説明

光半導体素子封止用樹脂組成物およびそれを用いて得られる光半導体装置

【課題】高い光透過率と適度な光拡散性を有し、内部応力の低減化が図られた光半導体素子封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)成分を含有する光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物である。
(A)下記の構造式(1)で表されるエポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂。


(B)硬化剤。
(C)酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
LEDディスプレイ,バックライト光源,表示器,各種インジケータ等に利用される白色の発光ダイオード(LED)は、青色LED素子を、蛍光体を含有する熱硬化性透明樹脂を用い封止することにより製造されるものであり、本発明は、安定した2次発光を利用してなる光半導体装置において光拡散効果があり、内部応力が小さな樹脂組成物および光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記2次発光を利用するLED発光装置において、黄色蛍光体を青色LED素子近傍に配置させるために塗布する際に用いられるポッティング用封止樹脂組成物としては、蛍光体粉末と液状ポッティング樹脂とを混合してポッティングに供される。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−93146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
短波長を用いるLEDデバイスの封止においては、耐光性の問題が課題となっており、高透過でかつ耐熱性の高い樹脂の使用が求められている。
【0004】
上記黄色蛍光体の効率は比較的高いものの演色性に欠けるという欠点がある。また、ポッティング塗布において、上記のような封止用樹脂組成物を封止樹脂として用いると、硬化中の沈降現象のため蛍光体粉末粒子の分散性が均一ではないという問題があった。また、上記蛍光体粉末と光半導体素子封止用樹脂組成物粉末とをブレンドし封止材料として用いた場合、トランスファー成形中に流れムラを生じたり、混合釜で直接蛍光体粉末を投入し樹脂組成物と混合した場合でも、比重の大きい蛍光体粉末が溶融混合物の受け入れ時に沈降偏析して蛍光体濃度が不均一となることが多い。このため、発光色のムラが観察されるという問題が生じる。さらに、蛍光体粉末粒子そのものによってもたらされる拡散効果はその蛍光体の含有量により左右され、また、これら封止材料で樹脂封止された硬化体は内部応力が大きいが、光発光体効率の観点から拡散効果と低応力化を充分に満たす封止材料を用いることは困難であった。
【0005】
例えば、白色LEDがLEDの集合体であるディスプレイに使用される場合、一つ一つの発光色のばらつきが問題となる。このため、発光色のばらつきの少ないLEDを選別してディスプレイを構成しているが、結果、生産歩留りが低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高い光透過率と適度な光拡散性を有し、内部応力の低減化が図られた光半導体素子封止用樹脂組成物およびそれを用いて得られる光半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(C)成分を含有する光半導体素子封止用樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の構造式(1)で表されるエポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂。
【化1】

(B)硬化剤。
(C)酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方(酸窒化物蛍光体および/または窒化物蛍光体)。
【0008】
また、本発明は、上記光半導体素子封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明者らは、低応力化とともに耐熱耐光性に優れ、蛍光体粉末の沈降偏析が抑制され均一分散された光半導体素子の封止材料を得るべく鋭意検討を重ねた。そして、蛍光体粉末が不均一とならないよう均一分散が可能となる蛍光体成分および内部応力の低減化が可能な樹脂成分を中心に研究を重ねた結果、上記特定のエポキシ化合物を用いるとともに、上記酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方〔(C)成分〕を用いると、従来の蛍光体に比べて比重が小さいことから、封止材料中に沈降偏析の発生が抑制されて均一分散されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明は、前記エポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂〔(A)成分〕と、前記酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方〔(C)成分〕を含有する光半導体素子封止用樹脂組成物である。このため、上記蛍光体成分〔(C)成分〕が組成物中に偏析せず均一に分散され、適度な光拡散性と高い光透過率を備え、しかも内部応力の低減化が図られたエポキシ樹脂組成物が得られる。したがって、上記樹脂組成物によってLED素子を封止すると、安定した発光が得られ、その機能を充分に発揮することができる。
【0011】
さらに、ガラス粉末〔(D)成分〕を用いるとともに、アッベ数および屈折率の関係が前記特定の関係を満たすものであると、光透過率の低下を最小限に抑制しながら、硬化物の熱膨張係数を小さくすることができ、その結果、温度サイクル性に求められる内部応力の低減化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物は、特定のエポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方(C成分)とを用いて得られるものであり、通常、粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状として用いられる。なお、上記特定のエポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂成分が特定のエポキシ化合物のみから構成される場合も含める趣旨である。
【0013】
上記特定のエポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂(A成分)は、下記の構造式(1)で表されるエポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレートを主成分とするものである。具体的には、上記構造式(1)で表されるエポキシ化合物であるトリグリシジルイソシアヌレートの含有量をエポキシ樹脂成分全体の40重量%以上に設定することが好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、エポキシ樹脂成分(A成分)全体が上記トリグリシジルイソシアヌレートのみで構成されていてもよい。すなわち、トリグリシジルイソシアヌレートの含有量が40重量%未満では、充分な耐熱耐光性が得られ難い傾向がみられるからである。
【0014】
【化2】

