説明

内燃機関の制御装置

【課題】アシスト機能付きの過給器を備える内燃機関においてプレアシストを効率的且つ効果的に行う。
【解決手段】車両10において、エンジン200はMAT209を備え、その動作がECU100によって制御される。また、ECU100は、プレアシスト制御処理を実行する。プレアシスト制御では、車両10が走行車線を走行し且つ追い越し車線に接近中であるかが、ナビゲーション処理系400を介して取得される位置情報及び地図データ並びにビデオカメラ500及び映像処理部600を介して取得される画像データ等から判断される。車両10が追い越し車線に接近中である場合、ECU100は、追い越し車線方向への方向指示器300の操作がなされたことをもって追い越し車線への車線変更が行われる可能性が高いと判断し、MAT209のモータ209cを制御してプレアシストを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばMAT(Motor Assist Turbo)等アシスト機構付きの過給器を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、追い越し用にフライングブーストアップを行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたターボチャージャの制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、車両が定常走行か10km/h以下でウィンカが操作された場合に、実際の加速に先んじて電動機により過給圧を上昇せしめ、またスロットル開度を制限して車速の変化を抑制する。ここで、実際に加速が開始された場合にスロットル開度の制限を解除することにより、追い越し時にターボチャージャの応答性を高めることが可能であるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−81531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したフライングブーストアップを含むプレアシストは、過給器の応答性を向上させ得るが、従来の技術では、上述した条件が満たされれば電動機が作動してしまうため、実際に運転者が追い越し走行を所望しない場合であっても頻繁に電動機が作動しかねない。或いは、追い越し走行用の車線が存在しない場合であっても電動機が作動しかねない。即ち、従来の技術には、電動機が無駄に作動しかねないという技術的な問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、効率的且つ効果的に過給器のプレアシストを行うことが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の制御装置は、過給器及び該過給器をアシストするアシスト手段を備えた内燃機関を有する車両において前記内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、前記車両の走行位置に対応する所定種類の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報に基づいて、走行中の車線に隣接する車線への車線変更が行われるか否かを判別する判別手段と、前記車線変更が行われると判別された場合に前記過給器をアシストするための準備動作として規定されるプレアシストが行われるように前記アシスト手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明において「過給器をアシストする」とは、例えば過給器を構成するタービンの回転を促進する等、過給器による過給動作を幾らかなりとも支援又は補助すること等を包括する概念である。
【0008】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、その動作時には、位置情報取得手段によって、例えば、カーナビゲーション装置等を介して供給される各種道路情報、GPS(Global Positioning System)等を介して得られる絶対位置情報或いは車両の周囲が映し出された各種画像情報等の各種形態を採り得る位置情報が取得される。即ち、本発明に係る「位置情報」とは、必ずしも位置そのものの情報でなくてもよく、車両の位置を特定し得る情報を包括する概念である。
【0009】
ここに、「取得」とは、上述したカーナビゲーション装置、GPSに関する各種処理装置、或いはデジタルカメラ又はビデオカメラ等の撮像装置及び撮像された画像又は映像の処理装置等然るべき各種手段を介して直接的に又は間接的に検出或いは生成されること、これら検出或いは生成された電気的又は電子的な信号、情報又はデータ等を電気的又は電子的に受け取ること、或いはこれら電気的又は電子的な信号、情報又はデータ等から予め設定されたアルゴリズムや算出式等に従って導出すること等を包括する概念である。
【0010】
