説明

光学装置、半導体レーザモジュール、光走査装置及び画像形成装置

【課題】半導体レーザモジュール内を清浄に保ち、光学部品表面への汚染物質の付着、吸着による光学特性の劣化を防止するとともに、環境変化に対しても半導体レーザと光ファイバの結合を高精度に保持できる光学装置の提供。
【解決手段】半導体レーザから出射されたレーザ光を集光して光ファイバの光入射端に導光するレンズ系を有する光学装置であって、前記光ファイバの光入射端及び前記レンズ系の少なくとも一方は、吸着剤を備え容積が可変な密閉空間内に配置されている光学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、半導体レーザモジュール、光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ装置は、各種の用途に利用されているが、特に、小型の半導体レーザ装置は、光通信やレーザプリンタ等の画像形成装置に大量に用いられている。半導体レーザ装置の心臓部である発光部から出射されたレーザ光は、直接レーザビームとして光学系に照射される場合もあるが、多数のレーザ光を取り扱う光走査装置においては、レーザ光を光ファイバにより導光して、光ファイバの先端から光走査装置に出射する方式がとられている。この方式によれば、半導体レーザ光源装置の配置の自由度が高く、画像形成装置の設計、製造が容易になる。
【0003】
半導体レーザと半導体レーザから出射したレーザ光を光ファイバにカップリングする光学装置とカップリングされた光ファイバとのセットを半導体レーザモジュールと呼んでいる。半導体レーザから出射されたレーザ光を効率良くシングルモード光ファイバにカップリングした半導体レーザモジュールは、これまで光通信の分野を中心に広く用いられている。一般にシングルモード光ファイバのコア径は半導体レーザの発振波長が短くなるに従い小さくなり、可視光半導体レーザを使用した場合、そのサイズは数ミクロンになる。このため、可視光の半導体レーザモジュールにおいては、光ファイバ入射ビームと光ファイバとの位置合わせ精度、及びモジュール組立て後の環境変化に対する安定性が、赤外光を使用している光通信用モジュールのそれよりも一段と厳しくなる。
【0004】
また、半導体レーザモジュールの光ファイバ入射端面は数ミクロンサイズに絞り込まれたレーザ光が常に照射された状態になるため、光のエネルギー密度が非常に高く、レーザ光の光ピンセット効果(レーザ光の集光点に塵埃が集積する効果。非特許文献1参照)により、光ファイバ断面のコア部に塵埃が付着し、レーザ光の光ファイバへのカップリング効率を低下させる問題があった。さらに、光ピンセット効果に加え、波長450nm以下の短波長レーザを用いた場合には、集積した塵埃や周囲のガスとレーザ光の光化学反応が起きやすく、光ファイバの集光部の汚染はより深刻なものとなる。
【0005】
汚染物質の1つとしては、例えば、特許文献1によれば、製造工程の雰囲気中から混入する炭化水素ガスが、レーザ光により重合或いは分解されたもの、また、空気中を浮遊しているシロキサンがレーザ光により光化学反応し、SiOのかたちで堆積、付着することが開示されており、このため、汚染される可能性のある部材の定期交換を提案している。
【0006】
また、例えば特許文献2乃至5では、モジュール内部に多孔質材料で形成されたゲッター或いは有機物吸着剤を収納することで、半導体レーザモジュール組立ての際に用いられる接着剤、洗浄剤、半田付け用のフラックス等の汚染物質を前記ゲッター或いは有機物吸着剤に吸着させ除去する方法を述べている。
【0007】
特許文献6では、半導体レーザモジュールのパッケージが、フラックスフリー半田もしくはシリコン系有機物を含まない接着剤、又は融着若しくは溶接により気密封止することで半導体モジュールのパッケージ内への汚染物質侵入を防御し、光ファイバ入射端面の汚染を抑制する方法を提案している。
【0008】
一方、半導体レーザモジュールのパッケージ内への不純物の侵入を防ぐため、パッケージ内を密閉空間とすることが考えられているが、環境変化等によるパッケージ内の圧力変動により半導体レーザモジュールの光学系に歪みが生じることがある。集光精度が高くなればなるほど、光ファイバ断面の集光部とレーザチップや光学装置のレンズ系との間の歪みが導光効率を変動させ、後段の画像形成装置などに問題を発生させる。
【0009】
