説明

内燃機関装置およびその制御方法並びに車両

【課題】内燃機関への燃料噴射が停止されたときに排気供給手段のバルブの正常動作をより適正に検査する。
【解決手段】エンジンの燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過すると共に回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref未満のときに(S120,S150)、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときにはEGRバルブを全閉した状態でスロットル開度を所定開度THrefから嵩上げ開度ΔTHだけ大きくするのに対し(S170〜S190)、EGRバルブ検査の実行条件が成立しているときにはスロットル開度を所定開度THrefとした状態でEGRバルブ検査を実行する(S200〜S220)。これにより、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときよりエンジンの吸気負圧を大きくして燃料噴射を停止した状態でバルブ検査を実行することができ、センサからの吸気圧に基づくEGRバルブ検査をより適正に実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関装置およびその制御方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関装置としては、所定のフューエルカット条件が成立したときにエンジンの吸入空気量を嵩上げする車両に搭載されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、所定のフューエルカット条件が成立し且つ触媒床温度が高温で触媒劣化抑制制御が要請されているときには、フューエルカットを実行せずに、エンジンの回転数をモータにより強制的に引き下げると共に、爆発燃料が継続しやすくなるよう現在のエンジンの回転数で自立運転するときの目標空気量から嵩上げした吸入空気量の範囲内でエンジンを制御することにより、浄化装置の触媒がリーン雰囲気に晒され劣化するのを抑制するものとしている。
【特許文献1】特開2007−129881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エンジンの排気系と吸気系とを接続する通路に設けられたEGRバルブを開くことにより排気を吸気系に供給可能な内燃機関装置では、フューエルカットを実行している最中に吸気系の状態が安定したときに吸気圧に基づいてEGRバルブの正常動作を検査することが考えられるが、こうした検査を適正に行なうことができない場合がある。即ち、フューエルカットの実行中に、エンジンの潤滑油が燃焼室内に入り込むのを抑制するためなどの理由により吸入空気量の嵩上げを行なうと、吸気圧が変動して検査のためのバルブ作動による吸気圧の変動量を正しく検出できなくなったり、吸気圧が負圧としては小さくなり検査のためのバルブ作動による吸気圧の変動量が小さくなったりして、誤判定が生じる。
【0004】
本発明の内燃機関装置およびその制御方法並びに車両は、内燃機関への燃料噴射が停止されたときに排気供給手段のバルブの正常動作をより適正に検査することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の内燃機関装置およびその制御方法並びに車両は、少なくとも上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の内燃機関装置は、
内燃機関を備える内燃機関装置であって、
前記内燃機関の排気系および吸気系を接続する通路と該通路に設けられたバルブとを有し、該バルブを開いて前記排気系から前記吸気系に排気を供給する排気供給手段と、
前記吸気系における吸入空気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、
前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で所定時間が経過すると共に前記内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のとき、前記排気供給手段のバルブの正常動作を前記検出された吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御し、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには前記内燃機関のスロットル開度が前記第1の開度より小さい第2の開度になると共に前記バルブ検査が実行されるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の内燃機関装置では、内燃機関への燃料噴射が停止されてから所定時間が経過すると共に内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のときに、排気供給手段のバルブの正常動作を吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには排気供給手段のバルブを閉じた状態で内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう内燃機関と排気供給手段のバルブとを制御し、バルブ検査の実行条件が成立しているときには内燃機関のスロットル開度が第1の開度より小さい第2の開度になると共にバルブ検査が実行されるよう内燃機関と排気供給手段のバルブとを制御する。したがって、バルブ検査の実行条件が成立しているときには、バルブ検査の実行条件が成立していないときより吸気圧を小さく即ち吸気負圧を大きくして燃料噴射を停止した状態でバルブ検査を実行することができる。この結果、バルブ検査の実行条件が成立しているときには、バルブ検査の実行条件が成立していないときより排気供給手段のバルブの開動作や閉動作による吸気圧の変化量が大きくなるから、排気供給手段のバルブの正常動作をより適正に検査することができる。
