説明

光情報再生装置

【課題】 2つの光の光路差の調整が容易で、信号増幅効果が高く、光学系の小型化に適した、干渉型の光情報信号を検出する光情報再生装置を提供する。
【解決手段】 光源から出射した光束を第1の光束と第2の光束とに分割し、対物レンズで光情報記録媒体上に集光して反射した第1の光束の信号光と、光情報記録媒体に集光しない第2の光束の参照光との合成光を光軸付近の第1の光束と、周辺部の第2の光束に分離して、複数の検出器で独立に検出するように分岐させる光分岐素子232を付加する。そして、第1の光束についてフォーカス誤差信号を検出し、焦点ずれを補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報再生装置の再生信号の高S/N化に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、青色半導体レーザと、NA0.85の高NA対物レンズを用いるブルーレイディスクの製品化に至って、光学系の分解能としてはほぼ限界に達し、さらなる大容量化に向けては、今後、記録層の多層化が有力となると考えられる。近年、記録層の層間隔が25μmの2層ブルーレイディスクが市販されており、レコーダの映像保存媒体やパソコンのデータ保存媒体として用いられている。
【0003】
このような多層光ディスクにおいては各記録層からの検出光量がほぼ同等となる必要性から、記録層の数を増やすのに伴い特定の記録層からの反射率は小さくせざるを得ない。このため、各記録層からの検出信号のS/N比が低下するという課題がある。
【0004】
また、レーザ光を多層光ディスクに照射した場合、同時に複数の層を照射することになるため、情報を再生する対象層以外の記録層からの反射迷光、すなわち層間クロストークによっても検出信号のS/N比が低下してしまう。
【0005】
ところが光ディスクは大容量化とともにビデオなどのダビング速度の高速化の必要性から、データ転送速度の高速化も続いており、そのままでは再生信号のS/N比が十分確保できなくなりつつある。したがって今後の記録層の多層化と高速化を同時に進めていくためには、検出信号の高S/N化が必須となる。
【0006】
光ディスクの再生信号の高S/N化に関する技術は、たとえば特許文献1、特許文献2などに述べられている。いずれも光磁気ディスクの再生信号の高S/N化に関して、半導体レーザからの光を光ディスクに照射する前に分岐して、光ディスクに照射しない光を、光ディスクからの反射光と合波して干渉させることにより、微弱な信号の振幅を、光ディスクに照射しない光の光量を大きくすることによって増幅することを狙ったものである。光磁気ディスクの信号検出で従来用いられている偏光ビームスプリッタの透過光と反射光の差動検出では、本質的にはもとの入射偏光成分と光磁気ディスクによる偏光回転によって生じる入射偏光方向と直交する偏光成分を干渉させて、入射偏光で直交偏光成分を増幅して検出を行うことになっている。したがって、もとの入射偏光成分を増大させれば信号を増大させることができるが、光ディスクに入射させる光強度は、データを消去したり上書きしたりしないようにするために、ある程度以下に抑える必要がある。これに対して上記従来の技術では、予め信号光と干渉させる光を分離しておいて、これをディスクに集光せずに信号光と干渉させ、信号増幅のため干渉させる光の強度を、ディスク表面の光強度と関係なく強くできるようにしているのである。これにより原理的には光強度の許す範囲で、強度を強くすればするほど、光検出器からの光電流を電圧変換するアンプのノイズや、光検出器で生じるショットノイズなどに比べたS/N比を高めることができる。
【0007】
特許文献1では、2つの光を干渉させて干渉強度を検出している。この際、干渉させるディスク非反射光の光路長を可変とし、干渉信号振幅の確保を狙っている。特許文献2では干渉強度検出に加えて、差動検出も行っている。これにより信号に寄与しない各光の強度成分をキャンセルし、これらの光の持つノイズ成分をキャンセルして高S/N化を図っている。この場合の差動検出には、無偏光のビームスプリッタを用いている。
【0008】
層間クロストークを低減する技術の一例として、特許文献3では反射光を3分割して、それぞれの層(対象となる読出層、対象となる層の2つの隣接層)に対して、異なる焦点位置で、それぞれからの反射光を検出する方式を採用し、信号処理によりクロストークを低減する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−342678号公報
【特許文献2】特開平6−223433号公報
【特許文献3】特開2001−273640号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2に用いられている干渉計の光学系は、いずれもマッハツェンダー型の光学系であり、光学部品の点数が多く、光学系の小型化に不向きである。マッハツェンダー型の干渉計の光学系は、最初に光を信号光と参照光とに分割する分割手段と、信号光に信号としての何らかの変調が加えられたのち、参照光と再び合波させて干渉させるための手段が異なる干渉計である。これに対して、最初に分割する手段に再び信号光と参照光を戻すことによって干渉させるのが、トワイマングリーンあるいはマイケルソン型の干渉計の光学系である。上記従来例においてマッハツェンダー型の光学系を用いる理由については、上記文献には詳しく述べられていないが、光磁気ディスクの信号光が偏光回転により生じるため、干渉させる光の偏光方向を調整するため、回転調整のできるλ/2板(λ:波長)を干渉させる光路中に、往復でなく、片道方向だけ透過させるように配置させる必要があったためと推測される。さらに他の問題として、2つの光の光路差を調整する方法が特に述べられておらず、実用には難があることが挙げられる。特許文献2には、この問題に対して、干渉させる光を得るための参照ミラーをディスク上に記録膜と離して設置することが述べられているが、これは新規格のディスクを提案するものであり、既存のディスクを高S/N化するものではない。また、特許文献1、2では多層光ディスクの層間クロストークに関しては触れられていない。
【0011】
一方、特許文献3では、反射光が3分割されるので、光の強度が減少し、S/N比が減少する欠点がある。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、2つの光の光路差の調整が容易で、信号増幅効果が高い、干渉型の光情報信号の検出を行う光情報再生装置を提供することにある。特に、複数の記録層を有する多層光ディスクに対してS/N比の高い光情報信号を検出する光情報再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、前述の課題を解決するために以下の手段を用いた。
