内燃機関の制御装置
【課題】燃焼モードのHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへの切換を、内燃機関の動力の変動を抑制しながら適切に行うことができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】この内燃機関3の制御装置1では、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、SI燃焼モードへの切換に伴うスロットル弁13よりも下流側の吸気通路9内の圧力PBの変化が抑制されるように、変速機6の変速比RTRMを減少側の所定の変速比RTRMCMDに制御する変速比減少制御を実行するとともに、スロットル弁13の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する。
【解決手段】この内燃機関3の制御装置1では、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、SI燃焼モードへの切換に伴うスロットル弁13よりも下流側の吸気通路9内の圧力PBの変化が抑制されるように、変速機6の変速比RTRMを減少側の所定の変速比RTRMCMDに制御する変速比減少制御を実行するとともに、スロットル弁13の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼モードとして、HCCI燃焼モードとSI燃焼モードを有する内燃機関の制御装置に関し、特に、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際の内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この制御装置では、HCCI燃焼モード時には、スロットル弁を所定の大開度に維持し、内燃機関に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を、理論空燃比よりもリーン側に制御する。一方、SI燃焼モード時には、スロットル弁を大開度よりも小さな通常開度に制御し、通常、空燃比を理論空燃比に制御する。また、HCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際には、スロットル弁を大開度から通常開度まで徐々に減少させる。これにより、燃焼モードの切換に伴うトルクの変動を抑制しながら、内燃機関の出力を円滑に低下させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の制御装置では、燃焼モードをSI燃焼モードに切り換える際、スロットル弁の開度を、大開度から通常開度まで大きく閉じ側に制御する。しかし、スロットル弁の開度を制御するための制御信号を出力しても、その後の何回かの燃焼サイクルでは、スロットル弁を駆動するアクチュエータの動作遅れや、空気の供給遅れにより、吸気通路内の圧力がすぐには低下せず、それまでの比較的高い圧力が残留することがあり、その場合、所望の量を上回る空気量が内燃機関に供給される。このため、空気の供給量に応じて、空燃比が理論空燃比になるように燃料の供給量を制御すると、燃料の供給量が増大し、それにより、内燃機関の動力が一時的に増大し、その変動が大きくなることがあり、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、燃焼モードのHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへの切換を、内燃機関の動力の変動を抑制しながら適切に行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、燃焼モードとして、混合気を圧縮着火によって燃焼させるHCCI燃焼モードと、混合気を火花点火によって燃焼させるSI燃焼モードを有する内燃機関3の制御装置1であって、内燃機関3から出力された動力を変速する変速機6と、吸気通路9に設けられ、内燃機関3に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットル弁13と、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換えるためのSI燃焼モード切換条件が成立したか否かを判定する判定手段(実施形態における(以下、本項において同じ)ECU2、図4のステップ3)と、判定手段によってSI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、SI燃焼モードへの切換に伴うスロットル弁13よりも下流側の吸気通路9内の圧力(吸気圧PB)の変化が抑制されるように、変速機6の変速比RTRMを減少側の所定の変速比(目標変速比RTRMCMD)に制御する変速比減少制御を実行するとともに、スロットル弁13の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する切換時制御手段(ECU2、図9のステップ43,45)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この内燃機関の制御装置によれば、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換えるためのSI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、SI燃焼モードへの切換に伴う吸気通路内の圧力の変化が抑制されるように、変速機の変速比を減少側の所定の変速比に制御する変速比減少制御を実行するとともに、スロットル弁の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する。
【0008】
上記のように変速機の変速比を減少側に制御すると、内燃機関の動力が一定の状態では、内燃機関の回転数が低下するとともに、トルクが増大するので、この内燃機関のトルクの増大に応じて、内燃機関への空気の供給量を増大させることができる。このため、変速比を変更しない場合と比較し、スロットル弁開度減少制御によるHCCI燃焼モードからのスロットル弁の開度の減少量を小さくすることができ、それに応じてスロットル弁の切換時間も短くなる。このように、スロットル弁の開度の減少量と切換時間が小さくなることによって、切換時に吸気通路に残留する圧力と残留時間を低減でき、それにより、空気が大きく増大するのを回避することができる。このため、燃焼モードをSI燃焼モードに切り換える際、空気の供給量に応じて、所定の空燃比が得られるように燃料の供給量を制御する場合においても、燃料の供給量が大きく増大することがなくなり、したがって、内燃機関の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を適切に行うことができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、変速機6は、内燃機関3の動力を段階的に変速する有段変速機で構成され、切換時制御手段は、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御とスロットル弁開度減少制御を同時に開始することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、変速機は、内燃機関の動力を段階的に変速する有段変速機で構成されている。このような有段変速機では一般に、変速段の設定にクラッチなどが用いられるため、変速比の変更動作の開始後、目標の変速比への変速比の変更が比較的短時間で完了する。したがって、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御とスロットル弁開度減少制御を同時に開始することにより、空気を過不足なく供給し、内燃機関の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を短時間で行うことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、変速機6は、内燃機関3の動力を無段階に変速する無段変速機で構成され、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御により変速機の変速比が所定の変速比に変更されたか否かを判定する変速比変更判定手段(ECU2、図12のステップ64)をさらに備え、切換時制御手段は、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御を開始し、その後、変速比変更判定手段により、変速機の変速比が所定の変速比に変更されたと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を開始することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、変速機は、内燃機関の動力を無段階に変速する無段変速機で構成されている。このような無段変速機では一般に、有段変速機と異なり、変速比の設定にクラッチなどが用いられないため、変速比の変更動作の開始後、目標の変速比への変速比の変更が完了するまでに比較的長い時間がかかる。このため、変速比減少制御とスロットル弁開度減少制御を同時に開始すると、減少側の所定の変速比への変更の途中、内燃機関のトルクが変更終了後のトルクまで上がりきらない状態で、スロットル弁が減少側に制御されることで、内燃機関に空気が過剰に供給され、内燃機関の動力が大きく変動しやすい。
【0013】
