動的な軸重移動を補償する方法
本発明は、車両の荷重の一部が少なくとも一方の前輪の上に偏るときの動的な軸重移動を少なくとも部分的に補償する、改善された方法を提案する。まず、軸重移動を補償するために、駆動トルク要求が与えられ、したがって、時間制限付きのほぼ最大の駆動トルクが要求される。さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載の方法を実施するマイクロプロセッサ及び制御装置を初めて提案する。本発明は、このタイプの制御装置又はプロセッサが取り付けられる車両駆動装置にも関する。本方法を実施するソフトウェアも記載される。最後に、本発明は、特許請求の範囲に記載の方法を実施するソフトウェアを実行するために、このタイプの制御装置又はマイクロプロセッサを備える自動車に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[説明]
本発明は、請求項1の前提部分に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法に関する。さらに、本発明は、請求項15に記載の上記方法を実行するマイクロプロセッサ、請求項16に記載の制御装置、請求項17に記載の上記制御装置及び/又は上記マイクロプロセッサを備える内燃機関、また、請求項18に記載のこの構成に適したソフトウェア、並びに請求項19に記載のこれらを備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
実際には、自動車の加速又は減速による軸重の動的移動が、前軸及び後軸における瞬間的垂直力を逆転させることが知られている。タイヤコーナリング力は垂直力に依存するため、前軸と後軸とへの横力の配分が変化することにより、減速時にはカーブの内側へのモーメントが発生し、加速時にはカーブの外側へのモーメントが発生する。
【0003】
これに対応して、特定の運転状況では、運転者の主観としては、例えば急カーブ運転時又は強い制動時の場合のように、自動車が前輪の方に前傾しているか又は前輪の上に偏っており、少なくとも1つの車輪が多くの場合ほぼ最大限に撓んでいるように感じられることが、実際にも知られている。
【0004】
特に急制動の場合、自動車は、軸重の動的移動の結果として進行方向前方に非常に大きく下向き傾斜する。前軸のタイヤは、これにより非常に大きな荷重を受けるため、直線的な動作点を辿らなくなっている可能性がある。これらの動作点では、伝達可能な縦方向及び横方向の力は直線範囲におけるよりも小さい。同時に、後軸のタイヤに対する荷重は大幅に減り、その結果、小さな制動力及びコーナリング力しか伝達できない。この場合、運転者に望まれるように車両を操作しこなすことは、ドライビングダイナミクス(the dynamics of the vehicle's movement、Fahrdynamik)を調整するシステムがなければ可能とならないことが多い。
【0005】
ここで、急制動を行いながらカーブを運転している場合、又は高速又は最高速度でカーブを運転している場合の、後軸における荷重の低下は、カーブの内側の後輪が道路から完全に離れて、制動力又は横力を全く伝えることができなくなるほどのものである可能性がある。このとき、カーブの外側の前輪及びカーブの外側の後輪には、多くの場合、滑り始めるように荷重が加わるため、車両は最終的にコースアウトする。
【0006】
これまで実際に知られている統合シャーシ制御システム(「統合シャーシ制御」、略してICC)の開発の状況では、インタラクティブダイナミックドライビングシステム(「インタラクティブドライビングシステム」、略してIDS)の1つの構成要素として基本的なドライビングダイナミクスシステムをネットワーキングすることによって、考えられる全ての運転状況で自動車の安定化が試みられてきた。この場合、いわゆるドライビングダイナミクスを調整するシステム及び/又は電子安定プログラム(「電子安定プログラム」、略してESP)が、例えばブレーキアシスタント等のさらなる制御装置と通信することにより、この目的で必要な各データ項目がデータバスシステム(「コントローラエリアネットワーク」、略してCANバス)を介して伝送される。このとき、データはその重要性に応じて様々な速度のデータバスシステムを介して伝送される。したがって、例えば、ドライビングダイナミクスに関する時間依存信号は、少なくとも500KB/秒のデータ伝送速度を有する「高速」データバスを介して伝送される。
【0007】
したがって、自動車が例えば前輪の上に沈み込む場合に生じるような軸重の動的移動を、ほぼリアルタイムで検出することができ、軸重の移動を抑えるために、例えば電子減衰力調整プロセス(「連続減衰力制御」、略してCDC)を起動することができる。このような高価な電子減衰力制御システムは、例えば、現状のデータに応じて無段階で正確且つ連続的に、道路条件、車両の動き、及び運転パターンに継続的に適応することができる特性を有する、電磁弁によって制御されるショックアブソーバに基づくものである。複数の加速度センサ等によって、最適な減衰に必要な信号をCANバスからのさらなる信号と組み合わせてCDC制御ユニットに供給することができる。制御ユニットは、各車輪に必要な減衰力をリアルタイムで、例えば特性図等を用いて計算する。続いて、ショックアブソーバの適合が数ミリ秒以内に行われ得る。したがって、車両の車体構造の安定性を保つことができ、制動時のピッチング運動及びカーブ運転時又は段差運転時の車体構造の移動が大幅に低減する。
【0008】
これにより得ることができる軸重の動的移動に関する成果及び改善は、確かに有望なものであり、実際に申し分のないことが分かっているが、全ての運転状況で安全且つ完全に確実に自動車を制御するには依然として不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、自動車における軸重の動的移動によって生じる前軸及び/又は後軸における瞬間的垂直力の逆転を補償するのに用いられる方法を提案することである。
【0010】
本発明のさらなる態様は、本発明によるこの方法を実施するのに適した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、方法的観点から請求項1の特徴によって、また装置的観点から請求項15〜19の各特徴によって、それぞれ果たされる。
【0012】
ここでは、自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法が初めて提案され、当該方法では、軸重の移動を相殺又は補償するために駆動モーメントを増減させるが、これによって自動車の速度は実質的に変わらない。
【0013】
ここでは特に、例えば自動車荷重の一部が少なくとも一方の前輪の上にのし掛かったときに軸重の動的移動を補償する方法が提案され、当該方法では、軸重の移動を相殺又は補償するために、駆動モーメントの変更又はアクセルストロークが加えられるか、又はキックダウンが開始される。特に、急制動動作の場合、急制動動作の開始時に駆動モーメントの変更又はアクセルストロークを加えることが意図される。さらに、カーブ運転時又はカーブ運転中の制動時に不安定になるような特別な場合に、偏り運動を低減してコースアウトを防止するために、カーブ運転中又はカーブでの制動時に駆動モーメントの変更又はアクセルストロークを加えることが意図される。
【0014】
本出願人が行った内部シミュレーションの状況では、駆動モーメントの変更によって軸重の動的移動の補償又は相殺が実現可能であることが、当業者であっても驚くような方法で証明できた。
【0015】
駆動モーメントの変更、特に短期間の増大は、ガソリン機関又はディーゼル機関の場合、例えば機関管理システムにおける適切な介入によって、例えば、アクセルストロークを加えること、バタフライ弁の位置又は噴射ポンプの処理量を変更すること、又は燃料混合気を変更することによって行うことができる。例えば燃料電池を備えているか、電動機で推進されるか、ガス推進ユニットを有するか、又はハイブリッド車として設計される自動車の場合、駆動モーメントの所望の大きさ及び持続時間の意図的な増大は、例えば、電力又は同等物の適切な増加によって行うことができる。
【0016】
これまで、軸重の動的移動に影響を及ぼすための介入は、シャーシ、特にショックアブソーバ及びスタビライザによってしか行うことができないと想定されていた。したがって、既知の運転安定性システムは全て、シャーシの各動作状態を制御及び/又は調整することを目的とする。駆動モーメントの変更によって軸重の動的移動に影響を及ぼす可能性は、これまで度外視されてきた。
【0017】
反対に、本発明は、全く驚くべき有利な方法で自動車における軸重の動的移動に意図的な作用を与えようとする本出願人の過去の努力を補助するものである。これらのあらゆる努力がなされている一方で、当業者が機関制御システムを組み込むことを想像したことはなかった。
【0018】
これに対して、本発明は新たな道を踏み出す。ここで説明される本発明、すなわち、軸重の動的移動の補償を駆動モーメントの変更、好ましくは短期間の増大によって、特にアクセルストロークによって得ることができることは、驚くべき利点である。
【0019】
