内燃機関共振初期検出装置及び内燃機関制御装置
【課題】デュアルマスフライホイール(DMF)の共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する操作の有無を含めてその意思に応じて適切に判定すると共に、これに基づいて適切に共振防止を実行する。
【解決手段】クランク軸回転速度変動幅ωを変動判定閾値A1,A2,A3と比較してDMFの共振の程度を捉えることができる。この変動判定閾値A1〜A3は車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態、例えばブレーキ踏み込み操作状態に応じて設定されている(S102〜S108)。このため車両ドライバーが実際に制動操作を実行している場合も制動操作を実行していない場合も適切な変動判定閾値A1〜A3が設定できる。このことによりDMFの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの制動操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定でき、適切なタイミングでエンジンが発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【解決手段】クランク軸回転速度変動幅ωを変動判定閾値A1,A2,A3と比較してDMFの共振の程度を捉えることができる。この変動判定閾値A1〜A3は車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態、例えばブレーキ踏み込み操作状態に応じて設定されている(S102〜S108)。このため車両ドライバーが実際に制動操作を実行している場合も制動操作を実行していない場合も適切な変動判定閾値A1〜A3が設定できる。このことによりDMFの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの制動操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定でき、適切なタイミングでエンジンが発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の共振初期を検出する内燃機関共振初期検出装置、及びこの内燃機関共振初期検出装置を利用した内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のトルク変動が駆動系に伝達されるのを抑制するためにデュアルマスフライホイールを使用する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このデュアルマスフライホイールは、バネなどの弾性体により2つのフライホイールを接続したものである。したがってデュアルマスフライホイールには共振周波数が存在し、共振が生じた場合には2つのフライホイール間での振幅が大きくなり、バネの突き当たりによるショックが生じたり、場合によりデュアルマスフライホイールが損傷したりするおそれもある。
【0003】
このようなデュアルマスフライホイールの共振を防止するために、通常は、共振点をアイドル回転数より低い回転数域に設定していた。しかし内燃機関の運転状態によっては一時的にアイドル回転数よりも回転数が低下する場合があり、このような共振点の設定のみではデュアルマスフライホイールの共振を十分に防止できない。
【0004】
特許文献1では内燃機関回転数が、機関水温に基づいて設定した共振回転速度領域に、機関水温に基づいて設定した所定時間とどまっていた場合に、燃料供給停止により共振回転速度領域から離脱させている。
【0005】
このような内燃機関回転速度(回転数)による共振対策についてはデュアルマスフライホイールを用いていない内燃機関についても車体との関係における共振防止の技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2では、ブレーキの踏み込み量やアクセルスイッチの状態に基づいて車両ドライバーが制動したいのか加速したいのかを判定して、機関回転速度が共振域に入っている場合は制動時には内燃機関を停止させて共振を防止するが、加速時には停止させないようにして、停止と再始動とが頻繁に繰り返さないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−069206号公報(第7−8頁、図8)
【特許文献2】特開2002−221059号公報(第6−7頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし内燃機関回転速度のみを用いた共振判定では、実際に共振を開始しようとしているか否かの判定は困難である。したがってデュアルマスフライホイールはまだ共振を開始しようとしていないのに不要な燃料噴射量制限制御を実行してしまい、アイドル回転速度より低下した状態からの回転速度の復帰が遅れたり、エンストの頻度が高まったりするおそれがある。逆に、デュアルマスフライホイールは共振を開始しようとしているのに燃料噴射量制限制御が実行されない状態が継続することで共振が激しくなり、バネの突き当たりが生じてショックが発生したり、場合によりデュアルマスフライホイールが損傷したりするおそれもある。
【0009】
更に特許文献2のごとく車両ドライバーの操作実行のみで共振防止対策実行の有無を決定している技術では、制動や加速操作をしていない場合の共振に対しては対処できず、適切な共振防止ができない。
【0010】
本発明は、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する操作の有無を含めてその意思に応じて適切に判定すると共に、これに基づいて適切に共振防止を実行することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の共振初期を検出する共振初期検出装置であって、内燃機関のクランク軸回転速度の変動の大きさを検出するクランク軸回転速度変動検出手段と、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態を、操作の有無を含めて検出する操作状態検出手段と、前記操作状態検出手段により検出される操作状態に応じて変動判定閾値を設定する変動判定閾値設定手段と、前記クランク軸回転速度変動検出手段にて検出される変動の大きさが、前記変動判定閾値設定手段により設定される変動判定閾値より大きくなった場合に共振初期であると判定する共振初期判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
共振初期判定手段は、変動判定閾値設定手段が設定する変動判定閾値を用いて内燃機関のクランク軸回転速度の変動の大きさを判定している。内燃機関回転速度のみを用いた共振判定ではなく、実際の共振状態が反映されるクランク軸回転速度の変動を判定対象としているため、デュアルマスフライホイールの共振状態を正確に捉えることができる。
【0013】
しかも変動判定閾値は、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態を、操作の有無を含めて検出した操作状態に応じて設定されている。このため車両ドライバーが実際に制動や加速操作を実行している場合のみでなく、制動や加速操作を実行していない場合の共振に対しても、適切な変動判定閾値が設定できる。
【0014】
このことによりデュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できる。
請求項2に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態を検出することを特徴とする。
【0015】
このように制動操作の有無を含めた制動操作状態に応じて変動判定閾値を設定することにより、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの、特に減速に対する、操作の有無を含めた意思に応じて適切に判定できる。
【0016】
請求項3に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、アクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする。
【0017】
このようにアクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態に応じて変動判定閾値を設定することにより、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの、特に加速に対する、操作の有無を含めた意思に応じて適切に判定できる。
【0018】
請求項4に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態、及びアクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする。
【0019】
このように制動操作及びアクセル操作の有無を含めたこれらの操作状態に応じて変動判定閾値を設定することにより、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めた意思に応じて適切に判定できる。
【0020】
請求項5に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項4に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記変動判定閾値設定手段は、前記操作状態検出手段により、アクセル操作がなされている場合の前記アクセル操作状態と、制動操作がなされている場合の前記制動操作状態とが同時に検出された場合には、前記制動操作状態を優先して前記変動判定閾値の設定に用いることを特徴とする。
【0021】
制動操作がなされている場合の制動操作状態は、車両ドライバーにとって何らかの緊急事態である可能性が高いことから、アクセル操作がなされている場合と制動操作がなされている場合とが同時に検出されると、変動判定閾値設定手段は制動操作状態を優先して変動判定閾値の設定に用いる。このことにより操作の有無を含めた車両ドライバーの加減速に対する意思に応じた適切な判定が、より効果的なものとなる。
【0022】
請求項6に記載の内燃機関制御装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させる出力変動調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
このように前述した内燃機関共振初期検出装置を用いて、共振初期であると判定されている場合に、出力変動調節手段が、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることにより、デュアルマスフライホイールの共振を低減あるいは消滅させることができる。
【0024】
変動判定閾値は、前述したごとく、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できるものである。このことから、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0025】
請求項7に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする。
【0026】
内燃機関の吸気量を減少させると減少前よりも内燃機関が発生する出力変動は低減する。このように操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を吸気量減少により低減させることができる。
【0027】
請求項8に記載の内燃機関制御装置では、請求項7に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はスロットルバルブを有するディーゼルエンジンであり、前記出力変動調節手段は、前記スロットルバルブの開度を低下させることにより、内燃機関の吸気量を減少させることを特徴とする。
【0028】
吸気量の減少は、スロットルバルブを有するディーゼルエンジンではスロットルバルブの開度を低下させることにより実現できる。
請求項9に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする。
【0029】
内燃機関の燃料供給量を減少させると減少前よりも内燃機関が発生する出力変動は低減する。このように操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を燃料供給量減少により低減させることができる。
【0030】
請求項10に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給を停止させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする。
【0031】
燃料供給を停止させると内燃機関が発生する出力変動は低減し、その後に内燃機関回転が停止すれば出力変動は消滅する。このように操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を燃料噴射停止により低減又は消滅させることができる。しかも内燃機関は急速に停止に向かうので共振点を迅速に通過させることができることから、デュアルマスフライホイールにおけるショックや損傷をより確実に防止できる。
【0032】
請求項11に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させる処理、内燃機関の燃料供給量を減少させる処理、及び内燃機関の燃料供給を停止させる処理のいずれか2つ又は全てを実行することにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする。
【0033】
このように処理を組み合わせることにより、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
請求項12に記載の内燃機関制御装置では、請求項9〜11のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はディーゼルエンジンであり、燃料供給は、燃料噴射弁から燃焼室内に対して行われる燃料噴射であることを特徴とする。
【0034】
このようにディーゼルエンジンである場合には、燃料噴射弁から燃焼室内に対して行われる燃料噴射における噴射量減量や噴射停止により、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0035】
請求項13に記載の内燃機関制御装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させる出力変動調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0036】
このように共振初期判定手段にて共振初期であると判定されると、出力変動調節手段が、クランク角変化における出力変動周波数を変化させる。すなわちクランク角の値を軸とした場合の出力変動周波数を変化させる。この変化は燃料噴射量や燃料噴射時期の調節により可能であるため、クランク軸回転速度を変化させる必要がなく、迅速に出力変動周波数を変化させることができ、このことにより時間軸での出力変動周波数についても迅速に変化させることができる。したがって出力変動周波数をデュアルマスフライホイールの共振点から即座に離すことができる。このことによりデュアルマスフライホイールの共振を低減あるいは消滅させることができる。
【0037】
変動判定閾値は前述したごとく、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できるものであることから、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0038】
請求項14に記載の内燃機関制御装置では、請求項13に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関は複数気筒を備え、各気筒の燃焼室への燃料供給は、燃焼室内での燃料噴射により行われると共に、前記出力変動調節手段は、気筒間にて燃料噴射時期の差と燃料噴射量の差との一方又は両方を生じさせることで、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させることを特徴とする。
【0039】
このように気筒間にて燃料噴射時期の差や、燃料噴射量の差を設けることにより、全気筒一律に燃料噴射時期や燃料噴射量を調節している状態から、クランク角変化における出力変動周波数を変化させることができ、この結果、時間軸での出力変動周波数も変化する。したがってデュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に判定でき、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで共振点から出力変動周波数を迅速に離して共振を抑制できる。
【0040】
請求項15に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転速度より低く、かつ前記デュアルマスフライホイールの共振回転速度より高い位置に基準回転速度を設定し、該基準回転速度より前記回転速度検出手段にて検出される回転速度が低い場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0041】
このような前提条件下にて、出力変動調節手段を機能させても良い。このように基準回転速度はエンスト防止判定回転速度より低いため、エンスト防止判定回転速度より低くなってから、内燃機関出力変動を低減又は消滅させる処理が実行される。このことにより、従前の耐エンスト性能を下げることなく、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングでデュアルマスフライホイールの共振を回避することができる。
【0042】
請求項16に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が制動中である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0043】
車両が制動中である場合を条件として出力変動調節手段を機能させても良い。このことにより、加速時におけるクランク軸回転速度の変動時と明確に区別できるので、制動時のデュアルマスフライホイールの共振初期を、より正確に判定できる。
【0044】
請求項17に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車速が基準車速以下あるいは内燃機関回転速度が基準回転速度以下であって、かつクラッチが係合あるいは半係合状態である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0045】
車速が基準車速以下あるいは内燃機関回転速度が基準回転速度以下であって、かつクラッチが係合あるいは半係合状態である場合を条件として出力変動調節手段を機能させても良い。このことにより発進時におけるクラッチ係合時の回転速度低下を判定できるので、発進時でのデュアルマスフライホイールの共振初期を、より正確に判定できる。
【0046】
請求項18に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が登坂時である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0047】
車両が登坂時である場合を条件として出力変動調節手段を機能させても良い。このことにより登坂時の回転速度低下を判定できるので、登坂時でのデュアルマスフライホイールの共振初期を正確に判定できる。
【0048】
請求項19に記載の内燃機関制御装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、デュアルマスフライホイールと駆動系との間に配置されているクラッチの係合状態を検出するクラッチセンサと、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、前記クラッチセンサが前記クラッチの係合又は半係合状態の継続を検出しており、かつ前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、前記クラッチの切断を要求する報知出力を行う報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0049】
共振初期判定手段にて共振初期であると判定されと、この判定に基づいて報知手段により報知出力がなされる。このことで車両ドライバーによりクラッチの切断が実行されれば、内燃機関回転速度が共振点まで低下することを阻止することができ、デュアルマスフライホイールの共振を低減したり消滅させたりすることができる。
【0050】
共振初期判定手段にて用いられる変動判定閾値は前述したごとく、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できるものである。したがって報知手段は適切なタイミングでクラッチの切断を要求する報知出力を行うことができる。このように報知できることにより、適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0051】
請求項20に記載の内燃機関制御装置では、請求項19に記載の内燃機関制御装置において、前記報知手段は、警告ランプの点灯により報知することを特徴とする。
このようにして報知することで、車両ドライバーにクラッチ切断を要求できる。
【0052】
請求項21に記載の内燃機関制御装置では、請求項19又は20に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度が基準回転速度以下の場合に、前記報知手段が機能することを特徴とする。
【0053】
このように内燃機関回転速度が基準回転速度以下の場合に限って、報知手段を機能させても良い。このことにより低回転時となった場合のデュアルマスフライホイールの共振初期を正確に判定でき、適切なタイミングで対処できる。