本発明によれば、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときには、変速比減少制御を開始し、その後、変速機の変速比が所定の変速比に変更されたと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を開始する。したがって、変速機による変速比の変更が終了し、内燃機関のトルクが変更終了後のトルクまで上がりきった状態で、スロットル弁の減少側への制御を開始するので、変速比の変更途中における内燃機関の動力の変動を抑制することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関3の制御装置1において、切換時制御手段は、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を実行することによって、内燃機関3に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側から理論空燃比に制御することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を実行することによって、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側から理論空燃比に制御する。したがって、このスロットル弁開度減少制御と変速比減少制御を併せて行うことによって、請求項1による前述した利点を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における制御装置が適用された内燃機関を搭載したハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【図2】図1の内燃機関を概略的に示す図である。
【図3】吸気側動弁機構によって得られる吸気弁のバルブリフト曲線、および排気側動弁機構によって得られる排気弁のバルブリフト曲線を示す図である。
【図4】燃焼制御処理を示すメインフローである。
【図5】HCCI燃焼フラグの設定処理を示すサブルーチンである。
【図6】図5の処理で用いられるマップの一例である。
【図7】HCCI燃焼制御処理を示すサブルーチンである。
【図8】SI燃焼制御処理を示すサブルーチンである。
【図9】本発明の第1実施形態における、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへ切り換える際の切換時制御処理を示すサブルーチンである。
【図10】本発明の第1実施形態において、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際、変速比を変更した場合の動作例を示す図である。
【図11】燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際、変速比を変更しない場合の動作例を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態における、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへ切り換える際の切換時制御処理を示すサブルーチンである。
【図13】本発明の第2実施形態において、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際、変速比を変更した場合の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施形態における制御装置1が適用された内燃機関(以下「エンジン」という)3は、電気モータ4とともに、ハイブリッド車両(以下「車両」という)Vに動力源として搭載されている。
【0018】
この車両Vでは、エンジン3のクランクシャフト3aが電気モータ4の回転軸に直結されるとともに、電気モータ4が、クラッチ5、変速機6および差動ギヤ機構7などを介して、左右の駆動輪8,8に連結されている。クラッチ5は、電磁クラッチタイプのものであり、その締結・遮断状態は、後述するECU2からの制御入力によって制御される。
【0019】
エンジン3は、ガソリンエンジンであり、例えば4つの気筒C(図2に1つのみ図示)を有している。図2に示すように、エンジン3のシリンダヘッド3bには、吸気通路9および排気通路10が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)11および点火プラグ12(ともに図1参照)が、燃焼室3cに臨むように取り付けられている。インジェクタ11から噴射される燃料噴射量QINJは、ECU2からの制御入力によって制御される。点火プラグ12の点火時期もまた、ECU2からの制御入力によって制御される。
【0020】
また、このエンジン3では、燃焼モードとして、インジェクタ11から噴射された燃料を含む混合気を、自己着火によって燃焼させる圧縮着火燃焼モード(以下「HCCI燃焼モード」という)と、点火プラグ12による火花点火によって燃焼させる火花点火燃焼モード(以下「SI燃焼モード」という)とを有し、その切換は、ECU2によって制御される。
【0021】
電気モータ4は、ブラシレスDCモータで構成されており、PDU15を介して、ECU2およびバッテリ16に接続されている。PDU15は、インバータなどを含む電気回路で構成されている。ECU2は、PDU15を介して、電気モータ4とバッテリ16との間の電力の授受を制御する。具体的には、車両Vの加速走行中などに、電気モータ4の出力を制御するとともに、車両Vの減速走行中などに、電気モータ4による電力回生を制御する。
【0022】
エンジン3のクランクシャフト3aには、クランク角センサ21が設けられている。クランク角センサ21は、クランクシャフト3aの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
【0023】
CRK信号は、所定クランク角(例えば30°)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、いずれかの気筒Cにおいてピストン3dが吸気行程の開始時の上死点よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、本実施形態のようにエンジン3が4気筒の場合には、クランク角180゜ごとに出力される。
【0024】
変速機6は、エンジン3から出力された動力を段階的に変速するギヤ式の有段変速機で構成されている。具体的には、変速機6は、入力軸および出力軸6aと、ギヤ比が互いに異なる複数のギヤ列と、これらの複数のギヤ列と入力軸および出力軸6aとの間をギヤ列ごとに接続・遮断するクラッチ(いずれも図示せず)などで構成されており、前進第1段〜第5段と後進1段の変速段を有している。これらの変速段は、ECU2からの制御入力によって切り換えられ、それにより変速比が変更される。
【0025】
変速機6の出力軸6aには、出力軸回転数センサ22が設けられている。出力軸回転数センサ22は、出力軸6aの回転数(以下「出力軸回転数」という)NOUTを検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この出力軸回転数NOUTとエンジン回転数NEに基づいて、変速機6で設定されている変速比RTRMを算出する。
【0026】
また、各気筒Cには、一対の吸気弁14,14(1つのみ図示)および一対の排気弁15,15(1つのみ図示)が設けられている。吸気弁14は吸気側動弁機構40によって開閉され、排気弁15は排気側動弁機構50によって開閉される。
【0027】
吸気側動弁機構40は、通常のカム駆動式のものであり、回転自在の吸気カムシャフト41と、吸気カムシャフト41に一体に設けられた吸気カム42と、ロッカアームシャフト43と、ロッカアームシャフト43に回動自在に支持されるとともに、吸気弁14,14の上端にそれぞれ当接する2つのロッカアーム44などを備えている。
【0028】
吸気カムシャフト41は、吸気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3aに連結されており、クランクシャフト3aが2回転するごとに1回転する。吸気カムシャフト41が回転すると、ロッカアーム44が、吸気カム42で押圧され、ロッカアームシャフト43を中心として回動し、吸気弁14,14を押圧することにより、吸気弁14,14が開閉される。
【0029】
排気側動弁機構50は、排気弁15,15のリフトを2段階に変更するためのものであり、排気カムシャフト51、排気カム52および排気リフト可変機構53などを備えている。
【0030】
排気カムシャフト51は、排気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3aに連結されており、クランクシャフト3aが2回転するごとに1回転する。
【0031】
排気カム52は、排気カムシャフト51と一体に設けられており、気筒Cごとに設けられた2つの低速カム(1つのみ図示)と、気筒Cごとに設けられ、低速カムよりも高いカムノーズを有する1つの高速カム(図示せず)で構成されている。
【0032】
排気リフト可変機構53は、排気弁15のリフト(以下「排気リフト」という)を所定の低リフトまたは高リフトに切り換えるものである。その構成は、本出願人が特開2000−227013号公報で既に提案したものと同様であるので、以下、その概略を簡単に説明する。
【0033】
排気リフト可変機構53は、ロッカアームシャフト54と、これに回動自在に取り付けられ、気筒Cごとに設けられた2つの低速ロッカアーム55,55(1つのみ図示)および高速ロッカアーム(図示せず)と、ECU2に接続された電磁弁56(図2参照)などを備えている。低速ロッカアーム55,55は、各気筒Cの排気弁15,15にそれぞれ当接している。
【0034】
この排気リフト可変機構53のリフトモードは、ECU2からの制御入力により電磁弁56が制御されることによって、低リフトモードおよび高リフトモードに切り換えられる。この低リフトモードでは、排気カムシャフト51が回転すると、低速カム52により低速ロッカアーム55が駆動され、高速カムにより高速ロッカアームが駆動されるものの、高速ロッカアームは、排気弁15とは無関係にロッカアームシャフト54の回りを回動する。それにより、各排気弁15は、低速ロッカアーム55によって開閉駆動され、所定の低リフトでかつ所定の開弁時間で開閉する。
【0035】
一方、高リフトモードでは、高速ロッカアームが低速ロッカアーム55,55に一体に連結され、排気カムシャフト51が回転すると、高速カムにより駆動された高速ロッカアームが回動するとともに、これと一体に低速ロッカアーム55が回動する。その結果、排気弁15は、低速ロッカアーム55を介して高速ロッカアームにより開閉駆動され、それによって、低リフトモードよりもリフトが高くなる(高リフト)。また、高リフトモードでは、低リフトモードと比べて、排気弁15の開弁期間が長くなるとともに、開弁タイミングは進角側に移行する(図3(a)参照)。なお、排気リフト可変機構53のリフトモードは、前述したHCCI燃焼モードのときには低リフトモードに設定され、SI燃焼モードのときには高リフトモードに設定される。
【0036】
