内燃機関のガス供給装置
【課題】NOx及びスモークの双方の発生を好適に抑制することのできる内燃機関のガス供給装置を提供する。
【解決手段】窒素富化装置18によって生成された新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する気体を酸素富化ガスとする。また、窒素富化装置18によって生成された新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する気体を窒素富化ガスとする。ここで、燃焼室48において、燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側付近の領域に配置されるガスの酸素濃度が上記燃料噴霧の周辺領域のうち上記噴孔とは反対側付近の領域以外の領域に配置されるガスの酸素濃度よりも高くなるように酸素富化ガス及び窒素富化ガスを燃焼室48に供給する構成とする。
【解決手段】窒素富化装置18によって生成された新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する気体を酸素富化ガスとする。また、窒素富化装置18によって生成された新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する気体を窒素富化ガスとする。ここで、燃焼室48において、燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側付近の領域に配置されるガスの酸素濃度が上記燃料噴霧の周辺領域のうち上記噴孔とは反対側付近の領域以外の領域に配置されるガスの酸素濃度よりも高くなるように酸素富化ガス及び窒素富化ガスを燃焼室48に供給する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直噴式内燃機関から排出されるエミッションを抑制する技術としては、下記特許文献1,2に記載されているものが知られている。詳しくは、これら技術は、大気から酸素を一部除去した窒素含有率の高い窒素富化エア(低酸素濃度ガス)を内燃機関の燃焼室に供給するものである。これにより、燃料噴射弁から燃焼室に直接噴射供給される燃料噴霧の外周部分における燃焼を緩慢にして燃焼温度を低下させ、窒素酸化物(NOx)の発生の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4076433号公報
【特許文献2】特開2007−285281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記技術では、NOxの発生を抑制することはできるものの、粒子状物質(スモーク)の発生を適切に抑制することができなくなるおそれがある。これは、燃料噴霧内部の燃料濃度が高い部分が酸素不足の状態で燃焼に供されることによるものである。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、NOx及びスモークの双方の発生を好適に抑制することのできる内燃機関のガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち該燃料噴霧を挟んで前記噴孔とは反対側付近の領域に前記高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、前記燃料噴霧の周辺領域のうち前記高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に前記低水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする。
【0008】
上記発明では、例えば燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧が着火される直前の燃焼室において、燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側(燃料噴霧の先端側)付近の領域に高水準酸素濃度ガスを配置して且つ、燃料噴霧の周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準酸素濃度ガスを配置する。上記態様のガス配置によれば、低水準酸素濃度ガスと隣接する燃料噴霧の外周部分の燃焼が緩慢となって燃焼温度が低下し、NOxの発生が抑制される。この際、燃料噴霧内部の燃料濃度の高い部分の燃焼によってスモークが一旦発生するものの、その後スモークは高水準酸素濃度ガスが配置される燃料噴霧先端側付近に到達する。そして、高水準酸素濃度ガスによってスモークが燃焼に供される。こうした上記発明によれば、NOx及びスモークの双方の発生を好適に抑制することができる。
【0009】
なお、高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの酸素濃度の上述した大小関係を維持しつつ、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも低くなったり、低水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも高くなったりすることがある。これは、供給手段から燃焼室に高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスが供給された後、燃焼室において高酸素濃度ガスと低酸素濃度ガスとが混ざり合うことによるものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の周囲に前記低水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、該配置された低水準酸素濃度ガスの外周に前記高水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする。
【0011】
上記発明では、供給手段を備えることで、燃焼室において、燃料噴射弁の周囲に低水準酸素濃度ガスを配置して且つ、低水準酸素濃度ガスの外周に高水準酸素濃度ガスを配置する。上記態様のガスの配置によれば、その後燃料噴射弁の噴孔から燃料噴射されると、噴射燃料によって燃焼室におけるガス配置が変化する。詳しくは、噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側(燃料噴霧の先端側)付近の領域に高水準酸素濃度ガスが配置され、燃料噴霧の周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準酸素濃度ガスが配置されることとなる。
【0012】
このため、低水準酸素濃度ガスと隣接する燃料噴霧の外周部分の燃焼が緩慢となって燃焼温度が低下し、NOxの発生が抑制される。この際、燃料噴霧内部の燃料濃度の高い部分の燃焼によってスモークが一旦発生するものの、その後スモークは高水準酸素濃度ガスが配置される燃料噴霧先端側付近に到達する。そして、高水準酸素濃度ガスによってスモークが燃焼に供される。こうした上記発明によれば、NOx及びスモークの双方の発生を抑制することができる。
【0013】
なお、高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの酸素濃度の上述した大小関係を維持しつつ、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも低くなったり、低水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも高くなったりすることがある。これは、供給手段から燃焼室に高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスが供給された後、燃焼室において高酸素濃度ガスと低酸素濃度ガスとが混ざり合うことによるものである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記燃焼室の一部の領域であって且つ該燃焼室の中心軸線を通って該中心軸線方向に延びる領域を中心領域とし、前記燃焼室のうち前記中心領域以外の領域を外周領域とし、前記供給手段は、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の吸気ポートであり、前記一対の吸気ポートのうち前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記中心領域に前記低酸素濃度ガスを供給するものであり、前記一対の吸気ポートのうち前記高酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記外周領域に前記高酸素濃度ガスを供給するものであることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、上記態様の一対の吸気ポートによって燃焼室に高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスのそれぞれを供給することで、その後燃焼室において、燃料噴射弁の周囲に低水準酸素濃度ガスを配置して且つ、低水準酸素濃度ガスの外周に高水準酸素濃度ガスを配置することができる。このため、その後、燃料噴射弁の噴孔から燃料噴霧が噴射される状況下において、噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側付近の領域に高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、燃料噴霧の周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準濃度酸素ガスが配置されることとなる。
【0016】
なお、中心領域に供給された低酸素濃度ガスと、外周領域に供給された高酸素濃度ガスとの混ざり合いが大きいと、NOx及びスモークの発生を抑制するための適切な高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの配置がなされないおそれがある。こうした事態の発生を抑制すべく、燃焼室に供給される高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスの圧力比率(低酸素濃度ガスの圧力/高酸素濃度ガスの圧力)を0.7〜1.3の範囲内とすることが望ましい。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に該低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に前記高酸素濃度ガスを供給させる割込供給手段を更に備えることを特徴とする。
【0018】
一対の吸気ポートのそれぞれから高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスのそれぞれが燃焼室に供給される状況下、燃焼室の下部(燃焼室を区画形成するピストンの上面付近)において、中心領域の低酸素濃度ガスと外周領域の高酸素濃度ガスとが混ざることがある。この場合、NOx及びスモークの発生を抑制するための適切なガス配置がなされないおそれがある。
【0019】
この点、上記発明では、低酸素濃度ガスが流れる吸気ポートから燃焼室に低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、低酸素濃度ガスが流れる吸気ポートから高酸素濃度ガスを供給させる。このため、燃焼室の下部における中心領域に高酸素濃度ガスを配置させることができ、燃焼室の下部において高酸素濃度ガスと低酸素濃度ガスとが混ざることを抑制することができる。これにより、NOx及びスモークの発生を抑制するための高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの適切な配置を実現することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記割込供給手段は、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに前記高酸素濃度ガスを噴射供給するものであり、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートのうち前記割込供給手段によって前記高酸素濃度ガスが噴射供給される位置よりも上流側の流路面積を調節する流路面積調節手段と、前記内燃機関の吸気バルブの閉弁期間において、前記流路面積調節手段によって前記流路面積を絞りつつ前記割込供給手段から前記高酸素濃度ガスを噴射供給すべく、前記流路面積調節手段及び前記割込供給手段を操作する操作手段とを更に備えることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、吸気バルブの閉弁期間において、上記態様にて流路面積調節手段及び割込供給手段を操作することで、吸気バルブの開弁に先立ち、上記吸気ポートのうち燃焼室に隣接する領域に高酸素濃度ガスを配置させるとともに、高酸素濃度ガスの配置領域の上流側に隣接させて低酸素濃度ガスを配置させる。このため、上記吸気ポートにおいて、噴射供給された高酸素濃度ガスと、低酸素濃度ガスとが混ざることを抑制することができる。これにより、その後吸気バルブが開弁される状況下、低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから燃焼室に低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、同吸気ポートから高酸素濃度ガスを適切に供給することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される分離装置を更に備え、前記分離装置は、該分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、分離装置を備えることで、新気から低酸素濃度ガス及び高酸素濃度ガスのそれぞれを適切に生成することができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記内燃機関から排出される排気の一部を外部EGRとして前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに還流させるEGR手段と、前記分離装置から供給される前記低酸素濃度ガスの量が不足すると判断されることに基づき、前記分離装置から供給される低酸素濃度ガスに加えて、前記EGR手段によって還流された外部EGRを前記燃焼室に供給させる手段とを更に備えることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、燃焼室に供給すべき低酸素濃度ガス量が不足する場合であっても、この不足分を、新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する外部EGRによって補償することなどができる。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の発明において、前記供給手段は、前記分離装置によって生成される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の供給通路であり、前記一対の供給通路のうち前記低酸素濃度ガスを供給する通路と、前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路とを接続する連通通路と、前記連通通路に設けられて且つ該連通通路の流路面積を調節する第1の流路面積調節手段と、前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路と、前記分離装置に新気を供給する通路とを接続する新気供給通路と、前記新気供給通路に設けられて且つ該新気供給通路の流路面積を調節する第2の流路面積調節手段と、前記内燃機関の負荷が急増する又は該内燃機関の負荷が高いと判断された場合、前記第1の流路面積調節手段によって前記連通通路の流路面積を増大させる処理、及び前記第2の流路面積調節手段によって前記新気供給通路の流路面積を増大させる処理を行う増大手段とを更に備えることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、上記態様の一対の供給通路、連通通路、新気供給通路、及び第1,第2の流路面積調節手段を備えている。ここで、内燃機関への供給燃料を燃焼させるために要求される酸素量が不足しやすい状況においては、燃焼室に酸素を適切に供給することが望まれる。この点、上記発明では、第1,第2の流路面積調節手段を上記態様にて操作することで、一対の供給通路のうち低酸素濃度ガスを供給する通路を介して燃焼室に供給される気体の流量及び酸素濃度を増大させる。すなわち、一対の供給通路のうち高酸素濃度ガスを供給する通路のみならず低酸素濃度ガスを供給する通路をも用いることで、燃焼室に供給する酸素量を極力多くする。このため、酸素量が不足しやすい状況において燃焼室に酸素を適切に供給することができる。
