説明

分岐ホースの製造方法

【課題】洗浄工程を必要とせず、簡素に分岐ホースを製造することができる分岐ホースの製造方法を提供する。
【解決手段】ホース本体成形用の中芯型2の外周面であって連結穴13を形成する穴形成部位23に封止部材3を配置する。封止部材3を配置した中芯型2を外型に設置して外型と中芯型2との間に分岐ホース1と同形状のキャビティを形成する。キャビティに成形材料を注入して、分岐ホース1を成形するとともに、連結穴13に閉塞部19を成形する。分岐ホース1のホース本体11と中芯型2との間に気体を注入しながら、連結穴13を封止部材3で封止した状態でホース本体11から中芯型2を取り去る。閉塞部19を薄肉の接続部分19aで破断させて、連結穴13から閉塞部19及び封止部材3を取り去る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース本体から分岐筒部が突出してなる分岐ホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すように、分岐ホース9は、ホース本体91の周壁91aから分岐筒部92が突出して、ホース本体91の周壁91aには分岐筒部92に連通する連結穴93が開口している。かかる分岐ホースは、例えば、自動車のエンジンルーム内などで吸気ホースとして用いられる。ホース本体91に形成されている主通路94は、吸気路を構成する。分岐筒部92は、エンジンからブローバイガスを吸気路に戻すブローバイガス通路と主通路94とをつなぐ接続部として利用できる。また、分岐筒部92は、レゾネータなどの消音器との接続部としても利用できる。
【0003】
分岐ホースを製造する方法が特許文献1に開示されている。図11に示すように、分岐筒部92とその一端を閉塞する閉塞部95とをもつインサート部品96を準備する。ホース本体をブロー成形のときに、このインサート部品96をホース本体91の外周部に接合する。その後、インサート部品96の閉塞部95をホールソーなどの穴あけ工具98で切除して、ホース本体91と分岐筒部92とを連通させる。
【特許文献1】特開平5−278100号公報(段落番号0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、インサート部品96の閉塞部95を穴あけ工具98で切除するときに、加工クズなどが出る。このため、切除の後には、分岐ホースをエアブローなどで洗浄する工程を必要とする。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、洗浄工程を必要とせず、簡素に分岐ホースを製造することができる分岐ホースの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明である分岐ホースの製造方法は、ホース本体の周壁から分岐筒部が突出してなり、前記ホース本体の前記周壁には前記分岐筒部内の分岐通路に連通する連結穴が開口している分岐ホースを製造する方法において、ホース本体成形用の中芯型の外周面における前記連結穴を形成する穴形成部位に封止部材を配置する中芯準備工程と、前記封止部材を配置した前記中芯型を、外型に設置して、該外型と前記封止部材を配置した前記中芯型との間に前記分岐ホースと同形状のホース成形用キャビティ、及び前記封止部材の表面に前記連結穴を閉塞する閉塞部を形成する閉塞部成形用キャビティを形成する型工程と、前記ホース成形用キャビティ及び前記閉塞部成形用キャビティに成形材料を注入して、前記分岐ホースを成形するとともに、前記封止部材の表面に、前記連結穴の周壁と接続する接続部分を前記連結穴の中心部分よりも薄肉とする閉塞部を成形する成形工程と、成形された前記分岐ホースから前記外型を取り去り、前記分岐ホースの前記ホース本体と前記中芯型との間に気体を注入しながら、前記連結穴を前記封止部材で封止した状態で前記ホース本体から前記中芯型を取り去る離型工程と、前記閉塞部を前記薄肉の前記接続部分で破断させて前記閉塞部を前記連結穴から取り去るとともに前記封止部材を前記連結穴から取り去ることで、前記連結穴を貫通させる穴あけ工程と、をもつことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記請求項1に係る発明によれば、分岐ホースを型成形する際に、連結穴を閉塞する閉塞部を成形している。このため、分岐ホースから外型を取り去った後に、ホース本体と中芯型との間に気体を注入するときに、気体が連結穴から分岐筒部へ漏出しない。ゆえに、中芯型とホース本体との間に気体を充満させて、中芯型からホース本体を離型することができる。
【0008】
