説明

剥離装置

【課題】より円滑に剥離液を流通させる。
【解決手段】剥離装置は、第1処理部1A及び第2処理部1Bから構成される。第1処理部1Aの処理槽10A内には、傾斜姿勢の基板Sに剥離液を供給するノズル12と、基板Sに沿って流下する剥離液を受けて排液する樋部材22とが設けられる。樋部材22の内底面は、その長手方向中間部に向かって先下がりに形成され、当該中間部には排液口が形成されている。また、樋部材22の内底面には、剥離液中に含まれる被膜を絡ませることにより排液口側への被膜の流動を抑制する複数のピンが立設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD、PDP用ガラス基板および半導体基板等の基板の製造において基板表面に形成された被膜を剥離する剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDP用ガラス基板等の製造におけるフォトリソグラフィのプロセスでは、基板表面にフォトレジストの被膜を形成し、露光、現像、エッチング等の処理を施して所望のパターンを形成し、その後、基板上に残っているフォトレジストの被膜を剥離除去することが行われる。この剥離処理を行う装置としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。この文献に記載される装置は、基板を搬送しながらその表面に有機アルカリなどの剥離液をスプレー供給することによりレジスト被膜を剥離するように構成されている。なお、剥離液は、タンク内で最適温度に温調された上で基板に供給され、その後、タンクに回収されて再使用される。
【特許文献1】特許第3699293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PDP用ガラス基板等の製造において、基板表面に形成されるレジスト被膜の厚み寸法は、多くの場合1.5μm程度(以下、便宜上、薄膜という)であるが、種々の理由から10μm程度のもの(以下、便宜上、厚膜という)が形成される場合がある。例えばエッチング媒体(酸化膜等)の厚み寸法が大きい場合や、エッチング深さが深い場合などには、エッチング工程において強力なエッチング液が長時間使用されるため、レジスト被膜へのダメージ(ピンホール等の形成)を軽減すべく厚膜が形成される場合が多い。
【0004】
ところが、このような厚膜の剥離処理では、レジスト被膜が大き目の塊として剥離される場合が多く、これが処理槽の排液口や配管内に詰まって剥離液の排液不良を起こし、あるいは循環経路中に設けられるフィルタの早期目詰まりの原因となる等、剥離液の円滑な循環を阻害する要因の一つとなっている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、剥離された被膜が排液口や配管内に詰まるといったトラブルの発生を未然に防止し、より円滑に剥離液を流通させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の剥離装置は、処理槽内で液供給手段により基板に剥離液を供給することにより基板の表面に形成された被膜を剥離する剥離装置であって、前記基板から流下した剥離液を下流側に案内する液案内部と、この液案内部に沿って配置され、前記剥離液に含まれる被膜を絡ませることにより当該被膜の流動を抑制する流動抑制部材と、が設けられているものである。
【0007】
この剥離装置によると、基板から流下した剥離液に含まれる被膜が流動抑制部材に絡まることにより、一度に多くの被膜(基板から剥離された被膜)が下流側に流れることが防止される。そのため、排液口やこれに通じる配管内に被膜が詰まるといったトラブルの発生を未然に防止することが可能となる。
【0008】
この構成において、前記液案内部は、基板から流下する剥離液を受ける樋部材を含み、前記流動抑制部材は、この樋部材の内底面に沿って設けられているのが好適であり、この場合、基板を傾斜姿勢で支持する支持手段を有するものでは、前記樋部材は、前記支持手段により支持される基板の低位側の端部の下方に設けられる。
【0009】
このように、使用後の剥離液を樋部材で受けて排液する構成によれば、被膜が流れる経路が比較的狭い範囲に限られるので、流動抑制部材を狭い範囲に設けるだけで、被膜を確実に絡ませてその流動を抑制することができる。
【0010】
なお、上記構成において、前記流動抑制部材は、回転駆動される回転体からなり、絡んだ被膜をその回転に伴い細分化するように構成されているのが好適である。
【0011】
この構成によれば、流動抑制部材(回転体)に絡まった被膜が細分化されて下流側に流れるので、大きな塊のまま被膜が下流側に流れることが有効に防止され、排液口等に被膜がより詰り難くなる。
【0012】