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される複数の分離装置を更に備え、前記分離装置は、前記分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであり、前記内燃機関の負荷が高いほど、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスの生成に用いる前記分離装置の数を増大させる手段を更に備えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、内燃機関の負荷に応じて、燃焼室に供給すべき低酸素濃度ガス及び高酸素濃度ガスを適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる分離装置を示す図。
【図3】同実施形態にかかる分離部材を示す図。
【図4】同実施形態にかかるエンジン近傍の構成を示す図。
【図5】同実施形態にかかる吸気ポート近傍の拡大図。
【図6】同実施形態にかかる燃焼室の窒素富化ガス及び酸素富化ガスの分布を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図8】同実施形態にかかるガス噴射弁及び吸気制御弁の動作態様を示す図。
【図9】同実施形態にかかるガス噴射弁及び吸気制御弁の動作態様を示す図。
【図10】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図11】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図12】第5の実施形態にかかる分離装置を示す図。
【図13】同実施形態にかかる窒素富化装置の作動状態を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置を多気筒圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)を備える車載コモンレールシステムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0033】
図示されるように、吸気通路10には、上流側から順に、エアクリーナ12及び後述するターボチャージャ14によって過給された空気(新気)を冷却するインタークーラ16が設けられている。
【0034】
吸気通路10のうちインタークーラ16の下流側は、窒素富化装置18に接続されている。窒素富化装置18は、分離装置20、真空ポンプ22、N2制御弁24及びO2制御弁26等を備えて構成されている。窒素富化装置18は、分離装置20の備える分離部材における新気中の各気体の透過速度の差異を利用して、新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する気体である窒素富化ガス(低酸素濃度ガスに相当)と、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する気体である酸素富化ガス(高酸素濃度ガスに相当)とを生成する機能を有する。
【0035】
詳しくは、吸気通路10のうちインタークーラ16の下流側は、分離装置20の入口部28に接続されている。分離装置20のうち窒素富化ガスが流出するN2出口部30は、N2供給通路32を介して窒素富化ガスが供給されるサージタンク(N2サージタンク34)に接続されている。N2供給通路32には、この通路の流路面積を調節する上記N2制御弁24が設けられている。N2制御弁24は、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。
【0036】
分離装置20のうち酸素富化ガスが流出するO2出口部36は、O2供給通路38を介して酸素富化ガスが供給されるサージタンク(O2サージタンク40)に接続されている。
【0037】
O2供給通路38には、上記真空ポンプ22が設けられている。真空ポンプ22は、分離装置20のうちO2出口部36側の空間を減圧する(負圧に維持する)ための電子制御式の機器であり、上記O2出口部36側の減圧度合いを調節可能な機能を有している。
【0038】
O2供給通路38のうち真空ポンプ22の下流側であって且つO2サージタンク40の上流側と、吸気通路10のうちインタークーラ16の下流側とは、新気供給通路42によって接続されている。新気供給通路42には、この通路の流路面積を調節する上記O2制御弁26が設けられている。O2制御弁26は、N2制御弁24と同様に、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。
【0039】
ここで、図2を用いて、窒素富化装置18の備える分離装置20について詳述する。
【0040】
図示されるように、分離装置20は、複数の分離部材20a(膜モジュール)及び複数の隔壁20bを備えて構成されている。分離装置20において、入口部28とN2出口部30とは、分離部材20a及び隔壁20bによって形成されたつづら折り状の通路でつながっている。また、上記入口部28とO2出口部36との間には、分離部材20aが介在している。
【0041】
ここで、本実施形態では、分離部材20aとして、酸素富化膜を想定している。以下、図3を用いて、酸素富化膜について説明する。なお、図3(a)は、先の図2における分離部材20aのA−A断面図であり、図3(b)は、分離部材20aの一部を拡大した斜視図である。
【0042】
図3(a)に示すように、酸素富化膜(分離部材20a)は、膜本体201及び支持体202からなる部材である。詳しくは、膜本体201は、その厚さが数十〜数百nmの部材であり、窒素分子よりも酸素分子を速やかに透過させる機能を有する。すなわち、気体の透過の早さを表す指標である透過係数を用いて説明すると、膜本体201は、酸素分子の透過係数Qoが窒素分子の透過係数Qnよりも高くなるように構成されてなる部材である。
【0043】
ちなみに、透過係数が高いほど、単位時間あたりに膜本体を透過する気体の流量が多くなる。また、この透過流量は、高圧側(入口部28側)及び低圧側(O2出口部36側)の圧力差が大きいほど多くなる傾向にある。さらに、本実施形態では、酸素富化膜として、新気中の窒素に対する酸素の分離係数「Qo/Qn」が3以上のものを想定している。
【0044】
支持体202は、膜本体201のうち入口部28側とO2出口部36側との差圧によって膜本体201が損傷することを防止するための部材であり、その厚さが数十μmである。支持体202には、膜本体201を透過した気体を速やかにO2出口部36側に導くべく、支持体202の厚さ方向に連通する数十〜数百nmの楔形状の孔203が多数形成されている(図3(b)参照)。
【0045】
先の図2の説明に戻り、分離部材20aのO2出口部36側(下流側)は、真空ポンプ22によって上記つづら折り状の通路側(上流側)よりも圧力が低くされている。こうした状況下において、O2入口部28から分離装置20内に導入された新気が分離部材20a及び隔壁20bによって形成されたつづら折り状の通路を通る間に、新気中の酸素が窒素よりも多く分離部材20aを透過してO2出口部36側へと流出する。これにより、O2出口部36からは上記酸素富化ガスが流出し、N2出口部30からは上記窒素富化ガスが流出する。
【0046】
先の図1の説明に戻り、N2サージタンク34は、吸気ポートとしてのストレートポート44と、吸気バルブとを介してエンジン46の各気筒の燃焼室48(図中、1の気筒の燃焼室を例示)につながっている。ここで、ストレートポート44は、燃焼室48に吸気を直進させて流入させる形状をなしている。なお、以降、本実施形態において、上記吸気とは、新気、酸素富化ガス及び窒素富化ガスのうち少なくとも1つのことをいう。
【0047】
一方、O2サージタンク40は、吸気ポートとしてのスワールポート50と、吸気バルブとを介して燃焼室48につながっている、ここで、スワールポート50は、燃焼室48にスワール流を形成可能な形状をなしている。
【0048】
次に、図4を用いて、本実施形態にかかるエンジン46近傍の構成について説明する。なお、図中、1の気筒についてのみ示している。
【0049】
図示されるエンジン46は、吸気・圧縮・膨張・排気行程を1燃焼周期(720℃A)とする4ストロークレシプロ式の多気筒圧縮着火式内燃機関であり、シリンダ52、ピストン54及びシリンダヘッド56を備えて構成されている。
【0050】
詳しくは、シリンダ52、ピストン54の上面(シリンダヘッド56に対向する面)及びシリンダヘッド56によって略円柱形状の燃焼室48が区画形成されている。ピストン54の上面には、キャビティ54aが形成されている。本実施形態では、キャビティ54aとして、ピストン54の上面に窪み形状を有しつつ、ピストン54の径方向において燃焼室48の中心軸線LA(図中一点鎖線)に近づくほど隆起する部分を有する形状を想定している。ここで、燃焼室48の中心軸線LAとは、シリンダ52のボアの中心を通って且つピストン54の動作方向(図中、上下方向)に延びる軸線のことをいう。
【0051】
エンジン46の各気筒の燃焼室48には、複数の噴孔58aを有する電磁駆動式の燃料噴射弁58が設けられている。詳しくは、燃料噴射弁58は、これら噴孔58aが燃焼室48の上側(シリンダヘッド56側)であって且つ燃焼室48の中心軸線LA近傍に突出するように配置されている。また、燃料噴射弁58には、図示しない蓄圧容器(コモンレール)から高圧の燃料(軽油)が供給され、燃料噴射弁58から燃焼室48に高圧の燃料が噴射供給される。具体的には、燃料噴射弁58は、圧縮上死点近傍において、ピストン54の上面であって且つキャビティ54aの端部付近に向かって燃料噴霧を噴射する。
【0052】
エンジン46の各気筒の吸気ポート44,50及び排気ポート60のそれぞれは、一対の吸気バルブ62及び一対の排気バルブ64のそれぞれによって開閉される。ここでは、一対の吸気バルブ62同士の開閉タイミングは同一であり、一対の排気バルブ64同士の開閉タイミングも同一である。吸気バルブ62の開弁によって吸気が燃焼室48に導入され、導入された吸気と、燃料噴射弁58から噴射された燃料噴霧とが燃焼に供される。なお、燃焼に供された吸気及び燃料は、排気バルブ64の開弁によって排気として排気ポート60に排出される。
【0053】
図1の説明に戻り、吸気通路10と、排気ポート60とつながる排気通路66との間には、上記ターボチャージャ14が設けられている。ターボチャージャ14は、吸気通路10に設けられた吸気コンプレッサ14aと、排気通路66に設けられた排気タービン14bと、これらを連結する回転軸14cとを備えて構成されている。詳しくは、排気通路66を流れる排気のエネルギによって排気タービン14bが回転し、その回転エネルギが回転軸14cを介して吸気コンプレッサ14aに伝達され、吸気コンプレッサ14aによって吸気が過給される。なお、ターボチャージャ14としては、例えば、吸気の過給圧を調節可能なもの(可変ベーン式のもの)を採用することができる。
【0054】
O2サージタンク40は、導管68によってストレートポート44と接続されており、より詳しくは、ストレートポート44のうち燃焼室48に近い側に接続されている。導管68には、O2サージタンク40側から順に、圧縮機70と、ガス噴射弁72とが設けられている。圧縮機70は、O2サージタンク40から供給される酸素富化ガスをガス噴射弁72に対して加圧供給するための機器である。また、ガス噴射弁72は、加圧供給された酸素富化ガスをストレートポート44内に噴射供給する電磁駆動式の弁体である。本実施形態では、ガス噴射弁72として、この噴射弁の有する電磁ソレノイドへの通電により開弁し、電磁ソレノイドへの通電の停止によって閉弁するノーマリクローズ式のものを想定している。
【0055】
電子制御装置(以下、ECU74)は、コモンレールシステムの各種制御に必要な各種アクチュエータを操作する制御装置である。ECU74は、N2サージタンク34内の圧力を検出するN2圧力センサ76や、O2サージタンク40内の圧力を検出するO2圧力センサ78、ユーザのアクセルペダルの操作量(アクセル操作量)を検出するアクセルセンサ80、更にはエンジン46の図示しない出力軸(クランク軸)の回転角度を検出するクランク角度センサ82等の検出信号を逐次入力する。ECU74は、これらの入力信号に基づき、燃料噴射弁58による燃料噴射制御処理や、ガス生成処理等のエンジン46の燃焼制御を行う。
【0056】
上記燃料噴射制御処理について説明すると、まず、クランク角度センサ82の出力値に基づくエンジン回転速度と、アクセルセンサ80の出力値に基づくアクセル操作量とから、エンジン46の要求トルクを算出する。ここでは通常、アクセル操作量が大きいほど、エンジン46の要求トルクを大きく設定する。そして、設定されたエンジン46の要求トルクに基づき燃料噴射弁58の指令値を算出し、この指令値に基づき燃料噴射弁58を通電操作する。これにより、上記指令値に相当する量の燃料が、圧縮行程の後半から膨張行程の前半までの期間(例えば圧縮上死点近傍のタイミング)において燃料噴射弁58から噴射される。
【0057】
上記ガス生成処理は、真空ポンプ22、N2制御弁24及びO2制御弁26を通電操作することで、N2サージタンク34に供給される窒素富化ガスの流量及び酸素濃度と、O2サージタンク40に供給される酸素富化ガスの流量及び酸素濃度とを所望の値に調節する処理となる。
【0058】
詳しくは、窒素富化ガスの流量は、N2制御弁24の開度が大きくなるほど多くなる傾向にあり、窒素富化ガスの酸素濃度は、N2制御弁24の開度が小さくなったり、O2出口部36側(O2供給通路38側)の圧力が低くなったり(分離部材20aの前後差圧が大きくなったり)するほど低くなる傾向にある。また、酸素富化ガスの流量は、O2制御弁26の開度が大きくなったり、O2出口部36側の圧力が低くなったりするほど多くなる傾向にあり、酸素富化ガスの酸素濃度は、O2出口部36側(O2供給通路38側)の圧力が低くなったり(分離部材20aの前後差圧が大きくなったり)、O2制御弁26の開度が小さくなったりするほど高くなる傾向にある。本実施形態では、新気の酸素濃度を約21%とすると、上記ガス生成処理によって、窒素富化ガスの酸素濃度を5〜20%の範囲で調節し、酸素富化ガスの酸素濃度を22〜30%の範囲で調節する。
【0059】
なお、ECU74は、N2圧力センサ76及びO2圧力センサ78の検出値に基づき各吸気ポートに流入する吸気量を推定する処理と、N2制御弁24、O2制御弁26及び真空ポンプ22の通電操作によって上記推定された吸気量を目標値に調節する処理とを併せて行う。
【0060】
こうしたシステム構成において、本実施形態では、エンジン46からのNOx及びスモークの双方の発生を抑制すべく、燃焼室48における酸素富化ガス及び窒素富化ガスの配置を適切なものとしている。以下、これについて説明する。
【0061】
まず、図5(a)を用いて、本実施形態にかかるストレートポート44及びスワールポート50のそれぞれからの吸気の供給態様について説明する。なお、図中、ガス噴射弁72の一部及び排気ポート60の図示を省略している。
