説明

光学式測定装置

【課題】 非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる光学式測定装置を提供する。
【解決手段】プローブ15の基体31の内部には、光源としての発光ダイオード32(LED)と、透過部としてのピンホール(第1ピンホール33a)と、受光素子としてのPSD34とが収容されている。そして、プローブ15を穴21の内部に挿入し、PSD34上における散乱光の受光位置に基づいて仮想円を求めることで、穴21の内径が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シリンダブロック等の鋳物類や、種々の機械加工品等に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、鋳物類等の被測定物に形成された穴の内部形状(例えば、内径、真円度、表面粗さ等)を測定する装置としては、以下に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された測定装置は、被測定物を所定の方向に移動可能とする種々のテーブル、被測定物の穴の位置を撮像するCCDカメラ、同CCDカメラの出力が入力されるコンピュータ、被測定物の穴の内部に挿入されるマイクロプローブ等を備えている。マイクロプローブは、その先端部に一対の接触子を有している。この測定装置によれば、マイクロプローブ(接触子)を被測定物の穴の内壁面に接触させることで、穴の内部形状に関する所望の測定が可能となる。
【0003】
例えば、上記穴の内径を測定する場合には、以下のステップにより行われる。すなわち、テーブル上に載置された被測定物の穴の内壁面に向かってプローブを移動させて一方の接触子を上記穴の内壁面に接触させる第1ステップと、一方の接触子が上記穴の内壁面に接触したときの接触点の位置を検出手段の検出結果に基づいて特定する第2ステップと、前記第1ステップとは逆方向へプローブを移動させて他方の接触子を上記穴の内壁面に接触させる第3ステップと、この他方の接触子が上記穴の内壁面に接触したときの接触点の位置を検出手段の検出結果に基づいて特定する第4ステップと、第2ステップ及び第4ステップによりそれぞれ特定した二つの接触点の位置に基づいて接触点間の距離、すなわち穴の内径を算出する第5ステップとを備えている。
【特許文献1】特開2004−53413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の測定装置においては、マイクロプローブを穴の内壁面に接触させる操作を複数回繰り返すことが必要となる。そうした操作は作業者にとって煩雑なものであり、時間を要するものとなっていた。また、マイクロプローブを穴の内壁面に接触させるステップ(第1ステップ及び第3ステップ)においては、マイクロプローブ(接触子)を穴の内壁面に接触させるべくテーブルを移動させて、同マイクロプローブ(接触子)が穴の内壁面に接触したときの抵抗変化の信号をトリガとしてテーブルを停止させる等の複雑な機構が必要となる。このため、測定装置の複雑化、ひいては大型化を招くこととなり、被測定物の製造現場において短時間で所望の測定をするのは困難であった。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる光学式測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の光学式測定装置は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円を求めることにより、前記穴の内径を算出する演算手段とを備えてなることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、内壁面で反射された散乱光の一部が透過部を介して受光素子によって受光される。そして、この受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づき、穴の内壁面上における基本光の反射位置とプローブとの間の間隔が算出され、基本光の反射位置の座標値が決定される。その結果、そうした反射位置の座標値に基づいて1つの仮想円が求められる。そして、反射位置の座標値と、仮想円の中心座標値とより、穴の内径が算出される。
【0008】
このように、本構成では、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の内径の測定が可能となる。従って、装置構造の複雑化を招くことがなく、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明の光学式測定装置は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出する演算手段とを備えてなることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、内壁面で反射された散乱光の一部が透過部を介して受光素子によって受光される。そして、この受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づき、穴の内壁面上における基本光の反射位置とプローブとの間の間隔が算出され、基本光の反射位置の座標値が決定される。その結果、そうした反射位置の座標値に基づいて1つの仮想円が求められる。続いて、穴の深さ方向に沿う別の箇所においても、上記と同様に、受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づいて別の仮想円を求める。これにより、穴の深さ方向に沿う2箇所において別途仮想円が同定され、それぞれの仮想円の中心座標を求めることで、穴の傾斜角度が算出される。
【0011】
