説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関1の排気通路のフィルタ8bを必要に応じて再生する排気浄化装置において、フィルタ再生の実行時にポスト噴射制御を無用に行わないようにし、オイル希釈を抑制または防止しながら、フィルタ8bの再生を迅速に遂行可能とする。
【解決手段】排気浄化装置の制御装置10は、フィルタ再生の実行要求に伴い、酸化触媒8aが活性化温度以上であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で肯定判定した場合に、排気通路において酸化触媒8aの上流側に燃料成分を添加供給する形態のフィルタ再生を行う第1対処手段と、前記判定手段で否定判定した場合に、ポスト噴射制御と前記燃料添加制御とを協働させる形態のフィルタ再生を行う第2対処手段とを含む。第2対処手段は、ポスト噴射量をポスト噴射によるオイル希釈の希釈限界値以下に設定したうえで、フィルタ再生温度への昇温制御目標値に対して不足する分を燃料添加制御で補うように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される内燃機関(エンジンともいう)に用いる排気浄化装置に係り、詳しくは、排気通路に設置されるフィルタを自動的に再生可能とする排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるディーゼルエンジン等では、排出される排気ガス中に、カーボンを主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter)が含まれており、それを大気に排出することが好ましくないので、従来では、ディーゼルエンジンの排気通路に、触媒装置が設けられている。
【0003】
触媒装置は、排気通路を通過する排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して浄化するための酸化触媒と、排気通路を通過する排気ガス中に含まれるPMを捕集するフィルタとを備えており、大気中に放出されるエミッション量を低減する。
【0004】
前記のフィルタは、一般的にDPF(Diesel Particulate Filter)や、DPR(Diesel Particulate active Reduction system)と呼ばれるものとされる。DPFは、多孔質部材を設けた構成とされており、また、DPRは、多孔質部材に酸化触媒を担持させた構成になっている。
【0005】
このようなフィルタでは、捕集したPMの堆積量が多くなると詰りが生じ、そのような場合には、PM捕集機能が低下するとともに、フィルタを通過する排気の圧力損失が増大し、これに伴うエンジンの排気背圧増大によってエンジンの出力低下や燃費低下につながる。
【0006】
このような不具合を解消するため、従来では、フィルタのPM捕集量(堆積量)が所定の限界量になったときに、フィルタをクリーニングすることによりPM捕集機能を回復させる、いわゆる再生を行うことが考えられている。このフィルタ再生は、フィルタに入る排気温度を上昇させて、フィルタに捕集されているPMの燃焼、除去させることが有効である。
【0007】
このフィルタ再生の形態について、従来からいろいろ考えられているので、以下で具体的に説明する。
【0008】
まず、フィルタ再生時に、内燃機関の排気通路においてフィルタの下流に設けられる排気絞り弁を絞ることにより、排気温度を上昇させてフィルタに捕集されているPMを燃焼、除去することが考えられている(例えば特許文献1参照。)。
【0009】
この特許文献1に係る従来例では、排気絞り弁を絞ってフィルタの入口温度を上昇させることは有効であるものの、排気絞り弁を絞ったときに、排気抵抗が増大して内燃機関の出力が低下するので、ドライバビリティが悪化するとともに、排気絞り弁を一旦絞った後で開放したときに大きな排気音を発するといった不具合が発生する。
【0010】
このような排気絞り弁を用いない方法として、一般的に、フィルタ再生時に、内燃機関の排気通路において酸化触媒よりも上流側に燃料を添加供給し、この燃料を酸化触媒で酸化反応(燃焼)させることで、フィルタを昇温させることが知られている。
【0011】
この従来例では、例えば内燃機関の冷間始動時や、車両のノロノロ運転が長期にわたって連続することによって酸化触媒が活性化せずにフィルタに入る排気温度が低い状況であると、排気通路に燃料を供給しても酸化触媒による燃料の酸化反応が期待できなくなる。そのため、フィルタに入る排気温度が上昇しにくくなるので、当該排気温度がPMを燃焼する温度(フィルタ再生温度)に到達しない等、フィルタ再生が進展しにくくなる。このような燃料添加制御によるフィルタ再生は、再生不可能な時期が存在するため、不十分である。
【0012】
この他、フィルタ再生時に、例えば内燃機関の燃焼室に対する主燃料噴射後で排気弁が閉じられる前に少量の燃料を副次的に噴射(いわゆるポスト噴射)することが考えられている(例えば特許文献2参照。)
このポスト噴射を行うと、未燃ガスが排気通路に排出されて、この未燃ガスが酸化触媒で酸化反応されることになるので、酸化触媒を通過する排気温度が上昇し、フィルタが昇温される。但し、このようなポスト噴射を行うと、ポスト噴射された燃料が気化されにくくてシリンダ壁に付着しやすくなるために、この燃料が機関オイルに混入するというオイル希釈が発生しやすくなることが知られている。
【0013】
このように、いろいろな形態のフィルタ再生が提案されているが、一長一短であるので、それらを併用することが考えられている。例えば特許文献3には、フィルタ再生を排気絞り制御とポスト噴射制御との併用により行うことが開示されている。