光源から出射した光束を第1の光束と第2の光束とに分割し、
対物レンズで光情報記録媒体上に集光して反射した第1の光束の信号光と、
光情報記録媒体に集光しない第2の光束の参照光と、を合成し、
信号光と参照光の合成光を集光レンズによって集光し、複数の検出器で検出することにより再生信号を取得する光情報再生装置であって、
さらに、信号光と参照光の合成光を光軸付近の第1の光束と周辺部の第2の光束に分離して、前記複数の検出器で独立に検出するように分岐させる光分岐素子を付加する。そして、前記第1の光束についてフォーカス誤差信号を検出し、該フォーカス誤差信号を用いて信号光を集光し光情報記録媒体に照射する手段を制御し、焦点ずれを補償することにした。
前記複数の光検出器から得られる多層光ディスクの再生信号を考えると、信号光と参照光は集光レンズによって検出器の受光素子に集光されるのに対し、迷光は検出器上でデフォーカスしているため参照光との干渉度が低下する。これにより、参照光による迷光の増幅率は信号光の増幅率に比べて小さくなるため、結果的に信号光のみから得られる従来の再生信号に比べて層間クロストークが非常に小さくなる。多層光ディスクのトラッキング誤差信号も同様である。
【0014】
一方で、前記複数の光検出器から得られるフォーカス誤差信号を考えると、迷光は再生信号と同様、検出器上でデフォーカスしているため参照光との干渉度が低下するが、フォーカス制御を行わない状態では、焦点ずれによって信号光も参照光との干渉度が低下する。このため、フォーカス誤差信号の検出可能な焦点ずれ範囲が非常に狭くなり、フォーカス制御が困難となる。ここで、光軸付近の第1の光束のみを用いることにより、焦点ずれによる信号光のデフォーカス波面収差は小さくなるため、参照光の干渉度の低下を抑えることができ、適切な焦点ずれ範囲で検出可能、かつ層間クロストークの影響の小さいフォーカス誤差信号が得られる。
【0015】
これにより、複数の記録層を有する多層光ディスクにおいて、再生信号だけでなくフォーカス誤差信号に対して層間クロストークを低減することができ、参照光との干渉による信号光の増幅効果と合わせて、S/N比の高い再生信号およびフォーカス誤差信号を得ることができ、多層光ディスクの再生信号品質を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
従来の光ディスク装置と同等のサイズで作製可能で、信号増幅効果が高く、安価な干渉型の光学的情報検出方法、光ピックアップおよび光ディスク装置が実現される。特に、複数の記録層を有する多層光ディスクに対して高S/N比の検出信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光情報記録再生装置の構成例を表す概略図。
【図2】本発明の光情報検出方法を実現する光ピックアップの構成例を示す図。
【図3】信号光と参照光の偏光方向と検出光の偏光方向を示す図。
【図4】本発明の光ピックアップにおける検出器を表す概略図。
【図5】本発明の光分岐素子の一例を表す概略図。
【図6】本発明の光ピックアップにおける検出器の一例を表す概略図。
【図7】本発明のフォーカス誤差信号のシミュレーション結果。
【図8】本発明のフォーカス制御のフローを示す図。
【図9】本発明の光分岐素子の一例を表す概略図。
【図10】本発明の光ピックアップにおける検出器の一例を表す概略図。
【図11】本発明のトラッキング制御のフローを示す図。
【図12】本発明の光分岐素子の一例を表す概略図。
【図13】本発明の光ピックアップにおける検出器の一例を表す概略図。
【図14】本発明の光分岐素子の一例を表す概略図。
【図15】本発明の光ピックアップにおける検出器の一例を表す概略図。
【図16】本発明の光分岐素子の一例を表す概略図。
【図17】本発明の光ピックアップにおける検出器の一例を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の光信号検出方法を実現する光情報記録再生装置の全体的な構成の一例を示したものである。
[光情報記録再生装置の全体構成]
光情報記録再生装置1は、光ピックアップ101と回転モータ102を備えており、光情報記録媒体103は回転モータ102によって回転可能な構成となっている。
【0020】
光ピックアップ101は、光を光情報記録媒体103に照射してデジタル情報を記録および/または再生する役割を果たす。光ピックアップ101で検出された再生光は電流電圧(IV)変換された後、信号処理回路105に入力される。信号処理回路105によって再生信号やサーボ信号が生成され、コントローラ104に送られる。
【0021】
コントローラ104はサーボ信号に基づき、サーボ制御回路106やアクセス制御回路107、自動位置制御手段108を制御する。自動位置制御手段108は回転モータ102により光情報記録媒体103の回転制御を、アクセス制御回路107は光ピックアップ101の位置制御を、サーボ制御回路106は後述する光ピックアップ101の対物レンズや参照光反射手段の位置制御などを行う。これにより光情報記録媒体103の任意の位置に光スポット110を位置づける。また、コントローラ104は再生か記録かによってレーザドライバ109を制御し、後述する光ピックアップ101に含まれるレーザを適当なパワー/波形で発光させる。
[光ピックアップ光学系構成]
図2は、光情報記録再生装置1における光ピックアップ101の光学系構成の一例を示したものである。本実施例の光ピックアップ光学系は、半導体レーザから出射された光を光ディスクに導き反射させ、該反射光と参照光とを干渉させて干渉光を生成するための干渉光学系と、生成された干渉光を分離し、分離された各々の干渉光に位相差を付与して複数の検出器で検出するための検出光学系とにより構成される。
【0022】
<ピックアップ全体構成>
光ピックアップ101に搭載された半導体レーザ201から出射した光は、コリメートレンズ202によって平行光にコリメートされた後、第1のλ/2板203を透過することによって、偏光方向が45度回転させられる。偏光の回転した光は第1の偏光ビームスプリッタ204によって直交する2つの直線偏光に分離される。垂直偏光(s偏光)の光は第1の偏光ビームスプリッタ204によって反射されて、サーボ用ビームスプリッタ213を透過し、第1のλ/4板207を透過することによって円偏光に変換された後、光ディスク209の基板厚の変化により発生する球面収差を補正するエキスパンダレンズ231を透過し、対物レンズ208で集光され、光ディスク209に照射される。光ディスク209からの反射光205(以降、信号光と呼ぶ)は、対物レンズ208で再び平行光に戻されて、エキスパンダレンズ231、第1のλ/4板207を透過し、一部の信号光はサーボ用ビームスプリッタ213で反射され、残りは透過する。信号光205は第1のλ/4板207で直線偏光に戻されるが、ディスク面での反射によって、円偏光の回転方向が反転するため、直線偏光の方向は元の光と直交する水平偏光となる。このため、第1のλ/4板207、サーボ用ビームスプリッタ213を透過した信号光205は第1の偏光ビームスプリッタ204を透過し、ビームスプリッタ212へ向かう。一方、最初に第1の偏光ビームスプリッタ204を透過した水平偏光(p偏光)の光206(以降、参照光と呼ぶ)は、第2のλ/4板210を透過し円偏光に変換され、参照光反射手段211によって反射され、信号光205と同様に第2のλ/4板210によって元の参照光と偏光方向の直交する垂直偏光に変換される。このため、今度は第1の偏光ビームスプリッタ204によって反射され、信号光205と合成されてビームスプリッタ212の方向に向かう。このとき、信号光205と参照光206は、互いに偏光方向が直交した状態で合成されている。
