凝縮によって得られるゲルマニウムナノワイヤの固定方法
【課題】ナノワイヤ変形現象を低減又は除去し、同時にゲルマニウムリッチナノワイヤを製造する実行容易な方法を提供する。
【解決手段】基板2は、第1シリコン層3と、第1及び第2固定領域と少なくとも1つの接続領域を含む3次元パターンを形成するシリコンゲルマニウム合金系材料からなるターゲット層1を備える。第1シリコン層3は引張応力がかかり、及び/又は、ターゲット層1は炭素原子を含む。第1シリコン層3は接続領域において除去される。接続領域のターゲット層1は、ナノワイヤ8を形成するために熱酸化される。第1シリコン層3の格子パラメータは、第1シリコン層3の除去後、サスペンデッドビームを構成する材料の格子パラメータと同一である。
【解決手段】基板2は、第1シリコン層3と、第1及び第2固定領域と少なくとも1つの接続領域を含む3次元パターンを形成するシリコンゲルマニウム合金系材料からなるターゲット層1を備える。第1シリコン層3は引張応力がかかり、及び/又は、ターゲット層1は炭素原子を含む。第1シリコン層3は接続領域において除去される。接続領域のターゲット層1は、ナノワイヤ8を形成するために熱酸化される。第1シリコン層3の格子パラメータは、第1シリコン層3の除去後、サスペンデッドビームを構成する材料の格子パラメータと同一である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルマニウム系単結晶材料で作られる少なくとも1つのサスペンデッドナノワイヤ(suspended nanowire)に関し、この方法は、順に、シリコンゲルマニウム合金系材料で作られるターゲット層により覆われた第1シリコン層を有する基板を準備し、前記ターゲット層に少なくとも1つのサスペンデッドビーム(suspended beam:懸架ビーム)を形成し、ゲルマニウム原子の凝縮により、前記サスペンデッドビームの箇所に前記ナノワイヤを形成するために、前記サスペンデッドビームを熱酸化する。
【背景技術】
【0002】
小型電子回路の性能の継続的な改良は、回路の個々の構成要素の集積密度の増加を必要とする。これまで、MOSFETトランジスタ寸法の継続的な微細化により、性能改良が実現されていた。現在、トランジスタはナノメートルサイズとなり、製造において多くの技術的困難に出会っている。電解効果トランジスタの量子効果はもはや無視できなく、従来の小型電子材料は所望の仕様を満たす特性を提供できない。従って、小型電子回路の性能を継続して改良できる代替手段か提案されている。
【0003】
今後最も有望な方法の1つは、ナノ物体、より正確に言えば半導体ナノワイヤ、を利用する。ナノワイヤは電界効果MOSトランジスタの単結晶チャネルを形成するために使用できる。
【0004】
Saraccoらによる文献「“マルチチャネル装置のためのGe凝縮技術によるサスペンデッドGeリッチナノワイヤの製造”、ECS transaction、2009年5月、サンフランシスコ」は、半導体材料で出来たナノワイヤの製造方法を記載している。これらのゲルマニウムリッチなナノワイヤは、熱酸化されたシリコンゲルマニウム合金膜の凝縮から製造される。この熱酸化の間、シリコン原子はシリコン酸化物の形成に寄与し、ゲルマニウム原子は酸化物からはね返される。このようにして、シリコン酸化物の形成により消費されないゲルマニウム原子は、ゲルマニウムリッチなシリコンゲルマニウム層か、又は純ゲルマニウム層に凝縮する。
【0005】
図1に示されるように、この実施形態では、シリコンゲルマニウム合金ターゲット層1が、SOI(silicon-on-insulator)基板2のシリコン面上に形成される。基板2は、埋め込み誘電体5により支持基板4から分離された第1シリコン層3を有する。シリコンゲルマニウム合金ターゲット層1は、第2シリコン層6及び第2シリコンゲルマニウム合金ターゲット層7により覆われる。
【0006】
図2に示されるように、シリコンゲルマニウム合金ターゲット層1、7とシリコン層3、6とがエッチングされる。そして、図3に示すように、シリコンゲルマニウム合金層が基板上方でサスペンデッドビームを形成するように、シリコン層3、6が除去される。そして、ゲルマニウム原子が凝縮してゲルマニウムリッチナノワイヤ8(図4)となるように、これらのサスペンデッドビーム1、7が熱酸化される。熱酸化が終わったときに、ナノワイヤ8はシリコン酸化層9に囲まれる。
【0007】
この製造方法は多くの利点を示し、特に、単純な方法で半導体材料から1つ以上のナノワイヤを作ることを可能にする。しかし、所望の電気特性を示すゲルマニウム系ナノワイヤを観察することはめったにない。また、従来技術と比較して、機能しない回路の割合の低い回路を得ることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ナノワイヤ変形(deformation)現象を低減又は除去し、同時にゲルマニウムリッチナノワイヤを製造する実行容易な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による方法は、第1シリコン層の除去後、ターゲット層を構成する材料の格子パラメータが前記第1シリコン層の格子パラメータと同一になるように、第1シリコン層が基板の主面に平行な面において引張応力がかけられている、及び/又は、ターゲット層が炭素原子を含むことを特徴とする。
【0010】
他の利点及び特徴は、限定しない例示のため、かつ添付の図面で示される、以下の本発明の特定の実施形態の説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図2】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図3】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図4】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図5】変形したナノワイヤを示す概略的な横断面図である。
【図6】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図7】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図8】図7に対応する3次元パターンを示す概略的な上面図である。
