の透過量が大きく、突出部241aの端部(図21、点P2)に行くほど光の透過量が小さくなるようなグレースケールマスクを用いればよい。
【0054】
次に、3次元形状にパターニングされたレジスト層258を通して、導電層225を異方性エッチング処理する。このとき、レジスト層258の3次元形状が、下層の導電層225に転写される。これにより、図22および図45に示す積層体が得られる。よって、図22に示すように、中心軸240に垂直な断面において、円形断面を有する、導電層225が形成される。
【0055】
なお、導電層225は、可動部220を作成する領域にも同時に成膜される。そして、可動部220を作成する領域の導電層225は、図22のグレースケールマスクを用いたエッチング工程の前後において、別のフォトエッチング処理により可動部220の形状にパターニングされる。これにより、可動部220内部の導電層225(図2、図3)が形成される。
【0056】
図22および図45に示す積層体に熱酸化処理を行うことで、酸化膜からなる絶縁層224を成膜する。これにより、図23および図46に示す積層体が得られる。
【0057】
図23および図46に示す積層体に、レジスト層292を形成する。そして、突出部241aおよび241bや可動部220の形状に合わせたフォトエッチングにより、絶縁層224および絶縁層223をパターニングする。これにより、導電層225を覆う絶縁層224のみが残されることで、図24および図47に示す積層体が形成される。なお、可動部220を作成する領域の絶縁層224も同時にフォトエッチングされることで、可動部220の形状にパターニングされる。これにより、可動部220の上面の絶縁層224(図2、図3)が形成される。
【0058】
図24および図47の積層体からレジスト層292を除去し、ポリシリコンを材料とする第3犠牲層293を成膜する。そして、第2犠牲層256の形状に合わせたフォトエッチングにより、第3犠牲層293をパターニングする。これにより、絶縁層224を覆う第3犠牲層293のみが残されることで、図25および図48に示す積層体が形成される。
【0059】
図25および図48の積層体に熱酸化処理を行うことで、酸化膜からなる絶縁層294を成膜する。そして、規制部250aおよび250bの形状に合わせたフォトエッチングにより、絶縁層294をパターニングする。これにより、図26および図49に示す積層体が形成される。そして、図26に示すように、第3犠牲層293を覆う絶縁層294のみが残される。
【0060】
以下同様にして、図26および図49の積層体にポリシリコンを材料とする導電層295を成膜し、規制部250aおよび250bの形状に合わせたフォトエッチングを行うことで、図27および図50に示す積層体が形成される。また、図27および図50の積層体に酸化膜からなる絶縁層296を成膜する。その後フォトエッチングにより、規制部250aおよび250b以外の部分の、絶縁層296および絶縁層294を除去する。これにより、図28および図51に示す積層体が形成される。
【0061】
図28および図51に示す積層体に対して、XeFガスによる等方性エッチング等を行うと、第1犠牲層251、第2犠牲層256および第3犠牲層293が除去される。なお、図28および図51の工程で行われる等方性エッチング処理は、第1犠牲層251〜第3犠牲層293の全てが完全に除去されるまで行なわれる。これによって、図4および図29に示すように、突出部241aを規制部250aの内壁から離反させるとともに、突出部241bを規制部250bの内壁から離反させることができる。これにより、図1ないし図3に示す光偏向装置20が完成する。
【0062】
なお、導通部270は、突出部241aを作る工程と同様にして、突出部241aと同時に作成されるため、ここでは導通部270の製造工程の詳細な説明は省略する。
【実施例2】
【0063】
実施例2に係る光偏向装置30について説明する。図53は、光偏向装置30の平面図である。図54は、図53のLIV−LIV線断面図である。図55は、図53のLV−LV線断面を拡大した図である。図69は、図53のLXIX−LXIX線断面を拡大した図である。可動部320は、導電層325によって形成されている。可動部320の端部342aに、突出部341aが形成されている。また、可動部320の端部342bに、突出部341bが形成されている。突出部341aおよび341bは、同一の中心軸340を有している。
【0064】
図53および図54に示すように、基板下層300上には、規制部350aおよび350bが設置されている。規制部350aで突出部341aが支持されており、規制部350bで突出部341bが支持されている。そして、可動部320が基板下層300の上方に離反した位置で、中心軸340の周りに揺動可能に支持されている。また、基板下層300上には外部端子332が形成されている。規制部350aの土台となっている導電層304は、外部端子332側へ伸びており、外部端子332と電気的に接続されている。
【0065】
図55において、突出部341aの中心軸340に垂直な断面は、円形状とされている。また、規制部350aの中心軸340に垂直な断面は、突出部341aの周囲を円形状に取り囲んでいる形状とされている。規制部350aは、基板下層300のウェハ層301の上に設置された、導電層304の上方に形成されている。規制部350aは、導電層354および導電層395によって形成されている。また、突出部341aは、導電層325によって形成されている。
【0066】