【0023】
<信号光専用PD216とホモダイン用PD224〜227への光の分離>
サーボ用ビームスプリッタ213は、垂直偏光を100%透過し、水平偏光の一部を反射、一部を透過するという性質を持っている。このため、半導体レーザ201から出射され偏光ビームスプリッタ204で反射された垂直偏光の光はサーボ用ビームスプリッタ213を100%透過して光ディスク209へ照射され、光ディスク209で反射され第1のλ/4板207を透過した水平偏光の信号光205はサーボ用ビームスプリッタによって一部反射され、一部は透過する。
【0024】
または、サーボ用ビームスプリッタ213は、垂直偏光を100%反射し、水平偏光の一部を反射、一部を透過するという性質を持っていてもよい。このとき、第1のλ/4板207、エキスパンダレンズ231、対物レンズ208、光ディスク209は、サーボ用ビームスプリッタ213による垂直偏光の反射光路中に配置される。また、集光レンズ214、シリンドリカルレンズ215、光検出器216は、光ディスク209によって反射された信号光205のサーボ用ビームスプリッタ213の透過光路中に配置される。
【0025】
<PD216からのサーボ信号生成>
サーボ用ビームスプリッタ213で反射された一部の信号光205は、集光レンズ214、シリンドリカルレンズ215により非点収差を与えられて光検出器216へと導かれ、その出力信号から信号処理回路105によってフォーカス誤差信号(FES)やトラッキング誤差信号(TES)を出力する。以降、光検出器216の出力信号から得られるFES、TESを後述する光検出器224〜227から得られるそれと区別するため、FES1、TES1と記す。図4(a)はサーボ用ビームスプリッタ213で反射された一部の信号光205の光線図を、図4(b)は光検出器216の構成を示す。図4(a)に示すように、光検出器216は信号光205が集光レンズ214、シリンドリカルレンズ215によって集光されて最小錯乱円となる位置に配置される。光検出器216は図4(b)に示すように4つの領域に分割されており、それぞれの領域からの出力信号をA、B、C、Dとおくと、信号処理回路105によってFES1=(A+C)−(B+D)、TES1=(A+B)−(C+D)として出力する。なお、本実施例では、フォーカス誤差信号検出方式として非点収差法を用いる場合を示すためにシリンドリカルレンズ215を配置しているが、例えばフォーカス誤差信号検出方式にナイフエッジ法やスポットサイズ方式を用いてもよい。この場合にはシリンドリカルレンズ215は不要となる。
【0026】
<PD224〜227からのRF信号、サーボ信号生成>
偏光ビームスプリッタ204で合成された信号光205と参照光206の合成光の一部は、光分岐素子232、ハーフミラーであるビームスプリッタ212を透過し、第2のλ/2板218によって偏光方向を45度回転させられた後、集光レンズ220で集光され、シリンドリカルレンズ234を透過し、偏光ビームスプリッタ222によって直交する直線偏光に分離され、第1の光検出器224(PD1)と第2の光検出器225(PD2)によって検出される。なお、シリンドリカルレンズ234は非点収差を発生する素子であればよく、例えば傾いた平行平面板で代用することもできる。光検出器224、225は信号光205と参照光206の合成光が集光レンズ220、シリンドリカルレンズ234によって集光されて最小錯乱円となる位置に配置される。2つの光検出器PD1、PD2で検出される光の偏光成分P、Sと、信号光の偏光方向(Esig)と参照光の偏光方向(Eref)の関係を示したのが図3である。光検出器PD1ではP偏光すなわちEsigとErefのP偏光方向の射影成分が検出され、光検出器PD2ではS偏光すなわちEsigとErefのS偏光方向の射影成分が検出される。S偏光方向の射影成分では、この図の場合、Erefの符号が反転して見える。光検出器PD1、PD2で検出される信号を式で表すと、それぞれ次のようになる。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
ここで、絶対値の二乗になっているのは、検出されるのは光のエネルギーであるからである。ここでは簡単のためにEsigとErefは完全コヒーレンスであることを仮定している。
【0030】
偏光ビームスプリッタ204で合成された信号光205と参照光206の合成光のもう一部は、光分岐素子232を透過し、ハーフミラーであるビームスプリッタ212で反射され、信号光205及び参照光206の偏光方向に対し45度回転して配置された第3のλ/4板219によって円偏光に変換される。この時信号光205と参照光206で元の偏光方向が90度異なるため、逆の回転方向の円偏光に変換される。この円偏光が、レンズ221で集光され、シリンドリカルレンズ233を透過し、偏光ビームスプリッタ223によって直交する直線偏光に分離され、第3の光検出器226(PD3)と第4の光検出器227(PD4)によって検出される。なお、シリンドリカルレンズ233は非点収差を発生する素子であればよく、例えば傾いた平行平面板で代用することもできる。光検出器226、227は信号光205と参照光206の合成光が集光レンズ221、シリンドリカルレンズ233によって集光されて最小錯乱円となる位置に配置される。2つの光検出器PD3、PD4で検出される光の偏光成分P、Sと、信号光の偏光方向(Esig)と参照光の偏光方向(Eref)の関係も同様に図3で表されるが、EsigとErefの間に90度の位相差がついているのが、PD1とPD2の例とは異なる。光検出器PD3、PD4で検出される信号を式で表すと、それぞれ次のようになる。
【0031】
【数3】

【0032】
【数4】

【0033】
式中のexp(±iπ/4)はλ/4板でEsig、Erefで±45度(90度の差)の位相差がつけられていることを表している。ビームスプリッタ212、偏光ビームスプリッタ222、223によって分割された信号光205と参照光206の位相差は、数(1)〜(4)に示すように、4つの光検出器PD1、PD2、PD3、PD4上でそれぞれ、0°、180°、90°、270°と互いに異なっている。