【図9】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図10】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図11】本発明によるサスペンデッドナノワイヤを示す概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図5に示されるように、例えば上記で参照したSaraccoらの文献に記載された方法で製造されたゲルマニウム系ナノワイヤは、変形しやすい。変形したナノワイヤは基板の他のナノワイヤ及び/又は他の素子と接触し得る。また、ナノワイヤが形成された時、サスペンデッドビームもまた変形し、従来技術を用いて製造された回路と同じくらい高い性能を有する電子回路を得ることの難しさを説明できる。
【0013】
基板2の主面は、少なくとも第1シリコン層3、シリコンゲルマニウム合金系ターゲット層1に連続して覆われ、第1シリコン層3はターゲット層1により直接覆われる。図6に示されるように、他の実施形態として、この積層体は少なくとも1つの追加(additional)シリコン層6及び少なくとも1つの追加ターゲット層7により覆うことができる。第1シリコン層3及びターゲット層1の上に、複数の追加ターゲット層及び追加シリコン層を形成することもできる。しかし、ターゲット層1、7とシリコン層3、6は交互でなければならない。各ターゲット層は、シリコンゲルマニウム合金からなり、それゆえ少なくとも大部分にシリコン原子及びゲルマニウム原子を有する。ターゲット層は、例えばボロン原子、リン原子、ヒ素原子、又は炭素原子等の他の原子を有してもよい。ターゲット層1、7とシリコン層3、6は単結晶層であり、第1シリコン層3と格子状に一致する。
【0014】
基板2は、バルク基板又は絶縁物上の半導体(SOI:semiconductor-on-insulator)基板とすることができる。第1シリコン層3は基板2の不可欠な部分を形成するか、又は基板2の主面に形成できる。従って、第1シリコン層3は基板2を構成する材料とは異なる材料で作ることができる。SOI基板の場合、第1シリコン層3は、支持基板上の絶縁材料層上に直接配置できる。
【0015】
そして、ターゲット層1に、ここではターゲット層1、7に、少なくとも1つのサスペンデッドビームを形成するために、基板2及び形成された層は、一連の技術的工程を受ける。このサスペンデッドビームは、その端部を介して基板2に連結され、中央部分はフリー(free)である。
【0016】
図7に示されるように、第1シリコン層3、シリコンゲルマニウム合金系ターゲット層1及び追加層6、7は、端部からシリコン層3にアクセスできるようにパターニングされる。好適には、エッチング方法は異方性が高く、3次元パターンは垂直な側面(flank)を示す。しかし、シリコン層のみに等方性エッチング成分を示すエッチング方法は不利ではない。
【0017】
基板2の表面に配置された層のエッチングは、あらゆる適当な技術により行うことができ、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングにより行うことができる。このエッチングは、予めパターニングされ、図7に示すパターニング後のターゲット層1、7及びシリコン層3、6のモデルとして機能するハードマスク(図示せず)によって行うこともできる。
【0018】
図8に示すように、好適な実施形態では、存在するパターン(1、7、3及び6)は、3次元パターンを形成するためにパターニングされる。3次元パターン10は、上面又は基板の主面と平行な面において特定の形状を示す。3次元パターンは、少なくとも1つの接続領域12により互いに接続された少なくとも2つの固定領域11を有する。3次元パターンは、電子回路を形成するために複数の固定領域11を接続する複数の接続領域12を有することができる。2つの固定領域11は、1つ以上の接続領域12、例えば図8のような2つの接続領域12、により互いに接続することができる。固定領域11は、1つ以上の接続領域により、いつくかの他の固定領域11に接続することもできる(図8)。
【0019】
接続領域12は、縦方向及び横方向を有する。図8では、縦方向は方向AAで表され、一方、横方向は方向BBで表される。固定領域11は、接続領域の両端に縦方向に配置される。固定領域11は、縦方向及び横方向にも存在する。横方向において、接続領域12は、縦方向における固定領域の寸法より小さい幅寸法を示す。この場合、固定領域11及び接続領域は同じ材料で形成される。
【0020】
従って、固定領域11の幅及び長さは常に接続領域12の幅より大きい。接続領域の縦寸法が接続領域12内及び/又は異なる接続領域12間において一定でない場合、固定領域11の(縦及び横の)最小寸法を決定するために、基板表面上の最大幅を考慮しなければならない。
【0021】
接続領域12のみを形成するため、存在する層をパターニングし、固定領域11を後で形成することも可能である。これらの固定領域は例えば金属材料又は後続の技術的工程に対して無反応な材料で形成できる。一旦、接続領域を形成してから、少なくとも後の固定領域11と接触する領域において、小膜厚を選択的にエッチングすることが好ましい。そのため、固定領域11が形成された時、シリコンゲルマニウム合金膜は固定領域に沈む。
【0022】
図9に示すように、横方向BBにおける接続領域12の断面では、一旦、3次元パターン10が形成され、接続領域12においてシリコン層3、6が除去される。これは、基板2上方のサスペンデッドブリッジ(suspended bridge)を形成するターゲット層1、7をもたらす。ターゲット層1、7のサスペンデッドブリッジは、ブリッジの両端に配置された固定領域11により基板上方に固定して保持される。
【0023】
シリコン層の除去は、シリコンとシリコンゲルマニウム合金との選択的エッチングにより行われる。エッチングはプラズマエッチング又は塩酸ガスエッチング又はウェットエッチングにより行うことができる。このエッチングは等方性であるため、固定領域11におけるシリコン層のエッチングも生じる。従って、ブリッジがフリーとなり、同時に固定領域11の完全性を保つように、エッチング時間が選択される。接続領域12におけるシリコン層3、6のエッチングは、接続領域の側面から行われる。固定領域11の横寸法及び縦寸法も、固定領域11に対して接続領域12のシリコン層のエッチング工程における一定のマージンを保証するように選択される。