一方、判別手段は、取得された位置情報に基づいて、走行中の車線に隣接する車線への車線変更が行われるか否かを判別する。尚、判別手段は、係る判別の過程において、走行中の車線に他の車線が隣接しているか否かについても判別を行う趣旨である。また、係る判別処理は、未だ車線変更が行われていない段階においてなされるものであり、必ずしも実際の車線変更の有無を表していなくてもよい趣旨である。尚、係る判別に際しての基準は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて係る車線変更が行われるか否かが比較的高精度に判別され得るように設定されていてもよい。
【0011】
制御手段は、判別手段によって係る車線変更が行われると判別された場合に、プレアシストが行われるようにアシスト手段を制御する。ここに、本発明に係る「プレアシスト」とは、過給器をアシストするための準備動作を包括する概念であり、何らこのようなプレアシストがなされない場合と比較して幾らかなりとも過給器のアシストが速やかに行われ得る限りにおいてその態様は何ら限定されない趣旨である。
【0012】
このように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、加速要求等過給器の迅速な動作が期待され易い車線変更時に確実にプレアシストを実行することが可能となる。即ち、効率的且つ効果的に過給器のプレアシストを実行することが可能となるのである。
【0013】
本発明に係る内燃機関の制御装置の一の態様では、前記アシスト手段は電動機を含む。
【0014】
この態様によれば、過給器が、例えばモータ等の電動機を備えた、例えばMATと称される形態を採り得るので、プレアシスト時の制御が比較的簡便となり効果的である。
【0015】
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記位置情報は、前記走行中の車線を含む道路に関する道路情報、前記車両の絶対位置を表す絶対位置情報及び前記走行中の車線の少なくとも一部を含む画像情報のうち少なくとも一つを含む。
【0016】
この態様によれば、位置情報として、前述した如き道路情報、絶対位置情報及び画像情報のうち少なくとも一つを含むので、車線変更が行われるか否かを比較的高精度に判別することが可能となる。
【0017】
尚、この態様では、前記位置情報は、前記道路情報の少なくとも一部として前記走行中の車線が追い越し禁止車線であるか否かを表す情報を含み、前記判別手段は、前記走行中の車線が前記追い越し禁止車線である場合には前記車線変更が行われないと判別してもよい。
【0018】
道路情報の少なくとも一部として、例えばこのように追い越し禁止道路であるか否かといった各種属性情報が含まれる場合、実践的にみて有益である。
【0019】
また、位置情報が道路情報、絶対位置情報及び画像情報の少なくとも一部を含む態様では、前記位置情報は、前記画像情報の少なくとも一部として、前記走行中の車線と前記隣接する車線との境界を規定する指標物の画像を含み、前記判別手段は、前記指標物の画像から前記車両と前記指標物との位置関係を特定すると共に該位置関係に基づいて前記車線変更が行われるか否かを判別してもよい。
【0020】
この場合、判別手段は、画像情報から、例えば車線同士の境界に形成される白線等の指標物と車両との位置関係を特定し、係る位置関係に基づいて、例えば、車両が指標物に近付いているか、近付く速度はどの程度なのか、或いは車両と指標物との距離が所定の基準値未満となったか等個別具体的に設定され得る判断基準に従って比較的高精度に車線変更の実行有無を判別することが可能となる。
【0021】
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記車両は前記車両の進行方向を告知する方向指示器を備え、前記判別手段は更に、前記方向指示器の動作状態に基づいて前記車線変更が行われるか否かを判別する。
【0022】
この態様によれば、ウィンカ等の方向指示器の動作状態、例えば、運転者によって操作がなされたか、左右何れかに方向指示がなされたか、方向指示がなされてからの経過時間はどの程度なのか等の各種判断基準に従って、車線変更の可能性を一層高精度に判別することが可能となる。
【0023】
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記車両と前記隣接する車線を走行する他の車両との相対距離及び相対速度のうち少なくとも一方を特定する特定手段を更に具備し、前記制御手段は、前記車線変更が行われると判別される場合であっても、前記特定される少なくとも一方が所定の閾値未満である場合には前記プレアシストを禁止する。
【0024】
この態様によれば、特定手段によって、隣接する車線を走行する他の車両、例えば、隣接する車線へ車線変更が行われた際に直前又は直後を走行することになる車両との相対距離及び相対速度のうち少なくとも一方が特定される。
【0025】
係る少なくとも一方が所定の閾値未満である場合、車線変更が行われても加速や追い越し走行等が行われない可能性が高いため、プレアシストの必要性は比較的低いものとなり易い。この態様によれば、このような場合にはプレアシストが禁止されるため、一層アシスト手段を効率的に使用することが可能となる。
【0026】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<発明の実施形態>
以下、適宜図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0028】