【0054】
請求項22に記載の内燃機関制御装置では、請求項19〜21のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記報知手段による報知出力時に、前記回転速度検出手段にて検出される内燃機関回転速度が基準回転速度よりも低い場合には、内燃機関の出力を増加させる内燃機関出力増加手段とを備えることを特徴とする。
【0055】
このように報知出力によってもクラッチの係合又は半係合状態が継続している期間に、内燃機関回転速度が基準回転速度よりも低い場合には、内燃機関出力増加手段は、内燃機関の出力を増加させている。このことによりドライバーがクラッチを切断する前であっても、デュアルマスフライホイールの共振点に内燃機関回転速度が低下するのを防止できる。したがって効果的にデュアルマスフライホイールの共振を低減したり消滅させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態1の内燃機関、その駆動系及び制御系の概略構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態1のECUにて実行されるDMF共振防止処理のフローチャート。
【図3】同じくクランク軸回転速度変動幅ω検出処理のフローチャート。
【図4】実施の形態1の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図5】実施の形態1の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図6】実施の形態2のDMF共振防止処理のフローチャート。
【図7】実施の形態2の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図8】実施の形態2の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図9】実施の形態3にて用いられるマップMAPbpの内容を説明するグラフ。
【図10】実施の形態3の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図11】実施の形態4のDMF共振防止処理のフローチャート。
【図12】実施の形態4におけるクランク角変化における出力変動周波数変更処理の一例を示すグラフ。
【図13】実施の形態4におけるクランク角変化における出力変動周波数変更処理の一例を示すグラフ。
【図14】実施の形態5のDMF共振防止用報知処理のフローチャート。
【図15】実施の形態5の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図16】実施の形態5の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図17】実施の形態6のDMF共振防止処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0057】
[実施の形態1]
図1は、本発明が適用された車両走行駆動用内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、エンジンと略す)2、その駆動系及び制御系の概略構成を示すブロック図である。このエンジン2は直列4気筒であり、各気筒には燃焼室内へ直接燃料を噴射する燃料噴射弁4が配置されている。
【0058】
燃料噴射弁4は燃料を所定圧まで蓄圧するコモンレール6と連通し、コモンレール6はエンジン2により回転駆動される燃料ポンプから加圧燃料を供給されている。コモンレール6から各気筒の燃料噴射弁4へ分配される加圧燃料は、燃料噴射弁4に所定の駆動電流が印加されることで燃料噴射弁4が開弁し、その結果、燃料噴射弁4から気筒内へ燃料が噴射される。
【0059】
エンジン2にはインテークマニホールド8が接続されており、インテークマニホールド8の各枝管は、各気筒の燃焼室に対して吸気ポートを介して連通している。インテークマニホールド8は吸気管10に接続され、吸気管10には吸気量を絞るためのディーゼルスロットル弁(以下、「Dスロットル」と称する)12が取り付けられ、このDスロットル12は電動アクチュエータ14により開度調節がなされる。尚、吸気管10の上流側にはインタークーラ、ターボチャージャのコンプレッサ、エアクリーナが配置されている。
【0060】
Dスロットル12の下流側にて吸気管10には排気再循環通路(EGR通路)16が開口している。EGR通路16は、その上流側にてエンジン2の排気経路側を流れる排気の一部を導入している。このことにより排気をEGRガスとして、流量調節用のEGR弁18を介して吸気管10に導入している。
【0061】
尚、排気経路側では、排気の流動エネルギーによりターボチャージャのタービンが回転される。このタービンを回転させた排気は排気浄化触媒にて処理されてから排出される。
エンジン2の出力は、プライマリフライホイール20及びセカンダリフライホイール22からなるデュアルマスフライホイール(以下、DMFと略す)24とセカンダリフライホイール22側に設けられたクラッチ26を介して、手動変速機(以下、MTと略す)28側に伝達される。
【0062】
DMF24はプライマリフライホイール20とセカンダリフライホイール22とをバネ24aを介して接続したものであり、プライマリフライホイール20とセカンダリフライホイール22とは各々の回転軸20a,22aをベアリング24bで相対回転可能に接続している。このDMF24によりエンジン2の出力がクランク軸2aからMT28へ伝達されると共に、バネ24aを利用してエンジン2の出力変動を有効に吸収・低減することができる。したがって通常運転時においては駆動系の捻り振動を抑制し、これに起因する騒音・振動の発生を効果的に低減・回避することができる。
【0063】
このようなエンジン2に対してエンジン運転状態を制御するための電子制御ユニット(ECU)30が設けられている。このECU30は、エンジン運転状態やドライバーの要求に応じてエンジン運転状態を制御する制御回路であり、CPU、ROM、RAM、及びバックアップRAM等を備えたマイクロコンピュータを中心として構成されている。
【0064】
ECU30には、クランク軸2aの回転数(rpm、以下、「回転速度」を表す物理量として扱う)を検出するクランク軸回転数センサ32(回転速度検出手段に相当)、Dスロットル12の開度を検出する開度センサ34から信号が入力されている。更に、車速センサ、アクセル開度センサ、ブレーキスイッチ、クラッチスイッチ、吸入空気量センサ、燃料圧力センサ、その他のセンサ・スイッチ類から信号が入力されている。
【0065】
ECU30は、これらの検出データと各種制御演算とにより適切な燃料噴射量、燃料噴射時期、Dスロットル12の開度、EGR弁18の開度等を調節している。尚、必要に応じてドライバーに車両やエンジン2の状態を知らせるための情報は、ダッシュボードに設けられたディスプレイ部36にあるLCDやランプにて表示している。
【0066】
次にECU30にて実行されるDMF共振防止処理を図2のフローチャートに示す。この処理は一定時間周期の割り込みで実行される。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0067】
DMF共振防止処理(図2)が開始されると、まず前提条件が成立しているか否かが判定される(S100)。ここでは、基準回転数(基準回転速度に相当)よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速センサにて検出した車速が低い条件との論理和条件である。尚、基準回転数よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件のみを前提条件としても良い。又、前提条件を厳しくして、基準回転数よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速センサにて検出した車速が低い条件との論理積条件としても良い。
【0068】
この基準回転数は、予めエンジン2の種類に対応させて、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転数(エンスト防止判定回転速度に相当)より低く、かつDMF24の共振回転数(共振回転速度に相当)より高い位置に設定されている。基準車速は、車両発進時や停止直前などの低車速領域に設定している。
【0069】
このステップS100の前提条件は、耐エンスト性能を下げることなくDMF24の共振問題を回避するための条件である。この前提条件には、「その他の実施の形態」の項にて示すごとく、更に他の論理和条件を付加しても良い。
【0070】
前提条件が成立していなければ(S100でNO)、一旦本処理を出る。成立していれば(S100でYES)、次にブレーキスイッチがオンか否かが判定される(S102)。すなわち車両ドライバーが制動のためにブレーキペダルを踏み込んでいるか否かが判定される。
【0071】
ブレーキスイッチがオフであれば(S102でNO)、車両ドライバーによる加減速の意思が、加速を含む非制動を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第1補正係数k1を設定する(S104)。
【0072】
ブレーキスイッチがオンであれば(S102でYES)、車両ドライバーによる加減速の意思が制動を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第2補正係数k2を設定する(S106)。ここで第1補正係数k1>第2補正係数k2の関係にある。
【0073】
ステップS104又はステップS106にて変動判定閾値補正係数Kが設定されると、次にこの変動判定閾値補正係数Kを用いて式1〜3に示すごとく3つの変動判定閾値A1,A2,A3を算出する(S108)。
【0074】
[式1] A1 ← a1 × K
[式2] A2 ← a2 × K
[式3] A3 ← a3 × K
ここで変動判定閾値基準値a1,a2,a3は、クランク軸回転速度変動幅ωが共振初期状態のいずれのレベルにあるか否かを判定する3つの閾値を設定するための基準値であり、予めエンジン2の種類とその駆動系に対応させて設定されている。尚、第1変動判定閾値基準値a1<第2変動判定閾値基準値a2<第3変動判定閾値基準値a3の関係にある。
【0075】
したがって前記式1〜3は、3レベルの変動判定閾値A1,A2,A3を、車両ドライバーによる加減速の意思に基づいて設定していることになる。
次にクランク軸2aの回転速度変動幅ω(変動の大きさに相当)の検出値がECU30内のRAMに設けられている作業領域に読み込まれる(S110)。このクランク軸回転速度変動幅ωの検出は、図3のフローチャートに示すクランク軸回転速度変動幅ω検出処理により検出される値である。ここでクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)について説明する。本処理はクランク軸回転数センサ32が出力するパルス毎に割り込みで実行される処理である。
【0076】
クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)が開始されると、まずクランク軸回転数センサ32のパルス時間間隔TをRAMの作業領域に読み込む(S152)。クランク軸回転数センサ32は、クランク軸2aの一定回転角度、ここでは10°CA(CA:クランク角)毎にパルス信号をECU30に対して出力する。ECU30内ではこの一定角度回転に対するパルス信号の時間間隔Tを、パルス信号入力毎(10°CA回転毎)に計測する処理が実行されている。ステップS152ではこの計測されたパルス時間間隔Tを読み込む。
【0077】
次に式4に示すごとく、今回の制御周期にて読み込まれたパルス時間間隔Tと、前回の制御周期時に読み込まれたパルス時間間隔Toldとの差の絶対値が、時間間隔変化幅dTとして算出される。
【0078】
[式4] dT ← | T − Told |
次に今回算出された時間間隔変化幅dTが前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dTold以下か否かが判定される(S156)。ここでdT>dToldであれば(S156でNO)、次に前々回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dTold2に前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldを設定する(S162)。そして前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldに今回の算出した時間間隔変化幅dTを設定する(S164)。更に前回制御周期時のパルス時間間隔Toldに今回のパルス時間間隔Tを設定して(S166)、一旦本処理を出る。
【0079】
ステップS156にて、dT≦dToldと判定されると(S156でYES)、次に前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldが前々回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dTold2より大きいか否かが判定される(S158)。ここでdTold≦dTold2であれば(S158でNO)、前述したごとくステップS162〜S166の処理が実行されて、一旦本処理を出る。
【0080】
ステップS158にて、dTold>dTold2と判定されると(S158でYES)、クランク軸回転速度変動幅ωには前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldを設定する(S160)。
【0081】
すなわち、ステップS156でYES、ステップS158でYESと判定されたことで、3つの連続して検出された時間間隔変化幅dT,dTold,dTold2は、dT≦dTold>dTold2の関係が成立する。
【0082】
ここでクランク軸2aの回転速度が高速であるほどクランク軸回転数センサ32が出力するパルスの時間間隔は短くなり、低速であるほど時間間隔は長くなる。すなわちパルス時間間隔Tはクランク軸2aの回転速度に対応した物理量であり、パルス時間間隔の変化はクランク軸回転加速度に対応する物理量である。このためクランク軸回転加速度のピーク値はパルス時間間隔の変化の絶対値が極大の部分として検出されることになる。
【0083】
そして回転加速度のピーク値の絶対値が大きければ回転速度変動幅は大きくなる関係にあり、回転加速度のピーク値の絶対値が小さければ回転速度変動幅は小さくなる関係にある。したがって前記時間間隔変化幅dTの極大値はクランク軸回転速度の変動幅を表す物理量として扱うことができる。このためステップS160では、前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldが極大値(ピーク値)に相当すると判断できたため、クランク軸回転速度変動幅ωに前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldを設定したのである。尚、ステップS156にてdT=dToldが含まれるのは、回転加速度のピーク部分にて検出されたパルス間隔が同等となる場合を考慮したためである。
【0084】
以後の制御周期についても、クランク軸回転数センサ32のパルス出力毎にクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)が実行される。そして時間間隔変化幅dTのピーク値が見つかれば(S156でYES,S158でYES)、クランク軸回転速度変動幅ωが、その値(前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldの値)により更新されることになる(S160)。
【0085】
DMF共振防止処理(図2)の説明に戻り、ステップS110にてクランク軸回転速度変動幅ωが読み込まれると、次にこのクランク軸回転速度変動幅ωが第1変動判定閾値A1より大きいか否かが判定される(S112)。この第1変動判定閾値A1は前記ステップS108にて設定された閾値であり、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す最初の変動判定閾値である。
【0086】
ω≦A1であれば(S112でNO)、クランク軸回転速度変動幅ωが十分に小さく、DMF24は共振のおそれはないとして、このまま本処理を一旦出る。
ω>A1であれば(S112でYES)、電動アクチュエータ14によりDスロットル12の開度を一定量ずつ小さくする(S114)。このことによりエンジン2の出力変動が抑制される。したがってDMF24に対する共振についても抑制される。
【0087】
次にクランク軸回転速度変動幅ωが第2変動判定閾値A2より大きいか否かが判定される(S116)。この第2変動判定閾値A2は前記ステップS108にて設定された閾値であり、第1変動判定閾値A1よりも大きい値である。この第2変動判定閾値A2は第1変動判定閾値A1の場合よりも、更にエンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。
【0088】
ω≦A2であれば(S116でNO)、Dスロットル12の開度低下にて共振は十分に抑制できるとして、このまま本処理を一旦出る。
ω>A2であれば(S116でYES)、次にクランク軸回転速度変動幅ωが第3変動判定閾値A3より大きいか否かが判定される(S118)。この第3変動判定閾値A3は前記ステップS108にて設定された閾値であり、第2変動判定閾値A2よりも大きい値である。この第3変動判定閾値A3は第2変動判定閾値A2の場合よりも、更にエンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。
【0089】
ω≦A3であれば(S118でNO)、燃料噴射量低減によりエンジン出力を制限する(S120)。このようにDスロットル開度低下処理(S114)に加えて燃料噴射噴射量低減処理(S120)を実行するので、更にエンジン出力の変動が抑制され、DMF24における共振が抑制される。
【0090】
ω>A3であれば(S118でYES)、燃料カット、すなわち燃料噴射を停止する(S122)。このことにより、ω≦A3の場合よりも強力な処理を実行することになる。このようにDスロットル開度低下処理(S114)に加えて燃料カット(S122)を実行するので、エンジン回転数NEはDMF24の共振点を迅速に通過して停止することになる。このことによりエンジン回転数NEの低下途中でDMF24の共振が激しくなってDMF24に故障が生じるのを防止できる。
【0091】
図4のタイミングチャートに本実施の形態における制御の一例を示す。タイミングt0前は、アイドルウォーク状態であっても、エンジン回転数NE≧基準回転数で、かつ車速≧基準車速であるため前提条件が成立してない(S100でNO)。タイミングt0にてエンジン回転数NE<基準回転数となって前提条件が成立する(S100でYES)。
【0092】
しかしタイミングt1前においては、クランク軸回転速度変動幅ω≦第1変動判定閾値A1であることから(S112でNO)、DMF24の共振のおそれはないとして、エンジン出力の抑制はなされていない。
【0093】
そしてタイミングt1でω>A1となったので(S112でYES)、Dスロットル12の開度を低下させて吸気を絞っている(S114)。尚、この例では、Dスロットル12の開度を一定量ずつ低下させても、クランク軸回転速度変動幅ωは徐々に上昇している例を示している。
【0094】
更に、その後、タイミングt2にてω>A2となったので(S112でYES,S116でYES,S118でNO)、Dスロットル12による吸気の絞り(S114)と共に、燃料噴射量の低減を実行している(S120)。尚、この例では、Dスロットル12の開度低下と燃料噴射量の低減によっても、クランク軸回転速度変動幅ωは徐々に上昇している例を示している。
【0095】
そしてタイミングt3にてω>A3となったので(S112でYES,S116でYES,S118でYES)、Dスロットル12による吸気の絞り(S114)と共に、燃料カットを実行している(S122)。
【0096】
尚、図4においてエンジン回転数NEのグラフにおける破線はDMF共振防止処理(図2)を実行しなかった例であり、最終的に大きな共振を生じている。
図5はブレーキスイッチが、タイミングt10にてオフからオンに切り替わった例を示している。このことによりステップS102の判定にて変動判定閾値補正係数Kには、ブレーキスイッチがオフ状態である場合よりも小さい第2補正係数k2が設定される(S106)。このことにより3つの変動判定閾値A1,A2,A3は前記式1〜3においてタイミングt10前よりも小さくなる。したがってステップS112,S116,S118にてYESと判定されるタイミングが早まる。このことにより早期に共振防止の対策がなされる。図5の例では図4の場合よりも早期にエンジン2が停止している。
【0097】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30が内燃機関共振初期検出装置として、クランク軸回転速度変動検出手段、変動判定閾値設定手段、及び共振初期判定手段に相当し、更に内燃機関制御装置として、これらの手段及び出力変動調節手段に相当する。ブレーキスイッチが操作状態検出手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図2)のステップS102〜S108が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS110,S112,S116,S118が共振初期判定手段としての処理に、ステップS100,S114,S120,S122が出力変動調節手段としての処理に相当する。
【0098】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).DMF24の共振が生じると、クランク軸2aの回転速度に元々存在する振動的な変動が増幅される。したがってクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)により検出されるクランク軸回転速度変動幅ωを、変動判定閾値A1,A2,A3と比較して、DMF24の共振の程度を捉えることができる。