【0062】
図示されるように、燃焼室48のうち燃焼室48の半径(シリンダ52のボアの半径)よりも小さい半径を有して且つ中心軸線LA方向に延びる略円柱状の領域を中心領域48a(図中、2点鎖線にて囲まれる領域)と定義し、燃焼室48のうち中心領域48a以外の略円環状の領域を外周領域48bと定義する。本実施形態では、円柱状の中心領域48aの中心軸線は、燃焼室48の中心軸線LAと一致している。
【0063】
ストレートポート44は、直線的な流れによって中心領域48aに吸気を充填し、スワールポート50は、スワールによって吸気を外周領域48bに充填する。
【0064】
続いて、図5(b)を用いて、本実施形態にかかる酸素富化ガス割込供給処理について説明する。この処理は、吸気バルブ62の開弁期間において、ストレートポート44から燃焼室48に窒素富化ガスを供給するに先立ち、ストレートポート44から酸素富化ガスを供給させるべくガス噴射弁72を通電操作する処理である。
【0065】
詳しくは、図5(b)に示すように、吸気バルブ62の閉弁期間において、ガス噴射弁72の開弁によってストレートポート44のうち燃焼室48(吸気バルブ62)に隣接する領域に酸素富化ガスを加圧供給することで、上記燃焼室48に隣接する領域に酸素富化ガスを配置させる。
【0066】
上記割込供給処理を行うと、ストレートポート44において、このポートのうち燃焼室48に隣接する領域に酸素富化ガスが配置されて且つ、酸素富化ガスの配置される領域に隣接する上流側の領域に窒素富化ガスが配置されることとなる。そして、吸気行程において吸気バルブ62が開弁されることで、酸素富化ガス及び窒素富化ガスの順に、ストレートポート44から燃焼室48の中心領域48aに充填されることとなる。
【0067】
次に、上述した手法によって燃焼室48に吸気(酸素富化ガス及び窒素富化ガス)を供給した後の燃焼室48におけるガスの挙動の推移について図6を用いて説明する。詳しくは、図6(a)に、圧縮行程における吸気バルブ62の閉弁タイミング(圧縮上死点前130℃A)におけるガスの分布を示し、図6(b)に、圧縮上死点前60℃Aにおけるガスの分布を示し、図6(c)に、圧縮上死点におけるガスの分布を示す。なお、図6は、燃焼室48の中心軸線LAに平行であって且つこの中心軸線LAを通る平面でエンジン46を切断した場合における燃焼室48近傍の断面図である。また、図6に示すガス分布は、本発明者らの実施したCAE解析によって調べられたものである。
【0068】
まず、図6(a)に示すように、燃焼室48において、燃料噴射弁58の噴孔の周囲に低水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、低水準酸素濃度ガスの外周に高水準酸素濃度ガスが配置される。すなわち、中心領域48aのうち、燃焼室48の下部(ピストン54の上面付近)に高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、燃焼室48の上部に低水準酸素濃度ガスが配置される。また、低水準酸素濃度ガスがその周りを取り巻くように分布することとなる。
【0069】
ここで、高水準酸素濃度ガスとは、酸素富化ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスのことであり、低水準酸素濃度ガスとは、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ窒素富化ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスのことをいう。そして、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が低水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも高い関係を維持しつつ、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも低くなったり、低水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも高くなったりすることがある。これは、吸気ポート44,50から燃焼室48に酸素富化ガス及び窒素富化ガスが供給された後、例えばガスの流動やピストン54の上昇に伴って、燃焼室48において酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざり合うことによるものである。ちなみに、高水準酸素濃度ガスが配置される領域における酸素濃度や、低水準酸素濃度ガスが配置される領域における酸素濃度は、必ずしも均一となるわけではない。
【0070】
なお、本実施形態では、燃焼室48の容積の「2/3」が低水準酸素濃度ガスで満たされている。
【0071】
次に、同図(b)に示すように、ピストン54の上昇によって高水準酸素濃度ガスと低水準酸素濃度ガスとは大きく混ざり合うことなく上下に圧縮される。
【0072】
そして、同図(c)に示すように、燃料噴射弁58の噴射タイミングにおいては、キャビティ54aのうち中心軸線LA付近p1に酸素濃度が低い低水準酸素濃度ガスが多く分布し、キャビティ54aの底部p2と、ピストン54の上面及びシリンダヘッド56に囲まれた部分p3には高水準酸素濃度ガスが多く分布する。
【0073】
こうしたガスの配置において、燃料噴射弁58から燃料噴霧Gが噴射されると、燃料噴霧Gの周辺領域のうち燃料噴霧Gを挟んで噴孔とは反対側付近p2,p3の領域に高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、燃料噴霧Gの周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準酸素濃度ガスが配置されることとなる。そして、燃料噴霧の自着火燃焼が開始されると、低水準酸素濃度ガスと隣接する燃料噴霧Gの外周部分の燃焼が緩慢となって燃焼温度が低下し、NOxの発生が抑制される。また、燃料噴霧Gの先端部(ピストン54の上面付近)の高水準酸素濃度ガスによって先端部の燃焼を促進させてスモークの発生を抑制する。さらに、この際、燃料噴霧G内部の燃料濃度の高い部分の燃焼によってスモークが一旦発生するものの、その後スモークは、高水準酸素濃度ガスが配置されるキャビティ54aの底部p2や、ピストン54の上面とシリンダヘッド56とで囲まれた部分p3に燃焼期間の後期に到達する。そして、高水準酸素濃度ガスによってスモークの燃焼が促進される。したがって、NOx及びスモークの双方の発生を抑制することができる。
【0074】
ちなみに、燃焼室48に流入する窒素富化ガス及び酸素富化ガスの圧力比率(窒素富化ガスの圧力/酸素富化ガスの圧力)を略0.7〜1.3の範囲内とすることが望ましい。これは、N2圧力センサ76及びO2圧力センサ78の検出値から算出される上記圧力比率を上記範囲内で設定した圧力比率の目標値に制御するようにN2制御弁24及びO2制御弁26等を通電操作する処理となる。これにより、燃焼室48において窒素富化ガスと酸素富化ガスとが大きく混ざり合うことを抑制することができ、NOx及びスモークを抑制するための図6(c)に示すようなガス配置を適切に実現することができる。
【0075】
また、本実施形態にかかる燃焼室48の形状(キャビティ54aの形状等)において、上記酸素富化ガス割込供給処理を行わない場合には、図6(a)のガス分布を実現することができなくなるおそれが大きい。これは、中心領域48aのうち燃焼室48の下部に低水準酸素濃度ガスが配置されることに起因して、その後燃焼室48の圧縮によって図6(c)のガス分布を実現できなくなることによるものである。
【0076】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0077】
(1)ストレートポート44によって燃焼室48の中心領域48aに窒素富化ガスを供給するとともに、スワールポート50によって燃焼室48の外周領域48bに酸素富化ガスを供給した。ここでは、酸素富化ガス割込供給処理によってストレートポート44から窒素富化ガスを供給するに先立ち、このポートから酸素富化ガスを供給した。これにより、NOx及びスモークの双方を好適に抑制することができる。
【0078】
さらに、上記燃焼手法によれば、着火時期を進角させることに伴うNOx生成量を抑制することができ、着火時期(燃料噴射時期)の進角によってエンジン46の熱効率を上昇させ、エンジン46の単位生成トルク当たりに要求される燃料消費量の増大を抑制することもできる。
【0079】
(2)上記態様の窒素富化装置18を備えるシステム構成とした。これにより、新気から窒素富化ガス及び酸素富化ガスを適切に生成することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0081】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0082】
図示されるように、ストレートポート44のうち導管68の接続部よりも上流側には、ストレートポート44の流路面積を調節する吸気制御弁83が設けられている。吸気制御弁83は、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。この制御弁は、ECU74によって通電操作される。
【0083】
次に、図8及び図9を用いて、本実施形態にかかる酸素富化ガス割込供給処理について説明する。
【0084】
本実施形態にかかる上記割込供給処理によれば、ストレートポート44にガス噴射弁72から酸素富化ガスを噴射供給することに伴い、噴射供給された酸素富化ガスとその上流側の窒素富化ガスとが混ざり合うことを適切に抑制することが可能となる。
【0085】
詳しくは、図8に示すように、圧縮行程の吸気バルブ62が閉弁される時刻t1において、ガス噴射弁72が閉弁されて且つ、吸気制御弁83が全開(ストレートポート44の流路面積が最大)とされている(図9(a)参照)。
【0086】
その後、時刻t2においてガス噴射弁72の開弁指令がなされ、時刻t3においてガス噴射弁72が開弁されることでストレートポート44への酸素富化ガスの噴射供給が開始される。なお、本実施形態では、ガス噴射弁72として、上記開弁指令がなされてからこの噴射弁が開弁するまでの応答時間を5msec以下のものを想定している。
【0087】
ガス噴射弁72が開弁すると、少し遅れた時刻t4において、吸気制御弁83によってストレートポート44の流路面積が全開時の流路面積よりも小さい値に維持される。詳しくは、吸気制御弁83の開度が半開に維持される。これにより、噴射供給された酸素富化ガスによって窒素富化ガスが吸気制御弁83の上流側に押し戻される(図9(b)参照)。ちなみに、吸気制御弁83を半開とする設定は、ストレートポート44において酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざることを抑制するためのものである。つまり、ガス噴射弁72から酸素富化ガスが噴射供給される状況下において吸気制御弁83が全開とされると、ストレートポート44に噴射供給された酸素富化ガスが吸気制御弁83よりも上流側に移動しやすくなり、酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざるおそれが大きくなる。
【0088】
その後、窒素富化ガスの大部分が押し戻される時刻t5において吸気制御弁83が閉弁されることで、ストレートポート44のうち吸気バルブ62及び吸気制御弁83の間の空間に酸素富化ガスが閉じ込められることとなる(図9(c)参照)。
【0089】
その後、時刻t6においてガス噴射弁72が閉弁されてストレートポート44への酸素富化ガスの噴射供給が停止されるとともに、吸気制御弁83に対する全開指令がなされる。そして、時刻t7において吸気制御弁83が全開とされる。なお、本実施形態では、吸気制御弁83として、上記全開指令がなされてからこの制御弁が全開するまでの応答時間を5msec以下のものを想定している。
【0090】
このように、本実施形態では、上記態様の酸素富化ガス割込供給処理を行うことで、ストレートポート44において酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざり合うことを好適に抑制することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図10において、先の図7に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0093】
図示されるように、排気通路66のうちターボチャージャ14の上流側は、排気還流通路(EGR通路84)及びEGR分配器85を介して、ストレートポート44のうち吸気制御弁83の上流側に接続されている。
【0094】
EGR通路84には、同通路の流路面積を調節する電子制御式の弁体であるEGRバルブ86と、EGRクーラ87とが設けられている。このEGRバルブ86の開度に応じて、排気通路66に排出された排気の一部(外部EGR)が、EGRクーラ87によって冷却された後にEGR分配器85を介して各気筒に対応するストレートポート44に供給される。なお、EGR分配器85は、各気筒のストレートポート44に外部EGRを均等に分配するための部材である。また、本実施形態において、以降、上記吸気とは、新気、酸素富化ガス、窒素富化ガス及び外部EGRのうち少なくとも1つのことをいう。
【0095】
ECU74は、エンジン46の運転状態に応じて定まる窒素富化ガスの要求量が、窒素富化装置18によって実際に生成可能な窒素富化ガス量αを上回るか否かを判断する。そして、上記要求量が上記窒素富化ガス量αを上回ると判断された場合、窒素富化ガス量が不足すると判断し、この不足分に相当する外部EGRをストレートポート44に供給すべく、EGRバルブ86を通電操作するEGR供給処理を行う。この処理は、NOx及びスモークの双方を抑制するための適切な窒素富化ガスの配置が実現できなくなることを回避するための処理である。
【0096】
ちなみに、上記第1の実施形態と同様に、燃焼室48に流入する窒素富化ガス及び外部EGRの混合ガスと酸素富化ガスとの圧力差を略0とすることが望ましい。ここで、上記混合ガスの圧力は、例えば、ストレートポート44のうちEGR分配器85の接続点よりも下流側に圧力センサを設け、このセンサの検出値に基づき把握すればよい。
【0097】
このように、本実施形態では、上記EGR供給処理を行うことで、窒素富化装置18による窒素富化ガスの生成量が不足する場合であっても、この不足分を適切に補償することができる。したがって、NOx及びスモークの双方の発生を適切に抑制することができる。
【0098】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図11において、先の図10に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0100】
図示されるように、N2供給通路32とO2供給通路38とは、連通管88によって接続されている。連通管88には、この通路の流路面積を調節する連通制御弁90が設けられている。連通制御弁90は、上記N2制御弁24等と同様に、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。
【0101】
ECU74は、エンジン46が通常の運転状態(エンジン46の負荷が急増する状態及びエンジン46の負荷が高い状態以外の運転状態)であると判断された場合、連通制御弁90を閉弁させる処理を行う。ここで、エンジン46の負荷が急増したか否かは、例えばエンジン46の要求トルクの上昇速度が所定以上であるか否かで判断すればよい。また、エンジン46の負荷が高い状態であるか否かは、例えば上記要求トルクが規定トルク以上であるか否かで判断すればよい。
【0102】