以上の構成により、SI燃焼モードのときには、高リフトの排気弁15が閉弁する前に吸気弁14が開弁する(図3(a))。一方、HCCI燃焼モードのときには、低リフトの排気弁15が完全に閉弁した後に吸気弁14が開弁し(同図(b))、それにより、気筒C内に排ガスを残留させる内部EGRが得られる。これにより、気筒C内の温度を排ガスで高めることによって、HCCI燃焼が促進される。
【0037】
吸気通路9には、上流側から順に、スロットル弁13、吸気圧センサ23およびエアフローセンサ24が設けられている。スロットル弁13の開度は、ECU2からの制御入力により、THアクチュエータ13aを介して制御され、それにより、スロットル弁13を通過する吸入空気の量が制御される。
【0038】
吸気圧センサ23は、吸気通路9内の圧力(以下「吸気圧」という)PBを検出し、その検出信号をECU2に出力する。エアフローセンサ24は、エンジン3に吸入される吸入空気量QAを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
【0039】
排気通路10には、LAFセンサ25が設けられている。LAFセンサ25は、理論空燃比よりもリッチなリッチ領域から極リーンまでの広範囲な空燃比の領域において、排気通路10内を流れる排ガス中の酸素濃度をリニアに検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、LAFセンサ25からの検出信号に基づいて、混合気の空燃比AFを算出する。
【0040】
また、ECU2には、アクセル開度センサ26から、車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、車速センサ27から車速VPを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0041】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、前述した各種のセンサ21〜27の検出信号などに応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、エンジン3の燃焼モードを、SI燃焼モードまたはHCCI燃焼モードに決定する。また、ECU2は、決定した燃焼モードに応じて、エンジン3の燃焼状態を制御する燃焼制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2が、判定手段および切換時制御手段に相当する。
【0042】
図4は、上述した燃焼制御処理を示すフローチャートである。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。本処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「1」であるか否かを判別する。
【0043】
図5は、このHCCI燃焼フラグF_HCCIの設定処理を示すサブルーチンである。本処理では、まずステップ11において、エンジン3がHCCI燃焼を実行すべき運転領域(以下「HCCI領域」という)にあるか否かを判別する。この判別は、図6に示すマップに基づき、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて行われる。このマップでは、HCCI領域は、エンジン回転数NEが低〜中回転域にあり、かつ要求トルクPMCMDが低〜中負荷域にある運転領域に設定されている。なお、要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、算出される。
【0044】
このステップ11の判別結果がYESで、エンジン3がHCCI領域にあるときには、HCCI燃焼モードによる燃焼を実行すべき条件が成立しているとして、そのことを表すために、HCCI燃焼フラグF_HCCIを「1」にセットし(ステップ12)、本処理を終了する。一方、ステップ11の判別結果がNOで、エンジン3がHCCI領域にないときには、HCCI燃焼フラグF_HCCIを「0」にセットし(ステップ13)、本処理を終了する。
【0045】
図4に戻り、前記ステップ1の判別結果がYESで、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「1」のときには、HCCI燃焼制御を実行し(ステップ2)、本処理を終了する。
【0046】
図7は、このHCCI燃焼制御処理のサブルーチンを示している。本処理では、まずステップ21において、変速機6の変速比RTRMを制御する。具体的には、エンジン回転数NEおよび車速VPに応じて、変速機6の目標変速比RTRMCMDを算出し、この目標変速比RTRMCMDと変速比RTRMに応じて、制御入力を算出する。そして、この制御入力により、変速機6の変速段を制御することによって、変速比RTRMが制御される。
【0047】
次に、リフトモードを低リフトモードに設定し、排気弁15を低リフトで駆動する(ステップ22)。次いで、スロットル弁13を全開状態に制御する(ステップ23)。次に、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し(ステップ24)、本処理を終了する。このときの目標空燃比AFCMDは、理論空燃比よりもリーン側の所定値AFLに設定される。
【0048】
図4に戻り、前記ステップ1の判別結果がNOで、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「0」のときには、HCCI燃焼フラグF_HCCIが前回と今回の間で「1」から「0」に変化したか否かを判別する(ステップ3)。この判別結果がYESで、決定された燃焼モードがHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換わった直後のときには、アップカウント式の切換タイマの値(以下「切換タイマ値」という)TMを値0にセットした(ステップ7)後、後述する切換時制御を実行し(ステップ8)、本処理を終了する。
【0049】
一方、前記ステップ3の判別結果がNOのときには、切換タイマ値TMが所定時間TMREF(例えば1.5sec)以上であるか否かを判別する(ステップ4)。この判別結果がNOのとき、すなわち、決定された燃焼モードがHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換わった後、所定時間TMREFが経過していないときには、前記ステップ8に進み、切換時制御を引き続き実行する。
【0050】
また、ステップ4の判別結果がYESで、TM≧TMREFのときには、切換フラグF_SWを「0」にセットした(ステップ5)後、SI燃焼制御を実行し(ステップ6)、本処理を終了する。
【0051】
図8は、このSI燃焼制御処理のサブルーチンを示している。本処理では、まずステップ31において、前記ステップ21と同様、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、変速機6の変速比RTRMを制御する。
【0052】
次に、リフトモードを高リフトモードに設定し、排気弁15を高リフトで駆動する(ステップ32)。次いで、スロットル弁13の開度を制御する(ステップ33)。具体的には、アクセル開度APに応じて、スロットル弁13の開度の目標値を算出し、この目標値に応じてTHアクチュエータ13aを制御することによって、スロットル弁13の開度が制御される。
【0053】
次に、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し(ステップ34)、本処理を終了する。このときの目標空燃比AFCMDは、理論空燃比に相当する所定値AFSに設定される。
【0054】
図9は、前記ステップ8で実行される切換時制御処理のサブルーチンを示している。本処理では、まずステップ41において、切換フラグF_SWが「1」であるか否かを判別する。切換時制御を開始した最初のループでは、前記ステップ5の実行により、ステップ41の判別結果がNOになり、その場合には、切換フラグF_SWを「1」にセットする(ステップ42)とともに、変速機6の変速段を1段階、シフトアップする(ステップ43)ことによって、変速比RTRMを減少側に制御する。
【0055】
一方、切換時制御を開始した2回目以降のループでは、前記ステップ42の実行により、前記ステップ41の判別結果がYESになり、その場合には、シフトアップされた変速段を保持する(ステップ47)。
【0056】
前記ステップ43または47に続くステップ44では、リフトモードを高リフトモードに設定し、排気弁15を高リフトで駆動する。次いで、前記ステップ33と同様、アクセル開度APに応じて、スロットル弁13の開度を制御する(ステップ45)ことによって、スロットル弁13を全開状態から減少側に制御する。次に、前記ステップ34と同様、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し(ステップ46)、本処理を終了する。
【0057】
図10は、これまでに説明した燃焼制御処理によって得られる動作例を示している。この例では、タイミングt0以前では、燃焼モードがHCCI燃焼モードに設定されている。これにより、スロットル弁13が全開状態に制御され、目標空燃比AFCMDは、理論空燃比よりもリーン側の所定値AFLに設定されている。また、このときの変速機6の変速段は第3段に設定されている。
【0058】
この状態から、タイミングt0において、燃焼モードがSI燃焼モードに切り換えられると、変速機6の変速段が第3段から第4段にシフトアップされる(図9のステップ43)とともに、スロットル弁13の開度が減少側に制御される(ステップ45)。また、このときには、排気弁15が低リフトから高リフトに切り換えられる(ステップ44)とともに、目標空燃比AFCMDが理論空燃比に相当する所定値AFSに設定される。
【0059】
この変速機6のシフトアップに伴って、エンジン回転数NEが低下するとともにエンジントルクが増大するので、このエンジントルクの増大に応じて、エンジン3への空気の供給量を増大させることができる。このため、図11に示す、変速比RTRMを変更しない場合と比較して、スロットル弁13の開度の減少量が小さくなり、それに応じてスロットル弁13の切換時間も短くなる。このように、スロットル弁13の開度の減少量と切換時間が小さくなることによって、切換時に吸気通路9に残留する吸気圧PBと残留時間を低減でき、それにより、エンジン3に吸入される空気が大きく増大するのを回避することができる。また、吸入空気量QAに応じて、目標空燃比AFCMDが、理論空燃比に相当する所定値AFSが得られるように燃料噴射量QINJを制御するので、燃料噴射量QINJが大きく増大することがなくなり、したがって、エンジン3の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を適切に行うことができる。
