説明

内視鏡システム及び内視鏡システムを用いた被写体の検出方法

【課題】被写体の分析精度を向上させることが可能な内視鏡システム及び内視鏡システムを用いた被写体の検出方法を提供すること。
【解決手段】被写体からの放射光又は反射光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光する光学系と、光学系で分光された光を波長領域ごとに受光し、光電変換して電気信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、電気信号に基づいて波長領域の光の強度を算出し、画素における複数の波長領域と光の強度との関係に基づいて、ハイパースペクトル解析により被写体の患部を同定するため被写体からの放射光又は反射光の成分を分析する解析部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム及び内視鏡システムを用いた被写体の検出方法に関し、ハイパースペクトル解析を適用して好適な内視鏡システム及び内視鏡システムを用いた被写体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、人体内部の腔所や内臓を観察する医療機器であり、例えば本体部に光学系を備える。内視鏡は、対象を撮影可能な挿入部の先端を体内に挿入することによって、映像を介して体内を観察することができるものや、無線を用いたカプセル型のものがある。
【0003】
また、内視鏡には、光学系からの光を受光して光を電気信号に光電変換するCCDイメージセンサを用いたものがある。内視鏡を用いた癌などの患部の観察方法として、被写体からの反射光の3種類の波長を用いて擬似RGB表示をすることによって、癌などの悪性腫瘍を可視化する方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の擬似RGB表示を用いた観察方法では、映像信号の処理が単純であり、患部を分析するためには分析精度が低いという問題があった。また、可視光領域のみを用いた分析であるため、患部の内部組織の情報を抽出することが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、被写体の分析精度を向上させることが可能な、新規かつ改良された内視鏡システム及び内視鏡システムを用いた被写体の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、被写体からの放射光又は反射光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光する光学系と、光学系で分光された光を波長領域ごとに受光し、光電変換して電気信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、電気信号に基づいて波長領域の光の強度を算出し、画素における複数の波長領域と光の強度との関係に基づいて、ハイパースペクトル解析により被写体の患部を同定するため被写体からの放射光又は反射光の成分を分析する解析部を備えることを特徴とする内視鏡システムが提供される。
【0007】
かかる構成により、光学系が、被写体からの放射光又は反射光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光し、撮像素子が、光学系で分光された光を波長領域ごとに受光し、光電変換して電気信号を生成する複数の画素を有し、解析部が、電気信号に基づいて波長領域の光の強度を算出し、画素における複数の波長領域と光の強度との関係に基づいて、ハイパースペクトル解析により被写体の患部を同定するため被写体からの放射光又は反射光の成分を分析する。その結果、被写体からの放射光又は反射光がハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光され、ハイパースペクトル解析により被写体の患部を同定するため被写体からの放射光又は反射光の成分が分析されるので、被写体の分析精度を向上させることができる。
【0008】
所定の波長領域の光の強度又は光の強度に基づいた物理量に基づいて、被写体の患部を同定するものであってもよい。また、上記光の強度又は光の強度に基づいた物理量と所定の閾値との関係によって被写体の患部を同定するものであってもよい。
【0009】
上記所定の波長領域は、赤色領域、近赤外領域又は赤外領域であってもよい。また、上記所定の波長領域は、650nm〜750nmであってもよい。
【0010】
上記波長領域が650nm〜750nmの間の光の強度又は光の強度に基づいた物理量の平均値Aと、波長領域が450nmを含む所定領域の光の強度又は光の強度に基づいた物理量Bを用いた評価関数HSを用いて被写体の癌細胞部分を同定するものであってもよい。
【数1】

【0011】
上記被写体は特定の臓器であって被写体の予め取得された癌細胞部分における複数の波長領域と光の強度との関係を表す特性と、被写体の解析対象における複数の波長領域と光の強度との関係を表す特性との類似度を算出することによって、被写体の癌細胞部分を同定するものであってもよい。また、上記被写体を類似度に基づいて表示させる表示制御部を備えたものであってもよい。
【0012】
上記光学系及び撮像素子が人体内部に挿入される挿入部の一端部に設けられたものであってもよい。また、上記光学系及び撮像素子が、人体内部に挿入され導光路を有する挿入部の一端部に対して反対の他端部に接続された本体部に設けられたものであってもよい。更に、上記光学系及び撮像素子が、人体内部に挿入されるカプセル型容器に収容されたものであってもよい。