また、中芯型からホース本体を離型した後には、閉塞部及び封止部材を取り去ることで連結穴を貫通させている。ここで、閉塞部は、連結穴の周壁に接続する接続部分が連結穴の中心部分よりも薄肉である。このため、例えば、分岐筒部から挿入したピンなどで閉塞部を押すことで、閉塞部が薄肉の接続部分で破断して、封止部材とともに容易に取り去ることができる。従って、連結穴を開口させるための穴あけ工程を簡略化できる。また、切除クズも排出されず、後工程で洗浄を行う必要もない。従って、製造工程数を削減でき、簡素に分岐ホースを製造することができる。
【0009】
また、中芯型とホース本体との間に気体を注入したときに、封止部材は、ホース本体とともに中芯型から離型する。このとき、連結穴は、閉塞部で閉塞されているだけでなく、封止部材によって閉塞部がやぶれにくくなり、連結穴から分岐筒部へ気体が漏出するおそれはない。ゆえに、中芯型とホース本体との間に気体を充満させて、ホース本体から中芯型を確実に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態において製造される分岐ホース1は、図1に示すように、ホース本体11の周壁11aから分岐筒部12が突出して、ホース本体11の周壁11aには分岐筒部12に連通する連結穴13が形成されている。ホース本体11の周壁11aの内周面における連結穴13の周縁には、リング状の溝14が形成されている。ホース本体11の周壁11aには、長手方向に伸縮する蛇腹部15が形成されている。
【0011】
分岐ホースの製造方法について説明する。まず、中芯準備工程として、図2に示すように、ホース本体成形用の中芯型2の外周面で連結穴13を形成する穴形成部位23に、封止部材3を配置する。穴形成部位23は、中芯型2の外周面に、封止部材3の内端面3b側の形状に相応するように凹状に窪んでいる。図3に示すように、封止部材3は、円板状体であり、その外端面3aの外側部分にリング状の突起部32を設けている。リング状の突起部32の径方向内側に形成された内側側面32aと径方向外側に形成された外側面32bとは、両者間の間隔が先端に向けて漸次広くなるように傾斜して、突起部32を所謂アンダーカット形状にしている。
【0012】
なお、内側側面32aと外側側面32bのいずれか一方が、先端に向けて広がるように傾斜しており、内側側面32aと外側側面32bの他方が垂直であってもよい。
【0013】
次に、型工程として、図2に示すように、第1型41と第2型42とからなる外型4を準備する。第1型41と第2型42との間には、分岐ホースの外形と同一形状をもつ空間部43が形成されている。第1型41は、分岐筒体12を形成するリング状の溝部41cと、リング状の溝部41cの内部に形成される円柱部41dとをもつ。円柱部41dの先端は、封止部材3の外端面3aに対面しており、径方向の中心部41eと、中心部41eよりも径方向外側にリング状に突出する突条部41fとをもつ。第1型41と第2型42には、空間部43を囲むように互いに接する分割面41a、42aが形成されている。第1型41と第2型42との間を開いて、この空間部43に、封止部材3を配置した中芯型2を配置する。これにより、外型4と中芯型2との間に分岐ホース1と同形状のホース成形用キャビティ40aを形成する。ホース成形用キャビティ40aにおける連結穴の周縁を形成する周縁形成部40cには、封止部材3の突起部32が突出している。封止部材3の表面は、円柱部41dの先端との間に、連結穴13を閉塞する閉塞部19を形成する閉塞部成形用キャビティ40bを形成する。
【0014】
次に、図4に示すように、成形工程として、外型4に設けられた図略のゲートから、ホース成形用キャビティ40aに、成形材料であるゴム材料6を注入、充填し、加硫硬化する。これにより、分岐ホース1が成形される。また、封止部材3の表面には、連結穴13の周壁と接続する接続部分19aを連結穴13の中心部分19bよりも薄肉とする閉塞部19が成形される。即ち、閉塞部の中心部分19bは厚肉で、接続部分19aは中心部分19bよりも薄肉とする。閉塞部19は、中心部分19bから接続部分19aに向けて漸次薄肉となる形状をもつ。接続部分19bは、連結穴13の周壁にリング状に薄肉で接続している。
【0015】
次に、離型工程として、外型4を型割りして、分岐ホース1の外周面から外型4を取り外す。次に、図5に示すように、分岐ホース1のホース本体11の長手方向の一端部に気体注入用の治具7を取り付けて、ホース本体11と中芯型2との間に気体を注入しながら、ホース本体11の中から中型2を引き抜く。気体は、空気などである。図6に示すように、分岐ホース1は、ゴムからなるため、気体の注入により、ホース本体11が径方向外側に弾性的に膨張して、中芯型2の外周面からホース本体11の内周面が離れて、中芯型2を容易に引き抜くことができる。封止部材3の突起部32は、ホース本体11の連結穴13の周縁に嵌入されている。このため、封止部材3は、連結穴13の周縁に保持され分岐ホース1とともに、中芯型2から外れる。
