説明

内燃機関の異常判定装置

【課題】装置を複雑にすることなく、2つの過給機を有する内燃機関の異常判定を行う装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の異常判定装置は、並列に配置された第1、第2過給機13a、13bを備える。第1、第2過給機13a、13bが過給に使用されるツインターボモードと、第2過給機13bが過給に使用されず第1過給機13aが過給に使用されるシングルターボモードとを切り替えるために使用される制御バルブ(19、31)を備える。第2過給機13bの回転数Nを検出する回転センサ15を備える。制御バルブに、開動作と閉動作との少なくとも一方を行わせたときの回転数Nに基づいて、制御バルブの故障診断を行う制御部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に配置された2つの過給機を有する内燃機関の異常判定装置に関し、特に一方の過給機の回転数に基づいて異常を判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
並列に配置された第1、第2過給機を有する内燃機関が提案されている。かかる内燃機関では、運転状態に応じて第2過給機が過給に使用されず第1過給機が過給に使用されるシングルターボモードと、第1、第2過給機が過給に使用されるツインターボモードとが切り替えて使用される。この内燃機関では、ツインターボモードとシングルターボモードとを切り替えるために、吸気切替バルブや排気切替バルブが設けられる。これらの制御バルブの開閉動作が適正に行われなければ目標とする過給圧が得られないばかりでなく、内燃機関を破損させるおそれがある。このため、制御バルブの故障診断など、内燃機関の異常を判定する装置が必要とされている。
【0003】
これに対して、車両に搭載した過給機の回転数に基づいて、過給機の故障の有無を診断する装置が提案されており、例えば、特許文献1は、1つの過給機を有する内燃機関において、吸気バイパス通路を介して過給圧を逃がしてサージングを回避する制御を行う間に、過給機の回転数に基づいて過給機の故障の有無を診断する装置を開示する。
【特許文献1】特開2006−57526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、ツインターボモードとシングルターボモードとを切り替えるために使用される吸気切替バルブや排気切替バルブなどの制御バルブを有する形態ではないため、これら制御バルブの故障診断に応用することは出来ない。また、2つの過給機のサージ診断を行うことも出来ない。一方、それぞれの制御バルブに開度センサを設けることによって、これら制御バルブの故障診断を行うことは可能ではあるが、開度センサからの信号を制御部などに伝達するワイヤーハーネスや、回路が余計に必要になり、装置が複雑になる。
【0005】
したがって本発明の目的は、装置を複雑にすることなく、2つの過給機を有する内燃機関の異常判定を行う装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関の異常判定装置は、並列に配置された第1、第2過給機と、第1、第2過給機が過給に使用されるツインターボモードと、第2過給機が過給に使用されず第1過給機が過給に使用されるシングルターボモードとを切り替えるために使用される制御バルブと、第2過給機の回転数を検出する回転センサと、制御バルブに、開動作と閉動作との少なくとも一方を行わせたときの回転数に基づいて、制御バルブの故障診断を行う制御部とを備える。
【0007】
ツインターボモードとシングルターボモードとを切り替えるための制御バルブの動作によって、第2過給機のタービンへの排気ガスの流れや第2過給機のコンプレッサへの空気の流れが変動し、これに応じて第2過給機の回転数も変動する。このため、回転数の挙動に基づいて、制御バルブの故障を診断することが可能になる。また、2つの過給機を備える内燃機関に、第2過給機の回転数を検出する回転センサや、かかる回転数に基づく制御を加えるだけで、制御バルブの故障を診断することが可能になるため、装置を複雑にすることはない。
【0008】
好ましくは、制御バルブは、第2過給機に連結される排気通路の遮断と開放とを切り替える排気切替バルブを有し、制御部は、シングルターボモードにおいて、開弁状態にする指示を排気切替バルブが受けた時の回転数と、閉弁状態にする指示を排気切替バルブが受けた時の回転数との少なくとも一方に基づいて、排気切替バルブの故障診断を行う。
【0009】