【特許文献1】特開2005−282534号公報
【特許文献2】特開2008−133738号公報
【特許文献3】特開2008−144726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記特許文献3に係る従来例では、排気絞り制御を行う関係より、上述したようなドライバビリティの低下が懸念される。
【0015】
ところで、例えば特開2003−172185号公報には、排気やNox触媒の温度を最適値に制御するうえで、ポスト噴射制御や燃料添加制御を選択的に実施すること、あるいは前記両者を併せて実施することが記載されている。しかしながら、この先行技術は、フィルタ再生を行うときに、前記のような二つの制御を選択したり、あるいは併用したりするようなものではない。つまり、この先行技術は、本発明とは技術思想が異なるので、あくまでも参考文献として提示しているだけである。
【0016】
このような事情に鑑み、本発明は、内燃機関の排気中のPMを捕集するフィルタの再生を自動的に行う排気浄化装置において、フィルタ再生の実行時にポスト噴射制御を無用に行わないようにし、オイル希釈を抑制または防止しながら、フィルタ再生を迅速に遂行可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けられる酸化触媒と、排気通路において前記酸化触媒より下流側に設けられて排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、必要に応じて前記フィルタを当該フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去するフィルタ再生温度に昇温させることによりフィルタ再生を実行する制御装置とを有する排気浄化装置であって、前記制御装置は、前記フィルタ再生の実行要求に伴い、前記酸化触媒が活性化温度以上であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で肯定判定した場合に、排気通路において前記酸化触媒の上流側に燃料成分を添加供給する形態のフィルタ再生を行う第1対処手段と、前記判定手段で否定判定した場合に、ポスト噴射制御と前記燃料添加制御とを協働させる形態のフィルタ再生を行う第2対処手段とを含み、前記第2対処手段は、ポスト噴射量をポスト噴射によるオイル希釈の希釈限界値以下に設定したうえで、前記フィルタ再生温度への昇温制御目標値に対して不足する分を前記燃料添加制御で補うように設定する、ことを特徴としている。
【0018】
なお、フィルタ再生とは、フィルタに堆積している粒子状物質を燃焼除去することにより、フィルタの機能を回復させることである。
【0019】
また、排気通路へ燃料を添加供給するには、排気通路において酸化触媒よりも上流側に設置される燃料添加手段が用いられる。
【0020】
さらに、ポスト噴射とは、内燃機関の燃焼室に対する主燃料噴射後で排気弁が閉じられる前に少量の燃料を副次的に噴射することであり、内燃機関の燃焼室へ燃料を直接噴射供給する燃料噴射手段を用いて行われる。
【0021】
このポスト噴射を行うと、燃焼室から排気通路に未燃ガスが排出されやすくなるので、排気通路に排出される未燃ガスが酸化触媒で酸化反応(燃焼)されて、この酸化触媒下流での排気温度が上昇し、それに伴いフィルタが昇温することになる。
【0022】
但し、ポスト噴射を行うと、オイル希釈が発生しやすくなる。このオイル希釈は、公知のように、ポスト噴射された燃料が気化せずに内燃機関のシリンダ壁に付着し、この燃料が内燃機関のオイルに混入することによって発生する。したがって、ポスト噴射の量が多いと、オイル希釈が発生しやすくなるので、好ましくない。
【0023】
この構成においては、まず、ポスト噴射制御を行わずに、排気系への燃料添加制御のみでフィルタ再生を行う場合、酸化触媒が既に活性化していることが前提となるので、排気通路に添加される燃料成分が、既に活性化している酸化触媒で即座に酸化反応されるようになる。
【0024】
これにより、フィルタがフィルタ再生温度(フィルタに堆積している粒子状物質の燃焼可能な温度)にまで速やかに上昇するようになる。しかも、ポスト噴射を行わないので、ポスト噴射によってオイル希釈が発生することが避けられるようになる。
【0025】
したがって、前記のように排気系への燃料添加制御のみでフィルタ再生を実行する場合には、ポスト噴射によるオイル希釈の発生を避けながら、フィルタ再生を迅速に終了することが可能になる。
【0026】
その一方で、ポスト噴射制御と燃料添加制御とを協働させてフィルタ再生を行う場合、ポスト噴射を行う関係上、オイル希釈が発生しやすくなると考えられるが、このポスト噴射量をオイル希釈の希釈限界値に基づいて可及的に少なく(ポスト噴射単独でフィルタ再生を行う場合での昇温制御目標量よりも少なく)設定しているので、オイル希釈の発生を抑制することが可能になる。しかも、ポスト噴射量を少なくすると、フィルタの昇温能力が不足すると考えられるものの、その不足分については排気系への燃料添加制御でもって補うようにしている。
【0027】
つまり、ポスト噴射に伴い燃焼室から排気通路に排出される未燃ガスと添加燃料とを酸化触媒で酸化反応させるようにしているので、酸化触媒の下流の排気温度が速やかに昇温されるようになり、それに伴いフィルタも昇温するようになる。これにより、比較的早期にフィルタに堆積している粒子状物質を燃焼除去することが可能になる。
【0028】
したがって、前記のようにポスト噴射制御と燃料添加制御とを協働させてフィルタ再生を行う場合であっても、オイル希釈の発生を抑制または防止しながら、フィルタ再生を迅速に終了することが可能になる。
【0029】