また、上記の装置においては、前記液案内部を経て排液される剥離液に含まれる被膜を分離する分離手段と、被膜分離後の剥離液を前記液供給手段に送液する送液手段とを備えているのが好適である。
【0013】
この構成によれば、剥離液に含まれる被膜の塊を分離、除去しながら剥離液を処理槽(液供給手段)に対して循環させることができる。そのため、汚染度の低い剥離液を繰り返し使用して基板に剥離処理を施すことができる。
【0014】
なお、上記のような装置構成によれば、一度に多くの被膜(基板から剥離された被膜)が下流側に流れることが有効に防止され、排液口や、これに通じる配管内に被膜が詰まるといったトラブルの発生を未然に防止することが可能となる。そのため、この点を利用して以下のような剥離装置を構成することができる。
【0015】
すなわち、上記の剥離装置からなる第1処理部と、この第1処理部を経た基板に対して処理槽内で剥離液を供給することによりさらに被膜の剥離処理を基板に施す第2処理部とを含み、前記第1処理部では、無機アルカリを含む剥離液を基板に供給し、第2処理部では、有機溶剤を含む剥離液を基板に供給するように構成されている剥離装置。
【0016】
この装置では、まず、無機アルカリを含む剥離液を基板に供給して被膜を膨潤させ、被膜の剥離強度を低下させることにより基板に形成された被膜の多くを塊のまま基板から脱落させる。次いで有機溶剤を含む剥離液を基板に供給することにより、基板に残った細部の被膜を溶解させて除去する。そのため、比較的厚み寸法の大きい被膜についても当該被膜を効率的に除去(剥離)することができる。なお、この装置では、第1処理部において、被膜を塊として基板から脱落させるため、排液口や、これに通じる配管内に被膜が詰まるといったトラブルの発生が懸念されるが、第1処理部は、流動抑制部材を備えた剥離装置から構成されているので、上記のようなトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0017】
この装置では、第1処理部の処理槽内に、基板を傾斜姿勢で支持する前記支持手段と、当該支持手段に支持された基板の上位側の端部に沿って剥離液を供給する前記液供給手段が設けられているのが好適であり、また、前記第2処理部の処理槽内に、剥離液をスプレー吐出することにより基板に供給する液供給手段が設けられているのが好適である。
【0018】
このような構成によれば、第1処理部では、基板からの被膜の脱落を促進させることができ、第2処理部では、細部に残った被膜に剥離液をより確実に浸透させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る基板処理装置によれば、一度に多くの被膜(基板から剥離された被膜)が下流側に流れて排液口やこれに通じる配管内に被膜が詰まるといったトラブルの発生を未然に防止することができ、その結果、より円滑に剥離液を流通させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る剥離装置を示す概略図である。同図に示す剥離装置は、レジスト被膜が形成されたPDP用ガラス基板等のガラス基板S(以下、基板Sという)、すなわちフォトレジストの被膜形成、露光、現像、エッチング等のプロセス処理を経た基板Sの表面(上面)に剥離液を供給することにより、基板Sの表面に形成された前記フォトレジストの被膜(以下、単に被膜という)を剥離する剥離処理を施すもので、大略的には、第1,第2の処理部1A,1Bから構成されており、基板Sを搬送しながらこれら処理部1A,1Bにおいて順次所定の剥離処理を基板Sに施すように構成されている。
【0022】
第1処理部1Aは、処理槽10Aと、この処理槽10Aに対して剥離液を循環させる循環系統とを含んだ構成とされている。処理槽10Aは、その内部に、基板搬送用の搬送ローラ(図示省略)と剥離液供給用のノズル12(液供給手段)等を備えており、搬送ローラの駆動により基板Sを傾斜姿勢で搬送しながら、具体的には、幅方向(基板搬送方向と直交する方向)の一方側から他方側に向かって傾斜する姿勢で基板Sを搬送しながら、その上面に剥離液を供給するように構成されている。
【0023】
ノズル12は、基板搬送方向に連続して、あるいは断続的に延びるスリット状の吐出口を有し、当該吐出口から帯状に剥離液を吐出する、所謂スリットノズルであり、傾斜姿勢で搬送される基板Sの上位側の端部に沿って剥離液を吐出するように配備されている。当実施形態では、同図に示すように基板搬送方向に長寸法を有する2本の前記ノズル12が、同方向に一列に並べて配備されている。
【0024】
なお、第1処理部1Aでは、剥離液として例えばNaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、NaCO(炭酸ナトリウム)等の無機アルカリを含む剥離液が使用される。これにより第1処理部1Aでは、基板Sに形成される被膜を膨潤させて基板Sと被膜との剥離強度を低下させ、被膜を塊のまま脱落させて基板Sから除去(剥離)するようになっている。