【0013】
上記光学系は、被写体からの放射光又は反射光を分光する回折格子と、分光された光を撮像素子面上で合焦させるフォーカスレンズと、フォーカスレンズを駆動させるフォーカス駆動部とを備え、フォーカス駆動部は、回折格子で分光され撮像素子が受光した0次回折光を利用して、フォーカスレンズの駆動位置を決定するものであってもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、被写体からの放射光又は反射光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光するステップと、光学系で分光された光を波長領域ごとに受光し、光電変換して電気信号を生成するステップと、電気信号に基づいて波長領域の光の強度を算出するステップと、複数の波長領域と光の強度との関係に基づいて、ハイパースペクトル解析により被写体の患部を同定するため被写体からの放射光又は反射光の成分を分析するステップとを含むことを特徴とする内視鏡システムを用いた被写体の検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被写体の分析精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(第1の実施形態の構成)
まず、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡について説明する。図1は、本実施形態に係る内視鏡を示すブロック図である。図2は、本実施形態の分光部が設置された内視鏡先端部を示す断面図である。
【0018】
本実施形態に係る内視鏡システム100は、被写体からの放射光又は反射光を受光して、複数の波長領域ごとに分光したのち、分光された波長領域ごとの光の強度を測定する。内視鏡システム100は、波長領域ごとに得られる光の強度又は光の強度から導かれる物理量に基づいて、被写体の癌部分と正常部分とを判別できる。
【0019】
本実施形態の内視鏡システム100は、図1に示すように、分光部110と、解析部130と、表示部140とを備える。
【0020】
まず、分光部110について説明する。分光部110は、被写体からの放射光または反射光を受光して分光する。本実施形態では、例えば、400〜800nmの可視光から近赤外までの領域を使用して、分光部110がその領域を複数のバンド(波長領域)に分光する。分光部110は、例えば、回折格子分光方式を適用することができ、図1に示すように、レンズ112と、スリット114と、回折格子116と、レンズ118と、撮像素子120と、光学ステージ122と、ドライブ回路124とを備える。なお、光学系は、例えば、レンズ112と、スリット114と、回折格子116と、レンズ118から構成される。
【0021】
レンズ112は、被写体からの光が入射され、入射された光をスリット114に照射する。レンズ112は、フォーカス駆動部126によって駆動される。スリット114は、微細な幅を有する開口が設けられており、レンズ112を通過した光を絞って、回折格子116に絞られた光を照射する。スリット114は、一の方向(X軸方向)に平行なラインの光を回折格子116に照射させることができる。
【0022】
回折格子116は、例えば多数の溝が平行に等間隔で形成された基板であり、スリット114を通過したX軸方向に平行なラインの光を複数の波長領域に分光する。回折格子116は、例えば、透過型回折格子を用いることができる。なお、回折格子は、機械刻線回折格子やホログラフィック回折格子などの反射型回折格子を用いてもよい。
【0023】
レンズ118は、回折格子116で分光された光が入射される。レンズ118は、分光された光を撮像素子120に照射し、撮像素子120の撮像面に被写体からの分光された光を結像させる。
【0024】
撮像素子120は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、レンズ118を通過し撮像面に結像された光を光電変換によって電気信号に変換する。撮像素子120は、生成された電気信号をCPU132に出力する。
【0025】
上記のスリット114、回折格子116、レンズ118及び撮像素子120は、光学ステージ122に載置され、光学ステージ122上で固定される。光学ステージ122は、分光部110への光の入射方向に対して垂直方向、かつスリットの開口方向であるX軸方向に対して垂直方向(Y軸方向)に移動される。光学ステージ122を移動させ、X軸に平行なラインをY軸方向に移動させることで被写体を2次元的に走査することができる。ドライブ回路124は、光学ステージ122の移動を制御する。
【0026】
フォーカス駆動部126は、例えばアクチュエータであり、レンズ112を駆動させる。フォーカス駆動部126は、回折格子116を透過して分光された光のうち0次回折光が撮像素子120面上で合焦しているかを判断し、撮像素子120面上で合焦するようにレンズ112を駆動させる。このように、光学系がフォーカス駆動部126を有することによって、鮮明な被写体の像を得ることができる。
【0027】
分光部110は、例えば図2に示すように、人体内部に挿入される挿入部170の一端部に設けられる。挿入部170内には、分光部110とCPU132を接続する信号線160が延在する。なお、図2に示すように、分光部110と並列して、通常用いられる受光部150を設けてもよい。受光部150は、可視光を用いた解析に使用することができる。
【0028】
