説明

光断層画像化装置

【課題】光コヒーレンストモグラフィー計測において、測定光もしくは参照光の光路長を調整したときの光量変化による画質の劣化を防止する。
【解決手段】参照光L2の光路長を調整するときに、光ファイバFB3を射出した参照光L2は、第1光学レンズ21aにより平行光になり、第2光学レンズ21bにより反射ミラー22上に集光される。その後、反射ミラー22により反射された参照光L2は、第2光学レンズ21bにより平行光になり、第1光学レンズ21aにより光ファイバFB3のコアに集光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT(Optical Coherence Tomography)計測による光断層画像を取得する光断層画像化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織等の測定対象の断層画像を取得する方法として超音波を用いた超音波断層画像取得装置等が知られているが、その他にOCT(Optical Coherence Tomography)計測による光断層画像を取得する方法が提案されている(たとえば特許文献1、2参照)。このOCT計測は測定光および反射光と参照光との光路長が一致したときに干渉光が検出されることを利用した計測方法であり、光源から射出された低コヒーレンス光が測定光と参照光とに分割された後、測定光は測定対象に照射され、測定対象からの反射光が合波手段に導波される。一方、参照光は、測定対象内の測定深さを変更するために、光路長の変更が施された後に合波手段に導波される。そして、合波手段により反射光と参照光とが合波され、合波されたことによる干渉光がヘテロダイン検波等により測定される。
【0003】
ここで、上述したOCT装置においては参照光の光路長を掃引することにより、測定対象に対する測定位置(測定深さ)を変更し断層画像を取得するようになっている(Time domain OCT:TD−OCT計測)。具体的には、特許文献1の参照光の光路長調整機構は、光ファイバから射出した参照光をミラーに集光する光学系を有し、光路長の調整を行うときにはミラーのみを参照光の光軸方向に移動させている。また特許文献2において参照光の光路長調整機構は、光ファイバから射出した参照光は平行レンズにより平行光にされ、平行光にされた参照光が再び光路長調整レンズにより集光され光ファイバに入射されるようになっている。そして、光路長調整レンズが参照光の光軸方向に進退することにより光路長の調整が行われている。
【0004】
ところで、上述したような参照光の光路長の変更を行うことなく高速に断層画像を取得する方法として、光源から射出される光の周波数を時間的に変化させながら干渉光の検出を行うSS−OCT(Swept source OCT)装置が提案されている。SS−OCT装置は、マイケルソン型干渉計を用いて光路長の変更を行わずに光源から射出されるレーザ光の波長を掃引し反射光と参照光との干渉させ、インターフェログラム干渉強度信号を得る。そして、光周波数領域のインターフェログラム信号をフーリエ変換し断層画像を生成するようになっている。
【0005】
さらに、参照光の光路長の掃引することなく高速に断層画像を取得する方法としてSD−OCT(Spectral Domain OCT)計測が提案されている。このSD−OCT計測は、マイケルソン型干渉計を用いて光源から広帯域の低コヒーレンス光を射出して測定光と参照光とに分割した後、測定対象に測定光が照射されたときの反射光と参照光との干渉光を各周波数成分に分解したチャンネルドスペクトル信号をフーリエ解析することにより、深さ方向の走査を行わずに断層画像を取得するようになっている。
【0006】
上述したSS−OCT装置およびSD−OCT装置においても、測定光と参照光とが干渉可能な可干渉距離内に光路長差を調整し、即ち、断層画像が取得可能な測定可能領域内に参照光(あるいは測定光)の光路長調整を行う必要がある。この光路長を調整するものとして特許文献1、2に示す光路長調整機構を用いることが考えられる。
【特許文献1】特開平6−165784号公報
【特許文献2】特開2003−139688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の参照光の光路長調整機構のように、ミラーやレンズだけを動かした場合、光ファイバからの出射光をミラーに集光することができないため、ミラーからの反射光の光ファイバに入射される光量が少なくなってしまい、深さ方向へ測定位置を走査させた際に安定した干渉光強度が得られないという問題がある。
【0008】
また特許文献2の参照光の光路長調整機構のように、光路長調整レンズを参照光の光軸方向に進退することにより光路長の調整が行ったとき、光路長調整レンズの焦点位置も移動するため、光路長調整レンズから光ファイバに入射される参照光の光量が減少してしまい、深さ方向へ測定位置を走査させた際に安定した干渉光強度が得られないという問題がある。
【0009】