このように、本構成では、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の傾斜角度の測定が可能となる。よって、装置構造の複雑化を招くことがなく、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明の光学式測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において3つ以上設けられてなることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、一度の測定により反射位置の座標値が3つ以上求められることから、穴の傾斜角度を測定するに際して必要となる仮想円を同定しやすくなる。すなわち、穴の内部を容易に測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学式測定装置によれば、非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の光学式測定装置を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光学式測定装置10は、基台11と、同基台11に軸支されてなるアーム部12とを備えている。アーム部12は、複数(本実施形態では3つ)のアーム部材13が互いに回動自在に軸支されてなるものである。これら複数のアーム部材13のうち最も先端側に配設されたアーム部材13には、非接触式のプローブ(以下、単にプローブ15という)が設けられている(図2参照)。また、光学式測定装置10は、演算手段としてのコンピュータ(図示略)を備えている。そして、このプローブ15を、シリンダブロック等の被測定物20の穴21(シリンダ)の内部において所定方向へ移動させることで、その穴21の内部形状(本実施形態では、穴の傾斜角度)を測定することができる。以下、本実施形態のプローブ15について説明する。
【0016】
図3に示すように、プローブ15は、金属材料より形成されて中空状をなす基体31を備えている。この基体31の内部には、光源としての発光ダイオード32(LED)と、透過部としてのピンホール(第1ピンホール33a)と、受光素子としてのPSD34(Position Sensitive Detector)とが収容されている。本実施形態のプローブ15においては、上記発光ダイオード32(光源)、第1ピンホール33a(透過部)、PSD34(受光素子)等よりなるユニットが、周方向において3組設けられている(図4参照)。
【0017】
図4に示すように、発光ダイオード32(以下、LED32という。)は、周方向において複数(本実施形態では3つ)設置されている。より詳しくは、これら複数のLED32は、基体31の軸線31a上に中心を有する同一円周36上において等間隔(120°)毎に設けられている(図3及び図4参照)。なお、このLED32の発光色は特に限定されるものではない。
【0018】
以下においては、上記3組のユニットのうち任意の1組のユニットについて、LED32を除く各部材の構成について説明する。なお、他の2組のユニットに関してもこれと同様の構成を有するものとする。
【0019】
図3に示すように、基体31には、LED32から発せられた基本光を絞り込むための第2ピンホール37aが設けられている。より詳しくは、LED32の先端部に対向する基体31の壁面には、第2ピンホール37aを有するピンホール板37が配設されている。そして、LED32から発せられた基本光は、第2ピンホール37aを通じて前記軸線31aに直交する方向に向けて照射される。
【0020】
この第2ピンホール37aを有するピンホール板37よりも基体31の先端側に位置する、基体31の壁面には、透過部としての第1ピンホール33aを有するピンホール板33が配設されている。そして、穴21の内壁面22の所定箇所で反射された散乱光が第1ピンホール33aを通じて基体31の内部に入射される。
【0021】
なお、本実施形態では、穴21の内壁面22のうち、LED32から発せられた基本光が反射される所定箇所を「反射位置22a」という。また、図3においては、穴21の内壁面22(反射位置22a)で反射された多数の散乱光のうち、第1ピンホール33aを透過し得る特定の光のみを一点鎖線で示すものとする。
【0022】
基体31の内部において、前記LED32よりも同基体31の先端側に位置する所定箇所にはPSD34が配設されている。より詳しくは、前記反射位置22aと第1ピンホール33aとを結ぶ線上に、同PSD34が配設されている。このPSD34の受光部34a上には、前記第1ピンホール33aを通じて入射されてきた特定の散乱光が受光され、LED32の像が形成される。そして、このPSD34からは、前記散乱光の受光位置(LED32の像の位置)に応じた出力信号が出力される。この出力信号は、端子ピン(図示略)を経てコンピュータ(図示略)に入力される。その結果、前記反射位置22aと第2ピンホール37aとの距離L(前記反射位置22aとプローブ15との間の、前記軸線31aに直交する方向における距離L)が算出され、これに基づいて同反射位置22aの座標値が求められる。
【0023】
本実施形態では、図4に示すように、3つのLED32の基本光をそれぞれ別途内壁面22に照射して各反射位置22aの座標値を求め、これらの座標値に基づいて仮想円を同定してその仮想円の中心座標及び半径を算出することで、穴21の内部形状(穴の傾斜角度、穴の内径)を測定する。
【0024】
次に、被測定物20に設けられた穴21の内部の測定方法について説明する。
被測定物20の穴21の内部を測定する際には、図5に実線で示すように、まず穴21の内部にプローブ15を挿入し、任意の箇所において各LED32の基本光を第2ピンホール37a(B点)を通じて穴21の内壁面22に向けて照射する。すると、LED32から発せられた基本光は、第2ピンホール37a(B点)から前記軸線31aに直交する方向へ所定距離L離れた、内壁面22上の反射位置22a(A点)において反射して散乱される。そして、ここで散乱された光のうち特定の光が、前記第2ピンホール37a(B点)から軸線方向Jに所定距離s離れた第1ピンホール33a(C点)を通じて基体31の内部に入射し、最終的にPSD34の受光部34a上に像を形成する。このとき、像は、受光部34aの中心Xを原点として変位Xの位置(E点)に形成されているものとする。
【0025】
ここで、C点を通り前記軸線31aに直交する仮想線41と、E点を通り前記軸線31aに平行な仮想線42との交点をD点で表し、CD間の距離をd、DE間の距離をqとする。この場合、穴21の内壁面22(反射位置22a)とプローブ15との距離、すなわちAB間の距離Lは、三角形ABCと三角形CDEとの相似により、下記式(1)により算出される。
【0026】
【数1】