【0015】
上記特定のエポキシ化合物以外に用いられるエポキシ樹脂成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらエポキシ樹脂のなかでも、透明性および耐変色性に優れる、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
【0016】
そして、上記エポキシ樹脂は、常温で固形を示すものであっても液状を示すものであってもよいが、一般に使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量が、90〜1000のものが好ましく、また固形を示す場合には、軟化点が160℃以下のものを用いることが好ましい。すなわち、エポキシ当量が90未満の場合には、得られる光半導体素子封止用樹脂組成物硬化体が脆くなる傾向がみられる。また、エポキシ当量が1000を超えると、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられるからである。なお、本発明において、常温とは、25±5℃を意味する。
【0017】
さらには、上記エポキシ樹脂以外に、他の熱硬化性透明樹脂を併用することができる。例えば、不飽和ポリエステル樹脂等があげられる。
【0018】
上記A成分とともに用いられる硬化剤(B成分)としては、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等があげられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら酸無水物系硬化剤のなかでも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。そして、上記酸無水物系硬化剤としては、その分子量が、140〜200程度のものを用いることが好ましく、また無色あるいは淡黄色の酸無水物を用いることが好ましい。
【0019】
また、上記フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂系硬化剤等があげられる。
【0020】
また、上記硬化剤(B成分)としては、その目的および用途によっては、上記酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤以外に、従来から公知のエポキシ樹脂の硬化剤、例えば、アミン系硬化剤、上記酸無水物系硬化剤をアルコールで部分エステル化したもの、またはヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸の硬化剤を単独で、もしくは酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤と併用してもよい。例えば、カルボン酸の硬化剤を併用した場合には、硬化速度を速めることができ、生産性を向上させることができる。なお、これらの硬化剤を用いる場合においても、その配合割合は、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤を用いた場合の配合割合(当量比)に準じればよい。
【0021】
上記透明エポキシ樹脂成分(A成分)と硬化剤(B成分)との配合割合は、上記透明エポキシ樹脂成分(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、硬化剤(B成分)におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水基または水酸基)が0.5〜1.5当量となるような割合に設定することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量である。すなわち、活性基が0.5当量未満の場合には、光半導体素子封止用樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられ、1.5当量を超えると、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
【0022】
上記A成分およびB成分とともに用いられる酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方(C成分)としては、その耐久性の観点から、酸窒化物結晶に光学活性なEu2+等のイオンを付活したもの、および、窒化物結晶に光学活性なEu2+等のイオンを付活したものの少なくとも一方が用いられる。そして、上記酸窒化物蛍光体,窒化物蛍光体のなかでも、演色性の観点から、α−サイアロン蛍光体、β−サイアロン蛍光体、CASN蛍光体を用いることが好ましい。
【0023】
上記α−サイアロン蛍光体のα−サイアロンとは、α−Si3 4 結晶の結晶構造を保ったまま、α−Si3 4 結晶に金属イオンMが侵入型固溶すると同時に、Siの一部がAlで、Nの一部がOでそれぞれ置換された無機化合物である。その組成は、下記の一般式(α)で表される。ここで、式(α)中のMとしては、Li、Mg、Ca、Y、ランタノイド元素等があげられ、これによりα−サイアロンを形成する。そして、上記α−サイアロン蛍光体は、M−α−サイアロンのMイオンの位置を部分的に光学活性な金属イオンAで置換した構造を持ち、一般式:(Mx ,Ay )(Si,Al)12(O,N)16で示される。上記Aイオンとしては、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Yb等をあげることができる。なかでも、Ca−α−サイアロン結晶のCaの一部をEuで置換した無機化合物:(Cax ,Euy )(Si,Al)12(O,N)16は300nmから470nmの幅広い範囲の光を吸収して570nmから600nmの範囲にピークをもつ黄色から橙色の発光をする蛍光体となるため、白色LED用途に適している。
【0024】
【化3】