つまり、光ファイバを導波した参照光を取り出して光路長の調整を行い、再び光ファイバに入射させる場合、直径数μm〜十μmの光ファイバのコアに入射させる必要がある。よって特許文献1、2に示すような光路長の調整を行う際に焦点位置が光ファイバのコア部分からずれてしまったり、ビーム径が太ってしまったりしたとき、光ファイバに入射される参照光の光量が減少してしまうため、深さ方向へ測定位置を走査させた際に安定した干渉光強度が得られず、画質の劣化が生じてしまうという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献1、2に示すような光路長調整機構をSS−OCT装置およびSD−OCT装置に用いた場合にも、光路長の調整を行ったときに干渉光強度が減少してしまうため、画質の劣化が生じてしまうという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、光路長を調整したときの測定光もしくは参照光の光量の減少に起因する画質の劣化を防止することができる光断層画像化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光断層画像化装置は、測定対象の断層画像を取得する光断層画像化装置において、光を射出する光源ユニットと、光源ユニットから射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段により分割された測定光もしくは参照光の光路長を調整する光路長調整手段と、光分割手段から光路長調整手段まで測定光もしくは参照光を導波する光ファイバと、測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光と参照光とを合波する合波手段と、合波手段により合波された反射光と参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、干渉光検出手段により検出された干渉光から測定対象の断層画像を取得する画像取得手段とを備え、光路長調整手段が、光ファイバから射出された測定光もしくは参照光を反射する反射ミラーと、反射ミラーと光ファイバとの間に配置された、光ファイバのコアから射出された測定光もしくは参照光を平行光にするとともに、反射ミラーにより反射された測定光もしくは参照光を光ファイバのコアに集光する第1光学レンズと、第1光学レンズと反射ミラーとの間に配置された、第1光学レンズにより平行光にされた測定光もしくは参照光を反射ミラー上に集光するとともに、反射ミラーにより反射された測定光もしくは参照光を平行光にする第2光学レンズとを有するものであることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、光路長調整手段は、第2光学レンズと反射ミラーとが固定された基台と、基台を第1光学レンズの光軸方向に移動させる移動手段とをさらに有するものであってもよい。
【0014】
また、光路長調整手段は、第1光学レンズと第2光学レンズとの間に配置されたくさび状の透明体と、透明体を第1光学レンズの光軸に直交する方向に移動させる移動手段とをさらに有するものであってもよい。
【0015】
さらに、光路長調整手段は、第1光学レンズと第2光学レンズとの間に配置された、電界の印加により屈折率が変化する電気光学素子と、電気光学素子に電界を印加する駆動電源とをさらに有するものであってもよい。また、それぞれの複合であっても良い。
【0016】
なお、光源ユニットが波長を変動させながらレーザ光を射出するものであり、画像取得手段が、干渉光を周波数解析することにより測定対象の断層画像を取得するものであり、光路長調整手段が、断層画像信号を得る位置に調整するため、測定光もしくは参照光の光路長を変更するものであってもよい。
【0017】
さらに、光源ユニットが低コヒーレンス光を射出するものであり、画像取得手段が、干渉光を周波数解析することにより測定対象の断層画像を取得するものであり、光路長調整手段が、断層画像信号を得る位置に調整するため、測定光もしくは参照光の光路長を変更するものであってもよい。
【0018】
また、光源ユニットが低コヒーレンス光を射出するものであり、光路長調整手段が測定する深さ位置を変更するために測定光もしくは参照光の光路長を掃引するものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光断層画像化装置によれば、光路長調整手段が、光ファイバから射出された測定光もしくは参照光を反射する反射ミラーと、反射ミラーと光ファイバとの間に配置された、光ファイバのコアから射出された測定光もしくは参照光を平行光にし、反射ミラーにより反射された測定光もしくは参照光を光ファイバのコアに集光する第1光学レンズと、第1光学レンズと反射ミラーとの間に配置された、第1光学レンズにより平行光にされた測定光もしくは参照光を反射ミラー上に集光し、反射ミラーにより反射された測定光もしくは参照光を平行光にする第2光学レンズとを有するものであることにより、第1光学レンズと第2光学レンズとの間で測定光もしくは参照光の光路長の調整を行ったときに、第1光学レンズの光ファイバのコアに対する焦点位置と第2光学レンズの反射ミラーに対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0020】
