説明

分離装置及び基板の検査装置

【課題】支持体に積層された基板の枚数が少なくなっても確実に基板を1枚ずつ搬出することができる分離装置及びこの分離装置を備え、基板の検査を容易に行うことが可能な基板の検査装置を提供する。
【解決手段】複数の基板Wが積層状態で支持された支持体20から、基板Wを1枚ずつ分離して搬出する分離装置10であって、支持体20に対して基板Wの積層方向に相対移動可能とされるとともに、基板Wの表面に吸着して基板Wを保持する吸着ヘッド30と、積層された基板Wの側面に向けてエアを噴出して積層された基板Wの一部を浮上させて分離するエア分離機構40と、支持体20に積層された基板Wの数量が一定量以下となったことを検知する数量検知部27と、数量検知部27の検知結果に応じてエア分離機構40からのエア噴射状態を調整するエア分離機構制御部13と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板を積層状態で支持する支持体から、基板を1枚ずつ分離して搬出する分離装置及びこれを用いた基板の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池として使用されるシリコン基板等は、シリコン鋳塊を薄く切断(スライス)することにより作製されており、切断された基板は積層状態でカセット容器等の支持体に支持されて搬送されている。
このようなシリコン基板においては、JIS H 0613の規定により、クラック、クロートラック、かけ、くずれ、エッジチップ、ピンホール、汚れ及びソーマーク等の検査を行うことが求められている。
【0003】
従来、このような検査は作業者の目視によって行われており、多大な労力と時間とを必要としていた。このため、これらの検査を自動で行うことが可能な検査装置が求められている。検査を自動で行うためには、積層された基板(薄板)を支持体から1枚ずつ搬出する必要がある。ところで、前述のシリコン基板等は、その表面が比較的平滑なため、積層された基板同士が密着し、単に最表面にある基板を保持しても基板を1枚ずつ搬出することは困難であった。
【0004】
そこで、積層された基板を1枚ずつ分離して搬出する分離装置として、例えば特許文献1、2に開示されているように、基板表面の中央部を押圧することによって基板を湾曲させて基板の裏面に密着した他の基板を分離し、基板表面の端部を吸着して搬出する構成のものが提案されている。
しかしながら、太陽電池用のシリコン基板は厚さが例えば150〜400μm程度と非常に薄く、かつ、脆性材料であるため、特許文献1,2に記載されているように基板を湾曲させた場合には、基板にクラック、欠け及び割れ等の欠陥が発生するおそれがあった。これらの欠陥を防止するために基板の湾曲を抑えた場合には、密着した基板を分離することができなくなってしまう。
【0005】
そこで、基板を湾曲させずに分離する分離装置として、特許文献3には、多数の吸着孔を有する吸着パッドを有し、この吸着パッドで基板を吸着して保持するとともに、エアナイフ部からエアを噴出して基板の裏面に密着した他の基板を分離して搬出するものが提案されている。
【特許文献1】特開平02−095633号公報
【特許文献2】特開2001−114434号公報
【特許文献3】特開2005−179032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エアを噴出することによって積層された基板を分離する場合、支持体に積層されている基板の数が多い状態では、安定して基板を分離することが可能となるが、支持体に積層されている基板の数が少なくなった状態では、積層されている基板もエアによって大きく位置変動することになり、基板を1枚ずつ吸着・保持して搬出することができなくなることがあった。よって、支持体に積層された基板の全てを分離装置で搬出することができないために、分離作業の効率が低下するといった問題があった。また、スライスされた基板は、積層された状態での厚さで管理されており、1枚の基板の厚さもばらつきがあるため、枚数管理を行うことはできないといった問題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、支持体に積層された基板の枚数が少なくなっても確実に基板を1枚ずつ搬出することができる分離装置及びこの分離装置を備え、基板の検査を容易に行うことが可能な基板の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するために、本発明の分離装置は、複数の基板が積層状態で支持された支持体から、前記基板を1枚ずつ分離して搬出する分離装置であって、前記支持体に対して前記基板の積層方向に相対移動可能とされるとともに、前記基板の中央部に吸着して前記基板を保持する吸着ヘッドと、積層された前記基板の側面に向けてエアを噴出して積層された基板の一部を浮上させて分離するエア分離機構と、前記支持体に積層された前記基板の数量が一定量以下となったことを検知する数量検知部と、前記数量検知部の検知結果に応じて前記エア分離機構からのエア噴射状態を調整するエア分離機構制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