【0016】
次に、図7に示すように、穴あけ工程として、分岐ホース1の分岐筒部12内の分岐通路12bにピン5を挿入して、ピン5の先端で封止部材3及びその表面に形成された閉塞部19を押す。このとき、閉塞部19は、薄肉の接続部19aで容易に破断して、閉塞部19を連結穴13から取り去るとともに、外端面3aに閉塞部19が形成された封止部材3を連結穴13から取り去る。これにより、連結穴13が貫通して、ホース本体11内の主通路11bと分岐筒部12内の分岐通路12bとが、連結穴13を通じて連通する。
【0017】
第1の実施形態においては、分岐ホース1を型成形する際に、連結穴13を閉塞する閉塞部19を成形している。このため、分岐ホース1から外型4を取り去った後に、ホース本体11と中芯型2との間に気体を注入するときに、気体が連結穴13から分岐筒部12へ漏出しない。ゆえに、中芯型2とホース本体11との間に気体を充満させて、中芯型2からホース本体11を離型することができる。
【0018】
また、中芯型2からホース本体11を離型した後には、閉塞部19及び封止部材3を取り去ることで連結穴13を貫通させている。ここで、閉塞部19は、連結穴13の周壁に接続する接続部分19aが連結穴13の中心部分19bよりも薄肉である。このため、分岐筒部12から挿入したピン5で閉塞部19を押すことで、閉塞部19が薄肉の接続部分19aで破断して、封止部材3とともに容易に取り去ることができる。従って、連結穴13を開口させるための穴あけ工程を簡略化できる。また、切除クズも排出されず、後工程で洗浄を行う必要もない。従って、製造工程数を削減でき、簡素に分岐ホース1を製造することができる。
【0019】
また、中芯型2とホース本体1との間に気体を注入したときに、封止部材3は、ホース本体1とともに中芯型2から離型する。このとき、連結穴13は、閉塞部19で閉塞されているだけでなく、封止部材3によって閉塞部19がやぶれにくくなり、連結穴13から分岐筒部12へ気体が漏出するおそれはない。ゆえに、中芯型2とホース本体1との間に気体を充満させて、ホース本体1から中芯型2を確実に取り外すことができる。
【0020】
また、第1の実施形態においては、封止部材3の突起部32がリング状であるが、周方向の一カ所に突出していてもよいし、周方向に分断して複数突出していてもよい。いずれの場合にも、突起部32は、ホース成形用キャビティ40aの連結穴形成部分に突出していればよい。
【0021】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、図8、図9に示すように、封止部材3の表面に、アンダーカット形状の突起部32が設けられている。突起部32の先端は、突起部32の基端部よりも拡径して、封止部材3の直径とほぼ同じ大きさの平面部32aをもつ。封止部材3を中芯型2に配置し、外型4に設置したとき、平面部32aは、外型の円柱部41dを越えて溝部41cにまで入り込む。
【0022】
第2の実施形態に係る分岐ホースを製造するに当たっては、図9に示すように、第1の実施形態と同様に、中芯型2の連結穴形成部位23に封止部材3を配置し、これらを第1型41と第2型42とからなる外型4の中の空間部43に配置する。第1型41は、分岐筒体12を形成するリング状の溝部41cと、リング状の溝部41cの内部に形成される円柱部41dと、リング状の溝部41cの外周に形成され封止部材3の突起部32の形状に相応したリング状の凹状溝41eとをもつ。中芯型2と外型4との間には、分岐ホースと同一形状のホース成形用キャビティ40aが形成されるとともに、封止部材3の表面であって、封止部材3の突起部32の平面部32aと、外型4の円柱部41dの先端との間に、連結穴13を閉塞する閉塞部19を形成する閉塞部成形用キャビティ40bが形成される。次に、ホース成形用キャビティ40a及び閉塞部成形用キャビティ40bの中にゴム材料を注入、充填し、加硫硬化して、分岐ホース1及び閉塞部19を成形する。閉塞部19は、封止部材3の突起部32の平面部32aに形成される。封止部材3の突起部32の基端部には、ゴム材料が食い込む。その後、外型4を取り去り、中芯型2と分岐ホース1との間に空気を注入して、分岐ホース1のホース本体11を弾性的に膨張させて、中芯型2を引き抜く。封止部材3は、突起部32の基端部にゴム材料が食い込んでいるため、ホース本体11とともに中芯型2から離型する。次に、分岐筒体12の中にピンを押し込んで、閉塞部19及び封止部材3を押しだす。
【0023】
第2の実施形態においても、封止部材3の表面にアンダーカット形状の突起部32を形成している。このため、ホース本体11と中芯型2との間に気体を注入したときに、封止部材3は連結穴13を封止することができる。したがって、連結穴13から気体漏れのおそれはなく、ホース本体11と中芯型2との間に気体を充満させて、ホース本体11から中芯型2をスムーズに離型させることができる。