【0099】
このように捉えたクランク軸回転速度変動幅ωが変動判定閾値A1,A2,A3より大きくなった時に、その程度に対応させてDMF共振防止処理(図2)にてエンジン出力変動を低減又は消滅させることによりDMF24の共振を低減又は消滅させることができる。
【0100】
第1変動判定閾値A1よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S112でYES)、Dスロットル12の開度を低下させている(S114)。このことによりエンジン2の出力変動を低減させ、DMF24の共振初期にて共振の低減又は消滅をさせている。第2変動判定閾値A2よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S112でYES、S116でYES、S118でNO)、Dスロットル12の開度低下(S114)と共に、燃料噴射によりなされる各気筒への燃料供給量を低減させている(S120)。このことにより第1変動判定閾値A1よりも更にDMF24の共振に近づいた場合に対して共振の低減又は消滅をさせている。
【0101】
第3変動判定閾値A3よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S112でYES、S116でYES、S118でYES)、Dスロットル12の開度低下(S114)と共に、各気筒への燃料噴射を停止させている(S122)。このことにより第2変動判定閾値A2よりも更にDMF24の共振に近づいた場合に対してエンジン停止により、エンジン回転数NEの急減を生じさせる。こうして共振の低減と共に、共振点を急速に通過させて最終的に共振状態を消滅させている。
【0102】
このように変動判定閾値A1〜A3を用いて、クランク軸回転速度変動幅ω、すなわちエンジン2のクランク軸回転速度の変動の大きさを判定している。エンジン回転速度のみを用いた共振判定ではなく、実際の共振状態が反映されるクランク軸回転速度変動幅ωを判定対象としているため、DMF24の共振状態を正確に捉えることができる。
【0103】
しかも変動判定閾値A1〜A3は、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態、ここではブレーキの踏み込み操作状態を、その操作の有無を含めて検出した制動操作状態に応じて設定されている(S102〜S108)。このため車両ドライバーが実際に制動操作を実行している場合のみでなく、制動操作を実行していない場合の共振に対しても、適切な変動判定閾値A1〜A3が設定できる。すなわち図5に示したごとく車両ドライバーが停車するためにブレーキペダルを踏んでいる制動操作時にはエンジン2の停止は早期で構わないので、変動判定閾値A1〜A3は小さい値としている。そして図4に示したごとく発進時などでブレーキペダルを踏んでいない非制動操作時にはエンジン2の停止は極力遅らせたいので、変動判定閾値A1〜A3は大きい値としている。
【0104】
このことによりDMF24の共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの減速に対する、制動操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定でき、制動操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングでエンジン2が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0105】
(ロ).DMF共振防止処理(図2)が実質的に機能するためには、前提条件(S100)として、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転数より低くかつDMF24の共振回転数より高い位置に設定した基準回転数よりも、エンジン回転数NEが低下している必要がある。このように基準回転数はエンスト防止判定回転数より低いため、エンスト防止判定回転数より低くなってから、吸気の絞りや、燃料噴射量低減、燃料カットなどが実行される。このため従前の耐エンスト性能を下げずに、かつ内燃機関が存在する環境の変化に対応してDMF24の共振問題を回避することができる。
【0106】
[実施の形態2]
本実施の形態では、ブレーキスイッチとアクセルアクセル開度センサとにより、制動操作状態及び加速操作状態を検出しても、この加減速状態に応じて変動判定閾値A1〜A3を設定している。このためDMF共振防止処理として図6の処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0107】
DMF共振防止処理(図6)においては、前記図2にて変動判定閾値補正係数Kを設定するための処理であるステップS102〜S106の代わりに、ステップS202〜S210の処理が実行されることにより変動判定閾値補正係数Kが設定されている。これ以外のステップS200,S212〜S226の処理は、前記図2のステップS100,S108〜S122と同じである。
【0108】
次に変動判定閾値補正係数Kを設定するステップS202〜S210の処理を中心に説明する。
前提条件の成立により(S200でYES)、まずブレーキスイッチがオンか否かが判定される(S202)。ブレーキスイッチがオフであれば(S202でNO)、車両ドライバーによる加減速の意思が加速を含む非制動を示しているとして、次にアクセル開度が0%を越えているか、すなわちアクセルペダルが踏み込まれて、車両ドライバーが加速操作をしているか否かが判定される(S204)。
【0109】
アクセル開度>0%であれば(S204でYES)、車両ドライバーによる加減速の意思が加速を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第1補正係数k11を設定する(S206)。
【0110】
アクセル開度=0%であれば(S204でNO)、車両ドライバーによる加減速の意思が非加速を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第2補正係数k12を設定する(S208)。
【0111】
ブレーキスイッチがオンであれば(S202でYES)、車両ドライバーによる加減速の意思が制動を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第3補正係数k13を設定する(S210)。ここで第1補正係数k11>第2補正係数k12>第3補正係数k13の関係にある。
【0112】
ステップS206、ステップS208、又はステップS210にて変動判定閾値補正係数Kが設定されると、次にこの変動判定閾値補正係数Kを用いて、前記式1〜3に示したごとく3つの変動判定閾値A1,A2,A3を算出することになる(S212)。
【0113】
以後の処理は、前記実施の形態1の図2にて説明したごとくである。
このことにより、ブレーキスイッチがオンの場合は、この状態を優先として、アクセルペダルの踏み込み有無に拘わらず、ブレーキスイッチがオンである状態に基づいて変動判定閾値補正係数Kが設定される(S210)。そしてブレーキスイッチがオフの時には、アクセルペダルの踏み込み有無に対応して変動判定閾値補正係数Kが設定されることになる(S206,S208)。
【0114】
したがって図7に示すごとくブレーキスイッチがオンとなった場合には(t20)、アクセル開度の状態に拘わらず変動判定閾値補正係数Kは小さい値とされる。このことにより図7に示すごとくω>A1(t21)、ω>A2(t22)となり、最終的にω>A3(t23)に至った場合には、これらのタイミングt21〜t23は早期なものとなる。
【0115】
又、図8に示すごとくブレーキスイッチがオフの状態で、アクセル開度>0%となった場合には(t30)、変動判定閾値補正係数Kは大きい値とされる。このことにより図8に示すごとくω>A1(t31)、ω>A2(t32)となり、最終的にω>A3(t33)に至った場合にも、これらのタイミングt31〜t33は遅延される。このことにより、エンジン2停止を共振による影響が大きくならない範囲で極力遅延させて、車両の発進が円滑に行われるようにしている。すなわち最終的にω>A3となる前に、エンジン回転数NEを持ち上げるチャンスを増加することにより、共振域から脱出させて発進できるようにしている。
【0116】
尚、ブレーキスイッチがオフで、アクセル開度=0%である場合は、図8のタイミングt30前の状態である。この場合には、ブレーキスイッチがオンの場合の変動判定閾値補正係数K(=k13)と、ブレーキスイッチがオフでアクセル開度>0%の場合の変動判定閾値補正係数K(=k11)との中間の大きさである変動判定閾値補正係数K(=k12)により3つの変動判定閾値A1,A2,A3が設定される。このためω>A1、ω>A2、ω>A3となるタイミングも中間的なものとなる。
【0117】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30については前記実施の形態1にて説明したごとくである。ブレーキスイッチ及びアクセル開度センサが操作状態検出手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図6)のステップS202〜S212が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS214,S216,S220,S222が共振初期判定手段としての処理に、ステップS200,S218,S224,S226が出力変動調節手段としての処理に相当する。
【0118】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).ブレーキスイッチがオンである場合にはブレーキスイッチがオフである場合よりも変動判定閾値補正係数Kを小さくしている(S210)。更にブレーキスイッチがオフでアクセル開度>0%である場合は、ブレーキスイッチがオフでアクセル開度=0%である場合よりも変動判定閾値補正係数Kを大きくしている(S206,S208)。このことにより変動判定閾値A1〜A3は、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態、ここではブレーキの踏み込み操作状態とアクセルペダルの踏み込み操作状態とを、その操作の有無を含めて検出した制動操作及び加速操作状態に応じて設定されている(S202〜S212)。このため車両ドライバーが実際に制動操作や加速操作を実行している場合に対して適切な変動判定閾値A1〜A3が設定でき、更にこのような場合のみでなく、これらの操作を実行していない場合の共振に対しても、適切な変動判定閾値A1〜A3が設定できる。
【0119】
このことによりDMF24の共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定でき、これらの意思に対して適切なタイミングでエンジン2が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0120】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態3]
本実施の形態では、前記実施の形態1においてブレーキスイッチがオンである(S102でYES)場合の変動判定閾値補正係数Kの設定(S106)の代わりに、図9のマップMAPbpに基づいて変動判定閾値補正係数Kを求めている。
【0121】
ECU30はセンサ・スイッチ類としてブレーキ油圧センサを備えて、ブレーキ油圧Pbを検出している。MAPbpこのブレーキ油圧Pbに応じた変動判定閾値補正係数Kの値の関係を設定しているものであり、ブレーキ油圧Pbが高くなるほど、変動判定閾値補正係数Kは小さくなるように設定されている。尚、ブレーキ油圧Pbの代わりにブレーキ踏み込み速度Vbを用いても良い。例えばブレーキ油圧Pbの時間変化をブレーキ踏み込み速度Vbとして用いても良い。
【0122】
このことにより図10に示すごとく、制動時(t40〜)にはブレーキ油圧Pbの上昇に応じて変動判定閾値A1〜A3が小さくなる。このことにより図10に示すごとくω>A1(t41)、ω>A2(t42)となり、最終的にω>A3(t43)に至った場合には、これらのタイミングt41〜t43は、ブレーキ油圧Pbやブレーキ踏み込み速度Vbの高さ、すなわち制動操作の強さに対応して早くなる。
【0123】
上述した構成において、ブレーキスイッチ及びブレーキ油圧センサが操作状態検出手段に相当する。他の構成は前記実施の形態1に示したごとくである。
尚、この実施の形態3は、前記実施の形態2のブレーキスイッチがオンである(図6:S202でYES)場合の変動判定閾値補正係数Kの設定(図6:S210)に対しても適用できる。
【0124】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の効果を生じる。前記実施の形態2に適用した場合は前記実施の形態2の効果を生じる。そして、このような効果と共に、減速に対して、車両ドライバーの意思を精細に反映でき、操作の有無を含めた意思に対して、より適切なタイミングでエンジン2が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0125】
[実施の形態4]
本実施の形態では、前記実施の形態1の図2に示す処理の代わりに、図11に示すDMF共振防止処理が一定時間周期の割り込みで実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,3を参照して説明する。
【0126】
DMF共振防止処理(図11)が開始されると、まず前提条件が成立しているか否かが判定される(S300)。この処理は前記図2のステップS100と同じである。前提条件が成立していなければ(S300でNO)、一旦本処理を出る。
【0127】
前提条件が成立していれば(S300でYES)、次に変動判定閾値補正係数Kの設定処理がなされる(S302)。この処理は前記実施の形態1にて図2に示したステップS102〜S106の処理と同じである。あるいは前記実施の形態2にて図6に示したステップS202〜S210の処理としても良い。あるいは、これらの変動判定閾値補正係数Kの設定に、前記実施の形態3にて図9に示したごとくのマップMAPbpを用いても良い。
【0128】
このようにして変動判定閾値補正係数Kが設定されると、この変動判定閾値補正係数Kを用いて、式5,6に示すごとく2つの変動判定閾値B1,B2が算出される(S304)。
【0129】
[式5] B1 ← b1 × K
[式6] B2 ← b2 × K
ここで変動判定閾値基準値b1,b2は、クランク軸回転速度変動幅ωが共振初期状態のいずれのレベルにあるか否かを判定する2つの閾値を設定するための基準値であり、予めエンジン2の種類とその駆動系に対応させて設定されている。第1変動判定閾値基準値b1<第2変動判定閾値基準値b2の関係にある。
【0130】
したがって前記式5,6は、2つのレベルの変動判定閾値B1,B2を、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定していることになる。
【0131】
そして次にクランク軸2aの回転速度の変動幅ωの検出値がECU30内のRAMに設けられている作業領域に読み込まれる(S306)。このクランク軸回転速度変動幅ωの検出値は、前記実施の形態1にて述べたクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)にて検出される値である。
【0132】
次に今回のステップS306で読み込まれたクランク軸回転速度変動幅ωが第1変動判定閾値B1より大きいか否かが判定される(S308)。この第1変動判定閾値B1は、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す最初の変動判定閾値である。ω≦B1であれば(S308でNO)、クランク軸回転速度変動幅ωが十分に小さく、DMF24の共振のおそれはないとして、このまま本処理を一旦出る。
【0133】
ω>B1であれば(S308でYES)、次にクランク軸回転速度変動幅ωが第2変動判定閾値B2より大きいか否かが判定される(S310)。この第2変動判定閾値B2は第1変動判定閾値B1よりも大きい値であり、第1変動判定閾値B1の場合よりも、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。ω≦B2であれば(S310でNO)、クランク角変化におけるエンジン2の出力変動周波数を変更する処理が行われる(S312)。すなわちクランク角の値を軸とした場合の出力変動周波数を変化させる。
【0134】
ここでエンジン2が4気筒であれば、図12の(a)に示すごとく、180°CA毎に燃焼行程が生じることで、クランク軸2aの1回転に付き2回の出力ピークがある。したがって例えばNE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は6Hzである。
【0135】
前記出力変動周波数変更処理(S312)は、図12の(a)に示す状態を、例えば、図12の(b)〜(d)のいずれかのごとくにする処理である。
図12の(b)では、2つの気筒(#1,#2)の出力を燃料増加により高くし、その分、他の2つの気筒(#3,#4)の出力を燃料減少により低くする処理を実行している。この出力増減により、720°CA毎に高出力の燃焼行程の組み(#2,#1)が生じることで、クランク軸2aの2回転に付き1回の出力ピークが生じる。したがってNE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は1.5Hzとなる。
【0136】
図12の(c)では、1つの気筒(#1)の出力を燃料増加により高くし、その分、他の3つの気筒(#2,#3,#4)の出力を燃料減少により低くしている。この出力増減によっても、720°CA毎に高出力の燃焼行程が生じることで、クランク軸2aの2回転に付き1回の出力ピークが生じ、NE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は1.5Hzとなる。
【0137】
図12の(d)では、出力が高い1つの気筒と、その分、出力が低い2つの気筒との組み合わせを繰り返している。この出力増減によって、540°CA毎に高出力の燃焼行程が生じることで、クランク軸2aの1.5回転に付き1回の出力ピークが生じ、NE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は2Hzとなる。
【0138】
このように図12の(a)のごとく4気筒一律の燃料噴射量とするとNE=180rpmで出力変動周波数=6Hzとなるが、図12の(b)〜(d)のごとく気筒間で燃料噴射量を増減して各気筒の燃焼行程の出力に強弱を設けることで出力変動周波数を6Hzから1.5Hzや2Hzに即座に変更することができる。
【0139】
図12のごとく気筒間で出力を増減させるのではなく、図13に示すごとく(a)の状態から#1,#4気筒の燃料噴射時期を遅角することで、(b)に示すごとく、360°CA間隔での高出力を生じさせることにより出力変動周波数を変更しても良い。
【0140】
又、(a)の状態から#2,#3気筒の燃料噴射時期を進角することで(c)に示すごとく360°CA間隔で高出力としたり、#1,#4気筒の燃料噴射時期を遅角し、#2,#3気筒の燃料噴射時期を進角することで(d)に示すごとく360°CA間隔で高出力として出力変動周波数を変更しても良い。
【0141】
このように噴射時期が近づくことでクランク軸2aの1回転に付き1回の高出力の燃焼行程ペアが生じ、このことでNE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は3Hzにでき、図13の(a)の6Hzから出力変動周波数を迅速に変更できる。
【0142】
ステップS312では、このような気筒間での燃料噴射量の増減と気筒間での燃料噴射時期の進遅角とのいずれか一方、又両方を実行することにより、クランク角変化における出力変動周波数を変更する処理が行われる。この変更によりエンジン回転数NEの変化が生じなくても直ちに時間軸での出力変動周波数を変更することができる。こうして本処理を一旦終了する。
【0143】
ω>B2であれば(S310でYES)、Dスロットル12を全閉とし、燃料噴射弁4からの燃料噴射を停止する燃料カットを実行する(S314)。このことにより、エンジン2は停止に向かうので、エンジン回転数NEは迅速に共振点を通過し、DMF24の共振は問題とはならない。
【0144】
尚、前記ステップS300あるいは前記ステップS308でNOと判定された場合には、前記図12の(a)や図13の(a)に示したごとく気筒間での燃料噴射量の増減や気筒間での燃料噴射時期の進遅角はなされない。
【0145】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30については前記実施の形態1にて説明したごとくである。ブレーキスイッチ(前述したごとく適用した変動判定閾値補正係数Kに対応して更にアクセル開度センサ、あるいはブレーキ油圧センサ)が操作状態検出手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図11)のステップS302,S304が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS306〜S310が共振初期判定手段としての処理に、ステップS300,S312,S314が出力変動調節手段としての処理に相当する。
【0146】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).DMF共振防止処理(図11)のステップS306〜S312の処理により、エンジン出力変動周波数を変化させることができる。このため第1変動判定閾値B1<クランク軸回転速度変動幅ω≦第2変動判定閾値B2である場合(S308でYES、S310でNO)、エンジン回転数NEを変化させなくても迅速に時間軸での出力変動周波数を変化させることができる。このことにより出力変動周波数をDMF24の共振点から離してDMF24の共振を低減させたり消滅させたりすることができる。
【0147】