排気切替バルブが正常に開弁状態になれば、閉弁状態の時に比べて第2過給機のタービンに流入する排気ガスが増加し、第2過給機の回転数が上昇する。一方、排気切替バルブが正常に閉弁状態になれば、開弁状態の時に比べて第2過給機のタービンに流入する排気ガスが減少し、第2過給機の回転数が低下する。このため、かかる状態における第2過給機の回転数を確認することにより、排気切替バルブの故障診断を行うことが可能になる。また、シングルターボモードにおいては、第2過給機が過給に使用されないため、かかる排気切替バルブの開閉動作が、内燃機関の運転状態に与える影響は小さい。
【0010】
また、好ましくは、内燃機関の過給圧を検出する圧力センサを更に備え、制御バルブは、第2過給機に連結される吸気通路の遮断と開放とを切り替える吸気切替バルブを有し、制御部は、シングルターボモードにおいて、開弁状態にする指示を吸気切替バルブが受けた時の過給圧と、閉弁状態にする指示を吸気切替バルブが受けた時の過給圧との少なくとも一方と、回転数とに基づいて、吸気切替バルブの故障診断を行う。
【0011】
正常に吸気切替バルブの開閉が行われれば、開弁状態にされることにより、第2過給機のコンプレッサ出口とエンジン本体との間が吸気通路を介して空気が流れる状態にされるため過給圧が変動する。また、閉弁状態にされることにより、第2過給機のコンプレッサ出口とエンジン本体との間の空気の流れが吸気切替バルブで遮断されるため過給圧が変動する。かかる過給圧の変動の度合いは、第2過給機の回転数によっても変動する。従って、かかる状態における過給圧と、第2過給機の回転数を確認することにより、吸気切替バルブの故障診断を行うことが可能になる。また、シングルターボモードにおいては、第2過給機が過給に使用されないため、かかる吸気切替バルブの開閉動作が、内燃機関の運転状態に与える影響は小さい。
【0012】
さらに好ましくは、制御バルブの故障診断は、内燃機関が始動直後のアイドル状態で運転されている時に行われる。
【0013】
始動直後に故障診断を行うことにより、出来るだけ早い時点で故障診断を行い、フェールセーフモードに入れることが可能になる。また、アイドル状態で故障診断を行うことにより、故障診断時に排出される排気ガスを出来るだけ少なく抑え、通常の運転とは異なる制御バルブの開閉動作による内燃機関の運転状態に与える影響を小さくすることが可能になる。
【0014】
本発明に係る内燃機関の異常判定装置は、並列に配置された第1、第2過給機と、第2過給機の回転数を検出する回転センサと、第1、第2過給機を含む内燃機関の全吸入空気量を検出するエアフローメータと、内燃機関の過給圧を検出する圧力センサと、第1、第2過給機が過給に使用されるツインターボモードにおいて、回転数、及び過給圧に基づいて、第2過給機のサージ診断を行い、回転数、全吸入空気量、及び過給圧に基づいて、第1過給機のサージ診断を行う制御部とを備える。
【0015】
第2過給機の回転数、及び過給圧から、第2過給機のコンプレッサ性能マップ上の第2作動点が特定され、かかる第2作動点がサージング領域内にあるか否かを判断することによって、第2過給機のサージ診断が可能になる。また、この時、第2過給機のコンプレッサ性能マップ、第2過給機の回転数、及び過給圧から、第2過給機への第2吸入空気量を算出することが出来る。さらに、内燃機関への全吸入空気量と、第2吸入空気量との差異から第1過給機への第1吸入空気量を算出することが出来る。従って、過給圧、及び第1吸入空気量から、第1過給機のコンプレッサ性能マップ上の第1作動点が特定され、かかる第1作動点がサージング領域内にあるか否かを判断することによって、第1過給機のサージ診断が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、装置を複雑にすることなく、2つの過給機を有する内燃機関の異常判定を行う装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。内燃機関1は、制御部5、第1、第2過給機13a、13b、エンジン本体30、コンプレッサ入口側吸気通路51、コンプレッサ出口側吸気通路52、吸気マニホールド55、タービン入口側排気通路72、及びタービン出口側排気通路73を備える。
【0018】
制御部5は、CPU、制御プログラムを格納したROM、及び各種データを格納するRAM等を有し、回転センサ15等の各種センサからの信号が入力され、また、吸気切替バルブ19等に制御信号を出力して内燃機関1を含む車両の各部を制御する。制御部5は、特に、回転センサ15によって検出される第2過給機13bの回転数Nなどに基づいて、内燃機関1の異常判定、すなわちツインターボモードと、シングルターボモードとを切り替えるために使用される制御バルブ(吸気切替バルブ19、及び排気切替バルブ31)の故障診断、及び第1、第2過給機13a、13bのサージ診断を行う。