【0025】
上記β−サイアロン蛍光体のβ−サイアロンとは、β−Si3 4 結晶の結晶構造を保ったまま、β−Si3 4 結晶のSiの一部がAlで、Nの一部がOでそれぞれ置換された無機化合物である。その組成は、下記の一般式(β)で表される。通常、β−サイアロンには、金属元素Mは固溶しないと言われてきたが、本発明者が微量の金属元素が固溶することを見出した。ここで、固溶金属として光学活性な金属イオンAを結晶内に導入すると、Si6-z Alz z 8-z :Aで示される蛍光体となる。上記Aイオンとしては、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Yb等をあげることができる。なかでも、β−サイアロン結晶にEuを導入した化合物Si6-z Alz z 8-z :Euは、250nmから470nmの幅広い範囲の光を吸収して530nmから550nmの範囲にピークをもつ緑色の発光をする蛍光体となるため、白色LED用途に適している(広崎尚登他、アプライド フィジックス レターズ誌、第86巻 211905ページ、2005年)。
【0026】
【化4】

【0027】
上記CASN蛍光体のCASNとは、CaAlSiN3 結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶の総称である。CASN系の結晶では、CaAlSiN3 の結晶構造を保ったまま、CaAlSiN3 のCaの一部または全部を、Mg,Sr,Ba等で、Siの一部をAlで、Nの一部をOでそれぞれ置換することができる。ここで、Caの一部を光学活性な金属イオンAで置換した無機化合物が蛍光体となり、これがCASN蛍光体である。上記Aイオンとしては、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Yb等をあげることができる。なかでも、CASN結晶にEuを導入した化合物CaAlSiN3 :Euは、250nmから500nmの幅広い範囲の光を吸収して600nmから670nmの範囲にピークをもつ赤色の発光をする蛍光体となるため、白色LED用途に適している(広崎尚登他、第65回応用物理学会、学術講演会講演予稿集 第3巻、1283ページ、2004年)。
【0028】
上記酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方である蛍光体成分(C成分)は、例えば、従来からのCeで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG/Ce)系の蛍光体に比べて比重が軽く、本発明において、上記エポキシ樹脂成分(A成分)を用いた場合においても、光半導体素子封止用樹脂組成物の製造工程中における偏析が少なく、成形物とした場合の色度のばらつきを低く抑制することができる。
【0029】
上記酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方である蛍光体成分(C成分)の平均粒径は、0.5〜50μmの範囲であることが好ましく、成形時の未充填と粒子そのものの凝集防止の観点から、0.8〜20μmの範囲がより好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0030】
そして、光半導体素子封止用樹脂組成物全体における、上記酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方(C成分)の含有量は、例えば、発光ダイオード等の輝度によって左右されるため、特に限定されるものではない。
【0031】
上記A〜C成分とともに、さらにガラス粉末(D成分)を配合することができる。上記ガラス粉末(D成分)としては、SiO2 、もしくはSiO2 およびB2 3 を主成分とするものがあげられ、上記ガラス粉末のアッベ数を調整するために、亜鉛、チタン、セリウム、ビスマス、鉛、セレンから選ばれた少なくとも一つを適宜配合することが好ましい。特に、樹脂成分〔ガラス粉末(D成分)および蛍光体成分(C成分)以外の成分〕を硬化して得られる硬化体のアッベ数に、ガラス粉末(D成分)のアッベ数を近似させるためには、亜鉛、チタンを配合することが好ましい。亜鉛が配合される場合には、通常、ZnOとして配合され、その含有率が、ガラス粉末に対して、1〜10重量%の範囲に設定されることが好ましい。また、チタンが配合される場合には、通常、TiO2 として配合され、その含有率が、ガラス粉末に対して、1〜10重量%の範囲に設定されることが好ましい。
【0032】
また、ガラス粉末(D成分)の屈折率を調整するためには、必要に応じて、Na2 O、Al2 3 、CaO、BaO等が適宜配合されていることが好ましい。
【0033】
そして、このようなガラス粉末(D成分)は、例えば、上記した各原料成分を溶融し、急冷して得られたガラスフリットを、ボールミル等を用いて粉砕することによって得ることができる。得られた粉砕状ガラス粉末は、そのまま用いてもよいが、例えば、その表面をフレーム処理して球状化した球状ガラス粉末として用いることが好ましい。すなわち、球状ガラス粉末は、表面の泡やクラック等がなく、樹脂成分とガラス粉末の界面での光散乱が少なく、得られた硬化体の光透過率の向上を図ることができる。
【0034】
また、上記得られたガラス粉末は、例えば、篩等によって所定の粒子径のものとして得ることが好ましく、このようなガラス粉末(D成分)の粒子径としては、ガラス粉末混入時の樹脂成分の粘度や成形時のゲートつまり等の成形性を考慮すると、平均粒径が5〜100μmであることが好ましい。
【0035】
また、線膨張係数の低減と透明性および成形性を考慮すると、光半導体素子封止用樹脂組成物全体におけるガラス粉末(D成分)の含有量は、10〜90重量%となるように設定することが好ましく、特に好ましくは20〜70重量%である。すなわち、光半導体素子封止用樹脂組成物全体の10重量%未満では、線膨張率の低下効果が小さくなって低応力化が困難となり、また90重量%を超えると、トランスファー成形する際に、樹脂組成物の流動性の低下がみられ、成形性が低下する傾向がみられるからである。
【0036】
さらに、本発明における光半導体素子封止用樹脂組成物には、前記A〜C成分およびガラス粉末(D成分)以外に、必要に応じて、従来から用いられている、例えば、硬化触媒、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、レベリング剤、離型剤、染料、顔料等の公知の各種の添加剤を適宜配合してもよい。
【0037】
上記硬化触媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、およびこれらの誘導体等があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上併せて用いてもよい。これら硬化促進剤の中でも、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
【0038】
上記硬化触媒の含有量は、上記エポキシ樹脂成分(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して0.01〜8.0部に設定することが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0部である。すなわち、0.01部未満では、充分な硬化促進効果が得られ難く、また8.0部を超えると、得られる硬化体に変色がみられる場合があるからである。
【0039】
上記劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の従来から公知の劣化防止剤があげられる。上記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の従来から公知の変性剤があげられる。上記シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等の従来から公知のシランカップリング剤があげられる。また、上記脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の従来公知の脱泡剤があげられる。
【0040】
そして、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物では、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化してなる硬化体のアッベ数(m1)と、上記ガラス粉末(D成分)のアッベ数(m2)との関係が下記の式(a)を満足することが好ましい。特に好ましくは、下記の式(a′)である。なお、アッベ数とは、いわゆる逆分散能を指称するものであって、本発明において、アッベ数は、下記の式(x)で表される。
【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
【数3】