なお、分光部110は、上記実施形態で回折格子116を備えるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、入射した光をスペクトル分解することができるプリズムを備えるとしてもよい。
【0029】
次に、解析部130について説明する。解析部130は、撮像素子120が出力した電気信号に基づいて、被写体からの光の成分分析、光の強度などの物理量の2次元平面における分布の算出などを行う。解析部130は、CPU132と、HSD記録部134と、スペクトル空間演算部136と、画像分類演算部138とを備える。
【0030】
CPU(Central Processing Unit)132は、プログラムによって演算処理装置及び制御装置として機能し、内視鏡システム100内に設けられた各構成要素の処理を制御することができる。CPU132は、撮像素子120で生成された電気信号を受信し、ハイパースペクトルデータ(HSD)としてHSD記録部134に被写体のスペクトルデータを記録させる。
【0031】
HSD記録部134は、被写体のスペクトルデータをHSDとして記録する。HSDは、例えば、640×800ピクセルの画像領域を有しており、それぞれのピクセルごとに複数のバンド(波長領域)のスペクトル情報が含まれている。即ち、各ピクセルは(x,y,λ)の3次元のデータセットを有する。ここで、x、yは画像平面の位置を表し、λは波長を表す。そして、ピクセルごとのスペクトル情報は、個々に読み出しが可能である。
【0032】
スペクトル空間演算部136は、撮像素子130から出力された電気信号に基づいて各ピクセルの画像平面の位置(x,y)を算出する。また、スペクトル空間演算部136は、ピクセルの画像平面の位置(x,y)と、波長λとの対応付けを行う。
【0033】
画像分類演算部138は、各ピクセルの(x,y,λ)の3次元のデータセットに基づいて、複数の波長領域ごとに画像平面上の物理量の分布を算出する。
【0034】
表示部140は、解析部130で算出された結果を視覚的に表示することができる。表示部140は、例えば、ディスプレイ142と、外部出力144などを備える。表示部140は、複数の波長領域ごとに画像平面上の物理量(光の強度)の分布などを表示することができる。
【0035】
(第1の実施形態の動作)
次に、図3を参照して、本実施形態に内視鏡システム100の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る内視鏡の動作を示すフローチャートである。
【0036】
まず、撮影対象、例えば特定の臓器の映像をレンズ112に取り込む(ステップS11)。このとき、レンズ112を透過した光はスリット114に照射する。スリット114は所定の位置(Y=y)にあるため、回折格子116はスリット114を通過したライン(X軸方向)の光を波長方向に分光する(ステップS12)。撮像素子120は、所定の位置(Y=y)のラインの分光された光を受光し、その光から生成された電気信号をCPU132に出力する。
【0037】
HSD記録部134は、スリット114の所定位置(Y=y)でのX軸方向位置xと波長領域の値λとを対応付けて記録する(ステップS13)。次に、光学ステージ122をy軸方向に移動させる(ステップS14)。そして、上述したステップS11からステップS14を繰り返して、スリットの所定位置がY=y〜yまでのX軸方向位置xと波長領域の値λを(x,y,λ)のデータセットとして蓄積していく(ステップS15)。
【0038】
そして、蓄積されたハイパースペクトルデータ(x,y,λ)を用いることで、各λに対応する(x,y)画像を再構成することができる(ステップS16)。例えば、図4では、X軸方向とY軸方向に配列される画素を示し、各画素において波長領域と光の強度の関係からなるスペクトル情報が含まれることを示している。また、図5に示すように、各波長領域λにおける光の強度の平面上の分布を表示することができる。図5では、波長領域λが400nmから800nmの間の任意の波長領域に対応する平面分布を示している。また、図5では、任意の波長領域の平面分布を合成できることを説明している。任意の波長領域の平面分布を合成することで、表示部140に確度の高い表示を行うことが可能となる。なお、図4及び図5は、ハイパースペクトルデータの定義を示す説明図である。
【0039】
次に、本実施形態の内視鏡システム100を用いた癌部の検出方法について説明する。
【0040】
第1の検出方法では、癌細胞部と正常細胞部との間の光の強度の差や比率を用いた評価関数を用いて対象物の任意の位置が癌であるか否かを検出することができる。
【0041】
図6〜図8には、ハイパースペクトル解析により胃癌の癌細胞部を同定した事例を示す。また、図9には、癌細胞部と正常細胞部それぞれに該当するピクセルにおけるスペクトル特性を示す。ここで、図9の縦軸は、光の強度に基づいて導かれた物理量であり、横軸は、分光した光の波長領域である。図9より、特に波長領域が650nm〜750nmにかけて癌細胞部の物理量と正常細胞部の物理量の差が顕著になることが分かった。
【0042】
従って、例えば、胃癌の癌細胞部分の評価関数HSは、下記の式で表すことができる。
【数2】

ここで、
A=650nm〜750nm間の光の強度の平均値
B=450nmの光の強度の平均値
である。
【0043】
また、
【数3】

と表すこともできる。
【0044】
上記の評価関数HSは、−1〜+1の間の値をとり、値が高いほど胃癌の癌細胞であると推論することができる。また、所定の閾値を設定することで、評価関数HSから導かれる値が閾値より高い場合は胃癌の癌細胞であると判断し、閾値より低い場合は正常細胞であると判断してもよい。