【0008】
こうした本発明の内燃機関装置において、前記制御手段は、前記内燃機関への燃料噴射が停止されたときに前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が前記第2の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、バルブ検査の実行条件の成否に基づく制御を行なう前に吸気負圧をより大きくした状態とすることができるから、バルブ検査の実行条件の成立によるバルブ検査をより適正に実行することができる。
【0009】
また、本発明の内燃機関装置において、前記制御手段は、前記内燃機関をアイドル運転するときの前記内燃機関のスロットル開度を前記第2の開度として用いると共に前記内燃機関の回転数が高くなるほど大きくなる前記内燃機関のスロットル開度を前記第1の開度として用いて前記内燃機関を制御するものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明の内燃機関装置において、前記制御手段は、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには、前記排気供給手段のバルブを閉じた状態での前記検出された吸気圧と該バルブを閉じた状態からの該バルブの開動作後に第1の所定時間が経過したときの前記検出された吸気圧と該第1の所定時間が経過してからの該バルブの閉動作後に第2の所定時間が経過したときの前記検出された吸気圧とに基づいて前記排気供給手段のバルブが正常に作動するか否かを判定することにより前記バルブ検査が実行されるよう前記排気供給手段のバルブを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、バルブ検査をより確実に実行することができる。
【0011】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の内燃機関装置、即ち、基本的には、内燃機関を備える内燃機関装置であって、前記内燃機関の排気系および吸気系を接続する通路と該通路に設けられたバルブとを有し、該バルブを開いて前記排気系から前記吸気系に排気を供給する排気供給手段と、前記吸気系における吸入空気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で所定時間が経過すると共に前記内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のとき、前記排気供給手段のバルブの正常動作を前記検出された吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御し、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには前記内燃機関のスロットル開度が前記第1の開度より小さい第2の開度になると共に前記バルブ検査が実行されるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する制御手段と、を備える内燃機関装置と、動力を入出力する発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力をやり取りする蓄電手段と、を備えることを要旨とする。
【0012】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の内燃機関装置を搭載するから、本発明の内燃機関装置が奏する効果、例えば、排気供給手段のバルブの正常動作をより適正に検査することができる効果などと同様の効果を奏することができる。この場合、前記制御手段は、前記内燃機関への燃料噴射が停止されたときに前記内燃機関が所定回転数でモータリングされると共に走行に要求される要求制動力が出力されて走行するよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。ここで「3軸式動力入出力手段」は、シングルピニオン式やダブルピニオン式の遊星歯車機構であるものとすることもできるし、デファレンシャルギヤであるものとすることもできる。
【0013】
本発明の内燃機関装置の制御方法は、
内燃機関と、前記内燃機関の排気系および吸気系を接続する通路と該通路に設けられたバルブとを有し該バルブを開いて前記排気系から前記吸気系に排気を供給する排気供給手段と、を備える内燃機関装置の制御方法であって、
前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で所定時間が経過すると共に前記内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のとき、前記排気供給手段のバルブの正常動作を前記吸気系における吸入空気の圧力である吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御し、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには前記内燃機関のスロットル開度が前記第1の開度より小さい第2の開度になると共に前記バルブ検査が実行されるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する、
ことを特徴とする。
【0014】