好ましくは、前記制御装置は、前記第1対処手段または第2対処手段による制御動作の実行後に、昇温不足か昇温過剰かを判定する昇温判定手段と、前記昇温判定手段で昇温不足と判定した場合に前記燃料添加制御により増量補正する第1補正手段と、前記昇温判定手段で昇温過剰と判定した場合に次回のポスト噴射量を減量補正する第2補正手段とをさらに含む、構成とすることができる。
【0030】
この構成では、第1対処手段または第2対処手段による制御動作の実行後に、フィルタ再生温度への昇温制御目標値に対する乖離状況を調べるとともに、その乖離状況に応じて補正の形態を工夫するようにしている。
【0031】
これにより、排気浄化装置の構成を追加することなく、既存の構成で昇温補正を行うことが可能になるから、設備コストの上昇が避けられる。
【0032】
好ましくは、前記フィルタ再生の実行要求は、前記フィルタへの粒子状物質の堆積量の推定値が所定の上限値(限界堆積量)以上になったときに発令される、ものとすることができる。
【0033】
なお、この場合、内燃機関の運転時間が経過するに伴いフィルタのPM堆積量が増加することを考慮し、内燃機関の運転条件(例えば、排気温度、燃料噴射量、機関回転数等)に応じたPM付着量を予め実験等により調べてマップ化しておき、このマップにより求められるPM付着量を積算してPM堆積量とすることが考えられる。これにより、運転経過時間を検出すれば、前記マップに基づいて対応するPM堆積量を求めることができる。
【0034】
好ましくは、前記制御装置は、ポスト噴射を分割する形態でフィルタ再生を行う第3対処手段と、前記判定手段で前記否定判定した場合に、内燃機関の運転状況に応じてポスト噴射を分割可能か否かをさらに判定し、否定判定した場合に前記第2対処手段を、また、肯定判定した場合に前記第3対処手段に移行させる選択手段とをさらに含み、前記第3対処手段は、1回当たりのポスト噴射量を前記希釈限界値以下に設定したうえで、トータルでのポスト噴射量を前記昇温制御目標値に設定する、ものとすることができる。
【0035】
ここでは、ポスト噴射制御の形態を特定し、フィルタ再生の形態を多様化している。従来から、ポスト噴射を分割すると、1回当たりのポスト噴射量が少なくなるので、燃料が気化しやすくなってオイル希釈の度合いを低減できることが公知である。これを踏まえて、ポスト噴射を分割するとともに、1回当たりのポスト噴射量をオイル希釈の希釈限界値以下に設定しているので、ポスト噴射によるオイル希釈の度合いを低減するうえでさらに有利となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、フィルタ再生を行う場合に、内燃機関の運転状況を考慮して、フィルタの昇温効率が良いもののオイル希釈が発生しやすくなるポスト噴射制御の実行可否を選択するようにしている。これにより、フィルタ再生を行う場合に、ポスト噴射制御を極力行わないようにすることが可能になり、また、前記ポスト噴射制御を行う必要がある場合も、ポスト噴射量をオイル希釈の発生しにくい条件で行うようにしている。
【0037】
したがって、フィルタ再生を実行するときの内燃機関の運転状況に関係なく、ポスト噴射によるオイル希釈の発生を抑制または防止したうえで、フィルタ再生を迅速に遂行することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1から図3に本発明の一実施形態を示している。まず、図1を参照して、本発明に係る排気浄化装置の使用対象となる内燃機関の概略構成を説明する。
【0040】
図1に示す内燃機関1は、例えば筒内直接噴射型の直列四気筒ディーゼルエンジンとされており、基本的には、吸気系から供給される空気と燃料供給系から供給される燃料とを適宜の空燃比で混合してなる混合気を燃焼室2に噴射して燃焼させた後、燃焼室2内の排気ガスを排気系を経て大気放出させるようになっている。
【0041】
前記吸気系は、シリンダヘッドの吸気ポート3に接続されるインテークマニホールド21に吸気管22を接続してなる吸気通路に、その空気流通方向上流側から順にエアクリーナ23、スロットルバルブ24を配置した構成である。
【0042】
前記燃料供給系は、燃料供給路31に、その燃料供給方向上流側から順に燃料タンク32、サプライポンプ33、コモンレール34、複数の燃料噴射弁35・・・を配置した構成である。サプライポンプ33は、内燃機関1の図示しないクランクシャフトによって駆動されるもので、燃料タンク32から燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を燃料供給路31を介してコモンレール34に供給する。コモンレール34は、サプライポンプ33から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各燃料噴射弁35に分配する。燃料噴射弁35は所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室2内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。
【0043】
前記排気系は、シリンダヘッドの排気ポート4に接続されるエキゾーストマニホールド41にマフラー42を接続して構成される排気通路からなる。
【0044】
この実施形態で例示する内燃機関1には、ターボチャージャ(過給機)5、インタークーラ6、排気再循環装置としてのEGR装置7、触媒装置8、燃料添加弁9が装備されているので、以下で説明する。
【0045】
ターボチャージャ5は、一般的に公知のように排気ガスを利用して吸入空気を昇圧過給するものであり、主としてコンプレッサインペラ5aと、タービンホイール5bとを備えている。コンプレッサインペラ5aは、吸気管22途中に配置されており、タービンホイール5bは、エキゾーストマニホールド41の集合部とマフラー42との間に配置されている。