【0034】
このようにして、各々の検出器で検出される信号には、光ディスク209上の情報には無関係な成分|Eref|が含まれているため、PD1とPD2、PD3とPD4でそれぞれ差動信号をとると、
【0035】
【数5】

【0036】
【数6】

【0037】
となり、信号光振幅強度と参照光振幅強度の積の形の信号が得られる。これは、参照光の強度を大きくすれば大きな信号出力を得られることを示している。即ち信号光の強度を増幅できることを示している。
【0038】
ここで、数(5)及び数(6)にはsin、cosが付随しており、これは信号光と参照光との間の位相差を表している。ところが参照光と信号光は別の光路を通り、ディスクの回転に合わせてフォーカスサーボにより対物レンズ209が上下して追随するため、信号光の光路長は絶え間なく変化することになる。したがって、数(5)及び数(6)の位相項が確定せず、この方式で得られる信号は大きく変化してしまう。
【0039】
そこで、信号演算回路105により両者の二乗和の演算を行って信号を得ることとした。
【0040】
【数7】

【0041】
このように演算を行うことにより、信号光と参照光の位相が変化した場合でも、安定して確実に一定の信号を得ることができる。数(7)のように二乗加算の演算を行うことにより出力Sは信号光強度|Esig|に比例した信号が得られるため、再生RF信号は従来のCD、DVD、BDと同じ信号波形が得られる。また、その増幅率は|Eref|であり、参照光強度を強くすることにより、増幅率を上げることができることがわかる。また、二乗和の後平方根を取って再生RF信号としても良い。平方根を取る演算を行うと、信号光強度の平方根に比例した出力となるため、再生RF信号は従来の光磁気ディスクと同じ信号波形となる。
【0042】
なお、本実施例ではハーフビームスプリッタ212の反射光と透過光に対して別々の集光レンズ220、221と、シリンドリカルレンズ233、234を用いているが、ハーフビームスプリッタ212で光を分岐する前に集光レンズとシリンドリカルレンズを配置し、ハーフビームスプリッタ212の反射光と透過光に対して共用してもよい。
【0043】
図5は本発明における光分岐素子232のパターンの一例を示す図である。光分岐素子232は入射光束501の径に対して、相対的に小さな直径502で境界を設定し、その内側領域232Aと外側領域232Bにおいて内側領域232Aのみ回折格子のパターンを有する。ここで、相対的に小さい、とは、光分岐素子232の内側領域232Aの直径502の入射光束径501に対する比をrとして、0<r<1を満たすことを意味する。なお、内側領域232Aの形状は必ずしも円形である必要はなく、入射光束501に対して相対的に小さな領域を有する形状であればよく、例えば四角形でも良い。内側領域232Aに入射した光は±1次光に回折され、外側領域232Bに入射した光は透過する。これにより光束の内側と外側が分離されて光検出器224、225、226、227に集光されることになる。図6に本実施例における光検出器224、225、226、227のパターンの一例を示す。4つの光検出器224、225、226、227は同じ構成であるため、以降、光検出器PD1、224を用いて説明する。光分岐素子232の内側領域232Aでの+1次回折光601は4分割受光領域224Aで、−1次回折光602は受光領域224Bで、光分岐素子232の外側領域232Bの透過光603は受光領域224Cで受光する。光分岐素子232の内側領域232Aでの+1次回折光601、−1次回折光602はそれぞれ以下に説明する通りサーボ信号、再生RF信号に用いられる。できるだけ多くの光量を再生RF信号に用いるため、光分岐素子232の内側領域の回折効率は、+1次、−1次回折光の回折効率をそれぞれR+1、R−1として、R+1<R−1であることが望ましい。このため、内側領域の回折格子としては、例えば鋸波型のブレーズド回折格子を用いる。受光領域224B、224Cの出力はバッファアンプ604で電圧に変換し、抵抗605で適当なゲインが設定された差動アンプ606で加減演算され、数(1)に示した再生RF信号IRF1として出力される。数(2)(3)(4)に示すIRF2、IRF3、IRF4も同様にして光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)から出力される。図5に示す光分岐素子232では、外側領域232Bは100%光が透過するのに対して、内側領域232Aは一部+1次回折光として分岐されるため、受光領域224Bと224Cにおいて入射光量に対する検出光量の比が異なる。そこで、抵抗605を可変抵抗として調整すればよい。4分割受光領域224Aからは信号I1A、I1B、I1C、I1Dが出力され、以下に説明するフォーカス誤差信号の演算に用いられる。下付き文字の1は光検出器の番号を、A、B、C、Dは対応する4分割受光領域を表している。光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)からも同様にして信号I2A、I2B、I2C、I2D、I3A、I3B、I3C、I3D、I4A、I4B、I4C、I4Dが出力される。光検出器224、225、226、227の4分割受光素子から得られた出力IXY(X=1、2、3、4、Y=A、B、C、D)からフォーカス誤差信号FES2は例えば以下のようにして得られる。
【0044】
【数8】

【0045】
(5)(6)と同様、まず光検出器PD1とPD2との間(X=1)、PD3とPD4との間(X=3)でそれぞれ差動信号f(X,Y)(ただしY=A,B,C,D)を取る。その後4分割受光素子の各領域A〜Dにおいてf(1,Y)とf(3,Y)の2乗和を取ることによって数(7)と同様に信号光と参照光の位相変化によらない信号とする。最後に4分割受光素子の対角領域の和の差動演算により非点収差信号(受光領域A+Cと領域B+Dの差動信号)を得る。
【0046】
またはフォーカス誤差信号FES2は以下のようにしても得られる。
【0047】
【数9】

【0048】