この本発明の内燃機関装置の制御方法では、内燃機関への燃料噴射が停止されてから所定時間が経過すると共に内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のときに、排気供給手段のバルブの正常動作を吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには排気供給手段のバルブを閉じた状態で内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう内燃機関と排気供給手段のバルブとを制御し、バルブ検査の実行条件が成立しているときには内燃機関のスロットル開度が第1の開度より小さい第2の開度になると共にバルブ検査が実行されるよう内燃機関と排気供給手段のバルブとを制御する。したがって、バルブ検査の実行条件が成立しているときには、バルブ検査の実行条件が成立していないときより吸気圧を小さく即ち吸気負圧を大きくして燃料噴射を停止した状態でバルブ検査を実行することができる。この結果、バルブ検査の実行条件が成立しているときには、バルブ検査の実行条件が成立していないときより排気供給手段のバルブの開動作や閉動作による吸気圧の変化量が大きくなるから、排気供給手段のバルブの正常動作をより適正に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例である内燃機関装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、排気バルブ129を開くことにより一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される共にEGR(Exhaust Gas Recirculation)システム160を介して吸気側に供給される。EGRシステム160は、浄化装置134の後段に接続されて排気を吸気側のサージタンクに供給するためのEGR管162と、EGR管162に配置されステッピングモータ163により駆動されるEGRバルブ164とを備え、EGRバルブ164の開度の調節により、不燃焼ガスとしての排気を供給量を調整して吸気側に供給する。エンジン22は、こうして空気と排気とガソリンとの混合気を燃焼室に吸引することができるようになっている。なお、エンジン22のピストン132とシリンダとの間や吸排気バルブ128,129の軸受け部などの摺動部にはクランクシャフト26の回転により駆動する図示しないオイルポンプにより潤滑油が供給されている。
【0018】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた図示しない圧力センサからの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブ129を開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられて吸入空気の質量流量を検出するエアフローメータ148からの吸入空気量GA,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,吸気管内の圧力を検出する吸気圧センサ158からの吸気圧Pin,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号,EGRバルブ164の開度を調節するステッピングモータ163への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0021】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCを演算したり、演算した残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0022】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20に搭載された内燃機関装置の動作、特にエンジン22への燃料噴射が停止されたときにEGRバルブ164を検査する際の動作について説明する。ここで、実施例の内燃機関装置としては、主としてエンジン22とEGRシステム160とエンジンECU24とが相当する。図3はエンジンECU24により実行される燃料カット時制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図4はエンジンECU24により実行されるEGRバルブ検査ルーチンの一例を示すフローチャートである。燃料カット時制御ルーチンはエンジン22への燃料噴射が停止(燃料カット)されたときに所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行され、EGRバルブ検査ルーチンは燃料カット時制御ルーチンにおいてEGRバルブ検査の実行条件の成立が判定されたときに実行される。実施例では、エンジン22の燃料カットは、走行中にアクセルオンからアクセルオフされたときにハイブリッド用電子制御ユニット70から燃料カットの指示信号を受信したエンジンECU24によって燃料噴射制御や点火制御を停止することにより行なわれるものとし、ハイブリッド用電子制御ユニット70では、アクセルオフされたときに燃料カットの指示信号をエンジンECU24に送信し、車速Vに応じた目標回転数Ne*でエンジン22をモータMG1により強制的を回転させると共にモータMG2から制動トルクを出力することによりアクセルオフ時に要求される車速Vに応じた要求制動力が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信するアクセルオフ時の駆動制御が行なわれるものとした。なお、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*,Tm2*に相当するトルクがモータMG1,MG2から出力されるようインバータ41,42をスイッチング制御する。また、実施例では、燃料カット時制御ルーチンの実行中にアクセルオンされたりEGRバルブ検査ルーチンの実行が終了したときには燃料カット時制御ルーチンの実行を停止するものとした。以下、説明の都合上、まず最初にEGRバルブ検査の処理について説明し、その後に燃料カット時制御について説明する。