【0019】
内燃機関1の運転中、エンジン本体30の各シリンダーの燃焼室には、コンプレッサ入口側吸気通路51、コンプレッサ出口側吸気通路52、及び吸気マニホールド55を介して、空気が吸入される(図1の実線矢印参照)。インジェクタから噴射された燃料は、吸入された空気と混ざって混合気を形成する。制御部5からの点火信号に基づく点火プラグの点火によって、混合気は燃焼する。混合気の燃焼による爆発力に応じたピストンの往復運動により、クランクシャフト(不図示)が回転する。燃焼により発生した排気ガスは、排気マニホールド71、タービン入口側排気通路72、及びタービン出口側排気通路73を介して排出される(図1の破線矢印参照)。
【0020】
次に、第1、第2過給機13a、13bを中心に、内燃機関1の各部の構成を説明する。第1、第2過給機13a、13bは、並列に配列され、第1過給機13aが主ターボチャージャーの役割を果たし、第2過給機13bが副ターボチャージャーの役割を果たす。第1過給機13aは、低吸入空気量域から高吸入空気量域までで作動し、第2過給機13bは、低吸入空気量域で停止する。従って、低吸入空気量域では、第2過給機13bが過給に使用されず第1過給機13aが過給に使用されるシングルターボモードで運転が行われ、高吸入空気量域では、第1、第2過給機13a、13bが過給に使用されるツインターボモードで運転が行われる。
【0021】
第1過給機13aは、第1タービン13a1、及び第1コンプレッサ13a2を有し、第2過給機13bは、第2タービン13b1、及び第2コンプレッサ13b2を有する。第1、第2タービン13a1、13b1の入口側は、排気マニホールド71に連通されたタービン入口側排気通路72と接続する。第1、第2タービン13a1、13b1の出口側は、排気ガス浄化触媒(不図示)に連通されたタービン出口側排気通路73と接続する。
【0022】
第1、第2コンプレッサ13a2、13b2の入口側は、コンプレッサ入口側吸気通路51と接続する。コンプレッサ入口側吸気通路51には、エアクリーナ11、及びエアクリーナを流れた空気量、即ち全吸入空気量GAを検出するエアフローメータ12が設けられる。本実施形態では、全吸入空気量GAが、第1過給機13aのサージ診断に用いられる。第1、第2コンプレッサ13a2、13b2の出口側は、吸気マニホールド55に連通されたコンプレッサ出口側吸気通路52と接続する。コンプレッサ出口側吸気通路52には、インタークーラ23、及びスロットルバルブ25が設けられる。
【0023】
ツインターボモードとシングルターボモードとの切り替え、すなわち第2過給機13bの作動と停止の切り替えを行うために、タービン入口側排気通路72の第2タービン13b1の入口側に、第2タービン13b1への排気ガスの流れの遮断と開放との切り替えを行う排気切替バルブ31が設けられ、コンプレッサ出口側吸気通路52の第2コンプレッサ13b2の出口側に、第2コンプレッサ13b2から吸気マニホールド55への空気の流れの遮断と開放との切り替えを行う吸気切替バルブ19が設けられる。
【0024】
シングルターボモードからツインターボモードへの切り替えを円滑に行うため、コンプレッサ出口側吸気通路52上であって第2コンプレッサ13b2の出口と吸気切替バルブ19との間と、コンプレッサ入口側吸気通路51の第1コンプレッサ13a2の入口側とを連通する吸気バイパス通路53が設けられる。吸気バイパス通路53には、空気の流れの遮断と開放との切り替えを行う吸気バイパスバルブ17が設けられる。
【0025】
シングルターボモードの場合には、吸気切替バルブ19、及び排気切替バルブ31の両方が閉弁するが、吸気バイパスバルブ17は開弁し、これにより第1過給機13aが作動して、第2過給機13bは停止する。ツインターボモードの場合には、吸気切替バルブ19、及び排気切替バルブ31の両方が開弁するが、吸気バイパスバルブ17は閉弁し、これにより第1、第2過給機13a、13bが作動する。
【0026】
吸気切替バルブ19の上流と下流とを連通する吸気リード通路(吸気切替バルブ19のバイパス通路)54には、圧力差に応じて開閉する吸気リードバルブ21が設けられる。すなわち、吸気切替バルブ19の閉弁時において、第2コンプレッサ13b2の出口圧力が、第1コンプレッサ13a2の出口圧力よりも所定量だけ大きくなった場合に、開弁し、空気が吸気リードバルブ21を介して上流側から下流側に流れる。
【0027】
吸気バイパス通路53、及び吸気リード通路54は、コンプレッサ入口側吸気通路51、及びコンプレッサ出口側吸気通路52に比べて細めに設定される。
【0028】