【0024】
ターゲット層1、7にサスペンデッドブリッジを形成するために接続領域12においてシリコン層3、6が除去された後、サスペンデッドブリッジには基板2による応力はもはやない。そして、これは、サスペンデッドブリッジの材料が、一般にビームの変形、典型的には座屈、によって表される応力を緩和(relax)することを可能にする。この変形現象を防止するために、第1シリコン層3及び/又はターゲット層1、7の特性は修正される。それらの化学組成及び/又は製造方法を修正できる。ターゲット層1及び追加ターゲット層7が、緩和状態(relaxed state)の格子パラメータ(lattice parameter)がシリコンの格子パラメータより高いシリコンゲルマニウム合金で作られている限り、これらの格子パラメータを基板、すなわち第1シリコン層3、により与えられているものに対応させるために、手段を見つけなければならない。
【0025】
一般的な方法では、サスペンデッドビームが座屈により変形することを防止するために、ビームを形成する材料は緩和状態で、第1シリコン層3と同じ格子パラメータを示さなければならない。固定領域11間の距離は一定であり、ビームの格子パラメータの増加は、ビームの長さの増加をもたらし、その結果、ビームの変形をもたらす。従って、基板2の主面に平行な面において、第1シリコン層3の格子パラメータは、前記第1シリコン層3が除去された後、サスペンデッドビームを形成する材料の格子パラメータと同一でなければならない。
【0026】
第1実施形態では、第1シリコン層3は、基板の主面と平行な面において引張応力がかけられる。この応力の効果の下、基板の主面と平行な面において、第1シリコン層3の格子パラメータは、緩和(応力がない)状態の時よりも大きい。格子パラメータは、特定のシリコンゲルマニウム合金と同一になる。従来の方法では、引張応力のあるシリコン膜を製造することが可能であり、30%以下のゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム合金と同じ格子パラメータを持つシリコン膜が得られる。これらの膜は、30%引張応力シリコン膜と呼ばれる。第1シリコン層3に印加される応力及びターゲット層1、7のゲルマニウム濃度を調整することにより、異なる層の間に格子パラメータの同一性ができる。基板の主面に平行な面において、緩和状態の格子パラメータは同一であり、2つの材料間に応力場はなく、応力緩和により座屈現象を防止する。
【0027】
この第1実施形態では、第1シリコン層3は応力がかけられたSOIタイプの基板からもたらされるか、又は層3のシリコンの結晶格子の変形を与える緩和された(relaxed)ゲルマニウム基板又はシリコンゲルマニウム基板上に形成できる。応力がかけられたSOIタイプの基板の場合、第1シリコン層3は誘電材料層上に直接配置される。
【0028】
第2実施形態では、シリコンゲルマニウム炭素合金からなるターゲット1、7に炭素原子が包含される。ゲルマニウム原子がゲルマニウム原子濃度に対してほぼ比例してシリコンゲルマニウム合金の格子パラメータを増やす効果を有するのに対し、炭素原子は格子パラメータについて反対の効果を有する。従って、炭素濃度の増加に伴い、シリコンゲルマニウム炭素合金の格子パラメータは減少し、ゲルマニウム濃度は一定である。このように、ゲルマニウム濃度及び炭素濃度を調整することにより、応力のない状態のシリコンと同じ格子パラメータを示すSiGeCタイプの合金が得られる。従来の手法では、エピタキシ(epitaxy)により、約2%の最大炭素濃度が達成できる。従って、ゲルマニウム20%、炭素2%を含み、シリコンと同じ格子パラメータを示すSiGeC合金が得られる。炭素は、格子パラメータについてゲルマニウムの10倍以上の効果を有するため、応力のないシリコンと同じ格子パラメータを有するために、シリコンゲルマニウム炭素合金は、炭素濃度の10倍のゲルマニウム濃度を有する。
【0029】
この第2実施形態では、第1シリコン層3はSOIタイプの基板によってもたらされるか、又はバルクシリコン基板の上部となり得る。好適には、CMOS回路を形成するためにナノワイヤが使用される場合、SOI基板からの集積が実行される。
【0030】
1つ以上のターゲット層、例えばターゲット層1及び追加ターゲット層7、が基板上に作られる場合、これら2つの層は同じゲルマニウム濃度及び炭素濃度でなくてよい。しかし、それらは同じ格子パラメータを示す。
【0031】
これら2つの実施形態は組み合わせることができ、それゆえ、第1の応力(圧力)の加えられたシリコン層上に、ターゲットシリコンゲルマニウム炭素合金層を集積できる。SiGeC合金は大量のゲルマニウムを含み、炭素による格子パラメータの補償は第1の応力の加えられたシリコン層3の格子パラメータに一致する。
【0032】
ターゲット層1、7及び/又は第1シリコン層3への修正は、これらの層の間に存在する応力場を制限又は除去することを可能にする。従って、接続領域12では、基板の主面に平行な面において、ターゲット層1及び追加ターゲット層7の格子パラメータがシリコン層3、6の除去の前後で維持される。この格子パラメータは第1シリコン層3の格子パラメータに対応する。
【0033】
図10に示されるように、ターゲット層1、7にサスペンデッドビームが形成されると、サスペンデッドビームは熱酸化を受ける。この熱酸化は、ゲルマニウムの凝縮をもたらし、ゲルマニウム系サスペンデッドワイヤ8、すなわち純ゲルマニウム又はゲルマニウムリッチなシリコンゲルマニウム合金からなるナノワイヤ、を形成する。好適には、ターゲット層におけるゲルマニウム濃度は約30%であり、ナノワイヤにおけるゲルマニウム濃度は50%から80%の間である。ゲルマニウム系ナノワイヤ8は、(ナノワイヤ8が)内部に形成されるサスペンデッドビーム1、7と同一の縦方向を示す。従って、このように形成されたナノワイヤはゲルマニウム原子を必ず含む結晶性半導体材料からなる。それゆえ、熱酸化が行われたとき、各サスペンデッドビームはゲルマニウム原子の凝縮によりナノワイヤ8に置換される。
【0034】