【0025】
図4のEGRバルブ検査ルーチンが実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、吸気圧センサ158から吸気圧Pinを入力してRAM24cの所定領域に開始閉じ時吸気圧Pstaとして記憶する処理を実行する(ステップS300)。続いて、EGRバルブ164の開度が所定開度EBref(例えば、全開に相当する開度など)になるようステッピングモータ163を駆動し(ステップS310)、こうしてステッピングモータ163を駆動してからエンジン22の吸気管内の圧力が安定するのに必要な時間として実験などにより定められた所定時間t1(例えば、1秒や1.2秒など)が経過するのを待って(ステップS320)、吸気圧センサ158から吸気圧Pinを入力してRAM24cの所定領域に開き時吸気圧Popnとして記憶する(ステップS330)。本ルーチンの実行を開始するときには、後述するようにEGRバルブ164は全閉されているため、ステップS310の処理はEGRバルブ164の開度を値0から所定開度EBrefまで開く処理になる。次に、EGRバルブ164が全閉されるようステッピングモータ163を駆動し(ステップS340)、こうしてステッピングモータ163を駆動してからエンジン22の吸気管内の圧力が安定するのに必要な時間として実験などにより定められた所定時間t2(例えば、1秒や1.2秒など)が経過するのを待って(ステップS350)、吸気圧センサ158からの吸気圧Pinを入力してRAM24cの所定領域に終了閉じ時吸気圧Pendとして記憶し(ステップS360)、記憶した開始閉じ時吸気圧Pstaと開き時吸気圧Popnと終了閉じ時吸気圧Pendとに基づいて次式(1)により判定値Pdecを計算する(ステップS370)。そして、計算した判定値Pdecが閾値Prefより大きいときにはEGRバルブ164は正常に作動すると判定し(ステップS390)、計算した判定値Pdecが閾値Pref以下のときにはEGRバルブ164は正常に作動しない異常と判定して(ステップS400)、EGRバルブ検査ルーチンを終了する。ここで、閾値Prefは、EGRバルブ164の開固着や閉固着,ステッピングモータ163の故障などの異常を判定するためのものであり、予め実験などにより求めたものを用いることができる。こうした制御により、EGRバルブ164の正常動作を検査することができる。以上、EGRバルブ検査について説明した。
【0026】
Pdec=Popn-(Psta+Pend)/2 (1)
【0027】
次に、燃料カット時制御について説明する。図3の燃料カット時制御ルーチンが実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、エンジン22の回転数Neや水温センサ142からの冷却水温Tw,エアフローメータ148からの吸入空気量GAなど制御に必要なデータを入力し(ステップS100)、入力したエンジン22の回転数Neに基づいて回転数変化量ΔNeを計算すると共に吸入空気量GAに基づいて吸入空気変化量ΔGAを計算する処理を実行する(ステップS110)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものを入力するものとした。また、エンジン22の回転数変化量ΔNeは、実施例では、入力した回転数Neから前回本ルーチンを実行したときに入力したエンジン22の回転数Ne(前回Ne)を減じたものを本ルーチンの実行間隔tで割ることにより求めるものとした。エンジン22の吸入空気変化量ΔGAも、実施例では、入力した吸入空気量GAから前回本ルーチンを実行したときに入力した吸入空気量GA(前回GA)を減じたものを本ルーチンの実行間隔tで割ることにより求めるものとした。
【0028】
続いて、エンジン22の燃料カットが行なわれてから、即ち本ルーチンの実行が最初に開始されてから所定時間t0が経過したか否かを判定し(ステップS120)、所定時間t0が経過していないときには、EGRバルブ164が全閉されるようステッピングモータ163を駆動またはEGRバルブ164が既に全閉されているときにはその状態を保持し(ステップS130)、エンジン22のスロットル開度の目標値である目標スロットル開度TH*にエンジン22をアイドル運転するときに用いる所定開度THrefを設定し(ステップS140)、スロットルバルブ124の開度が設定した目標スロットル開度TH*になるようスロットルモータ136を駆動して(ステップS190)、燃料カット時制御ルーチンを終了する。ここで、所定時間t0は、燃料カットが行なわれた以降に次に説明するEGRバルブ検査の実行条件の成否を判定できる状態になるまでに必要な時間であり、エンジン22の特性などに基づいて予め実験などにより定めたもの(例えば、1.2秒や1.5秒など)を用いることができる。また、所定開度THrefは、実施例では、エンジン22を所定回転数(例えば、1000rpmや1200rpmなど)でアイドル運転するためのスロットルバルブ124の開度を経年変化などを考慮して学習し図示しない不揮発性メモリに記憶したものを用いるものとした。
【0029】