この構成の分離装置においては、支持体に積層された基板の数量が一定量以下となったことを検知する数量検知部と、この数量検知部の検知結果に応じて前記エア分離機構からのエアの噴出状態を調整するエア分離機構制御部とを備えているので、支持体に積層された基板の枚数に応じてエアの噴出状態(噴出量、噴出位置等)を調整することが可能となり、基板の枚数が少なくなっても基板を1枚ずつ分離して搬出することができる。
【0010】
ここで、前記数量検知部を、前記支持体内の前記基板の重量を測定する重量センサとしてもよい。
この場合、重量センサによって支持体に積層された基板の重量を測定し、一定重量以下となった時点で、エア分離機構制御部によってエアの噴出状態(噴出量、噴出角度、噴出位置等)を調整することができる。
【0011】
また、前記数量検知部を、前記支持体内に積層された前記基板の高さを測定する高さ位置センサとしてもよい。
この場合、高さ位置センサによって支持体に積層された基板の高さを測定し、一定高さ以下となった時点で、エア分離機構制御部によってエアの噴出状態(噴出量、噴出位置等)を調整することができる。
【0012】
さらに、前記支持体に積層された基板が全て搬送されたことを検知する搬送終了検知部を備えていることが好ましい。
この場合、前述のエア分離機構制御部によってエア分離機構のエア噴出状態を調整することにより、支持体に積層された基板を全て自動で搬出することが可能となる。このため、支持体に積層された基板が全て搬送され、支持体から基板がなくなったことを検知する搬送終了検知部を備えることで、支持体への基板の補充や支持体の交換作業を遅滞なく行うことができる。
【0013】
また、本発明の基板の検査装置は、前述の分離装置を有し、複数の基板を積層状態で支持する支持体から前記基板を1枚ずつ分離して搬出し、前記基板のクラック、クロートラック、かけ、くずれ、エッジチップ、ピンホール、汚れ及びソーマークのうち少なくとも1つを検査する検査部を備えていることを特徴としている。
【0014】
この構成の基板の検査装置においては、前述の分離装置によって支持体から基板を1枚ずつ分離して搬出されるので、基板の検査を1枚ずつ確実に行うことができる。これにより、JIS H 0613の規定される基板の検査を自動で行うことが可能となり、検査作業の効率を飛躍的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持体に積層された基板の枚数が少なくなっても確実に基板を1枚ずつ搬出することができる分離装置及びこの分離装置を備え、基板の検査を容易に行うことが可能な基板の検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
図1から図4に本発明の第1の実施形態である分離装置の概略図を示す。また、図5に、この分離装置を備えた基板の検査装置を示す。
本発明の第1の実施形態である分離装置10は、太陽電池用のシリコン基板Wが複数積層されたカセット容器20からシリコン基板Wを1枚ずつ分離して搬出するものである。
【0017】
本実施形態である分離装置10は、図1に示すように、シリコン基板Wを積層状態で収容するカセット容器20と、カセット容器20に対してシリコン基板Wの積層方向(上下方向)に移動可能とされるとともにシリコン基板Wに対して対向するように位置する吸着ヘッド30と、カセット容器20に対してシリコン基板Wの積層方向(上下方向)に移動可能とされるとともにシリコン基板Wの側方部に位置するエアノズル40と、を備えている。
【0018】
カセット容器20は、積層されたシリコン基板Wを支持するものであり、図1及び図2に示すように、底部21と4つの支持壁22とを備えている。カセット容器20の4つの支持壁22は、底部21から垂直に延びるように立設されており、それぞれの支持壁22の幅方向中央部分には下方に向けて凹んだ切欠部23が形成されている。