そこで、このような圧力変動を抑制するため、特許文献7には容器内の容積可変の光学素子として、実質的に変形しない材料でつくられた開口を有する容器と、開口部に開口よりも広い面積を持つ弾性体を配置し、容器の容積を変化させることにより弾性体に体積変化を与える方法が記されている。
【0010】
特許文献8に示される光学装置において、光路上の空間の容積を変化させる容積可変機構を用いることによって前記空間の圧力を一定に保ち、光学装置内へのガスの供給量変動に伴う光学部材の位置ずれや変形を抑制する手段を提案している。
【特許文献1】特開平11−54852号公報
【特許文献2】特開平7−147457号公報
【特許文献3】特開平8−213678号公報
【特許文献4】特開平8−236660号公報
【特許文献5】特表2002−544679号公報
【特許文献6】特開2004−253783号公報
【特許文献7】特公平3−27081号公報
【特許文献8】特開2003−257821号公報
【非特許文献1】Ashkin et al.:Observation of a single-beam gradient force optical trap for dielectric particles. Opt. Lett. 11、P288-P290、 1986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2乃至6に記載された発明においては、光ファイバ結合系は外気と完全に遮断されており、下記のような問題が発生する可能性がある。
(1)半導体レーザモジュールが高地あるいは低地で用いられる時には、外気と内部に圧力差が生じ、光ファイバ結合系を変形させ、光ファイバに導入される光量の変動を生じさせる。
(2)半導体レーザモジュールの内部と外部に圧力差が生じた場合、光ファイバ結合系の不完全な密封箇所から漏れを生じ、外部から汚れの原因となる物質が流入する危険がある。
(3)外気の湿度が高い時に、光ファイバ結合系の不完全な密封箇所から湿気が流入、結露し、光ファイバ結合系の光利用効率を低下させる。
【0012】
また、特許文献7の目的とするところは、弾性体表面を光学表面とし、光学表面形状を変化させることにより焦点距離を変化させるような可変焦点光学素子を実現することであり、容積変化に伴う光学系の変形に対処する問題に関しては述べていない。
【0013】
特許文献8で提案している容積可変機構は摺動または伸縮自在に配される部材であり、また、フィルタの寿命に関しては何も言及していない。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、半導体レーザモジュール内を清浄に保ち、光学部品表面への汚染物質の付着、吸着による光学特性の劣化を防止するとともに、環境変化に対しても半導体レーザと光ファイバの結合を高精度に保持できる光学装置を提供することを目的とする。また、この光学装置を有する半導体レーザモジュール、この半導体レーザモジュールを備えた光走査装置、及びこの光走査装置搭載した画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の手段により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
本発明は、半導体レーザから出射されたレーザ光を集光して光ファイバの光入射端に導光するレンズ系を有する光学装置であって、前記光ファイバの光入射端及び前記レンズ系の少なくとも一方は、吸着剤を備え容積が可変な密閉空間内に配置されていることを特徴とする光学装置を含む。
【0017】
本発明は、前記密閉空間は、吸着剤を介して、光ファイバの光入射端及び前記レンズ系の少なくとも一方を備えた空間と容積可変機構を備えた空間とを有することを特徴とする前記光学装置を含む。
【0018】
本発明は、容積可変機構は、可撓性部材からなる密閉空間の壁面であることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0019】
本発明は、容積可変機構は、弾性部材であることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0020】
本発明は、可撓性部材又は弾性部材は、シーリングテープであることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0021】
本発明は、シーリングテープは、PET(polyethylene terephthalate)製、又はPET及びアルミニウムを含む積層体であることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0022】