【0045】
第2の検出方法では、癌細胞との類似度を算出して、判別対象とするピクセルが癌細胞であるかを検出することができる。類似度の算出には、ベクトルのコサイン距離を用いる。
【0046】
本実施形態の内視鏡システム100が、分光部110に入射した光をnバンドの波長領域に分光できるとすると、ハイパースペクトルデータ(HSD)において1ピクセルが有するスペクトル情報HSは、n次元のベクトルで定義できる。図10(a)に、スペクトル情報HSをn次元ベクトルで表現した概念図を示す。ここで、λ(i=1,2・・・n)は、各波長領域の基準ベクトルを示し、それぞれの基準ベクトルは互いに直交しているものとする。
【0047】
スペクトル情報HSは、n次元のベクトルを用いて下記の式で表すことができる。
HS=Rλ+Rλ+・・・+Rλ
ここで、R(i=1,2・・・n)は、i番目のベクトル成分の大きさであり、具体的には、所定の波長領域の光の強度である。
【0048】
そして、スペクトル情報HSの基準ベクトルeHSは、下記の式で表すことができる。
【数4】



である。
【0049】
次に、任意の2つのピクセル相互の類似度の算出について説明する。2つのピクセルのスペクトル情報HS、HSが、それぞれn次元のベクトルであるとしたとき、類似度は、図10(b)に示すように、この2つのベクトルの角度の差であるコサイン距離cosθで求めることができる。コサイン距離cosθは、スペクトル情報HS、HSの基準ベクトルeHS1、eHS2の内積であり、下記の式によって表すことができる。
【0050】
【数5】

【0051】
算出結果は、コサイン距離cosθの値が大きいほど類似度が高いことを示す。
【0052】
例えば、癌細胞部分に該当するピクセルのスペクトル情報をHS、癌細胞であるか否かの判別対象とするピクセルのスペクトル情報をHSとする。図11〜図13には、コサイン距離を用いて癌細胞の識別を行った結果を示す。類似度が高いほど濃い網掛けで示すこととし、癌細胞部分とスペクトル情報が類似していることを表す。その結果、図11〜図13に示すように癌細胞部分を同定することができた。以上の通り、類似度算出による検出方法によれば、判別対象とする部分が癌細胞部分であるか否かを可視化して識別することができる。
【0053】
上記の通り、本発明の実施形態によれば、被写体からの放射光又は反射光がハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光され、ハイパースペクトル解析により被写体の患部を同定するため被写体からの放射光又は反射光の成分が分析されるので、被写体の分析精度を向上させることができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば、上記実施形態では、分光部が人体内部に挿入される挿入部の一端部に設けられる場合について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、分光部110がカプセル型容器270に収容されるとしてもよい。このとき、カプセル型容器270は、図14に示すように、分光部110からの電気信号を受信し、演算処理が可能なCPU232と、記憶装置としてのメモリ234と、バッテリ236と、信号を外部の解析部130などに送信する通信回路238を備えるとしてもよい。
【0056】
また、本発明は、図15に示すように、分光部110が、導光路を有し人体内部に挿入される挿入部(ファイバースコープ)274の一端部と反対の他端部に接続された本体部270に設けられるとしてもよい。このとき挿入部274は、アダプター272によって本体部270と接続される。分光部110はケーブル272内の信号線260を介して解析部130と接続される。
【0057】
また、上記実施形態では、癌細胞の検出について特に説明したが本発明はかかる例に限定されない。本発明は、人体の体腔内や内臓における患部、例えば癌以外の悪性腫瘍などの検出にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態の第1の実施形態に係る内視鏡システムを示すブロック図である。
【図2】同実施形態の分光部が設置された内視鏡先端部を示す断面図である。
【図3】同実施形態に係る内視鏡の動作を示すフローチャートである。
【図4】ハイパースペクトルデータの定義を示す説明図である。
【図5】ハイパースペクトルデータの定義を示す説明図である。
【図6】ハイパースペクトル解析により胃癌の癌細胞部を同定した事例を示す写真である。
【図7】ハイパースペクトル解析により胃癌の癌細胞部を同定した事例を示す写真である。
【図8】ハイパースペクトル解析により胃癌の癌細胞部を同定した事例を示す写真である。
【図9】癌細胞部と正常細胞部それぞれに該当するピクセルにおけるスペクトル特性を示す説明図である。
【図10】(a)n次元ベクトルで定義したスペクトル情報HSを示す概念図である。(b)コサイン距離を示す概念図である。
【図11】コサイン距離を用いて癌細胞の識別を行った結果を示す写真である。
【図12】コサイン距離を用いて癌細胞の識別を行った結果を示す写真である。
【図13】コサイン距離を用いて癌細胞の識別を行った結果を示す写真である。
【図14】本実施形態の第1の実施形態に係る内視鏡システムの変更例を示すブロック図である。
【図15】本実施形態の第1の実施形態に係る内視鏡システムの変更例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