また、カセット容器20の底部21には、収容されたシリコン基板Wを上下動させる駆動部24を備えた載置台25が配設されており、載置台25を上昇することにより、積層されたシリコン基板Wを上方へと送り出すことができるように構成されている。また、この載置台25には、カセット容器20内にシリコン基板Wが残存しているが否かを検知するための在荷センサ26が配設されている。
【0019】
そして、このカセット容器20の載置台25には、積層されたシリコン基板Wの重量を測定する重量センサ27が設けられている。この重量センサ27によって測定されたシリコン基板Wの重量は、エアノズル制御部13へと伝送される。
エアノズル制御部13は、積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となったと判断すると、制御信号をエアノズル40へと伝送し、エアノズル40の噴出状態を制御する。なお、本実施形態においては、エアノズル制御部13は、積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となった時点で、エアノズル40からのエアの噴出量を低減するように制御するとともに、エアノズル制御部13からの制御信号が後述する第2駆動軸部42にも伝送され、エアノズル40の噴出位置も調整される。
【0020】
カセット容器20に収容されるシリコン基板Wは、シリコン鋳塊を薄く切断することで作製されるものであり、本実施形態では、単結晶シリコンロッドから切断されたものである。ここで、シリコン基板Wは、図1及び図2に示すように、100〜200mm角で厚さが150〜400μmの概略正方形平板状をなしている。なお、本実施形態では、150mm角で厚さが180μmに設定されたシリコン基板Wを対象としている。
【0021】
このようなシリコン基板Wは、カセット容器20内に積層状態で収容されており、積層状態での厚さが約150mm程度とされ、800枚前後のシリコン基板Wが積層されている。ここで、シリコン基板Wの厚さにはばらつきが生じているため、正確な枚数についてはこの時点では把握できない状態である。なお、厚さを180μmに設定したものであるため、厚さが300μmを超えるようなシリコン基板Wはカセット容器20内に混在していない。
【0022】
吸着ヘッド30は、上下動可能な駆動軸部31の先端(図1において下端)に設けられており、カセット容器20内に収容されたシリコン基板Wの表面中央部に対向するように配置されている。この吸着ヘッド30は、その先端外周部からエアを噴出することで先端中央部が負圧となるように構成されており、この負圧を利用してシリコン基板Wを吸着して保持するものである。なお、本実施形態では、シリコン基板Wは吸着ヘッド30と非接触の状態で保持されるように構成されている。
また、吸着ヘッド30の後端側(図1において上端側)には、駆動軸部31に対して直交する方向に延在する支持プレート32が設けられている。この支持プレート32には、載置台25に配設された在荷センサ26に対応する在荷センサ33が配設されている。
【0023】
エアノズル40は、カセット容器20に対してシリコン基板Wの積層方向(上下方向)に移動可能とされたノズル固定部41に固定されている。
ノズル固定部41は、吸着ヘッド30の駆動軸部31と同軸状に配設された第2駆動軸部42と、この第2駆動軸部42に対して直交する方向に延在する第2支持プレート43と、この第2支持プレート43から第2駆動軸部42に対して直交する方向に延びる4つのアーム部44と、アーム部44の先端から下方に向けて延びるガイド爪部45と、を備えている。なお、このノズル固定部41は、吸着ヘッド30とは独立して上下動可能な構成とされている。
【0024】
アーム部44は、その先端がカセット容器20の支持壁22の上方に位置するように延設されており、ガイド爪部45の一部が支持壁22の切欠部23に対応するような構成とされている。
そして、ガイド爪部45の先端には、カセット容器20に積層されたシリコン基板Wの最上面位置を検出する位置センサ46と、エアノズル40とが配設されている。エアノズル40には水平方向に対して角度−30°〜30°の範囲に向けてエアが噴出されるように噴出口が設けられており、本実施形態においては、水平方向に対して斜め下方(角度−5°)に向けてエアが噴出されるように構成されている。
【0025】
位置センサ46は、積層されたシリコン基板Wのうち最も上側にあるシリコン基板Wの位置を検知し、検知結果を第2駆動軸部42の動作を制御する噴出位置制御部11に送信する。本実施形態では、積層されたシリコン基板Wのうち最も上側にあるシリコン基板Wの表面位置、つまり、積層されたシリコン基板Wの最上面位置を検知している。
