説明

入退域管理システム

【課題】映像による対象物の入退域管理を確実に行うことができる入退域管理システムを提供する。
【解決手段】居室1の入口5から順に複数のRFIDリーダ4を設置し、社員2が保持するRFIDタグ3からの信号を最初に読み取ったRFIDリーダ4の位置と読取時刻とから社員2の入域時刻Xを推定して、監視カメラ6が撮影した映像データから入域時刻Xを起点する一定時間の部分を複写して、RFIDタグ3の識別情報と関連付けてデータベースとして記憶装置9に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の区域に入退域する人や物品などの移動対象物を記録・管理する入退域管理システムに関し、更に詳しくは、移動対象物に付されたRFIDタグを複数のRFIDリーダで時系列的に読み取ることと、撮影装置で撮影した映像とにより、入退域管理を確実に行うようにした入退域管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、居室や倉庫などの特定の区域に入退域する人間や物品などの対象物を監視カメラで撮影した映像データを記録しておき、トラブルが発生した後にその映像データを再生することにより、関連する人物や物品を調べる入退域管理システムが知られている。しかし、この入退域管理システムには、記録した映像データからトラブルが発生した時点に関する部分を探し出して再生し、撮影された対象物を特定するために、多大な労力が必要であるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1は、固有情報が記録されたICタグを対象物に所持させ、入口に設けられた読取装置がICタグからの信号を受信した時点から監視カメラで一定時間の撮影を行い、その撮影データを固有情報や撮影時刻等と関連付けてデータベースに登録する撮影情報入退域管理システムを提案している。
【0004】
しかし、この撮影情報入退域管理システムでは、ICタグと読取装置の相対的な位置関係(向きや距離)によっては、読取装置によるICタグの認識率が大きく低下したり、また対象物の移動速度が非常に速かったりすると、撮影のタイミングを逸してしまうため、対象物の入退域管理を確実に行うことができないという問題がある。
【特許文献1】特開2006−174200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、映像による移動対象物の移動履歴の記録管理を確実に行うことができる入退域管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の入退域管理システムは、特定の区域に入退域する対象物の移動履歴を記録管理する入退域管理システムであって、前記対象物の識別情報が記録され、かつ該対象物に付されたRFIDタグと、前記区域の入口から順に配置された複数のRFIDリーダと、該RFIDリーダが配置された周辺を撮影する撮影装置と、該撮影装置が撮影した映像データを記録する記憶装置と、前記複数のRFIDリーダ、撮影装置及び記憶装置に通信回線を介して接続された処理装置と、を備え、前記複数のRFIDリーダが読み取った前記RFIDタグの識別情報と、前記撮影装置が撮影した映像データとを時系列的に関連付けて、前記記憶装置に記録することを特徴とするものである。
【0007】
これら複数のRFIDリーダのうちRFIDタグの識別情報を最初に読み取ったRFIDタグの入口からの距離と読取時刻とを基に、対象物が入域した時刻を推定し、映像データのうち入域時刻から一定時間の部分を複写して、識別情報と関連付けることが望ましい。
【0008】
また、撮影装置が撮影した映像データを、所定の期間が経過した後に消去するようにすることが望ましい。複数のRFIDリーダは等間隔に配置し、互いに隣接するRFIDリーダの配置間隔は、RFIDタグの通信可能距離の2〜3倍とすることが望ましい。
【0009】
撮影装置には、視野の一部が互いに重複するように配置された複数の監視カメラ、又は100万画素以上の高精度カメラを用いることが望ましい。更に、通信回線にはインターネットを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の入退域管理システムによれば、対象物の識別情報を記録したRFIDタグの認識を複数のRFIDリーダにより行い、その認識したRFIDリーダの位置と認識時刻とを基に、対象物を撮影した映像データを識別情報と関連付けて記録するようにしたので、RFIDタグの認識率が低い場合や、対象物の移動速度が非常に速い場合でも、対象物の入域に関する映像データを記録することができるため、確実に入退域管理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態からなる入退域管理システムの一例を示す。
【0013】
この入退域管理システムは、建物の居室1に入室する社員2の入退域管理をおこなうものであり、社員2が所持するRFID(Radio Frequency IDentification)タグ3、そのRFIDタグ3からの信号を受信する複数のRFIDリーダ4、居室1の入口5を視野に収める複数の監視カメラ6、及びそれらRFIDリーダ4及び監視カメラ6と通信回線7を介して接続する処理装置8と記憶装置9から主に構成される。