【0060】
また、変速機6の変速段の設定がクラッチ用いて行われるので、変速比RTRMの変更動作の開始後、目標変速比への変速比RTRMの変更が比較的短時間で完了する。したがって、SI燃焼モードに切り換えられたときに、変速機6のシフトアップと、スロットル弁13の開度の減少側への制御を同時に行う(図9のステップ43,45)ことにより、空気を過不足なく供給し、エンジン3の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を短時間で行うことができる。
【0061】
さらに、SI燃焼モードに切り換えられたときに、目標空燃比AFCMDをリーン側の所定値AFLから理論空燃比に相当する所定値AFSに設定するとともに、スロットル弁13を減少側に制御することによって、空燃比AFを理論空燃比に制御する。したがって、このスロットル弁13の減少側制御と変速機6のシフトアップを併せて行うことによって、前述した利点を有効に得ることができる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、前述した第1実施形態と比較して、変速機6の構成のみが異なり、ハード上の他の構成については同じである。この変速機6は、エンジン3から出力された動力を無段階に変速するベルト式の無段変速機で構成されている。具体的には、変速機6は、ドライブプーリと、ドリブンプーリと、両プーリに巻き掛けられ、前者の動力を後者に伝達するベルト(いずれも図示せず)などで構成されている。変速機6の変速比RTRMは、ECU2からの制御入力によりCVTアクチュエータ(図示せず)を制御することで、一方のプーリを油圧で無段階に駆動し、両プーリの有効径を変更することによって、変更される。
【0063】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様、燃焼制御処理が実行され、そのうちの切換時制御の実行内容の一部のみが第1実施形態と異なる。したがって、本実施形態の切換時制御処理を示す図12においては、図9に示した第1実施形態の切換時制御処理と同じ実行内容について、同一のステップ番号を付し、異なる実行内容を中心として説明を行うものとする。なお、本実施形態では、ECU2が、判定手段、切換時制御手段および変速比変更判定手段に相当する。
【0064】
本処理では、まずステップ41において、切換フラグF_SWが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、切換時制御を開始した最初のループのときには、切換フラグF_SWを「1」にセットする(ステップ42)とともに、変速機6の変速比RTRMを減少側に制御する(ステップ61)。具体的には、HCCI燃焼モード時よりも小さな目標変速比RTRMCMDを設定するとともに、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDになるようにCVTアクチュエータを駆動する。
【0065】
次に、リフトモードを低リフトモードに設定し、排気弁15を引き続き低リフトで駆動する(ステップ62)とともに、スロットル弁13を全開状態に制御する(ステップ63)。
【0066】
一方、前記ステップ41の判別結果がYESのときには、検出された変速比RTRMが目標変速比RTRMCMD以下であるか否かを判別する(ステップ64)。この判別結果がNOで、RTRM>RTRMCMDのときには、変速比RTRMの目標変速比RTRMCMDへの変更が完了していないとして、前記ステップ62以降に進み、排気弁15を引き続き低リフトで駆動するとともに、スロットル弁13を全開状態に制御する。
【0067】
また、ステップ64の判別結果がYESで、変速比RTRM≦目標変速比RTRMCMDのときには、リフトモードを高リフトモードに設定し、排気弁15を高リフトで駆動する(ステップ44)とともに、アクセル開度APに応じて、スロットル弁13の開度を制御する(ステップ45)。
【0068】
前記ステップ45または63に続くステップ46では、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し、本処理を終了する。
【0069】
図13は、これまでに説明した第2実施形態による燃焼制御処理によって得られる動作例を示している。この例では、タイミングt0以前では、燃焼モードがHCCI燃焼モードに設定されており、それに応じて、スロットル弁13が全開状態に制御され、目標空燃比AFCMDは、理論空燃比よりもリーン側の所定値AFLに設定されている。
【0070】
この状態から、タイミングt0において、燃焼モードがSI燃焼モードに切り換えられると、変速機6の変速比RTRMが減少側の目標変速比RTRMCMDに制御される(図12のステップ61)。このとき、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDに変更されるまでの間(t0〜t1)は、排気弁15は低リフトに保持され(ステップ62)、スロットル弁13は全開状態に制御される(ステップ63)とともに、点火プラグ12による点火は停止される。以上のように、変速比RTRMの目標変速比RTRMCMDへの変更が完了するまでは、HCCI燃焼が継続して行われる。
【0071】
その後、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDに達し、目標変速比RTRMCMDへの変更が完了したときに(t1)、排気弁15を高リフトで駆動する(ステップ44)とともに、スロットル弁13の開度を減少側に制御する(ステップ45)。また、点火プラグ12による点火が実行され、SI燃焼が行われる。
【0072】
以上のように、本実施形態の変速機6は、ベルト式の無段変速機で構成され、その変速比RTRMの設定が、プーリを無段階に駆動することによって行われるので、変速比RTRMの変更動作の開始後、目標変速比RTRMCMDへの変速比RTRMの変更が完了するまでに比較的長い時間がかかる。このため、本実施形態によれば、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「1」から「0」に切り換えられたときに、変速比RTRMの減少側の目標変速比RTRMCMDへの制御を開始し、その後、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDに達したときに、スロットル弁13の開度を減少側に制御する。したがって、変速機6による変速比RTRMの変更が完了し、エンジン3のトルクが変速比RTRMの変更完了後のトルクまで上がりきった状態で、スロットル弁13の減少側への制御を開始するので、変速比RTRMの変更中におけるエンジン3の動力の変動を抑制することができる。
【0073】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態では、変速比を減少側に制御する変速比減少制御として、変速機6の変速段を1段階のみシフトアップさせているが、これに限らず、2段階でシフトアップさせてもよい。
【0074】
また、第2実施形態では、変速比RTRMの変更が完了したか否かの判定を、検出された変速比RTRMと目標変速比RTRMCMDとの比較結果に基づいて行っているが、これに限らず、変速比の変更動作の開始時からの経過時間に基づいて行ってもよい。
【0075】
さらに、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 制御装置
2 ECU(判定手段、切換時制御手段および変速比変更判定手段)
3 エンジン
6 変速機
9 吸気通路
13 スロットル弁
PB 吸気圧(吸気通路内の圧力)
RTRMCMD 目標変速比(所定の変速比)
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼モードとして、HCCI燃焼モードとSI燃焼モードを有する内燃機関の制御装置に関し、特に、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際の内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この制御装置では、HCCI燃焼モード時には、スロットル弁を所定の大開度に維持し、内燃機関に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を、理論空燃比よりもリーン側に制御する。一方、SI燃焼モード時には、スロットル弁を大開度よりも小さな通常開度に制御し、通常、空燃比を理論空燃比に制御する。また、HCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際には、スロットル弁を大開度から通常開度まで徐々に減少させる。これにより、燃焼モードの切換に伴うトルクの変動を抑制しながら、内燃機関の出力を円滑に低下させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の制御装置では、燃焼モードをSI燃焼モードに切り換える際、スロットル弁の開度を、大開度から通常開度まで大きく閉じ側に制御する。しかし、スロットル弁の開度を制御するための制御信号を出力しても、その後の何回かの燃焼サイクルでは、スロットル弁を駆動するアクチュエータの動作遅れや、空気の供給遅れにより、吸気通路内の圧力がすぐには低下せず、それまでの比較的高い圧力が残留することがあり、その場合、所望の量を上回る空気量が内燃機関に供給される。