図7は本発明におけるフォーカス誤差信号を計算機シミュレーションにより確認した結果である。シミュレーションはスカラー回折理論に基づき、光検出器上の光強度分布をフーリエ積分により求めた。計算条件は波長405nm、対物レンズNA0.85、検出系集光レンズNA0.077、検出系非点格差1.44mm、4分割受光領域サイズ110μm、検出器分割線幅5μmで、光分岐素子232の内側領域232Aの直径502の入射光束径501に対する比rは76.5%である。図7(a)は光検出器216で信号光205のみから得られる従来のフォーカス誤差信号(実線)と再生RF信号(破線)のデフォーカス特性、図7(b)は光検出器224、225、226、227で数(8)によって得られるフォーカス誤差信号(実線)と再生RF信号(破線)のデフォーカス特性である。再生RF信号(破線)を見ると、図7(a)の信号光のみから得られる再生RF信号に比べて、図7(b)の信号光と参照光の合成光から得られる再生RF信号はデフォーカスとともに急激に減衰している。このため、対物レンズ208の焦点位置からずれた層からの反射光量は殆ど無視することができ、多層光ディスクにおいて層間クロストークの影響が小さい信号となる。一方、フォーカス誤差信号(実線)を見ると、図7(a)の信号光のみから得られるフォーカス誤差信号FES1は引き込み範囲が約1.2μmであるのに対し、図7(b)の信号光と参照光の合成光から得られるフォーカス誤差信号FES2では約0.7μmと約半分に狭まっており、再生RF信号と同様に、FES1に比べてデフォーカスとともに減衰している。このため、適切な焦点ずれ範囲で検出可能、かつ層間クロストークの影響の小さいフォーカス誤差信号が得られる。なお、フォーカスの引き込み範囲は光分岐素子232の内側領域232Aの直径502の入射光束径501に対する比r(0<r<1)によって設計可能であり、rを大きくすることによって引き込み範囲をより狭くし、層間クロストークの影響をより小さくすることが可能である。
【0049】
<サーボ制御>
信号処理回路105で生成されたフォーカス誤差信号はコントローラ104、サーボ制御回路106を介して対物レンズ208を搭載した2次元アクチュエータ228のフォーカス駆動端子にフィードバックされ焦点位置が閉ループ制御される。
【0050】
さらに同じ信号が参照光反射手段211を搭載した1次元アクチュエータ229にもフィードバックされ、対物レンズ208と連動して参照光反射手段211も駆動される。これにより光ディスク209を反射した信号光205と、参照光反射手段211を反射した参照光206の光路差をほぼ0に保つことができる。通常の半導体レーザのコヒーレンス長は数10μmであるため、光路差の調整精度はこの範囲以下になっていればよい。また、半導体レーザ201として、例えばDFBレーザなどのコヒーレンス長が数cm〜数mと非常に長いレーザを用いてもよい。この場合、参照光反射手段211を駆動して信号光と参照光の光路差を0にする必要はなく、フォーカス誤差信号の1次元アクチュエータ229へのフィードバックは不要である。
【0051】
本実施例では信号光205のみを検出する光検出器216と、信号光205と参照光206の合成光を検出する光検出器224、225、226、227の各々からフォーカス誤差信号FES1、FES2を生成することができる。FES2はFES1に比べて層間クロストークの影響が小さいが、対物レンズ208の焦点位置から離れた層からのS字のフォーカス誤差信号が小さくなり、多層光ディスクの層数を数えたり、記録層の切り替え(層間ジャンプ)を行ったりするのには不向きである可能性がある。そこで、図8に示すように、例えば層数の少ない光ディスクを再生する時や、光ディスク209を光情報記録再生装置1にセットして層数をカウントするなど光情報記録再生装置1の初期調整を行う時、多層光ディスクの記録層切り替え(層間ジャンプ)を行う時など、記録層だけでなく記録層以外のS字のフォーカス誤差信号も必要な時はフォーカス誤差信号としてFES1を用い、層間クロストークの影響をできるだけ受けずに多層光ディスクの記録再生を行う時はフォーカス誤差信号としてFES2を用いるように、図1に示す光情報記録再生装置1のコントローラ104でフォーカス誤差信号を切り替えてもよい。
【0052】
信号処理回路105で生成されたトラッキング誤差信号はコントローラ104、サーボ制御回路106を介して対物レンズ208を搭載した2次元アクチュエータ228のトラッキング駆動端子にフィードバックされ閉ループ制御される。
【0053】
<参照光反射手段>
参照光反射手段211は例えば反射ミラーによって実現される。この場合、参照光反射手段211による反射光が入射した参照光211の光軸に対して傾かないように、ミラーの傾きを調製する必要がある。このため、反射ミラーや参照光211の波面の傾きを検出し、参照光反射手段211にフィードバックして参照光211の波面の傾きを調整する機構を具備しても良い。または、参照光反射手段211は集光レンズと反射ミラーによって実現される。参照光206を集光レンズによって集光し、その焦点位置に反射ミラーを置くことで、入射光と反対方向に反射する参照光を作り出すことができる。この場合、反射ミラーが傾いても信号光に対して参照光の光軸がずれるだけなので、参照光反射手段211を反射ミラーだけで実現する場合に比べて反射ミラーの角度調整が容易となる。または、参照光反射手段211はコーナーキューブによって実現される。コーナーキューブは、どのような入射角で光を入射させても反射光が必ず入射光と同じ方向に戻るという素子であるため、波面の傾きを調整する必要は無い。
【0054】
<記録/再生時の光路切り替え>
図2では光ディスク209に記録された情報の再生時の光線図を表しており、半導体レーザ201からの光を信号光205と参照光206の2光束に分離しているが、記録時には参照光は不要であるので、第1のλ/2板203を透過する光をS偏光とし、すべて第1の偏光ビームスプリッタ204で反射して信号光として用いる。これは、例えば第1のλ/2板を記録時と再生時で回転することによって、信号光と参照光の強度比を変化させることによって実現される。または、電圧の印加によって入射する光の偏光方向が切り替わる液晶波長板を用いたり、λ/2板を抜き差ししたりするのでも良い。
【0055】
ただし、情報の記録時に光検出器224、225、226、227から得られるフォーカス誤差信号FES2を用いる場合は、この限りではない。
【0056】
<他の球面収差補正方法>
本実施例において球面収差補正機構として2枚組エキスパンダレンズの一部を動かす例を示しているが、これは例えばコリメートレンズ202をアクチュエータに搭載して動かしてもよい。また、電圧駆動の液晶可変位相変調素子を用いて、波面を直接変調してもよい。
【実施例2】
【0057】
本実施例では、光検出器224、225、226、227からフォーカス誤差信号だけでなくトラッキング誤差信号も検出する光信号検出方法を実現する光情報記録再生装置の一例を説明する。なお、本実施例における光情報記録再生装置1および光ピックアップ101に関して、既に説明した図1、図2に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0058】