【0025】
剥離液の循環系統は、剥離液を貯溜するタンク14と、これに貯溜される剥離液を前記ノズル12に給送するための、ポンプ18を具備する液供給管16と、前記処理槽10Aから使用済みの剥離液を導出する第1,第2の液回収管24,25と、処理槽10Aから導出される剥離液から、これに含まれる被膜を分離、除去する分離装置26(本発明に係る分離手段に相当する)と、被膜分離後の剥離液を分離装置26から前記タンク14に戻すための、ポンプ30を具備する液戻し管28(本発明に係る送液手段に相当する)とから構成されている。
【0026】
ここで、前記第1液回収管24は、処理槽10Aの内底部に形成される排液口から導出される使用済みの剥離液を前記第2液回収管25に導入するように設けられている。処理槽10Aの内底面は前記排液口を中心とする略漏斗状に形成されており、これによって当該内底面に落下した剥離液が速やかに排液口に流れ込むようになっている。
【0027】
他方、第2液回収管25は、処理槽10A内に配備される樋部材22に接続されており、当該樋部材22に流れ込んだ使用済みの剥離液を分離装置26に案内するように設けられている。
【0028】
樋部材22は、基板Sに沿って流下する剥離液を受ける部材であり、傾斜姿勢で搬送される基板Sの下位側端部の下方位置に、少なくとも前記ノズル12に対応する領域を含むように基板搬送方向に沿って設けられている。樋部材22の内底面22aは、図2に示すように、長手方向両端部からそれぞれ中間部に向かって先下がりに形成されている。そして、内底面22aの前記中間部に第2液回収管25が接続されている。つまり、基板Sに沿って流下する剥離液を樋部材22で受けてその長手方向中間部に集め、当該中間部に形成される排液口25aから剥離液を導出しつつ前記第2液回収管25を通じて分離装置26に導入するようになっている。
【0029】
なお、樋部材22の内底面22aには、図2に示すように多数のピン23(本発明に係る流動抑制部材に相当する)が所定の配列で規則的に立設されている。これらのピン23は、剥離液に含まれる被膜を絡ませることにより被膜の流動を抑制し、これにより多くの被膜が一度に排液口25aに流れ込むのを防止するものである。各ピン23の径、高さ寸法、数、配列および断面形状等は、被膜がピン23に絡んで適度にその場に止まった後に排液口25a側に流れ込むように選定されており、これによって、ピン23に絡みついた被膜が剥離液(液体成分)そのもの流れを堰き止めることがないようになっている。
【0030】
前記分離装置26は、図1及び図3に示すように、剥離液から被膜を分離する第1槽32と、分離された被膜を溜める第2槽34と、この第2槽34に溜まった被膜を導出する、ポンプ38を具備する導出管36と、この導出管36を通じて第2槽34から導出された被膜を貯留する廃棄タンク40等を有している。
【0031】
第1槽32の上部には、図3に示すように、先下がりに傾斜してその先端が第2槽34内に至る分離プレート33が設けられており、この分離プレート33上に剥離液を注ぐように前記第2液回収管25の末端部分が配置されている。分離プレート33には、傾斜に沿った方向に延びる互いに平行なスリット状の開口部が多数形成されており、従って、第2液回収管25から分離プレート33上に剥離液が注がれると、その液体成分(剥離液)だけが前記開口部介して第1槽32内に落下し、被膜は分離プレート33に沿って第2槽34内に流れ落ちることとなる。これにより剥離液中の被膜が分離される構成となっている。なお、第1槽32には前記液戻し管28が接続されており、第1槽32に溜まった剥離液は、この液戻し管28を通じて前記タンク14に戻されるようになっている。
【0032】
一方、第2処理部1Bは、処理槽10Bと、この処理槽10Bに対して剥離液を循環させる循環系統とを含んだ構成とされている。第2処理部1Bの処理槽10Bの内部にも、基板搬送用の搬送ローラ(図示省略)と剥離液供給用のノズル42(液供給手段)等が設けられており、搬送ローラの駆動により基板Sを傾斜姿勢で搬送しながら、その上面に前記ノズル42により剥離液を供給するように構成されている。
【0033】
第2処理部1Bのノズル42は、剥離液をスプレー吐出(噴霧)する複数のノズル口を備えたスプレーノズルである。ノズル42は、基板Sの幅方向に延び、かつその長手方向に前記ノズル口が並ぶ細長の構成とされ、図1の例では、複数本のノズル42が、基板搬送方向に等間隔で互いに平行に、かつ搬送中の基板Sの上面に対して各ノズル口が一定隙間を隔てて対向するように傾斜姿勢で配備されている。なお、第2処理部1Bでは、剥離液として有機溶剤を含む剥離液が使用される。これにより第2処理部1Bでは、剥離液によって基板Sに残る被膜を溶解させて基板Sから除去(剥離)するようになっている。