このため、空気の供給量に応じて、空燃比が理論空燃比になるように燃料の供給量を制御すると、燃料の供給量が増大し、それにより、内燃機関の動力が一時的に増大し、その変動が大きくなることがあり、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、燃焼モードのHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへの切換を、内燃機関の動力の変動を抑制しながら適切に行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、燃焼モードとして、混合気を圧縮着火によって燃焼させるHCCI燃焼モードと、混合気を火花点火によって燃焼させるSI燃焼モードを有する内燃機関3の制御装置1であって、内燃機関3から出力された動力を変速する変速機6と、吸気通路9に設けられ、内燃機関3に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットル弁13と、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換えるためのSI燃焼モード切換条件が成立したか否かを判定する判定手段(実施形態における(以下、本項において同じ)ECU2、図4のステップ3)と、判定手段によってSI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、SI燃焼モードへの切換に伴うスロットル弁13よりも下流側の吸気通路9内の圧力(吸気圧PB)の変化が抑制されるように、変速機6の変速比RTRMを減少側の所定の変速比(目標変速比RTRMCMD)に制御する変速比減少制御を実行するとともに、スロットル弁13の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する切換時制御手段(ECU2、図9のステップ43,45)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この内燃機関の制御装置によれば、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換えるためのSI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、SI燃焼モードへの切換に伴う吸気通路内の圧力の変化が抑制されるように、変速機の変速比を減少側の所定の変速比に制御する変速比減少制御を実行するとともに、スロットル弁の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する。
【0008】
上記のように変速機の変速比を減少側に制御すると、内燃機関の動力が一定の状態では、内燃機関の回転数が低下するとともに、トルクが増大するので、この内燃機関のトルクの増大に応じて、内燃機関への空気の供給量を増大させることができる。このため、変速比を変更しない場合と比較し、スロットル弁開度減少制御によるHCCI燃焼モードからのスロットル弁の開度の減少量を小さくすることができ、それに応じてスロットル弁の切換時間も短くなる。このように、スロットル弁の開度の減少量と切換時間が小さくなることによって、切換時に吸気通路に残留する圧力と残留時間を低減でき、それにより、空気が大きく増大するのを回避することができる。このため、燃焼モードをSI燃焼モードに切り換える際、空気の供給量に応じて、所定の空燃比が得られるように燃料の供給量を制御する場合においても、燃料の供給量が大きく増大することがなくなり、したがって、内燃機関の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を適切に行うことができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、変速機6は、内燃機関3の動力を段階的に変速する有段変速機で構成され、切換時制御手段は、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御とスロットル弁開度減少制御を同時に開始することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、変速機は、内燃機関の動力を段階的に変速する有段変速機で構成されている。このような有段変速機では一般に、変速段の設定にクラッチなどが用いられるため、変速比の変更動作の開始後、目標の変速比への変速比の変更が比較的短時間で完了する。したがって、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御とスロットル弁開度減少制御を同時に開始することにより、空気を過不足なく供給し、内燃機関の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を短時間で行うことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、変速機6は、内燃機関3の動力を無段階に変速する無段変速機で構成され、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御により変速機の変速比が所定の変速比に変更されたか否かを判定する変速比変更判定手段(ECU2、図12のステップ64)をさらに備え、切換時制御手段は、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、変速比減少制御を開始し、その後、変速比変更判定手段により、変速機の変速比が所定の変速比に変更されたと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を開始することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、変速機は、内燃機関の動力を無段階に変速する無段変速機で構成されている。このような無段変速機では一般に、有段変速機と異なり、変速比の設定にクラッチなどが用いられないため、変速比の変更動作の開始後、目標の変速比への変速比の変更が完了するまでに比較的長い時間がかかる。このため、変速比減少制御とスロットル弁開度減少制御を同時に開始すると、減少側の所定の変速比への変更の途中、内燃機関のトルクが変更終了後のトルクまで上がりきらない状態で、スロットル弁が減少側に制御されることで、内燃機関に空気が過剰に供給され、内燃機関の動力が大きく変動しやすい。
【0013】
本発明によれば、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときには、変速比減少制御を開始し、その後、変速機の変速比が所定の変速比に変更されたと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を開始する。したがって、変速機による変速比の変更が終了し、内燃機関のトルクが変更終了後のトルクまで上がりきった状態で、スロットル弁の減少側への制御を開始するので、変速比の変更途中における内燃機関の動力の変動を抑制することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関3の制御装置1において、切換時制御手段は、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を実行することによって、内燃機関3に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側から理論空燃比に制御することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、スロットル弁開度減少制御を実行することによって、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側から理論空燃比に制御する。したがって、このスロットル弁開度減少制御と変速比減少制御を併せて行うことによって、請求項1による前述した利点を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における制御装置が適用された内燃機関を搭載したハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【図2】図1の内燃機関を概略的に示す図である。
【図3】吸気側動弁機構によって得られる吸気弁のバルブリフト曲線、および排気側動弁機構によって得られる排気弁のバルブリフト曲線を示す図である。
【図4】燃焼制御処理を示すメインフローである。
【図5】HCCI燃焼フラグの設定処理を示すサブルーチンである。
【図6】図5の処理で用いられるマップの一例である。
【図7】HCCI燃焼制御処理を示すサブルーチンである。
【図8】SI燃焼制御処理を示すサブルーチンである。
【図9】本発明の第1実施形態における、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへ切り換える際の切換時制御処理を示すサブルーチンである。
【図10】本発明の第1実施形態において、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際、変速比を変更した場合の動作例を示す図である。
【図11】燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際、変速比を変更しない場合の動作例を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態における、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードへ切り換える際の切換時制御処理を示すサブルーチンである。
【図13】本発明の第2実施形態において、燃焼モードをHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換える際、変速比を変更した場合の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施形態における制御装置1が適用された内燃機関(以下「エンジン」という)3は、電気モータ4とともに、ハイブリッド車両(以下「車両」という)Vに動力源として搭載されている。
【0018】
この車両Vでは、エンジン3のクランクシャフト3aが電気モータ4の回転軸に直結されるとともに、電気モータ4が、クラッチ5、変速機6および差動ギヤ機構7などを介して、左右の駆動輪8,8に連結されている。クラッチ5は、電磁クラッチタイプのものであり、その締結・遮断状態は、後述するECU2からの制御入力によって制御される。
【0019】
エンジン3は、ガソリンエンジンであり、例えば4つの気筒C(図2に1つのみ図示)を有している。図2に示すように、エンジン3のシリンダヘッド3bには、吸気通路9および排気通路10が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)11および点火プラグ12(ともに図1参照)が、燃焼室3cに臨むように取り付けられている。インジェクタ11から噴射される燃料噴射量QINJは、ECU2からの制御入力によって制御される。点火プラグ12の点火時期もまた、ECU2からの制御入力によって制御される。