【0014】
RFIDタグ3は、図2に示すように、社員2の識別情報などが記録されたID記憶部10と、後述するRFIDリーダ4から無線送信される信号に応じてID記憶部10から識別情報に関する信号を選択して、アンテナ11を通じてRFIDリーダ4に無線送信する送受信部12を備えている。社員2はRFIDタグ3を、例えば社員証や入室許可証の一部として所持する。ID記憶部10に記録される識別情報としては、社員番号などが例示される。RFIDタグ3の種類は特に限定するものではないが、通信距離が長く、かつ通信性能と通信品質に優れているという点から、2.45GHzのマイクロ波帯域、又は950〜956MHzのUHF帯域を周波数帯とするパッシブ型のRFIDタグを用いることが好ましい。
【0015】
RFIDリーダ4は、図3に示すように、RFIDタグ3から無線送信される信号をアンテナ13を通じて受信する受信部14、その受信部14が受信した信号から識別情報等を分離する処理部15、及びその識別情報を通信回線7へ出力する出力部16を備えている。これらの各部分は、RFIDリーダ4に内蔵された電源部17により動作する。このRFIDリーダ4は、居室1の入口5から順に番号を付けて複数台(n台)が配置されるが、配置作業の簡易化の点からは入口5から等間隔で配置することが望ましく、互いに隣接するRFIDリーダ4の間隔の大きさは、RFIDタグ3の通信可能距離の2〜3倍とすることが望ましい。2倍未満であると複数のRFIDリーダ4がRFIDタグ3からの信号を同時に受信する可能性が高くなり、3倍を超えるとRFIDリーダ4が信号を受信できない場合がある。具体的な間隔の大きさとしては、RFIDタグ3がマイクロ波帯域を使用する場合には2〜3m、UHF帯域の場合には10〜15mとなる。
【0016】
監視カメラ6は、対象物のデジタルの映像データ(動画データ)を取得する性能を有し、入口5及びその周辺を視野に収める位置に配置されるが、死角ができないように配置する必要がある。そのため、画素数が30万画素程度の汎用カメラを用いる場合には、互いに視野の一部が重なるように複数台を設置することが望ましい。また、100万画素以上の高精度カメラを用いる場合には、汎用カメラに比べて同一解像度での視野を広く取ることが可能となるため、監視カメラ6の台数を削減することができる。なお、図1では、汎用カメラを3台設置した場合を例示している。
【0017】
処理装置8は、図4に示すように、通信回線7への情報の入出力を行う入出力部18、演算処理を行う情報処理部19、現在時刻等を決定する時刻管理部20、及び識別情報に対応する社員データ等があらかじめ記録された記憶部21を備えている。これらの各部分は、外部から電力が供給される電源部22により駆動される。社員データとしては、氏名、所属等が例示される。このような処理装置8は、例えば通常のパーソナルコンピュータ又はワークステーションなどから構成することができる。
【0018】
記憶装置9は、監視カメラ6が撮影した映像データを一時的に記録すると共に、処理装置8における情報処理結果をデータベースの形式で記録・保管するものである。この記憶装置9は、例えば大容量のハードディスクを備えた専用サーバなどから構成することができる。なお、記録装置9は複数台設けるようにしてもよい。
【0019】
上記のRFIDリーダ4、監視カメラ6、処理装置8及び記憶装置9を接続する通信回線7にインターネットを用いることにより、処理装置8や記憶装置9を遠方に設置することが可能となる。
【0020】
このような入退域管理システムにおける処理装置8の情報処理部19の機能を、図5を用いて以下に説明する。
【0021】
まず、監視カメラ6A〜6Cを起動して居室1の入口5の撮影を開始し(S10)、撮影した映像データを通信回線7を通じて記憶装置9に一時的に記録する(S11)。
【0022】
次に、社員2の移動平均速度V及び調整時間Cを外部入力により設定する(S12、S13)。移動平均速度Vとは、社員1が入室する際の平均速度を意味し、通常は徒歩で移動するため4km/h程度を設定すればよい。調整時間Cは、移動平均速度Vの誤差を補正するものである。
【0023】
次に、入口5から数えて何番目のRFIDリーダ4が、RFIDタグ3からの信号から識別情報を最初に読み取ったかを確認し(S14、S15)、そのRFIDリーダ4の入口5からの距離Lを記憶部21から取得する(S16)と共に、読取時刻を時刻管理部20から取得する(S17)。それらの値を以下の(1)式に代入して、社員2が入室した時刻Xを推定する(S18)。
X=T−(L/V+C) -----(1)
【0024】
次に、記憶装置9に一時的に記録された映像データから、入室時刻Xを起点として一定時間の部分をコピーし(S19)、RFIDリーダ4から送信された識別情報と関連付ける(S20)。識別情報に対応する社員データを記憶部21から取得して(S21)、その他のデータと共に記憶装置9のデータベースに記憶する(S22)。