エンジン22の燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過したときには、計算したエンジン22の回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref未満になったか否かと(ステップS150)、EGRバルブ検査の実行条件が成立しているか否かとを判定する(ステップS160)。ここで、閾値Nrefは、エンジン22の回転数Neが安定している状態を判定するためのものであり、エンジン22の特性などに基づいて予め実験などにより定めたもの(例えば、数十rpmなど)を用いることができる。また、EGRバルブ検査の実行条件は、実施例では、計算した吸入空気変化量ΔGAの絶対値がエンジン22の吸入空気量が安定した状態と判断することができる閾値GAref未満の状態でその吸入空気量が安定している状態を継続していると判断することができる所定時間(例えば、0.8秒や1秒など)が経過する条件と、EGRバルブ164の開状態からの閉動作により変動する吸気管内の圧力が安定するのに必要な所定時間(例えば、0.8秒や1秒など)がEGRバルブ164が全閉されてから経過する条件と、入力したエンジン22の冷却水温Twがエンジン22の暖機が完了した状態を示す所定温度(例えば、70℃や75℃など)以上である条件との全ての条件が満たされたときに成立するものとした。この実行条件における閾値GArefや所定時間,所定温度は、エンジン22の特性などに基づいて予め実験などにより定められてROM24bに記憶されたものを用いることができる。したがって、前述した所定時間t0は、実施例では、燃料カットが行なわれた以降にスロットルバルブ124やEGRバルブ164の駆動に必要な時間やEGRバルブ検査の実行条件における各所定時間などに基づいて予め実験などにより定めたものとなる。
【0030】
エンジン22の回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref以上のとき又はエンジン22の回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref未満であってもEGRバルブ検査の実行条件が成立していないときには、EGRバルブ検査を実行しないと判断して、エンジン22の回転数Neに基づいて嵩上げ開度ΔTHを設定し(ステップS170)、設定した嵩上げ開度ΔTHを所定開度THrefに加えたものをエンジン22の目標スロットル開度TH*として設定し(ステップS180)、スロットルバルブ124の開度が設定した目標スロットル開度TH*になるようスロットルモータ136を駆動して(ステップS190)、即ち、EGRバルブ164を全閉した状態でスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefから嵩上げ開度ΔTHだけ大きくした状態にして、燃料カット時制御ルーチンを終了する。嵩上げ開度ΔTHは、実施例では、エンジン22の回転数Neと嵩上げ開度ΔTHとの関係を予め定めて嵩上げ開度設定用マップとしてROM24bに記憶しておき、エンジン22の回転数Neが与えられると記憶したマップから対応する嵩上げ開度ΔTHを導出して設定するものとした。図5に嵩上げ開度設定用マップの一例を示す。図5の例では、エンジン22の回転数Neが前述したアイドル運転時の所定回転数より高くなるほど嵩上げ開度ΔTHが大きくなるよう定められている。これは、吸気管内の圧力が比較的小さいとき(吸気負圧が比較的大きいとき)にはエンジン22のシリンダ壁を伝って潤滑油が燃焼室内に入り込みやすくなるのに対し、エンジン22の燃料カット時には回転数Neが高くなるほど吸気負圧が大きくなる傾向にあることから、エンジン22の潤滑油がその後の燃焼などで消費されるのが抑制されるよう回転数Neが高くなるほど吸入空気量を大きくして吸気負圧を小さくする必要があるためなどの理由に基づく。
【0031】
一方、エンジン22の回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref以上でありEGRバルブ検査の実行条件が成立しているときには、エンジン22の目標スロットル開度TH*に所定開度THrefを設定すると共に(ステップS200)、スロットルバルブ124の開度が設定した目標スロットル開度TH*になるようスロットルモータ136を駆動し(ステップS210)、図4のEGRバルブ検査ルーチンを実行して(ステップS220)、即ち、スロットルバルブ124の開度を所定開度THrefに保持した状態で且つEGRバルブ164を全閉した状態からEGRバルブ検査を実行して、燃料カット時制御ルーチンを終了する。こうした制御により、EGRバルブ検査の実行条件が成立しているときには、スロットルバルブ124の開度がEGRバルブ検査の実行条件が成立していないときの目標スロットル開度TH*より小さい目標スロットル開度TH*になるから、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときに比して、エンジン22の吸気管内の圧力を小さく即ち吸気負圧を大きくして燃料噴射を停止した状態でバルブ検査を実行することができる。この結果、EGRバルブ検査におけるEGRバルブ164の開動作や閉動作による吸気管内の圧力の変動量が大きくなるから、誤判定が抑制され、EGRバルブ164の正常動作をより適正に検査することができる。
【0032】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車によれば、エンジン22の燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過すると共にエンジン22の回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref未満のときに、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときにはEGRバルブ164を全閉した状態でスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefから嵩上げ開度ΔTHだけ大きくした状態とするのに対し、EGRバルブ検査の実行条件が成立しているときにはスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefとした状態でEGRバルブ検査を実行するから、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときよりスロットルバルブ124の開度を小さくエンジン22の吸気負圧を大きくして燃料噴射を停止した状態でバルブ検査を実行することができ、吸気圧センサ158からの吸気圧Pinに基づくEGRバルブ検査をより適正に実行することができる。