説明

光硬化性転写層を有する被印刷基材、及びこれを用いた印刷画像の形成方法

【課題】グラビア印刷方法等の印刷方法において、どのようなインク材料が使用された場合であっても、高精細な印刷画像の形成が可能な被印刷基材を提供し、その被印刷基材を用いて高精細な印刷画像を形成する方法を提供する。
【解決手段】印刷版14上に形成されたインク材料16からなる画像を転写するための被印刷基材10であって、被印刷基材10が、画像が印刷される側の表面に、粘着性のある光硬化性組成物からなる光硬化性転写層11が設けられた構成を有することを特徴とする被印刷基材10。更に、印刷版14上に形成されたインク材料16からなる画像をその被印刷基材10の光硬化性転写層11の表面に転写する工程、その画像が転写された光硬化性転写層11を紫外線照射により硬化させる工程を含む印刷画像の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアオフセット方式やグラビアダイレクト方式等の印刷方法による印刷画像の形成、特に、プリント配線基板等の精確な細線の印刷画像の形成に有利に使用することができる、光硬化性転写層を有する被印刷基材及びこれを用いた印刷画像の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線基板等の精確な細線の形成にグラビア印刷等の印刷方法が利用されている。
【0003】
グラビア印刷は凹版印刷の一種であり、一般にグラビアオフセット方式やグラビアダイレクト方式がある。グラビアオフセット方式においては、被印刷基材への印刷が完了するまで、次に示す3段階の工程がある。
(1)版胴の印刷パターンが彫り込まれた部分(凹部)へのインクの充填、
(2)版胴からシリコンゴム製等のブランケットへのインクの転移、
(3)ブランケットから被印刷基材へのインクの転写。
【0004】
ここで、印刷品位を左右する重要な要因は、それぞれの界面でのインクの転移性であり、版胴/ブランケット間、及びブランケット/被印刷基材間における、インクの受け渡しが良好に行われなければ、高品位の印刷物を得ることができない。インクの転移性を決定する要因として、インク自体の粘度、乾燥性、凝集力、及び各界面のインクの受理面(ブランケット、及び被印刷基材)に対する濡れ性(表面エネルギー)等が挙げられる。それらの要因のバランスを最適化することで印刷品位の向上を図ることができるが、インクの配合や樹脂、溶材等をわずかに変更するだけでも全体のバランスが崩れて、印刷品位が低下する場合がある。
【0005】
特にインクの転移が問題となるのは、ブランケットから被印刷基材へのインクの転写工程である。例えば、乾燥性が速いインクの場合や転写されたインクの表面積が大きい細線パターンの場合はブランケット上で乾燥、固着化し、被印刷基材への転写が不可能となる。一方、乾燥性を遅くし、被印刷基材への濡れ性を向上させた場合、インクのダレによる印刷形状の乱れや、凝集力不足によりインクの一部がブランケットに残る、いわゆる「泣き別れ」等の問題が生じる。さらに、インクが適性であっても、常時インクと接触しているブランケットの表面が、インク溶剤を吸収することで濡れ性が経時的に変化し、印刷品位が低下する場合もある。
【0006】
これらの問題に対して、ブランケット表面を加熱して乾燥させたり、ブランケット表面のインク溶材を吸引したりすることで、ブランケットの濡れ性を改善する技術が開発されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−158633号公報
【特許文献2】特開2007−160676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1又は2の方法でブランケットの濡れ性を改善した場合でも、インク配合等の影響により、ブランケットから被印刷基材へのインクの転写不良が生じる場合があるとの問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、グラビア印刷方法等の印刷方法において、どのようなインク材料が使用された場合であっても、高精細な印刷画像の形成が可能な被印刷基材を提供し、その被印刷基材を用いて高精細な印刷画像を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、印刷版上に形成された、インク材料からなる画像を印刷時に転写するための被印刷基材であって、当該被印刷基材が、画像が印刷される側の表面に、粘着性のある光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有することを特徴とする被印刷基材によって達成される。本発明の被印刷基材は、印刷版(グラビアダイレクト方式における版胴、グラビアオフセット方式によるブランケットロール等、被印刷基材と直接接触する版を言う。)にどのようなインク材料で形成された画像であっても、粘着性のある光硬化性転写層の表面に捕捉することで、ほぼ100%転写することができる。更に、紫外線照射により光硬化性転写層を硬化させることで転写した画像を固定することができる。従って、インク材料の一部が印刷版に残る「泣き別れ」やインク材料のダレによる印刷品位の低下を防ぐことができ、高精細な印刷画像を形成できる被印刷基材を提供することができる。
【0011】
本発明の被印刷基材の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記被印刷基材が、透明基材の少なくとも一方の表面に前記光硬化性転写層が設けられた構成を有する。
(2)前記透明基材が、易接着層とポリマーフィルムとを有する透明フィルムであり、且つ当該易接着層上に直接、光硬化性転写層が設けられている。
(3)前記ポリマーフィルムが、ポリエステルフィルムである。
(4)前記光硬化性組成物が、ポリマーと光重合性官能基を有する反応希釈剤とを含む。
(5)前記ポリマーのガラス転移温度が80℃以上である。
(6)前記光硬化性転写層の300mJ/cm2の紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上である。
(7)前記光硬化性組成物のガラス転移温度が20℃未満である。
(8)前記ポリマーが、アクリル樹脂である。
(9)前記光硬化性組成物が、更にジイソシアネートを含む。
(10)前記光硬化性組成物が、更に光重合開始剤を含む。
(11)前記光硬化性転写層の層厚が、1〜300μmである。
(12)前記光硬化性転写層の、前記透明基材を有する面と反対側の表面に、剥離シートが設けられている。
【0012】
また、上記目的は、下記の工程:
(1)印刷版上に形成されたインク材料からなる画像を、本発明の被印刷基材の光硬化性転写層の表面に転写する工程;
(2)前記画像が転写された光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させる工程;
を含む印刷画像の形成方法によっても達成される。
【0013】
この方法においては、印刷版にインク材料で形成された画像が本発明の被印刷基材の光硬化性転写層に転写されるので、どのようなインク材料で形成された画像であっても、粘着性のある光硬化性転写層に捕捉され、ほぼ100%転写させることができる。更に、紫外線照射により光硬化性転写層を硬化しているので、転写された画像を固定することができる。従って、インク材料の一部が印刷版に残る「泣き別れ」やインク材料のダレによる印刷品位の低下を防ぐことができ、高精細な印刷画像を形成することができる。