本発明は、可撓性部材又は弾性部材は、シリコンフリーの接着剤により密閉空間の他の壁面と接着されていることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0023】
本発明は、吸着剤は、レーザ光により分解又は反応する、密閉空間中の微量不純物を吸着することを特徴とする前記光学装置を含む。
【0024】
本発明は、吸着剤は、分解又は反応して炭素又は炭素化合物を生成するガスを吸着することを特徴とする前記光学装置を含む。
【0025】
本発明は、吸着剤は、シリコン系化合物ガスを吸着することを特徴とする前記光学装置を含む。
【0026】
本発明は、吸着剤は、吸湿性を有することを特徴とする前記光学装置を含む。
【0027】
本発明は、吸着剤は、活性炭、又は吸湿剤を含む活性炭であることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0028】
本発明は、吸着剤は、通気性を有する容器に収容されていることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0029】
本発明は、半導体レーザの保持機能を有するレーザ保持部材、並びに光ファイバの保持機能を有するフェルール及び該フェルールの保持機能を有するスリーブを含む光ファイバ保持部材を備えていることを特徴とする前記光学装置を含む。
【0030】
本発明は、半導体レーザと、光ファイバと、前記半導体レーザから出射されたレーザ光を集光して前記光ファイバ端部に導光する前記光学装置とを備えたことを特徴とする半導体レーザモジュールを含む。
【0031】
本発明は、半導体レーザのレーザ光出射部と前記光学装置とが、一体構造であることを特徴とする前記半導体レーザモジュールを含む。
【0032】
本発明は、半導体レーザの出射するレーザ光は、450nm以下であることを特徴とする前記半導体レーザモジュールを含む。
【0033】
本発明は、半導体レーザモジュールの光ファイバのレーザ光出射端を複数配列した光ファイバアレイと、該光ファイバアレイから出射されたレーザ光を偏向走査するための光偏向素子と、該光偏向素子により偏向走査されたレーザ光を被走査面上に走査結像させる走査光学系とを有する光走査装置において、前記半導体レーザモジュールを備えていることを特徴とする光走査装置を含む。
【0034】
本発明は、前記光走査装置を備えていることを特徴とする画像形成装置を含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明の光学装置は、半導体レーザモジュール内を清浄に保ち、光学部品表面への汚染物質の付着、吸着による光学特性の劣化を防止するとともに、環境変化に対しても半導体レーザと光ファイバの結合を高精度に保持できる。また、この光学装置を有する半導体レーザモジュール、この半導体レーザモジュールを備えた光走査装置、及びこの光走査装置搭載した画像形成装置は、上記光学装置の光ファイバから安定したレーザ光を得られ、安定性が高く、長寿命を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施形態により説明する。
[実施形態1]
図1には、本発明の第一の実施形態である光学装置に半導体レ−ザと光ファイバとを組み込んだ半導体レ−ザモジュールの断面構造を示す。この半導体レ−ザモジュールの構造と機能について説明する。光源となる半導体レーザ1は、レーザ光を放出するレーザチップ4とレーザ光を受光する非図示の光検出素子とが、ステム部3とLDキャップ55により、清浄な不活性ガス雰囲気内に気密封止された一体型の構造体である。半導体レーザ1は、光学装置におけるレンズ系6のケーシングの役目を果たすレーザ保持具2に半導体レーザ1のステム部3が気密状態で接合されている。なお、半導体レーザ1のレーザチップ4は、紫外光に近いレーザ光を放射する発振波長405nmの青色半導体レーザを用いている。
【0037】
半導体レーザ1の発光部であるレーザチップ4から出射したレーザ光5は、レーザ保持具2内部に配置されたレンズ系6により集光されて、シングルモードの光ファイバ8の光入射側端面上に集光され、光ファイバ8の光伝搬領域(以下、コアと呼ぶ)の端部断面に入射する。光ファイバ8はフェルール7に保持され、フェルール7はさらにスリーブ10により保持されレーザ保持具2と接合されている。
【0038】
