説明

光源装置

【課題】 複数の半導体レーザーで構成しても、装置として小型化でき、かつ、簡便な構造で半導体レーザー及びコリメーターレンズを冷却可能な光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ライトガイドと、該ライトガイドの外周を取り囲む複数の半導体レーザーと、光出射方向において開口部を有し、内部に複数の半導体レーザーを収納するケーシングと、ケーシングの開口部を塞ぐとともに、ライトガイドを少なくともその光入射面が露出するよう固定するコリメーターレンズユニットと、複数の半導体レーザーから出射され、前記コリメーターレンズユニットを通過した平行光を反射して前記ライトガイドに集光させる凹面反射鏡と、を備えてなり、ケーシングとコリメーターレンズユニットとで形成される内部空間には、複数の半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドを冷却するための冷却媒体が充填されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザーから放射された光を凹面反射鏡で合波させる光源装置に関し、詳しくは、ケーシング内に充填された冷却媒体によって複数の半導体レーザー、コリメーターレンズ、及びライトガイドを同時に冷却することが可能な光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の露光装置では、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電ランプを光源として採用し、その放電ランプから放射される光を、例えば反射ミラーやコリメーターレンズ等を利用して平行光に変換して被処理物上に照射している。
【0003】
しかしながら、このような放電ランプは、一般に使用寿命が短いため頻繁に交換する必要があり、交換作業や交換後の光量調整のための作業に手間がかかりスループットが低い、という問題があった。また、放電ランプは、消費電力が多いため経済的でない、という問題もあった。
【0004】
近年、上記のような問題を解決するために、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電ランプに代えて、より使用寿命が長く、また消費電力も小さく、小型である、半導体レーザーのような発光素子を露光装置用の光源として採用することが検討されている。かかる半導体レーザー素子は、単独では光出力が小さいため、例えば、特許文献1に記載されているように、半導体レーザーを複数集めて合波させることによって光源装置を構成することが知られている。
【特許文献1】特開2002−202442号
【特許文献2】特開2004−6096号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記公報に記載の技術は、複数の半導体レーザーからそれぞれ出射した光を、コリメーターレンズ及び集光レンズからなる集光光学系で光出射方向に集光した上で、ライトガイドとしての光ファイバーに結合させて合波させるものである。そのため、それぞれの半導体レーザーと光ファイバーとの間には、光学系によって集光させるために必要な距離に応じて相当の間隔を設ける必要があり、装置が大型化する、という問題があった。
【0006】
また、複数の半導体レーザーからそれぞれ出射した光を平行光とするためのコリメーターレンズは、所定の冷却手段によって冷却がなされていないため、半導体レーザーからの光を受けることによって熱劣化したり、あるいは温度が不均一になる等の不具合を生じた。この場合には、コリメーターレンズの光学特性が変化するため、全ての半導体レーザーからの光をライトガイドとしての光ファイバー上に集光させることができない、という問題があった。
【0007】
通常、複数の半導体レーザーを備える光源装置においては、半導体レーザーから発生する熱を所定の手段によって放熱させること、若しくは、半導体レーザーを所定の手段によって冷却することが知られているが(特許文献2参照)、上記のような問題を解決しようとして、このような半導体レーザー用の冷却手段とは別にコリメーターレンズを冷却するための機構を設けることは、装置の大型化を招くとともにコスト面で不利となるため好ましくない。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、複数の半導体レーザーで構成しても、装置として小型化することが可能であり、かつ、簡便な構造で半導体レーザー及びコリメーターレンズを冷却することが可能な光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ライトガイドと、該ライトガイドの外周を取り囲む複数の半導体レーザーと、光出射方向において開口部を有し、内部に前記複数の半導体レーザーを収納するケーシングと、該ケーシングの開口部を塞ぐとともに、前記ライトガイドを少なくともその光入射面が露出するよう固定するコリメーターレンズユニットと、前記複数の半導体レーザーから出射され、前記コリメーターレンズユニットを通過した光を反射して前記ライトガイドに集光させる凹面反射鏡と、を備えてなり、