【0044】
すなわち、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化してなる硬化体のアッベ数(m1)と、上記ガラス粉末(D成分)のアッベ数(m2)との差が−5.0を下回る、あるいは5.0を超えると、各波長における良好な光透過率を得ることが困難となる。なお、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化してなる硬化体のアッベ数(m1)と、上記ガラス粉末(D成分)のアッベ数(m2)とは、いずれの値が大きくても、もしくはいずれの値が小さくてもよい。
【0045】
さらに、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物では、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化してなる硬化体の屈折率(n1)と、上記ガラス粉末(D成分)の屈折率(n2)との関係が下記の式(b)を満足することが好ましい。特に好ましくは、光透過率維持の観点から、下記の式(b′)を満足することである。
【0046】
【数4】

【0047】
【数5】

【0048】
すなわち、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化してなる硬化体の波長589.3nmにおける屈折率(n1)と、上記ガラス粉末(D成分)の波長589.3nmにおける屈折率(n2)との差が−0.005を下回る、あるいは0.005を超えると、各波長における良好な光透過率を得ることが困難となる。なお、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化してなる硬化体の屈折率(n1)と、上記ガラス粉末(D成分)の屈折率(n2)とは、いずれの値が大きくても、もしくはいずれの値が小さくてもよい。
【0049】
さらに、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物では、上記蛍光体成分(C成分)およびガラス粉末(D成分)以外の成分である樹脂成分を硬化して得られる硬化体のアッベ数が、例えば、20〜65であることが好ましく、より好ましくは25〜60である。また、ナトリウムD線における屈折率(nD)が、1.40〜1.65であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.60である。
【0050】
このようなアッベ数および屈折率を得るための、エポキシ樹脂成分(A成分)および硬化剤(B成分)の好ましい組み合わせとしては、例えば、エポキシ樹脂成分(A成分)としてトリグリシジルイソシアヌレートとビスフェノールA型エポキシ樹脂を併用し、かつ硬化剤(B成分)として酸無水物系硬化剤を用いる組み合わせである。
【0051】
そして、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、液状の光半導体素子封止用樹脂組成物を得るには、例えば、上記A〜C成分および必要に応じて配合される添加剤、さらには場合によりガラス粉末を適宜配合する。また、粉末状もしくはその粉末を打錠したタブレット状の光半導体素子封止用樹脂組成物を得るには、例えば、上記と同様、各配合成分を適宜配合し、予備混合した後、混練機を用いて混練して溶融混合し、ついで、これを室温まで冷却した後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠することにより製造することができる。
【0052】
ところで、通常、蛍光体自身の比重は重く、また凝集粒となっており、より沈降しやすい状態にある。この蛍光体をポッティング用途で常温で液状の樹脂と予備混合するとその樹脂の熱硬化キュア中に沈降を生じ、その硬化体中の蛍光体の分散配置としては不均一なものとなる。したがって、その均一性から固形材料中に混合する方法が用いられるが、蛍光体粉末とそれ以外の光半導体素子封止用樹脂組成物粉末とをブレンドし成形に供した場合、成形中流れムラを生じたり、混合釜で直接蛍光体粉末を投入して樹脂組成物と混合した場合においても、比重の大きい蛍光体が溶融混合物の受け入れ時に沈降偏析して蛍光体濃度が不均一となることが多い。このため、発光色のムラが観察されることとなる。したがって、蛍光体成分を含有する光半導体素子封止用樹脂組成物の製造方法において、前記各構成成分を溶融混合する第1の工程と、上記第1の工程により得られた溶融混合物を、厚み2〜70mmのシート状に、蓄熱による内部でのゲル化を防止するためにより好ましくは厚み2〜25mmに展開した状態で、所定の温度雰囲気下において、粘度調整する第2の工程において、蛍光体成分を除く樹脂成分の粘度を0.8Pa・s(60℃)以上に保持することが好ましい。上記設定温度は、その粘度調整の雰囲気温度のばらつき、蛍光体の比重のばらつきの観点から、より好ましくは1.0Pa・s(60℃)以上に設定することである。上記粘度は、例えば、レオメーター(HAAKE社製、RS−1)により測定される。
【0053】