この際、光ファイバ照射光9を効率よく光ファイバ8に入射させるためには、光ファイバ照射光9の集光スポットの大きさと、光ファイバ8のコアの断面の大きさとをできるだけ合致させることが好ましい。そのためには、レンズ系6はレーザチップ4の発光部を光ファイバ8のコア径に適した大きさにする必要があり、レーザチップ4の発光部とコア径の大きさから決まる所定の倍率を有するレンズ系6(一般には組合わせレンズ)が適用される。
【0039】
一般に、レーザチップ4の発光部の大きさは0.5〜2μm程度であり、また光ファイバのコア部の大きさも可視光域のシングルモード光ファイバを使用する場合には、4〜5μmと非常に小さくなる。このため、光ファイバをレンズ系6と結合して半導体レーザモジュールを組み立てる際には、レーザ出射光を効率良くコア部に入射するために、光ファイバ照射光9の結像スポットと光ファイバ8のコア部とを高精度調芯装置を用いてサブミクロンオーダーで位置合わせする。半導体レーザモジュールの組立てには、まず、光ファイバ8と光ファイバ照射光9を調芯した後、光ファイバ8をフェルール7で保持し、このフェルール7をスリーブ10で保持してレーザ保持具2と気密状態に接合する。このように、半導体レーザ1と光学装置と光ファイバは、接合部を気密状態として一体構造として、半導体レーザモジュールに組み立てられていることが好ましい。
【0040】
本発明の光学装置は、図1に示したように、レーザ保持具2とレーザ装置1のLDキャップ55で覆われた光出射端を支持するステム3とが作る空間58、及びレーザ保持具2と光ファイバ8の光入射端を含むスリーブとが作る空間56、並びにレーザ保持具2とシーリングテープ13によって作られている空間57とを有しており、空間57内には吸着剤11を備えている。空間56,57,58は、ガスの流通は可能なように連通しているが、外界からは隔離されている。光学装置内部のレーザ光が伝搬する空間56とレーザ保持具2の一部に設けられた空間57は、通気孔12と吸着剤11を介して連通している。なお、レーザ保持具2の一部に設けられた空間57は、シーリングテープ13によって外界から遮断されている。
【0041】
図3は本発明に使用する吸着剤11の断面構造を示す。活性炭を含んだ吸着物質18がサブミクロンの細孔径をもつ多孔質のフッ素系シートの容器19に収容されている。活性炭は表面構造の設計により、所望の被吸着物質に対応した吸着性能を持たせることが可能である。例えば、通常の活性炭にアルカリ処理を行えば酸性物質の吸着性を向上させることもできる。このため、活性炭の表面構造設計、賦活処理、表面処理等によって、有機系ガス、無機系ガスを吸着させることができる。特に、シリコン系化合物ガスの吸着能を向上させることもできる。吸着剤としては、密閉空間である空間56,57,58中の不純物ガス、特にレーザ光により分解や反応し、光学系や光ファイバ上に不純物として付着する物質を発生させるガス、レーザ光により分解や反応し、炭素や炭素化合物、特に液体や固体状の炭素化合物を形成するガスを吸着する機能を有することが好ましい。また、吸着剤には吸湿材を混在させることにより除湿することもできる。活性炭の以外の吸着剤としては、吸湿性も持つゼオライト、シリカゲルなどの無機系の多孔質吸着剤やイオン交換樹脂など、従来知られているガス吸着用の吸着剤を使用してもよい。
【0042】
多孔質のフッ素系シートの容器19は、気体は通過させることはできるが、内部の吸着剤11の成分、例えば活性炭の粉末が飛び散り、光学系を汚染することを防いでいれば、シート状の容器以外の容器でもよい。吸着剤11の底面に設けたシート20は、吸着剤11を通気孔12の入り口に固定する部材である。シート20は、シリコンフリーの粘着剤で空間57の通気孔12の入り口に貼り付けられている。
【0043】
吸着剤11の配置された空間57は、レーザ保持具2の外周から可撓性部材もしくは弾性部材であるシーリングテープ13で塞がれて気密封止されており、この構造が容積可変機構として作用する。
【0044】
図2は、図1で示したシーリングテープ13の断面図を示している。シーリングテープ13の底面には粘着剤15が塗布されており曲面をもつ部材にも貼付してシーリングできるようになっている。可撓性部材又は弾性部材のシーリングテープ13の一例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、或いはPETおよびアルミニウムを含む積層体からなるフィルムがある。フィルム層の裏面には貼付用の粘着剤が塗布されており、PETフィルム、アルミニウムフィルム、粘着剤はいずれもシリコンフリーの部材を使用し、これらの部材自身からの密閉空間内へのシロキサン等の汚染物質の侵入を防いでいる。弾性部材のシーリングテープ13の一例としてはゴム等の伸縮部材でもよい。