【0014】
また、上記目的は、下記の工程:
(1)印刷される画像が彫り込まれた凹部を有する版胴の、当該凹部にインク材料を充填する工程;
(2)前記版胴に対向配置された圧胴ロールとの間に、本発明の被印刷基材を、光硬化性転写層の表面が版胴の凹部を有する表面に接触するように挿入し、当該光硬化性転写層の表面に前記インク材料からなる画像を転写する工程;
(3)前記画像が転写された光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させる工程;
を含む印刷画像の形成方法によっても達成される。
【0015】
この方法は、本発明の印刷画像の形成方法において、印刷方法がグラビアダイレクト方式である場合の方法である。
【0016】
また、上記目的は、下記の工程:
(1)印刷される画像が彫り込まれた凹部を有する版胴の、当該凹部にインク材料を充填する工程;
(2)前記版胴に対向配置されたブランケットロールの表面を、版胴の凹部を有する表面に接触させ、当該ブランケットロールの表面に前記インク材料からなる画像を転写する工程;
(3)前記ブランケットロールに対向配置された圧胴ロールとの間に、本発明の被印刷基材を、光硬化性転写層の表面がブランケットロールの表面に接触するように挿入し、当該光硬化性転写層の表面に前記インク材料からなる画像を転写する工程;
(4)前記画像が転写された光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させる工程;
を含む印刷画像の形成方法によっても達成される。
【0017】
この方法は、本発明の印刷画像の形成方法において、印刷方法がグラビアオフセット方式である場合の方法である。グラビアオフセット方式は、ブランケットから被印刷基材へのインク材料の転写工程において、インクの「泣き別れ」の問題が生じ易いため、本発明の方法が特に有効である。
【0018】
本発明の印刷画像の形成方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)紫外線照射を少なくとも300mJ/cm2の照射エネルギーで行う。
(2)インク材料が、導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インクである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の被印刷基材は、印刷方法、特にグラビア印刷方法により、どのようなインク材料であっても、高精細な印刷画像を形成することができるので、プリント配線基板、プラズマディスプレイ等のディスプレイ用又は病院等の建築物の窓等に使用する光学フィルタの導電層、電子ペーパーの電極等の数μ〜数百μmの精確な細線パターンを形成するために有効な被印刷基材である。また、本発明の印刷画像の形成方法によれば、高精細な印刷画像を安定して形成することができるので、プリント配線基板、光学フィルタの導電層、電子ペーパーの電極等の精確な細線パターンを安定して形成することができ、これらの製品を有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の被印刷基材の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の印刷画像の形成方法の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の印刷画像の形成方法のグラビアダイレクト印刷を用いる場合の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の印刷画像の形成方法のグラビアオフセット印刷を用いる場合の代表的な一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の被印刷基材10における実施の形態の代表的な一例を示す概略断面図である。
【0022】
被印刷基材10においては、易接着層12aを有するポリマーフィルム12bからなる透明フィルム12の一方の表面に粘着性のある光硬化性転写層11が形成されている。易接着層12aは、光硬化性転写層11及びポリマーフィルム12bと優れた接着性を示す。従って、光硬化性転写層11は透明フィルム12に強力に接着されている。光硬化性転写層11は透明フィルム12の少なくとも一方にあれば良く、両面にあっても良い。光硬化性転写層11の、透明フィルム12を有する面と反対側の表面には剥離シート13が設けられている。剥離シート13は光硬化性転写層11を保護するためのシートであり、例えば、被印刷基材10同士を重ねた場合の密着性が低く、光硬化性転写層11が部分的に剥がれたりしない場合等は無くても良いが、長尺シートで使用する場合等はハンドリング性の点で設けた方が好ましい。剥離シート13は、一般に、プラスチックシート上に剥離層が設けられたものであり、剥離層が光硬化性転写層11の表面と接触するように設けられており、通常使用時に除去される。
【0023】
本発明において光硬化性転写層11は、各種印刷方法において、印刷版(グラビアダイレクト方式の場合の版胴、グラビアオフセット方式の場合のブランケットロール等、被印刷基材に直接接触する版を言う)にインク材料で形成された画像をほぼ100%転写できるように粘着性を有している層であるとともに、硬化後においては転写した画像を固定して、粘着性が喪失する層である。
【0024】
従来は、インキ材料の転写が印刷版や被印刷基材との濡れ性にのみ依存していたが、本発明の被印刷基材は、粘着性が付与されたことで、積極的にインク材料を吸着することができ、ほぼ100%の転写を実現することができる。転写後に、紫外線照射等により光硬化性転写層11が硬化されることで、印刷された画像がダレたりすることなく、精確に固定されるため、高品位な印刷画像を得ることができる。
【0025】
本発明において、透明フィルム12の代わりに、透明又は不透明のガラス板や、プラッスチック製の板やフィルム等、どのような基材が使用されていても良い。光硬化性転写層11の硬化のための紫外線照射を基材側からも行うことができる点で、透明基材が好ましく、ハンドリング性の点から透明フィルム12のようなポリマー製のフィルムが好ましい。透明フィルム12のポリマーフィルム12bは、本発明の被印刷基材10に有効な透明性や物性があれば、どのようなものでも良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート、(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる、これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET等のポリエステルが好ましい。このポリエステルは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。
【0026】