このような製造方法にて得られた樹脂組成物を、成形時の成形温度にてパッケージに充填する場合にはその剪断速度の変化により蛍光体は流動中にも均一に分散するが、パッケージ内に充填された後、溶融状態が長く保持されると蛍光体が沈降し偏析する可能性が生じる。したがって、沈降防止のために、150℃における熱板上のゲル化試験(ゲルタイム)において、好ましくは10〜60秒に設定することにより、上記偏析を防止することが可能となる。すなわち、ゲルタイムが10秒より短いと成形時に未充填が生じ易く、60秒より長いと、蛍光体の偏析やボイドが発生しやすい傾向がみられるからである。また、成形上の未充填,成形サイクルの観点から、ゲルタイムは15〜40秒の範囲に設定することがより好ましい。
【0054】
このようにして得られた光半導体素子封止用樹脂組成物は、例えば、LED等の光半導体素子の封止用として用いられる。すなわち、上記光半導体素子封止用樹脂組成物を用いて、光半導体素子を封止するには、特に制限されることはなく、通常のトランスファー成形や注型等の公知のモールド方法により行うことができる。なお、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物が液状である場合には、少なくともエポキシ樹脂成分と硬化剤とを別々に保管し、使用する直前に混合する、いわゆる2液タイプとして用いればよい。また、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物が粉末状、もしくはタブレット状である場合には、上記した各成分を溶融混合する際に、Bステージ状としておき、これを使用時に加熱溶融すればよい。
【0055】
そして、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物を用いて、光半導体素子を樹脂封止すると、内部応力が小さく、光半導体素子の劣化を有効に防止することができるとともに、良好な光透過率を得ることができる。このため、本発明の光半導体素子封止用樹脂組成物によって光半導体素子が樹脂封止された光半導体装置は、信頼性および透明性に優れ、その機能を充分に発揮することができる。
【0056】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0057】
まず、光半導体素子封止用樹脂組成物の作製に先立って下記に示す各成分を準備した。
【0058】
〔エポキシ樹脂a〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量650)
【0059】
〔エポキシ樹脂b〕
前記構造式(1)で表されるトリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100)
【0060】
〔酸無水物系硬化剤〕
4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(X)とヘキサヒドロ無水フタル酸(Y)の混合物(混合重量比X/Y=7/3、酸無水当量164)
【0061】
〔硬化触媒〕
2−エチル−4−メチルイミダゾール
【0062】
〔シランカップリング剤〕
メルカプトトリメトキシシラン
【0063】
〔酸化防止剤〕
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンタレン−10−オキシド
【0064】
〔複合金属酸化物複合ガラス粉末〕
CaOの組成を有し、フレーム処理により得られた球状ガラス粉末(SiO2 51.0重量%、B2 3 20.5重量%、ZnO2.9重量%、Al2 3 15.1重量%、CaO9.9重量%、Sb2 3 0.5重量%、平均粒径35μmで最大粒径75μmの粒度分布を有し、屈折率1.53)
【0065】
〔蛍光体粉末a〕
Euを付活したCa−α−サイアロン黄色蛍光体をつぎのようにして製造した。
組成式Ca0.75Eu0.0833(Si、Al)12(O、N)16で表される化合物を得るべく、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と炭酸カルシウムと酸化ユーロピウムとを、各々68.96重量%、16.92重量%、11.81重量%、2.3重量%となるように秤量し、n−ヘキサンを用いて湿式ボールミルにより2時間混合した。そして、ロータリーエバポレーターによりn−ヘキサンを除去し、混合粉体の乾燥物を得た。得られた混合物をメノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後、500μmの篩を通し、窒化ホウ素製るつぼに投入した。つぎに、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1600℃まで昇温し、1600℃で8時間保持した。焼成後、得られたものの一部をメノウ乳鉢に移して粉砕し、X線回折パターンをX線回折装置:リガク社製のRINT2000を用いて調べた。その結果、α−サイアロン蛍光体が生成していることがわかった。この得られた焼成体を粗粉砕した後、60μmの篩を通した。そして、粒度分布をシーラス(CILAS)社製の1064を用いて測定したところ、平均粒径は10μmであった。
【0066】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、黄色に発光することを確認した。この粉末の励起スペクトルおよび発光スペクトルを蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)を用いて測定した結果を図1に示すとともに、黄色蛍光体であることを確認した。また、この粉末の比重は3.2g/cm3 であった。
【0067】
〔蛍光体粉末b〕
Euを付活したβ−サイアロン緑色蛍光体をつぎのようにして製造した。