例えば急制動動作によって自動車が縦揺れし、その結果、軸重の前方への動的移動によって前軸における車輪接触力が最初に大幅に増大した場合、これは同時に後軸における荷重の低下をもたらす。結果として、後輪が接触力を失い、横方向のコーナリング力が急激に低下する。このピッチング作用は、車両を極端に加速させた場合には正反対になる。車両の前部が持ち上がり、後ろのめりになる。これにより、後軸が受ける荷重はより大きくなり、前軸における荷重は低下する。ここで初めて提案される、軸重の動的移動に意図的に影響を及ぼす方法に関する本発明は、急ブレーキがかけられるとき、又は急加速のためにエンジンが全開にされる(full power is applied、Vollgasgeben)ときに生じる車両のこの既知のピッチング挙動を有効利用するが、これにより車両の加速を実際にもたらすことはない。
【0020】
むしろ、例えば制動動作の場合の制動点か又は急カーブ運転の場合のコースアウトの限界点(critical swerving point)において、駆動モーメントの短期間の増大が行われるため、実際に車両が取る反応は、それに対応した自らの立て直しであり、軸重の動的移動の補償が達成され、前軸及び/又は後軸に効果的に伝達可能なタイヤの垂直力及び/又は横力の増大又は適合が得られるが、車両の加速が実現されることは確実にないことが、初めて提案される。
【0021】
したがって、急制動動作時の予想外のコースアウトを回避することができる。さらに、予想外のオーバーステアリングを減らすことができる。ローリング運動の危険性が減り、したがって最終的にはスキッドの危険性が減る。
【0022】
ここで、本発明は、駆動モーメントの増大と車両自体の反応との時定数が大きいという効果を初めて利用する。したがって、この場合、車両はその慣性により、要求される駆動モーメントにゆっくりとしか反応しない。結果として、駆動モーメントは実際には駆動系にわたって駆動車輪まで影響を及ぼすことができるが、これらが加速されることは依然としてない。さらに、制動時には、これによって駆動トルクが数倍高い制動力を受けるため、車両が加速されることはあり得ないが、後軸における車輪接触力の増大は確実に得ることができる。
【0023】
ここでまず、自動車を少なくともわずかに立て直すことを伴う反力が生じるが、自動車の加速を客観的に検出することはできない。自動車の少なくとも部分的な立て直しにより、すなわち立て直し前の極めて前方の位置から軸重配分が事実上相殺された位置へ軸重の動的移動の釣り合いを取ることにより、後輪に十分な接触力を得ることができることを有利な方法で確実にするようさらに留意されため、数分の1秒前に生じた危機的な運転状況での場合よりも著しく大きな制動力及び横力を伝達することができる。
【0024】
例えば急制動の使用時又は急カーブ運転時等の危機的な運転状況においてアクセルストロークを加えることによって軸重の動的移動に及ぼされるこれらの好ましい影響の発見は、さらに驚くべきことであった。それは、制動時又は急カーブ運転時の駆動モーメントの増大自体が当業者には全く不可能であると考えられるからである。
【0025】
さらになお驚くべきことは、急制動の場合又はカーブ運転時に付加的な駆動モーメントを発生させることによって、前方への軸重の動的移動を減らすことができ、軸重の移動を相殺できるという発見である。
【0026】
ここで、軸重の動的移動の補償により、ピッチ角がより早くなくなるか、又はあまり目立たない程度になるか、又はより弱い波形を有するようになることが有利である。したがって、さらに有利には、車輪荷重の変動が小さくなる。結果として、より高い車輪制動圧力を得ることができる。車輪制動圧力が高いほど、減速が大きいことを意味する。したがって、ABSの作動を遅らせることができることが有利である。すなわち、タイヤがスリップするのがより遅くなる。
【0027】
結果として、ABS制動動作をさらに最適化できることが有利である。カーブでの制動時には、後軸重がより大きいことにより、より高い安定性及びより大きな横力を得ることができる。
【0028】
駆動モーメントの要求に時間制限があることで、ICC群において新たな安定化要素(stabilizing magnitude)、すなわち駆動モーメントが利用可能であることが特に有利である。有利なことに、センサを追加する必要がない。さらに有利なのは、ハードウェアを追加する必要もおそらくないことである。むしろ、本発明による方法は、既存のマイクロプロセッサに搭載するか又は既存の制御装置によって実施することができる、ソフトウェアアプリケーションの形態で再現できることも有利である。
【0029】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴から明らかとなる。
【0030】
したがって、本方法の有利な一実施形態では、例えば以下のステップ、a)例えばESP、EHPS、CDC、ブレーキアシスタント、IDS、UCL等の運転安定性システム又はその構成要素の制御のために例えば統合シャーシ制御システムの枠組み内で用いられる、シャーシ、ブレーキ、及び/又はステアリングの各状況依存性の設定に関する情報項目を供給するために、例えばセンサ等からCANバスを介してマイクロプロセッサ、制御装置等に送ることができるような自動車の現状(prevailing situation)に利用可能なデータを評価するステップと、b)軸重の動的移動を制御又は相殺しなければならない自動車の危機的な状態を判定するステップと、c)要求すべき駆動モーメントの大きさを決定するステップと、d)要求すべき駆動モーメントの持続時間を決定するステップと、e)駆動モーメント要求を与えることによって、所定の大きさ及び所定の持続時間で要求駆動モーメントを開始するステップとを特徴とすることが意図される。
【0031】
したがって、駆動モーメントの要求を与えることは、例えば、いずれの場合も電気的及び/又は電気機械的に作動されることが多いバタフライ弁又は噴射ポンプを適切に制御することによって、構造的に比較的単純に行われることが有利であるため、これも同様にさらなる構造的支出を追加せずに実現可能となる。
【0032】
本方法のさらなる好ましい一実施形態では、急制動動作がABSの支援により行われることが意図される。したがって、駆動モーメントの制御によって軸重の動的移動を意図的に補正する利点を、ABS支援制動プロセスの利点と組み合わせることができる。さらに、自動車のCANバス上でいずれの場合も利用可能なデータは、各制御装置において評価することができ、必要な反応をより適切に手動調整することができ、したがってさらに最適化することができる。
【0033】
好ましい一実施形態では、急制動動作の有無は、ブレーキがかけられる時点を表すABSフラグの検出によって、又はブレーキペダルの傾きの評価によって判定されることが意図される。代替的に、急制動動作の有無は、ブレーキペダル、例えば完全に踏み込まれて終端停止位置に突き当たったブレーキペダルの角度設定の検出によって判定されることが意図されることが有利であり得る。この場合、ブレーキペダルの裏には、圧電結晶、圧力センサ、接点スイッチ、又はブレーキペダルが完全に踏み込まれるとすぐに制御信号を発する同様の要素が設けられることが有利である。代替的に、所定の限界角度を超えると信号を発する角度センサもブレーキペダルに設けることができる。さらに、急制動動作の有無は、マスタブレーキシリンダにおけるブレーキ圧力の上り勾配を評価することによって判定してもよい。
【0034】
このような性質の限界値信号に応じて、駆動モーメントの時限変更が続いて開始され得る。
【0035】
さらなる好ましい一実施形態では、カーブにおける危機的な状況が、ESPからのデータの評価によって判定されることが意図される。この場合、駆動制御装置といずれの場合もドライビングダイナミクスを調整するシステムのためのものであるデータとの間の相互作用を利用することによって、上位制御インスタンス(superior control-instance)が生成され、これを用いて、時間制限付きの駆動モーメントを生じさせることによって、必要に応じて軸重の動的移動の相殺又は補償を得ることができることが有利である。
【0036】
本方法のさらなる好ましい一実施形態によれば、ブレーキをかけた時点又はカーブ運転時の危機的な状況の場合、例えば最初にロールし始めたときに、駆動モーメントの増大、特に250ミリ秒〜750ミリ秒、好ましくは300ミリ秒〜500ミリ秒の持続時間のキックダウン又は全開パルスが開始されることが意図される。駆動モーメントの増大を伴うこの段階、特に全開パルスの時間又は持続時間は、内部コンピュータモデルを用いた本出願人による最初の内部シミュレーションにおいて特に有利であると確定することができた。
【0037】
さらなる好ましい一実施形態では、駆動モーメントの増大、特にキックダウン又は全開パルスは、ブレーキをかけた時点に対して論理的にゼロの時点とみなす、−0.5秒〜+1.0秒、好ましくは−0.01秒〜+0.5秒、最も好ましくは+0.05秒〜+0.25秒の時間窓内で開始されることが意図される。したがって、厳密に正しい時点で駆動モーメントを実施することによって、反力が自動車の少なくとも部分的な立て直しに、又は立て直し前の極めて前方の位置から自動車の事実上均衡の取れた状態への軸重の動的移動の相殺につながるように、極めて小さいがゼロではない傾向がある遅延を伴って、例えばバタフライ弁の開放に反応する駆動装置又は内燃機関の慣性だけでなく、駆動系の慣性も考慮されるため、車輪接触力がより大きくなるとともに制動力及び横力の伝達率が改善されるという上述の利点が実現可能であることが確実になることが有利である。