一方、エンジン46の負荷が急増する状態又はエンジン46の負荷が高い状態であると判断された場合には、燃焼室48に供給する酸素量を増大させるべく、N2制御弁24、O2制御弁26及び連通制御弁90を通電操作する酸素濃度上昇処理を行う。詳しくは、N2制御弁24を閉弁(N2制御弁24によってN2出口部30とN2サージタンク34との間を遮断)させるとともに、O2制御弁26及び連通制御弁90を開弁させる。この処理は、スモークの増大を抑制するための処理である。
【0103】
つまり、エンジン46が低負荷運転される状態からエンジン46が高負荷運転される状態へと短時間に移行する(車両の加速時)等、エンジン46の負荷が急増する状況下においては、ターボチャージャ14によって過給度合いが増大されてからその影響が燃焼室48に供給される吸気圧に現れるまでに応答遅れ(吸気後れ)を伴う。この吸気遅れに起因して、エンジン46の要求トルクに応じた燃料噴射量に対して吸気量が不足する事態が生じ得る。この場合、燃料噴霧が酸素不足の状態で燃焼に供されることとなり、スモークが増大するおそれがある。
【0104】
このため、上記処理を行うことで、ストレートポート44及びスワールポート50の双方から燃焼室48へと酸素富化ガス及び新気の混合ガスを供給し、燃焼室48に供給される吸気の酸素濃度を極力上昇させる。これにより、吸気遅れに伴うスモークの増大を抑制する。
【0105】
なお、エンジン46の負荷が高い場合に上記処理を行うことで、スモークの発生を抑制できるのは、燃焼室48全体の酸素濃度を極力上昇させることでスモークの再燃焼を促進することができるためである。
【0106】
このように、本実施形態では、上記酸素濃度上昇処理を行うことで、エンジン46の負荷の急増時等におけるスモークの発生を好適に抑制することができる。さらに、スモークの発生を燃料噴射量の低減量を極力抑制しつつ実現することができるため、車両の加速時におけるエンジン46の生成トルクが不足する事態の発生を抑制することなども期待できる。
【0107】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0108】
図12に、本実施形態にかかる窒素富化装置18のうち主に分離装置の部分を示す。
【0109】
図示されるように、窒素富化装置18は、第1の分離装置92a及び第2の分離装置92bを備えて構成されている。ここで、これら分離装置92a,92bの構造は、上記第1の実施形態に示した分離装置と同様である。
【0110】
吸気通路10のうち新気供給通路42の下流側は、第1の分離装置92aの入口部(第1入口部94a)に接続されている。第1の分離装置92aのうち窒素富化ガスが流出する出口部(第1N2出口部96a)は、第1N2供給通路32aを介してN2サージタンク34に接続されている。
【0111】
第1の分離装置92aのうち酸素富化ガスが流出する出口部(第1O2出口部98a)は、第1O2供給通路38aを介して真空ポンプ22に接続されている。第1O2供給通路38aのうち真空ポンプ22の上流側には、N2制御弁24と同様の機能を有する調節弁100が設けられている。
【0112】
一方、吸気通路10のうち新気供給通路42の下流側は、さらに、第2の分離装置92bの入口部(第2入口部94b)に接続されている。第2の分離装置92bのうち窒素富化ガスが流出する出口部(第2N2出口部96b)は、第2N2供給通路32bを介して第1N2供給通路32aのうちN2制御弁24の下流側に接続されている。
【0113】
第2の分離装置92bのうち酸素富化ガスが流出する出口部(第2O2出口部98b)は、第2O2供給通路38bを介して、第1O2供給通路38bのうち真空ポンプ22よりも上流側であって且つ調節弁100よりも下流側に接続されている。
【0114】
ECU74は、エンジン46の負荷(要求トルク)に応じて、酸素富化ガス及び窒素富化ガスの生成に用いる分離装置の使用数を切り替えるべく、N2制御弁24及び調節弁100を通電操作する処理を行う。
【0115】
詳しくは、図13に示すように、エンジン46の負荷が低い水準であると判断された場合、調節弁100及びN2制御弁24の双方を閉弁させる。これにより、第1の分離装置92aに新気が供給されず、この装置によって酸素富化ガス及び窒素富化ガスが生成されなくなる。すなわち、富化ガスの生成に用いる酸素富化膜の面積を減少させるとともに、第2の分離装置92bの酸素富化膜の下流側の負圧を高くすることで、第1,第2の分離装置92a,92bの双方を使用する場合と比較して、より酸素濃度の高い酸素富化ガスを適切に生成する。
【0116】
一方、エンジン46の負荷が高い水準であると判断された場合、N2制御弁24及び調節弁100の双方を開弁させる。これにより、第1,第2の分離装置92a,92bを用い、大量の酸素富化ガスを適切に生成する。
【0117】
ちなみに、エンジン46の負荷が低い水準であるか否かは、例えば、エンジン46が低速低負荷で運転されているか否かや、吸気通路10を流れる新気量が規定量よりも少ないか否かに基づき判断すればよい。また、エンジン46の負荷が高い水準であるか否かは、例えば、エンジン46が中速中負荷で運転されているか否かや、吸気通路10を流れる新気量が上記規定量以上であるか否かで判断すればよい。
【0118】
このように、本実施形態では、エンジン46の負荷に応じて窒素富化装置18の備える分離装置の使用数を切り替えることで、エンジン46の運転状態に応じた酸素富化ガス及び窒素富化ガスを確保することができる。すなわち、エンジン46の運転状態に応じて、窒素富化ガスの流量及び酸素濃度と、酸素富化ガスの流量及び酸素濃度の設定自由度を向上させることができる。
【0119】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0120】
・上記各実施形態では、窒素富化装置18の分離部材を酸素富化膜によって構成したがこれに限らない。例えば、分離部材を、ポリイミド樹脂等からなる中空糸状の高分子膜(中空糸膜)を束にしたものによって構成してもよい。この場合であっても、中空糸膜に対する各気体の透過速度の差異を利用して、酸素富化ガス及び窒素富化ガスを生成することができる。
【0121】
また、酸素富化ガス及び窒素富化ガスを生成する手法としては、膜における各気体の透過速度の差異を利用したものに限らない。例えば、気体分子間で吸着能が異なる性質を利用して気体分離を実施するPSA(Pressure Swing Adsorption)方式を採用する手法であってもよい。
【0122】
・各気筒における燃料噴射弁の配置態様及び燃料噴射弁の配置数としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、燃焼室のうち中心軸線LAから大きくはずれた位置に噴孔を突出させて燃料噴射弁を配置したり、燃料噴射弁の配置数を複数としたりしてもよい。この場合であっても、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧周囲に高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの上記態様の配置をするなら、NOx及びスモークの双方の低減効果が期待できる。
【0123】
・上記第1の実施形態において、ガス噴射弁72及び導管68を備えない構成としてもよい。この場合、ピストン54に形成されるキャビティの形状が上記第1の実施形態に例示した形状とは異なる形状であり、ストレートポート44から流入する窒素富化ガスと、スワールポート50から流入する酸素富化ガスとが、燃焼室48の下部の中心領域48aにおいて混ざり合うことがなければ、先の図6の酸素濃度分布を実現することができると考えられるため、NOx及びスモークの双方の発生の抑制が期待できる。
【0124】
・上記第3の実施形態において、低酸素濃度ガスとして、EGR分配器85から供給される外部EGRのみを用いてもよい。この場合、N2制御弁24が閉弁されることとなる。
【0125】
・上記第3の実施形態において、N2制御弁24の閉弁によって酸素富化ガスの生成量を増大させて且つ、外部EGRが十分に確保できることを条件として、低酸素濃度ガスとして窒素富化ガスに代えて外部EGRを供給する処理を行ってもよい。この処理は、エンジン46の負荷が高く、燃焼室48に供給すべき酸素量及び低酸素濃度ガス量が多くなる状況下において有効であると考えられる。
【0126】
・上記第5の実施形態において、窒素富化装置18に分離装置が3個以上備えられる構成としてもよい。
【0127】
・上記各実施形態では、酸素富化ガスを燃焼室48の中心領域48aに供給する供給手段としてストレートポート44を用いたがこれに限らない。例えば、噴孔を燃焼室48の上部に突出させて且つ燃焼室48の中心軸線LA近傍に噴孔を有する噴射弁を備え、この噴射弁を供給手段として用いてもよい。この場合、噴射弁からの噴射時期は、例えば、吸気行程のうち吸気バルブの開弁期間の中半から後半付近とすればよい。
【0128】
・上記第4の実施形態では、酸素濃度上昇処理を、エンジン46の負荷が高い場合等に行ったがこれに限らない。例えば、エンジン46の暖機が完了されていない状況下において上記処理を行ってもよい。この場合、吸気の酸素濃度の上昇によって燃焼状態の安定化を図ることが期待できる。
【0129】
・上記第4の実施形態の酸素濃度上昇処理において、N2制御弁24の開度を増大させる処理を行ってもよい。これは、酸素濃度上昇処理において、燃焼室48に供給される酸素量の増大に大きく寄与するのがO2制御弁26及び連通制御弁90の開度の増大であることによるものである。
【符号の説明】
【0130】
18…窒素富化装置、20…分離装置、44…ストレートポート、46…エンジン、48…燃焼室、50…スワールポート、58…燃料噴射弁、72…ガス噴射弁、74…ECU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直噴式内燃機関から排出されるエミッションを抑制する技術としては、下記特許文献1,2に記載されているものが知られている。詳しくは、これら技術は、大気から酸素を一部除去した窒素含有率の高い窒素富化エア(低酸素濃度ガス)を内燃機関の燃焼室に供給するものである。これにより、燃料噴射弁から燃焼室に直接噴射供給される燃料噴霧の外周部分における燃焼を緩慢にして燃焼温度を低下させ、窒素酸化物(NOx)の発生の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4076433号公報
【特許文献2】特開2007−285281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記技術では、NOxの発生を抑制することはできるものの、粒子状物質(スモーク)の発生を適切に抑制することができなくなるおそれがある。これは、燃料噴霧内部の燃料濃度が高い部分が酸素不足の状態で燃焼に供されることによるものである。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、NOx及びスモークの双方の発生を好適に抑制することのできる内燃機関のガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち該燃料噴霧を挟んで前記噴孔とは反対側付近の領域に前記高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、前記燃料噴霧の周辺領域のうち前記高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に前記低水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする。
【0008】
上記発明では、例えば燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧が着火される直前の燃焼室において、燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側(燃料噴霧の先端側)付近の領域に高水準酸素濃度ガスを配置して且つ、燃料噴霧の周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準酸素濃度ガスを配置する。上記態様のガス配置によれば、低水準酸素濃度ガスと隣接する燃料噴霧の外周部分の燃焼が緩慢となって燃焼温度が低下し、NOxの発生が抑制される。この際、燃料噴霧内部の燃料濃度の高い部分の燃焼によってスモークが一旦発生するものの、その後スモークは高水準酸素濃度ガスが配置される燃料噴霧先端側付近に到達する。そして、高水準酸素濃度ガスによってスモークが燃焼に供される。こうした上記発明によれば、NOx及びスモークの双方の発生を好適に抑制することができる。
【0009】
なお、高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの酸素濃度の上述した大小関係を維持しつつ、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも低くなったり、低水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも高くなったりすることがある。これは、供給手段から燃焼室に高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスが供給された後、燃焼室において高酸素濃度ガスと低酸素濃度ガスとが混ざり合うことによるものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の周囲に前記低水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、該配置された低水準酸素濃度ガスの外周に前記高水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする。
【0011】
上記発明では、供給手段を備えることで、燃焼室において、燃料噴射弁の周囲に低水準酸素濃度ガスを配置して且つ、低水準酸素濃度ガスの外周に高水準酸素濃度ガスを配置する。上記態様のガスの配置によれば、その後燃料噴射弁の噴孔から燃料噴射されると、噴射燃料によって燃焼室におけるガス配置が変化する。詳しくは、噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側(燃料噴霧の先端側)付近の領域に高水準酸素濃度ガスが配置され、燃料噴霧の周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準酸素濃度ガスが配置されることとなる。
【0012】
このため、低水準酸素濃度ガスと隣接する燃料噴霧の外周部分の燃焼が緩慢となって燃焼温度が低下し、NOxの発生が抑制される。この際、燃料噴霧内部の燃料濃度の高い部分の燃焼によってスモークが一旦発生するものの、その後スモークは高水準酸素濃度ガスが配置される燃料噴霧先端側付近に到達する。そして、高水準酸素濃度ガスによってスモークが燃焼に供される。こうした上記発明によれば、NOx及びスモークの双方の発生を抑制することができる。
【0013】