【0020】
また、このエンジン3では、燃焼モードとして、インジェクタ11から噴射された燃料を含む混合気を、自己着火によって燃焼させる圧縮着火燃焼モード(以下「HCCI燃焼モード」という)と、点火プラグ12による火花点火によって燃焼させる火花点火燃焼モード(以下「SI燃焼モード」という)とを有し、その切換は、ECU2によって制御される。
【0021】
電気モータ4は、ブラシレスDCモータで構成されており、PDU15を介して、ECU2およびバッテリ16に接続されている。PDU15は、インバータなどを含む電気回路で構成されている。ECU2は、PDU15を介して、電気モータ4とバッテリ16との間の電力の授受を制御する。具体的には、車両Vの加速走行中などに、電気モータ4の出力を制御するとともに、車両Vの減速走行中などに、電気モータ4による電力回生を制御する。
【0022】
エンジン3のクランクシャフト3aには、クランク角センサ21が設けられている。クランク角センサ21は、クランクシャフト3aの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
【0023】
CRK信号は、所定クランク角(例えば30°)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、いずれかの気筒Cにおいてピストン3dが吸気行程の開始時の上死点よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、本実施形態のようにエンジン3が4気筒の場合には、クランク角180゜ごとに出力される。
【0024】
変速機6は、エンジン3から出力された動力を段階的に変速するギヤ式の有段変速機で構成されている。具体的には、変速機6は、入力軸および出力軸6aと、ギヤ比が互いに異なる複数のギヤ列と、これらの複数のギヤ列と入力軸および出力軸6aとの間をギヤ列ごとに接続・遮断するクラッチ(いずれも図示せず)などで構成されており、前進第1段〜第5段と後進1段の変速段を有している。これらの変速段は、ECU2からの制御入力によって切り換えられ、それにより変速比が変更される。
【0025】
変速機6の出力軸6aには、出力軸回転数センサ22が設けられている。出力軸回転数センサ22は、出力軸6aの回転数(以下「出力軸回転数」という)NOUTを検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この出力軸回転数NOUTとエンジン回転数NEに基づいて、変速機6で設定されている変速比RTRMを算出する。
【0026】
また、各気筒Cには、一対の吸気弁14,14(1つのみ図示)および一対の排気弁15,15(1つのみ図示)が設けられている。吸気弁14は吸気側動弁機構40によって開閉され、排気弁15は排気側動弁機構50によって開閉される。
【0027】
吸気側動弁機構40は、通常のカム駆動式のものであり、回転自在の吸気カムシャフト41と、吸気カムシャフト41に一体に設けられた吸気カム42と、ロッカアームシャフト43と、ロッカアームシャフト43に回動自在に支持されるとともに、吸気弁14,14の上端にそれぞれ当接する2つのロッカアーム44などを備えている。
【0028】
吸気カムシャフト41は、吸気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3aに連結されており、クランクシャフト3aが2回転するごとに1回転する。吸気カムシャフト41が回転すると、ロッカアーム44が、吸気カム42で押圧され、ロッカアームシャフト43を中心として回動し、吸気弁14,14を押圧することにより、吸気弁14,14が開閉される。
【0029】
排気側動弁機構50は、排気弁15,15のリフトを2段階に変更するためのものであり、排気カムシャフト51、排気カム52および排気リフト可変機構53などを備えている。
【0030】
排気カムシャフト51は、排気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3aに連結されており、クランクシャフト3aが2回転するごとに1回転する。
【0031】
排気カム52は、排気カムシャフト51と一体に設けられており、気筒Cごとに設けられた2つの低速カム(1つのみ図示)と、気筒Cごとに設けられ、低速カムよりも高いカムノーズを有する1つの高速カム(図示せず)で構成されている。
【0032】
排気リフト可変機構53は、排気弁15のリフト(以下「排気リフト」という)を所定の低リフトまたは高リフトに切り換えるものである。その構成は、本出願人が特開2000−227013号公報で既に提案したものと同様であるので、以下、その概略を簡単に説明する。
【0033】
排気リフト可変機構53は、ロッカアームシャフト54と、これに回動自在に取り付けられ、気筒Cごとに設けられた2つの低速ロッカアーム55,55(1つのみ図示)および高速ロッカアーム(図示せず)と、ECU2に接続された電磁弁56(図2参照)などを備えている。低速ロッカアーム55,55は、各気筒Cの排気弁15,15にそれぞれ当接している。
【0034】
この排気リフト可変機構53のリフトモードは、ECU2からの制御入力により電磁弁56が制御されることによって、低リフトモードおよび高リフトモードに切り換えられる。この低リフトモードでは、排気カムシャフト51が回転すると、低速カム52により低速ロッカアーム55が駆動され、高速カムにより高速ロッカアームが駆動されるものの、高速ロッカアームは、排気弁15とは無関係にロッカアームシャフト54の回りを回動する。それにより、各排気弁15は、低速ロッカアーム55によって開閉駆動され、所定の低リフトでかつ所定の開弁時間で開閉する。
【0035】
一方、高リフトモードでは、高速ロッカアームが低速ロッカアーム55,55に一体に連結され、排気カムシャフト51が回転すると、高速カムにより駆動された高速ロッカアームが回動するとともに、これと一体に低速ロッカアーム55が回動する。その結果、排気弁15は、低速ロッカアーム55を介して高速ロッカアームにより開閉駆動され、それによって、低リフトモードよりもリフトが高くなる(高リフト)。また、高リフトモードでは、低リフトモードと比べて、排気弁15の開弁期間が長くなるとともに、開弁タイミングは進角側に移行する(図3(a)参照)。なお、排気リフト可変機構53のリフトモードは、前述したHCCI燃焼モードのときには低リフトモードに設定され、SI燃焼モードのときには高リフトモードに設定される。
【0036】
以上の構成により、SI燃焼モードのときには、高リフトの排気弁15が閉弁する前に吸気弁14が開弁する(図3(a))。一方、HCCI燃焼モードのときには、低リフトの排気弁15が完全に閉弁した後に吸気弁14が開弁し(同図(b))、それにより、気筒C内に排ガスを残留させる内部EGRが得られる。これにより、気筒C内の温度を排ガスで高めることによって、HCCI燃焼が促進される。
【0037】
吸気通路9には、上流側から順に、スロットル弁13、吸気圧センサ23およびエアフローセンサ24が設けられている。スロットル弁13の開度は、ECU2からの制御入力により、THアクチュエータ13aを介して制御され、それにより、スロットル弁13を通過する吸入空気の量が制御される。
【0038】
吸気圧センサ23は、吸気通路9内の圧力(以下「吸気圧」という)PBを検出し、その検出信号をECU2に出力する。エアフローセンサ24は、エンジン3に吸入される吸入空気量QAを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
【0039】
排気通路10には、LAFセンサ25が設けられている。LAFセンサ25は、理論空燃比よりもリッチなリッチ領域から極リーンまでの広範囲な空燃比の領域において、排気通路10内を流れる排ガス中の酸素濃度をリニアに検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、LAFセンサ25からの検出信号に基づいて、混合気の空燃比AFを算出する。
【0040】
また、ECU2には、アクセル開度センサ26から、車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、車速センサ27から車速VPを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0041】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、前述した各種のセンサ21〜27の検出信号などに応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、エンジン3の燃焼モードを、SI燃焼モードまたはHCCI燃焼モードに決定する。また、ECU2は、決定した燃焼モードに応じて、エンジン3の燃焼状態を制御する燃焼制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2が、判定手段および切換時制御手段に相当する。
【0042】
図4は、上述した燃焼制御処理を示すフローチャートである。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。本処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「1」であるか否かを判別する。
【0043】
図5は、このHCCI燃焼フラグF_HCCIの設定処理を示すサブルーチンである。本処理では、まずステップ11において、エンジン3がHCCI燃焼を実行すべき運転領域(以下「HCCI領域」という)にあるか否かを判別する。この判別は、図6に示すマップに基づき、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて行われる。このマップでは、HCCI領域は、エンジン回転数NEが低〜中回転域にあり、かつ要求トルクPMCMDが低〜中負荷域にある運転領域に設定されている。なお、要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、算出される。
【0044】