【0046】
インタークーラ6は、ターボチャージャ5で昇圧過給した吸入空気を強制的に冷却するものであり、ターボチャージャ5のコンプレッサインペラ5aとスロットルバルブ24との間に配置されている。スロットルバルブ24は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁であり、所定条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
【0047】
EGR装置7は、排気の一部(EGRガス)を吸気系に戻して燃焼室2へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものであり、EGR通路7aに、その上流からEGRクーラ7b、EGRバルブ7cを配置した構成である。
【0048】
EGR通路7aは、排気系から吸気系へ燃焼室2をバイパスして連接するバイパス通路からなる。EGRクーラ7bは、例えばEGR通路7aを通過する排気ガスと内燃機関1の冷却液との間で熱交換を行うことにより排気ガスの温度を下げる熱交換器からなる。EGRバルブ7cは、EGR通路7a内を排気系側から吸気系側へ還流される排気ガスの還流量を制御するものである。
【0049】
触媒装置8は、排気通路を構成するエキゾーストマニホールド41とマフラー42との間に介装されており、酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとを備える構成とされている。酸化触媒8aは、排気通路において、パティキュレートフィルタ8bよりも上流側に設けられている。
【0050】
パティキュレートフィルタ8bは、例えば一般的に公知のDPF(Diesel Particulate Filter)やDPR(Diesel Particulate active Reduction system)と呼ばれるものとされる。
【0051】
なお、DPFは、多孔質部材を設けた構成とされている。また、DPRは、例えば多孔質セラミックからなるハニカム構造体に酸化触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とするもの)を担持させた構成であり、原理的には、排気ガス中の有害物質を酸化触媒で酸化させ、二酸化炭素と水蒸気に変換し、さらにPMをハニカム構造体の多孔質セラミック基材の微細孔に捕集する。
【0052】
燃料添加弁9は、エキゾーストマニホールド41に設置されており、エキゾーストマニホールド41の集合部分へ向けて燃料を噴射するものである。
【0053】
この燃料添加弁9には、サプライポンプ33から添加剤供給路52を介して燃料が供給される。この燃料添加弁9は、例えばパティキュレートフィルタ8bを再生するためのフィルタ再生を行う際に利用されるものであって、その動作はコントローラ10により制御されるようになっている。
【0054】
このような内燃機関1の各種動作は、コントローラ10により制御される。このコントローラ10は、一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされ、例えば図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103ならびにバックアップRAM104等から構成されている。このコントローラ10が請求項に記載の制御装置に相当している。
【0055】
なお、ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えば内燃機関1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM102、CPU101、RAM103ならびにバックアップRAM104は、双方向性バス107によって相互に接続されるとともに、入力インターフェース105や出力インターフェース106と接続されている。
【0056】
入力インターフェース105には、図2に示すように、水温センサ71、エアフローメータ72、吸気温センサ73、吸気圧センサ74、A/F(空燃比)センサ75、O2(酸素)センサ76、温度センサ77、レール圧センサ78、スロットル開度センサ79、アクセル開度センサ80、クランクポジションセンサ81などが接続されている。
【0057】
水温センサ71は、内燃機関1の冷却水温に応じた検出信号を出力する。エアフローメータ72は、吸気系のスロットルバルブ24よりも上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ73は、インテークマニホールド21に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ74は、インテークマニホールド21に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/Fセンサ75は、排気系7の触媒装置8の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。
【0058】
温度センサ77は、触媒装置8において酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとの間に設けられており、同じく酸化触媒8aの出口温度(排気温度)あるいはパティキュレートフィルタ8bの入口温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ78は、コモンレール34内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ79は、スロットルバルブ24の開度を検出する。アクセル開度センサ80は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力する。クランクポジションセンサ81は、内燃機関1のクランクシャフト(図示省略)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力する。