なお、規制部350bおよび突出部341bの構造は、規制部350aおよび突出部341aの各々と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、光偏向装置30のその他の構造は、実施例1の光偏向装置20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
突出部341aの表面、および、規制部350aの突出部341aを取り囲んでいる部位の内壁面は、導電材料が露出している。よって、突出部341aを規制部350aで支持する際に、導電材料同士が接触することで、電気的に導通を取ることができる。すると、外部端子332、導電層304、規制部350a、突出部341aおよび可動部320が、互いに電気的に導通する。そして、外部端子332に接地電位を与え、固定電極304aまたは304bの一方に駆動電圧を印加することにより、可動部320と駆動電圧を印加した固定電極との間に静電引力を作用させることができる。これにより、可動部320を基板下層300に対して揺動させることが可能となる。
【0068】
実施例2に係る光偏向装置30の効果を説明する。実施例2の光偏向装置30によれば、規制部350aを、突出部341aを支持する支持部として機能させるとともに、外部端子332と可動部320との間の導通をとるための導通部としても機能させることができる。これにより、実施例1の光偏向装置20が備えている導通部270を、別途形成する必要がないため、光偏向装置30の構造をより簡略化することができる。
【0069】
次に、実施例2に係る光偏向装置30の製造方法について、図55〜図81を用いて説明する。光偏向装置30の製造方法は、実施例1に係る光偏向装置20の製造方法(図4〜図52)と比して、規制部350aおよび突出部341aが導電層325のみで形成されている点が異なっている。また、犠牲層として酸化膜を用いる点が異なっている。
【0070】
図56に示すように、材料ウェハ301の上面にポリシリコンを材料とする導電層304を成膜し、フォトエッチングを行ってパターニングして、規制部350aの土台部分を形成する。またこのフォトエッチングによって、固定電極304a、304b(図53参照)も同時に形成される。その後、絶縁層302および導電層303を順番に積層する。これにより、図56に示す基板下層300を形成することができる。
【0071】
図56に示す積層体に、酸化膜を材料とする第1犠牲層351を形成する。次に、第1犠牲層351の上面にレジスト層から成るエッチング用マスク361を成膜する。フォトエッチングによりエッチング用マスク361にパターニング処理することによって、エッチングホール362を形成する。エッチングホール362を通して、第1犠牲層351に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチングの例としては、フッ素系ガス等を用いたドライエッチングが挙げられる。等方性エッチング処理により、図57および図70に示すように、エッチングホール362の開口部を中心として、窪み部363が形成される。窪み部363の半円形状における半径の値は、等方性エッチング処理の処理時間によって調整することができる。また、窪み部363は、可動部320、突出部341aおよび341b、規制部350aおよび350bを含む領域の全体を掘り下げるように形成される。その後、エッチング用マスク361を除去する。
【0072】
第1犠牲層351上にレジスト層(不図示)を塗布する。そして、窪み部363の底部に開口部が形成されるように、レジスト層をフォトエッチングによりパターニング処理する。パターニングされたレジスト層を通して、導電層303および絶縁層302を異方性エッチング処理する。これにより、図58および図71に示すように、窪み部363の底面の第1犠牲層351、導電層303および絶縁層302が除去され、孔部364が形成される。
【0073】
図58および図71に示す積層体に、ポリシリコンの導電層354を成膜する。そして、CMPによる平坦化により、第1犠牲層351の上面に形成されている導電層354のみを除去する。これにより、図59および図72に示す積層体が得られる。
【0074】
図59および図72に示す積層体の上面に、レジスト層からなるエッチング用マスク380を成膜する。フォトエッチングによりエッチング用マスク380にパターニング処理することによって、エッチングホール382を形成する。次に、エッチングホール382を通して、導電層354に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチング処理により、図60および図73に示す積層体が得られる。そして、突出部341bを作成する領域では、図60に示すように、エッチングホール382の開口部を中心として窪み部383が形成される。
【0075】
図60および図73に示す積層体からエッチング用マスク380を除去した後に、可動部320、規制部350aおよび350bの形状に合わせたレジスト層366を形成する。そしてフォトエッチング処理により、導電層354をパターニングする。これにより、図61および図74に示す積層体が得られる。また、図74に示すように、可動部320の領域の導電層354と、規制部350bの領域の導電層354とが、分離される。
【0076】
図61および図74に示す積層体からレジスト層366を除去した後に、酸化膜を用いて、第2犠牲層356を成膜する。そしてCMP工程により平坦化することで、窪み部383内の第2犠牲層356のみが残される。これにより、図62および図75に示す積層体が得られる。