また、エンジン22の燃料カットが行なわれたときにEGRバルブ164を全閉してスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefとすることにより、EGRバルブ検査の実行条件の成否に基づく制御を行なう前に吸気負圧をより大きくした状態とすることができるから、実行条件の成立による吸気圧Pinに基づくEGRバルブ検査を更により適正に実行することができる。さらに、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときには、スロットルバルブ124の開度を所定開度THrefよりもエンジン22の回転数Neが高くなるほど大きくなる嵩上げ開度ΔTHだけ大きくするから、エンジン22の潤滑油が燃焼室内に入り込むのを抑制し潤滑油の消費を抑制することができる。また、EGRバルブ検査を実行している最中にエンジン22の吸入空気量が所定開度THrefに対応する量より嵩上げされて吸気管内の圧力が変動することもないから、誤判定が抑制され、吸気圧Pinに基づくEGRバルブ検査をより適正に実行することができる。しかも、アクセルオフによりエンジン22の燃料カットが行なわれたときにモータMG1によりエンジン22が目標回転数Ne*でモータリングされると共にモータMG2から制動トルクが出力されて要求制動力により走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するから、エンジン22のモータリングにより吸気負圧を大きくしやすくすることができ、車両を停止させることなく走行を継続している最中にEGRバルブ検査を実行することができる。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の燃料カットが行なわれたときに所定開度THrefを目標スロットル開度TH*として設定すると共に燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過した以降にEGRバルブ検査の実行条件の成否に応じて所定開度THrefに嵩上げ開度ΔTHを加えたものや所定開度THrefを目標スロットル開度TH*として設定するものとしたが、エンジン22の燃料カットが行なわれたときに所定開度THrefに嵩上げ開度ΔTHを加えたものを目標スロットル開度TH*として設定すると共に燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過した以降にEGRバルブ検査の実行条件の成否に応じて所定開度THrefに嵩上げ開度ΔTHを加えたものや所定開度THrefを目標スロットル開度TH*として設定するものとしてもよい。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときにはエンジン22をアイドル運転するときに用いる所定開度THrefにエンジン22の回転数Neに基づく嵩上げ開度ΔTHを加えたものを目標スロットル開度TH*として設定すると共にEGRバルブ検査の実行条件が成立しているときには所定開度THrefを目標スロットル開度TH*として設定するものとしたが、EGRバルブ検査の実行条件が成立しているときには実行条件が成立していないときの目標スロットル開度TH*より小さい開度を目標スロットル開度TH*に設定するものであればよく、例えば、EGRバルブ検査の実行条件が成立していないときにはエンジン22の潤滑油の消費を最も抑制することができる開度として予め実験などにより定められた第1の所定開度を目標スロットル開度TH*に設定すると共にEGRバルブ検査の実行条件が成立しているときには第1の所定開度より小さく所定開度THrefより若干大きい第2の所定開度を目標スロットル開度TH*に設定するなどとしてもよい。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過したときにエンジン22の回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref以上のときには、所定開度THrefに嵩上げ開度ΔTHを加えたものを目標スロットル開度TH*として設定するものとしたが、所定開度THrefを目標スロットル開度TH*として設定するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の燃料カットが行なわれてからEGRバルブ検査の実行条件の成否を判定できる状態になるまでに必要な所定時間t0が経過したかを否かを判定して続く処理を実行するものとしたが、エンジン22の吸入空気量を所定開度THrefに対応する量より嵩上げすることができる程度に吸気管内の圧力が安定するのに必要な時間としてエンジン22の特性などに基づいて予め実験などにより定められた所定時間(例えば、0.8秒や1秒など)がエンジン22の燃料カットが行なわれてから経過したか否かを判定して続く処理を実行するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、EGRバルブ検査の実行を開始したときにEGRバルブ164が全閉された状態での吸気圧センサ158からの吸気圧Pinである開始閉じ時吸気圧PstaとEGRバルブ164の開度が所定開度EBrefになるようステッピングモータ163を駆動してから所定時間t1が経過したときの吸気圧Pinである開き時吸気圧PopnとEGRバルブ164が全閉されるようステッピングモータ163を駆動してから所定時間t2が経過したときの吸気圧Pinである終了閉じ時吸気圧Pendとに基づいてEGRバルブ164が正常に作動するか否かを判定するものとしたが、吸気圧センサ158からの吸気圧Pinに基づいてEGRバルブ検査を実行するものであればよく、例えば、開き時吸気圧Popnと開始閉じ時吸気圧Pstaとだけを用いてこれらの差分が閾値以上か閾値未満かによりEGRバルブ164が正常に作動するか否かを判定したり、開き時吸気圧Popnと終了閉じ時吸気圧Pendとだけを用いてこれらの差分が閾値以上か閾値未満かによりEGRバルブ164が正常に作動するか否かを判定するものとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図6の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図6における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0039】