図9は光情報記録再生装置1における光ピックアップ101の光分岐素子232のパターンの別の一例を示す図である。光分岐素子232は入射光束501の径に対して、相対的に小さな直径502で境界を設定し、その内側領域232Aと外側領域232Cで回折格子の方向を異ならせる。なお、内側領域232Aの形状は必ずしも円形である必要はなく、入射光束501に対して相対的に小さな領域を有する形状であればよく、例えば四角形でも良い。内側領域232A、外側領域232Cに入射した光はそれぞれ±1次光に回折される。これにより光束の内側と外側が分離されて検出器224、225、226、227に集光されることになる。図10に本発明における光検出器224、225、226、227のパターンの一例を示す。4つの検出器224、225、226、227は同じ構成であるため、以降、光検出器224を用いて説明する。光分岐素子232の内側領域232Aでの+1次回折光1001は4分割受光領域224Aで、−1次回折光1002は受光領域224Bで、光分岐素子232の外側領域232Cの+1次回折光1003は2分割受光領域224Dで、−1次回折光1004は受光領域224Eで受光する。光分岐素子232の内側領域232A、外側領域での+1次回折光1001、1003はサーボ信号に、−1次回折光1002、1004は再生RF信号に用いられる。できるだけ多くの光量を再生RF信号に用いるため、光分岐素子232の内側領域232A、外側領域232Cの回折効率は、+1次、−1次の回折光の回折効率をそれぞれR+1、R−1として、内側領域、外側領域ともにR+1<R−1であることが望ましい。このため、回折格子としては、例えば鋸波型のブレーズド回折格子を用いる。受光領域224B、224Eの出力はバッファアンプ604で電圧に変換し、抵抗605で適当なゲインが設定された差動アンプ606で加減演算され、数(1)に示した再生RF信号IRF1として出力される。数(2)(3)(4)に示すIRF2、IRF3、IRF4も同様にして光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)から出力される。光束の内外で分割の光量比が均等でない場合には、抵抗605を可変抵抗として調整すればよい。4分割受光領域224Aからは信号I1A、I1B、I1C、I1Dが出力され、2分割受光領域224Dからは信号I1E、I1Fが出力され、以下に説明するフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号の演算に用いられる。下付き文字の1は光検出器の番号を、A、B、C、D、E、Fは対応する4分割受光領域、2分割受光領域を表している。光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)からも同様にして信号IXY(X=2、3、4、Y=A、B、C、D、E、F)が出力される。光検出器224、225、226、227の4分割受光素子から得られた出力IXY(X=1、2、3、4、Y=A、B、C、D)からフォーカス誤差信号FES2は例えば数(8)または(9)で得られる。また、トラッキング誤差信号TES2は例えば以下のようにして得られる。
【0059】
【数10】

【0060】
数(5)(6)と同様、まず光検出器PD1とPD2との間(X=1)、PD3とPD4との間(X=3)でそれぞれ差動信号PP(X)、PP(X)を取る。その後PP(1)とPP(3)、PP(1)とPP(3)の2乗和を取ることによって数(7)と同様に信号光と参照光の位相変化によらない信号とする。最後にPPの2乗和の項とPPの2乗和の項の差動演算によりプッシュプル信号(受光領域A+D+Eと領域B+C+Fの差動信号)を得る。
【0061】
トラッキング誤差信号TES2に関しては、光ディスクのトラックによる±1次回折光をプッシュプル信号として検出するため、内側領域232Aの光だけでなく、外側領域232Cの光も用いる。
【0062】
本実施例では信号光205のみを検出する光検出器216と、信号光205と参照光206の合成光を検出する光検出器224、225、226、227の各々からフォーカス誤差信号FES1、FES2とトラッキング誤差信号TES1,TES2を生成することができる。フォーカス誤差信号に関しては実施例1と重複するため説明は割愛する。トラッキング誤差信号TES2はTES1に比べて層間クロストークの影響が小さいが、対物レンズの焦点ずれが起きた時に信号光量が低下する可能性がある。そこで、図11に示すように、例えば層数の少ない光ディスクを再生する時や、光ディスク209を光情報記録再生装置1にセットして光情報記録再生装置1の初期調整を行う時、多層光ディスクの記録層切り替え(層間ジャンプ)を行う時などはトラッキング誤差信号としてTES1を用い、層間クロストークの影響をできるだけ受けずに多層光ディスクの記録再生を行う時はトラッキング誤差信号としてTES2を用いるように、図1に示す光情報記録再生装置1のコントローラ104でフォーカス誤差信号を切り替えてもよい。
【実施例3】
【0063】
実施例1、2では、フォーカス誤差信号検出方式として非点収差方式を用いる場合を示しているが、本実施例ではナイフエッジ法を用いた場合の光情報記録再生装置の一例を説明する。光ピックアップ101において非点収差方式を用いる場合、図2に示すようにシリンドリカルレンズ233、234を配置しているが、ナイフエッジ法を用いる場合には不要となる。また、この時光検出器224、225、226、227は集光レンズ220,221の焦点位置に配置される。
【0064】
図12は光情報記録再生装置1における光ピックアップ101の光分岐素子232のパターンの別の一例を示す図である。光分岐素子232は入射光束501の径に対して、相対的に小さな直径502で境界を設定し、その内側領域はさらに2つの上下の領域232D、232Eに分割され、内側領域232D、232Eは格子方向の異なる回折格子のパターンを有する。なお、内側領域232D、232Eの形状は必ずしも円形である必要はなく、入射光束501に対して相対的に小さな領域を有する形状であればよく、例えば四角形でも良い。内側領域232D、232Eに入射した光は±1次光に回折され、外側領域232Bに入射した光は透過する。これにより光束の内側の2つの上下の領域と外側が分離されて光検出器224、225、226、227に集光されることになる。図13に本実施例における光検出器224、225、226、227のパターンの一例を示す。4つの光検出器224、225、226、227は同じ構成であるため、以降、光検出器PD1、224を用いて説明する。光分岐素子232の内側上領域232Dでの+1次回折光1303は2分割受光領域224Hで、−1次回折光1301は受光領域224Fで、光分岐素子232の内側下領域232Eでの+1次回折光1304は2分割受光領域224Iで、−1次回折光1302は受光領域224Gで、光分岐素子232の外側領域232Bの透過光1305は受光領域224Cで受光する。