【0077】
図62および図75に示す積層体に、エッチングホール368を有するレジスト層367を形成する。エッチングホール368は、図62および図75に示す積層体を上面から観測した場合に、可動部320が形成される領域内に位置するように形成される。そしてフォトエッチング処理により、第2犠牲層356をパターニングする。これにより、トレンチ部369が形成される。また、トレンチ部369の底面には、導電層354が露出する。そして、図63および図76に示す積層体が得られる。
【0078】
図63および図76に示す積層体からレジスト層367を除去した後に、ポリシリコンの導電層325を成膜する。このとき、トレンチ部369内が導電層325で充填される。そして、トレンチ部369に充填された導電層325が、トレンチ部369の下面に露出している導電層354に接続される。そしてCMPにより平坦化する。これにより、図64および図77に示す積層体が得られる。
【0079】
図64および図77の積層体に、レジスト層359を塗布する。次に、レジスト層359を、グレースケールマスクを用いて露光をすることで、パターニング処理を行う。パターニングは、突出部341aの大きさおよび形状に合わせて行われる。露光後のレジスト層359を現像することで、図65および図78に示す積層体が得られる。このとき、図65に示すように、突出部341aを形成する領域の上面に、曲面を有して突起している3次元形状のレジスト層359を形成することができる。次に、3次元形状にパターニングされたレジスト層359を通して、導電層325を異方性エッチング処理する。このとき、レジスト層359の3次元形状が、下層の導電層325に転写される。よって、図66および図79に示す積層体が得られる。このとき、図66に示すように、中心軸340に垂直な断面において、円形断面を有する導電層325が形成される。
【0080】
なお、導電層325は、可動部320を作成する領域にも同時に成膜される。そして、可動部320を作成する領域の導電層325は、図66および図79のグレースケールマスクを用いたエッチング工程の前後において、別のフォトエッチング処理により可動部320の形状にパターニングされる。これにより、導電層325によって、可動部320(図53、図54)が形成される。
【0081】
図66および図79の積層体上に、酸化膜を材料とする第3犠牲層393を成膜する。次にレジストを材料とするエッチング用マスク398を成膜する。そして、突出部341aおよび341bや可動部320の形状に合わせたフォトエッチングにより、第3犠牲層393をパターニングする。これにより、図67および図80に示す積層体が形成される。
【0082】
図67および図80に示す積層体からエッチング用マスク398を除去し、ポリシリコンを材料とする導電層395を成膜する。次にレジストを材料とするエッチング用マスク399を成膜する。そして、規制部350aおよび350bの形状に合わせたフォトエッチングにより、導電層395をパターニングする。これにより、図68および図81に示す積層体が形成される。
【0083】
図68および図81に示す積層体からエッチング用マスク399を除去した上で、フッ素系ガスによる等方性エッチング等を行うと、第1犠牲層351、第2犠牲層356および第3犠牲層393が除去される。なお、図68の工程で行われる等方性エッチング処理は、第1犠牲層351〜第3犠牲層393の全てが完全に除去されるまで行なわれる。これによって、図55および図69に示すように、突出部341aを規制部350aの内壁から離反させることができる。これにより、図53および図54に示す光偏向装置30が完成する。
【0084】
実施例2に係る光偏向装置30の製造方法の効果を説明する。実施例2に係る光偏向装置30では、可動部320、突出部341aおよび341b、規制部350aおよび350bを、ポリシリコンの導電層のみで形成することができる。よって、実施例1に係る光偏向装置20に比して、導電層の表面を絶縁層で被覆するための工程を省略することができるため、より少ない工程で光偏向装置30を作成することが可能となる。
【0085】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0086】
実施例1および2では、グレースケールマスクを用いる場合を説明したが、この形態に限られない。グレースケールマスクを用いない場合にも、本願の突出部および規制部を形成することが可能である。実施例1の図21の工程において、グレースケールマスクに替えて通常のマスクを用いた場合には、レジスト層258は、一定厚さを有する2次元形状にパターニングされる。この場合、異方性エッチングの処理時において、レジスト層258の2次元形状が下層の導電層225に転写される。その後、図22〜図28の工程を適用すると、図82に示すような突出部441aおよび規制部450aが得られる。突出部441aの中心軸に垂直な断面は、下面が半円形状となり、上面が矩形形状となる。すなわち、突出部441aの下面の形状が、曲面を有して基板下層400側へ突出している形状とされている。また、規制部450aの中心軸に垂直な断面も、内壁面の下面が半円形状となり、内壁面の上面が矩形形状となる。すなわち、規制部450aの内壁のうち、突出部441aの下面と対向する部分が、曲面を有して窪んでいる形状とされている。
【0087】