【0059】
一方、出力インターフェース106には、スロットルバルブ24、燃料噴射弁35、EGRバルブ7c、燃料添加弁9などが接続されている。
【0060】
このコントローラ10は、各種のセンサ類の信号(運転パラメータ:車両の走行状態、内燃機関の運転状態に応じた信号)に基づいて、内燃機関1のいろいろな運転を制御するのであるが、ここでは本発明の特徴に関係する制御(例えばフィルタ再生)についてのみ説明し、本発明の特徴に無関係の制御についての説明は割愛する。
【0061】
この実施形態では、コントローラ10により、触媒装置8のパティキュレートフィルタ8bのPM捕集機能を回復させるためのフィルタ再生の実行形態を工夫している。
【0062】
このフィルタ再生は、基本的に、パティキュレートフィルタ8bに入る排気温度を上昇させることにより、パティキュレートフィルタ8bに捕集されたPMを燃焼除去させるものであり、前記排気温度を上昇させるための具体的形態について、以下で説明する。
【0063】
そもそも、内燃機関1の冷間始動運転時や、車両のノロノロ運転(低速低負荷運転)等のような運転条件が長期にわたって連続する場合、酸化触媒8aの温度やパティキュレートフィルタ8bに入る排気温度が低い。一方、暖機後においては、内燃機関1の排気温度が高くなっているために、酸化触媒8aが活性化温度に到達していて、パティキュレートフィルタ8bに入る排気温度が高くなっている。
【0064】
そこで、この実施形態では、要するに、フィルタ再生を実行する際、酸化触媒8aが活性化温度に到達している場合に、燃料添加制御のみを実行する形態のフィルタ再生を行う一方、酸化触媒8aが活性化温度に到達しておらず、かつパティキュレートフィルタ8bへ入る排気温度が上昇しにくいような内燃機関1の運転状況である場合に、ポスト噴射制御と、燃料添加制御とを協働させて実行する形態のフィルタ再生を行うようにしている。
【0065】
なお、燃料添加制御とは、燃料添加弁9により排気通路に燃料を直接噴射する制御のことである。この燃料添加制御を行うと、触媒装置8の上流側に設置されている酸化触媒8aで燃料が酸化反応(燃焼)されることになるので、酸化触媒8aの下流側でパティキュレートフィルタ8bに入る排気温度が上昇し、パティキュレートフィルタ8b自身が昇温することになる。
【0066】
この燃料添加制御では、例えばコントローラ10が、クランクポジションセンサ81の出力から読み込んだ機関回転数Neに基づいて、予め実験等により作成されたマップを参照して要求添加量および添加間隔を算出し、その算出結果に応じて燃料添加弁9の開度を制御して、エキゾーストマニホールド41への燃料添加を行う。
【0067】
また、ポスト噴射制御とは、例えば燃料噴射弁35による内燃機関1の燃焼室2への主燃料噴射後で排気弁(図示省略)が閉じられる前に、燃料噴射弁35により少量の燃料を燃焼室2へ副次的に噴射する制御のことである。
【0068】
このポスト噴射制御においては、一般的に、ポスト噴射を1回とする非分割形態とする場合と、例えばポスト噴射を複数回に分けて噴射する分割形態とすることがある。ちなみに、ポスト噴射を2回に分けて噴射する形態をダブルポスト噴射と言う。
【0069】
一般的に、ポスト噴射制御を行うと、内燃機関1の燃焼室2から排気通路に未燃ガスが排出されやすくなるので、この排気通路に排出される未燃ガスが酸化触媒8aで酸化反応(燃焼)されて、酸化触媒8aからパティキュレートフィルタ8bに流入する排気温度が上昇し、パティキュレートフィルタ8b自身が昇温することになる。
【0070】
但し、ポスト噴射を行うと、一般的に、燃料が気化しにくくなってシリンダ壁に付着しやすくなるために、この付着燃料が内燃機関1のオイルに混入しやすくなってオイル希釈が発生しやすくなる。この点を考慮し、機関運転状況に応じてフィルタ再生の形態を選択するようにしている。
【0071】
なお、この実施形態では、主として、燃料噴射弁35、触媒装置8、燃料添加弁9、コントローラ10を含んで排気浄化装置を構成している。
【0072】
具体的に、図3に示すフローチャートを参照して、コントローラ10によるフィルタ再生の形態を詳細に説明する。
【0073】
図3に示すフローチャートは、フィルタ再生が要求されたときにエントリーされる。つまり、コントローラ10は、パティキュレートフィルタ8bのPM堆積量を推定している。
【0074】
このPM堆積量を推定する方法としては、例えば、内燃機関1の運転条件(例えば、排気温度、燃料噴射量、機関回転数等)に応じたPM付着量を予め実験等により調べてマップ化しておき、このマップにより求められるPM付着量を積算してPMの堆積量とする方法や、車両走行距離もしくは走行時間に応じてPM堆積量を推定する方法、あるいは、パティキュレートフィルタ8bの入口(上流側)圧力と出口(下流側)圧力との差圧を検出する差圧センサを設け、そのセンサ出力に基づいてパティキュレートフィルタ8bに捕集されたPM堆積量を推定する方法などが挙げられる。
【0075】
コントローラ10は、PM堆積量の推定値が所定の上限値(限界堆積量)を超えたときにパティキュレートフィルタ8bの機能回復、つまり再生が必要であると判断して、フィルタ再生フラグをオンする。
【0076】
つまり、コントローラ10は、内燃機関1の運転中において、一定周期毎にフィルタ再生フラグがオンになっているか否かを監視し、オンになっていると判断したときに、図3に示すフローチャートにエントリーする。