なお、高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの酸素濃度の上述した大小関係を維持しつつ、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも低くなったり、低水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも高くなったりすることがある。これは、供給手段から燃焼室に高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスが供給された後、燃焼室において高酸素濃度ガスと低酸素濃度ガスとが混ざり合うことによるものである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記燃焼室の一部の領域であって且つ該燃焼室の中心軸線を通って該中心軸線方向に延びる領域を中心領域とし、前記燃焼室のうち前記中心領域以外の領域を外周領域とし、前記供給手段は、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の吸気ポートであり、前記一対の吸気ポートのうち前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記中心領域に前記低酸素濃度ガスを供給するものであり、前記一対の吸気ポートのうち前記高酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記外周領域に前記高酸素濃度ガスを供給するものであることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、上記態様の一対の吸気ポートによって燃焼室に高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスのそれぞれを供給することで、その後燃焼室において、燃料噴射弁の周囲に低水準酸素濃度ガスを配置して且つ、低水準酸素濃度ガスの外周に高水準酸素濃度ガスを配置することができる。このため、その後、燃料噴射弁の噴孔から燃料噴霧が噴射される状況下において、噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち燃料噴霧を挟んで噴孔とは反対側付近の領域に高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、燃料噴霧の周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準濃度酸素ガスが配置されることとなる。
【0016】
なお、中心領域に供給された低酸素濃度ガスと、外周領域に供給された高酸素濃度ガスとの混ざり合いが大きいと、NOx及びスモークの発生を抑制するための適切な高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの配置がなされないおそれがある。こうした事態の発生を抑制すべく、燃焼室に供給される高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスの圧力比率(低酸素濃度ガスの圧力/高酸素濃度ガスの圧力)を0.7〜1.3の範囲内とすることが望ましい。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に該低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に前記高酸素濃度ガスを供給させる割込供給手段を更に備えることを特徴とする。
【0018】
一対の吸気ポートのそれぞれから高酸素濃度ガス及び低酸素濃度ガスのそれぞれが燃焼室に供給される状況下、燃焼室の下部(燃焼室を区画形成するピストンの上面付近)において、中心領域の低酸素濃度ガスと外周領域の高酸素濃度ガスとが混ざることがある。この場合、NOx及びスモークの発生を抑制するための適切なガス配置がなされないおそれがある。
【0019】
この点、上記発明では、低酸素濃度ガスが流れる吸気ポートから燃焼室に低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、低酸素濃度ガスが流れる吸気ポートから高酸素濃度ガスを供給させる。このため、燃焼室の下部における中心領域に高酸素濃度ガスを配置させることができ、燃焼室の下部において高酸素濃度ガスと低酸素濃度ガスとが混ざることを抑制することができる。これにより、NOx及びスモークの発生を抑制するための高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの適切な配置を実現することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記割込供給手段は、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに前記高酸素濃度ガスを噴射供給するものであり、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートのうち前記割込供給手段によって前記高酸素濃度ガスが噴射供給される位置よりも上流側の流路面積を調節する流路面積調節手段と、前記内燃機関の吸気バルブの閉弁期間において、前記流路面積調節手段によって前記流路面積を絞りつつ前記割込供給手段から前記高酸素濃度ガスを噴射供給すべく、前記流路面積調節手段及び前記割込供給手段を操作する操作手段とを更に備えることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、吸気バルブの閉弁期間において、上記態様にて流路面積調節手段及び割込供給手段を操作することで、吸気バルブの開弁に先立ち、上記吸気ポートのうち燃焼室に隣接する領域に高酸素濃度ガスを配置させるとともに、高酸素濃度ガスの配置領域の上流側に隣接させて低酸素濃度ガスを配置させる。このため、上記吸気ポートにおいて、噴射供給された高酸素濃度ガスと、低酸素濃度ガスとが混ざることを抑制することができる。これにより、その後吸気バルブが開弁される状況下、低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから燃焼室に低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、同吸気ポートから高酸素濃度ガスを適切に供給することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される分離装置を更に備え、前記分離装置は、該分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、分離装置を備えることで、新気から低酸素濃度ガス及び高酸素濃度ガスのそれぞれを適切に生成することができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記内燃機関から排出される排気の一部を外部EGRとして前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに還流させるEGR手段と、前記分離装置から供給される前記低酸素濃度ガスの量が不足すると判断されることに基づき、前記分離装置から供給される低酸素濃度ガスに加えて、前記EGR手段によって還流された外部EGRを前記燃焼室に供給させる手段とを更に備えることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、燃焼室に供給すべき低酸素濃度ガス量が不足する場合であっても、この不足分を、新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する外部EGRによって補償することなどができる。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の発明において、前記供給手段は、前記分離装置によって生成される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の供給通路であり、前記一対の供給通路のうち前記低酸素濃度ガスを供給する通路と、前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路とを接続する連通通路と、前記連通通路に設けられて且つ該連通通路の流路面積を調節する第1の流路面積調節手段と、前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路と、前記分離装置に新気を供給する通路とを接続する新気供給通路と、前記新気供給通路に設けられて且つ該新気供給通路の流路面積を調節する第2の流路面積調節手段と、前記内燃機関の負荷が急増する又は該内燃機関の負荷が高いと判断された場合、前記第1の流路面積調節手段によって前記連通通路の流路面積を増大させる処理、及び前記第2の流路面積調節手段によって前記新気供給通路の流路面積を増大させる処理を行う増大手段とを更に備えることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、上記態様の一対の供給通路、連通通路、新気供給通路、及び第1,第2の流路面積調節手段を備えている。ここで、内燃機関への供給燃料を燃焼させるために要求される酸素量が不足しやすい状況においては、燃焼室に酸素を適切に供給することが望まれる。この点、上記発明では、第1,第2の流路面積調節手段を上記態様にて操作することで、一対の供給通路のうち低酸素濃度ガスを供給する通路を介して燃焼室に供給される気体の流量及び酸素濃度を増大させる。すなわち、一対の供給通路のうち高酸素濃度ガスを供給する通路のみならず低酸素濃度ガスを供給する通路をも用いることで、燃焼室に供給する酸素量を極力多くする。このため、酸素量が不足しやすい状況において燃焼室に酸素を適切に供給することができる。
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される複数の分離装置を更に備え、前記分離装置は、前記分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであり、前記内燃機関の負荷が高いほど、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスの生成に用いる前記分離装置の数を増大させる手段を更に備えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、内燃機関の負荷に応じて、燃焼室に供給すべき低酸素濃度ガス及び高酸素濃度ガスを適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる分離装置を示す図。
【図3】同実施形態にかかる分離部材を示す図。
【図4】同実施形態にかかるエンジン近傍の構成を示す図。
【図5】同実施形態にかかる吸気ポート近傍の拡大図。
【図6】同実施形態にかかる燃焼室の窒素富化ガス及び酸素富化ガスの分布を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図8】同実施形態にかかるガス噴射弁及び吸気制御弁の動作態様を示す図。
【図9】同実施形態にかかるガス噴射弁及び吸気制御弁の動作態様を示す図。
【図10】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図11】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図12】第5の実施形態にかかる分離装置を示す図。
【図13】同実施形態にかかる窒素富化装置の作動状態を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置を多気筒圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)を備える車載コモンレールシステムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0033】
図示されるように、吸気通路10には、上流側から順に、エアクリーナ12及び後述するターボチャージャ14によって過給された空気(新気)を冷却するインタークーラ16が設けられている。
【0034】
吸気通路10のうちインタークーラ16の下流側は、窒素富化装置18に接続されている。窒素富化装置18は、分離装置20、真空ポンプ22、N2制御弁24及びO2制御弁26等を備えて構成されている。窒素富化装置18は、分離装置20の備える分離部材における新気中の各気体の透過速度の差異を利用して、新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する気体である窒素富化ガス(低酸素濃度ガスに相当)と、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する気体である酸素富化ガス(高酸素濃度ガスに相当)とを生成する機能を有する。
【0035】
詳しくは、吸気通路10のうちインタークーラ16の下流側は、分離装置20の入口部28に接続されている。分離装置20のうち窒素富化ガスが流出するN2出口部30は、N2供給通路32を介して窒素富化ガスが供給されるサージタンク(N2サージタンク34)に接続されている。N2供給通路32には、この通路の流路面積を調節する上記N2制御弁24が設けられている。N2制御弁24は、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。
【0036】
分離装置20のうち酸素富化ガスが流出するO2出口部36は、O2供給通路38を介して酸素富化ガスが供給されるサージタンク(O2サージタンク40)に接続されている。
【0037】
O2供給通路38には、上記真空ポンプ22が設けられている。真空ポンプ22は、分離装置20のうちO2出口部36側の空間を減圧する(負圧に維持する)ための電子制御式の機器であり、上記O2出口部36側の減圧度合いを調節可能な機能を有している。
【0038】
O2供給通路38のうち真空ポンプ22の下流側であって且つO2サージタンク40の上流側と、吸気通路10のうちインタークーラ16の下流側とは、新気供給通路42によって接続されている。新気供給通路42には、この通路の流路面積を調節する上記O2制御弁26が設けられている。O2制御弁26は、N2制御弁24と同様に、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。
【0039】
ここで、図2を用いて、窒素富化装置18の備える分離装置20について詳述する。
【0040】
図示されるように、分離装置20は、複数の分離部材20a(膜モジュール)及び複数の隔壁20bを備えて構成されている。分離装置20において、入口部28とN2出口部30とは、分離部材20a及び隔壁20bによって形成されたつづら折り状の通路でつながっている。また、上記入口部28とO2出口部36との間には、分離部材20aが介在している。
【0041】
ここで、本実施形態では、分離部材20aとして、酸素富化膜を想定している。以下、図3を用いて、酸素富化膜について説明する。なお、図3(a)は、先の図2における分離部材20aのA−A断面図であり、図3(b)は、分離部材20aの一部を拡大した斜視図である。
【0042】
図3(a)に示すように、酸素富化膜(分離部材20a)は、膜本体201及び支持体202からなる部材である。詳しくは、膜本体201は、その厚さが数十〜数百nmの部材であり、窒素分子よりも酸素分子を速やかに透過させる機能を有する。すなわち、気体の透過の早さを表す指標である透過係数を用いて説明すると、膜本体201は、酸素分子の透過係数Qoが窒素分子の透過係数Qnよりも高くなるように構成されてなる部材である。
【0043】
ちなみに、透過係数が高いほど、単位時間あたりに膜本体を透過する気体の流量が多くなる。また、この透過流量は、高圧側(入口部28側)及び低圧側(O2出口部36側)の圧力差が大きいほど多くなる傾向にある。さらに、本実施形態では、酸素富化膜として、新気中の窒素に対する酸素の分離係数「Qo/Qn」が3以上のものを想定している。
【0044】
支持体202は、膜本体201のうち入口部28側とO2出口部36側との差圧によって膜本体201が損傷することを防止するための部材であり、その厚さが数十μmである。支持体202には、膜本体201を透過した気体を速やかにO2出口部36側に導くべく、支持体202の厚さ方向に連通する数十〜数百nmの楔形状の孔203が多数形成されている(図3(b)参照)。
【0045】
先の図2の説明に戻り、分離部材20aのO2出口部36側(下流側)は、真空ポンプ22によって上記つづら折り状の通路側(上流側)よりも圧力が低くされている。こうした状況下において、O2入口部28から分離装置20内に導入された新気が分離部材20a及び隔壁20bによって形成されたつづら折り状の通路を通る間に、新気中の酸素が窒素よりも多く分離部材20aを透過してO2出口部36側へと流出する。これにより、O2出口部36からは上記酸素富化ガスが流出し、N2出口部30からは上記窒素富化ガスが流出する。