実施例では、エンジンからの動力とモータからの動力とを用いて走行するハイブリッド自動車について説明したが、エンジンからの動力だけを用いて走行する自動車に適用するものとしてもよい。
【0040】
また、主としてエンジン22とEGRシステム160とエンジンECU24とを備える内燃機関装置を備えるものであれば、実施例と同様の制御を行なうことができるから、自動車や車両、船舶、航空機などの移動体などに搭載される内燃機関装置の形態や、建設設備などの移動しないものに組み込まれる内燃機関装置の形態としてもよい。また、こうした内燃機関装置の制御方法の形態としてもよい。
【0041】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、EGRシステム160が「排気供給手段」に相当し、吸気圧センサ158が「吸気圧検出手段」に相当し、エンジン22の燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過すると共に回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref未満のときにEGRバルブ検査の実行条件が成立していないときにはEGRバルブ164を全閉した状態でスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefから嵩上げ開度ΔTHだけ大きくした状態としEGRバルブ検査の実行条件が成立しているときにはスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefとした状態でEGRバルブ検査を実行する図3の燃料カット時制御ルーチンおよび図4のEGRバルブ検査ルーチンを実行するエンジンECU24が「制御手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当する。
【0042】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「排気供給手段」としては、EGRシステム160に限定されるものではなく、内燃機関の排気系および吸気系を接続する通路と通路に設けられたバルブとを有し、バルブを開いて排気系から吸気系に排気を供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「吸気圧検出手段」としては、吸気圧センサ158に限定されるものではなく、吸気系における吸入空気の圧力である吸気圧を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、単一の電子制御ユニットによるものに限定されるものではなく、複数の電子制御ユニットにより構成されるものとしてもよい。また、「制御手段」としては、エンジン22の燃料カットが行なわれてから所定時間t0が経過すると共に回転数変化量ΔNeの絶対値が閾値Nref未満のときにEGRバルブ検査の実行条件が成立していないときにはEGRバルブ164を全閉した状態でスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefから嵩上げ開度ΔTHだけ大きくした状態としEGRバルブ検査の実行条件が成立しているときにはスロットルバルブ124の開度を所定開度THrefとした状態でEGRバルブ検査を実行するものに限定されるものではなく、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で所定時間が経過すると共に内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のとき、排気供給手段のバルブの正常動作を検出された吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには排気供給手段のバルブを閉じた状態で内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう内燃機関と排気供給手段のバルブとを制御し、バルブ検査の実行条件が成立しているときには内燃機関のスロットル開度が第1の開度より小さい第2の開度になると共にバルブ検査が実行されるよう内燃機関と排気供給手段のバルブとを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力するものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され、3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、発電機および電動機と電力のやり取りするものであれば如何なるものとしても構わない。