更に、第2変動判定閾値B2よりもクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S308でYES、S310でYES)、Dスロットル12の全閉と燃料カットとを実行している(S314)。このことにより第1変動判定閾値B1よりも更にDMF24の共振に近づいた場合は、エンジン2の停止によりエンジン回転数NEを急減させ、このことにより共振点を急速に通過させて最終的に共振を消滅させている。
【0148】
そして前記実施の形態1〜3にも述べたごとく、変動判定閾値B1,B2を、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定している。このことからDMF24の共振初期において、適切なタイミングで出力変動周波数を変更したり、更にエンジン2を停止したりして、出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0149】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態5]
本実施の形態では、前記実施の形態1の図2に示す処理の代わりに、図14に示すDMF共振防止用報知処理が一定時間周期の割り込みで実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,3を参照して説明する。
【0150】
DMF共振防止用報知処理(図14)が開始されると、まず前提条件が成立しているか否かが判定される(S400)。この処理は前記図2のステップS100と同じである。前提条件が成立していなければ(S400でNO)、一旦本処理を出る。
【0151】
前提条件が成立していれば(S400でYES)、次に変動判定閾値補正係数Kの設定処理がなされる(S402)。この処理は前記実施の形態1にて図2に示したステップS102〜S106の処理と同じである。あるいは前記実施の形態2にて図6に示したステップS202〜S210の処理としても良い。あるいは、これらの変動判定閾値補正係数Kの設定に、前記実施の形態3にて図9に示したごとくのマップMAPbpを用いても良い。
【0152】
このようにして変動判定閾値補正係数Kが設定されると、この変動判定閾値補正係数Kを用いて、式7に示すごとく変動判定閾値C1が算出される(S404)。
[式7] C1 ← c1 × K
ここで変動判定閾値基準値c1は、クランク軸回転速度変動幅ωが共振初期状態にあるか否かを判定する閾値を設定するための基準値であり、予めエンジン2の種類とその駆動系に対応させて設定されている。
【0153】
したがって前記式7は、変動判定閾値C1を、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定していることになる。
【0154】
そして次にクランク軸2aの回転速度変動幅ωの検出値がECU30内のRAMに設けられている作業領域に読み込まれる(S406)。このクランク軸回転速度変動幅ωの検出値は、前記実施の形態1にて述べたクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)にて検出される値である。
【0155】
次にクラッチスイッチ(クラッチセンサに相当)がオフか否かが判定される(S408)。クラッチスイッチがオン状態である場合、すなわちクラッチ26が係合状態でない場合には(S408でNO)、このまま本処理を一旦出る。
【0156】
クラッチスイッチがオフ状態である場合、すなわちクラッチ26が係合状態である場合には(S408でYES)、次に今回ステップS406で読み込まれたクランク軸回転速度変動幅ωが変動判定閾値C1より大きいか否かが判定される(S410)。この変動判定閾値C1は、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。ω≦C1であれば(S410でNO)、クランク軸回転速度変動幅ωが十分に小さく、DMF24の共振のおそれはないとして、このまま本処理を一旦出る。
【0157】
ω>C1であれば(S410でYES)、ディスプレイ部36にクラッチ26の切断を要求する内容を表示して警告する報知出力がなされる(S412)。ここではディスプレイ部36に設けられたクラッチ切断要求のための警告ランプを点灯、あるいは点滅させて、車両ドライバーにクラッチ26の切断を要求する。
【0158】
図15のタイミングチャートに本実施の形態における処理の一例を示す。タイミングt50前はMT28は第1速にシフトされているがクラッチ26が切断状態でありエンジン回転数NEは低下していない。ドライバーが発進のためにクラッチ26を係合操作すると、クラッチスイッチがオフとなり(t50)、エンジン回転数NEが低下して行き、基準回転数を下回る(t51〜)。
【0159】
更にエンジン回転数NEがDMF24の共振点に近づくことでクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなってω>C1となる(t52)。このことによりクラッチ切断要求のための警告ランプが点灯する。その後、警告ランプ点灯を認識したドライバーが更にクラッチ26を切断することで(t53)、警告ランプは消灯し、エンジン回転数NEは上昇すると共に、クランク軸回転速度変動幅ωは小さくなり、ω≦C1となる(t54〜)。
【0160】
ここで変動判定閾値C1は一定でなく、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定しているので、車両ドライバーの操作に適合させてエンジン回転数NEがDMF24の共振点に近づいているか否かを適切なタイミングで判定できる。
【0161】
例えば図16のタイミングチャートに示すごとく、クラッチスイッチがオフとなった後に(t60〜)、ブレーキスイッチがオンとなると(t61)、ステップS402,S404の処理により、それまでよりも変動判定閾値C1が小さくなる。このことにより早期に報知出力がなされる(t62〜)。このことにより、車両ドライバーが停車のための制動操作中にうっかりしてクラッチ26を係合した場合、あるいは停車時にクラッチ26の切断が遅れた場合に、早期(t63)に再度クラッチを切断させることができ、共振を防止できる。加速操作時においては報知出力が遅延されるので、報知出力に惑わされることなく、加速操作が継続できる。
【0162】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30が内燃機関共振初期検出装置として、クランク軸回転速度変動検出手段、変動判定閾値設定手段、及び共振初期判定手段に相当し、更に内燃機関制御装置として、これらの手段及び報知手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止用報知処理(図14)のステップS402,S404が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS406,S410が共振初期判定手段としての処理に、ステップS400,S408,S412が報知手段としての処理に相当する。
【0163】
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(イ).クラッチ26の係合によりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合、すなわちエンジン回転数NEが低下してDMF24の共振点に近づいた場合に、クラッチ26の切断が実行されれば、エンジン回転数NEを回復させてDMF24の共振点から離すことができる。このため、変動判定閾値C1よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S410でYES)、クラッチ切断警告報知を実行している(S412)。このことによりDMF24の共振に近づいた場合に、車両ドライバーは直ちにクラッチ26を切断できる。
【0164】
この変動判定閾値C1は、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定していることから、操作意思に対応した適切なタイミングで共振初期を報知できる。
【0165】
例えば車両を停止するために車両ドライバーが制動操作している時にクラッチ26の切断が遅れた場合や、一旦切断したクラッチ26をうっかり係合した場合などにおいて、早期にクラッチ切断の警告がなされるので、車両ドライバーがクラッチ26を切断することにより、共振領域までエンジン回転数NEが低下するのを防止できる。
【0166】
加速操作時には警告が遅延するので、警告に惑わされることはなく加速操作の継続により、クラッチ26が係合していても共振領域までエンジン回転数NEが低下するのを防止できる。
【0167】
したがって、このクラッチ26の切断要求に基づき車両ドライバーはエンジン2が発生する出力変動を適切に低減又は消滅させることができる。
[実施の形態6]
本実施の形態では、前記実施の形態5の図14に示すDMF共振防止用報知処理の代わりに、図17に示すDMF共振防止処理が一定時間周期の割り込みで実行される。他の構成は前記実施の形態5と同じであるので、図1,3を参照して説明する。
【0168】
DMF共振防止処理(図17)のステップS500〜S512は、前記図14におけるステップS400〜S412と同じ処理である。異なる部分は、ω>C1(S510でYES)の場合に、前述したごとくのクラッチ切断警告報知(S512)と共に、燃料噴射量増量処理(S514)を実行する点である。
【0169】
この燃料噴射量増量処理(S514)は、クラッチ26の係合により一旦落ちかけたエンジン回転数NEを、クラッチ26の切断がなされる前であってもエンジン2の出力を上昇させることで持ち上げるための処理である。このことにより、車両ドライバーに対するクラッチ切断要求の報知と共に、更に積極的にエンジン回転数NEをDMF24の共振点から離すようにしている。
【0170】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30が内燃機関共振初期検出装置として、クランク軸回転速度変動検出手段、変動判定閾値設定手段、及び共振初期判定手段に相当し、更に内燃機関制御装置として、これらの手段、報知手段及び内燃機関出力増加手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図17)のステップS502,S504が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS506,S510が共振初期判定手段としての処理に、ステップS500,S508,S512が報知手段としての処理に、ステップS500,S510,S514が内燃機関出力増加手段としての処理に相当する。
【0171】
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態5の効果と共に、エンジン回転数NEがDMF24の共振点に近づいた場合に、エンジン回転数NEを燃料噴射増量により持ち上げている。このことにより車両ドライバーがクラッチ26を切断する前であっても、エンジン回転数NEを迅速にDMF24の共振点から離すことができる。
【0172】
[その他の実施の形態]
(a).前記各実施の形態では、変動判定閾値補正係数Kによる変動判定閾値の設定は、減速操作のみ、あるいは減速操作と加速操作との両方を考慮して行ったが、加速操作のみを考慮して、加速時には非加速時に比較して変動判定閾値補正係数Kを大きくすることで変動判定閾値を大きくしても良い。
【0173】
(b).前記各実施の形態において示した前提条件(S100,S200,S300,S400,S500)は、基準回転数よりエンジン回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速が低い条件との論理和条件であった。これ以外に、基準回転数よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件のみを前提条件としても、あるいは基準回転数よりエンジン回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速が低い条件との論理積条件としても良かった。
【0174】
このような条件に対して、更に「車速が基準車速より低いかエンジン回転数NEが車速に対応した基準回転数より低く、かつクラッチが係合状態」、「登坂時状態」といった条件を、論理和条件として加えても良い。したがってこれらの条件のいずれかが該当している場合に、前提条件(S100,S200,S300,S400,S500)は、YESと判定されることになる。
【0175】
特に前記実施の形態1〜4に対して「車速が基準車速より低いかエンジン回転数NEが車速に対応した基準回転数より低く、かつクラッチが係合状態」との条件を論理和条件として加えることにより、発進時におけるクラッチ係合時の回転数低下を判定できるので、発進時でのDMF24の共振初期を正確に判定できる。
【0176】
「登坂時状態」との条件を論理和条件として加えることにより、登坂時の回転数低下を判定できるので、登坂時でのDMF24の共振初期を正確に判定できる。
(c).前記実施の形態5,6にてクラッチスイッチの代わりにクラッチストロークセンサを設けて、クラッチ26の係合状態と共に半係合状態(半クラッチ)を検出しても良い。この場合は、前記DMF共振防止用報知処理(図14)のステップS408、DMF共振防止処理(図17)のステップS508にては、クラッチ26が係合状態又は半係合状態である場合は、YESと判定するようにする。
【0177】
(d).前記クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)では、クランク軸回転加速度のピーク値が、回転速度変動の大きさに連動していることから、直接的にクランク軸回転速度振動の振幅を捉えずに、クランク軸2aにおける回転加速度ピーク値を捉えていた。実際には、回転加速度ピーク値に対応するものとして、クランク軸の一定角度における回転時間の変化幅のピーク値を捉えていた。回転加速度そのものを検出してそのピーク値を直接用いても良い。
【0178】
更に、この代わりに、回転速度振動のピーク値を検出して、平均回転速度からのピーク値の高さから、クランク軸回転速度振動における振幅を算出し、クランク軸回転速度変動の大きさとして用いても良い。
【0179】
又、クランク軸回転速度変動は、クランク軸の仕事量の変動にも対応することから、クランク軸回転速度変動幅ω検出処理としては、クランク軸の仕事量変動を計算することにより、この仕事量変動のピークをクランク軸回転速度変動幅ωの代わりに求めても良い。したがって、この仕事量変動のピーク値を用いて各DMF共振防止処理(図2,6,11,16)やDMF共振防止用報知処理(図14)では判定を実行することになる。クランク軸回転速度θの時間変化Δθを自乗した値が仕事量に対応するので、このΔθの自乗の値を用いて共振状態を判定すれば良い。回転速度θあるいは時間変化Δθは、パルス時間間隔Tあるいは時間間隔変化幅dTから算出することができる。
【0180】
(e).前述した各実施の形態は本発明をディーゼルエンジンに適用したものであったが、他の内燃機関であるガソリンエンジンにおいても適用できる。
(f).前記実施の形態1〜4においては変動判定閾値は複数設けて、これらの変動判定閾値よりもクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合に、各変動判定閾値に対応する処理を実行したが、これら変動判定閾値の一部は用いずに他の一部の変動判定閾値によりクランク軸回転速度変動幅ωを判定し、対応する処理を実行するようにしても良い。
【0181】
(g).前記各実施の形態では、車両ドライバーの操作状態に応じて変動判定閾値補正係数Kを設定した後に、変動判定閾値を算出したが、車両ドライバーの操作状態に応じて、直接、変動判定閾値を算出しても良い。
【符号の説明】
【0182】
2…エンジン、2a…クランク軸、4…燃料噴射弁、6…コモンレール、8…インテークマニホールド、10…吸気管、12…Dスロットル、14…電動アクチュエータ、16…EGR通路、18…EGR弁、20…プライマリフライホイール、20a,22a…回転軸、22…セカンダリフライホイール、24…DMF、24a…バネ、24b…ベアリング、26…クラッチ、28…MT、30…ECU、32…クランク軸回転数センサ、34…開度センサ、36…ディスプレイ部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の共振初期を検出する内燃機関共振初期検出装置、及びこの内燃機関共振初期検出装置を利用した内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のトルク変動が駆動系に伝達されるのを抑制するためにデュアルマスフライホイールを使用する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このデュアルマスフライホイールは、バネなどの弾性体により2つのフライホイールを接続したものである。したがってデュアルマスフライホイールには共振周波数が存在し、共振が生じた場合には2つのフライホイール間での振幅が大きくなり、バネの突き当たりによるショックが生じたり、場合によりデュアルマスフライホイールが損傷したりするおそれもある。
【0003】
このようなデュアルマスフライホイールの共振を防止するために、通常は、共振点をアイドル回転数より低い回転数域に設定していた。しかし内燃機関の運転状態によっては一時的にアイドル回転数よりも回転数が低下する場合があり、このような共振点の設定のみではデュアルマスフライホイールの共振を十分に防止できない。
【0004】
特許文献1では内燃機関回転数が、機関水温に基づいて設定した共振回転速度領域に、機関水温に基づいて設定した所定時間とどまっていた場合に、燃料供給停止により共振回転速度領域から離脱させている。
【0005】
このような内燃機関回転速度(回転数)による共振対策についてはデュアルマスフライホイールを用いていない内燃機関についても車体との関係における共振防止の技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2では、ブレーキの踏み込み量やアクセルスイッチの状態に基づいて車両ドライバーが制動したいのか加速したいのかを判定して、機関回転速度が共振域に入っている場合は制動時には内燃機関を停止させて共振を防止するが、加速時には停止させないようにして、停止と再始動とが頻繁に繰り返さないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−069206号公報(第7−8頁、図8)
【特許文献2】特開2002−221059号公報(第6−7頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし内燃機関回転速度のみを用いた共振判定では、実際に共振を開始しようとしているか否かの判定は困難である。したがってデュアルマスフライホイールはまだ共振を開始しようとしていないのに不要な燃料噴射量制限制御を実行してしまい、アイドル回転速度より低下した状態からの回転速度の復帰が遅れたり、エンストの頻度が高まったりするおそれがある。逆に、デュアルマスフライホイールは共振を開始しようとしているのに燃料噴射量制限制御が実行されない状態が継続することで共振が激しくなり、バネの突き当たりが生じてショックが発生したり、場合によりデュアルマスフライホイールが損傷したりするおそれもある。
【0009】
更に特許文献2のごとく車両ドライバーの操作実行のみで共振防止対策実行の有無を決定している技術では、制動や加速操作をしていない場合の共振に対しては対処できず、適切な共振防止ができない。
【0010】
本発明は、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する操作の有無を含めてその意思に応じて適切に判定すると共に、これに基づいて適切に共振防止を実行することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の共振初期を検出する共振初期検出装置であって、内燃機関のクランク軸回転速度の変動の大きさを検出するクランク軸回転速度変動検出手段と、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態を、操作の有無を含めて検出する操作状態検出手段と、前記操作状態検出手段により検出される操作状態に応じて変動判定閾値を設定する変動判定閾値設定手段と、前記クランク軸回転速度変動検出手段にて検出される変動の大きさが、前記変動判定閾値設定手段により設定される変動判定閾値より大きくなった場合に共振初期であると判定する共振初期判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
共振初期判定手段は、変動判定閾値設定手段が設定する変動判定閾値を用いて内燃機関のクランク軸回転速度の変動の大きさを判定している。内燃機関回転速度のみを用いた共振判定ではなく、実際の共振状態が反映されるクランク軸回転速度の変動を判定対象としているため、デュアルマスフライホイールの共振状態を正確に捉えることができる。
【0013】
しかも変動判定閾値は、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態を、操作の有無を含めて検出した操作状態に応じて設定されている。このため車両ドライバーが実際に制動や加速操作を実行している場合のみでなく、制動や加速操作を実行していない場合の共振に対しても、適切な変動判定閾値が設定できる。
【0014】
このことによりデュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できる。
請求項2に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態を検出することを特徴とする。
【0015】
このように制動操作の有無を含めた制動操作状態に応じて変動判定閾値を設定することにより、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの、特に減速に対する、操作の有無を含めた意思に応じて適切に判定できる。
【0016】