酸化工程の間、シリコン酸化物を形成するために、シリコン原子の選択的な酸化が起こる。ゲルマニウム原子が酸化物の形成に関与しないため、ゲルマニウム原子はシリコン酸化物に含まれず、シリコン酸化物の外にいる。接続領域12の側面への酸素原子の追加により酸化が実施され、ゲルマニウム原子はシリコン酸化物9とシリコンゲルマニウム合金との間の接触面の発達と共にターゲット層1、7の内部へはじかれる。凝縮が起きるとき、シリコンゲルマニウム合金のゲルマニウム原子における継続的な冨化(enrichment)と、平行6面体形状半導体材料の円筒状半導体材料への変化とが存在する。従って、ナノワイヤ8のゲルマニウム濃度は対応するターゲット層におけるゲルマニウム濃度より高い。
【0035】
接続領域12が複数のターゲット層1、7を有するとき、ターゲット層当たり1つのナノワイヤ8が形成される。従って、図10に示されるように、ターゲット層1、7は、2つの異なるナノワイヤ8の形成を可能にする。
【0036】
ナノワイヤ8のサイズ、典型的にはその直径、は最初のサスペンデッドブリッジの寸法、厚み及び幅、に依存する。従って、ターゲット層1、7が異なる厚さ及び同じ幅を示す場合、結果として生じるナノワイヤは異なる直径となる。ナノワイヤ8の直径は、熱酸化工程の持続時間及び条件にも依存する。形成される酸化物が厚いほど、サスペンデッドビームの初期の直径と比較してナノワイヤは薄くなる。
【0037】
ナノワイヤ8が純ゲルマニウムからなる場合、異なるシリコンゲルマニウム合金ターゲット層1、7の間のゲルマニウム濃度のみを調節することで、ナノワイヤ8の厚みを調節することもできる。格子パラメータの同一性を維持するために、炭素濃度を調節することも可能である。
【0038】
熱酸化工程の間、固定領域11の酸化も起こり、それゆえ、シリコン酸化物による固定領域の過大な消費を防止するためにこのパラメータを考慮に入れなければならない。
【0039】
また、シリコンゲルマニウム炭素合金ターゲット層1、7の使用はゲルマニウムナノワイヤの製造に適合しない。実際、シリコンゲルマニウム炭素合金膜の酸化が起きるとき、炭素が酸素と反応し、合金から消えるということが発見される。従って、十分に酸化されたSiGeC膜から得られるナノワイヤは純ゲルマニウムナノチューブである。
【0040】
炭素原子がクラスタ(cluster)を形成するため、シリコンゲルマニウム合金系ナノチューブは炭素原子を含まないことが好ましい。これらの炭素原子クラスタは電荷キャリアの移動に不利である。これらの状況下で、シリコンゲルマニウム合金膜の凝縮は、炭素のない(carbon-free)ナノチューブを得るために完了する。2つのシリコンゲルマニウム炭素合金膜に挟まれるシリコンゲルマニウム合金だけの膜を形成することも可能である。そして、この3つの膜は、挟み込んでいる外側の2つの膜への炭素の注入を考慮した、同じ格子パラメータ、すなわち異なるゲルマニウム濃度を有することが好ましい。
【0041】
また、予測と異なり、ターゲット層をナノワイヤ8に変化させるためのターゲット層の酸化が、ナノワイヤの変形をもたらさないことが発見された。実際、ターゲット層からナノワイヤへゲルマニウムの凝縮が発生したとき、ゲルマニウム濃度が増加して、格子パラメータが増加する。従って、ターゲット層1、7の周囲に形成されるシリコン酸化物はあらゆる変形を防止するが、ビーム及び後のナノワイヤ(future nanowire)の変形は熱酸化工程で予期される。従って、熱酸化工程の後、接続領域において変形されていないターゲット層1、7を得ることは、縦軸を基板の主面に平行に維持するナノワイヤをもたらす。
【0042】
図11に示されるように、上述した方法は基板2の表面に平行なナノワイヤ8を得ることを可能にする。これらのナノワイヤは固定領域11により浮遊状態に維持され、2つのナノワイヤ間の垂直距離は、2つの対応するターゲット層1、7の間に構成されるシリコン膜6の厚みによって決まる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルマニウム系単結晶材料で作られる少なくとも1つのサスペンデッドナノワイヤ(suspended nanowire)に関し、この方法は、順に、シリコンゲルマニウム合金系材料で作られるターゲット層により覆われた第1シリコン層を有する基板を準備し、前記ターゲット層に少なくとも1つのサスペンデッドビーム(suspended beam:懸架ビーム)を形成し、ゲルマニウム原子の凝縮により、前記サスペンデッドビームの箇所に前記ナノワイヤを形成するために、前記サスペンデッドビームを熱酸化する。
【背景技術】
【0002】
小型電子回路の性能の継続的な改良は、回路の個々の構成要素の集積密度の増加を必要とする。これまで、MOSFETトランジスタ寸法の継続的な微細化により、性能改良が実現されていた。現在、トランジスタはナノメートルサイズとなり、製造において多くの技術的困難に出会っている。電解効果トランジスタの量子効果はもはや無視できなく、従来の小型電子材料は所望の仕様を満たす特性を提供できない。従って、小型電子回路の性能を継続して改良できる代替手段か提案されている。
【0003】
今後最も有望な方法の1つは、ナノ物体、より正確に言えば半導体ナノワイヤ、を利用する。ナノワイヤは電界効果MOSトランジスタの単結晶チャネルを形成するために使用できる。
【0004】
Saraccoらによる文献「“マルチチャネル装置のためのGe凝縮技術によるサスペンデッドGeリッチナノワイヤの製造”、ECS transaction、2009年5月、サンフランシスコ」は、半導体材料で出来たナノワイヤの製造方法を記載している。これらのゲルマニウムリッチなナノワイヤは、熱酸化されたシリコンゲルマニウム合金膜の凝縮から製造される。この熱酸化の間、シリコン原子はシリコン酸化物の形成に寄与し、ゲルマニウム原子は酸化物からはね返される。このようにして、シリコン酸化物の形成により消費されないゲルマニウム原子は、ゲルマニウムリッチなシリコンゲルマニウム層か、又は純ゲルマニウム層に凝縮する。
【0005】
図1に示されるように、この実施形態では、シリコンゲルマニウム合金ターゲット層1が、SOI(silicon-on-insulator)基板2のシリコン面上に形成される。基板2は、埋め込み誘電体5により支持基板4から分離された第1シリコン層3を有する。シリコンゲルマニウム合金ターゲット層1は、第2シリコン層6及び第2シリコンゲルマニウム合金ターゲット層7により覆われる。
【0006】