光分岐素子232の内側領域232D、232Eでの+1次回折光1303、1304、−1次回折光1301、1302はそれぞれ以下に説明する通りサーボ信号、再生RF信号に用いられる。できるだけ多くの光量を再生RF信号に用いるため、光分岐素子232の内側領域の回折効率は、+1次、−1次回折光の回折効率をそれぞれR+1、R−1として、R+1<R−1であることが望ましい。このため、内側領域の回折格子としては、例えば鋸波型のブレーズド回折格子を用いる。受光領域224C、224F、224Gの出力はバッファアンプ604で電圧に変換し、抵抗605で適当なゲインが設定された差動アンプ606で加減演算され、数(1)に示した再生RF信号IRF1として出力される。数(2)(3)(4)に示すIRF2、IRF3、IRF4も同様にして光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)から出力される。図12に示す光分岐素子232では、外側領域232Bは100%光が透過するのに対して、内側領域232D、232Eは一部+1次回折光として分岐されるため、受光領域224F、224Gと224Cにおいて入射光量に対する検出光量の比が異なる。そこで、抵抗605を可変抵抗として調整すればよい。2分割受光領域224Hからは信号I1A、I1Bが、224Iからは信号I1C、I1Dが出力され、以下に説明するフォーカス誤差信号の演算に用いられる。下付き文字の1は光検出器の番号を、A、B、C、Dは対応する2分割受光領域を表している。光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)からも同様にして信号I2A、I2B、I2C、I2D、I3A、I3B、I3C、I3D、I4A、I4B、I4C、I4Dが出力される。光検出器224、225、226、227の2つの2分割受光素子から得られた出力IXY(X=1、2、3、4、Y=A、B、C、D)からフォーカス誤差信号FES2は例えば以下のようにして得られる。
【0065】
【数11】

【0066】
数(5)(6)と同様、まず光検出器PD1とPD2との間(X=1)、PD3とPD4との間(X=3)でそれぞれ差動信号f(X,Y)(ただしY=A,B,C,D)を取る。その後2つの2分割受光素子の各領域A〜Dにおいてf(1,Y)とf(3,Y)の2乗和を取ることによって数(7)と同様に信号光と参照光の位相変化によらない信号とする。最後に2つの2分割受光素子の出力の差の差動演算によりナイフエッジ法のフォーカス誤差信号を得る。
【0067】
なお、本実施例では光分岐素子232の外側領域に入射する光束は回折させずに透過光を用いたが、図14に示すように外側領域232Fは内側領域232D、232Eとは格子方向の異なる回折格子のパターンを有し、外側領域232Fに入射する光束を+1次回折光として回折させてもよい。本来内側領域232D、232Eに入射する光束は±1次光として回折され、受光領域224F、224G、224H、224Iに集光されるが、回折格子の格子形状の製造誤差等により0次透過光が発生し、検出器224Cに集光される可能性がある。そこで、外側領域232Fに入射する光束を内側領域232D、232Eとは異なる方向に回折させることにより、前記内側領域の0次透過光と分離して外側領域232Fの光束を検出することができる。この場合の光検出器224のパターンを図15に示す。図13とは外側領域232F用の受光領域224Cの位置が異なっている。
【実施例4】
【0068】
本実施例ではフォーカス誤差信号検出方式としてスポットサイズ方式を用いた場合の光情報記録再生装置の一例を説明する。光ピックアップ101において非点収差方式を用いる場合、図2に示すようにシリンドリカルレンズ233、234を配置しているが、スポットサイズ方式を用いる場合には不要となる。また、この時光検出器224、225、226、227は集光レンズ220、221の焦点位置の前方、または後方に配置される。あるいは、集光レンズ220、221の焦点位置の前方および後方に2つの検出器を置いて、差動スポットサイズ法を用いることもできる。
【0069】
図16は光情報記録再生装置1における光ピックアップ101の光分岐素子232のパターンの別の一例を示す図である。光分岐素子232は入射光束501の径に対して、相対的に小さな直径502で境界を設定し、その内側領域232Gと外側領域232Bにおいて内側領域232Aのみ回折格子のパターンを有する。内側領域で回折光に対してレンズ作用をさせるように、領域232Gは曲線格子としている。なお、内側領域232Gの形状は必ずしも円形である必要はなく、入射光束501に対して相対的に小さな領域を有する形状であればよく、例えば四角形でも良い。内側領域232Gに入射した光は±1次光に回折され、外側領域232Bに入射した光は透過する。これにより光束の内側と外側が分離されて光検出器224、225、226、227に集光されることになる。
【0070】
図17に本実施例における光検出器224、225、226、227のパターンの一例を示す。4つの光検出器224、225、226、227は同じ構成であるため、以降、光検出器PD1、224を用いて説明する。光分岐素子232の内側領域232Gでの+1次回折光601は3分割受光領域224Jで、−1次回折光602は受光領域224Bで、光分岐素子232の外側領域232Bの透過光603は受光領域224Cで受光する。光分岐素子232の内側領域232Gでの+1次回折光601、−1次回折光602はそれぞれ以下に説明する通りサーボ信号、再生RF信号に用いられる。できるだけ多くの光量を再生RF信号に用いるため、光分岐素子232の内側領域の回折効率は、+1次、−1次回折光の回折効率をそれぞれR+1、R−1として、R+1<R−1であることが望ましい。このため、内側領域の回折格子としては、例えば鋸波型のブレーズド回折格子を用いる。受光領域224B、224Cの出力はバッファアンプ604で電圧に変換し、抵抗605で適当なゲインが設定された差動アンプ606で加減演算され、数(1)に示した再生RF信号IRF1として出力される。数(2)(3)(4)に示すIRF2、IRF3、IRF4も同様にして光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)から出力される。図16に示す光分岐素子232では、外側領域232Bは100%光が透過するのに対して、内側領域232Gは一部+1次回折光として分岐されるため、受光領域224Bと224Cにおいて入射光量に対する検出光量の比が異なる。そこで、抵抗605を可変抵抗として調整すればよい。3分割受光領域224Jからは信号I1A、I1B、I1Cが出力され、以下に説明するフォーカス誤差信号の演算に用いられる。下付き文字の1は光検出器の番号を、A、B、Cは対応する4分割受光領域を表している。光検出器PD2(225)、PD3(226)、PD4(227)からも同様にして信号I2A、I2B、I2C、I3A、I3B、I3C、I4A、I4B、I4Cが出力される。光検出器224、225、226、227の3分割受光素子から得られた出力IXY(X=1、2、3、4、Y=A、B、C)からフォーカス誤差信号FES2は例えば以下のようにして得られる。