【0034】
第2処理部1Bにおける剥離液の循環系統は、剥離液を貯溜するタンク44と、これに貯溜される剥離液を前記ノズル42に給送するための、ポンプ48を具備する液供給管46と、処理槽10Bから使用済みの剥離液を導出して前記タンク44に戻す液回収管45とから構成されている。
【0035】
なお、図1中、符号20,50は、第1処理部1Aの液供給管16および第2処理部1Bの液供給管46にそれぞれ設けられるフィルタであって、ノズル12,42に供給される剥離液中の異物を捕捉するように設けられている。
【0036】
次に、上記のように構成された剥離装置の作用について説明する。
【0037】
この剥離装置によると、基板搬送に伴い第1処理部1Aの処理槽10Aに基板Sが搬入され、これが図外のセンサにより検知されると、ポンプ18の作動により液供給管16を通じて剥離液がノズル12に給送され、これによって傾斜姿勢で搬送される基板Sの上位側の端部に対して剥離液が吐出される。基板Sに供給された剥離液は、基板Sの表面に液膜を形成しつつ基板Sに沿って流下し、これにより基板Sに形成される被膜を膨潤させて基板Sと被膜との剥離強度を低下させる。従って、剥離液がある程度基板Sに供給されると、剥離液の液圧と被膜そのもの自重とによって被膜が塊の状態で基板Sから脱落し、これにより基板Sから被膜が除去されることとなる。
【0038】
こうして基板Sに剥離液が供給されることにより剥離処理が施される一方で、処理に使用された剥離液が液回収管24,25を通じて処理槽10Aから導出され、分離装置26を経由した後、タンク14に戻され、再度液供給管16を通じてノズル12に給送される。このように処理槽10Aとタンク14との間を剥離液が循環することにより基板Sの処理に剥離液が繰り返し使用されることとなる。
【0039】
ここで、ノズル12から吐出される剥離液のうち、処理槽10Aの内底面に落下する剥離液は、当該処理槽10Aの内底面に沿って排液口に集められ、当該排液口から導出されつつ第1液回収管24を介して第2液回収管25内に導入される。一方、基板Sを経由した剥離液、すなわち基板Sの表面に供給された剥離液は、基板Sに沿って流下することにより樋部材22内に流れ込む。そして、当該樋部材22に沿って排液口25aに集められ、当該排液口25aから導出されつつ前記第2液回収管25を通じて分離装置26に導入され、ここで被膜が分離、除去された後、液戻し管28を通じてタンク14に戻される。
【0040】
なお、基板Sに沿って流下する剥離液には多くの被膜が含まれるため、樋部材22を介して剥離液を処理槽10A外に導出する上記構成では、排液口25aや第2液回収管25内に被膜が詰まって円滑な排液が妨げられることが考えられる。しかし、樋部材22内には上記の通り被膜の流動を抑制するピン23が設けられ、多くの被膜が一度に排液口25aに流れ込むことが防止される構成となっている。従って、排液口25aや第2液回収管25に被膜が詰まって円滑な排液が妨げられることいったトラブルの発生が未然に防止される。
【0041】
第1処理部1Aにおいて剥離処理が行われた基板Sは、次に、第2処理部1Bの処理槽10Bに搬入される。基板Sが処理槽10Bに搬入されたことが図外のセンサにより検知されると、ポンプ18の作動により液供給管46を通じてノズル42に剥離液が給送され、これにより傾斜姿勢で搬送される基板Sの上面に剥離液がスプレー吐出される。このように基板Sに剥離液が供給されると、基板Sの表面に残っている被膜(細部に残った被膜)が剥離液によって溶解、除去される。この際、剥離液は、ノズル42からスプレー吐出(噴霧)されるので細部への剥離液の浸透が促進され、これによって当該細部に残った被膜が確実に除去される。
【0042】
こうして基板Sに剥離液が供給されることにより剥離処理が施される一方、使用後の剥離液は、当該処理槽10Bの内底面に沿って図外の排液口に集められ、当該排液口から導出されつつ前記液回収管54を通じてタンク44に戻され後、再度液供給管46を通じてノズル42に給送される。このように処理槽10Bとタンク44との間を剥離液が循環することにより基板Sの処理に剥離液が繰り返し使用されることとなる。
【0043】
なお、第2処理部1Bの剥離液の循環系統には、第1処理部1Aのような分離装置26は設けられていないが、これは基板Sに形成される被膜の大部分は第1処理部1Aで剥離されており、また、第2処理部1Bでは上記のように基板Sの細部に残った被膜を剥離液で溶解させて除去するため、液回収管54を通じて回収される剥離液中には殆ど被膜の塊が含まれていないためである。
【0044】