このようなポリエステルの例としては、PETの他、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができ、これらの共重合体又はこれと副成分(50モル%未満)としての他樹脂とのブレンドであってもよい。これらのポリエステルのうち、PET、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。透明フィルム12のポリマーフィルム12bの厚さは1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは3〜400μm、更に好ましくは6〜300μm、特に好ましくは12〜250μmである。
【0027】
本発明において、透明フィルム12の易接着層12aは無くても良い。ただし、ポリマーフィルム12bと光硬化性転写層11との密着性をより強力にし、インク材料の転写中に、光硬化性転写層が剥がれて、印刷版に付着することがないように、易接着層12aを設けた方が好ましい。易接着層12aは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種又は2種以上の混合物の易接着層が設けられることが好ましい。易接着層12aは、特にポリエステル樹脂とアクリル樹脂(好ましくは、オキサゾリン基等の官能基を有するもの)との組合せ、又はポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂(好ましくは水溶性、水分散性ポリウレタン)の組合せが好ましい。透明フィルム12の易接着層12aの厚さは、0.01〜0.3μmの範囲、特に0.02〜0.2μmの範囲あることが好ましい。
【0028】
本発明において、光硬化性転写層11は、ポリマー、光重合性官能基(一般に炭素−炭素2重結合基、好ましくは(メタ)アクリロイル基)を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)、所望により、光重合性開始剤、滑剤等の添加剤から構成されるのが好ましい。
【0029】
光硬化性組成物のポリマーとしては、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のポリマーを含むことが好ましい。これにより、金型の微細凹凸パターンが容易に転写でき、硬化も高速で行うことができる。また硬化された形状も高いTgを有するのでその形状が変わることなく長期に維持され得る。ガラス転移温度が80℃以上のポリマーとしては、重合性官能基を有することが、反応性希釈剤と反応が可能となり硬化の高速化に有利である。またヒドロキシル基を有することにより、光硬化性転写層11にジイソシアネートを含ませることで、ポリマーを僅かに架橋させることが可能となり、転写層のしみ出し、層厚変動が大きく抑えられた層とするのに特に有利である。ジイソシアネートは、ヒドロキシル基の無いポリマーでもある程度有効である。
【0030】
また、本発明において、光硬化性転写層は、300mJ/cm2の紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上となるように設計されていることが好ましい。短時間の紫外線照射でも、硬化後のダレ発生を防止することが容易で、インク材料をより精確に保持することができる。
【0031】
さらに、光硬化性転写層は、ガラス転移温度を20℃以下であることが好ましい。これにより、光硬化性転写層がインク材料に接触したとき、常温においてもインク材料をほぼ100%吸着する粘着性を有することができる。特に、ガラス転移温度が15℃〜−50℃、さらに0℃〜−40℃の範囲にすることにより粘着性が高いものとなる。ガラス転移温度が高すぎると、インク材料の転写性の低下につながり、また低すぎると、硬化後の十分な硬度が得られなくなる。
【0032】
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物に含まれるポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)としては、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ビニルアセテート/(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3−ポリマー、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等を挙げることができる。良好な転写性及び優れた硬化性の点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0033】
本発明において、光硬化性組成物中に更にジイソシアネートを添加するのが好ましい。添加され得るジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物等のポリイソシアネートシアネートも使用することができる。これらの中でトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加体が好ましい。ジイソシアネートは、光硬化性組成物(不揮発分)中に0.2〜4質量%、特に0.2〜2質量%の範囲で含まれていることが好ましい。これにより転写層のしみ出しを防止するために適当な架橋がもたらされる。上記化合物とポリマーとの反応は、転写層形成後、徐々に進行し、常温(一般に25℃)、24時間でかなり反応している。転写層形成用の塗布液を調製した後、塗布するまでの間にも反応は進行するものと考えられる。長尺シートの被印刷基材10の場合は、転写層を形成後、ロール状態で巻き取る前にある程度硬化させることが好ましいので、必要に応じて、転写層を形成時、或いはその後、ロール状態で巻き取る前の間に加熱して反応を促進させても良い。
【0034】
本発明において、光硬化性組成物に更に光重合開始剤を添加するのが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。
【0035】
本発明において、光硬化性転写層の厚さは、特に制限はなく、インク材料や基材の種類等に応じて適宜設定できる。好ましくは1〜300μm、特に好ましくは3〜100μmである。
【0036】
次に、上記被印刷基材10を用いて、本発明の印刷画像を形成する方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図2は本発明の印刷画像の形成方法における実施の形態の代表的な一例を示す概略断面図である。まず被印刷基材10から、剥離シート13を除去し、光硬化性転写層11を露出させる。光硬化性転写層11は透明フィルム12のポリマーフィルム12b上の易接着層12aに強力に接着されている。印刷版14には、印刷方法の中間工程としてインク材料16による高精細画像が形成されており、画像が形成された面が光硬化性転写層11の表面に対向するように配置する(図2(a))。続いて、光硬化性転写層11上に、印刷版14を接触させ、光硬化性転写層11の表面にインク材料で形成された画像を転写する(図2(b):以上工程(1))。光硬化性転写層11は粘着性があるため、印刷版からのインク材料で形成された画像がほぼ100%転写できる。転写を確実にするため、光硬化性転写層11は必要に応じて加熱される。常温で十分な転写ができれば加熱する必要はない。光硬化性転写層11と印刷版14が接触した時点、又は転写後に、光硬化性転写層11を、光(UV)照射することにより硬化させる(図2(c):工程(2))。これにより、インク材料で形成された画像を精確に固定することができ、高精細な印刷画像を形成することができる。また、光硬化性転写層11の粘着性が喪失するため、ハンドリング性に優れた印刷画像を有する基材とすることができる。