なお、光路長調整手段が、第2光学レンズと反射ミラーとが固定された基台と、基台を第1光学レンズの光軸方向に移動させる移動手段を有するものであるとき、第1光学レンズの光ファイバのコアに対する焦点位置と第2光学レンズの反射ミラーに対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0021】
また、光路長調整手段は、第1光学レンズと第2光学レンズとの間に配置された、測定光もしくは参照光をくさび状の透明体と、透明体を第1光学レンズの光軸に直交する方向に移動させる移動手段とをさらに有するものであれば、第1光学レンズの光ファイバのコアに対する焦点位置と第2光学レンズの反射ミラーに対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0022】
さらに、光路長調整手段は、第1光学レンズと第2光学レンズとの間に配置された、電界の印加により屈折率が変化する電気光学素子と、電気光学素子に電界を印加する駆動電源とをさらに有するものであっても、第1光学レンズの光ファイバのコアに対する焦点位置と第2光学レンズの反射ミラーに対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0023】
また、光源ユニットが波長を掃引させながらレーザ光を射出するものであり、画像取得手段が、干渉光を周波数解析することにより断層画像を取得するものであり、光路長調整手段が、断層画像信号を得る領域に調整するため、測定光もしくは参照光の光路長調整手段において光路長の調整が行われても安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0024】
さらに、光源ユニットが低コヒーレンス光を射出するものであり、画像取得手段が、干渉光を周波数解析することにより測定対象の断層画像を取得するものであり、光路長調整手段が、断層画像信号を得る領域に調整するため、光路長調整手段において測定光もしくは参照光の光路長の調整が行われても安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0025】
また、光源ユニットが低コヒーレンス光を射出するものであり、光路長調整手段が測定する深さ領域を変更するために測定光もしくは参照光の光路長を変更するものであるときであっても、光路長調整手段において光路長の調整が行われても安定した光量の参照光に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の光断層画像化装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の光断層画像化装置の好ましい実施の形態を示す模式図である。光断層画像化装置1は、たとえば体腔内の生体組織や細胞等の測定対象の断層画像をSS−OCT計測により取得するものであって、光Lを射出する光源ユニット10と、光源ユニット10から射出された光Lを測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割された参照光L2の光路長を調整する光路長調整手段20と、光分割手段3により分割された測定光L1を測定対象Sまで導波するプローブ30と、プローブ30から測定光L1が測定対象Sに照射されたときの測定対象からの反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段4と、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する干渉光検出手段40とを有している。
【0027】
光源ユニット10は、周波数を一定の周期で掃引させながらレーザ光Lを射出するものであって、たとえばモード同期半導体レーザからなっている。具体的には、光源ユニット10は、半導体光増幅器(半導体利得媒質)11と光ファイバFB10とを有しており、光ファイバFB10が半導体光増幅器11の両端に接続された構造を有している。半導体光増幅器11は駆動電流の注入により微弱な放出光を光ファイバFB10の一端側に射出するとともに、光ファイバFB10の他端側から入射された光を増幅する機能を有している。そして、半導体光増幅器11に駆動電流が供給されたとき、半導体光増幅器11および光ファイバFB10により形成される光共振器によりパルス状のレーザ光Lが光ファイバFB1へ射出されるようになっている。
【0028】
さらに、光ファイバFB10には光分岐器12が結合されており、光ファイバFB10内を導波する光の一部が光分岐器12から光ファイバFB11側へ射出されるようになっている。光ファイバFB11から射出した光はコリメータレンズ13、回折格子素子14、光学系15を介して回転多面鏡(ポリゴンミラー)16において反射される。そして反射された光は光学系15、回折格子素子14、コリメータレンズ13を介して再び光ファイバFB11に入射される。
【0029】