図2に示されるように、シリコンゲルマニウム合金ターゲット層1、7とシリコン層3、6とがエッチングされる。そして、図3に示すように、シリコンゲルマニウム合金層が基板上方でサスペンデッドビームを形成するように、シリコン層3、6が除去される。そして、ゲルマニウム原子が凝縮してゲルマニウムリッチナノワイヤ8(図4)となるように、これらのサスペンデッドビーム1、7が熱酸化される。熱酸化が終わったときに、ナノワイヤ8はシリコン酸化層9に囲まれる。
【0007】
この製造方法は多くの利点を示し、特に、単純な方法で半導体材料から1つ以上のナノワイヤを作ることを可能にする。しかし、所望の電気特性を示すゲルマニウム系ナノワイヤを観察することはめったにない。また、従来技術と比較して、機能しない回路の割合の低い回路を得ることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ナノワイヤ変形(deformation)現象を低減又は除去し、同時にゲルマニウムリッチナノワイヤを製造する実行容易な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による方法は、第1シリコン層の除去後、ターゲット層を構成する材料の格子パラメータが前記第1シリコン層の格子パラメータと同一になるように、第1シリコン層が基板の主面に平行な面において引張応力がかけられている、及び/又は、ターゲット層が炭素原子を含むことを特徴とする。
【0010】
他の利点及び特徴は、限定しない例示のため、かつ添付の図面で示される、以下の本発明の特定の実施形態の説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図2】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図3】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図4】従来技術による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図5】変形したナノワイヤを示す概略的な横断面図である。
【図6】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図7】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図8】図7に対応する3次元パターンを示す概略的な上面図である。
【図9】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図10】本発明による製造方法の工程を示す概略的な横断面図である。
【図11】本発明によるサスペンデッドナノワイヤを示す概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図5に示されるように、例えば上記で参照したSaraccoらの文献に記載された方法で製造されたゲルマニウム系ナノワイヤは、変形しやすい。変形したナノワイヤは基板の他のナノワイヤ及び/又は他の素子と接触し得る。また、ナノワイヤが形成された時、サスペンデッドビームもまた変形し、従来技術を用いて製造された回路と同じくらい高い性能を有する電子回路を得ることの難しさを説明できる。
【0013】
基板2の主面は、少なくとも第1シリコン層3、シリコンゲルマニウム合金系ターゲット層1に連続して覆われ、第1シリコン層3はターゲット層1により直接覆われる。図6に示されるように、他の実施形態として、この積層体は少なくとも1つの追加(additional)シリコン層6及び少なくとも1つの追加ターゲット層7により覆うことができる。第1シリコン層3及びターゲット層1の上に、複数の追加ターゲット層及び追加シリコン層を形成することもできる。しかし、ターゲット層1、7とシリコン層3、6は交互でなければならない。各ターゲット層は、シリコンゲルマニウム合金からなり、それゆえ少なくとも大部分にシリコン原子及びゲルマニウム原子を有する。ターゲット層は、例えばボロン原子、リン原子、ヒ素原子、又は炭素原子等の他の原子を有してもよい。ターゲット層1、7とシリコン層3、6は単結晶層であり、第1シリコン層3と格子状に一致する。
【0014】
基板2は、バルク基板又は絶縁物上の半導体(SOI:semiconductor-on-insulator)基板とすることができる。第1シリコン層3は基板2の不可欠な部分を形成するか、又は基板2の主面に形成できる。従って、第1シリコン層3は基板2を構成する材料とは異なる材料で作ることができる。SOI基板の場合、第1シリコン層3は、支持基板上の絶縁材料層上に直接配置できる。
【0015】
そして、ターゲット層1に、ここではターゲット層1、7に、少なくとも1つのサスペンデッドビームを形成するために、基板2及び形成された層は、一連の技術的工程を受ける。このサスペンデッドビームは、その端部を介して基板2に連結され、中央部分はフリー(free)である。
【0016】
図7に示されるように、第1シリコン層3、シリコンゲルマニウム合金系ターゲット層1及び追加層6、7は、端部からシリコン層3にアクセスできるようにパターニングされる。好適には、エッチング方法は異方性が高く、3次元パターンは垂直な側面(flank)を示す。しかし、シリコン層のみに等方性エッチング成分を示すエッチング方法は不利ではない。
【0017】
基板2の表面に配置された層のエッチングは、あらゆる適当な技術により行うことができ、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングにより行うことができる。このエッチングは、予めパターニングされ、図7に示すパターニング後のターゲット層1、7及びシリコン層3、6のモデルとして機能するハードマスク(図示せず)によって行うこともできる。
【0018】
図8に示すように、好適な実施形態では、存在するパターン(1、7、3及び6)は、3次元パターンを形成するためにパターニングされる。3次元パターン10は、上面又は基板の主面と平行な面において特定の形状を示す。3次元パターンは、少なくとも1つの接続領域12により互いに接続された少なくとも2つの固定領域11を有する。3次元パターンは、電子回路を形成するために複数の固定領域11を接続する複数の接続領域12を有することができる。2つの固定領域11は、1つ以上の接続領域12、例えば図8のような2つの接続領域12、により互いに接続することができる。固定領域11は、1つ以上の接続領域により、いつくかの他の固定領域11に接続することもできる(図8)。