【0038】
また、図3は本発明の印刷画像の形成方法における実施の形態の別の代表例として、印刷方法にグラビアダイレクト印刷を使用した例を示す。グラビアダイレクト印刷は、印刷版として版胴34、版胴34に対向する圧胴ロール32及びドクターブレード35を有する印刷機で行うものである。版胴34には所定の高精細な画像が彫り込まれた凹部33を有する。被印刷基材20は易接着層を有するポリエチレンテレフタレート製の透明フィルム22の印刷される側の表面に光硬化性転写層21を有し、更に、光硬化性転写層21の表面に剥離シート23を有している長尺フィルムである。
【0039】
まず、印刷画像を形成するインク材料として導電性インク36を版胴34に付着させ、ドクターブレード35で導電性インク36を掻き落とし、凹部33にのみ導電性インク36を充填する(工程(1))。被印刷基材20は剥離シート23が案内ロール37を介して、巻き取りロール38に巻き取られて除去され、光硬化性転写層21が露出される。光硬化性転写層21が形成されている透明フィルム22は、光硬化性転写層21が版胴34に接触するように、版胴34と圧胴ロール32の間に挿入される。光硬化性転写層21は圧胴ロール32により版胴34に押し付けられ、導電性インク36で形成された印刷画像が光硬化性転写層21に転写される(工程(2))。光硬化性転写層21は粘着性があるため、印刷版からのインク材料で形成された画像がほぼ100%転写できる。その後、UV照射装置40により透明フィルム22側から光硬化性樹脂層21に紫外線を照射することで、光硬化性樹脂層21を硬化させる(工程(3))。その後、必要に応じて、被印刷基材20は乾燥炉へ搬送され十分に乾燥されても良い。
【0040】
紫外線照射は光硬化性転写層21の上方からでも良いが、導電性インク36で光が遮断され、硬化不良となる場合もあるため、下方(透明フィルム22側)からの照射が好ましい。また、紫外線照射は転写工程以降であれば、どのタイミングで行っても良い。導電性インク36配合等により、硬化時期が遅くなると、インクが垂れて印刷品位が低下する場合も考えられるため、転写時点又は転写直後が好ましい。光硬化性転写層21が硬化することで、導電性インク36で形成された画像が精確に固定され、高精細な印刷画像を形成することができる。また、光硬化性転写層21の粘着性が喪失するため、ロール状にするなど、ハンドリング性に優れた長尺状の基材とすることができる。
【0041】
更に、図4は本発明の印刷画像の形成方法における実施の形態の別の代表例として、印刷方法にグラビアオフセット印刷を使用した例を示す。グラビアオフセット印刷は、版胴52、版胴52に対向するシリコンゴム製のブランケットロール54(印刷版)、ブランケットロール54に対向する圧胴ロール57及びドクターブレード55を有する印刷機で行うものである。版胴52には所定の高精細な画像が彫り込まれた凹部53を有する。被印刷基材20は図3の場合と同様に、透明フィルム22の印刷される側の表面に光硬化性転写層21を有し、更に、光硬化性転写層21の表面に剥離シート23を有している長尺フィルムである。
【0042】
まず、印刷画像を形成するインク材料として導電性インク56を版胴52に付着させ、ドクターブレード55で導電性インク56を掻き落とし、凹部53にのみ導電性インク56を充填する(工程(1))。図示のように、版胴52とブランケットロール54は、ブランケットロール54が版胴52に押し付けられるように接触した状態で矢印方向に回転する。これにより導電性インク56で形成された高精細な画像がブランケットロール54に転写される(工程(2))。被印刷基材20は剥離シート23が案内ロール58を介して、巻き取りロール59に巻き取られて除去され、光硬化性転写層21が露出される。光硬化性転写層21が形成されている透明フィルム22は、光硬化性転写層21がブランケットロール54に接触するように、ブランケットロール54と圧胴ロール57の間に挿入される。光硬化性転写層21は圧胴ロール57によりブランケットロール54に押し付けられ、導電性インク56で形成された印刷画像が光硬化性転写層21に転写される(工程(3))。光硬化性転写層21は粘着性があるため、印刷版からのインク材料で形成された画像がほぼ100%転写できる。その後、UV照射装置60により透明フィルム22側から光硬化性樹脂層21に紫外線を照射することで、光硬化性樹脂層21を硬化させる(工程(4))。その後、必要に応じて、被印刷基材20は乾燥炉へ搬送され、十分に乾燥されても良い。
【0043】
図3の場合と同様に、紫外線照射は光硬化性転写層21の上方からでも良いが、導電性インク56で光が遮断され、硬化不良となる場合もあるため、下方(透明フィルム22側)からの照射が好ましい。また、紫外線照射は転写工程以降であれば、いつ行っても良い。導電性インク56配合等により、硬化時期が遅くなると、インクが垂れて印刷品位が低下する場合も考えられるため、転写時点又は転写直後が好ましい。光硬化性転写層21が硬化することで、導電性インク56で形成された画像が精確に固定され、高精細な印刷画像を形成することができる。また、光硬化性転写層21の粘着性が喪失するため、ロール状にするなど、ハンドリング性に優れた長尺状の基材とすることができる。
【0044】
本発明の被印刷基材の光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物に含まれるポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)として、好ましく用いられるアクリル樹脂は、重合性官能基を有するアクリル樹脂又はヒドロキシル基を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。またアクリル樹脂は、メチルメタクリレートの繰り返し単位を少なくとも50質量%(特に60〜90質量%)含むことが、Tg80℃以上のアクリル樹脂を得られやすく、また良好な転写性、高速硬化性も得られやすく好ましい。
【0045】
上記重合性官能基を有するアクリル樹脂は、一般に重合性官能基を有するアクリル樹脂が、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体で、且つ該グリシジル基に重合性官能基を有するカルボン酸が反応したもの、或いはメチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、重合性官能基を有するカルボン酸との共重合体で、且つ該カルボン酸基にグリシジル(メタ)アクリレートが反応したものである。
【0046】
メチルメタクリレートは、その繰り返し単位として、ポリマー中に50質量%以上(特に60〜90質量%)含まれることが好ましい。反応性希釈剤との適当な組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。またこのような(メタ)アクリル酸エステルは、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜30質量%、特に10〜30質量%含まれることが好ましい。グリシジル(メタ)アクリレート又は重合性官能基を有するカルボン酸は、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。得られた共重合体のグリシジル基又はカルボン酸基に、それぞれ重合性官能基を有するカルボン酸又はグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる。