請求項3に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、アクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする。
【0017】
このようにアクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態に応じて変動判定閾値を設定することにより、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの、特に加速に対する、操作の有無を含めた意思に応じて適切に判定できる。
【0018】
請求項4に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態、及びアクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする。
【0019】
このように制動操作及びアクセル操作の有無を含めたこれらの操作状態に応じて変動判定閾値を設定することにより、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めた意思に応じて適切に判定できる。
【0020】
請求項5に記載の内燃機関共振初期検出装置では、請求項4に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記変動判定閾値設定手段は、前記操作状態検出手段により、アクセル操作がなされている場合の前記アクセル操作状態と、制動操作がなされている場合の前記制動操作状態とが同時に検出された場合には、前記制動操作状態を優先して前記変動判定閾値の設定に用いることを特徴とする。
【0021】
制動操作がなされている場合の制動操作状態は、車両ドライバーにとって何らかの緊急事態である可能性が高いことから、アクセル操作がなされている場合と制動操作がなされている場合とが同時に検出されると、変動判定閾値設定手段は制動操作状態を優先して変動判定閾値の設定に用いる。このことにより操作の有無を含めた車両ドライバーの加減速に対する意思に応じた適切な判定が、より効果的なものとなる。
【0022】
請求項6に記載の内燃機関制御装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させる出力変動調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
このように前述した内燃機関共振初期検出装置を用いて、共振初期であると判定されている場合に、出力変動調節手段が、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることにより、デュアルマスフライホイールの共振を低減あるいは消滅させることができる。
【0024】
変動判定閾値は、前述したごとく、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できるものである。このことから、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0025】
請求項7に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする。
【0026】
内燃機関の吸気量を減少させると減少前よりも内燃機関が発生する出力変動は低減する。このように操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を吸気量減少により低減させることができる。
【0027】
請求項8に記載の内燃機関制御装置では、請求項7に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はスロットルバルブを有するディーゼルエンジンであり、前記出力変動調節手段は、前記スロットルバルブの開度を低下させることにより、内燃機関の吸気量を減少させることを特徴とする。
【0028】
吸気量の減少は、スロットルバルブを有するディーゼルエンジンではスロットルバルブの開度を低下させることにより実現できる。
請求項9に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする。
【0029】
内燃機関の燃料供給量を減少させると減少前よりも内燃機関が発生する出力変動は低減する。このように操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を燃料供給量減少により低減させることができる。
【0030】
請求項10に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給を停止させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする。
【0031】
燃料供給を停止させると内燃機関が発生する出力変動は低減し、その後に内燃機関回転が停止すれば出力変動は消滅する。このように操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を燃料噴射停止により低減又は消滅させることができる。しかも内燃機関は急速に停止に向かうので共振点を迅速に通過させることができることから、デュアルマスフライホイールにおけるショックや損傷をより確実に防止できる。
【0032】
請求項11に記載の内燃機関制御装置では、請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させる処理、内燃機関の燃料供給量を減少させる処理、及び内燃機関の燃料供給を停止させる処理のいずれか2つ又は全てを実行することにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする。
【0033】
このように処理を組み合わせることにより、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
請求項12に記載の内燃機関制御装置では、請求項9〜11のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はディーゼルエンジンであり、燃料供給は、燃料噴射弁から燃焼室内に対して行われる燃料噴射であることを特徴とする。
【0034】
このようにディーゼルエンジンである場合には、燃料噴射弁から燃焼室内に対して行われる燃料噴射における噴射量減量や噴射停止により、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0035】
請求項13に記載の内燃機関制御装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させる出力変動調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0036】
このように共振初期判定手段にて共振初期であると判定されると、出力変動調節手段が、クランク角変化における出力変動周波数を変化させる。すなわちクランク角の値を軸とした場合の出力変動周波数を変化させる。この変化は燃料噴射量や燃料噴射時期の調節により可能であるため、クランク軸回転速度を変化させる必要がなく、迅速に出力変動周波数を変化させることができ、このことにより時間軸での出力変動周波数についても迅速に変化させることができる。したがって出力変動周波数をデュアルマスフライホイールの共振点から即座に離すことができる。このことによりデュアルマスフライホイールの共振を低減あるいは消滅させることができる。
【0037】
変動判定閾値は前述したごとく、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できるものであることから、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0038】
請求項14に記載の内燃機関制御装置では、請求項13に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関は複数気筒を備え、各気筒の燃焼室への燃料供給は、燃焼室内での燃料噴射により行われると共に、前記出力変動調節手段は、気筒間にて燃料噴射時期の差と燃料噴射量の差との一方又は両方を生じさせることで、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させることを特徴とする。
【0039】
このように気筒間にて燃料噴射時期の差や、燃料噴射量の差を設けることにより、全気筒一律に燃料噴射時期や燃料噴射量を調節している状態から、クランク角変化における出力変動周波数を変化させることができ、この結果、時間軸での出力変動周波数も変化する。したがってデュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に判定でき、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングで共振点から出力変動周波数を迅速に離して共振を抑制できる。
【0040】
請求項15に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転速度より低く、かつ前記デュアルマスフライホイールの共振回転速度より高い位置に基準回転速度を設定し、該基準回転速度より前記回転速度検出手段にて検出される回転速度が低い場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0041】
このような前提条件下にて、出力変動調節手段を機能させても良い。このように基準回転速度はエンスト防止判定回転速度より低いため、エンスト防止判定回転速度より低くなってから、内燃機関出力変動を低減又は消滅させる処理が実行される。このことにより、従前の耐エンスト性能を下げることなく、操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングでデュアルマスフライホイールの共振を回避することができる。
【0042】
請求項16に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が制動中である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0043】
車両が制動中である場合を条件として出力変動調節手段を機能させても良い。このことにより、加速時におけるクランク軸回転速度の変動時と明確に区別できるので、制動時のデュアルマスフライホイールの共振初期を、より正確に判定できる。
【0044】
請求項17に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車速が基準車速以下あるいは内燃機関回転速度が基準回転速度以下であって、かつクラッチが係合あるいは半係合状態である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0045】
車速が基準車速以下あるいは内燃機関回転速度が基準回転速度以下であって、かつクラッチが係合あるいは半係合状態である場合を条件として出力変動調節手段を機能させても良い。このことにより発進時におけるクラッチ係合時の回転速度低下を判定できるので、発進時でのデュアルマスフライホイールの共振初期を、より正確に判定できる。
【0046】
請求項18に記載の内燃機関制御装置では、請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が登坂時である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする。
【0047】
車両が登坂時である場合を条件として出力変動調節手段を機能させても良い。このことにより登坂時の回転速度低下を判定できるので、登坂時でのデュアルマスフライホイールの共振初期を正確に判定できる。
【0048】
請求項19に記載の内燃機関制御装置は、デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、デュアルマスフライホイールと駆動系との間に配置されているクラッチの係合状態を検出するクラッチセンサと、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、前記クラッチセンサが前記クラッチの係合又は半係合状態の継続を検出しており、かつ前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、前記クラッチの切断を要求する報知出力を行う報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0049】
共振初期判定手段にて共振初期であると判定されと、この判定に基づいて報知手段により報知出力がなされる。このことで車両ドライバーによりクラッチの切断が実行されれば、内燃機関回転速度が共振点まで低下することを阻止することができ、デュアルマスフライホイールの共振を低減したり消滅させたりすることができる。
【0050】
共振初期判定手段にて用いられる変動判定閾値は前述したごとく、デュアルマスフライホイールの共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定できるものである。したがって報知手段は適切なタイミングでクラッチの切断を要求する報知出力を行うことができる。このように報知できることにより、適切なタイミングで内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0051】
請求項20に記載の内燃機関制御装置では、請求項19に記載の内燃機関制御装置において、前記報知手段は、警告ランプの点灯により報知することを特徴とする。
このようにして報知することで、車両ドライバーにクラッチ切断を要求できる。
【0052】
請求項21に記載の内燃機関制御装置では、請求項19又は20に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度が基準回転速度以下の場合に、前記報知手段が機能することを特徴とする。
【0053】
このように内燃機関回転速度が基準回転速度以下の場合に限って、報知手段を機能させても良い。このことにより低回転時となった場合のデュアルマスフライホイールの共振初期を正確に判定でき、適切なタイミングで対処できる。
【0054】
請求項22に記載の内燃機関制御装置では、請求項19〜21のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記報知手段による報知出力時に、前記回転速度検出手段にて検出される内燃機関回転速度が基準回転速度よりも低い場合には、内燃機関の出力を増加させる内燃機関出力増加手段とを備えることを特徴とする。
【0055】
このように報知出力によってもクラッチの係合又は半係合状態が継続している期間に、内燃機関回転速度が基準回転速度よりも低い場合には、内燃機関出力増加手段は、内燃機関の出力を増加させている。このことによりドライバーがクラッチを切断する前であっても、デュアルマスフライホイールの共振点に内燃機関回転速度が低下するのを防止できる。したがって効果的にデュアルマスフライホイールの共振を低減したり消滅させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態1の内燃機関、その駆動系及び制御系の概略構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態1のECUにて実行されるDMF共振防止処理のフローチャート。
【図3】同じくクランク軸回転速度変動幅ω検出処理のフローチャート。
【図4】実施の形態1の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図5】実施の形態1の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図6】実施の形態2のDMF共振防止処理のフローチャート。
【図7】実施の形態2の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図8】実施の形態2の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図9】実施の形態3にて用いられるマップMAPbpの内容を説明するグラフ。
【図10】実施の形態3の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図11】実施の形態4のDMF共振防止処理のフローチャート。
【図12】実施の形態4におけるクランク角変化における出力変動周波数変更処理の一例を示すグラフ。
【図13】実施の形態4におけるクランク角変化における出力変動周波数変更処理の一例を示すグラフ。
【図14】実施の形態5のDMF共振防止用報知処理のフローチャート。
【図15】実施の形態5の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図16】実施の形態5の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図17】実施の形態6のDMF共振防止処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0057】
[実施の形態1]
図1は、本発明が適用された車両走行駆動用内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、エンジンと略す)2、その駆動系及び制御系の概略構成を示すブロック図である。このエンジン2は直列4気筒であり、各気筒には燃焼室内へ直接燃料を噴射する燃料噴射弁4が配置されている。
【0058】
燃料噴射弁4は燃料を所定圧まで蓄圧するコモンレール6と連通し、コモンレール6はエンジン2により回転駆動される燃料ポンプから加圧燃料を供給されている。コモンレール6から各気筒の燃料噴射弁4へ分配される加圧燃料は、燃料噴射弁4に所定の駆動電流が印加されることで燃料噴射弁4が開弁し、その結果、燃料噴射弁4から気筒内へ燃料が噴射される。
【0059】
エンジン2にはインテークマニホールド8が接続されており、インテークマニホールド8の各枝管は、各気筒の燃焼室に対して吸気ポートを介して連通している。インテークマニホールド8は吸気管10に接続され、吸気管10には吸気量を絞るためのディーゼルスロットル弁(以下、「Dスロットル」と称する)12が取り付けられ、このDスロットル12は電動アクチュエータ14により開度調節がなされる。尚、吸気管10の上流側にはインタークーラ、ターボチャージャのコンプレッサ、エアクリーナが配置されている。
【0060】
Dスロットル12の下流側にて吸気管10には排気再循環通路(EGR通路)16が開口している。EGR通路16は、その上流側にてエンジン2の排気経路側を流れる排気の一部を導入している。このことにより排気をEGRガスとして、流量調節用のEGR弁18を介して吸気管10に導入している。
【0061】
尚、排気経路側では、排気の流動エネルギーによりターボチャージャのタービンが回転される。このタービンを回転させた排気は排気浄化触媒にて処理されてから排出される。
エンジン2の出力は、プライマリフライホイール20及びセカンダリフライホイール22からなるデュアルマスフライホイール(以下、DMFと略す)24とセカンダリフライホイール22側に設けられたクラッチ26を介して、手動変速機(以下、MTと略す)28側に伝達される。
【0062】
DMF24はプライマリフライホイール20とセカンダリフライホイール22とをバネ24aを介して接続したものであり、プライマリフライホイール20とセカンダリフライホイール22とは各々の回転軸20a,22aをベアリング24bで相対回転可能に接続している。このDMF24によりエンジン2の出力がクランク軸2aからMT28へ伝達されると共に、バネ24aを利用してエンジン2の出力変動を有効に吸収・低減することができる。したがって通常運転時においては駆動系の捻り振動を抑制し、これに起因する騒音・振動の発生を効果的に低減・回避することができる。
【0063】
このようなエンジン2に対してエンジン運転状態を制御するための電子制御ユニット(ECU)30が設けられている。このECU30は、エンジン運転状態やドライバーの要求に応じてエンジン運転状態を制御する制御回路であり、CPU、ROM、RAM、及びバックアップRAM等を備えたマイクロコンピュータを中心として構成されている。
【0064】
ECU30には、クランク軸2aの回転数(rpm、以下、「回転速度」を表す物理量として扱う)を検出するクランク軸回転数センサ32(回転速度検出手段に相当)、Dスロットル12の開度を検出する開度センサ34から信号が入力されている。更に、車速センサ、アクセル開度センサ、ブレーキスイッチ、クラッチスイッチ、吸入空気量センサ、燃料圧力センサ、その他のセンサ・スイッチ類から信号が入力されている。
【0065】
ECU30は、これらの検出データと各種制御演算とにより適切な燃料噴射量、燃料噴射時期、Dスロットル12の開度、EGR弁18の開度等を調節している。尚、必要に応じてドライバーに車両やエンジン2の状態を知らせるための情報は、ダッシュボードに設けられたディスプレイ部36にあるLCDやランプにて表示している。
【0066】
次にECU30にて実行されるDMF共振防止処理を図2のフローチャートに示す。この処理は一定時間周期の割り込みで実行される。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0067】
DMF共振防止処理(図2)が開始されると、まず前提条件が成立しているか否かが判定される(S100)。ここでは、基準回転数(基準回転速度に相当)よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速センサにて検出した車速が低い条件との論理和条件である。尚、基準回転数よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件のみを前提条件としても良い。又、前提条件を厳しくして、基準回転数よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速センサにて検出した車速が低い条件との論理積条件としても良い。