ここで、この回転多面鏡16は矢印R1方向に回転するものであって、各反射面の角度が光学系15の光軸に対して変化するようになっている。これにより、回折格子素子14において分光された光のうち、特定の周波数域からなる光のみ再び光ファイバFB11に戻るようになる。この光ファイバFB11に戻る光の周波数は光学系15の光軸と反射面との角度によって決まる。そして光ファイバFB11に入射した特定の周波数域からなる光が光分岐器12から光ファイバFB10に入射され、結果として特定の周波数域からなるレーザ光Lが光ファイバFB1側に射出されるようになっている。よって、回転多面鏡16が矢印R1方向に等速で回転したとき、再び光ファイバFB11に入射される光の波長は図2に示すように一定の周期で掃引することになる。つまり、光源ユニット10から波長が一定の周期で掃引したレーザ光Lが光ファイバFB1側に射出されることになる。
【0030】
光分割手段3は、たとえば2×2の光ファイバカプラからなっており、光源ユニット10から光ファイバFB1を介して導波されたレーザ光Lを測定光L1と参照光L2に分割するようになっている。光分割手段3は、2つの光ファイバFB2、FB3にそれぞれ光学的に接続されており、測定光L1は光ファイバFB2側により導波され、参照光L2は光ファイバFB3側に導波される。なお、図1においては光分割手段3は合波手段4としても機能するものである。
【0031】
光ファイバFB2にはプローブ30が光学的に接続されており、測定光L1は光ファイバFB2からプローブ30へ導波されるようになっている。プローブ30は、たとえば鉗子口から鉗子チャンネルを介して体腔内に挿入されるものであって、光学コネクタOCにより光ファイバFB2に対し着脱可能に取り付けられている。
【0032】
一方、光ファイバFB3の参照光L2の射出側には光路長調整手段20が配置されている。図3は光路長調整手段20の一例を示す模式図であり、図1と図3を参照して光路長調整手段20について説明する。光路長調整手段20は、断層画像の取得領域を調整するために、参照光L2の光路長を変更するものであって、光ファイバFB3から射出された参照光L2を反射する反射ミラー22と、反射ミラー22と光ファイバFB3との間に配置された第1光学レンズ21aと、第1光学レンズ21aと反射ミラー22との間に配置された第2光学レンズ22bとを有している。
【0033】
第1光学レンズ21aは、光ファイバFB3のコアから射出された参照光L2を平行光にするとともに、反射ミラー22により反射された参照光を光ファイバFB3のコアに集光する機能を有している。また、第2光学レンズ21bは、第1光学レンズ21aにより平行光にされた参照光L2を反射ミラー22上に集光するとともに、反射ミラー22により反射された参照光L2を平行光にする機能を有している。つまり、第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとにより共焦点光学系が形成されている。
【0034】
したがって、光ファイバFB3を射出した参照光L2は、第1光学レンズ21aにより平行光になり、第2光学レンズ21bにより反射ミラー22上に集光される。その後、反射ミラー22により反射された参照光L2は、第2光学レンズ21bにより平行光になり、第1光学レンズ21aにより光ファイバFB3のコアに集光される。
【0035】
さらに、光路長調整手段20は、第2光学レンズ21bと反射ミラー22とを固定した基台23と、基台23を第1光学レンズ21aの光軸方向に移動させるミラー移動手段24を有している。そして基台23が矢印A方向に移動することにより、参照光L2の光路長が変更するようになっている。
【0036】
図1の合波手段4は、2×2の光ファイバカプラからなり、光路長調整手段20により光路長の変更が施された参照光L2と測定対象Sからの反射光L3とを合波し光ファイバFB4を介して干渉光検出手段40側に射出するようになっている。
【0037】
干渉光検出手段40は、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出するようになっている。そして、画像取得手段50は、干渉光検出手段40により検出された干渉光L4の信号を周波数解析することにより測定対象Sの断層画像を取得する。そして、画像取得手段50により取得された断層画像は表示装置60に表示されるようになっている。なお、図1の実施形態においては、光ファイバFB1の光ファイバカプラ2から分岐したレーザ光Lの光強度を検出する検出器40aと、干渉光L4の光強度を検出する検出器40bとを設け、干渉光検出手段40が検出器40aからの出力に基づいて干渉光L4の光強度のバランスを調整する機能を有している。この機能により、各周波数毎の光強度バラツキの影響を押さえ、より鮮明な画像を得ることが出来る。
【0038】
ここで、干渉光検出手段40および画像取得手段50における干渉光L4の検出および画像の生成について簡単に説明する。なお、詳細については「武田 光夫、「光周波数走査スペクトル干渉顕微鏡」、光技術コンタクト、2003、Vol41、No7、p426−p432」に記載されている。
【0039】
測定光L1が測定対象Sに照射されたとき、測定対象Sの各深さからの反射光L3と参照光L2とがいろいろな光路長差をもって干渉しあう際の各光路長差lに対する干渉縞の光強度をS(l)とすると、干渉光検出手段40において検出される光強度I(k)は、