【0047】
上記ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、一般にメチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種との共重合体である。メチルメタクリレートは、その繰り返し単位として、ポリマー中に50質量%以上(特に60〜90質量%)含まれることが好ましい。反応性希釈剤との適当な組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。またこのような(メタ)アクリル酸エステルは、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜30質量%、特に10〜30質量%含まれることが好ましい。アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができ、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0048】
前記重合性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば、以下のように製造することができる。
【0049】
1種又は複数種の(メタ)アクリルモノマー(好ましくは上述の、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、グリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート)或いは重合性官能基を有するカルボン酸とを、ラジカル重合開始剤と有機溶剤の存在下で溶液重合法などの公知の方法にて反応させて共重合体であるグリシジル基含有アクリル樹脂(a)又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)を得る。(メタ)アクリルモノマー等のモノマー類の配合割合はグリシジル基含有アクリル樹脂(a)又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)の固形分換算合計量に対して10〜45質量%とすることが好ましい。
【0050】
次いで得られたグリシジル基含有アクリル樹脂(a)に重合性官能基を有するカルボン酸を加え、或いは得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)にグリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジルメタクリレート)を加え、必要に応じ加熱することによりアクリル系光硬化型樹脂(A)又はアクリル系光硬化型樹脂(B)を得る。この配合比は、グリシジル基とカルボキシル基のモル比が1/0.9〜1/1となるように配合するのが好ましく、より好ましくは1/1である。グリシジル基過剰では長期安定性において増粘、ゲル化のおそれがあり、カルボキシル基過剰では皮膚刺激性が上がり作業性が低下する。さらに1/1の場合は残存グリシジル基がなくなり、貯蔵安定性が顕著に良好になる。反応は塩基性触媒、リン系触媒などの存在下で公知の方法にて行うことができる。
【0051】
上記OH又は重合性官能基を有するアクリル樹脂を含み、本発明で用いることができるアクリル樹脂を構成する主成分として使用することができる(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸の各種エステルを挙げることができる。アクリル酸又はメタクリル酸の各種エステルの例として、メチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリレートとはアクリレート及びメタクリレートを示す。以下同様)、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ピレノキシド付加物(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。さらに不飽和基を含有する芳香族化合物(例、スチレン)も使用しても良い。
【0052】
本発明では、前述のように、アクリル系モノマーの主成分としては、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0053】
本発明において、ポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)は、数平均分子量が100000以上、特に100000〜300000、そして重量平均分子量が100000で以上、特に100000〜300000であることが好ましい。
【0054】
さらに本発明では、ポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)として、ヒドロキシル基等の活性水素を有する官能基及び光重合性官能基の両方を有するポリマーも使用することができる。このような反応性ポリマーとしては、例えば、主として前記アクリル系モノマーから得られる単独重合体又は共重合体(即ちアクリル樹脂)で、且つ、主鎖又は側鎖に光重合性官能基及び活性水素を有する官能基を有するものである。従って、このような反応性ポリマーは、例えば、メチルメタクリレートと、前記1種以上の(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基等の官能基を有する(メタ)アクリレート(例、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを共重合させ、得られた重合体とイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートなどの、重合体の官能基と反応し且つ光重合性基を有する化合物と反応させることにより得ることができる。その際、ヒドロキシル基が残るようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートの量を調節して使用することにより、活性水素を有する官能基としてヒドロキシル基及び光重合性官能基を有するポリマーが得られる。
【0055】
或いは上記において、ヒドロキシル基の代わりにアミノ基を有する(メタ)アクリレート(例、2−アミノエチル(メタ)アクリレート)を用いることにより活性水素を有する官能基としてアミノ基を有する、光重合性官能基含有ポリマーを得ることができる。同様に、活性水素を有する官能基としてカルボキシル基等を有する、光重合性官能基含有ポリマーも得ることができる。
【0056】
本発明では、前記光重合性官能基をウレタン結合を介して有するアクリル樹脂も好ましい。
【0057】
上記光重合性官能基を有するポリマーは、光重合性官能基を一般に1〜50モル%、特に5〜30モル%含むことが好ましい。この光重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0058】