組成式Eu0.0009Si0.415 Al0.015 0.00150.568 で表される化合物を得るべく、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末と、比表面積3.3m2 /g、酸素含有量0.79重量%の窒化アルミニウム粉末と、純度99.9%の酸化ユーロピウム粉末とを、各々96.17重量%、3.03重量%、0.8重量%となるように秤量し、窒化ケイ素焼結体製のポットと窒化ケイ素焼結体製のボールによりn−ヘキサンを用いて湿式ボールミルにより2時間混合した。そして、ロータリーエバポレーターによりn−ヘキサンを除去し、混合粉体の乾燥物を得た。得られた混合物をメノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後、500μmの篩を通すことにより、流動性に優れる粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を、直径20mm×高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製るつぼに自然落下させて投入した。つぎに、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1900℃まで昇温し、その後その温度で2時間保持した。合成した試料をメノウ乳鉢を用いて粉末に粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定(XRD)をX線回折装置:リガク社製のRINT2000を用いて行った。その結果、得られたチャートは全てβ型窒化ケイ素構造を有していた。
【0068】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、緑色に発光することを確認した。この粉末の励起スペクトルおよび発光スペクトルを蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)を用いて測定した結果を図2に示すとともに、緑色蛍光体であることを確認した。また、この粉末の比重は3.2g/cm3 であった。
【0069】
〔蛍光体粉末c〕
Euを付活したCASN赤色蛍光体をつぎのようにして製造した。
組成式Eu0.008 Ca0.992 AlSiN3 で表される化合物を得るべく、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末と、比表面積3.3m2 /g、酸素含有量0.79重量%の窒化アルミニウム粉末と、窒化カルシウム粉末と、金属ユーロピウムをアンモニア中で窒化して合成した窒化ユーロピウム粉末とを、各々33.86重量%、29.68重量%、35.50重量%、0.96重量%となるように秤量し、メノウ乳鉢と乳棒を用いて30分間混合を行った後、得られた混合物を、500μmの篩を通して直径20mm×高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製るつぼに投入した。なお、上記粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、水分1ppm以下、酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行った。この混合粉末を窒化ホウ素製るつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1800℃まで昇温し、1800℃で2時間保持した。焼成した後、この得られた焼成体を粗粉砕して、さらに窒化ケイ素焼結体製のるつぼと乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目の篩を通した。そして、合成した粉末試料をメノウ乳鉢を用いてさらに粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定(XRD)をX線回折装置:リガク社製のRINT2000を用いて行った。その結果から、CaSiAlN3 相であると判定された。
【0070】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、赤色に発光することを確認した。この粉末の励起スペクトルおよび発光スペクトルを蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)を用いて測定した結果を図3に示すとともに、赤色蛍光体であることを確認した。また、この粉末の比重は3.25g/cm3 であった。
【0071】
〔蛍光体粉末d〕
YAG/Ce蛍光体粉末〔(Y0.8 Gd0.2 3 Al5 12:Ce構造を有する、平均粒径2.6μm、比重4.6〕
【実施例】
【0072】
〔実施例1〜7、比較例1〜2〕
下記の表1〜表2に示す各成分を同表に示す割合で溶融混合した後、得られた溶融混合物を、厚み15±5mmのシート状に展開した状態で、所定の温度雰囲気下(60℃)において粘度調整して、固体または蛍光体成分を除いた樹脂粘度を0.8Pa・s以上の半固形に保持することにより、光半導体素子封止用樹脂組成物を作製した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
このようにして得られた実施例および比較例の光半導体素子封止用樹脂組成物を用いて、下記の方法にしたがって各種特性評価を行った。その結果を後記の表3〜表4に併せて示す。