また、この位置センサ46は、積層されたシリコン基板Wの最上面位置と、吸着ヘッド30によってシリコン基板Wを搬出した後の新たなシリコン基板Wの最上面位置と、を検知し、この信号を搬出枚数検知部12に送信する。
【0026】
この搬出枚数検知部12においては、位置センサ46によって検知される吸着ヘッド30でシリコン基板Wを保持する前の最上面位置と基板を保持した後の新たな基板の最上面位置とを比較することで、吸着ヘッド30によって保持されているシリコン基板Wの厚さを推定し、この厚さが所定値を超えた場合に2枚以上のシリコン基板Wが搬出されたと判断する。
【0027】
このような構成とされた本実施形態である分離装置10による基板の搬出方法について説明する。
まず、カセット容器20の載置台25が上下動することで、積層されたシリコン基板Wの最上面が支持壁22の切欠部23の下端よりも上方に位置するように調整される。
次に、図3に示すように、駆動軸部31及び第2駆動軸部42が駆動して吸着ヘッド30及びノズル固定部41が下方に移動し、吸着ヘッド30がシリコン基板Wに近接される。このとき、ノズル固定部41に配設された位置センサ46によって、積層されたシリコン基板Wのうち最も上側にあるシリコン基板Wの位置が検知され、この検知結果に基づいて噴出位置制御部11によってノズル固定部41の位置が調整され、エアノズル40の噴出位置が調整される。
【0028】
次に、エアノズル40から斜め下方に向けてエアが噴出される。これにより、積層されたシリコン基板Wうちの一部が浮上することになる。
また、このとき、吸着ヘッド30の先端外周部からもエアが噴出され、吸着ヘッド30の先端中央部が負圧状態となり、最も上に位置するシリコン基板Wが吸着ヘッド30に吸着されて保持されることになる。ここで、吸着ヘッド30に吸着されたシリコン基板W以外はエアノズル40から噴出されるエアによって下方側に押圧され、1枚のシリコン基板Wのみが吸着ヘッド30によって保持されることになる。この状態で、図4に示すように、駆動軸部31及び第2駆動軸部42が上方に移動し、シリコン基板Wが1枚ずつ搬出される。
【0029】
そして、カセット容器20内に積層されたシリコン基板Wの重量(枚数)が一定重量以下となったことが重量センサ27によって検知されると、エアノズル制御部13からエアノズル40へと制御信号が伝送され、エアノズル40からのエアの噴出量が低減されるとともにエアノズル40の噴出位置も調整される。
このようにして全てのシリコン基板Wが搬出された時点で在荷センサ26、33が反応し、カセット容器20が交換される。
【0030】
次に、この分離装置10を備えたシリコン基板Wの検査装置50について説明する。
図5に示すように、この検査装置50は、前述の分離装置10と、分離装置10によって1枚ずつに分離して搬出されたシリコン基板Wを検査する検査部51と、分離装置10から受け渡されたシリコン基板Wを搬送する搬送手段52と、を備えている。
本実施形態では、検査部51は、分離装置10の吸着ヘッド30によって保持された状態でシリコン基板Wの裏面を検査する裏面検査部53と、吸着ヘッド30から受け渡されたシリコン基板Wの表面を検査する表面検査部54とを備えており、シリコン基板Wの両面を検査可能な構成とされている。なお、この検査部51においては、シリコン基板Wのクラック、クロートラック、かけ、くずれ、エッジチップ、ピンホール、汚れ及びソーマークのうち少なくとも1つを検査するものとされている。
【0031】
このような構成とされた本実施形態である分離装置10によれば、カセット容器20内に積層されたシリコン基板Wの重量を重量センサ27によって測定し、カセット容器20内に積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となった場合には、エアノズル制御部13によってエアノズル40からのエア噴出量が低減されるとともにエアノズル40の噴出位置も調整されるので、カセット容器20内に積層されたシリコン基板Wの重量(枚数)が少なくなっても、エアノズル40から噴出されるエアによって積層されたシリコン基板Wが大きく移動することが抑えられ、シリコン基板Wを1枚ずつ分離して搬出することができる。
【0032】