【0043】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0044】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、内燃機関装置や車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例である内燃機関装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】実施例のエンジンECU24により実行される燃料カット時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】実施例のエンジンECU24により実行されるEGRバルブ検査ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】嵩上げ開度設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、129 排気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、158 吸気圧センサ、160 EGRシステム、162 EGR管、163 ステッピングモータ、164 EGRバルブ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を備える内燃機関装置であって、
前記内燃機関の排気系および吸気系を接続する通路と該通路に設けられたバルブとを有し、該バルブを開いて前記排気系から前記吸気系に排気を供給する排気供給手段と、
前記吸気系における吸入空気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、
前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で所定時間が経過すると共に前記内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のとき、前記排気供給手段のバルブの正常動作を前記検出された吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御し、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには前記内燃機関のスロットル開度が前記第1の開度より小さい第2の開度になると共に前記バルブ検査が実行されるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する制御手段と、
を備える内燃機関装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関への燃料噴射が停止されたときに前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が前記第2の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する手段である請求項1記載の内燃機関装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記内燃機関をアイドル運転するときの前記内燃機関のスロットル開度を前記第2の開度として用いると共に前記内燃機関の回転数が高くなるほど大きくなる前記内燃機関のスロットル開度を前記第1の開度として用いて前記内燃機関を制御する手段である請求項1または2記載の内燃機関装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには、前記排気供給手段のバルブを閉じた状態での前記検出された吸気圧と該バルブを閉じた状態からの該バルブの開動作後に第1の所定時間が経過したときの前記検出された吸気圧と該第1の所定時間が経過してからの該バルブの閉動作後に第2の所定時間が経過したときの前記検出された吸気圧とに基づいて前記排気供給手段のバルブが正常に作動するか否かを判定することにより前記バルブ検査が実行されるよう前記排気供給手段のバルブを制御する手段である請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の内燃機関装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の内燃機関装置と、
動力を入出力する発電機と、
車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、
前記発電機および前記電動機と電力をやり取りする蓄電手段と、
を備える車両。
【請求項6】
内燃機関と、前記内燃機関の排気系および吸気系を接続する通路と該通路に設けられたバルブとを有し該バルブを開いて前記排気系から前記吸気系に排気を供給する排気供給手段と、を備える内燃機関装置の制御方法であって、
前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で所定時間が経過すると共に前記内燃機関の回転数の変化量が所定量未満のとき、前記排気供給手段のバルブの正常動作を前記吸気系における吸入空気の圧力である吸気圧に基づいて検査するバルブ検査の実行条件が成立していないときには前記排気供給手段のバルブを閉じた状態で前記内燃機関のスロットル開度が第1の開度になるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御し、前記バルブ検査の実行条件が成立しているときには前記内燃機関のスロットル開度が前記第1の開度より小さい第2の開度になると共に前記バルブ検査が実行されるよう前記内燃機関と前記排気供給手段のバルブとを制御する、
ことを特徴とする内燃機関装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−53783(P2010−53783A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219917(P2008−219917)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】