これにより、突出部441aの下面と、規制部450aの内壁の上面(窪んでいる面)とが噛み合うことになる。よって、突出部441aが、基板下層400に平行な方向であって中心軸に垂直な方向へ移動することを規制することができる。すなわち、突出部441aの規制部450a上での位置決めをすることができる。また、突出部441aの下面と、規制部450aの内壁の上面とは、共に曲面で形成されている。よって、両者の面が噛み合った状態で、中心軸を中心にして可動部を揺動させる場合においても、噛み合い部で引っかかりが発生しないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0088】
同様にして、実施例2の図65の工程において、通常のマスクを用いた場合には、レジスト層359は、一定厚さを有する2次元形状にパターニングされる。この場合、異方性エッチングの処理時において、レジスト層359の2次元形状が下層の導電層325に転写される。その後、図66〜図68の工程を適用すると、図83に示すような突出部541aおよび規制部550aが得られる。突出部541aの中心軸に垂直な断面は、下面が半円形状となり、上面が矩形形状となる。また、規制部550aの中心軸に垂直な断面も、内壁面の下面が半円形状となり、内壁面の上面が矩形形状となる。よって、図83に示す構造においても、図82に示す構造と同様にして、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0089】
また、実施例1および2では、突出部が可動部に形成され、突出部の周囲を取り囲んでいる規制部が基板下層上に形成される場合を説明したが、この形態に限られない。図84の斜視図に示す、光偏向装置60のような形態であってもよい。光偏向装置60では、基板下層に柱状部610aおよび610bが形成されている。柱状部610aおよび610bの外周の一端から、突出部641aおよび641bが突出している。また、可動部620の端部に規制部650aおよび650bが形成されている。規制部650aは、突出部641aの中心軸640の周囲を取り囲んでいる。同様に、規制部650bは、突出部641bの中心軸640の周囲を取り囲んでいる。この形態によっても、可動部620を、基板下層の上方に離反した位置で、中心軸640の周りに揺動可能に支持することができる。
【0090】
また、突出部および規制部の形状は、様々な組み合わせが可能である。例えば、図85に示すような突出部741aおよび規制部750aの組み合わせであってもよい。図85では、中心軸に垂直な断面において、突出部741aの下面の形状が、曲面を有して基板下層700へ突出している形状とされている。すると、突出部741aの下面と規制部750aの内壁の上面(突出部741aを支持する面)が接触する際に、曲面と平面との接触となる。よって、可動部が揺動する際に、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0091】
また、実施例1および2では、可動部を揺動させるアクチュエータが静電駆動式である場合を説明したが、この形態に限られない。本願の技術は、可動部の揺動に関する技術である。よって、電磁駆動式や熱駆動式などの他の駆動方式に対しても、本願の技術を適用することが可能である。
【0092】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0093】
20、30、60 光偏向装置
200、300、400 基板下層
220、320、620 可動部
240、340、640 中心軸
241a、241b、341a、341b、441a、441b、641a、641b、741a、741b 突出部
250a、250b、350a、350b、650a、650b、750a、750b、 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
平板形状の可動部と、
前記可動部の第1の端部に接続されている第1の突出部と、
前記第1の突出部と同一の中心軸を有するように、前記可動部の第2の端部に接続されている第2の突出部と、
前記基板上に設置されており、前記第1の突出部が回転可能に前記第1の突出部の前記中心軸の周囲を取り囲んでいる第1の規制部と、
前記基板上に設置されており、前記第2の突出部が回転可能に前記第2の突出部の前記中心軸の周囲を取り囲んでいる第2の規制部と、
前記可動部を揺動させるアクチュエータと、
を備え、
前記第1の規制部で前記第1の突出部が支持されており、前記第2の規制部で前記第2の突出部が支持されていることで、前記可動部が前記基板の上方に離反した位置で前記中心軸の周りに揺動可能に支持されていることを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
前記第1の突出部が前記第1の端部から前記中心軸に沿って突出している距離、および、前記第2の突出部が前記第2の端部から前記中心軸に沿って突出している距離の各々は、
前記可動部の前記第1の端部と前記第1の規制部との間の前記中心軸に沿った第1の離反距離と、前記可動部の前記第2の端部と前記第2の規制部との間の前記中心軸に沿った第2の離反距離を合計した距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光偏向装置。
【請求項3】
前記中心軸に垂直な断面における前記第1の突出部の下面の形状が、曲面を有して前記基板側へ突出している形状とされており、
前記中心軸に垂直な断面における前記第2の突出部の下面の形状が、曲面を有して前記基板側へ突出している形状とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の光偏向装置。