本発明における、光硬化性転写組成物に好ましく含まれる光重合性官能基を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)としては以下のものが挙げられる。例えば、(メタ)アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、
グリセリンジアクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;
ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4'−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2',4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら光重合可能な官能基を有する化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0059】
本発明において、光硬化性組成物のポリマーと反応性希釈剤との質量比は、20:80〜80:20、特に30:70〜70:30の範囲が好ましい。
【0060】
本発明において、光硬化性組成物に好ましく添加される、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。光硬化性組成物(不揮発分)中に、光重合開始剤を一般に0.1〜20質量%、特に1〜10質量%含むことが好ましい。
【0061】
光重合開始剤のうち、アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1など、ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンッゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどが使用できる。
【0062】
アセトフェノン系重合開始剤としては、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1が好ましい。ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルが好ましい。また、第3級アミン系の光重合促進剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが使用できる。特に好ましくは、光重合促進剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0063】
本発明において、光硬化性組成物には、更に、所望により、下記の滑剤等、他の添加剤を添加することが好ましい。
【0064】
滑剤としては、リン酸アルキルポリオキシアルキレン化合物及びリン酸アルキルエステル化合物等のリン酸アルキルエステル系化合物、リン酸塩及びリン酸アミド等のリン原子含有化合物、シリコーン系樹脂、フッ素含有化合物等が挙げられる。
【0065】
リン酸アルキルエステル化合物としては、例えば、リン酸トリアルキルエステル(例、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート)、リン酸トリアリールエステル(例、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート)等を挙げることができる。リン酸塩としては、例えば、リン酸のナトリウム塩(例、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム)を挙げることができる。またリン酸アミドとしては、例えば、トリス(エチレンイミノ)リン酸アミド、トリス(メチルエチレンイミノ)リン酸アミド、ヘキサメチルリン酸アミド等を挙げることができる。さらにリン脂質界面活性剤(例えばレシチン)、リンの塩素化合物(例、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン)等を挙げることができる。
【0066】
シリコーン系樹脂としては、例えば、非変性又は変性ポリシロキサンを挙げることができる。非変性ポリシロキサンの例としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンを挙げることができる。また、変性ポリシロキサンの例としては、上記ポリシロキサンの、側鎖、両末端又は片末端に官能基を有する物であり、その官能基の例としては、アミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基を挙げることができる。
【0067】
フッ素含有化合物としては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート等が挙げられる。
【0068】
他の添加剤として、シランカップリング剤(接着促進剤)を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記ポリマー(固形分)100質量部に対し通常0.01〜5質量部で十分である。
【0069】
また同様に接着性を向上させる目的でエポキシ基含有化合物を添加することができる。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;アクリルグリシジルエーテル;2−エチルヘキシルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;フェノールグリシジルエーテル;p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル;アジピン酸ジグリシジルエステル;o−フタル酸ジグリシジルエステル;グリシジルメタクリレート;ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを添加することによっても同様の効果が得られる。これらエポキシ基含有化合物の添加量は上記ポリマー(固形分)100質量部に対し0.1〜20質量部で十分で、上記エポキシ基含有化合物の少なくとも1種を単独で又は混合して添加することができる。
【0070】
さらに他の添加剤として、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0071】
上記炭化水素樹脂等の樹脂の添加量は適宜選択されるが、上記ポリマー(固形分)100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0072】
以上の添加剤の他、本発明の光硬化性組成物は紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいてもよい。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム等の微粒子等の添加剤を少量含んでもよい。
【0073】
本発明において、光硬化性転写層の周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、25℃において1×107Pa以下であることが好ましく、特に1×104〜6×105Paの範囲であることが好ましい。また80℃において8×104Pa以下であることが好ましく、特に1×104〜5×105Paの範囲であることが好ましい。これにより、より迅速にインク材料が吸着され、より精確な転写が可能となる。