I(k)=∫S(l)[1+cos(kl)]dl ・・・(1)
で表される。ここで、kは波数、lは光路長差である。式(1)は波数k=ω/cを変数とする光周波数領域のインターフェログラムとして与えられていると考えることができる。このため、画像取得手段50において、干渉光検出手段40が検出したスペクトル干渉縞をフーリエ変換による周波数解析を行い、干渉光L4の光強度S(l)を決定することにより、測定対象Sの測定開始位置からの距離情報と反射強度情報とを取得し、断層画像を生成するようになっている。
【0040】
次に、図1から図3を参照して光断層画像化装置1の動作例について説明する。まず、基台23が矢印A方向に移動することにより、測定可能領域内に測定対象Sが位置するように光路長の調整が行われる。その後、光源ユニット10から波長が一定の周期で掃引されたレーザ光Lが射出され、レーザ光Lは光分割手段3により測定光L1と参照光L2とに分割される。測定光L1はプローブ30により体腔内に導波され測定対象Sに照射される。そして、測定対象Sからの反射光L3が反射ミラー22において反射した参照光L2と合波され、反射光L3と参照光L2との干渉光L4が干渉光検出手段40により検出される。この検出された干渉光L4の信号が画像取得手段50において周波数解析されることにより断層画像が取得される。
【0041】
ここで、光路長の調整を行うために基台23を矢印A方向に移動させたとき(図3参照)、第1光学レンズ21aの焦点位置は光ファイバFB3のコアから移動することがない。さらに、第2光学レンズ21bの焦点位置は反射ミラー22上から移動することがない。よって、光路長調整手段20により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB3に入射される際、参照光L2の光量が減少することを防止することができ、光路長を調整するたびに干渉光L4の強度が変化してしまうことによる画質の劣化を防止することができる。
【0042】
さらに、第1レンズ21aと第2レンズ21bとにより共焦点光学系を形成することにより、基台23に第2レンズ21bおよび反射ミラー22を取り付けるときの取付誤差の許容度を大きくすることができるため、光路長調整手段20の作製効率を向上させることができる。すなわち、光路長調整手段20は、光ファイバFB3のコアから射出した光を再び光ファイバFB3の直径数μm〜十μmのコアに入射させなければならない。ここで、図4(A)に示す従来のコリメータレンズ21aと反射ミラー22が光路長調整機構において、図4(B)反射ミラー22が光軸CLからΔθだけ傾いて基台23に固定されてしまった場合、光ファイバFB3のコアに入射される参照光L2の光量が少なくなってしまう。よって、コリメータレンズ21aの光軸CLと反射ミラー22の反射面との厳密な直交精度が要求される。
【0043】
一方、図5に示すような共焦点光学系を形成した第1光学レンズ21a、第2光学レンズ21bにおいては、反射ミラー22が光軸CLからΔθだけ傾いて基台23に固定されてしまっていても、第2光学レンズ21bの焦点位置で反射した参照光L2は第1光学レンズ21aの焦点位置に戻るようになっている。さらに参照光L2はレーザ光であるため、第2光学レンズ21bの焦点位置においては図7に示すような焦点深度ΔZのビームウェストBWが形成されており、反射ミラー22がΔθだけ傾いても反射ミラー22の反射面がビームウェストBW内にあれば、参照光L2は第1光学レンズ21aの焦点位置に戻る。このように、基台23に第2レンズ21bおよび反射ミラー22を取り付けるときの取付誤差の許容度を大きくすることができ、光路長調整手段20の作製効率を向上させることができる。
【0044】
図7は本発明の光断層画像化装置における光路長調整手段の第2の実施の形態を示す模式図である。なお図7の光路長調整手段120において図3の光路長調整手段20と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
光路長調整手段120は、第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとの間にさび状の透明体121と、透明体121を第1光学レンズ21aの光軸CLに直交する方向に移動させるくさび移動手段122とをさらに有している。そして、透明体121がくさび移動手段122により矢印B方向に移動することにより、参照光L2の光路長が調整されるようになっている。なお、この透明体121は偶数個設けられていることが好ましい。このような場合であっても、光路長調整手段120により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB3に入射される際、参照光L2の光量が減少することを防止することができ、光路長を調整するたびに干渉光L4の強度が変化してしまうことによる画質の劣化を防止することができる。
【0046】