【0071】
【数12】

【0072】
数(5)(6)と同様、まず光検出器PD1とPD2との間(X=1)、PD3とPD4との間(X=3)でそれぞれ差動信号f(X,Y)(ただしY=A,B,C)を取る。その後3分割受光素子の各領域A〜Cにおいてf(1,Y)とf(3,Y)の2乗和を取ることによって数(7)と同様に信号光と参照光の位相変化によらない信号とする。最後に3分割受光素子の中央領域と外側2領域の和の差動演算によりフォーカス誤差信号を得る。
【符号の説明】
【0073】
1 光情報記録再生装置
101 光ピックアップ
102 回転モータ
103 光情報記録媒体
104 コントローラ
105 信号処理回路
106 サーボ制御回路
107 アクセス制御回路
108 自動位置制御手段
109 レーザドライバ
110 光スポット
201 半導体レーザ
202 コリメートレンズ
203 第1のλ/2板
204 偏光ビームスプリッタ
205 信号光
206 参照光
207 第1のλ/4板
208 対物レンズ
209 光ディスク
210 第2のλ/4板
211 参照光反射手段
212 ビームスプリッタ
213 サーボ用ビームスプリッタ
214 集光レンズ
215、233、234 シリンドリカルレンズ
216 光検出器
218 第2のλ/2板
219 第3のλ/4板
220、221 集光レンズ
222、223 偏光ビームスプリッタ
224 第1の光検出器
224A 4分割受光領域
224B、224C、224E、224F、224G 受光領域
224D、224H、224I 2分割受光領域
224J 3分割受光領域
225 第2の光検出器
226 第3の光検出器
227 第4の光検出器
228 2次元アクチュエータ
229 1次元アクチュエータ
231 エキスパンダレンズ
232 光分岐素子
232A、232G 内側領域
232B、232C、232F 外側領域
232D 内側上領域
232E 内側下領域
501 入射光束
502 境界
601、1001 内側光束+1次回折光
602、1002 内側光束−1次回折光
603 外側光束透過光
1003 外側光束+1次回折光
1004 外側光束−1次回折光
604 バッファアンプ
605 抵抗
606 差動アンプ
1301 内側上光束−1次回折光
1303 内側上光束+1次回折光
1302 内側下光束−1次回折光
1304 内側下光束+1次回折光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光束を分割する第1の光分岐素子と、
前記光源から出射され、前記第1の光分岐素子によって分割された光束の一方を光情報記録媒体に集光する集光光学系と、
前記集光光学系において集光される光の焦点位置を可変にする可変焦点機構と、
前記光情報記録媒体に集光して反射した信号光と、前記分割された光束の他方から得られる参照光とを光学的に干渉させる干渉光学系と、
前記干渉光学系における干渉光を複数に分割する分割光学系と、
前記分割光学系において分割された複数の干渉光を、位相関係が互いに異なる状態で、それぞれ検出する複数の検出器と、
前記複数の干渉光を光軸付近の第1の光束と周辺部の第2の光束に分離して前記複数の検出器に集光されるように分岐させる第2の光分岐素子とを備え、
前記第1の光束について焦点ずれ信号を検出し、
前記焦点ずれ信号を用いて、前記可変焦点機構を制御することを特徴とする光情報再生装置。
【請求項2】
前記第2の光分岐素子は、前記第1の光束をさらに少なくとも2つの光束に分割する第1光束分割手段を有し、
前記第1光束分割手段によって分割された光束の少なくとも1つから焦点ずれ信号を検出し、他方から再生信号を検出することを特徴とする請求項1に記載の光情報再生装置。
【請求項3】
前記第2の光分岐素子は、前記第2の光束をさらに少なくとも2つの光束に分割する第2光束分割手段を有し、
前記第2光束分割手段によって分割された光束の少なくとも1つ、および、前記第1光束分割手段によって分割された光束の少なくとも1つからトラッキング誤差信号を検出し、前記第2光束分割手段によって分割された光束の他方から再生信号を検出することを特徴とする請求項2に記載の光情報再生装置。
【請求項4】
前記第1光束分割手段または前記第2光束分割手段によって分割された光束は、焦点ずれ信号またはトラッキング誤差信号の検出に用いられる光束の光量をR+1、再生信号の検出に用いられる光束の光量をR−1として
+1<R−1
であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光情報再生装置。
【請求項5】
更に、前記信号光を分割する第3の光分岐素子を備え、
前記第3の光分岐素子によって分割された光束の一方から焦点ずれ信号かつ/またはトラッキング誤差信号を検出することを特徴とする請求項1に記載の光情報再生装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源から出射された光束を分割する第1の光分岐素子と、
前記光源から出射され、前記第1の光分岐素子によって分割された光束の一方を光情報記録媒体に集光する集光光学系と、
前記集光光学系において集光される光の焦点位置を可変にする可変焦点機構と、
前記光情報記録媒体に集光して反射した信号光と、前記分割された光束の他方から得られる参照光とを光学的に干渉させる干渉光学系と、
前記干渉光学系における干渉光を複数に分割する分割光学系と、
前記分割光学系において分割された複数の干渉光を、位相関係が互いに異なる状態で、それぞれ検出する複数の検出器と、
前記複数の干渉光を光軸付近の第1の光束と周辺部の第2の光束に分離して前記複数の検出器に集光されるように分岐させる第2の光分岐素子と、
前記信号光を分割する第3の光分岐素子と、
前記第3の光分岐素子によって分割された信号光から得られる焦点ずれ信号と、前記複数の検出器によって検出された干渉光から得られる焦点ずれ信号と、を切り替える手段とを有し、
前記切り替える手段によって切り替えて、前記可変焦点機構を制御することを特徴とする光情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−14813(P2012−14813A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152594(P2010−152594)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】