【0046】
先の図1の説明に戻り、N2サージタンク34は、吸気ポートとしてのストレートポート44と、吸気バルブとを介してエンジン46の各気筒の燃焼室48(図中、1の気筒の燃焼室を例示)につながっている。ここで、ストレートポート44は、燃焼室48に吸気を直進させて流入させる形状をなしている。なお、以降、本実施形態において、上記吸気とは、新気、酸素富化ガス及び窒素富化ガスのうち少なくとも1つのことをいう。
【0047】
一方、O2サージタンク40は、吸気ポートとしてのスワールポート50と、吸気バルブとを介して燃焼室48につながっている、ここで、スワールポート50は、燃焼室48にスワール流を形成可能な形状をなしている。
【0048】
次に、図4を用いて、本実施形態にかかるエンジン46近傍の構成について説明する。なお、図中、1の気筒についてのみ示している。
【0049】
図示されるエンジン46は、吸気・圧縮・膨張・排気行程を1燃焼周期(720℃A)とする4ストロークレシプロ式の多気筒圧縮着火式内燃機関であり、シリンダ52、ピストン54及びシリンダヘッド56を備えて構成されている。
【0050】
詳しくは、シリンダ52、ピストン54の上面(シリンダヘッド56に対向する面)及びシリンダヘッド56によって略円柱形状の燃焼室48が区画形成されている。ピストン54の上面には、キャビティ54aが形成されている。本実施形態では、キャビティ54aとして、ピストン54の上面に窪み形状を有しつつ、ピストン54の径方向において燃焼室48の中心軸線LA(図中一点鎖線)に近づくほど隆起する部分を有する形状を想定している。ここで、燃焼室48の中心軸線LAとは、シリンダ52のボアの中心を通って且つピストン54の動作方向(図中、上下方向)に延びる軸線のことをいう。
【0051】
エンジン46の各気筒の燃焼室48には、複数の噴孔58aを有する電磁駆動式の燃料噴射弁58が設けられている。詳しくは、燃料噴射弁58は、これら噴孔58aが燃焼室48の上側(シリンダヘッド56側)であって且つ燃焼室48の中心軸線LA近傍に突出するように配置されている。また、燃料噴射弁58には、図示しない蓄圧容器(コモンレール)から高圧の燃料(軽油)が供給され、燃料噴射弁58から燃焼室48に高圧の燃料が噴射供給される。具体的には、燃料噴射弁58は、圧縮上死点近傍において、ピストン54の上面であって且つキャビティ54aの端部付近に向かって燃料噴霧を噴射する。
【0052】
エンジン46の各気筒の吸気ポート44,50及び排気ポート60のそれぞれは、一対の吸気バルブ62及び一対の排気バルブ64のそれぞれによって開閉される。ここでは、一対の吸気バルブ62同士の開閉タイミングは同一であり、一対の排気バルブ64同士の開閉タイミングも同一である。吸気バルブ62の開弁によって吸気が燃焼室48に導入され、導入された吸気と、燃料噴射弁58から噴射された燃料噴霧とが燃焼に供される。なお、燃焼に供された吸気及び燃料は、排気バルブ64の開弁によって排気として排気ポート60に排出される。
【0053】
図1の説明に戻り、吸気通路10と、排気ポート60とつながる排気通路66との間には、上記ターボチャージャ14が設けられている。ターボチャージャ14は、吸気通路10に設けられた吸気コンプレッサ14aと、排気通路66に設けられた排気タービン14bと、これらを連結する回転軸14cとを備えて構成されている。詳しくは、排気通路66を流れる排気のエネルギによって排気タービン14bが回転し、その回転エネルギが回転軸14cを介して吸気コンプレッサ14aに伝達され、吸気コンプレッサ14aによって吸気が過給される。なお、ターボチャージャ14としては、例えば、吸気の過給圧を調節可能なもの(可変ベーン式のもの)を採用することができる。
【0054】
O2サージタンク40は、導管68によってストレートポート44と接続されており、より詳しくは、ストレートポート44のうち燃焼室48に近い側に接続されている。導管68には、O2サージタンク40側から順に、圧縮機70と、ガス噴射弁72とが設けられている。圧縮機70は、O2サージタンク40から供給される酸素富化ガスをガス噴射弁72に対して加圧供給するための機器である。また、ガス噴射弁72は、加圧供給された酸素富化ガスをストレートポート44内に噴射供給する電磁駆動式の弁体である。本実施形態では、ガス噴射弁72として、この噴射弁の有する電磁ソレノイドへの通電により開弁し、電磁ソレノイドへの通電の停止によって閉弁するノーマリクローズ式のものを想定している。
【0055】
電子制御装置(以下、ECU74)は、コモンレールシステムの各種制御に必要な各種アクチュエータを操作する制御装置である。ECU74は、N2サージタンク34内の圧力を検出するN2圧力センサ76や、O2サージタンク40内の圧力を検出するO2圧力センサ78、ユーザのアクセルペダルの操作量(アクセル操作量)を検出するアクセルセンサ80、更にはエンジン46の図示しない出力軸(クランク軸)の回転角度を検出するクランク角度センサ82等の検出信号を逐次入力する。ECU74は、これらの入力信号に基づき、燃料噴射弁58による燃料噴射制御処理や、ガス生成処理等のエンジン46の燃焼制御を行う。
【0056】
上記燃料噴射制御処理について説明すると、まず、クランク角度センサ82の出力値に基づくエンジン回転速度と、アクセルセンサ80の出力値に基づくアクセル操作量とから、エンジン46の要求トルクを算出する。ここでは通常、アクセル操作量が大きいほど、エンジン46の要求トルクを大きく設定する。そして、設定されたエンジン46の要求トルクに基づき燃料噴射弁58の指令値を算出し、この指令値に基づき燃料噴射弁58を通電操作する。これにより、上記指令値に相当する量の燃料が、圧縮行程の後半から膨張行程の前半までの期間(例えば圧縮上死点近傍のタイミング)において燃料噴射弁58から噴射される。
【0057】
上記ガス生成処理は、真空ポンプ22、N2制御弁24及びO2制御弁26を通電操作することで、N2サージタンク34に供給される窒素富化ガスの流量及び酸素濃度と、O2サージタンク40に供給される酸素富化ガスの流量及び酸素濃度とを所望の値に調節する処理となる。
【0058】
詳しくは、窒素富化ガスの流量は、N2制御弁24の開度が大きくなるほど多くなる傾向にあり、窒素富化ガスの酸素濃度は、N2制御弁24の開度が小さくなったり、O2出口部36側(O2供給通路38側)の圧力が低くなったり(分離部材20aの前後差圧が大きくなったり)するほど低くなる傾向にある。また、酸素富化ガスの流量は、O2制御弁26の開度が大きくなったり、O2出口部36側の圧力が低くなったりするほど多くなる傾向にあり、酸素富化ガスの酸素濃度は、O2出口部36側(O2供給通路38側)の圧力が低くなったり(分離部材20aの前後差圧が大きくなったり)、O2制御弁26の開度が小さくなったりするほど高くなる傾向にある。本実施形態では、新気の酸素濃度を約21%とすると、上記ガス生成処理によって、窒素富化ガスの酸素濃度を5〜20%の範囲で調節し、酸素富化ガスの酸素濃度を22〜30%の範囲で調節する。
【0059】
なお、ECU74は、N2圧力センサ76及びO2圧力センサ78の検出値に基づき各吸気ポートに流入する吸気量を推定する処理と、N2制御弁24、O2制御弁26及び真空ポンプ22の通電操作によって上記推定された吸気量を目標値に調節する処理とを併せて行う。
【0060】
こうしたシステム構成において、本実施形態では、エンジン46からのNOx及びスモークの双方の発生を抑制すべく、燃焼室48における酸素富化ガス及び窒素富化ガスの配置を適切なものとしている。以下、これについて説明する。
【0061】
まず、図5(a)を用いて、本実施形態にかかるストレートポート44及びスワールポート50のそれぞれからの吸気の供給態様について説明する。なお、図中、ガス噴射弁72の一部及び排気ポート60の図示を省略している。
【0062】
図示されるように、燃焼室48のうち燃焼室48の半径(シリンダ52のボアの半径)よりも小さい半径を有して且つ中心軸線LA方向に延びる略円柱状の領域を中心領域48a(図中、2点鎖線にて囲まれる領域)と定義し、燃焼室48のうち中心領域48a以外の略円環状の領域を外周領域48bと定義する。本実施形態では、円柱状の中心領域48aの中心軸線は、燃焼室48の中心軸線LAと一致している。
【0063】
ストレートポート44は、直線的な流れによって中心領域48aに吸気を充填し、スワールポート50は、スワールによって吸気を外周領域48bに充填する。
【0064】
続いて、図5(b)を用いて、本実施形態にかかる酸素富化ガス割込供給処理について説明する。この処理は、吸気バルブ62の開弁期間において、ストレートポート44から燃焼室48に窒素富化ガスを供給するに先立ち、ストレートポート44から酸素富化ガスを供給させるべくガス噴射弁72を通電操作する処理である。
【0065】
詳しくは、図5(b)に示すように、吸気バルブ62の閉弁期間において、ガス噴射弁72の開弁によってストレートポート44のうち燃焼室48(吸気バルブ62)に隣接する領域に酸素富化ガスを加圧供給することで、上記燃焼室48に隣接する領域に酸素富化ガスを配置させる。
【0066】
上記割込供給処理を行うと、ストレートポート44において、このポートのうち燃焼室48に隣接する領域に酸素富化ガスが配置されて且つ、酸素富化ガスの配置される領域に隣接する上流側の領域に窒素富化ガスが配置されることとなる。そして、吸気行程において吸気バルブ62が開弁されることで、酸素富化ガス及び窒素富化ガスの順に、ストレートポート44から燃焼室48の中心領域48aに充填されることとなる。
【0067】
次に、上述した手法によって燃焼室48に吸気(酸素富化ガス及び窒素富化ガス)を供給した後の燃焼室48におけるガスの挙動の推移について図6を用いて説明する。詳しくは、図6(a)に、圧縮行程における吸気バルブ62の閉弁タイミング(圧縮上死点前130℃A)におけるガスの分布を示し、図6(b)に、圧縮上死点前60℃Aにおけるガスの分布を示し、図6(c)に、圧縮上死点におけるガスの分布を示す。なお、図6は、燃焼室48の中心軸線LAに平行であって且つこの中心軸線LAを通る平面でエンジン46を切断した場合における燃焼室48近傍の断面図である。また、図6に示すガス分布は、本発明者らの実施したCAE解析によって調べられたものである。
【0068】
まず、図6(a)に示すように、燃焼室48において、燃料噴射弁58の噴孔の周囲に低水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、低水準酸素濃度ガスの外周に高水準酸素濃度ガスが配置される。すなわち、中心領域48aのうち、燃焼室48の下部(ピストン54の上面付近)に高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、燃焼室48の上部に低水準酸素濃度ガスが配置される。また、低水準酸素濃度ガスがその周りを取り巻くように分布することとなる。
【0069】
ここで、高水準酸素濃度ガスとは、酸素富化ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスのことであり、低水準酸素濃度ガスとは、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ窒素富化ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスのことをいう。そして、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が低水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも高い関係を維持しつつ、高水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも低くなったり、低水準酸素濃度ガスの酸素濃度が新気中の酸素濃度よりも高くなったりすることがある。これは、吸気ポート44,50から燃焼室48に酸素富化ガス及び窒素富化ガスが供給された後、例えばガスの流動やピストン54の上昇に伴って、燃焼室48において酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざり合うことによるものである。ちなみに、高水準酸素濃度ガスが配置される領域における酸素濃度や、低水準酸素濃度ガスが配置される領域における酸素濃度は、必ずしも均一となるわけではない。
【0070】
なお、本実施形態では、燃焼室48の容積の「2/3」が低水準酸素濃度ガスで満たされている。
【0071】
次に、同図(b)に示すように、ピストン54の上昇によって高水準酸素濃度ガスと低水準酸素濃度ガスとは大きく混ざり合うことなく上下に圧縮される。
【0072】
そして、同図(c)に示すように、燃料噴射弁58の噴射タイミングにおいては、キャビティ54aのうち中心軸線LA付近p1に酸素濃度が低い低水準酸素濃度ガスが多く分布し、キャビティ54aの底部p2と、ピストン54の上面及びシリンダヘッド56に囲まれた部分p3には高水準酸素濃度ガスが多く分布する。
【0073】
こうしたガスの配置において、燃料噴射弁58から燃料噴霧Gが噴射されると、燃料噴霧Gの周辺領域のうち燃料噴霧Gを挟んで噴孔とは反対側付近p2,p3の領域に高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、燃料噴霧Gの周辺領域のうち高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に低水準酸素濃度ガスが配置されることとなる。そして、燃料噴霧の自着火燃焼が開始されると、低水準酸素濃度ガスと隣接する燃料噴霧Gの外周部分の燃焼が緩慢となって燃焼温度が低下し、NOxの発生が抑制される。また、燃料噴霧Gの先端部(ピストン54の上面付近)の高水準酸素濃度ガスによって先端部の燃焼を促進させてスモークの発生を抑制する。さらに、この際、燃料噴霧G内部の燃料濃度の高い部分の燃焼によってスモークが一旦発生するものの、その後スモークは、高水準酸素濃度ガスが配置されるキャビティ54aの底部p2や、ピストン54の上面とシリンダヘッド56とで囲まれた部分p3に燃焼期間の後期に到達する。そして、高水準酸素濃度ガスによってスモークの燃焼が促進される。したがって、NOx及びスモークの双方の発生を抑制することができる。
【0074】
ちなみに、燃焼室48に流入する窒素富化ガス及び酸素富化ガスの圧力比率(窒素富化ガスの圧力/酸素富化ガスの圧力)を略0.7〜1.3の範囲内とすることが望ましい。これは、N2圧力センサ76及びO2圧力センサ78の検出値から算出される上記圧力比率を上記範囲内で設定した圧力比率の目標値に制御するようにN2制御弁24及びO2制御弁26等を通電操作する処理となる。これにより、燃焼室48において窒素富化ガスと酸素富化ガスとが大きく混ざり合うことを抑制することができ、NOx及びスモークを抑制するための図6(c)に示すようなガス配置を適切に実現することができる。
【0075】
また、本実施形態にかかる燃焼室48の形状(キャビティ54aの形状等)において、上記酸素富化ガス割込供給処理を行わない場合には、図6(a)のガス分布を実現することができなくなるおそれが大きい。これは、中心領域48aのうち燃焼室48の下部に低水準酸素濃度ガスが配置されることに起因して、その後燃焼室48の圧縮によって図6(c)のガス分布を実現できなくなることによるものである。
【0076】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0077】
(1)ストレートポート44によって燃焼室48の中心領域48aに窒素富化ガスを供給するとともに、スワールポート50によって燃焼室48の外周領域48bに酸素富化ガスを供給した。ここでは、酸素富化ガス割込供給処理によってストレートポート44から窒素富化ガスを供給するに先立ち、このポートから酸素富化ガスを供給した。これにより、NOx及びスモークの双方を好適に抑制することができる。