【0038】
本方法のさらなる好ましい一実施形態では、複数回の駆動モーメントの増大、特にアクセルストローク又は全開パルスによって、キックダウン又は全開パルスをパルス状に発生させることが意図される。ここで、ABS技法から既知であるようなブレーキ圧力の調節の利点は、一種の駆動モーメントの調節による増大、特に調節されたフルアクセルストロークに再び引き継がれる。これにより、システムの制御性、及び駆動モーメントの増大をパルス状に又は調節して加えることによって発生され得る力とモーメントとの調和が改善される。したがってさらに、増大した駆動モーメントをピッチング振動と位相を一致させることが要求され得る。
【0039】
本方法の好ましい一実施形態によれば、駆動モーメントのパルス状の増大は、50ミリ秒〜150ミリ秒、一部では最長1秒、好ましくは約100ミリ秒の持続時間をそれぞれ有することが意図される。
【0040】
さらなる好ましい一実施形態によれば、100ニュートンメートル〜500ニュートンメートル、好ましくは少なくとも250ニュートンメートル、特に好ましくは少なくとも270ニュートンメートルの駆動モーメントが駆動モーメントの短期間の増大によって誘発されることが意図される。このオーダーの大きさの、又は最大350ニュートンメートル、さらには最大500ニュートンメートルというさらにいくらか大きなエンジントルクを用いて、軸重の動的移動の所望の影響を得ることができる。この場合、例えば250ニュートンメートルを超える、270ニュートンメートルを超える、さらには300ニュートンメートルを超えるエンジントルクが、少なくとも約3000ニュートンメートル以上の制動力及びモーメントによってなおも抵抗を受けるため、実際の用途では、制動トルクと駆動モーメントとの間には実際には通常10:1〜20:1のような比が存在する。これにより、自動車の加速を全くなくすことができることが確実に保証される一方で、車両の立て直し及び釣り合い、すなわち軸重の動的移動の最適化が確保される。
【0041】
本発明による方法の前述の利点及び好ましい態様は、この目的のために提案されたマイクロプロセッサを用いて、且つこの目的のために提案された制御装置を用いて、同様に実現することができる。これらの利点は、本発明による方法を実施するための対応する制御装置及び/又はマイクロプロセッサを備える本発明による内燃機関を用いて、同じく得ることができる。これらを備える自動車、及び適当なマイクロプロセッサ又は適当な制御装置に搭載されてそこで実施される上記方法を実施するソフトウェアにも、同じことが言える。
【0042】
前述の発明は、図面を用いて例示的な実施形態において以下より詳細に後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
100km/時の直線走行に続いて急制動動作を突然行うことに基づいて進められる第1の例示的な運転状況が、図1a)〜図5b)に示される。
【0044】
急制動を行うと、軸重の動的移動が生じる。これは特に、自動車の重心の高さに応じて変わる。軸重の動的移動は、車輪接触力の変化を引き起こす。車輪制動トルク対駆動モーメントの比は、例えば約10:1〜20:1である。急制動動作時に車輪が動かない状態で、短期間にわたって駆動モーメントを増大させた場合、制動トルクが大きいことにより車輪を加速させることができないため、このモーメントは後軸によってしか支持することができない。この作用により、後軸における車輪接触力が増大し、前軸における車輪接触力が減少する。自動車は比較的大きな質量慣性を有するため、駆動モーメントが有効なのが短期間のみである場合、車両の加速が生じるとしても十分に小さいものであるか又はなくすことができる。
【0045】
ここで、図1a)は、時間に対して測定されたアクセルペダルの位置をパーセントで示す。副図b)において、時間に対して測定されたブレーキペダルの位置又はブレーキ回路信号BLSの波形がパーセントで示される。測定を行ってから約1.8秒の時点で、ブレーキペダルが完全に踏み込まれる、すなわち急制動動作を表すBLS信号が突然生じることが、ここから分かる。副図c)において、時間に対するブレーキシリンダ圧力の波形がバールで示される。ここで、副図b)による急制動動作の開始に伴うブレーキ圧力の急増は、測定と非常によく相関する。さらに、関連する測定ステアリング角が副図d)に示されるが、この角度は、制動動作前には0°であり、急ブレーキをかけた後に0°の線を中心として+/−5°の範囲内でわずかに変動する。
【0046】
図1a)〜d)に示す測定の結果は、前タイヤが270,000Pa(2.7バール)、後タイヤが320,000Pa(3.2バール)のタイヤ圧力を有し、且つタイヤの路面接触面積と乾いた路面との間の摩擦係数がμ=1.1である、ブリジストンブランドのタイプTuranza215/55/R16のタイヤを用いて実施された試験中に記録された。
【0047】
図1a)〜d)に示す運転状況が、図2a)、b)にさらに示される。副図a)は、秒での時間に対するkm/時での基準速度の波形を示す。副図b)は、秒での時間に対するNmでの駆動モーメントの波形を示す。測定値は、細い実線でプロットされている。シミュレーションによるデータ項目は、太い実線で示されている。シミュレーションは、測定データと驚くほどよく一致している。したがって、選択されたシミュレーション、すなわちシミュレーションの基礎を成す複雑な一連の方程式が、測定される運転状態を正確に模倣可能であることが証明された。
【0048】
図3a)〜d)において、秒での時間に対するkm/時での各車輪(左前から右後)の速度が、副図a)〜d)に示される。この場合も、測定データは細い又は薄い実線で示される。シミュレーションは、太い又は濃い実線を用いて示される。左前輪は副図a)に示される。副図b)は右前輪の値を示す。左後輪は副図c)に示される。右後輪は副図d)に示される。シミュレーションと測定との直接比較から、シミュレーションが測定を適切に再現することが明らかになる。
【0049】
図3a)〜d)に載せられた図面の分割形態がこれ以降の図でも用いられることにより、左前から右後までの各車輪に関して示される状態について一貫した符号及び参照体系が副図a)〜d)で利用される。したがって、左上の副図a)は左前輪を表し、右下の副図d)は右後輪を表すことになる。
【0050】
したがって、図4a)〜d)では、左前輪におけるブレーキ圧力が副図a)に示され、右前輪におけるブレーキ圧力が副図b)に示され、左後輪におけるブレーキ圧力が副図c)に示され、右後輪におけるブレーキ圧力が副図d)に示され、この場合も、細い又は薄い実線は測定データを表し、太い又は濃い実線はシミュレーションを表す。ここでも、測定とシミュレーションとは驚くほどよく一致する。
【0051】
図5a)、b)において、時間に対するABSフラグの波形が副図a)に示される。ABSフラグが測定及びシミュレーションの両方においてほぼブレーキペダルの踏み込みによって設定されることが、ここから明らかである。副図b)は、例えば「車両安定化制御」システム、略してVSCで使用可能なVSC信号の波形を示し、シミュレーションと測定とは正確に一致する。
【0052】
図1a)〜図5b)において前述した例示的な状況は、図6a)〜図11b)において再び示され、この状況も同様に、直線走行中の100km/時の初期速度で開始して、その直後に突然急制動を行うが、ここでは、互いに比較され得る2つのシミュレーション、すなわち、一方はキックダウン無しのシミュレーション(太い破線)、他方はキックダウン有りのシミュレーション(細い実線)を用いて示される。
【0053】
ここで、図6a)、b)の副図a)は、急制動の開始とともに直線的に減少する、秒での時間に対するkm/時での基準速度を示す。副図b)は、秒での時間に対するNmでの駆動モーメントを示し、これは比較的一定又は継続的に50ニュートンメートルをやや下回るほどまでになるが、キックダウン有りのシミュレーションの場合、シミュレーションの開始後約1.9秒で短期間にわたって250ニュートンメートルを超えるまでに急上昇し、約0.3秒後には再び急低下する。250Nmを超える機関の駆動モーメントのこの飛躍的増加は、キックダウンによって誘発されるガスの噴出に起因するものであり、動的軸重配分を補償又は相殺するために利用されることが意図される。
【0054】
自動車の4つの車輪の速度は、図7の副図a)〜d)に再び示される。太い又は濃い実線は、キックダウン無しのシミュレーションを示す。細い又は薄い実線は、キックダウン有りのシミュレーションを示す。このシェーディング(陰影)による区別は、シミュレーションデータを示すこれ以降の図の全てにおいて維持される。
【0055】
急制動動作の開始後の時間に対する4つの車輪全ての車輪速度の低下は、図7a)〜d)において確認可能であり、キックダウンが速度低下に影響を及ぼさないことが分かる。車輪速度は、キックダウン無しのシミュレーションの場合及びキックダウン有りのシミュレーションの場合の両方で互いによく一致し、キックダウンによりブレーキをかけた時点で前軸(車輪スリップの開始)において得られる改善をはっきりと示す。したがって、キックダウンにもかかわらず、車両は加速されない。