シングルターボモードからツインターボモードへ運転状態が切り替えられる時は、まず排気切替バルブ31が閉弁状態から開弁状態にされ、その後吸気バイパスバルブ17が開弁状態から閉弁状態にされる。これにより、吸気バイパスバルブ17の開弁状態と吸気切替バルブ19の閉弁状態を保った状態で徐々に第2コンプレッサ13b2の出口圧力が第2コンプレッサ13b2のサージを回避しながら上昇し、その後吸気バイパスバルブ17が閉弁状態にされるとともに吸気リードバルブ21が開弁する。その後、吸気切替バルブ19が閉弁状態から開弁状態にされる。吸気切替バルブ19が開弁状態にされると、吸気リードバルブ21は閉弁する。
【0029】
第2過給機13bには、第2過給機13bの回転数Nを検出する回転センサ15が設けられる。本実施形態では、第2過給機13bの回転数Nが、ツインターボモードと、シングルターボモードとを切り替えるために使用される制御バルブ、すなわち吸気切替バルブ19と排気切替バルブ31の故障診断に用いられ、また、第1、第2過給機13a、13bのサージ診断に用いられる。
【0030】
また、吸気マニホールド55内には、過給圧Pを検出する圧力センサ27が設けられる。本実施形態では、過給圧Pが、ツインターボモードと、シングルターボモードとを切り替えるために使用される制御バルブ、すなわち吸気切替バルブ19の故障診断に用いられ、また、第1、第2過給機13a、13bのサージ診断に用いられる。
【0031】
なお、本実施形態では、吸気切替バルブ19の故障診断のために使用される過給圧Pを検出するセンサとして、内燃機関1の吸気マニホールド55内に通常備えられている圧力センサ27(インマニ圧力センサ)が使用される形態を説明するが、吸気切替バルブ19の故障診断のために、コンプレッサ出口側吸気通路52上で且つ吸気切替バルブ19の下流に配置された別の圧力センサが過給圧Pを検出する形態であってもよい。
【0032】
また、サージ診断のために使用される過給圧Pを検出するセンサとして、内燃機関1の吸気マニホールド55内に通常備えられている圧力センサ27(インマニ圧力センサ)が使用される形態を説明するが、サージ診断のために、コンプレッサ出口側吸気通路52上に配置された別の圧力センサが過給圧Pを検出する形態であってもよい。
【0033】
次に、排気切替バルブ31の故障診断の詳細について、図2のフローチャートを用いて説明する。排気切替バルブ31の故障診断は、内燃機関1の始動直後で、且つアイドル状態において行われる。始動直後としたのは、排気切替バルブ31に異常があった場合には内燃機関1を破損するおそれがあるため、出来るだけ早い時点で故障診断を行い、フェールセーフモードに入れるためである。アイドル状態を条件としたのは、故障診断時に排出される排気ガスを出来るだけ少なく抑え、通常の運転とは異なる排気切替バルブ31などの開閉動作による内燃機関1への影響を小さくするためである。従って、かかる故障診断は、シングルターボモードで運転された状態であって、且つ通常のシングルターボモードにおける開閉状態と異なる開閉状態に排気切替バルブ31などが設定されても内燃機関1の運転に問題が生じない程度の低負荷状態、低エンジン回転数であれば、他の時期に行っても良いし、その回数も1回に限定されない。
【0034】
なお、排気切替バルブ31の故障診断などで使用される回転数上昇閾値N、回転数低下閾値N、過給圧上昇閾値P、及び過給圧低下閾値Pは、制御部5からの制御信号に従って、排気切替バルブ31等が正常に開動作または閉動作をした場合に想定される回転数Nや過給圧Pを示す。
【0035】
排気切替バルブ31の故障診断が開始される前の時点では、アイドル状態、すなわち低負荷のシングルターボモードで運転されているため、排気切替バルブ31は閉弁状態、吸気切替バルブ19は閉弁状態、及び吸気バイパスバルブ17は開弁状態にされている。また、第1タービン13a1の可変ノズルは、運転状態に応じた開度に設定されている。
【0036】
排気切替バルブ31の故障診断が開始されると、ステップS31で、排気切替バルブ31を開弁状態にし、第1タービン13a1の可変ノズルを全閉状態にするそれぞれの指示に関する制御信号が、制御部5から排気切替バルブ31などに出力される。かかる制御信号に基づいて、排気切替バルブ31などが正常に動作した場合は、エンジン本体30から排出される排気ガスの殆どは、第2タービン13b1に供給され、第2過給機13bの回転数Nが回転数上昇閾値N以上に上昇する。
【0037】
なお、第1タービン13a1の可変ノズルを全閉状態にしたのは、出来るだけ第1タービン13a1への排気ガスの流入を抑え、第2タービン13b1への排気エネルギーを確保して、ステップS32、及びステップS35での回転数Nの検出感度を高めるためである。従って、第1タービン13a1の可変ノズルの全閉状態は、完全にノズルを締め切った状態でなくてもよい。