【0019】
接続領域12は、縦方向及び横方向を有する。図8では、縦方向は方向AAで表され、一方、横方向は方向BBで表される。固定領域11は、接続領域の両端に縦方向に配置される。固定領域11は、縦方向及び横方向にも存在する。横方向において、接続領域12は、縦方向における固定領域の寸法より小さい幅寸法を示す。この場合、固定領域11及び接続領域は同じ材料で形成される。
【0020】
従って、固定領域11の幅及び長さは常に接続領域12の幅より大きい。接続領域の縦寸法が接続領域12内及び/又は異なる接続領域12間において一定でない場合、固定領域11の(縦及び横の)最小寸法を決定するために、基板表面上の最大幅を考慮しなければならない。
【0021】
接続領域12のみを形成するため、存在する層をパターニングし、固定領域11を後で形成することも可能である。これらの固定領域は例えば金属材料又は後続の技術的工程に対して無反応な材料で形成できる。一旦、接続領域を形成してから、少なくとも後の固定領域11と接触する領域において、小膜厚を選択的にエッチングすることが好ましい。そのため、固定領域11が形成された時、シリコンゲルマニウム合金膜は固定領域に沈む。
【0022】
図9に示すように、横方向BBにおける接続領域12の断面では、一旦、3次元パターン10が形成され、接続領域12においてシリコン層3、6が除去される。これは、基板2上方のサスペンデッドブリッジ(suspended bridge)を形成するターゲット層1、7をもたらす。ターゲット層1、7のサスペンデッドブリッジは、ブリッジの両端に配置された固定領域11により基板上方に固定して保持される。
【0023】
シリコン層の除去は、シリコンとシリコンゲルマニウム合金との選択的エッチングにより行われる。エッチングはプラズマエッチング又は塩酸ガスエッチング又はウェットエッチングにより行うことができる。このエッチングは等方性であるため、固定領域11におけるシリコン層のエッチングも生じる。従って、ブリッジがフリーとなり、同時に固定領域11の完全性を保つように、エッチング時間が選択される。接続領域12におけるシリコン層3、6のエッチングは、接続領域の側面から行われる。固定領域11の横寸法及び縦寸法も、固定領域11に対して接続領域12のシリコン層のエッチング工程における一定のマージンを保証するように選択される。
【0024】
ターゲット層1、7にサスペンデッドブリッジを形成するために接続領域12においてシリコン層3、6が除去された後、サスペンデッドブリッジには基板2による応力はもはやない。そして、これは、サスペンデッドブリッジの材料が、一般にビームの変形、典型的には座屈、によって表される応力を緩和(relax)することを可能にする。この変形現象を防止するために、第1シリコン層3及び/又はターゲット層1、7の特性は修正される。それらの化学組成及び/又は製造方法を修正できる。ターゲット層1及び追加ターゲット層7が、緩和状態(relaxed state)の格子パラメータ(lattice parameter)がシリコンの格子パラメータより高いシリコンゲルマニウム合金で作られている限り、これらの格子パラメータを基板、すなわち第1シリコン層3、により与えられているものに対応させるために、手段を見つけなければならない。
【0025】
一般的な方法では、サスペンデッドビームが座屈により変形することを防止するために、ビームを形成する材料は緩和状態で、第1シリコン層3と同じ格子パラメータを示さなければならない。固定領域11間の距離は一定であり、ビームの格子パラメータの増加は、ビームの長さの増加をもたらし、その結果、ビームの変形をもたらす。従って、基板2の主面に平行な面において、第1シリコン層3の格子パラメータは、前記第1シリコン層3が除去された後、サスペンデッドビームを形成する材料の格子パラメータと同一でなければならない。
【0026】
第1実施形態では、第1シリコン層3は、基板の主面と平行な面において引張応力がかけられる。この応力の効果の下、基板の主面と平行な面において、第1シリコン層3の格子パラメータは、緩和(応力がない)状態の時よりも大きい。格子パラメータは、特定のシリコンゲルマニウム合金と同一になる。従来の方法では、引張応力のあるシリコン膜を製造することが可能であり、30%以下のゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム合金と同じ格子パラメータを持つシリコン膜が得られる。これらの膜は、30%引張応力シリコン膜と呼ばれる。第1シリコン層3に印加される応力及びターゲット層1、7のゲルマニウム濃度を調整することにより、異なる層の間に格子パラメータの同一性ができる。基板の主面に平行な面において、緩和状態の格子パラメータは同一であり、2つの材料間に応力場はなく、応力緩和により座屈現象を防止する。
【0027】
この第1実施形態では、第1シリコン層3は応力がかけられたSOIタイプの基板からもたらされるか、又は層3のシリコンの結晶格子の変形を与える緩和された(relaxed)ゲルマニウム基板又はシリコンゲルマニウム基板上に形成できる。応力がかけられたSOIタイプの基板の場合、第1シリコン層3は誘電材料層上に直接配置される。
【0028】
第2実施形態では、シリコンゲルマニウム炭素合金からなるターゲット1、7に炭素原子が包含される。ゲルマニウム原子がゲルマニウム原子濃度に対してほぼ比例してシリコンゲルマニウム合金の格子パラメータを増やす効果を有するのに対し、炭素原子は格子パラメータについて反対の効果を有する。従って、炭素濃度の増加に伴い、シリコンゲルマニウム炭素合金の格子パラメータは減少し、ゲルマニウム濃度は一定である。このように、ゲルマニウム濃度及び炭素濃度を調整することにより、応力のない状態のシリコンと同じ格子パラメータを示すSiGeCタイプの合金が得られる。従来の手法では、エピタキシ(epitaxy)により、約2%の最大炭素濃度が達成できる。従って、ゲルマニウム20%、炭素2%を含み、シリコンと同じ格子パラメータを示すSiGeC合金が得られる。炭素は、格子パラメータについてゲルマニウムの10倍以上の効果を有するため、応力のないシリコンと同じ格子パラメータを有するために、シリコンゲルマニウム炭素合金は、炭素濃度の10倍のゲルマニウム濃度を有する。
【0029】