【0056】
これは、図8a)、b)に示す状況では全く異なる。副図a)は時間に対する車両のピッチ角を示し、副図b)は時間に対するピッチレートを示す。ここで、キックダウン有りの急制動の場合では、ピッチ角はキックダウン無しのピッチ角よりも著しく小さく、その後の振動も弱いことが、非常によく分かる。同様に、ピッチレートはより小さく、その後の振動はより弱い、すなわちより急速に弱まる。したがってこれにより、本発明による方法が、例えばアクセルストロークによって急制動動作中の軸重の動的移動の補償を強化するため又は改善をもたらすのに適していることが、即座に証明される。
【0057】
図9a)〜d)において、図6a)〜図11b)に示す状況に関連する各車輪における接触力が、左前の副図a)から右後のd)まで示される。本明細書では、前輪に関して、キックダウン有りのシミュレーションの細い又は薄い実線は、キックダウン無しの場合(太い又は濃い実線)よりも振れがやや小さく、したがって接触力が小さいことを表すことが明らかである。これは、この場合、車両が走行しているときの前方への軸重の動的移動により通常は予測されるであろう接触力の危機的な状態に達することが阻止されることを意味する。他方、後輪における接触力に基づいた場合、キックダウン有りの状況においてブレーキをかけたまさにその時点では、キックダウン無しの状況よりも接触力が大幅に大きいため、さらにここでは、著しく良好な制動力を伝達することができ、これは全体としてより安定した運転状況につながることが分かる。
【0058】
さらに、図8a)、b)において、測定の開始から1.94秒の時点で行われるキックダウンにより、ピッチ角が少なくとも10パーセント減少することにも留意すべきである。
【0059】
さらに、図9a)〜d)において、キックダウン無しの場合、2つの前輪は8000ニュートンを超えるタイヤ接触力に耐えなければならないため、タイヤの線形伝達範囲を離れて危機的な範囲に入ることにも留意すべきである。これに対して、キックダウン有りの場合の接触力は、ほぼ8000ニュートン程度であるため、これは依然として線形範囲内にある。結果として、この状況ではハンドリングの改善を得ることができる。さらに、副図c)及びd)は、反対に、後輪における接触力ではキックダウン無しのシミュレーションと比較して少なくとも200ニュートンの増大が記録されることを示し、したがってこれは、制動力及び横方向のコーナリング力のさらなる伝達を意味する。
【0060】
したがって全体的には、駆動モーメントの及ぼす影響によって軸重の移動を少なくとも部分的に補償できるという結果が得られる。前軸における車輪接触力が減るため、タイヤは、その伝達可能な縦力の限界範囲まで及ぶこともなければ当然入ることもない。限界範囲内では、タイヤは、接触力がすでに増大しているため縦力をそれ以降又はそれ以上伝達することができない。多くのタイヤは、この時点で縦力が弱まることさえある。図7a)〜d)に示す車輪速度を用いてこの作用を確認することができる。ブレーキをかけた時点(約2秒の時点)での前軸における車輪スリップの開始は、軸重の動的移動が部分的に補償されるためそれほど大きなものではない。後軸における車輪接触力は、同じくこの補償プロセスによって著しく大きくなる(図9a)〜d)を参照)。これはさらに、後軸においてより高いレベルのブレーキ圧力を可能にし、これはより良好な減速につながり(図10a)〜d)を参照)、最終的にこれは制動距離の短縮を意味する。前軸におけるブレーキ圧力のレベルも同様に、車輪接触力が小さくなることでタイヤが過負荷状態にならないため、より良好である(図9a)〜図10d)を参照)。したがって、ピッチングモーメントは、ブレーキをかけた時点で駆動モーメントに意図的に影響を及ぼすことによって部分的に補償することができ、それによりピッチング運動の振動がより急速に弱まることが、図8a)、b)から推測され得る。
【0061】
単に完全を期すために、この運転状況を図11a)、b)において参照し、関連する副図a)にはABSフラグが示され、副図b)にはVSC波形が示される。
【0062】
行われた測定に対応する別の例示的な運転状況が、図12a)〜図17b)に示される。108km/時の速度及び直線での初期走行に基づいて、ABSシステムの調整範囲内で制動されるか又はコーンを左右に避けながら運転することを伴う回避操作が、ここではシミュレートされる。
【0063】
図1a)〜d)と同様に、時間に対するアクセルペダルのパーセンテージ位置は、図12の副図a)に示される。時間に対するブレーキペダルの位置は副図b)に記録されている。ここで、測定の開始後約0.8秒の時点でブレーキペダルが突然完全に踏み込まれることが、ここで分かる。したがって、ここではバールで記録されているブレーキシリンダ圧力がそれに対応して発生することが、副図c)から明らかである。ステアリング角は副図d)に示される。この波形から、コーンを避けて運転するプロセスは、急制動が行われるときに始まることが分かる。
【0064】
関連する基準速度は、図13の副図a)に示される。細い又は薄い実線は、前の図2a)、b)の場合のような測定を再び示す。太い又は濃い実線はシミュレーションを示す。シミュレーションと測定とは非常によく一致する。機関に加えられる駆動モーメントは、副図b)に示される。ここでも、測定(細い実線)とシミュレーション(太い実線)とは互いによく一致する。これは、用いられるコンピュータモデルの適用性のさらに別の証拠となる。
【0065】
図14a)〜d)において、時間に対する各車輪速度の波形が、左前の副図a)から右後の副図d)まで再び示される。
【0066】
したがって、図15a)〜d)において、左前から右後までの各車輪において発生するようになっているブレーキ圧力は、一方では測定に関して(細い実線)、また他方ではシミュレーションに関して(太い実線)、副図a)〜d)に示される。ここでも、測定とシミュレーションは驚くほどよく一致しており、さらなるシミュレーションに利用することができる。
【0067】
単に完全を期すために、シミュレーション及び測定の両方に関して、時間に対するABSフラグが図16の副図a)に示され、VSC波形が副図b)に示される。
【0068】
次に、図17a)、b)は、副図a)において時間に対するヨーレートを、副図b)において横加速度を再現し、測定は細い又は薄い実線を用いて示され、シミュレーションは太い又は濃い実線の形態である。横加速度の波形は、走行されるコーンの組み合わせに従った予想経路を辿る。それによって生じるヨーレートについても同じことが言え、ヨーレートは鉛直軸を中心とした車両の回転を表す。
【0069】
108km/時の初期速度、及びコーンを避けて運転しているとき又は回避操作の過程で突然急制動動作を行うことを伴う、図12a)〜図17b)に示す運転状況は、前輪が270,000Pa(2.7バール)、後輪が320,000Pa(3.2バール)のタイヤ圧力を有し、且つ路面接触面積と乾いた路面との間の摩擦係数がμ=1.1である、ブリジストンブランドのタイプTuranza215/55/R16のタイヤを用いて、測定又はシミュレートされた。
【0070】
図12a)〜図17b)ですでに示した運転状況は、急制動動作の開始時に関して、キックダウン無しのシミュレーションの形態(太い実線曲線)及びキックダウン有りのシミュレーションの形態(細い又は薄い実線曲線)で図18a)〜図23d)に示される。これは、制動プロセスが開始されるとキックダウンが行われ、それによりエンジントルクが突然短期間にわたって加えられることにより、運転状況の改善を得ることができることを明確にするためのものである。
【0071】
図18a)、b)において、時間に対する基準速度が副図a)に示される。太い又は濃い実線はキックダウン無しのシミュレーションを示し、細い又は薄い実線はキックダウン有りのシミュレーションを示す。したがって、秒での時間に対するNmでの駆動モーメントは、副図b)に示される。キックダウンは、図示のタイミンググラフによれば、例えばシミュレーションの開始後約0.8秒程度で行われる。この場合、キックダウンの時間の長さは約0.4秒程度であり、ここで説明する例では、この間に全駆動モーメントが250ニュートンメートルをわずかに超えるまでに増大し、続いて−50ニュートンメートルまで急低下する。
【0072】
障害物を避けて運転するために得ることができるか又は望まれるy方向の車両の横変位は、キックダウン無しのシミュレーションの場合よりもキックダウン有りのシミュレーションの場合の方が目立つことが、図19の副図a)即座に明らかとなる。これは、キックダウンにより、車両が操縦しやすくなるため、よりスムーズに(in a better fashion)コーンを避けて運転できるか、又は障害物をより上手く避けることができることを意味する。この状況は、時間に対する車両の横変位が示される副図b)からも明らかである。ここでも、キックダウン有りのシミュレーションは、キックダウン無しのシミュレーションよりも優れたハンドリング特性、したがって優れた車両の制御能力を示す。
【0073】