さらに、カセット容器20内にシリコン基板Wがなくなったことを検知する在荷センサ26、33を備えているので、カセット容器20内のシリコン基板Wが全て搬出されたことを検知することができ、カセット容器20の交換作業を遅滞なく行うことにより、分離搬出作業を効率的に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態では、カセット容器20内に積層されたシリコン基板Wのうち最も上側にあるシリコン基板Wの位置を検出する位置センサ46と、この位置センサ46によって検知されたシリコン基板Wの位置に応じてエアノズル40の噴出位置を調整する噴出位置制御部11とを備えているので、吸着ヘッド30によって保持されたシリコン基板Wとこのシリコン基板Wの裏面に密着した他のシリコン基板Wとを分離するように、エアノズル40の噴出位置を調整することが可能となり、シリコン基板Wを確実に分離して1枚ずつ搬出することができる。
【0034】
また、エアノズル40と位置センサ46とがカセット容器20に対して上下方向に移動するノズル固定部41に配設されているので、位置センサ46で検知したシリコン基板Wの位置に応じてエアノズル40の噴出位置を確実に調整することが可能となる。
さらに、位置センサ46によって、積層されたシリコン基板Wの最上面位置と、吸着ヘッド30によってシリコン基板Wを搬出した後の新たなシリコン基板Wの最上面位置とを検知し、これらを比較して2枚以上のシリコン基板Wが搬出されたか否かを検知する搬出枚数検知部12を備えているので、2枚以上のシリコン基板Wが同時に搬出されることがなくなり、シリコン基板Wを1枚ずつ確実に検査することができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、吸着ヘッド30とシリコン基板Wとが非接触状態とされているので、シリコン基板W表面の汚染等を防止することができる。また、吸着ヘッド30の外周側にノズル固定部41のガイド爪部45が位置しているので、このガイド爪部45がシリコン基板Wのガイドの役割をなし、吸着したシリコン基板Wの水平方向の位置ズレを防止して、確実に搬出することができる。
【0036】
また、本実施形態である基板の検査装置50においては、前述の分離装置10によってカセット容器20からシリコン基板Wを1枚ずつ分離して搬出するとともに、このシリコン基板Wの裏面及び表面を検査することが可能となり、シリコン基板Wのクラック、クロートラック、かけ、くずれ、エッジチップ、ピンホール、汚れ及びソーマーク等の検査を自動で行うことができる。これにより、JIS H 0613の規定される検査作業の効率を飛躍的に向上させることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6に第2の実施形態である分離装置を示す。
本実施形態である分離装置110では、位置センサ146がカセット容器120に設けられており、カセット容器120の載置台125には、在荷センサ126と載置台125の高さ位置を検出する載置台位置センサ128とが設けられている。
【0038】
この分離装置110においては、位置センサ146によって積層されたシリコン基板Wの最上面位置が検出され、載置台位置センサ128によって載置台の高さ位置が検出され、これら位置センサ146及び載置台位置センサ128によってカセット容器120内に積層されたシリコン基板Wの高さが検知されることになる。
【0039】
位置センサ146及び載置台位置センサ128の測定値が伝送されるエアノズル制御部113においては、前述のようにして検知されたカセット容器120内に積層されたシリコン基板Wの高さが一定高さ以下になった際に、エアノズル140へと制御信号を伝送してエアの噴出状態を調整する。なお、本実施形態では、エアノズル制御部113は、積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となった時点で、エアノズル140からのエアの噴出量を低減するように制御する。
【0040】
また、この分離装置110においては、位置センサ146の信号が載置台125の駆動部124に送信され、シリコン基板Wの最上面位置が所定位置となるように構成されている。このようにしてシリコン基板Wの最上面位置が調整された後に、駆動軸部131及び第2駆動軸部142が下方に移動してエアノズル140によってシリコン基板Wが浮上分離されるとともに、吸着ヘッド130によってシリコン基板Wが吸着・保持されることになる。つまり、載置台125の駆動部124によってシリコン基板Wとエアノズル140との相対位置が変化し、エアノズル140の噴出位置が調整されるように構成されているのである。
【0041】