以上説明したように、この剥離装置では、まず第1処理部1Aにおいて基板Sから被膜を塊のまま脱落させることにより大部分の被膜を除去するが、上記のように、この第1処理部1Aでは、基板Sに沿って流下する使用済みの剥離液を受けて排液するための樋部材22内にピン23が設けられ、剥離液に含まれる被膜が一度に排液口25aに流れ込むことがないように構成されているので、排液口25aや第2液回収管25に被膜が詰まることによる排液不良の発生を未然に防止することができる。また、剥離液の循環系統には、処理槽10Aから導出した剥離液中の被膜を分離、除去する分離装置26が組み込まれ、剥離液に含まれる被膜を除去した上で、タンク14に剥離液を戻すように構成されているので、被膜によりフィルタ20が早期に目詰りを起こすといった不都合も回避できる。従って、上記のように基板Sから被膜を塊のまま脱落させるようにしながらも、円滑に剥離液を循環させることができる。
【0045】
ところで、以上説明した剥離装置は、本発明に係る剥離装置の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば以下のような構成も適用可能である。
【0046】
上記実施形態では、流動抑制部材として樋部材22の内部に多数のピン23を立設し、剥離液に含まれる被膜を当該ピン23に絡ませる構成となっているが、流動抑制部材の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、櫛形の部材であってもよい。要は、使用後の剥離液に含まれる被膜を絡ませてその流動を適度に妨げ得る構成であればよい。
【0047】
また、実施形態では、剥離液に含まれる被膜を単に当該ピン23に絡ませてその流動を抑制する構成となっているが、さらに絡めた被膜を細分化できるように構成してもよい。すなわち、細分化機構を設けてもよい。具体的には、図4に示すように、樋部材22の内部に、流動抑制部材として互いに噛合する複数のギア27(本発明に係る回転体に相当する)を内底面22aに沿って並設し、これらギア27を回転駆動するように構成してもよい。この構成によれば、被膜がギア27に絡まってその流動が抑制されるので、上記実施形態と同様に、多くの被膜が一度に排液口25aに流れ込むことを防止することができる。しかも、ギア27に絡みついた被膜は、当該ギア27の駆動に伴いギア間に噛み込まれて粉砕、細分化された上で排液口25aに流れ込むこととなるので、大きな被膜の塊がそのまま排液口25aに流れ込むのを防止することができる。従って、より一層、排液口25a等に被膜が詰まり難くなるという利点がある。なお、ギア27の代わりに、図5に示すような断面Z字型の羽根車29(本発明に係る回転体(流動抑制部材)に相当する)を内底面22aに沿って回転可能に設け、これら羽根車29を回転駆動するように構成してもよい。このような構成の場合も、被膜が羽根車29に絡みついてその流動が抑制され、また羽根車29の回転に伴い被膜が粉砕、細分化される。従って、図4の構成と同様の作用効果を享受することができる。なお、ギア27や羽根車29は、専用の動力(モータ等)を設けて駆動するようにしてもよいが、例えば搬送ローラにギア27等を連動させる構成とすれば、専用の動力が不要となり合理的な構成となる。
【0048】
また、上記実施形態では、処理槽10A内に樋部材22を設け、基板Sから流下する剥離液を樋部材22で受けて処理槽10Aから排液するように構成されているが、樋部材22を省略し、使用済みの全ての剥離液を処理槽10Aの内底面に形成される排液口を介して排液する構成としてもよい。この場合、処理槽10Aの内底面に前記ピン23を立設して被膜の流動を抑制し、剥離液中の被膜が一度に排液口に流れ込むことを防止する構成とすればよい(この構成では処理槽10Aの内底部が本発明に係る液案内部に相当する)。図4,図5の構成を適用する場合も同様であり、この場合には、処理槽10Aの内底面に沿ってギア27や羽根車29を配備すればよい。但し、この構成では、排液口に被膜が一度に流れ込むのを防止するために、処理槽10Aの内底面の広い範囲に多くのピン23等を設けることが求められる。従って、好ましくは、実施形態のように樋部材22を設けて被膜が流動する範囲を比較的狭い範囲に限定し、少ないピン23の数で確実に被膜を絡ませてその流動を抑制する構成とする方が、機能面および構成面で有利となる。
【0049】
また、上記実施形態では、第1処理部1Aの処理槽10Aから導出される剥離液を、全て分離装置26を経由させてタンク14に戻すように剥離液の循環系統が構成されているが、例えば第1液回収管24を通じて処理槽10Aから導出される剥離液を直接タンク14に戻し、第2液回収管25を通じて導出される剥離液だけを分離装置26に案内するように構成してもよい。つまり、処理槽10Aの内底面に落下する剥離液の大部分は、基板Sを経由していないものであって殆ど被膜を含んでいない。従って、第1液回収管24を通じて導出される剥離液については、分離装置26を経由することなく速やかにタンク14に戻し、これによってタンク14内の液量を確保するようにしてもよい。このような構成によれば、必要最小限の剥離液だけを分離装置26に送るので合理的となる。