図8は本発明の光断層画像化装置における光路長調整手段の第3の実施の形態を示す模式図である。なお図8の光路長調整手段120において図3の光路長調整手段20と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図8の光路長調整手段220は、第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとの間に配置された、電界の印加により屈折率が変化する電気光学素子221と、電気光学素子221に電界を印加する駆動電源222とを有している。そして、駆動電源222が電気光学素子221に電界を印加することにより、電気光学素子221において電界の大きさに応じた屈折率変化が生じ、参照光L2の光路長が調整されるようになっている。このような場合であっても、光路長調整手段120により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB3に入射される際、参照光L2の光量が減少することを防止することができ、光路長を調整するたびに干渉光の強度が変化してしまうことによる画質の劣化を防止することができる。
【0048】
図9は本発明の光断層画像化装置の別の実施の形態を示す模式図であり、図9を参照して光断層画像化装置100について説明する。なお、図9の光断層画像化装置100において図1の光断層画像化装置1と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図9の光断層画像化装置100が図1の光断層画像化装置1と異なる点は光源ユニットおよび干渉光検出手段の構成である。具体的には、光断層画像化装置100はいわゆるSD−OCT計測を行うことにより断層画像を取得するものであって、光源ユニット110は、たとえばSLD(Super Luminescent Diode)やASE(Amplified Spontaneous Emission)等の低コヒーレント光を射出する光源111と、光源111から射出された光を光ファイバFB1内に入射するための光学系112とを有している。なお、光断層画像化装置200は体腔内の生体を測定対象Sとしたときの断層画像を取得するものであるため、測定対象S内を透過するときの散乱・吸収による光の減衰を最小限に抑えることができる、たとえば広スペクトル帯域の超短パルスレーザ光源等を用いるのが好ましい。
【0050】
一方、干渉光検出手段140は、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出するものであって、複数の波長帯域を有する干渉光L4を各波長帯域毎に分光する分光手段142と、分光手段142により分光された干渉光L4の各波長毎の光量を検出する光検出手段144とを有している。この分光手段142はたとえば回折格子素子等により構成されており、光ファイバFB4からコリメータレンズ121を介して入射される干渉光L4を分光し、光検出手段144側に射出するようになっている。
【0051】
また、光検出手段144は、たとえば1次元もしくは2次元のCCD等の複数の光センサを配列した構造を有し、各光センサが光学系143を介して入射される干渉光L4を波長帯域毎にそれぞれ検出するようになっている。そして、光検出手段144において検出された干渉光L4の信号を画像取得手段50において周波数解析することにより深さ位置における反射強度情報を取得し、断層画像を生成することができる。
【0052】
図9の光断層画像化装置100であっても、光路長調整手段20により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB3に入射される際、参照光L2の光量が減少することを防止することができ、光路長を調整するたびに干渉光L4の強度が変化してしまうことによる画質の劣化を防止することができる。
【0053】
図10は本発明の光断層画像化装置の別の実施の形態を示す模式図であり、図10を参照して光断層画像化装置200について説明する。なお、図10の光断層画像化装置200において図1および図9の光断層画像化装置1、100と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
光断層画像化装置200はいわゆるTD−OCT計測を行うことにより断層画像を取得するものであって、光路長調整手段20は、測定対象S内の測定位置を深さ方向に変化させるために、参照光L2の光路長を変える機能を有している。さらに、参照光L2の光路中(光ファイバFB3)に位相変調器210が配置されており、参照光L2に対しわずかな周波数シフトを与える機能を有している。そして、光路長調整手段20により光路長の変更および周波数シフトがなされた参照光L2が光ファイバFB4合波手段4に導波されるようになっている。
【0055】
干渉光検出手段220は、たとえばヘテロダイン検波により干渉光L4の光強度を検出するようになっている。具体的には、測定光L1が光分割手段3から測定対象S内の反射点までの往復の距離と参照光L2が光分割手段3から反射ミラー22までの往復の距離とがほぼ等しい時、位相変調器210の変調周波数で強弱を繰り返すビート信号が発生する。光路長調整手段20により光路長が変更されていくにつれて、測定対象Sの測定位置(深さ)が変わっていき、干渉光検出手段220は各測定位置におけるビート信号を検出するようになっている。なお、測定位置の情報は光路長調整手段20から画像取得手段へ出力されるようになっている。そして、干渉光検出手段220により検出されたビート信号と、ミラー移動手段24からの移動距離の情報とに基づいて光断層画像が生成されるようになっている。