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10のブロック図である。
【0029】
図1において、車両10は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)100、エンジン200、方向指示器300、ナビゲーション処理系400、ビデオカメラ500及び映像処理部600を備える。
【0030】
ECU100は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作を制御すると共に、本発明に係る「内燃機関の制御装置」の一例として機能するように構成されている。
【0031】
エンジン200は、不図示の車両の動力源たるガソリンエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。ここで、図2を参照して、エンジン200の要部構成について、その動作の一部を交えて説明する。ここに、図2は、ECU100及びエンジン200を含むエンジンシステムの模式図である。
【0032】
図2において、エンジン200は、シリンダブロック内にシリンダ201が4本直列に配置されてなる直列4気筒ガソリンエンジンである。エンジン200は、各シリンダ内部において空気と燃料との混合気が燃焼するに際して生じる不図示のピストンの往復運動を、コネクティングロッド及びクランクシャフト(いずれも不図示)を介して回転運動に変換することが可能に構成されている。尚、本発明に係る「内燃機関」とは、燃料の燃焼を動力に変換する機関を包括する概念であり、ガソリンエンジンに限らず、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジン等であってもよい。
【0033】
シリンダ201内の燃焼室には、吸気マニホールド202を介して供給される空気と、吸気マニホールド202に連通する不図示の吸気ポートにおいて不図示のインジェクタから噴射供給される燃料との混合気が、二個の吸気バルブ203を介して吸入される。この際、係る混合気は、吸気バルブ203の開弁時に燃焼室内へ供給される構成となっている。
【0034】
燃焼室内部では、燃焼行程において点火プラグ205による点火動作により混合気が燃焼する。燃焼済みの混合気は、不図示の排気ポートに連通する二個の排気バルブ206の開弁時に、排気として係る排気ポートに排出される。係る排気は、排気ポートに連通する排気マニホールド208を介して、MAT209に供給される。
【0035】
MAT209は、タービン209a及びコンプレッサ209b(即ち、本発明に係る「過給器」の一例)並びにモータ209c(即ち、本発明に係る「アシスト手段」の一例)を備える。
【0036】
排気マニホールド208を介して供給される排気の一部は、タービン209aに流入し、タービン209aを回転させる。このタービン209aの回転は、タービン209aと同軸に構成されたコンプレッサ209bへ伝達され、コンプレッサ209bを作動させる動力となる。尚、タービン209aの回転速度(時間当たりの回転数)は、回転センサ210によって常に検出されており、回転センサ210と電気的に接続されたECU100によって常に把握される構成となっている。また、タービン209aに流入しない排気は、排気管211及び触媒装置212等を順次介して車両外等へ排気される。
【0037】
一方、モータ209cは、ECU100と電気的に接続されており、ECU100の制御によりその動作が制御される電動機である。モータ209cは、タービン209aに動力を供給することが可能に構成されており、その力行時にタービン209aの回転をアシストすることが可能に構成されている。モータ209cによってアシストされた状態において、タービン209aは、排気のみによる回転と比較して高速に回転することが可能であり、より高い過給圧を実現することが可能である。
【0038】
コンプレッサ209bは、吸気管213に接続されている。吸気管213には、外部から吸入された空気を浄化するためのエアクリーナ214が設置されており、エアクリーナ214によって浄化された空気が、タービン209aの回転に伴って作動するコンプレッサ209bによってインタークーラ216に大気圧以上の過給圧で圧送される構成となっている。インタークーラ216では更にこの圧送された空気が冷却され、吸入効率が高められる。
【0039】
吸気管213は、前述の吸気マニホールド202に連通しており、インタークーラ216を通過した吸入空気は、スロットルバルブ218を介して吸気マニホールド202へ供給される。吸気マニホールド202には、吸気マニホールド内の圧力を検出するためのインマニ圧センサ220が設置されており、ECU100と電気的に接続されている。従って、インマニ圧センサ220によって検出されたインマニ圧は、常にECU100によって把握される構成となっている。
【0040】
尚、吸気管213には、吸入空気の質量流量を検出するエアフローメータ215及び過給器209の過給圧を検出する過給圧センサ217が設置されている。エアフローメータ215及び過給圧センサ217によって検出された吸気量及び過給圧は、夫々エアフローメータ215及び過給圧センサ217と電気的に接続されたECU100によって常に把握される構成となっている。