そして、ここで算出されたLの値から、反射位置22a(A点)の座標値が求められる。以下、他の2つのLED32に関しても、これと同様に基本光を内壁面22に対して照射してPSD34上に像を形成させることで、それぞれ反射位置22aの座標値を求める。これにより、穴21の内壁面22上において3箇所の反射位置22aの座標値が求められることとなる。
【0027】
続いて、これら3つの座標値に基づき、測定箇所における仮想円を同定する。すなわち、まず、これら3つの反射位置22aの座標値のうち任意の2点の座標値(x,y),(xi+1,yi+1)を、下記式(2)(円の方程式)に代入する。なお、本実施形態では、穴21の断面形状を略真円と仮定する。
【0028】
【数2】

そして、各座標値をそれぞれ代入した後に得られた双方の式を減算し、C,Cについて整理すると、下記式(3)が得られる。なお、n点(本実施形態では3点)の測定結果においては、式(3)が(n−1)個得られる。
【0029】
【数3】

ここで、式(3)を下記の式(4)〜(6)のようにおくと、
【0030】
【数4】

上記式(3)は、下記の式(7)のように表される。
【0031】
【数5】

なお、n点(本実施形態では3点)の測定結果からは、(n−1)個の式(7)が得られる。この結果から、最小二乗法を用いてC,Cを求めると、下記の式(8)及び式(9)が得られる。
【0032】
【数6】

【0033】
【数7】

但し、Σの範囲は1≦i≦n−1である。これにより、第1の仮想円44の中心座標44aが求められる(図6参照)。そして、この中心座標44aを決定した後、下記式(10)により各反射位置22aの座標値に対応したRを求め、その平均値を仮想円44の半径の測定値Rとする。
【0034】
【数8】