【0076】
〔ゲルタイム〕
規定温度(150℃)の熱平板上に試料となる光半導体素子封止用樹脂組成物(200〜500mg)を載せ、撹拌しながら熱平板上に薄く引き伸ばし、試料が熱平板上に溶融した時点から硬化するまでの時間を読み取りゲル化時間(ゲルタイム)とした。
【0077】
〔屈折率〕
蛍光体成分およびガラス粉末を除いた成分からなる樹脂組成物を硬化条件:150℃×4分間+150℃×3時間にて硬化してなる硬化体の屈折率(n1)、および、ガラス粉末の屈折率(n2)をアタゴ社製のアッベ屈折率計T2を用いて、波長589.3nmの屈折率を測定した。
【0078】
〔アッベ数〕
蛍光体成分およびガラス粉末を除いた成分からなる樹脂組成物を硬化条件:150℃×4分間+150℃×3時間にて硬化してなる硬化体のアッベ数(m1)、および、ガラス粉末のアッベ数(m2)を、アタゴ社製のアッベ屈折率計T2を用い測定して得られた屈折率に基づき、前述の定義に従って算出した。
【0079】
〔2次発光ピーク波長〕
150℃×4分間のトランスファー成形を行い、評価用サンプル(直径50mm×厚み0.4mm)を作製した。そして、上記評価用サンプルを用い、図4に示す測定システムからなる大塚電子社製のMCPD7000を使用して2次発光ピーク波長を評価した。すなわち、キセノン光源4から分光された470nmの光を投光用ファイバー5を介して評価用サンプル6に透過させた。ついで、積分球3で集光し、受光用ファイバー2を介してMCPD検出器1に導き、このMCPD検出器にて2次発光ピーク波長を検出した。
【0080】
〔励起光相対強度〕
150℃×4分間のトランスファー成形を行い、評価用サンプル(直径50mm×厚み0.4mm)を作製した。そして、上記評価用サンプルを用い、図4に示す測定システムからなる大塚電子社製のMCPD7000を使用して励起光相対強度を評価した。すなわち、キセノン光源4から分光された470nmの光を投光用ファイバー5を介して評価用サンプル6に透過させた。ついで、積分球3で集光し、受光用ファイバー2を介してMCPD検出器1に導き、このMCPD検出器にてブランクに対する透過ピーク強度を相対値として検出した。
【0081】
〔150℃×72時間後の励起光相対強度〕
150℃×4分間のトランスファー成形を行い、評価用サンプル(直径50mm×厚み0.4mm)を作製した。そして、上記評価用サンプルを150℃のオーブン中で72時間放置し、これを用い、図4に示す測定システムからなる大塚電子社製のMCPD7000を使用して励起光相対強度を評価した。すなわち、キセノン光源4から分光された470nmの光を投光用ファイバー5を介して評価用サンプル6に透過させた。ついで、積分球3で集光し、受光用ファイバー2を介してMCPD検出器1に導き、このMCPD検出器にてブランクに対する透過ピーク強度を相対値として検出した。
【0082】
〔線膨張率〕
120℃×1時間+150℃×3時間の硬化条件にて、評価用サンプル(20mm×5mm×厚み5mm)を作製し、この硬化体を用いて熱分析装置(TMA、島津製作所社製TMA−50)により、2℃/分の昇温速度でガラス転移温度(Tg)を測定し、この値を用いて線膨張率を算出した。
【0083】
〔色度座標のばらつき〕
150℃×4分間のトランスファー成形を行い、色度評価用サンプル(直径50mm×厚み0.4mm)を作製した。そして、上記色度評価用サンプルを用い、図4に示す測定システムからなる大塚電子社製のMCPD7000を使用して色度評価した。すなわち、キセノン光源4から分光された470nmの光を投光用ファイバー5を介して色度評価用サンプル6に透過させた。ついで、積分球3で集光し、受光用ファイバー2を介してMCPD検出器1に導き色演算を行い、色度(x)を算出し色度のばらつきを標準偏差で求めた(サンプル数n=10個)。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
上記結果から、実施例品は、励起光相対強度と150℃×72時間後の励起光相対強度の値を比較しても著しく低下しておらず、耐熱耐光性に優れていることがわかる。また、色度座標のばらつきも非常に小さいものであった。
【0087】
一方、比較例1は、エポキシ樹脂成分がビスフェノールA型エポキシ樹脂のみから構成されており、励起光相対強度に比べて150℃×72時間後の励起光相対強度が著しく劣る結果となった。また、従来の蛍光体であるYAG/Ce蛍光体を用いた比較例2は、比重の大きい蛍光体粉末であるため、封止材料中に沈降偏析し色度座標のばらつきが大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】Euを付活したCa−α−サイアロン黄色蛍光体の励起発光スペクトルの測定結果を示すチャート図である。
【図2】Euを付活したβ−サイアロン緑色蛍光体の励起発光スペクトルの測定結果を示すチャート図である。
【図3】Euを付活したCASN赤色蛍光体の励起発光スペクトルの測定結果を示すチャート図である。
【図4】光半導体素子封止用樹脂組成物硬化体の各種特性(2次発光ピーク波長、励起光相対強度、色度座標のばらつき)を測定するための測定システムを模式的に示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)成分を含有することを特徴とする光半導体素子封止用樹脂組成物。
(A)下記の構造式(1)で表されるエポキシ化合物を主成分とするエポキシ樹脂。
【化1】