【0041】
スロットルバルブ218は、電子制御式のバルブであり、その開閉動作が不図示のスロットルバルブモータによって制御されるように構成されている。スロットルバルブモータは、ECU100と電気的に接続されており、その駆動力がECU100によって制御されている。ECU100は、アクセル開度や車速或いは内燃機関の機関回転数等に応じてスロットルバルブモータを駆動制御し、スロットルバルブ218の開閉状態を制御することが可能に構成されている。尚、スロットルバルブ218は、アクセルペダルと機械的に連結されていないため、ECU100は、運転者のアクセルペダル操作とは無関係にスロットルバルブ218の開閉状態を制御することが可能である。また、スロットルバルブ218の開度(スロットル開度)は、スロットル開度センサ219によって検出されており、スロットル開度センサ219と電気的に接続されたECU100によって常に把握される構成となっている。
【0042】
吸気バルブ203は、吸気カムシャフト221に連結された吸気カム204によってその開閉動作が制御される。吸気カムシャフト221は、不図示のシリンダヘッド上に回転可能且つ軸方向に平行移動可能に支持されている。
【0043】
吸気カムシャフト221の一方端には、不図示の吸気側タイミングスプロケットを備えた回転位相差可変アクチュエータ222が設けられている。この吸気側タイミングスプロケットは、不図示のタイミングチェーンを介してクランクシャフト側のスプロケットに連結されており、クランクシャフトの回転がタイミングチェーンを介して伝達される構成となっている。従って、吸気側タイミングスプロケットは、クランクシャフトの回転に同期して回転するようになっている。回転位相差アクチュエータ222は、吸気カムシャフト221を、クランクシャフトに対し進角又は遅角させることによって回転位相差を制御することが可能に構成されたアクチュエータであり、例えば吸気カムシャフト221をクランクシャフトに対し進角させるように回転位相差が設定された場合には、吸気バルブ203の開閉タイミングは相対的に進角、即ち早くなる。回転位相差可変アクチュエータ222は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100の制御に従って係る回転位相差が制御される構成となっている。
【0044】
吸気カムシャフト221の他方端には、リフト量可変アクチュエータ223が設置されており、ECU100と電気的に接続されることにより、ECU100に制御される構成となっている。リフト量可変アクチュエータ223は、吸気カムシャフト221をそのシャフト方向に移動させることが可能に構成されたアクチュエータである。ここで、吸気カム204は、係るシャフト方向にカムプロフィールが連続的に変化する三次元的な形状を有しており、リフト量可変アクチュエータ223によって吸気カムシャフト221がシャフト方向に移動された場合、連続的に変化するカムプロフィールによって吸気バルブ203のリフト量が連続的に変化するようになっている。吸気バルブ203のリフト量が連続的に変化するとは即ち、吸気バルブ203の作用角が連続的に変化することを意味する。例えば、吸気バルブ203の作用角が相対的に大きくなる方向に吸気カムシャフト221が移動された場合、吸気バルブ203の開弁タイミングが早くなり、同時に閉弁タイミングが遅くなって開弁期間が相対的に長くなる。従って、燃焼室内に導かれる吸気量は相対的に多くなる。
【0045】
排気バルブ206は、排気カムシャフト224に連結された排気カム207によってその開閉動作が制御される。排気カムシャフト224は、不図示のシリンダヘッド上に回転可能且つ軸方向に平行移動可能に支持されている。
【0046】
排気カムシャフト224の一方端には、不図示の排気側タイミングスプロケットを備えた回転位相差可変アクチュエータ225が設けられている。この排気側タイミングスプロケットは、不図示のタイミングチェーンを介してクランクシャフト側のスプロケットに連結されており、クランクシャフトの回転がタイミングチェーンを介して伝達される構成となっている。従って、排気側タイミングスプロケットは、クランクシャフトの回転に同期して回転するようになっている。回転位相差アクチュエータ225は、排気カムシャフト224を、クランクシャフトに対し進角又は遅角させることによって回転位相差を制御することが可能に構成されたアクチュエータであり、例えば排気カムシャフト224をクランクシャフトに対し進角させるように回転位相差が設定された場合には、排気バルブ206の開閉タイミングは相対的に進角、即ち早くなる。回転位相差可変アクチュエータ225は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100の制御に従って係る回転位相差が制御される構成となっている。
【0047】