このような構成とされた本実施形態である分離装置110によれば、カセット容器120内に積層されたシリコン基板Wの高さを位置センサ146及び載置台位置センサ128によって検知し、カセット容器120内に積層されたシリコン基板Wの高さが一定高さ以下となった場合には、エアノズル制御部113によってエアノズル140からのエア噴出量が低減されるので、カセット容器120内に積層されたシリコン基板Wの高さ(枚数)が少なくなっても、エアノズル140から噴出されるエアによって積層されたシリコン基板Wが大きく移動することが抑えられ、シリコン基板Wを1枚ずつ分離して確実に搬出することができる。
【0042】
また、本実施形態では、シリコン基板Wに近接した場所に位置センサ146が設けられているので、カセット容器120内に積層されたシリコン基板Wの最上面位置を精度良く検知することができる。
また、載置台125を上下動させてシリコン基板Wの最上面位置を制御しているので、駆動軸部131及び第2駆動軸部142の動作を簡略化することができる。また、位置センサ146が駆動しないカセット容器120の支持壁122に固定されているので、位置センサ146の配設を容易に行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図7及び図8に第3の実施形態である分離装置を示す。
本実施形態である分離装置210においては、載置台225にカセット容器220内に積層されたシリコン基板Wの重量を測定する重量センサ227が設けられている。また、
位置センサ246がカセット容器220に設けられているとともに、エアノズル240がカセット容器220の外周側に上下方向に揺動可能に配設されている。
【0044】
そして、エアノズル制御部213は、積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となったと判断すると、制御信号をエアノズル240へと伝送し、エアノズル240の噴出状態を制御する。なお、本実施形態においては、エアノズル制御部213は、積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となった時点で、エアノズル240からのエアの噴出量を低減するように制御するとともに、エアノズル240の噴出角度も調整されるように構成されている。
【0045】
また、この分離装置210では、位置センサ246の信号が載置台225の駆動部224に送信され、シリコン基板Wの最上面位置が所定位置となるように構成されている。また、エアノズル240は支持壁222同士が交差する角部からシリコン基板Wの中心部に向けてエアを噴出するように配設されている。
さらに、本実施形態においては、吸着ヘッド230の先端にゴム部材234が配設されている。このゴム部材234はシリコン基板Wの表面に接触してシリコン基板Wの水平方向の位置ズレを防止するものである。ここで、ゴム部材234の断面積は、シリコン基板W表面の面積の0.25%以下、好ましくは0.2%以下とされている。
【0046】
この構成の分離装置210においては、エアノズル制御部213が、カセット容器220内に積層されたシリコン基板Wの重量が一定重量以下となったと判断すると、制御信号をエアノズル240へと伝送し、エアノズル240からのエアの噴出量を低減するように制御するとともにエアノズル240の噴出角度を調整するので、カセット容器220内に積層されたシリコン基板Wの重量(枚数)が少なくなっても、エアノズル240から噴出されるエアによって積層されたシリコン基板Wが大きく移動することが抑えられ、シリコン基板Wを1枚ずつ分離して確実に搬出することができる。
【0047】
また、エアノズル240がカセット容器220の外周側に配設されているので、カセット容器220に対して上下動する吸着ヘッド230の周辺構造が簡素化され、吸着ヘッド230によるシリコン基板Wの搬出動作を簡易に行うことができる。
さらに、ゴム部材234がシリコン基板Wの表面に接触しているものの、その接触面積がシリコン基板Wの表面の面積の0.25%以下となっており、シリコン基板Wの汚染を抑制することができる。また、吸着時におけるゴム部材234との接触によるシリコン基板Wの曲げ変形を抑えて割れの発生を抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、単結晶シリコンからなるシリコン基板を搬出するものとして説明したが、これに限定されることはなく、多結晶シリコンからなるシリコン基板やその他の材質からなる基板であってもよく、薄板状をなして積層状態で取り扱いされるものであればよい。
【0049】