【0074】
本発明の被印刷基材は、上述の光硬化組成物の構成成分を均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の製膜法により所定の形状に製膜して製造することができる。好ましくは透明フィルムの易接着層の表面に製膜して光硬化性転写層を形成する。より好ましい本発明の光硬化性接着剤の製膜方法は、各構成成分を良溶媒に均一に混合溶解し、この溶液をシリコーンやフッ素樹脂を精密にコートしたセパレーターにフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法、リップダイコート法等により易接着層上に塗工し、溶媒を乾燥することにより製膜する方法である。光硬化性転写層の厚さは、1〜300μm、特に3〜100μmが好ましい。
【0075】
本発明の被印刷基材を構成する光硬化性転写層に剥離シートを設ける場合、剥離シートは一般にプラスチックフィルム上に、シリコーン等の表面張力の低い剥離層を有する。例えば、ヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる剥離層、或いは不飽和2重結合基(好ましくはビニル基)を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)から形成される剥離層等を挙げることができる。
【0076】
剥離シートのプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂フィルムを用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0077】
本発明の方法において、被印刷基材にインク材料で形成された画像が転写された後、光硬化性転写層を硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。また、電子線照射による硬化を行うこともできる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、0.1秒〜数十秒程度、好ましくは0.5〜数秒である。紫外線照射量は、300mJ/cm2以上が好ましい。
【0078】
また、硬化促進のために、予め積層体を30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0079】
本発明の方法に使用するインク材料はどのようなものでも良い。特に、インク材料の物性を制御し難い場合がある、導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インクは、本発明の方法に好ましいインク材料である。
【0080】
導電性インクに使用される導電性粒子としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、その合金;或いは酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリイソチオアナフテン、ポリピロール、ポリパラフェニレンビニレン等の導電性高分子のドーピング物等を挙げることができる。これらは一種段独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
導電性インクに用いられるバインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。更に、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0082】
導電性インクには、適度な粘度及び乾燥性に調整するため、更に溶剤を含んでいても良い。溶剤としては、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテルを挙げることができる。
【0083】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
【実施例】
【0084】
(実施例1)被印刷基材の作製
(ヒドロキシル基を有するポリマー1の作製)
<ポリマー配合1>
メチルメタクリレート 74.6質量部
n−ブチルメタクリレート 13.2質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.1質量部
AIBN 5質量部
トルエン 50質量部
酢酸エチル 50質量部
上記の配合の混合物を、穏やかに撹拌しながら、70℃に加熱して重合を開始させ、この温度で8時間撹拌し、側鎖にヒドロキシル基を有するヒドロキシル基を有するポリマー1(アクリル樹脂)を得た。固形分を36質量%に調製した(ポリマー溶液1)。
得られたポリマー1は、Tgが90℃であり、重量平均分子量が110000であった。
【0085】
<光硬化性組成物配合>
ヒドロキシル基を有するポリマー溶液1(固形分) 100質量部
ヘキサンジオールジアクリレート 100質量部
(KS−HDDA;日本化薬(株)製)
トリメチロールプロパントリアクリレート 10質量部
(TMP−A;共栄社化学(株)製)
2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート 20質量部
(G−201P;共栄社化学(株)製)
ジイソシアネート(BXX5627、東洋インキ製造(株)製) 1質量部
イルガキュア651(チバガイギー(株)製) 1質量部
リン酸エステル 0.1質量部
(商品名LTP−2;川研ファインケミカル(株)製)
ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ) 0.05質量部
上記配合の混合物を均一に溶解、混練し、ポリエチレンテレフタレート(PET)製透明フィルム(幅300mm、長さ20m、厚さ100μm)の上に全面塗布し、乾燥厚さ(2〜5)μmの光硬化性転写層を形成し、その上に剥離シート(幅140mm、長さ300m、厚さ75μm;商品名No.23、藤森工業(株)製)を貼付し、ロール状に巻き上げ、被印刷基材を作製した。光硬化性転写層のTgは、−20℃であった。
【0086】
(実施例2)導電性インクの作製
<導電性インク配合>
飽和共重合ポリエステル樹脂 11質量部
銀微粒子(平均粒径(2〜5)μm) 70質量部
2−ブトキシエチルアセテート 5質量部
2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート 14質量部
上記配合の混合物を30分間攪拌、分散処理を行い、導電性インクを作製した。
(実施例3)印刷画像の形成
実施例1で作成した被印刷基材に、実施例2で作成した導電性インクを用いて、下記条件でグラビアオフセット印刷による画像形成を行った。
<印刷条件>
ドクターブレード角:レギュラー
インキング速度:5m/分
インク受理速度:3m/分
基材への転写速度:6m/分
シリコンゴム製ブランケット:#700−STD(藤倉ゴム社製)
版胴における印刷画像パターン:表1に示す、ライン部/スペース部(ライン間の非印刷部の幅)の通り。
紫外線照射:300mJ/cm2×2秒
<印刷画像の評価>
(1)印刷画像精度