このステップ11の判別結果がYESで、エンジン3がHCCI領域にあるときには、HCCI燃焼モードによる燃焼を実行すべき条件が成立しているとして、そのことを表すために、HCCI燃焼フラグF_HCCIを「1」にセットし(ステップ12)、本処理を終了する。一方、ステップ11の判別結果がNOで、エンジン3がHCCI領域にないときには、HCCI燃焼フラグF_HCCIを「0」にセットし(ステップ13)、本処理を終了する。
【0045】
図4に戻り、前記ステップ1の判別結果がYESで、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「1」のときには、HCCI燃焼制御を実行し(ステップ2)、本処理を終了する。
【0046】
図7は、このHCCI燃焼制御処理のサブルーチンを示している。本処理では、まずステップ21において、変速機6の変速比RTRMを制御する。具体的には、エンジン回転数NEおよび車速VPに応じて、変速機6の目標変速比RTRMCMDを算出し、この目標変速比RTRMCMDと変速比RTRMに応じて、制御入力を算出する。そして、この制御入力により、変速機6の変速段を制御することによって、変速比RTRMが制御される。
【0047】
次に、リフトモードを低リフトモードに設定し、排気弁15を低リフトで駆動する(ステップ22)。次いで、スロットル弁13を全開状態に制御する(ステップ23)。次に、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し(ステップ24)、本処理を終了する。このときの目標空燃比AFCMDは、理論空燃比よりもリーン側の所定値AFLに設定される。
【0048】
図4に戻り、前記ステップ1の判別結果がNOで、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「0」のときには、HCCI燃焼フラグF_HCCIが前回と今回の間で「1」から「0」に変化したか否かを判別する(ステップ3)。この判別結果がYESで、決定された燃焼モードがHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換わった直後のときには、アップカウント式の切換タイマの値(以下「切換タイマ値」という)TMを値0にセットした(ステップ7)後、後述する切換時制御を実行し(ステップ8)、本処理を終了する。
【0049】
一方、前記ステップ3の判別結果がNOのときには、切換タイマ値TMが所定時間TMREF(例えば1.5sec)以上であるか否かを判別する(ステップ4)。この判別結果がNOのとき、すなわち、決定された燃焼モードがHCCI燃焼モードからSI燃焼モードに切り換わった後、所定時間TMREFが経過していないときには、前記ステップ8に進み、切換時制御を引き続き実行する。
【0050】
また、ステップ4の判別結果がYESで、TM≧TMREFのときには、切換フラグF_SWを「0」にセットした(ステップ5)後、SI燃焼制御を実行し(ステップ6)、本処理を終了する。
【0051】
図8は、このSI燃焼制御処理のサブルーチンを示している。本処理では、まずステップ31において、前記ステップ21と同様、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、変速機6の変速比RTRMを制御する。
【0052】
次に、リフトモードを高リフトモードに設定し、排気弁15を高リフトで駆動する(ステップ32)。次いで、スロットル弁13の開度を制御する(ステップ33)。具体的には、アクセル開度APに応じて、スロットル弁13の開度の目標値を算出し、この目標値に応じてTHアクチュエータ13aを制御することによって、スロットル弁13の開度が制御される。
【0053】
次に、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し(ステップ34)、本処理を終了する。このときの目標空燃比AFCMDは、理論空燃比に相当する所定値AFSに設定される。
【0054】
図9は、前記ステップ8で実行される切換時制御処理のサブルーチンを示している。本処理では、まずステップ41において、切換フラグF_SWが「1」であるか否かを判別する。切換時制御を開始した最初のループでは、前記ステップ5の実行により、ステップ41の判別結果がNOになり、その場合には、切換フラグF_SWを「1」にセットする(ステップ42)とともに、変速機6の変速段を1段階、シフトアップする(ステップ43)ことによって、変速比RTRMを減少側に制御する。
【0055】
一方、切換時制御を開始した2回目以降のループでは、前記ステップ42の実行により、前記ステップ41の判別結果がYESになり、その場合には、シフトアップされた変速段を保持する(ステップ47)。
【0056】
前記ステップ43または47に続くステップ44では、リフトモードを高リフトモードに設定し、排気弁15を高リフトで駆動する。次いで、前記ステップ33と同様、アクセル開度APに応じて、スロットル弁13の開度を制御する(ステップ45)ことによって、スロットル弁13を全開状態から減少側に制御する。次に、前記ステップ34と同様、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し(ステップ46)、本処理を終了する。
【0057】
図10は、これまでに説明した燃焼制御処理によって得られる動作例を示している。この例では、タイミングt0以前では、燃焼モードがHCCI燃焼モードに設定されている。これにより、スロットル弁13が全開状態に制御され、目標空燃比AFCMDは、理論空燃比よりもリーン側の所定値AFLに設定されている。また、このときの変速機6の変速段は第3段に設定されている。
【0058】
この状態から、タイミングt0において、燃焼モードがSI燃焼モードに切り換えられると、変速機6の変速段が第3段から第4段にシフトアップされる(図9のステップ43)とともに、スロットル弁13の開度が減少側に制御される(ステップ45)。また、このときには、排気弁15が低リフトから高リフトに切り換えられる(ステップ44)とともに、目標空燃比AFCMDが理論空燃比に相当する所定値AFSに設定される。
【0059】
この変速機6のシフトアップに伴って、エンジン回転数NEが低下するとともにエンジントルクが増大するので、このエンジントルクの増大に応じて、エンジン3への空気の供給量を増大させることができる。このため、図11に示す、変速比RTRMを変更しない場合と比較して、スロットル弁13の開度の減少量が小さくなり、それに応じてスロットル弁13の切換時間も短くなる。このように、スロットル弁13の開度の減少量と切換時間が小さくなることによって、切換時に吸気通路9に残留する吸気圧PBと残留時間を低減でき、それにより、エンジン3に吸入される空気が大きく増大するのを回避することができる。また、吸入空気量QAに応じて、目標空燃比AFCMDが、理論空燃比に相当する所定値AFSが得られるように燃料噴射量QINJを制御するので、燃料噴射量QINJが大きく増大することがなくなり、したがって、エンジン3の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を適切に行うことができる。
【0060】
また、変速機6の変速段の設定がクラッチ用いて行われるので、変速比RTRMの変更動作の開始後、目標変速比への変速比RTRMの変更が比較的短時間で完了する。したがって、SI燃焼モードに切り換えられたときに、変速機6のシフトアップと、スロットル弁13の開度の減少側への制御を同時に行う(図9のステップ43,45)ことにより、空気を過不足なく供給し、エンジン3の動力の変動を抑制しながら、SI燃焼モードへの切換を短時間で行うことができる。
【0061】
さらに、SI燃焼モードに切り換えられたときに、目標空燃比AFCMDをリーン側の所定値AFLから理論空燃比に相当する所定値AFSに設定するとともに、スロットル弁13を減少側に制御することによって、空燃比AFを理論空燃比に制御する。したがって、このスロットル弁13の減少側制御と変速機6のシフトアップを併せて行うことによって、前述した利点を有効に得ることができる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、前述した第1実施形態と比較して、変速機6の構成のみが異なり、ハード上の他の構成については同じである。この変速機6は、エンジン3から出力された動力を無段階に変速するベルト式の無段変速機で構成されている。具体的には、変速機6は、ドライブプーリと、ドリブンプーリと、両プーリに巻き掛けられ、前者の動力を後者に伝達するベルト(いずれも図示せず)などで構成されている。変速機6の変速比RTRMは、ECU2からの制御入力によりCVTアクチュエータ(図示せず)を制御することで、一方のプーリを油圧で無段階に駆動し、両プーリの有効径を変更することによって、変更される。
【0063】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様、燃焼制御処理が実行され、そのうちの切換時制御の実行内容の一部のみが第1実施形態と異なる。したがって、本実施形態の切換時制御処理を示す図12においては、図9に示した第1実施形態の切換時制御処理と同じ実行内容について、同一のステップ番号を付し、異なる実行内容を中心として説明を行うものとする。なお、本実施形態では、ECU2が、判定手段、切換時制御手段および変速比変更判定手段に相当する。
【0064】
本処理では、まずステップ41において、切換フラグF_SWが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、切換時制御を開始した最初のループのときには、切換フラグF_SWを「1」にセットする(ステップ42)とともに、変速機6の変速比RTRMを減少側に制御する(ステップ61)。具体的には、HCCI燃焼モード時よりも小さな目標変速比RTRMCMDを設定するとともに、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDになるようにCVTアクチュエータを駆動する。
【0065】
次に、リフトモードを低リフトモードに設定し、排気弁15を引き続き低リフトで駆動する(ステップ62)とともに、スロットル弁13を全開状態に制御する(ステップ63)。
【0066】
一方、前記ステップ41の判別結果がYESのときには、検出された変速比RTRMが目標変速比RTRMCMD以下であるか否かを判別する(ステップ64)。この判別結果がNOで、RTRM>RTRMCMDのときには、変速比RTRMの目標変速比RTRMCMDへの変更が完了していないとして、前記ステップ62以降に進み、排気弁15を引き続き低リフトで駆動するとともに、スロットル弁13を全開状態に制御する。