【0077】
まず、ステップS1において、酸化触媒8aの温度が、所定の規定値以上であるか否かを判定する。ここでは、酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとの間に設置される温度センサ77の検出出力に基づいて、酸化触媒8aから排出される排気温度を調べ、当該排気温度が規定値以上であるか否かを判定するのである。
【0078】
この規定値は、例えば酸化触媒8aの活性化温度(例えば200℃)に設定される。そのようにしている理由は、要するに、検出された排気温度が、酸化触媒8aの活性化温度以上であれば、後で燃料添加制御を実行することにより排気通路(41,42)に燃料成分を添加供給したときにパティキュレートフィルタ8bに堆積するPMを燃焼可能なフィルタ再生温度(例えば600℃)にまで迅速に昇温させることが可能になるからである。この規定値は、最適値に適宜のマージンを見込んだ値に設定するのが好ましい。
【0079】
ここで、前記ステップS1で肯定判定した場合、つまり酸化触媒8aの温度が規定値以上である場合には、下記ステップS2,S3に移行する。一方、前記ステップS1で否定判定した場合、つまり酸化触媒8aの温度が規定値未満である場合には、下記ステップS4〜S10に移行する。
【0080】
前記ステップS2では、燃料添加制御のみでフィルタ再生を実行する。このとき、酸化触媒8aが活性化温度以上であるので、酸化触媒8aの上流側に燃料を添加すると、この燃料が即座に酸化触媒8aで酸化反応されることになり、酸化触媒8aを通過する排気温度つまりパティキュレートフィルタ8bへ入る排気温度が速やかに上昇するようになる。これにより、パティキュレートフィルタ8bが速やかに昇温して、このパティキュレートフィルタ8bに堆積しているPMの燃焼が進展する。
【0081】
この後、続くステップS3において、フィルタ再生が完了したか否かを判定する。このステップS3では、要するに、PM堆積量の推定値が所定の下限値以下になったか否かを調べている。
【0082】
ここで、前記ステップS3で否定判定した場合、つまりPM堆積量の推定値が所定の下限値以下になっていない場合には、フィルタ再生が完了していないことを意味するので、前記ステップS1に戻る。
【0083】
その一方で、前記ステップS3で肯定判定した場合、つまりPM堆積量の推定値が所定の下限値以下になっている場合には、フィルタ再生が完了したことを意味するので、フィルタ再生フラグをオフしてから、フィルタ再生を終了する。
【0084】
次に、前記のステップS4〜S10の流れを説明する。まず、ステップS4では、現在の内燃機関1の運転状況に基づきポスト噴射を分割可能であるか否かを判定する。ここでは、例えば燃料噴射弁35を駆動するためのドライバ(EDU)による制御能力の限界、つまりポスト噴射を行う時間内でポスト噴射を分割するだけの応答が可能であるか否かを調べている。前記制御能力の限界となる運転状況とは、例えば内燃機関1の高速回転領域や、コモンレール34が高レール圧になる領域が挙げられる。
【0085】
ここで、まず、前記ステップS4で否定判定した場合、つまりポスト噴射の分割が不可能な状況である場合には、ステップS5において、非分割のポスト噴射制御と燃料添加制御とを協働させる形態でフィルタ再生を実行する。
【0086】
このとき、ポスト噴射量は、オイル希釈の発生を抑制することを重視し、ポスト噴射によるオイル希釈の希釈限界値以下に設定する。このようなポスト噴射量では、フィルタ再生温度への昇温制御目標値に対して不足するので、この不足分については、前記燃料添加制御で補うように設定する。
【0087】
前記ポスト噴射量の設定は、予め作成したマップからオイル希釈の希釈限界値を調べ、この希釈限界値を基準として行う。前記マップは、例えば予め機関回転数、ポスト噴射量、噴射タイミング、機関オイルに対する燃料の希釈の度合い等をパラメータとし、実験・計算等により取得した値により作成される。また、前記希釈限界値とは、オイル希釈が進みやすさを示す値で、経験的に設定される。
【0088】
一方、前記ステップS4で否定判定した場合、つまりポスト噴射の分割が可能な状況である場合には、ステップS6において分割ポスト噴射のみによるフィルタ再生を実行する。この分割ポスト噴射における1回当たりのポスト噴射量、噴射間隔、噴射タイミング等は、現在の内燃機関1の運転状況とオイル希釈の希釈限界値との関係に基づいて適宜に設定される。例えば、分割ポスト噴射における1回当たりのポスト噴射量を前記希釈限界値以下に設定したうえで、分割ポスト噴射におけるトータルでのポスト噴射量を前記昇温制御目標値に設定するのが好ましい。
【0089】
このようなステップS5やステップS6のフィルタ再生を実行すると、排気通路に供給される未燃ガス、添加燃料が酸化触媒8aで酸化反応されることになって、酸化触媒8自身が速やかに昇温する。時間経過に伴いパティキュレートフィルタ8bへ入る排気温度が昇温して、パティキュレートフィルタ8bがフィルタ再生温度にまで昇温すると、パティキュレートフィルタ8bに堆積しているPMが燃焼除去されるようになる。
【0090】
この後、ステップS7において、パティキュレートフィルタ8bの昇温が不足しているか否かを判定する。ここでは、例えばパティキュレートフィルタ8bの上流側に設置される温度センサ77の検出出力に基づいてパティキュレートフィルタ8bへ入る排気温度を調べ、当該排気温度が目標値以下であるか否かを判定する。
【0091】
この目標値は、例えばフィルタ再生温度(例えば600℃)に基づいて適宜に設定されるが、最適値に適宜のマージンを見込んだ値に設定するのが好ましい。
【0092】