【0045】
なお、この光学装置の空間56と空間57とは、通気口12によって吸着剤11を介して連絡されている。そして、この光学装置の密閉空間全体の圧力変動は、空間57の容積可変機構により調整されている。この光学装置の内部の空間56と空間57の気体の流出入は、吸着剤11を介して行われるので、湿気、有機物ガス、空気中に浮遊するシロキサン等の不純物ガスは吸着剤11に捕捉され易くなる。
【0046】
容積可変機構について、図1及び図4乃至図6によりさらに説明する。図4に示す状態は、通常時のシーリングテープ13の状態である。半導体モジュールの温度上昇、あるいは半導体モジュール内外の気圧差が生じ、半導体モジュール内部の空間の圧力が、半導体モジュール外部の圧力より大きくなると、図5に示すように容積可変機構であるシーリングテープ13が半導体モジュールの外側に凸状に膨らむ。反対に、半導体モジュール内部の圧力が半導体モジュール外部の圧力より小さくなると、図6に示すように容積可変機構が半導体モジュールの内側に凸状になることによって半導体モジュール内部空間の容積が縮小し、半導体モジュール内部の圧力はほぼ一定に保たれる。
【0047】
同時に、吸着剤11を介して空間56と空間57の間でガスの流出入が起き、気密封止された半導体レーザモジュール内部空間中の不純物ガスは、吸着剤11に吸着され、半導体レーザモジュール内部空間は常に清浄に保たれる。特に、吸着剤11は、単に空間56内に配置する場合に比べ、空間内のガスの流れの中に配置することにより、不純物ガスの吸着効率を高めることができる。さらに、吸着剤11は、空間内に浮遊する微小な塵埃等のフィルタとしての役目も果たすことができる。このため、レーザ光によるピンセット効果や不純物ガス由来の付着物による、光ファイバ8先端のレーザ光集光部や半導体レーザ1のレーザ光発振部の汚れを効果的に防止できる。
【0048】
前述したように可視光以下の短波長のシングルモード光ファイバを用いた光結合系では、光結合効率を安定に保つために高精度の位置合わせとその維持が必要になる。ところが、従来の半導体レーザモジュールでは、光学装置の内容積は不変の容器に気密封止されていたため、半導体モジュールの温度上昇等により光学装置の内部圧力が上昇し、光結合系にゆがみが生じ、高精度の位置合わせが維持できなくなり、光利用効率が不安定になることがあった。また、光学装置内外の圧力差により気密の不完全な箇所から不純物ガスが侵入する恐れがあった。これらの問題は、本発明の容積可変機構で半導体モジュール内部の圧力をほぼ一定に保つことにより解消できる。
【0049】
一方、吸着剤を介して外気との流路を設ける方法もあるが、この場合、光学装置内外の気圧差の問題が解消できる反面、不純物ガスの多い雰囲気の環境や高湿度環境でモジュールが使用されると吸着剤がすぐに飽和してしまい、所望の性能が得られなくなるという欠点がある。本発明の光学装置は、吸着剤を含めて気密封止しているため外部との接触は無く、外部環境からの汚染物質を吸着剤11で捕捉して吸着剤の寿命を短くすることを回避することができる。
【0050】
なお、上記説明において図1で吸着剤11を配置した空間57は空間56と連通しているが、光学装置の密閉空間である空間58に連通した空間57を持たせても良い。
【0051】
また、本発明の光学装置は、短波長以外の半導体レーザモジュールにも適用し、光ファイバ出射光強度の安定化、高信頼性化を実現させることもできる。
【0052】
[実施形態2]
図7は、本発明の第2の実施形態である半導体レーザモジュールを搭載した光走査装置を示している。この光走査装置は、上述の半導体レーザモジュールを複数個使用し、各半導体レーザモジュール29〜33の光ファイバのレーザ光出射端は、互いに近接させ一列に配置した光ファイバアレイ部34を形成している。この光ファイバアレイ部34を、複数のレーザ光を出射する複数レーザビーム発生光源として用いる。個々の半導体レーザモジュール29〜33に組み込まれた半導体レーザは、コントローラからの画像データ信号35にしたがってレーザドライバ36〜40を駆動させることで、光ファイバアレイ部34の先端からは、それぞれ独立に変調された個々のレーザビーム41を出射する(図7では便宜上5本ビームとしている)。
【0053】