【0068】
この基準回転数は、予めエンジン2の種類に対応させて、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転数(エンスト防止判定回転速度に相当)より低く、かつDMF24の共振回転数(共振回転速度に相当)より高い位置に設定されている。基準車速は、車両発進時や停止直前などの低車速領域に設定している。
【0069】
このステップS100の前提条件は、耐エンスト性能を下げることなくDMF24の共振問題を回避するための条件である。この前提条件には、「その他の実施の形態」の項にて示すごとく、更に他の論理和条件を付加しても良い。
【0070】
前提条件が成立していなければ(S100でNO)、一旦本処理を出る。成立していれば(S100でYES)、次にブレーキスイッチがオンか否かが判定される(S102)。すなわち車両ドライバーが制動のためにブレーキペダルを踏み込んでいるか否かが判定される。
【0071】
ブレーキスイッチがオフであれば(S102でNO)、車両ドライバーによる加減速の意思が、加速を含む非制動を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第1補正係数k1を設定する(S104)。
【0072】
ブレーキスイッチがオンであれば(S102でYES)、車両ドライバーによる加減速の意思が制動を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第2補正係数k2を設定する(S106)。ここで第1補正係数k1>第2補正係数k2の関係にある。
【0073】
ステップS104又はステップS106にて変動判定閾値補正係数Kが設定されると、次にこの変動判定閾値補正係数Kを用いて式1〜3に示すごとく3つの変動判定閾値A1,A2,A3を算出する(S108)。
【0074】
[式1] A1 ← a1 × K
[式2] A2 ← a2 × K
[式3] A3 ← a3 × K
ここで変動判定閾値基準値a1,a2,a3は、クランク軸回転速度変動幅ωが共振初期状態のいずれのレベルにあるか否かを判定する3つの閾値を設定するための基準値であり、予めエンジン2の種類とその駆動系に対応させて設定されている。尚、第1変動判定閾値基準値a1<第2変動判定閾値基準値a2<第3変動判定閾値基準値a3の関係にある。
【0075】
したがって前記式1〜3は、3レベルの変動判定閾値A1,A2,A3を、車両ドライバーによる加減速の意思に基づいて設定していることになる。
次にクランク軸2aの回転速度変動幅ω(変動の大きさに相当)の検出値がECU30内のRAMに設けられている作業領域に読み込まれる(S110)。このクランク軸回転速度変動幅ωの検出は、図3のフローチャートに示すクランク軸回転速度変動幅ω検出処理により検出される値である。ここでクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)について説明する。本処理はクランク軸回転数センサ32が出力するパルス毎に割り込みで実行される処理である。
【0076】
クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)が開始されると、まずクランク軸回転数センサ32のパルス時間間隔TをRAMの作業領域に読み込む(S152)。クランク軸回転数センサ32は、クランク軸2aの一定回転角度、ここでは10°CA(CA:クランク角)毎にパルス信号をECU30に対して出力する。ECU30内ではこの一定角度回転に対するパルス信号の時間間隔Tを、パルス信号入力毎(10°CA回転毎)に計測する処理が実行されている。ステップS152ではこの計測されたパルス時間間隔Tを読み込む。
【0077】
次に式4に示すごとく、今回の制御周期にて読み込まれたパルス時間間隔Tと、前回の制御周期時に読み込まれたパルス時間間隔Toldとの差の絶対値が、時間間隔変化幅dTとして算出される。
【0078】
[式4] dT ← | T − Told |
次に今回算出された時間間隔変化幅dTが前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dTold以下か否かが判定される(S156)。ここでdT>dToldであれば(S156でNO)、次に前々回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dTold2に前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldを設定する(S162)。そして前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldに今回の算出した時間間隔変化幅dTを設定する(S164)。更に前回制御周期時のパルス時間間隔Toldに今回のパルス時間間隔Tを設定して(S166)、一旦本処理を出る。
【0079】
ステップS156にて、dT≦dToldと判定されると(S156でYES)、次に前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldが前々回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dTold2より大きいか否かが判定される(S158)。ここでdTold≦dTold2であれば(S158でNO)、前述したごとくステップS162〜S166の処理が実行されて、一旦本処理を出る。
【0080】
ステップS158にて、dTold>dTold2と判定されると(S158でYES)、クランク軸回転速度変動幅ωには前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldを設定する(S160)。
【0081】
すなわち、ステップS156でYES、ステップS158でYESと判定されたことで、3つの連続して検出された時間間隔変化幅dT,dTold,dTold2は、dT≦dTold>dTold2の関係が成立する。
【0082】
ここでクランク軸2aの回転速度が高速であるほどクランク軸回転数センサ32が出力するパルスの時間間隔は短くなり、低速であるほど時間間隔は長くなる。すなわちパルス時間間隔Tはクランク軸2aの回転速度に対応した物理量であり、パルス時間間隔の変化はクランク軸回転加速度に対応する物理量である。このためクランク軸回転加速度のピーク値はパルス時間間隔の変化の絶対値が極大の部分として検出されることになる。
【0083】
そして回転加速度のピーク値の絶対値が大きければ回転速度変動幅は大きくなる関係にあり、回転加速度のピーク値の絶対値が小さければ回転速度変動幅は小さくなる関係にある。したがって前記時間間隔変化幅dTの極大値はクランク軸回転速度の変動幅を表す物理量として扱うことができる。このためステップS160では、前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldが極大値(ピーク値)に相当すると判断できたため、クランク軸回転速度変動幅ωに前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldを設定したのである。尚、ステップS156にてdT=dToldが含まれるのは、回転加速度のピーク部分にて検出されたパルス間隔が同等となる場合を考慮したためである。
【0084】
以後の制御周期についても、クランク軸回転数センサ32のパルス出力毎にクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)が実行される。そして時間間隔変化幅dTのピーク値が見つかれば(S156でYES,S158でYES)、クランク軸回転速度変動幅ωが、その値(前回の制御周期時に算出された時間間隔変化幅dToldの値)により更新されることになる(S160)。
【0085】
DMF共振防止処理(図2)の説明に戻り、ステップS110にてクランク軸回転速度変動幅ωが読み込まれると、次にこのクランク軸回転速度変動幅ωが第1変動判定閾値A1より大きいか否かが判定される(S112)。この第1変動判定閾値A1は前記ステップS108にて設定された閾値であり、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す最初の変動判定閾値である。
【0086】
ω≦A1であれば(S112でNO)、クランク軸回転速度変動幅ωが十分に小さく、DMF24は共振のおそれはないとして、このまま本処理を一旦出る。
ω>A1であれば(S112でYES)、電動アクチュエータ14によりDスロットル12の開度を一定量ずつ小さくする(S114)。このことによりエンジン2の出力変動が抑制される。したがってDMF24に対する共振についても抑制される。
【0087】
次にクランク軸回転速度変動幅ωが第2変動判定閾値A2より大きいか否かが判定される(S116)。この第2変動判定閾値A2は前記ステップS108にて設定された閾値であり、第1変動判定閾値A1よりも大きい値である。この第2変動判定閾値A2は第1変動判定閾値A1の場合よりも、更にエンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。
【0088】
ω≦A2であれば(S116でNO)、Dスロットル12の開度低下にて共振は十分に抑制できるとして、このまま本処理を一旦出る。
ω>A2であれば(S116でYES)、次にクランク軸回転速度変動幅ωが第3変動判定閾値A3より大きいか否かが判定される(S118)。この第3変動判定閾値A3は前記ステップS108にて設定された閾値であり、第2変動判定閾値A2よりも大きい値である。この第3変動判定閾値A3は第2変動判定閾値A2の場合よりも、更にエンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。
【0089】
ω≦A3であれば(S118でNO)、燃料噴射量低減によりエンジン出力を制限する(S120)。このようにDスロットル開度低下処理(S114)に加えて燃料噴射噴射量低減処理(S120)を実行するので、更にエンジン出力の変動が抑制され、DMF24における共振が抑制される。
【0090】
ω>A3であれば(S118でYES)、燃料カット、すなわち燃料噴射を停止する(S122)。このことにより、ω≦A3の場合よりも強力な処理を実行することになる。このようにDスロットル開度低下処理(S114)に加えて燃料カット(S122)を実行するので、エンジン回転数NEはDMF24の共振点を迅速に通過して停止することになる。このことによりエンジン回転数NEの低下途中でDMF24の共振が激しくなってDMF24に故障が生じるのを防止できる。
【0091】
図4のタイミングチャートに本実施の形態における制御の一例を示す。タイミングt0前は、アイドルウォーク状態であっても、エンジン回転数NE≧基準回転数で、かつ車速≧基準車速であるため前提条件が成立してない(S100でNO)。タイミングt0にてエンジン回転数NE<基準回転数となって前提条件が成立する(S100でYES)。
【0092】
しかしタイミングt1前においては、クランク軸回転速度変動幅ω≦第1変動判定閾値A1であることから(S112でNO)、DMF24の共振のおそれはないとして、エンジン出力の抑制はなされていない。
【0093】
そしてタイミングt1でω>A1となったので(S112でYES)、Dスロットル12の開度を低下させて吸気を絞っている(S114)。尚、この例では、Dスロットル12の開度を一定量ずつ低下させても、クランク軸回転速度変動幅ωは徐々に上昇している例を示している。
【0094】
更に、その後、タイミングt2にてω>A2となったので(S112でYES,S116でYES,S118でNO)、Dスロットル12による吸気の絞り(S114)と共に、燃料噴射量の低減を実行している(S120)。尚、この例では、Dスロットル12の開度低下と燃料噴射量の低減によっても、クランク軸回転速度変動幅ωは徐々に上昇している例を示している。
【0095】
そしてタイミングt3にてω>A3となったので(S112でYES,S116でYES,S118でYES)、Dスロットル12による吸気の絞り(S114)と共に、燃料カットを実行している(S122)。
【0096】
尚、図4においてエンジン回転数NEのグラフにおける破線はDMF共振防止処理(図2)を実行しなかった例であり、最終的に大きな共振を生じている。
図5はブレーキスイッチが、タイミングt10にてオフからオンに切り替わった例を示している。このことによりステップS102の判定にて変動判定閾値補正係数Kには、ブレーキスイッチがオフ状態である場合よりも小さい第2補正係数k2が設定される(S106)。このことにより3つの変動判定閾値A1,A2,A3は前記式1〜3においてタイミングt10前よりも小さくなる。したがってステップS112,S116,S118にてYESと判定されるタイミングが早まる。このことにより早期に共振防止の対策がなされる。図5の例では図4の場合よりも早期にエンジン2が停止している。
【0097】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30が内燃機関共振初期検出装置として、クランク軸回転速度変動検出手段、変動判定閾値設定手段、及び共振初期判定手段に相当し、更に内燃機関制御装置として、これらの手段及び出力変動調節手段に相当する。ブレーキスイッチが操作状態検出手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図2)のステップS102〜S108が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS110,S112,S116,S118が共振初期判定手段としての処理に、ステップS100,S114,S120,S122が出力変動調節手段としての処理に相当する。
【0098】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).DMF24の共振が生じると、クランク軸2aの回転速度に元々存在する振動的な変動が増幅される。したがってクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)により検出されるクランク軸回転速度変動幅ωを、変動判定閾値A1,A2,A3と比較して、DMF24の共振の程度を捉えることができる。
【0099】
このように捉えたクランク軸回転速度変動幅ωが変動判定閾値A1,A2,A3より大きくなった時に、その程度に対応させてDMF共振防止処理(図2)にてエンジン出力変動を低減又は消滅させることによりDMF24の共振を低減又は消滅させることができる。
【0100】
第1変動判定閾値A1よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S112でYES)、Dスロットル12の開度を低下させている(S114)。このことによりエンジン2の出力変動を低減させ、DMF24の共振初期にて共振の低減又は消滅をさせている。第2変動判定閾値A2よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S112でYES、S116でYES、S118でNO)、Dスロットル12の開度低下(S114)と共に、燃料噴射によりなされる各気筒への燃料供給量を低減させている(S120)。このことにより第1変動判定閾値A1よりも更にDMF24の共振に近づいた場合に対して共振の低減又は消滅をさせている。
【0101】
第3変動判定閾値A3よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S112でYES、S116でYES、S118でYES)、Dスロットル12の開度低下(S114)と共に、各気筒への燃料噴射を停止させている(S122)。このことにより第2変動判定閾値A2よりも更にDMF24の共振に近づいた場合に対してエンジン停止により、エンジン回転数NEの急減を生じさせる。こうして共振の低減と共に、共振点を急速に通過させて最終的に共振状態を消滅させている。
【0102】
このように変動判定閾値A1〜A3を用いて、クランク軸回転速度変動幅ω、すなわちエンジン2のクランク軸回転速度の変動の大きさを判定している。エンジン回転速度のみを用いた共振判定ではなく、実際の共振状態が反映されるクランク軸回転速度変動幅ωを判定対象としているため、DMF24の共振状態を正確に捉えることができる。
【0103】
しかも変動判定閾値A1〜A3は、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態、ここではブレーキの踏み込み操作状態を、その操作の有無を含めて検出した制動操作状態に応じて設定されている(S102〜S108)。このため車両ドライバーが実際に制動操作を実行している場合のみでなく、制動操作を実行していない場合の共振に対しても、適切な変動判定閾値A1〜A3が設定できる。すなわち図5に示したごとく車両ドライバーが停車するためにブレーキペダルを踏んでいる制動操作時にはエンジン2の停止は早期で構わないので、変動判定閾値A1〜A3は小さい値としている。そして図4に示したごとく発進時などでブレーキペダルを踏んでいない非制動操作時にはエンジン2の停止は極力遅らせたいので、変動判定閾値A1〜A3は大きい値としている。
【0104】
このことによりDMF24の共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの減速に対する、制動操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定でき、制動操作の有無を含めた意思に対して適切なタイミングでエンジン2が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0105】
(ロ).DMF共振防止処理(図2)が実質的に機能するためには、前提条件(S100)として、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転数より低くかつDMF24の共振回転数より高い位置に設定した基準回転数よりも、エンジン回転数NEが低下している必要がある。このように基準回転数はエンスト防止判定回転数より低いため、エンスト防止判定回転数より低くなってから、吸気の絞りや、燃料噴射量低減、燃料カットなどが実行される。このため従前の耐エンスト性能を下げずに、かつ内燃機関が存在する環境の変化に対応してDMF24の共振問題を回避することができる。
【0106】
[実施の形態2]
本実施の形態では、ブレーキスイッチとアクセルアクセル開度センサとにより、制動操作状態及び加速操作状態を検出しても、この加減速状態に応じて変動判定閾値A1〜A3を設定している。このためDMF共振防止処理として図6の処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0107】
DMF共振防止処理(図6)においては、前記図2にて変動判定閾値補正係数Kを設定するための処理であるステップS102〜S106の代わりに、ステップS202〜S210の処理が実行されることにより変動判定閾値補正係数Kが設定されている。これ以外のステップS200,S212〜S226の処理は、前記図2のステップS100,S108〜S122と同じである。
【0108】
次に変動判定閾値補正係数Kを設定するステップS202〜S210の処理を中心に説明する。
前提条件の成立により(S200でYES)、まずブレーキスイッチがオンか否かが判定される(S202)。ブレーキスイッチがオフであれば(S202でNO)、車両ドライバーによる加減速の意思が加速を含む非制動を示しているとして、次にアクセル開度が0%を越えているか、すなわちアクセルペダルが踏み込まれて、車両ドライバーが加速操作をしているか否かが判定される(S204)。
【0109】
アクセル開度>0%であれば(S204でYES)、車両ドライバーによる加減速の意思が加速を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第1補正係数k11を設定する(S206)。
【0110】
アクセル開度=0%であれば(S204でNO)、車両ドライバーによる加減速の意思が非加速を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第2補正係数k12を設定する(S208)。
【0111】
ブレーキスイッチがオンであれば(S202でYES)、車両ドライバーによる加減速の意思が制動を示しているとして、変動判定閾値補正係数Kに第3補正係数k13を設定する(S210)。ここで第1補正係数k11>第2補正係数k12>第3補正係数k13の関係にある。
【0112】
ステップS206、ステップS208、又はステップS210にて変動判定閾値補正係数Kが設定されると、次にこの変動判定閾値補正係数Kを用いて、前記式1〜3に示したごとく3つの変動判定閾値A1,A2,A3を算出することになる(S212)。
【0113】
以後の処理は、前記実施の形態1の図2にて説明したごとくである。
このことにより、ブレーキスイッチがオンの場合は、この状態を優先として、アクセルペダルの踏み込み有無に拘わらず、ブレーキスイッチがオンである状態に基づいて変動判定閾値補正係数Kが設定される(S210)。そしてブレーキスイッチがオフの時には、アクセルペダルの踏み込み有無に対応して変動判定閾値補正係数Kが設定されることになる(S206,S208)。
【0114】
したがって図7に示すごとくブレーキスイッチがオンとなった場合には(t20)、アクセル開度の状態に拘わらず変動判定閾値補正係数Kは小さい値とされる。このことにより図7に示すごとくω>A1(t21)、ω>A2(t22)となり、最終的にω>A3(t23)に至った場合には、これらのタイミングt21〜t23は早期なものとなる。
【0115】
又、図8に示すごとくブレーキスイッチがオフの状態で、アクセル開度>0%となった場合には(t30)、変動判定閾値補正係数Kは大きい値とされる。このことにより図8に示すごとくω>A1(t31)、ω>A2(t32)となり、最終的にω>A3(t33)に至った場合にも、これらのタイミングt31〜t33は遅延される。このことにより、エンジン2停止を共振による影響が大きくならない範囲で極力遅延させて、車両の発進が円滑に行われるようにしている。すなわち最終的にω>A3となる前に、エンジン回転数NEを持ち上げるチャンスを増加することにより、共振域から脱出させて発進できるようにしている。