図20に示す副図a)〜d)は、左前から右後までの車輪の時間に対する車輪速度を再び示すものであり、これらの図から、キックダウンが車輪速度の波形にいかなる影響も及ぼさないことが分かる。望ましくない車両の加速は事実上起こり得ない。
【0074】
図21a)、b)において、この運転状況でシミュレートされるようになっているピッチ角の曲線が、副図a)で時間に対して示される。ここでも、ピッチ角はキックダウン有りのシミュレーションの場合の方がスムーズな又は安定した波形を示すため、より良好な車両の操作が見込まれることが明らかである。同様に、ピッチレートは副図b)に再現される。これによっても、車両の挙動はキックダウン有りのシミュレーションの場合の方が快適になると想定される。
【0075】
図22a)〜d)において、図9a)〜d)ですでに行ったように、秒での時間に対するニュートンでの接触力が左前の副図a)から右後の副図d)まで再現される。この図から、キックダウン有りのシミュレーションの場合(細い又は薄い曲線)、キックダウン無しの場合(太い又は濃い曲線)の前輪における非常に大きな接触力を意図的に減らすことができ、これにより、これらの車輪が危機的な伝達範囲に入り込まないようになることが、特によく分かる。結果として、かなり大きな制動力を伝達することができる。さらに、キックダウン無しの場合よりも大きな約300ニュートンという2番目に大きな接触力の増大が生じるため、伝達可能な制動力の平均化を得ることができることが、副図b)において即座に確認できる。さらに、後軸の方が大きな制動力を伝達可能であり、伝達可能な制動力及び接触力が均等になるため、カーブの外側でより良好な制動反力を得ることができることが、副図c)及びd)から明らかである。
【0076】
この作用は、図23の左前輪から右後輪までの副図a)〜d)において、伝達可能な横力に関して明らかに確認される。副図b)から分かるように、キックダウン有りのシミュレーションの場合、横力の最初の増大によってキックダウン無しのシミュレーションよりも約300ニュートン大きい横力を右前輪に伝達することができる。右後輪についても同じことが言え、同様に約300ニュートン大きい横力を伝達することができる。これは、より安定し安全な運転状況につながる。
【0077】
さらなる例示的な状況が、図24a)〜図30d)に示される。ここでは、100km/時の速度で右カーブ運転時にABSを用いて急制動を突然行い、この場合も、キックダウン無しのシミュレーションは太い実線で、キックダウン有りのシミュレーションは細い実線で示されている。
【0078】
したがって、図24a)、b)において(前の図6a)、b)及び図18a)、b)におけるように)、その副図a)で、km/時での基準速度が時間に対してプロットされ、副図b)で、Nmでの駆動モーメントが秒での時間に対してプロットされる。ここで、キックダウンは、シミュレーションの開始から約1.94秒で始まり、機関の駆動モーメントを50ニュートンメートル弱から250ニュートンメートルを著しく超えるまでに急増させ、これは続いて、約0.3〜0.4秒後に再び250ニュートンメートル強から約50ニュートンメートルに減少する。
【0079】
図25a)〜d)において、副図a)で、ヨーレートが時間に対して再現される。副図b)は、時間に対する前後加速度を示す。副図c)は、時間に対する横加速度を示す。最後に、副図d)で、姿勢角が時間に対してプロットされる。
【0080】
図26a)〜d)において、再び前の図7a)〜d)及び図20a)〜d)におけるように、左前輪の副図a)から右後輪の副図d)まで、車輪の速度が再現される。ここでも、太い又は濃い実線のキックダウン無しのシミュレーションの場合及び細い又は薄い実線のキックダウン有りのシミュレーションの場合に、車輪速度が互いに大きく異ならず一致することが再び分かる。したがって、カーブ運転時、また他の動作状況においても、キックダウンによる車両の速度の変化は基本的に起こり得ない。
【0081】
図27a)〜d)において、前の図10a)〜d)の場合のように、キックダウンを行った場合及び行わない場合の2つのシミュレーション状況についてのブレーキ圧力が、左前輪の副図a)から右後輪の副図b)まで再び示される。急制動の開始及びキックダウンプロセスにより、キックダウン無しのシミュレーションよりもキックダウン有りのシミュレーションの場合に、大幅に高いブレーキ圧力を後輪において得ることができることが、ここから明らかに分かる。
【0082】
したがって、図28a)、b)のうち時間に対するピッチ角を示す副図a)から、キックダウンはシミュレーションの開始から約1.94秒で始まり、ピッチ角の波形がかなり弱くなり、その振幅が平坦になるとともに、その周波数は徐々に平滑化されることが分かる。副図b)に示されるピッチレートについても同じことが言える。いずれにしても、質的な点で、キックダウン有りのシミュレーションと、制動時又はカーブ運転時に自動車が前輪の上に偏るときの軸重の動的移動を顕著なガスの噴出又はキックダウンによって補償するという予想外の可能性との肯定的評価を見る限り、図28a)、b)の状況は再び、図8a)、b)及び図21a)、b)に示す状況に類似している。
【0083】
次に、図29a)〜d)において、左前輪における接触力から右後輪における接触力までが副図a)〜d)に示される。左前輪の場合、外側において波形の中央部で200ニュートンの接触力の増大が記録される。右前輪の場合、内側において波形の中央部で300ニュートンの減少が記録される。左後輪の場合、外側車輪において波形の中央部で800ニュートンの接触力の増大が記録され、それに対応して右後輪では、副図d)で分かるように、内側において少なくとも150ニュートンメートルの増大がある。これは、キックダウン無しだと右後輪が通常は持ち上がるであろうこの状況でさえも、この場合はこの車輪が依然として路面にしっかりと捉えられているため、この車輪も力を伝達できることを意味する。図29a)〜d)に示す状況は、図9a)〜d)に示す状況及び図22a)〜d)に示す状況と質的に類似している。
【0084】
次に、図30a)〜d)において、車輪の横力が、副図a)の左前から副図d)の右後まで示される。ここでも、キックダウン有りのシミュレーションの場合、伝達可能な横力の400ニュートンの増大が左前輪において記録され得ることが、ここから明らかである。右前輪の場合、200ニュートンメートルの伝達可能な横力の増大が記録され得る。左後輪では、伝達可能な横力の400ニュートンの増大を認めることができ、右後輪では、伝達可能な横力の200ニュートンの増大が記録され得る。したがって、キックダウン無しのシミュレーションの場合に事実上ゼロになる伝達可能な横力を、少なくとも200ニュートンの伝達可能な横力に変えることに再び成功した。
【0085】
100km/時の速度で右カーブ運転時に急制動を突然開始する、図24a)〜図30d)に示す状況から、本発明による方法により、車両がその前輪の上に偏るときの軸重の動的移動の少なくとも部分的な補償が、アクセルストロークを加えることによって、又はキックダウンを意図的に誘発して事実上最大レベルのエンジントルクを短期間にわたって強制的に引き起こすことによって可能になることが分かる。これにより、運転状況が大幅に改善される。車両の制御性が高まる。ハンドリングが簡単になる。危険な状況を克服しやすくなる。
【0086】
ここで、後軸における横方向のコーナリング力は、自動車の安定性に大きな影響を及ぼす。横方向のコーナリング力対車輪接触力の特性曲線は、後軸における車輪接触力の範囲内で急な上り勾配を示す。すなわち、車輪接触力のわずかな変化が、横方向コーナリング力の大きな変化を引き起こす。したがって、カーブでの制動時に、軸重の動的移動の補償によって、より大きな横方向コーナリング力を得ることができるため、カーブでの制動時の車両の安定性がより高くなる。さらに、上述の手順を用いて、車両のオーバーステアリング反応(ローリング又はスキッドの可能性を伴う)を減らすことができる。
【0087】
最後に、例えば図8a)、b)で前述したような状況の場合の、時間(秒)に対する角度におけるピッチ角が図31に示される。細い実線「A」は、キックダウン無しのピッチ角の波形を示す。太い実線「B」は、まさにブレーキをかけた時点でキックダウンが生じる場合のピッチ角の波形を示す。細い鎖線「C」は、ブレーキをかけた時点の0.1秒後にキックダウンが始まる場合のピッチ角の波形を示す。太い破線「D」は、ブレーキをかけた時点の0.2秒後にキックダウンが始まる場合のピッチ角の波形を示す。最後に、中間の濃さの鎖線「E」は、ブレーキをかけた時点の0.3秒後にキックダウンが始まる場合のピッチ角の波形を示す。全体的に見て、キックダウンがピッチ角の波形によい影響を及ぼすことが、質的に見てここからに分かる。これは、一方では振幅が抑えられ、他方では波形が平滑化されるか又はより早く弱まり得る。さらに、例えば、ブレーキをかけた時点から0.05秒〜1.5秒、好ましくは約0.1秒の時間窓内でキックダウンが行われる場合、キックダウン無しの制動プロセスとは対照的に特に良好なピッチ角波形、したがって著しい改善を得ることができることを、図31から認めることができる。
【0088】