光ファイバアレイ部34から出射したレーザ光は、ビームを整形するためのレンズ42、レンズ43、レンズ44、レンズ45を透過後、光偏向素子の回転多面鏡46、走査光学素子の走査レンズ47により、感光ドラム48上にスポット列として結像され、個々に変調されたスポットが走査することにより感光ドラム48上に光記録が行われる。この本発明の半導体レーザモジュールを備えた光走査装置は、強度の高い安定したレーザ光を得られるために、長寿命、高精度の光走査装置として利用できる。
【0054】
[実施形態3]
上述の光走査装置は、プリンタや複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に好適に用いられる。図8には、第3の実施形態とて、本発明の光走査装置を搭載した画像形成装置を示した。図8において、画像形成装置110は、帯電器119により帯電された感光ドラム112の表面に、光走査装置120からレーザ光の信号を照射し、潜像を形成する。なお、光走査装置120からのレーザ光信号の照射は、上述のとおりである。潜像を形成された感光ドラム112は、時計回りに回転して現像部121で、潜像がトナーにより現像されトナー像となる。トナー像はさらに転写部140において、ウェブ(記録媒体)上に転写される。ウェブ114は、搬送ローラ122〜125により、用紙トレイ等から搬送され、転写部140において感光ドラム112に圧接され、感光ドラム112上のトナー像を転写され、定着部130へと搬送される。ウェブ114は、定着部130でトナー像が定着されて、ウェブ114上への画像形成が完了する。一方、トナー像をウェブ114に転写した感光ドラム112は、更に回転を続け、帯電器119で帯電され再度光走査装置120により次の潜像が形成される。そして、また現像、トナー像の転写が繰り返される。ウェブ114は、用紙トレイ等から次々と供給されるので、ウェブ114への画像形成は、継続的に実行される。この画像形成装置110は、本発明の光走査装置を搭載しているので、高画質・高信頼性の画像形成が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】半導体レーザモジュールの断面構造図
【図2】シール材の断面構造図
【図3】吸着剤の断面構造図
【図4】半導体レーザモジュールの容積可変機構の説明図
【図5】半導体レーザモジュールの容積可変機構の説明図
【図6】半導体レーザモジュールの容積可変機構の説明図
【図7】半導体レーザモジュールを搭載した光走査装置の概略図
【図8】光走査装置を搭載した画像形成装置の概略図
【符号の説明】
【0056】
1 半導体レーザ
2 レーザ保持具
3 ステム部
4 レーザチップ
5 レーザ光
6 レンズ系
7 フェルール
8 光ファイバ
9 光ファイバ照射光
10 スリーブ
11 吸着剤
12 通気孔
13 シーリングテープ
15 粘着剤
18 吸着物質
19 容器
20 シート
29 半導体レーザモジュール
30 半導体レーザモジュール
31 半導体レーザモジュール
32 半導体レーザモジュール
33 半導体レーザモジュール
34 光ファイバアレイ
35 画像データ信号
36 レーザドライバ
37 レーザドライバ
38 レーザドライバ
39 レーザドライバ
40 レーザドライバ
41 光ファイバアレイ出射レーザビーム
42 レンズ
43 レンズ
44 レンズ
45 レンズ
46 回転多面鏡
47 走査レンズ
48 感光ドラム
49 結像スポット
50 結像スポット
51 結像スポット
52 結像スポット
53 結像スポット
54 シーリングテープ
55 LDキャップ
56 空間
57 空間
58 空間
110 画像形成装置
112 感光ドラム
113 定着器
114 ウェブ
119 帯電器
120 光走査装置
121 現像器
122 搬送ローラ
123 搬送ローラ
124 搬送ローラ
125 搬送ローラ
126 プレヒータ
127 加熱ローラ
128 バックアップローラ
130 定着部
140 転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザから出射されたレーザ光を集光して光ファイバの光入射端に導光するレンズ系を有する光学装置であって、