但し、Σの範囲は1≦i≦nである。このようにして仮想円44の半径を求めることで、穴21の内径(仮想円44の直径)が算出される。
【0035】
次に、図5に鎖線で示すように、プローブ15を、基体31の軸線方向Jに沿って距離Tだけ穴21の内奥側に移動させる。そして、図6に示すように、移動後の箇所においても上記と同様の操作により第2の仮想円46を同定し、その中心座標46aを算出する。以上の操作により、穴21の深さ方向Fにおいて2つの仮想円44,46が同定される。そして、これら2つの仮想円44,46の中心座標44a,46aと前記距離Tとから、内壁面22の傾斜角度θが算出される。
【0036】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の光学式測定装置10によれば、各LED32の基本光を内壁面22に対して照射することで各反射位置22aの座標値を求め、穴21の内部における任意の箇所で1つの仮想円を同定することにより穴21の内径が測定される。また、穴21の内部における2箇所でそれぞれ仮想円を同定することにより穴21の傾斜角度が測定される。すなわち、プローブ15を穴21の内壁面22に接触させることなく同穴21の内部が測定可能とされる。これにより、本実施形態では、穴21の内壁面22にプローブ15を接触させるための複雑な機構を必要とせず、構成の簡略化を図ることができ、ひいては装置の大型化が回避される。そして、穴21の内部にプローブ15を挿入するといった極めて簡易な操作により、所望の測定が可能となる。従って、本実施形態の光学式測定装置10によれば、被測定物20の製造現場においてその穴21の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0037】
(2) 本実施形態では、内壁面22上の反射位置22aにおいて散乱された散乱光のうちの任意の光をPSD34上に入射させている。このため、本実施形態では、極めて絞られた光束を出力するレーザ光源を使用する場合のように反射光を正確にPSD34上に入射させるべく光の入射角度や、基体31の内部におけるPSD34の設置箇所等を厳密に調整する必要がない。従って、本実施形態の光学式測定装置10によれば、構造の簡易化を図ることができる。
【0038】
(3) 本実施形態の光学式測定装置10には、LED32が周方向において3つ設けられている。ここで、上記仮想円を同定する際には最低限3つの座標値が必要となる。本実施形態によれば、そうした3つの座標値が一度の測定において同時に算出可能とされる。これにより、仮想円の同定を容易に行うことができる。
【0039】
また、各LED32は、周方向において等間隔毎に設けられている。すなわち、周方向において等間隔毎に反射位置22aの座標値が求められることとなる。これにより、穴21の内部形状を高い精度で反映する仮想円を同定することが可能となるため、穴21の内壁面22の傾斜角度や穴21の内径を正確に測定することができる。
【0040】
(4) 光源としてLED32を用いることにより、内壁面22の所定箇所に対して基本光を確実に照射させることができる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0041】
・ 本実施形態では、光源としてLED32を採用したが、これをレーザダイオード等の他の光源に変更してもよい。
・ 本実施形態では、3つのLED32を周方向において等間隔毎に設けたが、周方向において隣接するLED32間の間隔はそれぞれ相違するものであってもよい。
【0042】
・ 本実施形態では、3つのLED32を設けたが、LED32の数はこれに限定されるものではなく、3つ未満でも4つ以上でもよい。LED32の数が3つ未満のプローブ15を用いて穴21の内部を測定する場合は、穴21の内部の任意の箇所において前記軸線31aを軸としてプローブ15を回転させて少なくとも3つの反射位置22aの座標値を求め、本実施形態と同様に第1の仮想円44を同定する。続いて、穴21の内奥側へとプローブ15を移動させ、ここでも上記と同様にプローブ15を回転させて少なくとも3つの反射位置22aの座標値を求め、第2の仮想円46を同定する。そして、ここで同定した各仮想円44,46の中心座標44a,46aにより穴21の内部に関しての所望の測定が可能となる。
【0043】
一方、図7に示すように、本実施形態のプローブ15におけるLED32のユニットを、同プローブ15の先端側にさらに1組設ける構成が好ましい。すなわち、プローブ15には、合計6つのLED32が設けられることとなる。このように構成した場合には、穴21の内部において前記軸線方向Jにプローブ15を動かさずとも、穴21の深さ方向に沿う2箇所において別途仮想円44,46を同定することが可能となる。従って、この構成によれば、穴21の内部においてプローブ15を動かす操作が省略されるため、穴21の内部の測定が一層容易なものとなる。
【0044】
また、基体31の軸線31a上に中心を有する同一円周36上において4つ以上のLED32を設ける構成を採用してもよい。この場合には、穴21の内壁面22上における反射位置22aの座標値が少なくとも4つ求まり、これらの座標値から上記仮想円が求められることとなる。
【0045】
・ 本実施形態では、穴21の内部において1箇所で1つの仮想円を同定し、その仮想円の半径から穴21の内径を求めたが、穴21の内部において2箇所以上でそれぞれ仮想円を同定し、各仮想円の直径の平均値を穴21の内径としてもよい。
【0046】
・ 本実施形態では、穴21の断面形状を略真円と仮定したが、その断面形状が仮に楕円であるときには、上記式2の代わりに楕円の公式を採用する。この場合、上記と同様に仮想円を求める際には、穴21の内壁面22上における反射位置22aの座標値が少なくとも4つ必要となる。こうしたときには、測定の簡易化及び迅速化を図るべく、基体31の軸線31a上に中心を有する同一円周36上において4つ以上のLED32を設ける構成が好ましい。
【0047】
・ 穴21の内部において3箇所以上で仮想円を同定し、穴21の内部形状を測定するようにしてもよい。
・ 本実施形態では、穴21の内部において仮想円を同定することで穴21の内壁面22の傾斜角度を測定したが、これを以下の方法に変更してもよい。すなわち、穴21の内部の2箇所において本実施形態と同様の方法でAB間の距離L(L,L)を算出した後、下記式(11)により傾斜角度θを求める(図8参照)。
【0048】
【数9】