この第2実施形態では、第1シリコン層3はSOIタイプの基板によってもたらされるか、又はバルクシリコン基板の上部となり得る。好適には、CMOS回路を形成するためにナノワイヤが使用される場合、SOI基板からの集積が実行される。
【0030】
1つ以上のターゲット層、例えばターゲット層1及び追加ターゲット層7、が基板上に作られる場合、これら2つの層は同じゲルマニウム濃度及び炭素濃度でなくてよい。しかし、それらは同じ格子パラメータを示す。
【0031】
これら2つの実施形態は組み合わせることができ、それゆえ、第1の応力(圧力)の加えられたシリコン層上に、ターゲットシリコンゲルマニウム炭素合金層を集積できる。SiGeC合金は大量のゲルマニウムを含み、炭素による格子パラメータの補償は第1の応力の加えられたシリコン層3の格子パラメータに一致する。
【0032】
ターゲット層1、7及び/又は第1シリコン層3への修正は、これらの層の間に存在する応力場を制限又は除去することを可能にする。従って、接続領域12では、基板の主面に平行な面において、ターゲット層1及び追加ターゲット層7の格子パラメータがシリコン層3、6の除去の前後で維持される。この格子パラメータは第1シリコン層3の格子パラメータに対応する。
【0033】
図10に示されるように、ターゲット層1、7にサスペンデッドビームが形成されると、サスペンデッドビームは熱酸化を受ける。この熱酸化は、ゲルマニウムの凝縮をもたらし、ゲルマニウム系サスペンデッドワイヤ8、すなわち純ゲルマニウム又はゲルマニウムリッチなシリコンゲルマニウム合金からなるナノワイヤ、を形成する。好適には、ターゲット層におけるゲルマニウム濃度は約30%であり、ナノワイヤにおけるゲルマニウム濃度は50%から80%の間である。ゲルマニウム系ナノワイヤ8は、(ナノワイヤ8が)内部に形成されるサスペンデッドビーム1、7と同一の縦方向を示す。従って、このように形成されたナノワイヤはゲルマニウム原子を必ず含む結晶性半導体材料からなる。それゆえ、熱酸化が行われたとき、各サスペンデッドビームはゲルマニウム原子の凝縮によりナノワイヤ8に置換される。
【0034】
酸化工程の間、シリコン酸化物を形成するために、シリコン原子の選択的な酸化が起こる。ゲルマニウム原子が酸化物の形成に関与しないため、ゲルマニウム原子はシリコン酸化物に含まれず、シリコン酸化物の外にいる。接続領域12の側面への酸素原子の追加により酸化が実施され、ゲルマニウム原子はシリコン酸化物9とシリコンゲルマニウム合金との間の接触面の発達と共にターゲット層1、7の内部へはじかれる。凝縮が起きるとき、シリコンゲルマニウム合金のゲルマニウム原子における継続的な冨化(enrichment)と、平行6面体形状半導体材料の円筒状半導体材料への変化とが存在する。従って、ナノワイヤ8のゲルマニウム濃度は対応するターゲット層におけるゲルマニウム濃度より高い。
【0035】
接続領域12が複数のターゲット層1、7を有するとき、ターゲット層当たり1つのナノワイヤ8が形成される。従って、図10に示されるように、ターゲット層1、7は、2つの異なるナノワイヤ8の形成を可能にする。
【0036】
ナノワイヤ8のサイズ、典型的にはその直径、は最初のサスペンデッドブリッジの寸法、厚み及び幅、に依存する。従って、ターゲット層1、7が異なる厚さ及び同じ幅を示す場合、結果として生じるナノワイヤは異なる直径となる。ナノワイヤ8の直径は、熱酸化工程の持続時間及び条件にも依存する。形成される酸化物が厚いほど、サスペンデッドビームの初期の直径と比較してナノワイヤは薄くなる。
【0037】
ナノワイヤ8が純ゲルマニウムからなる場合、異なるシリコンゲルマニウム合金ターゲット層1、7の間のゲルマニウム濃度のみを調節することで、ナノワイヤ8の厚みを調節することもできる。格子パラメータの同一性を維持するために、炭素濃度を調節することも可能である。
【0038】
熱酸化工程の間、固定領域11の酸化も起こり、それゆえ、シリコン酸化物による固定領域の過大な消費を防止するためにこのパラメータを考慮に入れなければならない。
【0039】
また、シリコンゲルマニウム炭素合金ターゲット層1、7の使用はゲルマニウムナノワイヤの製造に適合しない。実際、シリコンゲルマニウム炭素合金膜の酸化が起きるとき、炭素が酸素と反応し、合金から消えるということが発見される。従って、十分に酸化されたSiGeC膜から得られるナノワイヤは純ゲルマニウムナノチューブである。
【0040】
炭素原子がクラスタ(cluster)を形成するため、シリコンゲルマニウム合金系ナノチューブは炭素原子を含まないことが好ましい。これらの炭素原子クラスタは電荷キャリアの移動に不利である。これらの状況下で、シリコンゲルマニウム合金膜の凝縮は、炭素のない(carbon-free)ナノチューブを得るために完了する。2つのシリコンゲルマニウム炭素合金膜に挟まれるシリコンゲルマニウム合金だけの膜を形成することも可能である。そして、この3つの膜は、挟み込んでいる外側の2つの膜への炭素の注入を考慮した、同じ格子パラメータ、すなわち異なるゲルマニウム濃度を有することが好ましい。
【0041】
また、予測と異なり、ターゲット層をナノワイヤ8に変化させるためのターゲット層の酸化が、ナノワイヤの変形をもたらさないことが発見された。実際、ターゲット層からナノワイヤへゲルマニウムの凝縮が発生したとき、ゲルマニウム濃度が増加して、格子パラメータが増加する。従って、ターゲット層1、7の周囲に形成されるシリコン酸化物はあらゆる変形を防止するが、ビーム及び後のナノワイヤ(future nanowire)の変形は熱酸化工程で予期される。従って、熱酸化工程の後、接続領域において変形されていないターゲット層1、7を得ることは、縦軸を基板の主面に平行に維持するナノワイヤをもたらす。
【0042】
図11に示されるように、上述した方法は基板2の表面に平行なナノワイヤ8を得ることを可能にする。これらのナノワイヤは固定領域11により浮遊状態に維持され、2つのナノワイヤ間の垂直距離は、2つの対応するターゲット層1、7の間に構成されるシリコン膜6の厚みによって決まる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム系単結晶材料からなる少なくとも1つのサスペンデッドナノワイヤ(8)を形成する方法であって、順に、
シリコンゲルマニウム合金系材料からなるターゲット層(1)に覆われた第1シリコン層(3)を有する基板(2)を準備し、