このステップS7で肯定判定した場合、つまりパティキュレートフィルタ8bがフィルタ再生温度以下である場合には、ステップS8において、燃料添加弁9により不足分の燃料を増量補正し、その後、前記ステップS3に移行する。
【0093】
一方、前記ステップS7で否定判定した場合、つまりパティキュレートフィルタ8bの温度がフィルタ再生温度付近か、このフィルタ再生温度を超えている場合には、ステップS9に移行する。
【0094】
このステップS9では、パティキュレートフィルタ8bが過剰昇温しているか否かを判定する。ここでは、例えばパティキュレートフィルタ8bの上流側に設置される温度センサ77の検出出力に基づいてパティキュレートフィルタ8bへ入る排気温度を調べ、当該排気温度が適宜の規定値を超えているか否かを判定する。この規定値は、フィルタ再生温度より高い側で任意に設定することができる。
【0095】
このステップS9で否定判定した場合、つまりパティキュレートフィルタ8bが過剰昇温していない場合には、ステップS3に移行する。
【0096】
一方、前記ステップS9で肯定判定した場合、つまりパティキュレートフィルタ8bが過剰昇温している場合には、ステップS10において、前記ステップS5,S6での次のポスト噴射量を減少させるように減量補正し、その後、前記ステップS3に移行する。なお、前記次のポスト噴射量の減量補正について、ステップS5における非分割のポスト噴射制御では、1回のポスト噴射量を減量補正するのであるが、ステップS6での分割ポスト噴射制御では、トータルでのポスト噴射量を減量補正し、それに基づいて1回当たりのポスト噴射量を算出するようになる。
【0097】
以上の説明から明らかなように、制御装置としてのコントローラ10により実行する上記各ステップが機能実現手段となる。そして、ステップS1が請求項に記載の判定手段に相当し、ステップS2が請求項に記載の第1対処手段に相当し、ステップS5が請求項に記載の第2対処手段に相当している。また、ステップS4が請求項に記載の選択手段に相当し、ステップS6が請求項に記載の第3対処手段に相当している。さらに、ステップS7,S9が請求項に記載の昇温判定手段に相当し、ステップS8が請求項に記載の第1補正手段に相当し、ステップS10が請求項に記載の第2補正手段に相当している。
【0098】
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態によれば、フィルタ再生を実行する際、酸化触媒8aが活性化している状況であれば、燃料添加制御のみによるフィルタ再生を行う一方、酸化触媒8aが活性化していない状況であれば、ポスト噴射制御と燃料添加制御とを併せた形態のフィルタ再生を行うようにしている。
【0099】
前者のフィルタ再生のように、酸化触媒8aが活性化温度以上である状況において、燃料添加制御を行うと、パティキュレートフィルタ8bをフィルタ再生温度にまで速やかに昇温させることが可能になるから、フィルタ再生を迅速に終了することが可能になる。この場合、ポスト噴射制御を行わないから、ポスト噴射によるオイル希釈の発生を防止できる。
【0100】
一方、前記後者のフィルタ再生のように、酸化触媒8aが活性化温度未満である状況において、ポスト噴射制御と燃料添加制御とを協働させて実行すると、パティキュレートフィルタ8bをフィルタ再生温度にまで比較的早急に昇温させることが可能になって、フィルタ再生を比較的早期に行える状態にできるようになる。ここでのポスト噴射制御では、燃料添加制御を併用することを利用して、ポスト噴射量を可及的に少なくすることを可能にしているから、ポスト噴射によるオイル希釈を抑制または防止することが可能になる。
【0101】
このようなことから、本発明の特徴を適用した実施形態によれば、内燃機関の運転状況に関係なく、パティキュレートフィルタ8bを自動的に再生することができるうえ、内燃機関1のオイルの長寿命化が可能になって、ひいては内燃機関1の性能ならびに耐久性の向上に貢献できるようになる。
【0102】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
【0103】
(1)上記実施形態で例示した内燃機関1は、燃料添加弁9をエキゾーストマニホールド41に設置した例を挙げているが、本発明は、それに限定されるものではなく、例えば図4に示すように、排気通路においてターボチャージャ5と触媒装置8との間の領域に設置することが可能である。
【0104】
この場合、燃料添加弁9から供給する燃料がターボチャージャ5へ付着することを防止または抑制できるので、マフラー42からの白煙排出を防止または抑制することが可能になる。
【0105】
(2)上記実施形態で例示した内燃機関1は、ターボチャージャ5およびEGR装置7を装備したものを例に挙げているが、それらのいずれか一方または両方を無くしたものであっても本発明を適用できる。また、本発明は、例えば排気通路において触媒装置8の下流側に排気流量を調整するための排気絞り弁を設けた構成とすることも可能である。
【0106】
(3)上記実施形態では、触媒装置8のパティキュレートフィルタ8bをDPFやDPRとした例を挙げているが、このフィルタ8bは、DPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction system)とすることが可能である。
【0107】
DPNRは、前記DPRの機能に加えて窒素酸化物(NOx)を除去することが可能なものであり、例えば多孔質セラミック構造体に酸化触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とするもの)とNOx吸蔵還元型触媒とを担持させたものである。このDPNRは、排気ガス中のPMを多孔質の壁を通過する際に捕集され、また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると吸蔵したNOxは還元・放出される。