前記ケーシングと前記コリメーターレンズユニットとで形成される内部空間には、前記複数の半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドを冷却するための冷却媒体が充填されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記ケーシングは、前記冷却媒体を冷却するための冷却機構を有することを特徴とする。
【0011】
さらに、前記冷却媒体は、フッ素系不活性液体であることを特徴とする。
【0012】
前記ライトガイドは、液体ファイバーからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ライトガイドと、該ライトガイドの外周を取り囲む複数の半導体レーザーと、光出射方向において開口部を有し、内部に前記複数の半導体レーザーを収納するケーシングと、該ケーシングの開口部を塞ぐとともに、前記ライトガイドを少なくともその光入射面が露出するよう固定するコリメーターレンズユニットと、前記複数の半導体レーザーから出射され、前記コリメーターレンズユニットを通過した光を反射して前記ライトガイドに集光させる凹面反射鏡とを備え、前記ケーシングと前記コリメーターレンズユニットとで形成される内部空間には、前記複数の半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドを冷却するための冷却媒体が充填された構造であるため、従来の光源装置に比して、光学系によって集光させるのに必要な距離を短くすることができることにより、光源装置の小型化を図ることができる。また、半導体レーザーと併せてコリメーターレンズの冷却も同時になされるので、コリメーターレンズが熱劣化若しくは温度不均一になることに起因して生じる、全ての半導体レーザーからの光をライトガイド上に集光させることができない、という不具合を確実に防止することができるため、光源装置の高出力化を達成することができる。
【0014】
また、前記ケーシング内部に冷却媒体としてフッ素系不活性液体を充填するとともに、この冷却媒体を効率良く冷却するための冷却機構を設けることによって、複数の半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドをより効率良く冷却することができる。
【0015】
さらに、冷却媒体が熱特性に優れるフッ素系不活性液体からなることにより、半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドに対する冷却効果が向上するとともに、空気よりも高屈折率であるフッ素系不活性液体が半導体レーザーとコリメーターレンズユニットの間に存在することで、表面反射を減少させることができ光学系での伝送ロスを少なくできる。
【0016】
そして、NAの大きい液体ファイバーからなるライトガイドを用いることにより、集光距離を大きくすることなくより多くの半導体レーザーを配置することができるため、光源装置を大型化することなく高出力化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1、2によって本発明の光源装置を説明する。図1は、本発明の光源装置を説明するための概略図である。図2は、コリメーターレンズユニットを説明するための図である。
【0018】
光源装置100は、ライトガイド1と、ライトガイド1の外周を取り囲むように環状に配置された36個の半導体レーザー2と、半導体レーザー2の光出射方向に配置された凹面反射鏡3と、半導体レーザー2の光出射方向に開口部を有し、内部に半導体レーザー2を収納したケーシング4と、中央部近傍に前記ライトガイド1を固定するとともに、半導体レーザー2と所定の間隔を隔ててケーシング4の開口部を塞ぐよう配置されたコリメーターレンズユニット5と、を備えており、ケーシング4とコリメーターレンズユニット5とで形成される内部空間Sには、半導体レーザー2及びコリメーターレンズユニット5を冷却するための冷却媒体6が充填されている。
【0019】
光源装置100に用いられる半導体レーザー2は、350nm〜450nmの波長範囲であって、例えば405nmにピーク波長を有する光を放射する共通のものであり、ビーム径が4mmで、最大出力も全て共通の30mWである。各半導体レーザー2を構成する材料は、例えばガリウムナイトライド(GaN)系である。半導体レーザー2は、その給電端子がケーシング4の外部に配置された給電用基板8上に接続され、その光出射面21が内部空間Sに臨出した状態でケーシング4に固定されている。
【0020】