【0038】
ステップS32で、制御部5は、第2過給機13bの回転数Nが回転数上昇閾値N以上に上昇したか否かを判断する。上昇していない場合は、排気切替バルブ31がステップS31で出力された制御信号に従って正常に開閉動作しておらず、第2タービン13b1に排気ガスが適切に供給されていないとして、ステップS33に進められる。上昇している場合は、ステップS34に進められる。
【0039】
ステップS33で、制御部5は、排気切替バルブ31の開弁動作に異常が存在すると判定し、フェールセーフモードにした後、排気切替バルブ19の故障診断を終了する。
【0040】
ステップS34で、排気切替バルブ31を閉弁状態にする指示に関する制御信号が、制御部5から排気切替バルブ31に出力される。かかる制御信号に基づいて、排気切替バルブ31が正常に動作した場合は、エンジン本体30から排出される排気ガスの第2タービン13b1への供給が排気切替バルブ31により遮断されるため、第2タービン13b1の回転数Nが回転数低下閾値N以下に低下する。
【0041】
ステップS35で、制御部5は、第2過給機13bの回転数Nが回転数低下閾値N以下に低下したか否かを判断する(N>N)。低下していない場合は、排気切替バルブ31がステップS34で出力された制御信号に従って閉弁しておらず、第2タービン13b1への排気ガスの供給が適切に遮断されていないとして、ステップS37に進められる。低下している場合は、ステップS36に進められる。
【0042】
なお、ステップS34において、排気切替バルブ31を閉弁状態にする場合に、第1タービン13a1の可変ノズルの開度は全閉状態から通常の開度に戻しておいてもよい。全閉状態を維持した方が第2過給機13bの回転数低下を確認しやすいが、排気ガスの排出のために、全閉状態から通常の開度にしておいた方が望ましい。
【0043】
ステップS36で、制御部5は、排気切替バルブ31の開閉動作が正常であると判定し、各制御バルブを故障診断前の開閉状態に戻した後、排気切替バルブ31の故障診断を終了する。ステップS37で、制御部5は、排気切替バルブ31の閉弁動作に異常が存在すると判定し、フェールセーフモードにした後、排気切替バルブ31の故障診断を終了する。
【0044】
これにより、排気切替バルブ31に開弁状態と閉弁状態とを監視する開度センサなどを設けることなく、排気切替バルブ31の故障診断を行うことが可能になる。なお、ステップS31〜S37までの制御は、数秒程度で完了出来るため、排気切替バルブ31等の開閉動作が、内燃機関1の運転状態に与える影響は小さい。
【0045】
また、排気切替バルブ31の故障診断における、排気切替バルブ31の開閉指示手順、及び他のバルブの開閉状態は、検出感度の観点などから上述の形態が望ましいが、これに限られるものではなく、他の手順などであっても、排気切替バルブ31が開弁状態にする指示を受けた時の第2過給機13bの回転数Nの挙動と、排気切替バルブ31が閉弁状態にする指示を受けた時の第2過給機13bの回転数Nの挙動の少なくとも一方に基づいて、排気切替バルブ31の故障診断を行うことが可能である。
【0046】
次に、吸気切替バルブ19の故障診断の詳細について、図3のフローチャートを用いて説明する。吸気切替バルブ19の故障診断は、内燃機関1の始動直後で、且つアイドル状態において行われる。始動直後とした理由、アイドル状態を条件とした理由は、排気切替バルブ31の故障診断の場合と同様である。
【0047】
吸気切替バルブ19の故障診断が開始される前の時点では、アイドル状態、すなわち低負荷のシングルターボモードで運転されているため、排気切替バルブ31は閉弁状態、吸気切替バルブ19は閉弁状態、及び吸気バイパスバルブ17は開弁状態にされている。また、第1タービン13a1の可変ノズルは、運転状態に応じた開度に設定されている。
【0048】
吸気切替バルブ19の故障診断が開始されると、ステップS51で、排気切替バルブ31を開弁状態にし、第1タービン13a1の可変ノズルを全閉状態にするそれぞれの指示に関する制御信号が、制御部5から排気切替バルブ31などに出力される。かかる制御信号に基づいて、排気切替バルブ31などが正常に動作した場合は、エンジン本体30から排出される排気ガスの殆どは、第2タービン13b1に供給され、第2過給機13bの回転数Nが上昇する。
【0049】