また、エアノズル制御部を、第1の実施形態ではエアノズルのエア噴出量と噴出位置を調整し、第2の実施形態ではエアノズルのエア噴出量を調整し、第3の実施形態ではエアノズルのエア噴出量と噴出角度を調整するように構成したもので説明したが、これに限定されることはなく、エアノズルの噴出状態を調整するものであればよい。例えば、複数のエアノズルのうち一部のエアノズルにおいてエアの噴出を停止したり、エアノズル位置、噴出角度を変更したりしてもよい。
さらに、エアノズルによるエア噴出状態の調整は多段階で行っても良い。
【0050】
また、第1、第2の実施形態において、ノズル固定部が4つのアーム部を備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、アーム部の数は4つ以外であってもよい。ただし、基板の水平方向位置のガイド部としての役割を考慮した場合には、アーム部及びガイド爪部は3つ以上あることが好ましい。
【0051】
さらに、検査装置において吸着ヘッドに保持された状態でシリコン基板の裏面を検査するように構成したもので説明したが、検査部の構成は特に限定はない。基板の表面検査を行うことが可能であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態である分離装置の概略図である。
【図2】図1に示す分離装置の上面図である。
【図3】図1に示す分離装置の吸着動作を示す説明図である。
【図4】図1に示す分離装置の搬出動作を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態である基板の検査装置を示す概略説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である分離装置の概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態である分離装置の概略図である。
【図8】図7に示す分離装置の上面図である。
【符号の説明】
【0053】
10、110、210 分離装置
13、113、213 エアノズル制御部(エア分離機構制御部)
20、120、220 カセット容器(支持体)
27、227 重量センサ(数量検知部)
128 載置台位置センサ(数量検知部)
30、130、230 吸着ヘッド
40、140、240 エアノズル(エア分離機構)
41、141、241 ノズル固定部(分離機構保持部材)
146 位置センサ(数量検知部)
50 検査装置(基板の検査装置)
51 検査部
W シリコン基板(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が積層状態で支持された支持体から、前記基板を1枚ずつ分離して搬出する分離装置であって、
前記支持体に対して前記基板の積層方向に相対移動可能とされるとともに、前記基板の表面に吸着して前記基板を保持する吸着ヘッドと、
積層された前記基板の側面に向けてエアを噴出して積層された基板の一部を浮上させて分離するエア分離機構と、
前記支持体に積層された前記基板の数量が一定量以下となったことを検知する数量検知部と、
前記数量検知部の検知結果に応じて前記エア分離機構からのエア噴射状態を調整するエア分離機構制御部と、
を備えていることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記数量検知部は、前記支持体内の前記基板の重量を測定する重量センサであることを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記数量検知部は、前記支持体内に積層された前記基板の高さを測定する高さ位置センサであることを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項4】
前記支持体に積層された基板が全て搬送されたことを検知する搬送終了検知部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の分離装置を有し、複数の基板を積層状態で支持する支持体から前記基板を1枚ずつ分離して搬出し、
前記基板のクラック、クロートラック、かけ、くずれ、エッジチップ、ピンホール、汚れ及びソーマークのうち少なくとも1つを検査する検査部を備えていることを特徴とする基板の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−170644(P2009−170644A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6846(P2008−6846)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】