ライトガイド1は、コア材として光透過性の高屈折率液体を使用して光を伝送する液体ファイバーからなる。この液体ファイバーは、NAが、例えば0.6と非常に大きい、コア径を大口径(石英が最大でも数百ミクロンに対して、液体は1mm〜5mm程度)かつ単芯とすることができる、その充填率を100%とすることができる、等の利点を有するものである。
このようなライトガイド1は、少なくともその光入射面11が露出する(ケーシング4の内部空間S内にない)ようコリメーターレンズユニット5に固定される。
【0021】
半導体レーザー2から放射された光は、凹面反射鏡3で反射されてライトガイド1の光入射面11に入射する。凹面反射鏡3は、例えば、石英ガラス、フッ化カルシウム(CaF)、アルミニウム、BK7等から構成される。この凹面反射鏡3の表面には、入射した光のうち95%以上が反射するように、例えば、誘電体多層膜のコーティングが施されて反射面が形成される。凹面反射鏡3の反射面形状は、半導体レーザー2の放射光の水平成分と垂直成分の伝搬特性(ビーム広がり)が異なるため、非球面であることが望ましいが、球面でも構わない。
【0022】
ケーシング4は、冷却媒体6を効率良く冷却する観点から、例えば銅(材質)等の高熱伝導性材料からなり、冷却媒体6を冷却するための、例えばペルチェ素子からなる冷却機構7が備えられている。このケーシング4は、半導体レーザー2の光出射方向に開口部を有し、該開口部を塞ぐようにコリメーターレンズユニット5が固定されている。ケーシング4とコリメーターレンズユニット5との間には、例えばシリコン系樹脂からなるOリング等のシール部材9が介在することによって密閉された内部空間Sが形成されている。
【0023】
図2に示すように、光源装置100に用いられるコリメーターレンズユニット5は、例えばメタクリル樹脂(PMMA)からなる1枚の板部材51に対し、その表面にレンズ部分となるべき隆起した曲面が形成されたものである。1個の半導体レーザーから放射された光を1個のレンズ部分で平行光とすることができるよう、36個のレンズ部分52を形成する。こうすることによって、コリメーターレンズを各々独立に用意する場合に比して、作製に要するコスト面で有利になる。
このコリメーターレンズユニット5の各レンズ部分52は、例えば焦点距離fが2.75mm、NAが0.65で共通している。
【0024】
内部空間Sに充填された冷却媒体6は、スリーエム社製のフッ素系不活性液体(FLUORINERT)(登録商標)である。フッ素系不活性液体は、(1)熱特性に優れ、熱伝達係数が大きいので熱を迅速に伝えることができる、(2)電気絶縁性に優れる、(3)熱的化学的に安定性が高く変質しにくい、(4)金属等の構成材料に対して不活性であり、金属等を侵すことがない、(5)不燃性、無毒、無臭で安全である、等の利点を有する。従って、上記光源装置100用の冷却媒体としてフッ素系不活性液体を用いた場合には、半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドの冷却効率が向上し、さらに、ケーシング4の構成材料である銅を侵すこともない。
【0025】
以上のような本発明の光源装置100によれば、ケーシング4とコリメーターレンズユニット5との間に形成される内部空間Sに冷却媒体6が充填され、ケーシング4には冷却媒体6を冷却するための冷却機構7が設けられていることにより、半導体レーザー2及びコリメーターレンズユニット5が冷却媒体6に接しているため、これらを同時に冷却することができる。従って、コリメーターレンズが熱劣化若しくは温度不均一になることに起因して生じる、全ての半導体レーザーからの光をライトガイド上に集光させることができない、という不具合を確実に防止することができるため、光源装置の高出力化を達成することができる。
【0026】
また、本発明の光源装置100によれば、半導体レーザー2からの放射光が光出射方向に配置された凹面反射鏡3によって反射されてライトガイド1の光入射面11に入射する、という構造を有するため、従来の光源装置に比して光学系によって集光させるのに必要な距離を短くすることができることにより、光源装置の小型化を図ることができる。
【0027】
さらには、冷却媒体6が熱特性に優れるフッ素系不活性液体からなるため、半導体レーザー2及びコリメーターレンズユニット5に対する冷却効果が向上する。
【0028】
そして、本発明の光源装置100によれば、NAの大きい液体ファイバーを用いることにより、焦点距離fを延ばすことなく有効放射面積が広がる、すなわち、多数の半導体レーザーからの光をライトガイドの光入射面に集光させることができる、という効果がある。その理由は、以下のように考えられる。
【0029】
下記の式(1)において、Sは光源の有効放射面積(cm)を示し、fは凹面反射鏡の焦点距離を示し、NAは開口数であり定数である。