【0050】
また、上記実施形態の剥離装置は、無機アルカリを含有する剥離液を使う第1処理部1Aと有機溶剤を含有する剥離液を使う第2処理部1Bとから構成されているが、本発明は、これ以外の剥離装置についても適用可能である。但し、無機アルカリを含有する剥離液を使う剥離処理では、上述した通り、基板S上の被膜の多くを塊のまま脱落させるため、使用済みの剥離液中に多くの被膜の塊が含まれ、排液口等に被膜が詰まり易い。従って、本発明は、上記のように無機アルカリを含有する剥離液を使って剥離処理を行う剥離装置において特に有用なものとなる。
【0051】
また、上記実施形態では、基板Sを傾斜姿勢で搬送しながら処理を施すが、勿論、基板Sを水平姿勢では搬送しながらその表面に剥離液を供給するタイプの剥離装置についても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る剥離装置を示す概略構成図である。
【図2】第1処理部の処理槽内に設けられる樋部材を示す斜視概略図である。
【図3】分離装置の構成を示す断面略図である。
【図4】樋部材の変形例を示す斜視図である。
【図5】樋部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1A 第1処理部
1B 第2処理部
10A,10B 処理槽
12,42 ノズル
22 樋部材
23 ピン
24 第1液回収管
25 第2液回収管
25a 排液口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内で液供給手段により基板に剥離液を供給することにより基板の表面に形成された被膜を剥離する剥離装置であって、
前記基板から流下した剥離液を下流側に案内する液案内部と、この液案内部に沿って配置され、前記剥離液に含まれる被膜を絡ませることにより当該被膜の流動を抑制する流動抑制部材と、が設けられていることを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の剥離装置において、
前記案内部は、基板から流下する剥離液を受ける樋部材を含み、前記流動抑制部材は、この樋部材の内底面に沿って設けられていることを特徴とする剥離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の剥離装置において、
基板を傾斜姿勢で支持する支持手段を有し、前記樋部材は、前記支持手段により支持される基板の低位側の端部の下方に設けられることを特徴とする剥離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の剥離装置において、
前記流動抑制部材は、回転駆動される回転体からなり、絡んだ被膜をその回転に伴い細分化するように構成されていることを特徴とする剥離装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の剥離装置において、
前記液案内部を経て排液される剥離液に含まれる被膜を分離する分離手段と、被膜分離後の剥離液を前記液供給手段に送液する送液手段とを備えていることを特徴とする剥離装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の剥離装置からなる第1処理部と、この第1処理部を経た基板に対して処理槽内で剥離液を供給することによりさらに被膜の剥離処理を基板に施す第2処理部とを含み、前記第1処理部では、無機アルカリを含む剥離液を基板に供給し、第2処理部では、有機溶剤を含む剥離液を基板に供給することを特徴とする剥離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の剥離装置において、
前記第1処理部の処理槽内に、基板を傾斜姿勢で支持する前記支持手段と、当該支持手段に支持された基板の上位側端部に沿って剥離液を供給する前記液供給手段とが設けられていることを特徴とする剥離装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の剥離装置において、
前記第2処理部の処理槽内に、剥離液をスプレー吐出することにより基板に供給する液供給手段が設けられていることを特徴とする剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−87971(P2009−87971A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251682(P2007−251682)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】