(B)硬化剤。
(C)酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の少なくとも一方。
【請求項2】
上記構造式(1)で表されるエポキシ化合物の占める割合が、(A)成分であるエポキシ樹脂全体中の、40重量%以上である請求項1記載の光半導体素子封止用樹脂組成物。
【請求項3】
上記(C)成分の酸窒化物蛍光体が、α−Si3 4 と同一の結晶構造を有する下記の一般式(α)で表される無機化合物にEu2+を付活した蛍光体、および、β−Si3 4 と同一の結晶構造を有する下記の一般式(β)で表される無機化合物にEu2+を付活した蛍光体の少なくとも一方である請求項1または2記載の光半導体素子封止用樹脂組成物。
【化2】

【化3】

【請求項4】
上記(C)成分の窒化物蛍光体が、CaAlSiN3 結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にEu2+を付活した赤色蛍光体である請求項1または2記載の光半導体素子封止用樹脂組成物。
【請求項5】
上記(A)〜(C)成分に加えて、さらに下記の(D)成分を含有してなる光半導体素子封止用樹脂組成物であって、光半導体素子封止用樹脂組成物中の上記(C)成分および(D)成分以外の成分を硬化してなる硬化体のアッベ数(m1)と、上記(D)成分のアッベ数(m2)との関係が下記の式(a)を満足し、かつ光半導体素子封止用樹脂組成物中の上記(C)成分および(D)成分以外の成分を硬化してなる硬化体の屈折率(n1)と、上記(D)成分の屈折率(n2)との関係が下記の式(b)を満足してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体素子封止用樹脂組成物。
(D)ガラス粉末。
【数1】

【数2】

【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光半導体素子封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−91960(P2007−91960A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285737(P2005−285737)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】