この式(11)により各LED32に対応した傾斜角度θをそれぞれ求め、その平均値を、内壁面22の傾斜角度θの測定値とする。
【0049】
・ 本実施形態における透過部として、ピンホール33aの代わりに、スリットや凸レンズ等を採用してもよい。
・ また、本実施形態における受光素子として、PSD34の代わりに、CCD(Charge Coupled Device)を採用してもよい。
【0050】
・ 本実施形態では、LED32よりも基体31の先端側に位置する箇所にPSD34を配設したが、同PSD34の配設箇所はこれに限定されるものではない。すなわち、LED32よりも基体31の基端側に位置する箇所にPSD34を配設してもよい。このような構成とした場合においても、穴21の内壁面22で反射した散乱光のうち任意の光がPSD34上に入射されることから、穴21の内部形状に関する所望の測定が可能となる。
【0051】
・ 本実施形態では、第1の仮想円44を同定した後にプローブ15を穴21の内奥側に移動させて第2の仮想円46を同定したが、これとは逆方向(穴21の開口部側)へプローブ15を移動させて上記第2の仮想円46を同定する方法を採用してもよい。
【0052】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 請求項3に記載の光学式測定装置であって、前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において等間隔毎に設けられてなることを特徴とする光学式測定装置。この構成によれば、穴の内壁面の周方向において等間隔毎に反射位置の座標値が求められることとなり、穴の内部形状を高い精度で反映する仮想円を同定することが可能となる。従って、穴の傾斜角度を正確に測定することができる。
【0053】
・ 被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブを具備する光学式測定装置を用いて前記穴の内部を測定する測定方法であって、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円を求めることで、前記穴の内径を算出することを特徴とする測定方法。
【0054】
・ 被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブを具備する光学式測定装置を用いて前記穴の内部を測定する測定方法であって、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出することを特徴とする測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態の光学式測定装置を示す概略図。
【図2】同光学式測定装置を示す部分拡大概略図。
【図3】本実施形態のプローブの内部を示す概略図。
【図4】同プローブを示す平断面概略図。
【図5】穴の内部の測定方法を示す概略図。
【図6】穴の内部の測定方法を示す概念図。
【図7】別例のプローブの内部を示す概略図。
【図8】本実施形態とは別の測定方法を示す概略図。
【符号の説明】
【0056】
10…光学式測定装置、15…プローブ、20…被測定物、21…穴、22…内壁面、31a…軸線32…光源としてのLED、33a…透過部としてのピンホール、34…受光素子としてのPSD、44,46…仮想円。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、
前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円を求めることにより、前記穴の内径を算出する演算手段とを備えてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、
前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出する演算手段とを備えてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光学式測定装置であって、
前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において3つ以上設けられてなることを特徴とする光学式測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−24646(P2007−24646A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206031(P2005−206031)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(391002487)学校法人大同学園 (23)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】