したがって、本発明は、自動車の荷重の一部が少なくとも一方の前輪の上に偏るときの軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を初めて提供する。ここで、補償のために駆動モーメントの要求が与えられる。駆動モーメントの要求は、急ブレーキがかけられるときの急制動動作の場合、及びカーブ運転時のカーブ運転が不安定である場合に発せられる。さらに、本発明は、本発明によるこの方法を実施するためのマイクロプロセッサ及び制御装置の使用を初めて提案する。さらに、このような制御装置又はこのようなマイクロプロセッサを備える駆動概念が示される。最後に、本方法を実施するためのソフトウェアが挙げられる。特に、本発明による方法を実施するソフトウェアを実行するためにこのような制御装置又はこのようなマイクロプロセッサを備える、自動車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1a)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図1b)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図1c)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図1d)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図2a)】比較のために対応するシミュレーション結果を補足した、図1a)〜d)に示す測定データに関連する基準速度を示し、シミュレーションは太い又は濃い実線の形態で、測定は細い又は薄い実線の形態で表す。
【図2b)】比較のために対応するシミュレーション結果を補足した、関連する駆動モーメントを示し、シミュレーションは太い又は濃い実線の形態で、測定は細い又は薄い実線の形態で表す。
【図3a)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い実線)を比較として示す。
【図3b)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い又は濃い実線)を比較として示す。
【図3c)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い実線)を比較として示す。
【図3d)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い実線)を比較として示す。
【図4a)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図4b)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図4c)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図4d)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図5a)】関連するABSフラグを示し、シミュレーションは太い又は濃い破線で、測定は細い実線で表す。
【図5b)】関連するVSC信号波形を示し、シミュレーションは太い破線で、測定は細い実線で表す。
【図6a)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の、キックダウン無しのシミュレーション(太い破線)及びキックダウン有りのシミュレーション(細い実線)を示し、シミュレーションと測定との比較のために図2a)、b)に同様に示したような、時間に対する基準速度を示す。
【図6b)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の、キックダウン無しのシミュレーション(太い破線)及びキックダウン有りのシミュレーション(細い実線)を示し、シミュレーションと測定との比較のために図2a)、b)に同様に示したような、時間に対する駆動モーメントを示す。
【図7a)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図7b)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図7c)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン有りのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図7d)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン有りのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図8a)】図6a)〜図7d)に示す運転状況に関する、自動車の関連するピッチ角を示す。
【図8b)】図6a)〜図7d)に示す運転状況に関する、関連するピッチレートを示す。
【図9a)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図9b)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図9c)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図9d)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図10a)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図10b)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図10c)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図10d)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図11a)】関連するABSフラグを示し、キックダウン無しのシミュレーションを太い破線で、キックダウン有りのシミュレーションを細い実線で表す。
【図11b)】関連するVSC信号波形を示し、キックダウン無しのシミュレーションを太い破線で、キックダウン有りのシミュレーションを細い実線で表す。
【図12a)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い又は濃い実線で表す。
【図12b)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い又は濃い実線で表す。
【図12c)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い実線で表す。
【図12d)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い実線で表す。
【図13a)】図12a)〜d)に示す運転状況に関連する基準速度をkm/時で示し、ここでは、図2a)〜図5b)で選択された図の形態と同様に、シミュレーションを太い実線で示し、測定は細い又は薄い実線の形態である。
【図13b)】関連する駆動モーメントをNmで示し、ここでは、図2a)〜図5b))で選択された図の形態と同様に、シミュレーションを太い実線で示し、測定は細い実線の形態である。
【図14a)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図14b)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図14c)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図14d)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図15a)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図15b)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図15c)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図15d)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図16a)】ABSフラグの波形を示す。
【図16b)】VSC信号特性曲線の波形を示す。
【図17a)】図12a)〜図16b)に示す状況に関するヨーレートを示す。
【図17b)】図12a)〜図16b)に示す状況に関する横加速度を示す。
【図18a)】図12a)〜図17b)から得ることができる知識に基づいて、再び図12a)〜d)に示すような急制動を伴うステアリングの切り返しを利用する108m/時に基づいた運転状況を、キックダウン無しの第1のシミュレーションの形態(太い実線)と、比較のためにキックダウン有りの本発明による第2のシミュレーションの形態(細い実線)とで示し、基準速度を再現する。
【図18b)】図12a)〜図17b)から得ることができる知識に基づいて、再び図12a)〜d)に示すような急制動を伴うステアリングの切り返しを利用する108m/時に基づいた運転状況を、キックダウン無しの第1のシミュレーションの形態(太い実線)と、比較のためにキックダウン有りの本発明による第2のシミュレーションの形態(細い実線)とで示し、駆動モーメントを再現する。