排気カムシャフト224の他方端には、リフト量可変アクチュエータ226が設置されており、ECU100と電気的に接続されることにより、ECU100に制御される構成となっている。リフト量可変アクチュエータ226は、排気カムシャフト224をそのシャフト方向に移動させることが可能に構成されたアクチュエータである。ここで、排気カム207は、係るシャフト方向にカムプロフィールが連続的に変化する三次元的な形状を有しており、リフト量可変アクチュエータ226によって排気カムシャフト224がシャフト方向に移動された場合、連続的に変化するカムプロフィールによって排気バルブ206のリフト量が連続的に変化するようになっている。排気バルブ206のリフト量が連続的に変化するとは即ち、排気バルブ206の作用角が連続的に変化することを意味する。例えば、排気バルブ206の作用角が相対的に大きくなる方向に排気カムシャフト224が移動された場合、排気バルブ206の開弁タイミングが早くなり、同時に閉弁タイミングが遅くなって開弁期間が相対的に長くなる。
【0048】
図1に戻り、方向指示器300は、車両10の進行方向を車両外に告知するために設けられた不図示のウィンカランプを作動させるための操作レバーであり、車両10の運転者による操作が可能に構成されている。方向指示器300は、ECU100と電気的に接続されており、方向指示器300の操作状態は、常にECU100によって把握される構成となっている。
【0049】
ナビゲーション処理系400は、HDD等然るべき記憶手段に記憶された地図データに基づいて液晶表示パネル等の表示手段上に表示される地図画面上に、GPS等の測位システムを介して得られた絶対位置情報を表示することが可能に構成されている。ナビゲーション処理系400は、ECU100と電気的に接続されており、車両10が走行している道路に関する情報、より具体的には車両10が現在片側何車線の道路においていずれの車線を走行中であるのかといった情報は、ECU100によって把握される構成となっている。
【0050】
ビデオカメラ500は、車両10の側方又は前方に取り付けられた撮像システムであり、当該側方又は前方部分における車両10の走行路面を撮像することが可能に構成されている。ビデオカメラ500によって撮像された路面の画像データは、映像処理部600によって所定の映像処理がなされる。映像処理部600によって映像処理がなされた画像データは、後述するプレアシスト制御処理において映像処理部600と電気的に接続されたECU100によって利用される構成となっている。
【0051】
<実施形態の動作>
排気によってタービン209aを回転せしめる構成に鑑みれば、過給器209による過給動作は、加速要求時等の過渡期間においては特に遅れを生じ易い。然るに、本実施形態の構成によれば、実際にタービン209aの回転をアシストする前段階としてモータ209cに通電し、加速要求と共に遅延無くタービン209aの回転をアシストすべくプレアシストを実行することが可能であり、係るプレアシストにより、過給遅延を軽減することが可能である。一方で、プレアシスト期間にはモータへの電力供給が行われるから、効率的な電力利用の観点からは、プレアシストは効率的且つ効果的に実行されるのが望ましい。そこで、本実施形態では、ECU100が、ROMに格納される制御プログラムに従ってプレアシスト制御処理を実行し、プレアシストを効率的且つ効果的に実行せしめている。
【0052】
ここで、図3を参照してプレアシスト制御処理の詳細について説明する。ここに、図3は、プレアシスト制御処理のフローチャートである。
【0053】
図3において、始めに、ECU100は、位置情報を取得する(ステップA10)。この際、ECU100は、ナビゲーション処理系400から送信される絶対位置データ、然るべき記憶手段から読み出された、係る絶対位置データに対応する地図データ及び映像処理部600から送信される画像データ等を取得する。
【0054】
次に、ECU100は、車両10が走行車線を走行中であるか否かを判別する(ステップA11)。本実施形態において「走行車線」とは、例えば高速道路や車両専用道路等における一般的な意味合いでの走行車線を含み、更には単に右側に他の車線が隣接している車線をも包括する概念である。即ち、ステップA11に係る処理では、車両10が、片側二車線以上の道路を走行中であるか否かが判別される。ECU100は、ステップA10に係る処理において取得された絶対位置データ及び地図データに基づいて、車両10が片側二車線以上の道路を走行中であるか否かを判別する。更に、ECU100は、地図データに含まれる道路情報によって、走行中の車線が追い越し禁止車線であるか否かを判別する。本実施形態では、走行中の車線が追い越し禁止車線である場合、便宜的に走行車線を走行中ではないと判別される。
【0055】
走行車線を走行中ではない場合(ステップA11:NO)、ECU100は、処理をステップA10に戻し、これまでの処理を繰り返す。一方、走行車線を走行中である場合(ステップA11:YES)、ECU100は、車両10が追い越し車線に接近中であるか否かを判別する(ステップA12)。
【0056】
ここで、本実施形態における「追い越し車線」とは、走行車線と対応する概念であり、走行車線の右側に隣接する車線を指す。追い越し車線に接近中であるか否かの判別は、ステップA11に係る処理において取得された画像データに基づいて実行される。即ち、係る画像データによって表される画像において、走行車線と追い越し車線との境界を規定する白線の相対位置が車両10に接近する方向へ変化している場合、車両10が追い越し車線へ接近中であると判別される。尚、車両10においてビデオカメラ500の設置位置は既知であるから、係る画像に映し出された白線の位置から、車両10と白線との距離を特定することができる。ステップA12に係る処理では、予めROMに格納された基準値と係る距離を表す値との比較及び白線への接近速度等に基づいて、車両10が追い越し車線に接近中であるか否かが総合的に判別される。