【0056】
このような、TD−OCT計測を行う光断層画像化装置200であっても、光路長調整手段20により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB3に入射される際、参照光L2の光量が減少することを防止することができ、光路長を調整するたびに干渉光L4の強度が変化してしまうことによる画質の劣化を防止することができる。
【0057】
上記各実施の形態によれば、光路長調整手段20が共焦点光学系を形成する第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとを有することにより、第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとの間で測定光L1もしくは参照光L2の光路長の調整を行ったときに、第1光学レンズ21aの光ファイバFB3のコアに対する焦点位置と第2光学レンズ21bの反射ミラー22に対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光L2に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0058】
また、図3のように、光路長調整手段20が、第2光学レンズ21bと反射ミラー22とが固定された基台23と、基台23を第1光学レンズ21aの光軸方向に移動させるミラー移動手段24を有するものであるとき、第1光学レンズ21aの光ファイバのコアに対する焦点位置と第2光学レンズ21bの反射ミラー22に対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光L2に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0059】
さらに、図7に示すように、光路長調整手段120が第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとの間に配置されたくさび状の透明体121と、透明体121を第1光学レンズ21aの光軸CLに直交する方向に移動させる移動手段124とをさらに有するものであれば、第1光学レンズ21aの光ファイバCLのコアに対する焦点位置と第2光学レンズ21bの反射ミラー22に対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光L2に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0060】
また、図8に示すように、光路長調整手段120が電界の印加により屈折率が変化する電気光学素子221と、電気光学素子221に電界を印加する駆動電源222とをさらに有するものであっても、第1光学レンズ21aの光ファイバFBのコアに対する焦点位置と第2光学レンズ21bの反射ミラー22に対する焦点位置とが不変の状態で光路長調整を行うことができるため、安定した光量の参照光L2に基づく干渉光から断層画像を取得することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0061】
さらに、上記光路長調整手段20、120、220は、図1に示すSS−OCT計測、図9に示すSD−OCT計測および図10に示すTD−OCT計測のいずれの光断層画像化装置1、100、200について適用することができる。また、それぞれの複合であっても良い。
【0062】
なお、本発明の実施の形態は上記形態に限定されない。図1において、光路長調整手段20は参照光L2側の光路長を調整する場合について例示しているが、測定光L1側の光路長を調整するものであってもよい。この場合、たとえば図1の測定光L1を導波する光ファイバFB2中に3分岐の光サーキュレータを設け、空きポートに上述した光路長調整手段20を介在させることになる。そして、測定対象S内からの戻り光を光路長調整手段20に導き、光路長調整手段20の終端の反射ミラー22からの反射光を光合波手段4に戻す経路を通ることで同様の効果を得ることが出来る。また、図9および図10の光断層画像化装置100、200において、図3の光路長調整手段20を用いた場合について例示しているが、図7、図8に示す光路長調整手段120、220を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の光断層画像化装置の好ましい実施の形態を示す模式図
【図2】図1の光源ユニットが出力するレーザ光が波長変動する様子を示す図
【図3】図1の光断層画像化装置における光路長調整手段の一例を示す模式図
【図4】従来の光路長調整機構において反射ミラーが傾いたときの様子を示す模式図
【図5】図3の光路長調整手段において反射ミラーが傾いたときの様子を示す模式図
【図6】図5の第2光学レンズの焦点位置に形成されるビームウェストを示す図
【図7】図1の光断層画像化装置における光路長調整手段の別の一例を示す模式図