また、第2タービン13b1の回転にともない、第2コンプレッサ13b2が回転し、第2コンプレッサ13b2に空気が吸入される。吸気バイパス通路53は、コンプレッサ出口側吸気通路52に比べて細いため、第2コンプレッサ13b2に吸入された空気の一部は、吸気バイパス通路53を介してコンプレッサ入口側吸気通路51に到達するが、残りはコンプレッサ出口側吸気通路52上であって第2コンプレッサ13b2の出口と吸気切替バルブ19との間に押し込められる。このため、第2コンプレッサ13b2の出口圧力が上昇する。
【0050】
第1タービン13a1の可変ノズルを全閉状態にした理由は、排気切替バルブ31の故障診断の場合と同様である。
【0051】
ステップS52で、制御部5は、第2過給機13bの回転数Nが回転数上昇閾値N以上に上昇したことを確認した後、ステップS53に進められる。
【0052】
ステップS53で、吸気切替バルブ19を開弁状態に切り替えた後、すぐに閉弁状態にする指示に関する制御信号が、制御部5から吸気切替バルブ19に出力される。
【0053】
かかる制御信号に基づいて、吸気切替バルブ19が正常に動作した場合は、吸気切替バルブ19が開弁状態にされることにより、第2コンプレッサ13b2に流入した空気が、吸気バイパス通路53に流入するだけでなく、コンプレッサ出口側吸気通路52を介して吸気マニホールド55に流入するため、過給圧Pが上昇する。また、その後吸気切替バルブ19が閉弁状態にされることにより、第2コンプレッサ13b2から吸気マニホールド55への空気の流れは遮断され、上昇した過給圧Pは低下する。
【0054】
ステップS54で、制御部5は、過給圧Pが、第2過給機13bの回転数Nに応じて変動する過給圧上昇閾値P以上に上昇し、且つその後、第2過給機13bの回転数Nに応じて変動する過給圧低下閾値P以下に低下したか否かを判断する。過給圧上昇閾値P、及び過給圧低下閾値Pを、第2過給機13bの回転数Nに対応させたのは、第2過給機13bの回転数Nに応じて、第2コンプレッサ13b2で圧縮される空気量が変動し、第2コンプレッサ13b2の出口圧力が変動することを考慮したものである。
【0055】
過給圧上昇閾値Pの設定に使用される回転数Nは、過給圧Pが過給圧上昇閾値P以上に上昇したか否かを判断する時点近傍で検出されたものが使用される。同様に過給圧低下閾値Pの設定に使用される回転数Nは、過給圧Pが過給圧低下閾値P以下に低下したか否かを判断する時点近傍で検出されたものが使用される。回転数Nが高い場合は、過給圧上昇閾値P、及び過給圧低下閾値Pは、いずれも高い値に設定され、回転数Nが低い場合は、過給圧上昇閾値P、及び過給圧低下閾値Pは、いずれも低い値に設定される。
【0056】
なお、排気切替バルブ31の故障診断などで使用される回転数上昇閾値N、回転数低下閾値N、過給圧上昇閾値P、及び過給圧低下閾値Pは、制御部5からの制御信号に従って、排気切替バルブ31等が正常に開動作または閉動作をした場合に想定される回転数Nや過給圧Pを示す。
【0057】
過給圧Pが過給圧上昇閾値P以上に上昇しない場合は、吸気切替バルブ19がステップS53で出力された制御信号に従って開弁しておらず、第2コンプレッサ13b2からの圧縮空気がコンプレッサ出口側吸気通路52を介して吸気マニホールド55に適切に流入していないと判断される。また、過給圧Pが過給圧上昇閾値P以上に上昇したとしても、その後、過給圧低下閾値P以下に低下しない場合は、吸気切替バルブ19がステップS53で出力された制御信号に従って閉弁しておらず、第2コンプレッサ13b2からの圧縮空気の吸気マニホールド55への流入が適切に遮断できていないと判断される。このため、ステップS54の条件の少なくとも1つを満たさない場合は、ステップS56に進められる。ステップS54の条件を総て満たす場合は、ステップS55に進められる。
【0058】
ステップS55で、制御部5は、吸気切替バルブ19の開閉動作が正常であると判定し、各制御バルブを故障診断前の開閉状態に戻した後、吸気切替バルブ19の故障診断を終了する。ステップS56で、制御部5は、吸気切替バルブ19の開閉動作に異常が存在すると判定し、フェールセーフモードにした後、吸気切替バルブ19の故障診断を終了する。
【0059】
これにより、吸気切替バルブ19に開弁状態と閉弁状態とを監視する開度センサなどを設けることなく、吸気切替バルブ19の故障診断を行うことが可能になる。なお、ステップS51〜S56までの制御は、数秒程度で完了出来るため、かかる吸気切替バルブ19等の開閉動作が、内燃機関1の運転状態に与える影響は小さい。
【0060】
なお、吸気切替バルブ19の故障診断における、吸気切替バルブ19の開閉指示手順、及び他のバルブの開閉状態は、検出感度の観点などから上述の形態が望ましいが、これに限られるものではなく、他の手順などであっても、吸気切替バルブ19が開弁状態にする指示を受けた時の過給圧Pの挙動と、吸気切替バルブ19が閉弁状態にする指示を受けた時の過給圧Pの挙動の少なくとも一方と、回転数Nとに基づいて、吸気切替バルブ19の故障診断を行うことが可能である。