【0078】
さらに、上記燃焼手法によれば、着火時期を進角させることに伴うNOx生成量を抑制することができ、着火時期(燃料噴射時期)の進角によってエンジン46の熱効率を上昇させ、エンジン46の単位生成トルク当たりに要求される燃料消費量の増大を抑制することもできる。
【0079】
(2)上記態様の窒素富化装置18を備えるシステム構成とした。これにより、新気から窒素富化ガス及び酸素富化ガスを適切に生成することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0081】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0082】
図示されるように、ストレートポート44のうち導管68の接続部よりも上流側には、ストレートポート44の流路面積を調節する吸気制御弁83が設けられている。吸気制御弁83は、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。この制御弁は、ECU74によって通電操作される。
【0083】
次に、図8及び図9を用いて、本実施形態にかかる酸素富化ガス割込供給処理について説明する。
【0084】
本実施形態にかかる上記割込供給処理によれば、ストレートポート44にガス噴射弁72から酸素富化ガスを噴射供給することに伴い、噴射供給された酸素富化ガスとその上流側の窒素富化ガスとが混ざり合うことを適切に抑制することが可能となる。
【0085】
詳しくは、図8に示すように、圧縮行程の吸気バルブ62が閉弁される時刻t1において、ガス噴射弁72が閉弁されて且つ、吸気制御弁83が全開(ストレートポート44の流路面積が最大)とされている(図9(a)参照)。
【0086】
その後、時刻t2においてガス噴射弁72の開弁指令がなされ、時刻t3においてガス噴射弁72が開弁されることでストレートポート44への酸素富化ガスの噴射供給が開始される。なお、本実施形態では、ガス噴射弁72として、上記開弁指令がなされてからこの噴射弁が開弁するまでの応答時間を5msec以下のものを想定している。
【0087】
ガス噴射弁72が開弁すると、少し遅れた時刻t4において、吸気制御弁83によってストレートポート44の流路面積が全開時の流路面積よりも小さい値に維持される。詳しくは、吸気制御弁83の開度が半開に維持される。これにより、噴射供給された酸素富化ガスによって窒素富化ガスが吸気制御弁83の上流側に押し戻される(図9(b)参照)。ちなみに、吸気制御弁83を半開とする設定は、ストレートポート44において酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざることを抑制するためのものである。つまり、ガス噴射弁72から酸素富化ガスが噴射供給される状況下において吸気制御弁83が全開とされると、ストレートポート44に噴射供給された酸素富化ガスが吸気制御弁83よりも上流側に移動しやすくなり、酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざるおそれが大きくなる。
【0088】
その後、窒素富化ガスの大部分が押し戻される時刻t5において吸気制御弁83が閉弁されることで、ストレートポート44のうち吸気バルブ62及び吸気制御弁83の間の空間に酸素富化ガスが閉じ込められることとなる(図9(c)参照)。
【0089】
その後、時刻t6においてガス噴射弁72が閉弁されてストレートポート44への酸素富化ガスの噴射供給が停止されるとともに、吸気制御弁83に対する全開指令がなされる。そして、時刻t7において吸気制御弁83が全開とされる。なお、本実施形態では、吸気制御弁83として、上記全開指令がなされてからこの制御弁が全開するまでの応答時間を5msec以下のものを想定している。
【0090】
このように、本実施形態では、上記態様の酸素富化ガス割込供給処理を行うことで、ストレートポート44において酸素富化ガスと窒素富化ガスとが混ざり合うことを好適に抑制することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図10において、先の図7に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0093】
図示されるように、排気通路66のうちターボチャージャ14の上流側は、排気還流通路(EGR通路84)及びEGR分配器85を介して、ストレートポート44のうち吸気制御弁83の上流側に接続されている。
【0094】
EGR通路84には、同通路の流路面積を調節する電子制御式の弁体であるEGRバルブ86と、EGRクーラ87とが設けられている。このEGRバルブ86の開度に応じて、排気通路66に排出された排気の一部(外部EGR)が、EGRクーラ87によって冷却された後にEGR分配器85を介して各気筒に対応するストレートポート44に供給される。なお、EGR分配器85は、各気筒のストレートポート44に外部EGRを均等に分配するための部材である。また、本実施形態において、以降、上記吸気とは、新気、酸素富化ガス、窒素富化ガス及び外部EGRのうち少なくとも1つのことをいう。
【0095】
ECU74は、エンジン46の運転状態に応じて定まる窒素富化ガスの要求量が、窒素富化装置18によって実際に生成可能な窒素富化ガス量αを上回るか否かを判断する。そして、上記要求量が上記窒素富化ガス量αを上回ると判断された場合、窒素富化ガス量が不足すると判断し、この不足分に相当する外部EGRをストレートポート44に供給すべく、EGRバルブ86を通電操作するEGR供給処理を行う。この処理は、NOx及びスモークの双方を抑制するための適切な窒素富化ガスの配置が実現できなくなることを回避するための処理である。
【0096】
ちなみに、上記第1の実施形態と同様に、燃焼室48に流入する窒素富化ガス及び外部EGRの混合ガスと酸素富化ガスとの圧力差を略0とすることが望ましい。ここで、上記混合ガスの圧力は、例えば、ストレートポート44のうちEGR分配器85の接続点よりも下流側に圧力センサを設け、このセンサの検出値に基づき把握すればよい。
【0097】
このように、本実施形態では、上記EGR供給処理を行うことで、窒素富化装置18による窒素富化ガスの生成量が不足する場合であっても、この不足分を適切に補償することができる。したがって、NOx及びスモークの双方の発生を適切に抑制することができる。
【0098】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図11において、先の図10に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0100】
図示されるように、N2供給通路32とO2供給通路38とは、連通管88によって接続されている。連通管88には、この通路の流路面積を調節する連通制御弁90が設けられている。連通制御弁90は、上記N2制御弁24等と同様に、DCモータ等の図示しないアクチュエータによって開度が調節される電子制御式の弁体である。
【0101】
ECU74は、エンジン46が通常の運転状態(エンジン46の負荷が急増する状態及びエンジン46の負荷が高い状態以外の運転状態)であると判断された場合、連通制御弁90を閉弁させる処理を行う。ここで、エンジン46の負荷が急増したか否かは、例えばエンジン46の要求トルクの上昇速度が所定以上であるか否かで判断すればよい。また、エンジン46の負荷が高い状態であるか否かは、例えば上記要求トルクが規定トルク以上であるか否かで判断すればよい。
【0102】
一方、エンジン46の負荷が急増する状態又はエンジン46の負荷が高い状態であると判断された場合には、燃焼室48に供給する酸素量を増大させるべく、N2制御弁24、O2制御弁26及び連通制御弁90を通電操作する酸素濃度上昇処理を行う。詳しくは、N2制御弁24を閉弁(N2制御弁24によってN2出口部30とN2サージタンク34との間を遮断)させるとともに、O2制御弁26及び連通制御弁90を開弁させる。この処理は、スモークの増大を抑制するための処理である。
【0103】
つまり、エンジン46が低負荷運転される状態からエンジン46が高負荷運転される状態へと短時間に移行する(車両の加速時)等、エンジン46の負荷が急増する状況下においては、ターボチャージャ14によって過給度合いが増大されてからその影響が燃焼室48に供給される吸気圧に現れるまでに応答遅れ(吸気後れ)を伴う。この吸気遅れに起因して、エンジン46の要求トルクに応じた燃料噴射量に対して吸気量が不足する事態が生じ得る。この場合、燃料噴霧が酸素不足の状態で燃焼に供されることとなり、スモークが増大するおそれがある。
【0104】
このため、上記処理を行うことで、ストレートポート44及びスワールポート50の双方から燃焼室48へと酸素富化ガス及び新気の混合ガスを供給し、燃焼室48に供給される吸気の酸素濃度を極力上昇させる。これにより、吸気遅れに伴うスモークの増大を抑制する。
【0105】
なお、エンジン46の負荷が高い場合に上記処理を行うことで、スモークの発生を抑制できるのは、燃焼室48全体の酸素濃度を極力上昇させることでスモークの再燃焼を促進することができるためである。
【0106】
このように、本実施形態では、上記酸素濃度上昇処理を行うことで、エンジン46の負荷の急増時等におけるスモークの発生を好適に抑制することができる。さらに、スモークの発生を燃料噴射量の低減量を極力抑制しつつ実現することができるため、車両の加速時におけるエンジン46の生成トルクが不足する事態の発生を抑制することなども期待できる。
【0107】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0108】
図12に、本実施形態にかかる窒素富化装置18のうち主に分離装置の部分を示す。
【0109】
図示されるように、窒素富化装置18は、第1の分離装置92a及び第2の分離装置92bを備えて構成されている。ここで、これら分離装置92a,92bの構造は、上記第1の実施形態に示した分離装置と同様である。
【0110】
吸気通路10のうち新気供給通路42の下流側は、第1の分離装置92aの入口部(第1入口部94a)に接続されている。第1の分離装置92aのうち窒素富化ガスが流出する出口部(第1N2出口部96a)は、第1N2供給通路32aを介してN2サージタンク34に接続されている。
【0111】
第1の分離装置92aのうち酸素富化ガスが流出する出口部(第1O2出口部98a)は、第1O2供給通路38aを介して真空ポンプ22に接続されている。第1O2供給通路38aのうち真空ポンプ22の上流側には、N2制御弁24と同様の機能を有する調節弁100が設けられている。
【0112】
一方、吸気通路10のうち新気供給通路42の下流側は、さらに、第2の分離装置92bの入口部(第2入口部94b)に接続されている。第2の分離装置92bのうち窒素富化ガスが流出する出口部(第2N2出口部96b)は、第2N2供給通路32bを介して第1N2供給通路32aのうちN2制御弁24の下流側に接続されている。
【0113】
第2の分離装置92bのうち酸素富化ガスが流出する出口部(第2O2出口部98b)は、第2O2供給通路38bを介して、第1O2供給通路38bのうち真空ポンプ22よりも上流側であって且つ調節弁100よりも下流側に接続されている。
【0114】
ECU74は、エンジン46の負荷(要求トルク)に応じて、酸素富化ガス及び窒素富化ガスの生成に用いる分離装置の使用数を切り替えるべく、N2制御弁24及び調節弁100を通電操作する処理を行う。
【0115】
詳しくは、図13に示すように、エンジン46の負荷が低い水準であると判断された場合、調節弁100及びN2制御弁24の双方を閉弁させる。これにより、第1の分離装置92aに新気が供給されず、この装置によって酸素富化ガス及び窒素富化ガスが生成されなくなる。すなわち、富化ガスの生成に用いる酸素富化膜の面積を減少させるとともに、第2の分離装置92bの酸素富化膜の下流側の負圧を高くすることで、第1,第2の分離装置92a,92bの双方を使用する場合と比較して、より酸素濃度の高い酸素富化ガスを適切に生成する。
【0116】
一方、エンジン46の負荷が高い水準であると判断された場合、N2制御弁24及び調節弁100の双方を開弁させる。これにより、第1,第2の分離装置92a,92bを用い、大量の酸素富化ガスを適切に生成する。
【0117】
ちなみに、エンジン46の負荷が低い水準であるか否かは、例えば、エンジン46が低速低負荷で運転されているか否かや、吸気通路10を流れる新気量が規定量よりも少ないか否かに基づき判断すればよい。また、エンジン46の負荷が高い水準であるか否かは、例えば、エンジン46が中速中負荷で運転されているか否かや、吸気通路10を流れる新気量が上記規定量以上であるか否かで判断すればよい。
【0118】
このように、本実施形態では、エンジン46の負荷に応じて窒素富化装置18の備える分離装置の使用数を切り替えることで、エンジン46の運転状態に応じた酸素富化ガス及び窒素富化ガスを確保することができる。すなわち、エンジン46の運転状態に応じて、窒素富化ガスの流量及び酸素濃度と、酸素富化ガスの流量及び酸素濃度の設定自由度を向上させることができる。
【0119】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0120】
・上記各実施形態では、窒素富化装置18の分離部材を酸素富化膜によって構成したがこれに限らない。例えば、分離部材を、ポリイミド樹脂等からなる中空糸状の高分子膜(中空糸膜)を束にしたものによって構成してもよい。この場合であっても、中空糸膜に対する各気体の透過速度の差異を利用して、酸素富化ガス及び窒素富化ガスを生成することができる。
【0121】
また、酸素富化ガス及び窒素富化ガスを生成する手法としては、膜における各気体の透過速度の差異を利用したものに限らない。例えば、気体分子間で吸着能が異なる性質を利用して気体分離を実施するPSA(Pressure Swing Adsorption)方式を採用する手法であってもよい。
【0122】
・各気筒における燃料噴射弁の配置態様及び燃料噴射弁の配置数としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、燃焼室のうち中心軸線LAから大きくはずれた位置に噴孔を突出させて燃料噴射弁を配置したり、燃料噴射弁の配置数を複数としたりしてもよい。この場合であっても、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧周囲に高水準酸素濃度ガス及び低水準酸素濃度ガスの上記態様の配置をするなら、NOx及びスモークの双方の低減効果が期待できる。
【0123】
・上記第1の実施形態において、ガス噴射弁72及び導管68を備えない構成としてもよい。この場合、ピストン54に形成されるキャビティの形状が上記第1の実施形態に例示した形状とは異なる形状であり、ストレートポート44から流入する窒素富化ガスと、スワールポート50から流入する酸素富化ガスとが、燃焼室48の下部の中心領域48aにおいて混ざり合うことがなければ、先の図6の酸素濃度分布を実現することができると考えられるため、NOx及びスモークの双方の発生の抑制が期待できる。
【0124】
・上記第3の実施形態において、低酸素濃度ガスとして、EGR分配器85から供給される外部EGRのみを用いてもよい。この場合、N2制御弁24が閉弁されることとなる。
【0125】
・上記第3の実施形態において、N2制御弁24の閉弁によって酸素富化ガスの生成量を増大させて且つ、外部EGRが十分に確保できることを条件として、低酸素濃度ガスとして窒素富化ガスに代えて外部EGRを供給する処理を行ってもよい。この処理は、エンジン46の負荷が高く、燃焼室48に供給すべき酸素量及び低酸素濃度ガス量が多くなる状況下において有効であると考えられる。
【0126】
・上記第5の実施形態において、窒素富化装置18に分離装置が3個以上備えられる構成としてもよい。
【0127】