【0057】
車両10が追い越し車線に接近中ではない場合(ステップA12:NO)、ECU100は処理をステップA10に戻し、これまでの処理を繰り返すと共に、車両10が追い越し車線に接近中である場合(ステップA12:YES)、更に方向指示器300が追い越し車線方向に操作されたか否かを判別する(ステップA13)。追い越し車線方向とは、即ち、車両10の右方向であり、ECU100は、方向指示器300から、右側のウィンカランプを点灯させる旨の入力がなされたか否かを判別する。
【0058】
追い越し車線方向への方向指示器300の操作がなされていない場合(ステップA13:NO)、ECU100は、処理をステップA10に戻し、これまでの処理を繰り返す。一方で、追い越し車線方向への方向指示器300の操作がなされた場合(ステップA13:YES)、ECU100は、車線変更が行われる可能性が高いものと判断し、MAT209のモータ209cに通電してプレアシストを実行する(ステップA14)。プレアシストが実行されることによって、例えば実際の車線変更に際し運転者による急激なアクセル操作がなされたとしても、タービン209a及びコンプレッサ208bの過給遅延が軽減され、速やかに所望の過給圧を得ることが可能となり効果的である。
【0059】
一方、プレアシストが実行されたまま、実際には車線変更が行われない場合も考え得る。そこで、ECU100は、プレアシストを実行すると、プレアシスト解除条件が満たされたか否かを判別する(ステップA15)。
【0060】
ここで、本実施形態におけるプレアシスト解除条件とは、実際に車線変更がなされること等によってMAT209のモータアシスト実行条件が満たされ、モータ209cによるアシストが実行された場合や、プレアシストが実行されたまま一定期間モータアシストが実行されない場合等を指す。尚、係るプレアシスト解除条件は、車両10の仕様、性能又は使用環境等に応じて個別具体的に設定されてもよいし、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、プレアシストを効果的に実行しつつモータ209cを効率的に動作させ得るように設定されていてもよい。
【0061】
プレアシスト解除条件が満たされない場合(ステップA15:NO)、ECU100は、ステップA15を繰り返し実行してプレアシストの実行を継続すると共に、プレアシスト解除条件が満たされた場合には(ステップA15:YES)、処理をステップA10に戻して一連の処理を繰り返す。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る車両10によれば、プレアシスト制御処理によって、加速要求を伴い易い追い越し車線への車線変更が行われる場合にプレアシストが実行される。従って、効率的且つ効果的である。
【0063】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。始めに、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る車両11の構成について説明する。ここに、図4は、車両11のブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0064】
図4において、車両11は、レーダ700を備える点において第1実施形態に係る車両10と相違している。
【0065】
レーダ700は、例えば、周波数76〜77GHz帯の電波を使用する車載用ミリ波レーダであり、ECU100と電気的に接続され、ECU100の制御に従って動作するように構成されている。レーダ700は、一定の時間間隔でミリ波を出射し、対象物によって反射した反射波を受信することが可能に構成される。ECU100は、レーダ700が受信した反射波に基づいて、車両10に対する対象物の相対速度を算出することが可能に構成されており、本実施形態では特に、本発明に係る特定手段の一例としても機能するように構成されている。
【0066】
尚、レーダ700の構成は、ミリ波レーダに限定されない。例えば、赤外線レーダであってもよい。また、レーダ700の使用目的は、本実施形態に係るプレアシストに限定されず、例えば、ACC(Auto Cruise Control:車速維持制御装置)等に利用されてもよい。
【0067】
次に、図5を参照して、第2実施形態に係るプレアシスト制御処理の詳細について説明する。ここに、図5は、第2実施形態に係るプレアシスト制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図3と重複する箇所には、同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0068】