【0061】
また、本実施形態における、排気切替バルブ31の故障診断、及び吸気切替バルブ19の故障診断を順次繰り返して行うことにより、排気切替バルブ31と吸気切替バルブ19の一方が故障した場合に、他の制御バルブが故障するまでに、かかる故障を発見することが出来る。
【0062】
次に、第1、第2過給機13a、13bのサージ診断の詳細について、図4のフローチャートを用いて説明する。第1、第2過給機13a、13bのサージ診断は、ツインターボモード、すなわち吸気切替バルブ19、及び排気切替バルブ31の両方が開弁し、吸気バイパスバルブ17は閉弁した状態で内燃機関1が運転されている間、常時行われる。
【0063】
第1、第2過給機13a、13bのサージ診断が開始されると、ステップS71で、回転数Nと、過給圧Pから算出される第2コンプレッサ13b2の入口と出口の圧力比πとに基づいて、第2過給機13bのコンプレッサ性能マップ上の第2作動点が算出される。
【0064】
コンプレッサ性能マップは、縦軸にコンプレッサの入口と出口の圧力比π、横軸にコンプレッサに流入する空気量、すなわち吸入空気量をとり、コンプレッサの回転数N、圧力比π、及び吸入空気量の関係及びサージ限界などを表す。図5は、第2コンプレッサ13b2のコンプレッサ性能マップの一例を示す。コンプレッサ性能マップ上の実線N11〜N14は、コンプレッサを含む過給機の等回転数曲線であり、右上に行くに従い高回転数になる(N11<N12<N13<N14)。また、コンプレッサ性能マップ上の破線SLはサージングライン(サージ限界)であり、このサージングラインSLよりも左側の領域がサージング領域である。かかるコンプレッサ性能マップは、用いられるコンプレッサ固有のものであり、予め実験により性能特性が求められ、制御部5のROMなどに記録されている。第1コンプレッサ13a2についても同様のコンプレッサ性能マップが用意される。
【0065】
ステップS72で、第2作動点が、サージング領域内にあるか否かが判断される。サージング領域内にある場合は、第2過給機13bについてサージングが発生するおそれがあるとして、ステップS73に進められる。サージング領域内にない場合は、ステップS74に進められる。
【0066】
ステップS73で、第2過給機13bの可変ノズルのノズル位置制御に対して、第2過給機13bのサージングを回避するフィードバックが行われ、ステップS74に進められる。
【0067】
ステップS74で、第2コンプレッサ13b2のコンプレッサ性能マップ、第2過給機13bの回転数N、及び過給圧Pから算出される第2コンプレッサ13b2の圧力比πに基づいて、第2コンプレッサ13b2に流入する第2吸入空気量GA2が算出される。
【0068】
ステップS75で、全吸入空気量GAと第2吸入空気量GA2との差異から、第1コンプレッサ13b1に流入する第1吸入空気量GA1が算出される。
【0069】
ステップS76で、過給圧Pから算出される圧力比πと第1吸入空気量GA1とに基づいて、第1過給機13aのコンプレッサ性能マップ上の第1作動点が算出される。ステップS77で、第1作動点が、サージング領域内にあるか否かが判断される。サージング領域内にある場合は、第1過給機13aについてサージングが発生するおそれがあるとして、ステップS78に進められる。サージング領域内にない場合は、ステップS71に戻され、サージ診断が繰り返し行われる。
【0070】
ステップS78で、第1過給機13aの可変ノズルのノズル位置制御に対して、第1過給機13aのサージングを回避するフィードバックが行われ、その後、ステップS71に戻され、サージ診断が繰り返し行われる。
【0071】
これにより、第1、第2過給機13a、13bのサージ診断を行うことが可能になる。なお、ステップS74〜S77の手順は、数十ms程度の時間で行われるため、ステップS73における第2過給機13bのノズル位置制御のフィードバックと、ステップS78における第1過給機13aのノズル位置制御のフィードバックとは、ほぼ同時に行われる。
【0072】
本実施形態では、エアフローメータ12で得られた全吸入空気量GA、回転センサ15で得られた第2過給機13bの回転数N、及び圧力センサ27で得られた過給圧Pに基づいて、内燃機関1の異常判定、すなわちツインターボモードとシングルターボモードとを切り替えるために使用される吸気切替バルブ19、及び排気切替バルブ31の故障診断を行うことが可能になり、また、第1、第2過給機13a、13bのサージ診断を行うことが可能になる。
【0073】