【0116】
尚、ブレーキスイッチがオフで、アクセル開度=0%である場合は、図8のタイミングt30前の状態である。この場合には、ブレーキスイッチがオンの場合の変動判定閾値補正係数K(=k13)と、ブレーキスイッチがオフでアクセル開度>0%の場合の変動判定閾値補正係数K(=k11)との中間の大きさである変動判定閾値補正係数K(=k12)により3つの変動判定閾値A1,A2,A3が設定される。このためω>A1、ω>A2、ω>A3となるタイミングも中間的なものとなる。
【0117】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30については前記実施の形態1にて説明したごとくである。ブレーキスイッチ及びアクセル開度センサが操作状態検出手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図6)のステップS202〜S212が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS214,S216,S220,S222が共振初期判定手段としての処理に、ステップS200,S218,S224,S226が出力変動調節手段としての処理に相当する。
【0118】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).ブレーキスイッチがオンである場合にはブレーキスイッチがオフである場合よりも変動判定閾値補正係数Kを小さくしている(S210)。更にブレーキスイッチがオフでアクセル開度>0%である場合は、ブレーキスイッチがオフでアクセル開度=0%である場合よりも変動判定閾値補正係数Kを大きくしている(S206,S208)。このことにより変動判定閾値A1〜A3は、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態、ここではブレーキの踏み込み操作状態とアクセルペダルの踏み込み操作状態とを、その操作の有無を含めて検出した制動操作及び加速操作状態に応じて設定されている(S202〜S212)。このため車両ドライバーが実際に制動操作や加速操作を実行している場合に対して適切な変動判定閾値A1〜A3が設定でき、更にこのような場合のみでなく、これらの操作を実行していない場合の共振に対しても、適切な変動判定閾値A1〜A3が設定できる。
【0119】
このことによりDMF24の共振初期の状態を正確に、かつ車両ドライバーの加減速に対する、操作の有無を含めたその意思に応じて適切に判定でき、これらの意思に対して適切なタイミングでエンジン2が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0120】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態3]
本実施の形態では、前記実施の形態1においてブレーキスイッチがオンである(S102でYES)場合の変動判定閾値補正係数Kの設定(S106)の代わりに、図9のマップMAPbpに基づいて変動判定閾値補正係数Kを求めている。
【0121】
ECU30はセンサ・スイッチ類としてブレーキ油圧センサを備えて、ブレーキ油圧Pbを検出している。MAPbpこのブレーキ油圧Pbに応じた変動判定閾値補正係数Kの値の関係を設定しているものであり、ブレーキ油圧Pbが高くなるほど、変動判定閾値補正係数Kは小さくなるように設定されている。尚、ブレーキ油圧Pbの代わりにブレーキ踏み込み速度Vbを用いても良い。例えばブレーキ油圧Pbの時間変化をブレーキ踏み込み速度Vbとして用いても良い。
【0122】
このことにより図10に示すごとく、制動時(t40〜)にはブレーキ油圧Pbの上昇に応じて変動判定閾値A1〜A3が小さくなる。このことにより図10に示すごとくω>A1(t41)、ω>A2(t42)となり、最終的にω>A3(t43)に至った場合には、これらのタイミングt41〜t43は、ブレーキ油圧Pbやブレーキ踏み込み速度Vbの高さ、すなわち制動操作の強さに対応して早くなる。
【0123】
上述した構成において、ブレーキスイッチ及びブレーキ油圧センサが操作状態検出手段に相当する。他の構成は前記実施の形態1に示したごとくである。
尚、この実施の形態3は、前記実施の形態2のブレーキスイッチがオンである(図6:S202でYES)場合の変動判定閾値補正係数Kの設定(図6:S210)に対しても適用できる。
【0124】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の効果を生じる。前記実施の形態2に適用した場合は前記実施の形態2の効果を生じる。そして、このような効果と共に、減速に対して、車両ドライバーの意思を精細に反映でき、操作の有無を含めた意思に対して、より適切なタイミングでエンジン2が発生する出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0125】
[実施の形態4]
本実施の形態では、前記実施の形態1の図2に示す処理の代わりに、図11に示すDMF共振防止処理が一定時間周期の割り込みで実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,3を参照して説明する。
【0126】
DMF共振防止処理(図11)が開始されると、まず前提条件が成立しているか否かが判定される(S300)。この処理は前記図2のステップS100と同じである。前提条件が成立していなければ(S300でNO)、一旦本処理を出る。
【0127】
前提条件が成立していれば(S300でYES)、次に変動判定閾値補正係数Kの設定処理がなされる(S302)。この処理は前記実施の形態1にて図2に示したステップS102〜S106の処理と同じである。あるいは前記実施の形態2にて図6に示したステップS202〜S210の処理としても良い。あるいは、これらの変動判定閾値補正係数Kの設定に、前記実施の形態3にて図9に示したごとくのマップMAPbpを用いても良い。
【0128】
このようにして変動判定閾値補正係数Kが設定されると、この変動判定閾値補正係数Kを用いて、式5,6に示すごとく2つの変動判定閾値B1,B2が算出される(S304)。
【0129】
[式5] B1 ← b1 × K
[式6] B2 ← b2 × K
ここで変動判定閾値基準値b1,b2は、クランク軸回転速度変動幅ωが共振初期状態のいずれのレベルにあるか否かを判定する2つの閾値を設定するための基準値であり、予めエンジン2の種類とその駆動系に対応させて設定されている。第1変動判定閾値基準値b1<第2変動判定閾値基準値b2の関係にある。
【0130】
したがって前記式5,6は、2つのレベルの変動判定閾値B1,B2を、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定していることになる。
【0131】
そして次にクランク軸2aの回転速度の変動幅ωの検出値がECU30内のRAMに設けられている作業領域に読み込まれる(S306)。このクランク軸回転速度変動幅ωの検出値は、前記実施の形態1にて述べたクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)にて検出される値である。
【0132】
次に今回のステップS306で読み込まれたクランク軸回転速度変動幅ωが第1変動判定閾値B1より大きいか否かが判定される(S308)。この第1変動判定閾値B1は、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す最初の変動判定閾値である。ω≦B1であれば(S308でNO)、クランク軸回転速度変動幅ωが十分に小さく、DMF24の共振のおそれはないとして、このまま本処理を一旦出る。
【0133】
ω>B1であれば(S308でYES)、次にクランク軸回転速度変動幅ωが第2変動判定閾値B2より大きいか否かが判定される(S310)。この第2変動判定閾値B2は第1変動判定閾値B1よりも大きい値であり、第1変動判定閾値B1の場合よりも、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。ω≦B2であれば(S310でNO)、クランク角変化におけるエンジン2の出力変動周波数を変更する処理が行われる(S312)。すなわちクランク角の値を軸とした場合の出力変動周波数を変化させる。
【0134】
ここでエンジン2が4気筒であれば、図12の(a)に示すごとく、180°CA毎に燃焼行程が生じることで、クランク軸2aの1回転に付き2回の出力ピークがある。したがって例えばNE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は6Hzである。
【0135】
前記出力変動周波数変更処理(S312)は、図12の(a)に示す状態を、例えば、図12の(b)〜(d)のいずれかのごとくにする処理である。
図12の(b)では、2つの気筒(#1,#2)の出力を燃料増加により高くし、その分、他の2つの気筒(#3,#4)の出力を燃料減少により低くする処理を実行している。この出力増減により、720°CA毎に高出力の燃焼行程の組み(#2,#1)が生じることで、クランク軸2aの2回転に付き1回の出力ピークが生じる。したがってNE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は1.5Hzとなる。
【0136】
図12の(c)では、1つの気筒(#1)の出力を燃料増加により高くし、その分、他の3つの気筒(#2,#3,#4)の出力を燃料減少により低くしている。この出力増減によっても、720°CA毎に高出力の燃焼行程が生じることで、クランク軸2aの2回転に付き1回の出力ピークが生じ、NE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は1.5Hzとなる。
【0137】
図12の(d)では、出力が高い1つの気筒と、その分、出力が低い2つの気筒との組み合わせを繰り返している。この出力増減によって、540°CA毎に高出力の燃焼行程が生じることで、クランク軸2aの1.5回転に付き1回の出力ピークが生じ、NE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は2Hzとなる。
【0138】
このように図12の(a)のごとく4気筒一律の燃料噴射量とするとNE=180rpmで出力変動周波数=6Hzとなるが、図12の(b)〜(d)のごとく気筒間で燃料噴射量を増減して各気筒の燃焼行程の出力に強弱を設けることで出力変動周波数を6Hzから1.5Hzや2Hzに即座に変更することができる。
【0139】
図12のごとく気筒間で出力を増減させるのではなく、図13に示すごとく(a)の状態から#1,#4気筒の燃料噴射時期を遅角することで、(b)に示すごとく、360°CA間隔での高出力を生じさせることにより出力変動周波数を変更しても良い。
【0140】
又、(a)の状態から#2,#3気筒の燃料噴射時期を進角することで(c)に示すごとく360°CA間隔で高出力としたり、#1,#4気筒の燃料噴射時期を遅角し、#2,#3気筒の燃料噴射時期を進角することで(d)に示すごとく360°CA間隔で高出力として出力変動周波数を変更しても良い。
【0141】
このように噴射時期が近づくことでクランク軸2aの1回転に付き1回の高出力の燃焼行程ペアが生じ、このことでNE=180rpmであれば、時間軸での出力変動周波数は3Hzにでき、図13の(a)の6Hzから出力変動周波数を迅速に変更できる。
【0142】
ステップS312では、このような気筒間での燃料噴射量の増減と気筒間での燃料噴射時期の進遅角とのいずれか一方、又両方を実行することにより、クランク角変化における出力変動周波数を変更する処理が行われる。この変更によりエンジン回転数NEの変化が生じなくても直ちに時間軸での出力変動周波数を変更することができる。こうして本処理を一旦終了する。
【0143】
ω>B2であれば(S310でYES)、Dスロットル12を全閉とし、燃料噴射弁4からの燃料噴射を停止する燃料カットを実行する(S314)。このことにより、エンジン2は停止に向かうので、エンジン回転数NEは迅速に共振点を通過し、DMF24の共振は問題とはならない。
【0144】
尚、前記ステップS300あるいは前記ステップS308でNOと判定された場合には、前記図12の(a)や図13の(a)に示したごとく気筒間での燃料噴射量の増減や気筒間での燃料噴射時期の進遅角はなされない。
【0145】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30については前記実施の形態1にて説明したごとくである。ブレーキスイッチ(前述したごとく適用した変動判定閾値補正係数Kに対応して更にアクセル開度センサ、あるいはブレーキ油圧センサ)が操作状態検出手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図11)のステップS302,S304が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS306〜S310が共振初期判定手段としての処理に、ステップS300,S312,S314が出力変動調節手段としての処理に相当する。
【0146】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).DMF共振防止処理(図11)のステップS306〜S312の処理により、エンジン出力変動周波数を変化させることができる。このため第1変動判定閾値B1<クランク軸回転速度変動幅ω≦第2変動判定閾値B2である場合(S308でYES、S310でNO)、エンジン回転数NEを変化させなくても迅速に時間軸での出力変動周波数を変化させることができる。このことにより出力変動周波数をDMF24の共振点から離してDMF24の共振を低減させたり消滅させたりすることができる。
【0147】
更に、第2変動判定閾値B2よりもクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S308でYES、S310でYES)、Dスロットル12の全閉と燃料カットとを実行している(S314)。このことにより第1変動判定閾値B1よりも更にDMF24の共振に近づいた場合は、エンジン2の停止によりエンジン回転数NEを急減させ、このことにより共振点を急速に通過させて最終的に共振を消滅させている。
【0148】
そして前記実施の形態1〜3にも述べたごとく、変動判定閾値B1,B2を、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定している。このことからDMF24の共振初期において、適切なタイミングで出力変動周波数を変更したり、更にエンジン2を停止したりして、出力変動を低減又は消滅させることができる。
【0149】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態5]
本実施の形態では、前記実施の形態1の図2に示す処理の代わりに、図14に示すDMF共振防止用報知処理が一定時間周期の割り込みで実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,3を参照して説明する。
【0150】
DMF共振防止用報知処理(図14)が開始されると、まず前提条件が成立しているか否かが判定される(S400)。この処理は前記図2のステップS100と同じである。前提条件が成立していなければ(S400でNO)、一旦本処理を出る。
【0151】
前提条件が成立していれば(S400でYES)、次に変動判定閾値補正係数Kの設定処理がなされる(S402)。この処理は前記実施の形態1にて図2に示したステップS102〜S106の処理と同じである。あるいは前記実施の形態2にて図6に示したステップS202〜S210の処理としても良い。あるいは、これらの変動判定閾値補正係数Kの設定に、前記実施の形態3にて図9に示したごとくのマップMAPbpを用いても良い。
【0152】
このようにして変動判定閾値補正係数Kが設定されると、この変動判定閾値補正係数Kを用いて、式7に示すごとく変動判定閾値C1が算出される(S404)。
[式7] C1 ← c1 × K
ここで変動判定閾値基準値c1は、クランク軸回転速度変動幅ωが共振初期状態にあるか否かを判定する閾値を設定するための基準値であり、予めエンジン2の種類とその駆動系に対応させて設定されている。
【0153】
したがって前記式7は、変動判定閾値C1を、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定していることになる。
【0154】
そして次にクランク軸2aの回転速度変動幅ωの検出値がECU30内のRAMに設けられている作業領域に読み込まれる(S406)。このクランク軸回転速度変動幅ωの検出値は、前記実施の形態1にて述べたクランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)にて検出される値である。
【0155】
次にクラッチスイッチ(クラッチセンサに相当)がオフか否かが判定される(S408)。クラッチスイッチがオン状態である場合、すなわちクラッチ26が係合状態でない場合には(S408でNO)、このまま本処理を一旦出る。
【0156】
クラッチスイッチがオフ状態である場合、すなわちクラッチ26が係合状態である場合には(S408でYES)、次に今回ステップS406で読み込まれたクランク軸回転速度変動幅ωが変動判定閾値C1より大きいか否かが判定される(S410)。この変動判定閾値C1は、エンジン回転数NEがDMF24の共振に近づいた状態を表す変動判定閾値である。ω≦C1であれば(S410でNO)、クランク軸回転速度変動幅ωが十分に小さく、DMF24の共振のおそれはないとして、このまま本処理を一旦出る。
【0157】
ω>C1であれば(S410でYES)、ディスプレイ部36にクラッチ26の切断を要求する内容を表示して警告する報知出力がなされる(S412)。ここではディスプレイ部36に設けられたクラッチ切断要求のための警告ランプを点灯、あるいは点滅させて、車両ドライバーにクラッチ26の切断を要求する。
【0158】
図15のタイミングチャートに本実施の形態における処理の一例を示す。タイミングt50前はMT28は第1速にシフトされているがクラッチ26が切断状態でありエンジン回転数NEは低下していない。ドライバーが発進のためにクラッチ26を係合操作すると、クラッチスイッチがオフとなり(t50)、エンジン回転数NEが低下して行き、基準回転数を下回る(t51〜)。
【0159】
更にエンジン回転数NEがDMF24の共振点に近づくことでクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなってω>C1となる(t52)。このことによりクラッチ切断要求のための警告ランプが点灯する。その後、警告ランプ点灯を認識したドライバーが更にクラッチ26を切断することで(t53)、警告ランプは消灯し、エンジン回転数NEは上昇すると共に、クランク軸回転速度変動幅ωは小さくなり、ω≦C1となる(t54〜)。
【0160】
ここで変動判定閾値C1は一定でなく、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定しているので、車両ドライバーの操作に適合させてエンジン回転数NEがDMF24の共振点に近づいているか否かを適切なタイミングで判定できる。
【0161】
例えば図16のタイミングチャートに示すごとく、クラッチスイッチがオフとなった後に(t60〜)、ブレーキスイッチがオンとなると(t61)、ステップS402,S404の処理により、それまでよりも変動判定閾値C1が小さくなる。このことにより早期に報知出力がなされる(t62〜)。このことにより、車両ドライバーが停車のための制動操作中にうっかりしてクラッチ26を係合した場合、あるいは停車時にクラッチ26の切断が遅れた場合に、早期(t63)に再度クラッチを切断させることができ、共振を防止できる。加速操作時においては報知出力が遅延されるので、報知出力に惑わされることなく、加速操作が継続できる。
【0162】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30が内燃機関共振初期検出装置として、クランク軸回転速度変動検出手段、変動判定閾値設定手段、及び共振初期判定手段に相当し、更に内燃機関制御装置として、これらの手段及び報知手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止用報知処理(図14)のステップS402,S404が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS406,S410が共振初期判定手段としての処理に、ステップS400,S408,S412が報知手段としての処理に相当する。
【0163】
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(イ).クラッチ26の係合によりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合、すなわちエンジン回転数NEが低下してDMF24の共振点に近づいた場合に、クラッチ26の切断が実行されれば、エンジン回転数NEを回復させてDMF24の共振点から離すことができる。このため、変動判定閾値C1よりクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合には(S410でYES)、クラッチ切断警告報知を実行している(S412)。このことによりDMF24の共振に近づいた場合に、車両ドライバーは直ちにクラッチ26を切断できる。
【0164】
この変動判定閾値C1は、加減速操作をしていない場合も含めて、車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態に基づいて設定していることから、操作意思に対応した適切なタイミングで共振初期を報知できる。
【0165】