【0025】
図6は、データベースの構造の一例を示す。この例では、識別情報である社員番号に、氏名や所属からなる社員データを対応させると共に推定入退域時刻Xも記録するようにしている。また、映像データは監視カメラ6毎に記録するようにしているが、特定の監視カメラ6の映像データのみを記録するようにしてもよい。
【0026】
そして、所定の期間が経過した後に、記憶装置9に一時的に記録された映像データのうち、現在時刻Tまでの部分を消去する(S23)。
【0027】
このように、RFIDタグ3の識別情報の読み取りを複数のRFIDリーダ4により行うようにしたので、入口5周辺に設置されたRFIDリーダ4によるRFIDタグ3の識別率が大きく低下する場合でも、RFIDタグ3の識別情報を確実に読み取ることができ、かつRFIDタグの位置と読取時間とから入域時刻を推定するようにしているので、例えば社員が急ぎ足で入域するような場合であっても、入域時の映像を取得することができるため、確実に入退域管理を行うことができる。更に、監視カメラが撮影した映像を一時的に記録して、必要な部分のみをコピーして記録し、その他の不要な部分を消去するようにしているため、複数の対象物の入域に対応することができるので入退域管理システムの性能を向上することができると共に、記憶装置を小型化して入退域管理システムの設置コストを低減することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、居室への社員の入退域管理を例に取っているが、パチンコホールにおける遊技台群(通称、「シマ」)のような店舗内での特定区画への店員の入退域管理でもよく、また倉庫へ搬出入される荷物の破損や紛失の管理・記録などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態からなる入退域管理システムの一例である。
【図2】RFIDタグの構成の一例である。
【図3】RFIDリーダの構成の一例である。
【図4】処理装置の構成の一例である。
【図5】処理装置の情報処理部の動作を示すフロー図である。
【図6】データベースの構造の一例である。
【符号の説明】
【0030】
1 居室
2 社員
3 RFIDタグ
4 RFIDリーダ
5 入口
6 監視カメラ
7 通信回線
8 処理装置
9 記憶装置
10 ID記憶部
11 (RFIDタグの)アンテナ
12 送受信部
13 (RFIDリーダの)アンテナ
14 受信部
15 処理部
16 出力部
17 (RFIDリーダの)電源部
18 入出力部
19 情報処理部
20 時刻管理部
21 記憶部
22 (処理装置の)電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の区域に入退域する対象物の移動履歴を記録管理する入退域管理システムであって、
前記対象物の識別情報が記録され、かつ該対象物に付されたRFIDタグと、前記区域の入口から順に配置された複数のRFIDリーダと、該RFIDリーダが配置された周辺を撮影する撮影装置と、該撮影装置が撮影した映像データを記録する記憶装置と、前記複数のRFIDリーダ、撮影装置及び記憶装置に通信回線を介して接続された処理装置と、を備え、
前記複数のRFIDリーダが読み取った前記RFIDタグの識別情報と、前記撮影装置が撮影した映像データとを時系列的に関連付けて、前記記憶装置に記録する入退域管理システム。
【請求項2】
前記複数のRFIDリーダのうち前記RFIDタグの識別情報を最初に読み取ったRFIDタグの前記入口からの距離と読取時刻とを基に、前記対象物が入域した時刻を推定し、前記映像データのうち該入域時刻から一定時間の部分を複写して、前記識別情報と関連付ける請求項1に記載の入退域管理システム。
【請求項3】
前記撮影装置が撮影した映像データを、所定の期間が経過した後に消去するようにした請求項2に記載の入退域管理システム。
【請求項4】
前記複数のRFIDリーダを等間隔に配置した請求項1〜3のいずれかに記載の入退域管理システム。
【請求項5】
互いに隣接する前記RFIDリーダの配置間隔を、前記RFIDタグの通信可能距離の2〜3倍にした請求項4に記載の入退域管理システム。
【請求項6】
前記撮影装置が、視野の一部が互いに重複するように配置された複数の監視カメラからなる請求項1〜5のいずれかに記載の入退域管理システム。
【請求項7】
前記撮影装置が、100万画素以上の高精度カメラである請求項1〜5のいずれかに記載の入退域管理システム。
【請求項8】
前記通信回線がインターネットである請求項1〜7のいずれかに記載の入退域管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−93558(P2009−93558A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265736(P2007−265736)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(500282427)東レインターナショナル株式会社 (27)
【Fターム(参考)】