【図8】図1の光断層画像化装置における光路長調整手段の別の一例を示す模式図
【図9】本発明の光断層画像化装置の第2の実施の形態を示す模式図
【図10】本発明の光断層画像化装置の第3の実施の形態を示す模式図
【符号の説明】
【0064】
1、100、200 光断層画像化装置
3 光分割手段
4 合波手段
10、110 光源ユニット
20、120、220 光路長調整手段
21a 第1光学レンズ
21b 第2光学レンズ
22 反射ミラー
23 基台
24 ミラー移動手段
30 プローブ
40、240 干渉光検出手段
50 画像取得手段
121 複屈折素子
122 移動手段
210 位相変調器
220 光路長調整手段
221 電気光学素子
222 駆動電源
CL 光軸
FB3 光ファイバ
L 光
L1 測定光
L2 参照光
L3 反射光
L4 干渉光
S 測定対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の断層画像を取得する光断層画像化装置において、
光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
該光分割手段により分割された前記測定光もしくは前記参照光の光路長を調整する光路長調整手段と、
前記光分割手段から前記光路長調整手段まで前記測定光もしくは前記参照光を導波する光ファイバと、
前記測定光が前記測定対象に照射されたときの該測定対象からの前記反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記干渉光から前記測定対象の断層画像を取得する画像取得手段と
を備え、
前記光路長調整手段が、
前記光ファイバから射出された前記測定光もしくは前記参照光を反射する反射ミラーと、
該反射ミラーと前記光ファイバとの間に配置された、前記光ファイバのコアから射出された前記測定光もしくは前記参照光を平行光にするとともに、前記反射ミラーにより反射された前記測定光もしくは前記参照光を前記光ファイバのコアに集光する第1光学レンズと、
該第1光学レンズと前記反射ミラーとの間に配置された、該第1光学レンズにより平行光にされた前記測定光もしくは前記参照光を前記反射ミラー上に集光するとともに、該反射ミラーにより反射された前記測定光もしくは前記参照光を平行光にする第2光学レンズと
を有するものであることを特徴とする光断層画像化装置。
【請求項2】
前記光路長調整手段が、前記第2光学レンズと前記反射ミラーとが固定された基台と、該基台を前記第1光学レンズの光軸方向に移動させる移動手段を有するものであることを特徴とする請求項1記載の光断層画像化装置。
【請求項3】
前記光路長調整手段が、前記第1光学レンズと前記第2光学レンズとの間に配置されたくさび状の透明体と、該透明体を前記第1光学レンズの光軸に直交する方向に移動させる移動手段とをさらに有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の光断層画像化装置。
【請求項4】
前記光路長調整手段が、前記第1光学レンズと前記第2光学レンズとの間に配置された、電界の印加により屈折率が変化する電気光学素子と、該電気光学素子に電界を印加する駆動電源とをさらに有するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の光断層画像化装置。
【請求項5】
前記光源ユニットが、波長を一定の周期で掃引させながらレーザ光を射出するものであり、前記画像取得手段が、前記干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層画像を取得するものであり、前記光路長調整手段が、断層画像信号を得る位置に調整するため、前記測定光もしくは参照光の光路長を変更するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光断層画像化装置。
【請求項6】
前記光源ユニットが低コヒーレンス光を射出するものであり、前記画像取得手段が、前記干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層画像を取得するものであり、断層画像信号を得る位置に調整するため、前記測定光もしくは参照光の光路長を変更するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光断層画像化装置。
【請求項7】
前記光源ユニットが低コヒーレンス光を射出するものであり、前記光路長調整手段が測定する深さ位置を変更するために前記測定光もしくは参照光の光路長を掃引するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光断層画像化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−101262(P2007−101262A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289116(P2005−289116)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】