例えば車両を停止するために車両ドライバーが制動操作している時にクラッチ26の切断が遅れた場合や、一旦切断したクラッチ26をうっかり係合した場合などにおいて、早期にクラッチ切断の警告がなされるので、車両ドライバーがクラッチ26を切断することにより、共振領域までエンジン回転数NEが低下するのを防止できる。
【0166】
加速操作時には警告が遅延するので、警告に惑わされることはなく加速操作の継続により、クラッチ26が係合していても共振領域までエンジン回転数NEが低下するのを防止できる。
【0167】
したがって、このクラッチ26の切断要求に基づき車両ドライバーはエンジン2が発生する出力変動を適切に低減又は消滅させることができる。
[実施の形態6]
本実施の形態では、前記実施の形態5の図14に示すDMF共振防止用報知処理の代わりに、図17に示すDMF共振防止処理が一定時間周期の割り込みで実行される。他の構成は前記実施の形態5と同じであるので、図1,3を参照して説明する。
【0168】
DMF共振防止処理(図17)のステップS500〜S512は、前記図14におけるステップS400〜S412と同じ処理である。異なる部分は、ω>C1(S510でYES)の場合に、前述したごとくのクラッチ切断警告報知(S512)と共に、燃料噴射量増量処理(S514)を実行する点である。
【0169】
この燃料噴射量増量処理(S514)は、クラッチ26の係合により一旦落ちかけたエンジン回転数NEを、クラッチ26の切断がなされる前であってもエンジン2の出力を上昇させることで持ち上げるための処理である。このことにより、車両ドライバーに対するクラッチ切断要求の報知と共に、更に積極的にエンジン回転数NEをDMF24の共振点から離すようにしている。
【0170】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU30が内燃機関共振初期検出装置として、クランク軸回転速度変動検出手段、変動判定閾値設定手段、及び共振初期判定手段に相当し、更に内燃機関制御装置として、これらの手段、報知手段及び内燃機関出力増加手段に相当する。クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)がクランク軸回転速度変動検出手段としての処理に相当する。DMF共振防止処理(図17)のステップS502,S504が変動判定閾値設定手段としての処理に、ステップS506,S510が共振初期判定手段としての処理に、ステップS500,S508,S512が報知手段としての処理に、ステップS500,S510,S514が内燃機関出力増加手段としての処理に相当する。
【0171】
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態5の効果と共に、エンジン回転数NEがDMF24の共振点に近づいた場合に、エンジン回転数NEを燃料噴射増量により持ち上げている。このことにより車両ドライバーがクラッチ26を切断する前であっても、エンジン回転数NEを迅速にDMF24の共振点から離すことができる。
【0172】
[その他の実施の形態]
(a).前記各実施の形態では、変動判定閾値補正係数Kによる変動判定閾値の設定は、減速操作のみ、あるいは減速操作と加速操作との両方を考慮して行ったが、加速操作のみを考慮して、加速時には非加速時に比較して変動判定閾値補正係数Kを大きくすることで変動判定閾値を大きくしても良い。
【0173】
(b).前記各実施の形態において示した前提条件(S100,S200,S300,S400,S500)は、基準回転数よりエンジン回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速が低い条件との論理和条件であった。これ以外に、基準回転数よりもクランク軸回転数センサ32にて検出した回転数NEが低い条件のみを前提条件としても、あるいは基準回転数よりエンジン回転数NEが低い条件と、基準車速よりも車速が低い条件との論理積条件としても良かった。
【0174】
このような条件に対して、更に「車速が基準車速より低いかエンジン回転数NEが車速に対応した基準回転数より低く、かつクラッチが係合状態」、「登坂時状態」といった条件を、論理和条件として加えても良い。したがってこれらの条件のいずれかが該当している場合に、前提条件(S100,S200,S300,S400,S500)は、YESと判定されることになる。
【0175】
特に前記実施の形態1〜4に対して「車速が基準車速より低いかエンジン回転数NEが車速に対応した基準回転数より低く、かつクラッチが係合状態」との条件を論理和条件として加えることにより、発進時におけるクラッチ係合時の回転数低下を判定できるので、発進時でのDMF24の共振初期を正確に判定できる。
【0176】
「登坂時状態」との条件を論理和条件として加えることにより、登坂時の回転数低下を判定できるので、登坂時でのDMF24の共振初期を正確に判定できる。
(c).前記実施の形態5,6にてクラッチスイッチの代わりにクラッチストロークセンサを設けて、クラッチ26の係合状態と共に半係合状態(半クラッチ)を検出しても良い。この場合は、前記DMF共振防止用報知処理(図14)のステップS408、DMF共振防止処理(図17)のステップS508にては、クラッチ26が係合状態又は半係合状態である場合は、YESと判定するようにする。
【0177】
(d).前記クランク軸回転速度変動幅ω検出処理(図3)では、クランク軸回転加速度のピーク値が、回転速度変動の大きさに連動していることから、直接的にクランク軸回転速度振動の振幅を捉えずに、クランク軸2aにおける回転加速度ピーク値を捉えていた。実際には、回転加速度ピーク値に対応するものとして、クランク軸の一定角度における回転時間の変化幅のピーク値を捉えていた。回転加速度そのものを検出してそのピーク値を直接用いても良い。
【0178】
更に、この代わりに、回転速度振動のピーク値を検出して、平均回転速度からのピーク値の高さから、クランク軸回転速度振動における振幅を算出し、クランク軸回転速度変動の大きさとして用いても良い。
【0179】
又、クランク軸回転速度変動は、クランク軸の仕事量の変動にも対応することから、クランク軸回転速度変動幅ω検出処理としては、クランク軸の仕事量変動を計算することにより、この仕事量変動のピークをクランク軸回転速度変動幅ωの代わりに求めても良い。したがって、この仕事量変動のピーク値を用いて各DMF共振防止処理(図2,6,11,16)やDMF共振防止用報知処理(図14)では判定を実行することになる。クランク軸回転速度θの時間変化Δθを自乗した値が仕事量に対応するので、このΔθの自乗の値を用いて共振状態を判定すれば良い。回転速度θあるいは時間変化Δθは、パルス時間間隔Tあるいは時間間隔変化幅dTから算出することができる。
【0180】
(e).前述した各実施の形態は本発明をディーゼルエンジンに適用したものであったが、他の内燃機関であるガソリンエンジンにおいても適用できる。
(f).前記実施の形態1〜4においては変動判定閾値は複数設けて、これらの変動判定閾値よりもクランク軸回転速度変動幅ωが大きくなった場合に、各変動判定閾値に対応する処理を実行したが、これら変動判定閾値の一部は用いずに他の一部の変動判定閾値によりクランク軸回転速度変動幅ωを判定し、対応する処理を実行するようにしても良い。
【0181】
(g).前記各実施の形態では、車両ドライバーの操作状態に応じて変動判定閾値補正係数Kを設定した後に、変動判定閾値を算出したが、車両ドライバーの操作状態に応じて、直接、変動判定閾値を算出しても良い。
【符号の説明】
【0182】
2…エンジン、2a…クランク軸、4…燃料噴射弁、6…コモンレール、8…インテークマニホールド、10…吸気管、12…Dスロットル、14…電動アクチュエータ、16…EGR通路、18…EGR弁、20…プライマリフライホイール、20a,22a…回転軸、22…セカンダリフライホイール、24…DMF、24a…バネ、24b…ベアリング、26…クラッチ、28…MT、30…ECU、32…クランク軸回転数センサ、34…開度センサ、36…ディスプレイ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の共振初期を検出する共振初期検出装置であって、
内燃機関のクランク軸回転速度の変動の大きさを検出するクランク軸回転速度変動検出手段と、
車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態を、操作の有無を含めて検出する操作状態検出手段と、
前記操作状態検出手段により検出される操作状態に応じて変動判定閾値を設定する変動判定閾値設定手段と、
前記クランク軸回転速度変動検出手段にて検出される変動の大きさが、前記変動判定閾値設定手段により設定される変動判定閾値より大きくなった場合に共振初期であると判定する共振初期判定手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態を検出することを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、アクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態、及びアクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記変動判定閾値設定手段は、前記操作状態検出手段により、アクセル操作がなされている場合の前記アクセル操作状態と、制動操作がなされている場合の前記制動操作状態とが同時に検出された場合には、前記制動操作状態を優先して前記変動判定閾値の設定に用いることを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項6】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、
前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させる出力変動調節手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はスロットルバルブを有するディーゼルエンジンであり、前記出力変動調節手段は、前記スロットルバルブの開度を低下させることにより、内燃機関の吸気量を減少させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項10】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給を停止させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項11】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させる処理、内燃機関の燃料供給量を減少させる処理、及び内燃機関の燃料供給を停止させる処理のいずれか2つ又は全てを実行することにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はディーゼルエンジンであり、燃料供給は、燃料噴射弁から燃焼室内に対して行われる燃料噴射であることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項13】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、
前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させる出力変動調節手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関は複数気筒を備え、各気筒の燃焼室への燃料供給は、燃焼室内での燃料噴射により行われると共に、
前記出力変動調節手段は、気筒間にて燃料噴射時期の差と燃料噴射量の差との一方又は両方を生じさせることで、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転速度より低く、かつ前記デュアルマスフライホイールの共振回転速度より高い位置に基準回転速度を設定し、該基準回転速度より前記回転速度検出手段にて検出される回転速度が低い場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項16】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が制動中である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項17】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車速が基準車速以下あるいは内燃機関回転速度が基準回転速度以下であって、かつクラッチが係合あるいは半係合状態である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項18】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が登坂時である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項19】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、
デュアルマスフライホイールと駆動系との間に配置されているクラッチの係合状態を検出するクラッチセンサと、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、
前記クラッチセンサが前記クラッチの係合又は半係合状態の継続を検出しており、かつ前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、前記クラッチの切断を要求する報知出力を行う報知手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項20】
請求項19に記載の内燃機関制御装置において、前記報知手段は、警告ランプの点灯により報知することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度が基準回転速度以下の場合に、前記報知手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、
内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記報知手段による報知出力時に、前記回転速度検出手段にて検出される内燃機関回転速度が基準回転速度よりも低い場合には、内燃機関の出力を増加させる内燃機関出力増加手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項1】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の共振初期を検出する共振初期検出装置であって、
内燃機関のクランク軸回転速度の変動の大きさを検出するクランク軸回転速度変動検出手段と、
車両ドライバーによる加減速の意思を反映する操作状態を、操作の有無を含めて検出する操作状態検出手段と、
前記操作状態検出手段により検出される操作状態に応じて変動判定閾値を設定する変動判定閾値設定手段と、
前記クランク軸回転速度変動検出手段にて検出される変動の大きさが、前記変動判定閾値設定手段により設定される変動判定閾値より大きくなった場合に共振初期であると判定する共振初期判定手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態を検出することを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、アクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記操作状態検出手段は、制動操作の有無を含めた制動操作状態、及びアクセル操作の有無を含めたアクセル操作状態を検出することを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関共振初期検出装置において、前記変動判定閾値設定手段は、前記操作状態検出手段により、アクセル操作がなされている場合の前記アクセル操作状態と、制動操作がなされている場合の前記制動操作状態とが同時に検出された場合には、前記制動操作状態を優先して前記変動判定閾値の設定に用いることを特徴とする内燃機関共振初期検出装置。
【請求項6】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、
前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させる出力変動調節手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はスロットルバルブを有するディーゼルエンジンであり、前記出力変動調節手段は、前記スロットルバルブの開度を低下させることにより、内燃機関の吸気量を減少させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給量を減少させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項10】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の燃料供給を停止させることにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項11】
請求項6に記載の内燃機関制御装置において、前記出力変動調節手段は、内燃機関の吸気量を減少させる処理、内燃機関の燃料供給量を減少させる処理、及び内燃機関の燃料供給を停止させる処理のいずれか2つ又は全てを実行することにより、内燃機関が発生する出力変動を低減又は消滅させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関はディーゼルエンジンであり、燃料供給は、燃料噴射弁から燃焼室内に対して行われる燃料噴射であることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項13】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、
前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させる出力変動調節手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関は複数気筒を備え、各気筒の燃焼室への燃料供給は、燃焼室内での燃料噴射により行われると共に、
前記出力変動調節手段は、気筒間にて燃料噴射時期の差と燃料噴射量の差との一方又は両方を生じさせることで、クランク角変化における内燃機関が発生する出力変動の周波数を変化させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、エンスト防止用に設定したエンスト防止判定回転速度より低く、かつ前記デュアルマスフライホイールの共振回転速度より高い位置に基準回転速度を設定し、該基準回転速度より前記回転速度検出手段にて検出される回転速度が低い場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項16】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が制動中である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項17】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車速が基準車速以下あるいは内燃機関回転速度が基準回転速度以下であって、かつクラッチが係合あるいは半係合状態である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項18】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、車両が登坂時である場合に、前記出力変動調節手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項19】
デュアルマスフライホイールを介して車両の駆動系へ出力を伝達する内燃機関の制御装置であって、
デュアルマスフライホイールと駆動系との間に配置されているクラッチの係合状態を検出するクラッチセンサと、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関共振初期検出装置と、
前記クラッチセンサが前記クラッチの係合又は半係合状態の継続を検出しており、かつ前記内燃機関共振初期検出装置の共振初期判定手段にて共振初期であると判定されている場合に、前記クラッチの切断を要求する報知出力を行う報知手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項20】
請求項19に記載の内燃機関制御装置において、前記報知手段は、警告ランプの点灯により報知することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の内燃機関制御装置において、内燃機関回転速度が基準回転速度以下の場合に、前記報知手段が機能することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、
内燃機関回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記報知手段による報知出力時に、前記回転速度検出手段にて検出される内燃機関回転速度が基準回転速度よりも低い場合には、内燃機関の出力を増加させる内燃機関出力増加手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−222987(P2010−222987A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68230(P2009−68230)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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