なお、エアフローメータ12や圧力センサ27は、かかる異常判定を行わない場合でも、過給機を搭載する内燃機関に通常備えられるものである。このため、本実施形態では、回転センサ15を新たに追加するだけで、内燃機関1の異常判定を行うことが可能になるため、かかる異常判定のために装置を複雑にすることはない。特に、故障診断を行うバルブのそれぞれに開度センサを設けて、故障診断を行う形態に比べて、ワイヤーハーネスや回路を簡素化出来るメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態における内燃機関の構成図である。
【図2】排気切替バルブの故障診断の手順を示すフローチャートである。
【図3】吸気切替バルブの故障診断の手順を示すフローチャートである。
【図4】第1、第2過給機のサージ診断の手順を示すフローチャートである。
【図5】第2コンプレッサのコンプレッサ性能マップを示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 内燃機関
5 制御部
11 エアクリーナ
12 エアフローメータ
13a、13b 第1、第2過給機
13a1、13b1 第1、第2タービン
13a2、13b2 第1、第2コンプレッサ
15 回転センサ
17 吸気バイパスバルブ
19 吸気切替バルブ
21 吸気リードバルブ
23 インタークーラ
25 スロットルバルブ
27 圧力センサ
30 エンジン本体
31 排気切替バルブ
51 コンプレッサ入口側吸気通路
52 コンプレッサ出口側吸気通路
53 吸気バイパス通路
54 吸気リード通路
55 吸気マニホールド
71 排気マニホールド
72 タービン入口側排気通路
73 タービン出口側排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された第1、第2過給機と、
前記第1、第2過給機が過給に使用されるツインターボモードと、前記第2過給機が前記過給に使用されず前記第1過給機が前記過給に使用されるシングルターボモードとを切り替えるために使用される制御バルブと、
前記第2過給機の回転数を検出する回転センサと、
前記制御バルブに、開動作と閉動作との少なくとも一方を行わせたときの前記回転数に基づいて、前記制御バルブの故障診断を行う制御部とを備えることを特徴とする内燃機関の異常判定装置。
【請求項2】
前記制御バルブは、前記第2過給機に連結される排気通路の遮断と開放とを切り替える排気切替バルブを有し、
前記制御部は、前記シングルターボモードにおいて、開弁状態にする指示を前記排気切替バルブが受けた時の前記回転数のと、閉弁状態にする指示を前記排気切替バルブが受けた時の前記回転数との少なくとも一方に基づいて、前記排気切替バルブの故障診断を行うことを特徴とする請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記内燃機関の過給圧を検出する圧力センサを更に備え、
前記制御バルブは、前記シングルターボモードにおいて、前記第2過給機に連結される吸気通路の遮断と開放とを切り替える吸気切替バルブを有し、
前記制御部は、開弁状態にする指示を前記吸気切替バルブが受けた時の前記過給圧のと、閉弁状態にする指示を前記吸気切替バルブが受けた時の前記過給圧との少なくとも一方と、前記回転数とに基づいて、前記吸気切替バルブの故障診断を行うことを特徴とする請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記制御バルブの故障診断は、前記内燃機関が始動直後のアイドル状態で運転されている時に行われることを特徴とする請求項2乃至3に記載の異常判定装置。
【請求項5】
並列に配置された第1、第2過給機と、
前記第2過給機の回転数を検出する回転センサと、
前記第1、第2過給機を含む内燃機関の全吸入空気量を検出するエアフローメータと、
前記内燃機関の過給圧を検出する圧力センサと、
前記第1、第2過給機が過給に使用されるツインターボモードにおいて、前記回転数、及び前記過給圧に基づいて、前記第2過給機のサージ診断を行い、前記回転数、前記全吸入空気量、及び前記過給圧に基づいて、前記第1過給機のサージ診断を行う制御部とを備えることを特徴とする前記内燃機関の異常判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−167961(P2009−167961A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8998(P2008−8998)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】