【請求項4】
前記第1の規制部の前記中心軸に垂直な断面において、前記第1の突出部の下面と対向する面が曲面を有して窪んでいる形状とされており、
前記第2の規制部の前記中心軸に垂直な断面において、前記第2の突出部の下面と対向する面が曲面を有して窪んでいる形状とされており、
前記第1の突出部の下面の曲率が、前記第1の規制部の前記第1の突出部の下面と対向する面の曲率以上とされており、
前記第2の突出部の下面の曲率が、前記第2の規制部の前記第2の突出部の下面と対向する面の曲率以上とされていることを特徴とする請求項3に記載の光偏向装置。
【請求項5】
前記第1の突出部の前記中心軸に垂直な断面の形状が円形状とされており、
前記第2の突出部の前記中心軸に垂直な断面の形状が円形状とされていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の光偏向装置。
【請求項6】
前記基板上に設置され、外部と電気的に接続される端子部と、
前記第1の突出部の前記基板に沿った方向の幅よりも小さい幅を有し、導電材料で形成されており、一端が前記端子部に電気的に接続され、他端が前記第1の突出部の端部に電気的に接続されている導通部と、
をさらに備え、
前記アクチュエータは、
前記基板上の、前記中心軸を通り前記基板に垂直な面に対して対称な位置に、一対の下部電極を備え、
前記可動部および前記第1の突出部は、前記導電材料で形成されており、
前記第1の突出部と前記可動部とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の光偏向装置。
【請求項7】
前記基板上に設置され、外部と電気的に接続される端子部をさらに備え、
前記アクチュエータは、前記基板上の、前記中心軸を通り前記基板に垂直な面に対して対称な位置に、一対の下部電極を備え、
前記第1の規制部は、導電材料で形成され、前記端子部に電気的に接続されており、
前記可動部および前記第1の突出部は、前記導電材料で形成されており、
前記第1の突出部と前記可動部とが電気的に接続されており、
前記第1の突出部の表面、および、前記第1の規制部の前記第1の突出部を取り囲んでいる部位の内壁面は、前記導電材料が露出していることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の光偏向装置。
【請求項8】
基板と、
平板形状の可動部と、
前記基板上の前記可動部の第1の端部と対向する位置に設置されており、前記基板の上方に伸びている第1の土台部と、
前記基板上の前記可動部の第2の端部と対向する位置に設置されており、前記基板の上方に伸びている第2の土台部と、
前記第1の土台部から、前記可動部の側へ前記基板と平行に伸びている第1の突出部と、
前記第2の土台部から、前記第1の突出部と同一の中心軸を有するように、前記可動部の側へ前記基板と平行に伸びている第2の突出部と、
前記可動部の第1の端部に接続されており、前記第1の突出部が回転可能に前記第1の突出部の前記中心軸の周囲を取り囲んでいる第1の規制部と、
前記可動部の第2の端部に接続されており、前記第2の突出部が回転可能に前記第2の突出部の前記中心軸の周囲を取り囲んでいる第2の規制部と、
前記可動部を揺動させるアクチュエータと、
を備え、
前記第1の突出部で前記第1の規制部が支持されており、前記第2の突出部で前記第2の規制部が支持されていることで、前記可動部が前記基板の上方に離反した位置で前記中心軸の周りに揺動可能に支持されていることを特徴とする光偏向装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図56】
image rotate

【図57】
image rotate

【図58】
image rotate

【図59】
image rotate

【図60】
image rotate

【図61】
image rotate

【図62】
image rotate

【図63】
image rotate

【図64】
image rotate

【図65】
image rotate

【図66】
image rotate

【図67】
image rotate

【図68】
image rotate

【図69】
image rotate

【図70】
image rotate

【図71】
image rotate

【図72】
image rotate

【図73】
image rotate

【図74】
image rotate

【図75】
image rotate

【図76】
image rotate

【図77】
image rotate

【図78】
image rotate

【図79】
image rotate

【図80】
image rotate

【図81】
image rotate

【図82】
image rotate

【図83】
image rotate

【図84】
image rotate

【図85】
image rotate

【図86】
image rotate

【図87】
image rotate


【公開番号】特開2012−83408(P2012−83408A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227460(P2010−227460)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】