得られた印刷画像のライン幅/スペース幅を光学顕微鏡観察法により測定し、パターン部のライン幅/スペース幅と比較した。
(2)密着性
セロハンテープ試験剥離法(セロハンテープ(ニチバン社製)を印刷画像に貼りつけ、指の腹にて密着させた後剥離し、セロハンテープを観察する)により、印刷画像がセロハンテープに着いて剥離しない場合を○、剥離する場合を×とした。
(3)ブランケットから被印刷基材への転写性
ブランケット表面の目視観察で評価した。
(比較例1)
実施例1で用いたものと同じPET製透明フィルムを、光硬化性転写層を設けずに使用し、実施例3と同様に印刷画像を形成し、評価した。
【0087】
<結果>
印刷画像の形成試験の結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示したように、光硬化性転写層を有する実施例1の被印刷基材を用いた場合、すべてのライン幅で、版胴のパターン部のライン/スペース幅と印刷画像におけるライン/スペース幅が同一であり、版胴のパターンを精確に再現した印刷画像が形成されていた。また、密着性も優れ、転写性も良好という結果であった。一方、光硬化性転写層の無い比較例1の被印刷基材を用いた場合、パターン部のライン幅が100、50μmでは印刷画像の転写が完全でなく、ライン部が減少し、スペース部が増加していた。ライン幅20μmでは、ブランケット上で乾燥してしまい、被印刷基材に転写できなかった。また、比較例1では密着性も低かった。従って、光硬化性転写層を有する被印刷基材の優位性が示された。
【0090】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10、20 被印刷基材
11、21 光硬化性転写層
12、22 透明フィルム
12a 易接着層
12b ポリマーフィルム
13、23 剥離シート
14 印刷版
16 インク材料
32、57 圧胴ロール
33、53 凹部
34、52 版胴
35、55 ドクターブレード
36、56 導電性インク
37、58 案内ロール
38、59 巻き取りロール
40、60 UVランプ
54 ブランケットロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版上に形成された、インク材料からなる画像を印刷時に転写するための被印刷基材であって、
当該被印刷基材が、画像が印刷される側の表面に、粘着性のある光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有することを特徴とする被印刷基材。
【請求項2】
前記被印刷基材が、透明基材の少なくとも一方の表面に前記光硬化性転写層が設けられた構成を有する請求項1に記載の被印刷基材。
【請求項3】
前記透明基材が、易接着層とポリマーフィルムとを有する透明フィルムであり、且つ当該易接着層上に直接、光硬化性転写層が設けられている請求項2に記載の被印刷基材。
【請求項4】
前記ポリマーフィルムが、ポリエステルフィルムである請求項3に記載の被印刷基材。
【請求項5】
前記光硬化性組成物が、ポリマーと光重合性官能基を有する反応希釈剤とを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項6】
前記ポリマーのガラス転移温度が80℃以上である請求項5に記載の被印刷基材。
【請求項7】
前記光硬化性転写層の300mJ/cm2の紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項8】
前記光硬化性組成物のガラス転移温度が20℃未満である請求項1〜7のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項9】
前記ポリマーが、アクリル樹脂である請求項5〜8のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項10】
前記光硬化性組成物が、更にジイソシアネートを含む請求項5〜9のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項11】
前記光硬化性組成物が、更に光重合開始剤を0.1〜10質量%含む請求項5〜10のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項12】
前記光硬化性転写層の層厚が、1〜300μmである請求項1〜11のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項13】
前記光硬化性転写層の、前記透明基材を有する面と反対側の表面に、剥離シートが設けられている請求項2〜11のいずれか1項に記載の被印刷基材。
【請求項14】
下記の工程:
(1)印刷版上に形成されたインク材料からなる画像を、請求項1〜13のいずれか1項に記載の被印刷基材の光硬化性転写層の表面に転写する工程;
(2)前記画像が転写された光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させる工程;
を含む印刷画像の形成方法。
【請求項15】
下記の工程:
(1)印刷される画像が彫り込まれた凹部を有する版胴の、当該凹部にインク材料を充填する工程;
(2)前記版胴に対向配置された圧胴ロールとの間に、請求項1〜13のいずれか1項に記載の被印刷基材を、光硬化性転写層の表面が版胴の凹部を有する表面に接触するように挿入し、当該光硬化性転写層の表面に前記インク材料からなる画像を転写する工程;
(3)前記画像が転写された光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させる工程;
を含む印刷画像の形成方法。
【請求項16】
下記の工程:
(1)印刷される画像が彫り込まれた凹部を有する版胴の、当該凹部にインク材料を充填する工程;
(2)前記版胴に対向配置されたブランケットロールの表面を、版胴の凹部を有する表面に接触させ、当該ブランケットロールの表面に前記インク材料からなる画像を転写する工程;
(3)前記ブランケットロールに対向配置された圧胴ロールとの間に、請求項1〜13のいずれか1項に記載の被印刷基材を、光硬化性転写層の表面がブランケットロールの表面に接触するように挿入し、当該光硬化性転写層の表面に前記インク材料からなる画像を転写する工程;
(4)前記画像が転写された光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させる工程;
を含む印刷画像の形成方法。
【請求項17】
紫外線照射を少なくとも300mJ/cm2の照射エネルギーで行う請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
インク材料が、導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インクである請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260177(P2010−260177A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110336(P2009−110336)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】