図5において、追い越し車線方向への方向指示器300の操作がなされた場合(ステップA13:YES)、車両10と、追い越し車線を走行中の他の車両との相対速度ΔVを算出する(ステップB10)。ECU100は、既に述べたように、レーダ700の反射波に基づいて係る相対速度ΔVを算出する。
【0069】
相対速度ΔVが算出されると、ECU100は、相対速度ΔVが予め設定されROMに格納される基準値ΔVth以上であるか否かを判別する(ステップB11)。相対速度ΔVが基準値ΔVth未満である場合(ステップB11:NO)、ECU100は、追い越し車線への車線変更が行われても、加速要求がなされる可能性が低いものと判断し、プレアシストを実行することなく処理をステップA10に戻して一連の処理を繰り返す。
【0070】
相対速度ΔVが基準値ΔVth以上である場合(ステップB11:YES)、ECU100は、追い越し車線への車線変更後に加速要求が行われる可能性が高いものと判断して、プレアシストを実行する(ステップA14)。
【0071】
このように、第2実施形態に係るプレアシスト制御処理では、追い越し車線への車線変更がなされると判断されても、車線変更後に加速要求が行われる可能性が低いと判断される場合には、プレアシストが実行されない。従って、一層効率的にプレアシストを実行することが可能となる。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のブロック図である。
【図2】図1の車両におけるECU及びエンジンの模式図である。
【図3】ECUが実行するプレアシスト制御処理のフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両のブロック図である。
【図5】第2実施形態に係るプレアシスト制御処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
10…車両、100…ECU、200…エンジン、209…MAT、209a…タービン、209b…コンプレッサ、209c…モータ、300…方向指示器、400…ナビゲーション処理系、500…ビデオカメラ、600…映像処理部、700…レーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器及び該過給器をアシストするアシスト手段を備えた内燃機関を有する車両において前記内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記車両の走行位置に対応する所定種類の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報に基づいて、走行中の車線に隣接する車線への車線変更が行われるか否かを判別する判別手段と、
前記車線変更が行われると判別された場合に前記過給器をアシストするための準備動作として規定されるプレアシストが行われるように前記アシスト手段を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記アシスト手段は電動機を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記位置情報は、前記走行中の車線を含む道路に関する道路情報、前記車両の絶対位置を表す絶対位置情報及び前記走行中の車線の少なくとも一部を含む画像情報のうち少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記位置情報は、前記道路情報の少なくとも一部として前記走行中の車線が追い越し禁止車線であるか否かを表す情報を含み、
前記判別手段は、前記走行中の車線が前記追い越し禁止車線である場合には前記車線変更が行われないと判別する
ことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記位置情報は、前記画像情報の少なくとも一部として、前記走行中の車線と前記隣接する車線との境界を規定する指標物の画像を含み、
前記判別手段は、前記指標物の画像から前記車両と前記指標物との位置関係を特定すると共に該位置関係に基づいて前記車線変更が行われるか否かを判別する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記車両は前記車両の進行方向を告知する方向指示器を備え、
前記判別手段は更に、前記方向指示器の動作状態に基づいて前記車線変更が行われるか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記車両と前記隣接する車線を走行する他の車両との相対距離及び相対速度のうち少なくとも一方を特定する特定手段を更に具備し、
前記制御手段は、前記車線変更が行われると判別される場合であっても、前記特定される少なくとも一方が所定の閾値未満である場合には前記プレアシストを禁止する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−198227(P2007−198227A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16887(P2006−16887)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】