【0108】
このようなDPNRの場合、前記したフィルタ再生と同様の処理を行うことに加えて、NOx吸蔵還元触媒のS被毒から回復させるNOx還元処理を行う必要がある。この場合も、前記フィルタ再生時に上記実施形態で説明した制御を行うことができる。
【0109】
(4)上記実施形態では、触媒装置8を、酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとを有する構成とした例を挙げているが、それらに加えてNSR触媒を追加する構成とすることも可能である。
【0110】
このNSR触媒は、要するに、NOx吸蔵還元型触媒と呼ばれるものの一種であって、例えば、アルミナ(Al23)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
【0111】
このNSR触媒は、排気ガス中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気ガスの酸素濃度が低くかつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2もしくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気ガス中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。
【0112】
(5)上記実施形態で説明した図3のフローチャートにおいて、ステップS4,S6を無くし、ステップS1で否定判定されたときに、ステップS5に移行する形態とすることも可能であり、そのような形態も本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のコントローラの概略構成図である。
【図3】図1および図2のコントローラによるフィルタ再生の動作説明に用いるフローチャートである。
【図4】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の他実施形態で、図1に対応する図である。
【符号の説明】
【0114】
1 内燃機関
2 燃焼室
8 触媒装置
8a 酸化触媒
8b パティキュレートフィルタ
9 燃料添加弁
10 コントローラ(制御装置に相当)
35 燃料噴射弁
41 エキゾーストマニホールド(排気通路の一部に相当)
42 マフラー(排気通路の一部)
75 A/Fセンサ
76 O2センサ
77 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられる酸化触媒と、排気通路において前記酸化触媒より下流側に設けられて排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、必要に応じて前記フィルタを当該フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去するフィルタ再生温度に昇温させることによりフィルタ再生を実行する制御装置とを有する排気浄化装置であって、
前記制御装置は、前記フィルタ再生の実行要求に伴い、前記酸化触媒が活性化温度以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で肯定判定した場合に、排気通路において前記酸化触媒の上流側に燃料成分を添加供給する形態のフィルタ再生を行う第1対処手段と、
前記判定手段で否定判定した場合に、ポスト噴射制御と前記燃料添加制御とを協働させる形態のフィルタ再生を行う第2対処手段とを含み、
前記第2対処手段は、ポスト噴射量をポスト噴射によるオイル希釈の希釈限界値以下に設定したうえで、前記フィルタ再生温度への昇温制御目標値に対して不足する分を前記燃料添加制御で補うように設定する、ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記制御装置は、前記第1対処手段または第2対処手段による制御動作の実行後に、昇温不足か昇温過剰かを判定する昇温判定手段と、
前記昇温判定手段で昇温不足と判定した場合に前記燃料添加制御により増量補正する第1補正手段と、
前記昇温判定手段で昇温過剰と判定した場合に次回のポスト噴射量を減量補正する第2補正手段とをさらに含む、ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記フィルタ再生の実行要求は、前記フィルタへの粒子状物質の堆積量の推定値が所定の上限値(限界堆積量)以上になったときに発令される、ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記制御装置は、ポスト噴射を分割する形態のフィルタ再生を行う第3対処手段と、
前記判定手段で前記否定判定した場合に、内燃機関の運転状況に応じてポスト噴射を分割可能か否かをさらに判定し、否定判定した場合に前記第2対処手段を、また、肯定判定した場合に前記第3対処手段に移行させる選択手段とをさらに含み、
前記第3対処手段は、1回当たりのポスト噴射量を前記希釈限界値以下に設定したうえで、トータルでのポスト噴射量を前記昇温制御目標値に設定する、ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−106753(P2010−106753A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279463(P2008−279463)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】