【図19a)】X軸に沿ってプロットされた走行距離に対してy方向で車両の関連逸脱を示し、図6a)〜図11b)で前に行ったように、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを示し、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図19b)】X軸に沿ってプロットされた時間に対してy軸に沿ってプロットされた車両の切り返しを示し、図6a)〜図11b)で前に行ったように、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを示し、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図20a)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図20b)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図20c)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図20d)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図21a)】図18a)〜図20d)に示す状況に関連する車両のピッチ角を示す(太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図21b)】関連するピッチレートを示す(太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図22a)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図22b)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図22c)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図22d)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図23a)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図23b)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図23c)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図23d)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図24a)】最初に100km/時で右カーブ運転時にABSを用いて急制動を行った場合の開始状況を示し、この場合も、キックダウン無しのシミュレーションの形態(太い実線)及びキックダウン有りのシミュレーションの形態(細い実線)で、基準速度を示す。
【図24b)】最初に100km/時で右カーブ運転時にABSを用いて急制動を行った場合の開始状況を示し、この場合も、キックダウン無しのシミュレーションの形態(太い実線)及びキックダウン有りのシミュレーションの形態(細い実線)で、駆動モーメントを示す。
【図25a)】図24a)、b)に示す状況の場合のヨーレートに関する関連データを示す。
【図25b)】図24a)、b)に示す状況の場合の前後加速度に関する関連データを示す。
【図25c)】図24a)、b)に示す状況の場合の横加速度に関する関連データを示す。
【図25d)】図24a)、b)に示す状況の場合の姿勢角に関する関連データを示す。
【図26a)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図26b)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図26c)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図26d)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図27a)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図27b)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図27c)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図27d)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図28a)】図24a)〜図27d)に示す状況に関するピッチ角を示す。
【図28b)】図24a)〜図27d)に示す状況に関するピッチレートを示す。
【図29a)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図29b)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図29c)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図29d)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図30a)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図30b)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図30c)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図30d)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図31】キックダウン無しの制動時の、時間に対する車両のピッチ角の波形(細い実線「A」)と、これと比較して、キックダウン有りの急制動動作の場合のピッチレートの4つの例示的な線波形「B」〜「E」とを示し、第1の例では、キックダウンがブレーキをかけた時点で直接実施され(太い実線「B」)、第2の例は、ブレーキをかけた時点の0.1秒後のキックダウンを示し(細い鎖線「C」)、第3の例は、ブレーキをかけた時点の0.2秒後のキックダウンを示し(太い破線「D」)、第4の例は、ブレーキをかけた時点の0.3秒後のキックダウンを示す(中間の濃さの鎖線「E」)。
【符号の説明】
【0090】
図31
A 細い実線曲線
B 太い実線曲線
C 細い鎖線曲線
D 太い破線曲線
E 中間の濃さの鎖線曲線
【技術分野】
【0001】
[説明]
本発明は、請求項1の前提部分に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法に関する。さらに、本発明は、請求項15に記載の上記方法を実行するマイクロプロセッサ、請求項16に記載の制御装置、請求項17に記載の上記制御装置及び/又は上記マイクロプロセッサを備える内燃機関、また、請求項18に記載のこの構成に適したソフトウェア、並びに請求項19に記載のこれらを備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
実際には、自動車の加速又は減速による軸重の動的移動が、前軸及び後軸における瞬間的垂直力を逆転させることが知られている。タイヤコーナリング力は垂直力に依存するため、前軸と後軸とへの横力の配分が変化することにより、減速時にはカーブの内側へのモーメントが発生し、加速時にはカーブの外側へのモーメントが発生する。
【0003】
これに対応して、特定の運転状況では、運転者の主観としては、例えば急カーブ運転時又は強い制動時の場合のように、自動車が前輪の方に前傾しているか又は前輪の上に偏っており、少なくとも1つの車輪が多くの場合ほぼ最大限に撓んでいるように感じられることが、実際にも知られている。
【0004】
特に急制動の場合、自動車は、軸重の動的移動の結果として進行方向前方に非常に大きく下向き傾斜する。前軸のタイヤは、これにより非常に大きな荷重を受けるため、直線的な動作点を辿らなくなっている可能性がある。これらの動作点では、伝達可能な縦方向及び横方向の力は直線範囲におけるよりも小さい。同時に、後軸のタイヤに対する荷重は大幅に減り、その結果、小さな制動力及びコーナリング力しか伝達できない。この場合、運転者に望まれるように車両を操作しこなすことは、ドライビングダイナミクス(the dynamics of the vehicle's movement、Fahrdynamik)を調整するシステムがなければ可能とならないことが多い。
【0005】
ここで、急制動を行いながらカーブを運転している場合、又は高速又は最高速度でカーブを運転している場合の、後軸における荷重の低下は、カーブの内側の後輪が道路から完全に離れて、制動力又は横力を全く伝えることができなくなるほどのものである可能性がある。このとき、カーブの外側の前輪及びカーブの外側の後輪には、多くの場合、滑り始めるように荷重が加わるため、車両は最終的にコースアウトする。