【0067】
また、ステップ64の判別結果がYESで、変速比RTRM≦目標変速比RTRMCMDのときには、リフトモードを高リフトモードに設定し、排気弁15を高リフトで駆動する(ステップ44)とともに、アクセル開度APに応じて、スロットル弁13の開度を制御する(ステップ45)。
【0068】
前記ステップ45または63に続くステップ46では、目標空燃比AFCMDおよび吸入空気量QAに応じて、燃料噴射量QINJを算出し、本処理を終了する。
【0069】
図13は、これまでに説明した第2実施形態による燃焼制御処理によって得られる動作例を示している。この例では、タイミングt0以前では、燃焼モードがHCCI燃焼モードに設定されており、それに応じて、スロットル弁13が全開状態に制御され、目標空燃比AFCMDは、理論空燃比よりもリーン側の所定値AFLに設定されている。
【0070】
この状態から、タイミングt0において、燃焼モードがSI燃焼モードに切り換えられると、変速機6の変速比RTRMが減少側の目標変速比RTRMCMDに制御される(図12のステップ61)。このとき、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDに変更されるまでの間(t0〜t1)は、排気弁15は低リフトに保持され(ステップ62)、スロットル弁13は全開状態に制御される(ステップ63)とともに、点火プラグ12による点火は停止される。以上のように、変速比RTRMの目標変速比RTRMCMDへの変更が完了するまでは、HCCI燃焼が継続して行われる。
【0071】
その後、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDに達し、目標変速比RTRMCMDへの変更が完了したときに(t1)、排気弁15を高リフトで駆動する(ステップ44)とともに、スロットル弁13の開度を減少側に制御する(ステップ45)。また、点火プラグ12による点火が実行され、SI燃焼が行われる。
【0072】
以上のように、本実施形態の変速機6は、ベルト式の無段変速機で構成され、その変速比RTRMの設定が、プーリを無段階に駆動することによって行われるので、変速比RTRMの変更動作の開始後、目標変速比RTRMCMDへの変速比RTRMの変更が完了するまでに比較的長い時間がかかる。このため、本実施形態によれば、HCCI燃焼フラグF_HCCIが「1」から「0」に切り換えられたときに、変速比RTRMの減少側の目標変速比RTRMCMDへの制御を開始し、その後、変速比RTRMが目標変速比RTRMCMDに達したときに、スロットル弁13の開度を減少側に制御する。したがって、変速機6による変速比RTRMの変更が完了し、エンジン3のトルクが変速比RTRMの変更完了後のトルクまで上がりきった状態で、スロットル弁13の減少側への制御を開始するので、変速比RTRMの変更中におけるエンジン3の動力の変動を抑制することができる。
【0073】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態では、変速比を減少側に制御する変速比減少制御として、変速機6の変速段を1段階のみシフトアップさせているが、これに限らず、2段階でシフトアップさせてもよい。
【0074】
また、第2実施形態では、変速比RTRMの変更が完了したか否かの判定を、検出された変速比RTRMと目標変速比RTRMCMDとの比較結果に基づいて行っているが、これに限らず、変速比の変更動作の開始時からの経過時間に基づいて行ってもよい。
【0075】
さらに、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 制御装置
2 ECU(判定手段、切換時制御手段および変速比変更判定手段)
3 エンジン
6 変速機
9 吸気通路
13 スロットル弁
PB 吸気圧(吸気通路内の圧力)
RTRMCMD 目標変速比(所定の変速比)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼モードとして、混合気を圧縮着火によって燃焼させるHCCI燃焼モードと、混合気を火花点火によって燃焼させるSI燃焼モードを有する内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関から出力された動力を変速する変速機と、
吸気通路に設けられ、前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットル弁と、
前記燃焼モードを前記HCCI燃焼モードから前記SI燃焼モードに切り換えるためのSI燃焼モード切換条件が成立したか否かを判定する判定手段と、
当該判定手段によって前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記SI燃焼モードへの切換に伴う前記スロットル弁よりも下流側の前記吸気通路内の圧力の変化が抑制されるように、前記変速機の変速比を減少側の所定の変速比に制御する変速比減少制御を実行するとともに、前記スロットル弁の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する切換時制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記変速機は、前記内燃機関の動力を段階的に変速する有段変速機で構成され、
前記切換時制御手段は、前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記変速比減少制御と前記スロットル弁開度減少制御を同時に開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記変速機は、前記内燃機関の動力を無段階に変速する無段変速機で構成され、
前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記変速比減少制御により前記変速機の前記変速比が前記所定の変速比に変更されたか否かを判定する変速比変更判定手段をさらに備え、
前記切換時制御手段は、前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記変速比減少制御を開始し、その後、前記変速比変更判定手段により、前記変速機の前記変速比が前記所定の変速比に変更されたと判定されたときに、前記スロットル弁開度減少制御を開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記切換時制御手段は、前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記スロットル弁開度減少制御を実行することによって、前記内燃機関に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側から理論空燃比に制御することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
燃焼モードとして、混合気を圧縮着火によって燃焼させるHCCI燃焼モードと、混合気を火花点火によって燃焼させるSI燃焼モードを有する内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関から出力された動力を変速する変速機と、
吸気通路に設けられ、前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットル弁と、
前記燃焼モードを前記HCCI燃焼モードから前記SI燃焼モードに切り換えるためのSI燃焼モード切換条件が成立したか否かを判定する判定手段と、
当該判定手段によって前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記SI燃焼モードへの切換に伴う前記スロットル弁よりも下流側の前記吸気通路内の圧力の変化が抑制されるように、前記変速機の変速比を減少側の所定の変速比に制御する変速比減少制御を実行するとともに、前記スロットル弁の開度を減少側に制御するスロットル弁開度減少制御を実行する切換時制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記変速機は、前記内燃機関の動力を段階的に変速する有段変速機で構成され、
前記切換時制御手段は、前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記変速比減少制御と前記スロットル弁開度減少制御を同時に開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記変速機は、前記内燃機関の動力を無段階に変速する無段変速機で構成され、
前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記変速比減少制御により前記変速機の前記変速比が前記所定の変速比に変更されたか否かを判定する変速比変更判定手段をさらに備え、
前記切換時制御手段は、前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記変速比減少制御を開始し、その後、前記変速比変更判定手段により、前記変速機の前記変速比が前記所定の変速比に変更されたと判定されたときに、前記スロットル弁開度減少制御を開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記切換時制御手段は、前記SI燃焼モード切換条件が成立したと判定されたときに、前記スロットル弁開度減少制御を実行することによって、前記内燃機関に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側から理論空燃比に制御することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−21408(P2012−21408A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157764(P2010−157764)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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