【0024】
また、中芯型2とホース本体1との間に気体を注入したときに、連結穴13は、閉塞部19で閉塞されているだけでなく、封止部材3によって閉塞部19がやぶれにくくなり、連結穴13から分岐筒部12へ気体が漏出するおそれはない。ゆえに、中芯型2とホース本体1との間に気体を充満させて、ホース本体1から中芯型2を確実に取り外すことができる。
【0025】
なお、第1、2の実施形態においては、成形材料としてゴム材料を用いているが、気体注入によってホース本体が径方向外側に弾性変形することができる材料であればよく、例えば、TPOなどの軟質樹脂材料でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る分岐ホースの断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る、中芯型及び封止部材を配置した外型の断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る、封止部材の正面図(a)及び、(a)のA−A矢視線断面図(b)である。
【図4】第1の実施形態に係る、成形材料を注入したキャビティの要部断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る、分岐ホースと中芯型との間に気体を注入する方法を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態に係る、分岐ホースから中芯型を引き抜く方法を示す説明図である。
【図7】第1の実施形態に係る、封止部材を連結穴から取り去る方法を示す説明図である。
【図8】第2の実施形態に係る、封止部材で連結穴が封止されている分岐ホースの要部断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る、封止部材及び中芯型を配置した外型の断面図である。
【図10】分岐ホースの斜視図である。
【図11】従来例に係る分岐ホースの製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1:分岐ホース、2:中芯型、3:封止部材、4:外型、5:ピン、6:ゴム材料、11:ホース本体、12:分岐筒部、13:連結穴、14:溝、15、17:蛇腹部、19:閉塞部、19a:接続部分、19b:中心部分、23:連結穴形成部位、3a:外端面、31:凸部、32:突起部、32a:内側側面、32b:外側側面、40a:ホース成形用キャビティ、40b:閉塞部成形用キャビティ、40c:周縁形成部、41:第1型、41c:溝部、41d:円柱部、41e:中心部、41f:突条部、42:第2型、43:空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体の周壁から分岐筒部が突出してなり、前記ホース本体の前記周壁には前記分岐筒部内の分岐通路に連通する連結穴が開口している分岐ホースを製造する方法において、
ホース本体成形用の中芯型の外周面における前記連結穴を形成する穴形成部位に封止部材を配置する中芯準備工程と、
前記封止部材を配置した前記中芯型を、外型に設置して、該外型と前記封止部材を配置した前記中芯型との間に前記分岐ホースと同形状のホース成形用キャビティ、及び前記封止部材の表面に前記連結穴を閉塞する閉塞部を形成する閉塞部成形用キャビティを形成する型工程と、
前記ホース成形用キャビティ及び前記閉塞部成形用キャビティに成形材料を注入して、前記分岐ホースを成形するとともに、前記封止部材の表面に、前記連結穴の周壁と接続する接続部分を前記連結穴の中心部分よりも薄肉とする閉塞部を成形する成形工程と、
成形された前記分岐ホースから前記外型を取り去り、前記分岐ホースの前記ホース本体と前記中芯型との間に気体を注入しながら、前記連結穴を前記封止部材で封止した状態で前記ホース本体から前記中芯型を取り去る離型工程と、
前記閉塞部を前記薄肉の前記接続部分で破断させて前記閉塞部を前記連結穴から取り去るとともに前記封止部材を前記連結穴から取り去ることで、前記連結穴を貫通させる穴あけ工程と、をもつことを特徴とする分岐ホースの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−76280(P2010−76280A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247627(P2008−247627)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】