・上記各実施形態では、酸素富化ガスを燃焼室48の中心領域48aに供給する供給手段としてストレートポート44を用いたがこれに限らない。例えば、噴孔を燃焼室48の上部に突出させて且つ燃焼室48の中心軸線LA近傍に噴孔を有する噴射弁を備え、この噴射弁を供給手段として用いてもよい。この場合、噴射弁からの噴射時期は、例えば、吸気行程のうち吸気バルブの開弁期間の中半から後半付近とすればよい。
【0128】
・上記第4の実施形態では、酸素濃度上昇処理を、エンジン46の負荷が高い場合等に行ったがこれに限らない。例えば、エンジン46の暖機が完了されていない状況下において上記処理を行ってもよい。この場合、吸気の酸素濃度の上昇によって燃焼状態の安定化を図ることが期待できる。
【0129】
・上記第4の実施形態の酸素濃度上昇処理において、N2制御弁24の開度を増大させる処理を行ってもよい。これは、酸素濃度上昇処理において、燃焼室48に供給される酸素量の増大に大きく寄与するのがO2制御弁26及び連通制御弁90の開度の増大であることによるものである。
【符号の説明】
【0130】
18…窒素富化装置、20…分離装置、44…ストレートポート、46…エンジン、48…燃焼室、50…スワールポート、58…燃料噴射弁、72…ガス噴射弁、74…ECU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、
前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、
前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、
前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち該燃料噴霧を挟んで前記噴孔とは反対側付近の領域に前記高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、前記燃料噴霧の周辺領域のうち前記高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に前記低水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする内燃機関のガス供給装置。
【請求項2】
内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、
前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、
前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、
前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の周囲に前記低水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、該配置された低水準酸素濃度ガスの外周に前記高水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする内燃機関のガス供給装置。
【請求項3】
前記燃焼室の一部の領域であって且つ該燃焼室の中心軸線を通って該中心軸線方向に延びる領域を中心領域とし、前記燃焼室のうち前記中心領域以外の領域を外周領域とし、
前記供給手段は、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の吸気ポートであり、
前記一対の吸気ポートのうち前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記中心領域に前記低酸素濃度ガスを供給するものであり、
前記一対の吸気ポートのうち前記高酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記外周領域に前記高酸素濃度ガスを供給するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項4】
前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に該低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に前記高酸素濃度ガスを供給させる割込供給手段を更に備えることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項5】
前記割込供給手段は、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに前記高酸素濃度ガスを噴射供給するものであり、
前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートのうち前記割込供給手段によって前記高酸素濃度ガスが噴射供給される位置よりも上流側の流路面積を調節する流路面積調節手段と、
前記内燃機関の吸気バルブの閉弁期間において、前記流路面積調節手段によって前記流路面積を絞りつつ前記割込供給手段から前記高酸素濃度ガスを噴射供給すべく、前記流路面積調節手段及び前記割込供給手段を操作する操作手段とを更に備えることを特徴とする請求項4記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項6】
酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される分離装置を更に備え、
前記分離装置は、該分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、
前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項7】
前記内燃機関から排出される排気の一部を外部EGRとして前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに還流させるEGR手段と、
前記分離装置から供給される前記低酸素濃度ガスの量が不足すると判断されることに基づき、前記分離装置から供給される低酸素濃度ガスに加えて、前記EGR手段によって還流された外部EGRを前記燃焼室に供給させる手段とを更に備えることを特徴とする請求項6記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記分離装置によって生成される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の供給通路であり、
前記一対の供給通路のうち前記低酸素濃度ガスを供給する通路と、前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路とを接続する連通通路と、
前記連通通路に設けられて且つ該連通通路の流路面積を調節する第1の流路面積調節手段と、
前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路と、前記分離装置に新気を供給する通路とを接続する新気供給通路と、
前記新気供給通路に設けられて且つ該新気供給通路の流路面積を調節する第2の流路面積調節手段と、
前記内燃機関の負荷が急増する又は該内燃機関の負荷が高いと判断された場合、前記第1の流路面積調節手段によって前記連通通路の流路面積を増大させる処理、及び前記第2の流路面積調節手段によって前記新気供給通路の流路面積を増大させる処理を行う増大手段とを更に備えることを特徴とする請求項6又は7記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項9】
酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される複数の分離装置を更に備え、
前記分離装置は、前記分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、
前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであり、
前記内燃機関の負荷が高いほど、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスの生成に用いる前記分離装置の数を増大させる手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、
前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、
前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、
前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の噴孔から噴射された燃料噴霧の周辺領域のうち該燃料噴霧を挟んで前記噴孔とは反対側付近の領域に前記高水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、前記燃料噴霧の周辺領域のうち前記高水準酸素濃度ガスが配置される領域以外の領域に前記低水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする内燃機関のガス供給装置。
【請求項2】
内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射供給する燃料噴射弁を備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、新気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス及び新気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給する供給手段を備える内燃機関のガス供給装置において、
前記高酸素濃度ガスの酸素濃度以下の酸素濃度を有するガスを高水準酸素濃度ガスとし、
前記高水準酸素濃度ガスの酸素濃度よりも低くて且つ前記低酸素濃度ガスの酸素濃度以上の酸素濃度を有するガスを低水準酸素濃度ガスとし、
前記供給手段は、前記燃焼室において、前記燃料噴射弁の周囲に前記低水準酸素濃度ガスが配置されて且つ、該配置された低水準酸素濃度ガスの外周に前記高水準酸素濃度ガスが配置されるように前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給することを特徴とする内燃機関のガス供給装置。
【請求項3】
前記燃焼室の一部の領域であって且つ該燃焼室の中心軸線を通って該中心軸線方向に延びる領域を中心領域とし、前記燃焼室のうち前記中心領域以外の領域を外周領域とし、
前記供給手段は、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の吸気ポートであり、
前記一対の吸気ポートのうち前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記中心領域に前記低酸素濃度ガスを供給するものであり、
前記一対の吸気ポートのうち前記高酸素濃度ガスを供給する吸気ポートは、前記外周領域に前記高酸素濃度ガスを供給するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項4】
前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に該低酸素濃度ガスを供給するに先立ち、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートから前記燃焼室に前記高酸素濃度ガスを供給させる割込供給手段を更に備えることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項5】
前記割込供給手段は、前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに前記高酸素濃度ガスを噴射供給するものであり、
前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートのうち前記割込供給手段によって前記高酸素濃度ガスが噴射供給される位置よりも上流側の流路面積を調節する流路面積調節手段と、
前記内燃機関の吸気バルブの閉弁期間において、前記流路面積調節手段によって前記流路面積を絞りつつ前記割込供給手段から前記高酸素濃度ガスを噴射供給すべく、前記流路面積調節手段及び前記割込供給手段を操作する操作手段とを更に備えることを特徴とする請求項4記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項6】
酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される分離装置を更に備え、
前記分離装置は、該分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、
前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項7】
前記内燃機関から排出される排気の一部を外部EGRとして前記低酸素濃度ガスを供給する吸気ポートに還流させるEGR手段と、
前記分離装置から供給される前記低酸素濃度ガスの量が不足すると判断されることに基づき、前記分離装置から供給される低酸素濃度ガスに加えて、前記EGR手段によって還流された外部EGRを前記燃焼室に供給させる手段とを更に備えることを特徴とする請求項6記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記分離装置によって生成される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスのそれぞれを各別の経路で1の気筒の前記燃焼室に供給する一対の供給通路であり、
前記一対の供給通路のうち前記低酸素濃度ガスを供給する通路と、前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路とを接続する連通通路と、
前記連通通路に設けられて且つ該連通通路の流路面積を調節する第1の流路面積調節手段と、
前記一対の供給通路のうち前記高酸素濃度ガスを供給する通路と、前記分離装置に新気を供給する通路とを接続する新気供給通路と、
前記新気供給通路に設けられて且つ該新気供給通路の流路面積を調節する第2の流路面積調節手段と、
前記内燃機関の負荷が急増する又は該内燃機関の負荷が高いと判断された場合、前記第1の流路面積調節手段によって前記連通通路の流路面積を増大させる処理、及び前記第2の流路面積調節手段によって前記新気供給通路の流路面積を増大させる処理を行う増大手段とを更に備えることを特徴とする請求項6又は7記載の内燃機関のガス供給装置。
【請求項9】
酸素を透過させる分離部材を有して且つ新気が供給される複数の分離装置を更に備え、
前記分離装置は、前記分離装置に供給される新気のうち、前記分離部材を透過する気体を前記高酸素濃度ガスとして供給し、残余を前記低酸素濃度ガスとして供給する機能を有するものであり、
前記供給手段は、前記分離装置から供給される前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスを前記燃焼室に供給するものであり、
前記内燃機関の負荷が高いほど、前記高酸素濃度ガス及び前記低酸素濃度ガスの生成に用いる前記分離装置の数を増大させる手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関のガス供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−32708(P2013−32708A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167989(P2011−167989)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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