液体ファイバーからなるライトガイド1を用いた光源装置100は、式(1)に示されるように、NA値が大きいことにより有効放射面積Sが大きくなる。すなわち、液体ファイバーからなるライトガイドを用いれば、集光距離fを大きくすることなくより多くの半導体レーザーを配置することができるため、光源装置を大型化することなく高出力化することができる。
【0030】
【数1】

【0031】
一例を挙げると、液体ファイバーからなるライトガイド1を用いた光源装置100は、NAが0.6であり、凹面反射鏡3の焦点距離が30mmであるとき、式(1)により算出される有効面積Sは、15.6cmである。このとき、ビーム径が4mmで、最大出力が30mWの半導体レーザーを、36個配置することができるため、光学系でのロスを5%とすると1026mW(30mW×0.95×36=1026mW)の出力が得られる。
比較例として、石英ガラスからなるライトガイド1を用いた光源装置100は、NAが0.3であり、凹面反射鏡3の焦点距離が30mmであるとき、式(1)により算出される有効面積Sは、2.4cmである。このとき、ビーム径が4mmで、最大出力が30mWの半導体レーザーを、6個配置することができるため、光学系でのロスを5%とすると171mW(30mW×0.95×6=171mW)の出力が得られる。
【0032】
尚、液体ファイバーからなるライトガイド1は、内部の液体の耐熱安定性が70℃程度であるものの、図1に示す光源装置100に使用することにより、冷却媒体6によって確実に冷却されることになるため、半導体レーザー2からの放射光を受けることにより光入射面11が熱劣化する、という問題が生じることはない。
【0033】
本発明の光源装置は、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の光源装置100において、コリメーターレンズユニット5は、図2に示したように、1枚の板部材にレンズ部分となる曲面を隆起させる加工を施した一体物に限らず、板部材に対し、半導体レーザーの個数と同数のコリメーターレンズをそれぞれ固定してなるものを用いることもできる。
【0034】
また、上記実施の形態によると、半導体レーザーを36個使用しているが、これに限らず、半導体レーザーの個数は適宜変更することが可能である。
【0035】
さらに、本発明の光源装置100において、ライトガイド1は、液体ファイバーに限らず、例えば石英ガラスから構成された光ファイバーを用いることもできる。この場合には、石英ガラスで構成した光ファイバーは、波長200nm以上の光において透過性を有し、特に、波長400nm以上の光において伝送損失が小さく、また、NAが小さいので、ビーム広がりが小さく光密度の高い合波光が得られる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の光源装置を説明するための図である。
【図2】本発明の光源装置に係るコリメーターレンズユニットを説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ライトガイド
2 半導体レーザー
3 凹面反射鏡
4 ケーシング
5 コリメーターレンズユニット
6 冷却媒体
7 冷却機構
8 給電用基板
9 シール部材
100 光源装置
S 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトガイドと、該ライトガイドの外周を取り囲む複数の半導体レーザーと、光出射方向において開口部を有し、内部に前記複数の半導体レーザーを収納するケーシングと、該ケーシングの開口部を塞ぐとともに、前記ライトガイドを少なくともその光入射面が露出するよう固定するコリメーターレンズユニットと、前記複数の半導体レーザーから出射され、前記コリメーターレンズユニットを通過した光を反射して前記ライトガイドに集光させる凹面反射鏡と、を備えてなり、
前記ケーシングと前記コリメーターレンズユニットとで形成される内部空間には、前記複数の半導体レーザー、コリメーターレンズユニット及びライトガイドを冷却するための冷却媒体が充填されたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記冷却媒体を冷却するための冷却機構を有することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記冷却媒体は、フッ素系不活性液体であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記ライトガイドは、液体ファイバからなることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−66800(P2006−66800A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250346(P2004−250346)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】