100 内視鏡システム
110 分光部
112、118 レンズ
114 スリット
116 回折格子
120 撮像素子
122 光学ステージ
124 ドライブ回路
130 解析部
132 CPU
134 HSD記録部
136 スペクトル空間演算部
138 画像分類演算部
140 表示部
142 ディスプレイ
144 外部出力
150 受光部
160 信号線
170 挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの放射光又は反射光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光する光学系と、
前記光学系で分光された光を前記波長領域ごとに受光し、光電変換して電気信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、
前記電気信号に基づいて前記波長領域の光の強度を算出し、前記画素における前記複数の波長領域と前記光の強度との関係に基づいて、ハイパースペクトル解析により前記被写体の患部を同定するため前記被写体からの放射光又は反射光の成分を分析する解析部と、
を備えることを特徴とする、内視鏡システム。
【請求項2】
所定の前記波長領域の前記光の強度又は前記光の強度に基づいた物理量に基づいて、前記被写体の患部を同定することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記光の強度又は前記光の強度に基づいた物理量と所定の閾値との関係によって前記被写体の患部を同定することを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記所定の前記波長領域は、赤色領域、近赤外領域又は赤外領域であることを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記所定の前記波長領域は、650nm〜750nmであることを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記波長領域が650nm〜750nmの間の前記光の強度又は前記光の強度に基づいた物理量の平均値Aと、前記波長領域が450nmを含む所定領域の前記光の強度又は前記光の強度に基づいた物理量Bを用いた評価関数HSを用いて前記被写体の癌細胞部分を同定することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【数1】

【請求項7】
前記被写体は特定の臓器であって前記被写体の予め取得された癌細胞部分における前記複数の波長領域と前記光の強度との関係を表す特性と、前記被写体の解析対象における前記複数の波長領域と前記光の強度との関係を表す特性との類似度を算出することによって、前記被写体の癌細胞部分を同定することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記被写体を前記類似度に基づいて表示させる表示制御部を備えたことを特徴とする、請求項7に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記光学系及び前記撮像素子が人体内部に挿入される挿入部の一端部に設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記光学系及び前記撮像素子が、人体内部に挿入され導光路を有する挿入部の一端部に対して反対の他端部に接続された本体部に設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記光学系及び前記撮像素子が、人体内部に挿入されるカプセル型容器に収容されたことを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記光学系は、
前記被写体からの放射光又は反射光を分光する回折格子と、
前記分光された光を前記撮像素子面上で合焦させるフォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズを駆動させるフォーカス駆動部と、
を備え、
前記フォーカス駆動部は、前記回折格子で分光され前記撮像素子が受光した0次回折光を利用して、前記フォーカスレンズの駆動位置を決定することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
被写体からの放射光又は反射光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光するステップと、
前記光学系で分光された光を前記波長領域ごとに受光し、光電変換して電気信号を生成するステップと、
前記電気信号に基づいて前記波長領域の光の強度を算出するステップと、
前記複数の波長領域と前記光の強度との関係に基づいて、ハイパースペクトル解析により前記被写体の患部を同定するため前記被写体からの放射光又は反射光の成分を分析するステップと、
を含むことを特徴とする、内視鏡システムを用いた被写体の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−39280(P2009−39280A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206872(P2007−206872)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(507268813)
【Fターム(参考)】