前記光ファイバの光入射端及び前記レンズ系の少なくとも一方は、吸着剤を備え容積が可変な密閉空間内に配置されていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記密閉空間は、吸着剤を介して、光ファイバの光入射端及び前記レンズ系の少なくとも一方を備えた空間と容積可変機構を備えた空間とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記容積可変機構は、可撓性部材からなる密閉空間の壁面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記容積可変機構は、弾性部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記可撓性部材又は弾性部材は、シーリングテープであることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記シーリングテープは、PET(polyethylene terephthalate)製、又はPET及びアルミニウムを含む積層体であることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記可撓性部材又は弾性部材は、シリコンフリーの接着剤により密閉空間の壁面と接着されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記吸着剤は、レーザ光により分解又は反応する、密閉空間中の微量不純物を吸着することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記吸着剤は、分解又は反応して炭素又は炭素化合物を生成するガスを吸着することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記吸着剤は、シリコン系化合物ガスを吸着することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項11】
前記吸着剤は、吸湿性を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項12】
前記吸着剤は、活性炭、又は吸湿剤を含む活性炭であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項13】
前記吸着剤は、通気性を有する容器に収容されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項14】
半導体レーザの保持機能を有するレーザ保持部材、並びに光ファイバの保持機能を有するフェルール及び該フェルールの保持機能を有するスリーブを含む光ファイバ保持部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項15】
半導体レーザと、光ファイバと、前記半導体レーザから出射されたレーザ光を集光して前記光ファイバ端部に導光する請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光学装置とを備えたことを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項16】
前記半導体レーザのレーザ光出射部と前記光学装置とが、一体構造であることを特徴とする請求項15に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項17】
前記半導体レーザの出射するレーザ光は、450nm以下であることを特徴とする請求項15又は16に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項18】
半導体レーザモジュールにおける光ファイバのレーザ光出射端を複数配列した光ファイバアレイと、該光ファイバアレイから出射されたレーザ光を偏向走査するための光偏向素子と、該光偏向素子により偏向走査されたレーザ光を被走査面上に走査結像させる走査光学系とを有する光走査装置において、
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の半導体レーザモジュールを備えていることを特徴とする光走査装置。
【請求項19】
請求項18に記載の光走査装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−153291(P2008−153291A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337281(P2006−337281)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】