前記ターゲット層(1)に少なくとも1つのサスペンデッドビームを形成し、
ゲルマニウム原子の凝縮により前記サスペンデッドビームの箇所に前記ナノワイヤ(8)を形成するために前記サスペンデッドビームを熱酸化し、
前記基板(2)の主面に平行な面において、前記第1シリコン層(3)が除去された後に、前記第1シリコン層(3)の格子パラメータが前記サスペンデッドビームを構成する材料の格子パラメータと同一であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ターゲット層(1)は炭素原子を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲット層(1)におけるゲルマニウム濃度は炭素濃度の10倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1シリコン層(3)は前記基板(2)の前記主面に平行な面において引張応力がかけられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基板(2)はSOI(silicon-on-insulator)基板であり、第1シリコン層(3)は誘電体上に直接配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記基板(2)は少なくとも1つの追加ターゲット層(7)及び追加シリコン層(6)を有し、前記基板(2)は前記ターゲット層(1、7)と前記シリコン層(3、6)とを交互に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ターゲット層(1)及び前記追加ターゲット層(7)は異なるゲルマニウム濃度及び炭素濃度を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サスペンデッドビームの形成は、前記基板(2)の主面に平行な面において、少なくとも1つの接続領域(12)により互いに接続される少なくとも2つの固定領域(11)を有する3次元パターンを形成するための前記ターゲット層(1、7)及びシリコン層(3、6)のパターニングと、前記接続領域における前記第1シリコン層(3)の除去とにより達成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記3次元パターン(10)は、複数の接続領域(12)を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
横方向において、前記接続領域(12)は前記固定領域(11)の縦寸法及び横寸法より小さい寸法を示し、前記固定領域(11)及び接続領域は同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項1】
ゲルマニウム系単結晶材料からなる少なくとも1つのサスペンデッドナノワイヤ(8)を形成する方法であって、順に、
シリコンゲルマニウム合金系材料からなるターゲット層(1)に覆われた第1シリコン層(3)を有する基板(2)を準備し、
前記ターゲット層(1)に少なくとも1つのサスペンデッドビームを形成し、
ゲルマニウム原子の凝縮により前記サスペンデッドビームの箇所に前記ナノワイヤ(8)を形成するために前記サスペンデッドビームを熱酸化し、
前記基板(2)の主面に平行な面において、前記第1シリコン層(3)が除去された後に、前記第1シリコン層(3)の格子パラメータが前記サスペンデッドビームを構成する材料の格子パラメータと同一であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ターゲット層(1)は炭素原子を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲット層(1)におけるゲルマニウム濃度は炭素濃度の10倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1シリコン層(3)は前記基板(2)の前記主面に平行な面において引張応力がかけられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基板(2)はSOI(silicon-on-insulator)基板であり、第1シリコン層(3)は誘電体上に直接配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記基板(2)は少なくとも1つの追加ターゲット層(7)及び追加シリコン層(6)を有し、前記基板(2)は前記ターゲット層(1、7)と前記シリコン層(3、6)とを交互に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ターゲット層(1)及び前記追加ターゲット層(7)は異なるゲルマニウム濃度及び炭素濃度を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サスペンデッドビームの形成は、前記基板(2)の主面に平行な面において、少なくとも1つの接続領域(12)により互いに接続される少なくとも2つの固定領域(11)を有する3次元パターンを形成するための前記ターゲット層(1、7)及びシリコン層(3、6)のパターニングと、前記接続領域における前記第1シリコン層(3)の除去とにより達成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記3次元パターン(10)は、複数の接続領域(12)を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
横方向において、前記接続領域(12)は前記固定領域(11)の縦寸法及び横寸法より小さい寸法を示し、前記固定領域(11)及び接続領域は同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−57543(P2011−57543A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197608(P2010−197608)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】
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