【0006】
これまで実際に知られている統合シャーシ制御システム(「統合シャーシ制御」、略してICC)の開発の状況では、インタラクティブダイナミックドライビングシステム(「インタラクティブドライビングシステム」、略してIDS)の1つの構成要素として基本的なドライビングダイナミクスシステムをネットワーキングすることによって、考えられる全ての運転状況で自動車の安定化が試みられてきた。この場合、いわゆるドライビングダイナミクスを調整するシステム及び/又は電子安定プログラム(「電子安定プログラム」、略してESP)が、例えばブレーキアシスタント等のさらなる制御装置と通信することにより、この目的で必要な各データ項目がデータバスシステム(「コントローラエリアネットワーク」、略してCANバス)を介して伝送される。このとき、データはその重要性に応じて様々な速度のデータバスシステムを介して伝送される。したがって、例えば、ドライビングダイナミクスに関する時間依存信号は、少なくとも500KB/秒のデータ伝送速度を有する「高速」データバスを介して伝送される。
【0007】
したがって、自動車が例えば前輪の上に沈み込む場合に生じるような軸重の動的移動を、ほぼリアルタイムで検出することができ、軸重の移動を抑えるために、例えば電子減衰力調整プロセス(「連続減衰力制御」、略してCDC)を起動することができる。このような高価な電子減衰力制御システムは、例えば、現状のデータに応じて無段階で正確且つ連続的に、道路条件、車両の動き、及び運転パターンに継続的に適応することができる特性を有する、電磁弁によって制御されるショックアブソーバに基づくものである。複数の加速度センサ等によって、最適な減衰に必要な信号をCANバスからのさらなる信号と組み合わせてCDC制御ユニットに供給することができる。制御ユニットは、各車輪に必要な減衰力をリアルタイムで、例えば特性図等を用いて計算する。続いて、ショックアブソーバの適合が数ミリ秒以内に行われ得る。したがって、車両の車体構造の安定性を保つことができ、制動時のピッチング運動及びカーブ運転時又は段差運転時の車体構造の移動が大幅に低減する。
【0008】
これにより得ることができる軸重の動的移動に関する成果及び改善は、確かに有望なものであり、実際に申し分のないことが分かっているが、全ての運転状況で安全且つ完全に確実に自動車を制御するには依然として不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、自動車における軸重の動的移動によって生じる前軸及び/又は後軸における瞬間的垂直力の逆転を補償するのに用いられる方法を提案することである。
【0010】
本発明のさらなる態様は、本発明によるこの方法を実施するのに適した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、方法的観点から請求項1の特徴によって、また装置的観点から請求項15〜19の各特徴によって、それぞれ果たされる。
【0012】
ここでは、自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法が初めて提案され、当該方法では、軸重の移動を相殺又は補償するために駆動モーメントを増減させるが、これによって自動車の速度は実質的に変わらない。
【0013】
ここでは特に、例えば自動車荷重の一部が少なくとも一方の前輪の上にのし掛かったときに軸重の動的移動を補償する方法が提案され、当該方法では、軸重の移動を相殺又は補償するために、駆動モーメントの変更又はアクセルストロークが加えられるか、又はキックダウンが開始される。特に、急制動動作の場合、急制動動作の開始時に駆動モーメントの変更又はアクセルストロークを加えることが意図される。さらに、カーブ運転時又はカーブ運転中の制動時に不安定になるような特別な場合に、偏り運動を低減してコースアウトを防止するために、カーブ運転中又はカーブでの制動時に駆動モーメントの変更又はアクセルストロークを加えることが意図される。
【0014】
本出願人が行った内部シミュレーションの状況では、駆動モーメントの変更によって軸重の動的移動の補償又は相殺が実現可能であることが、当業者であっても驚くような方法で証明できた。
【0015】
駆動モーメントの変更、特に短期間の増大は、ガソリン機関又はディーゼル機関の場合、例えば機関管理システムにおける適切な介入によって、例えば、アクセルストロークを加えること、バタフライ弁の位置又は噴射ポンプの処理量を変更すること、又は燃料混合気を変更することによって行うことができる。例えば燃料電池を備えているか、電動機で推進されるか、ガス推進ユニットを有するか、又はハイブリッド車として設計される自動車の場合、駆動モーメントの所望の大きさ及び持続時間の意図的な増大は、例えば、電力又は同等物の適切な増加によって行うことができる。
【0016】
これまで、軸重の動的移動に影響を及ぼすための介入は、シャーシ、特にショックアブソーバ及びスタビライザによってしか行うことができないと想定されていた。したがって、既知の運転安定性システムは全て、シャーシの各動作状態を制御及び/又は調整することを目的とする。駆動モーメントの変更によって軸重の動的移動に影響を及ぼす可能性は、これまで度外視されてきた。
【0017】
反対に、本発明は、全く驚くべき有利な方法で自動車における軸重の動的移動に意図的な作用を与えようとする本出願人の過去の努力を補助するものである。これらのあらゆる努力がなされている一方で、当業者が機関制御システムを組み込むことを想像したことはなかった。
【0018】
これに対して、本発明は新たな道を踏み出す。ここで説明される本発明、すなわち、軸重の動的移動の補償を駆動モーメントの変更、好ましくは短期間の増大によって、特にアクセルストロークによって得ることができることは、驚くべき利点である。
【0019】
例えば急制動動作によって自動車が縦揺れし、その結果、軸重の前方への動的移動によって前軸における車輪接触力が最初に大幅に増大した場合、これは同時に後軸における荷重の低下をもたらす。結果として、後輪が接触力を失い、横方向のコーナリング力が急激に低下する。このピッチング作用は、車両を極端に加速させた場合には正反対になる。車両の前部が持ち上がり、後ろのめりになる。これにより、後軸が受ける荷重はより大きくなり、前軸における荷重は低下する。ここで初めて提案される、軸重の動的移動に意図的に影響を及ぼす方法に関する本発明は、急ブレーキがかけられるとき、又は急加速のためにエンジンが全開にされる(full power is applied、Vollgasgeben)ときに生じる車両のこの既知のピッチング挙動を有効利用するが、これにより車両の加速を実際にもたらすことはない。
【0020】
むしろ、例えば制動動作の場合の制動点か又は急カーブ運転の場合のコースアウトの限界点(critical swerving point)において、駆動モーメントの短期間の増大が行われるため、実際に車両が取る反応は、それに対応した自らの立て直しであり、軸重の動的移動の補償が達成され、前軸及び/又は後軸に効果的に伝達可能なタイヤの垂直力及び/又は横力の増大又は適合が得られるが、車両の加速が実現されることは確実にないことが、初めて提案される。
【0021】
したがって、急制動動作時の予想外のコースアウトを回避することができる。さらに、予想外のオーバーステアリングを減らすことができる。ローリング運動の危険性が減り、したがって最終的にはスキッドの危険性が減る。
【0022】
ここで、本発明は、駆動モーメントの増大と車両自体の反応との時定数が大きいという効果を初めて利用する。したがって、この場合、車両はその慣性により、要求される駆動モーメントにゆっくりとしか反応しない。結果として、駆動モーメントは実際には駆動系にわたって駆動車輪まで影響を及ぼすことができるが、これらが加速されることは依然としてない。さらに、制動時には、これによって駆動トルクが数倍高い制動力を受けるため、車両が加速されることはあり得ないが、後軸における車輪接触力の増大は確実に得ることができる。
【0023】
ここでまず、自動車を少なくともわずかに立て直すことを伴う反力が生じるが、自動車の加速を客観的に検出することはできない。自動車の少なくとも部分的な立て直しにより、すなわち立て直し前の極めて前方の位置から軸重配分が事実上相殺された位置へ軸重の動的移動の釣り合いを取ることにより、後輪に十分な接触力を得ることができることを有利な方法で確実にするようさらに留意されため、数分の1秒前に生じた危機的な運転状況での場合よりも著しく大きな制動力及び横力を伝達することができる。
【0024】
例えば急制動の使用時又は急カーブ運転時等の危機的な運転状況においてアクセルストロークを加えることによって軸重の動的移動に及ぼされるこれらの好ましい影響の発見は、さらに驚くべきことであった。それは、制動時又は急カーブ運転時の駆動モーメントの増大自体が当業者には全く不可能であると考えられるからである。
【0025】
さらになお驚くべきことは、急制動の場合又はカーブ運転時に付加的な駆動モーメントを発生させることによって、前方への軸重の動的移動を減らすことができ、軸重の移動を相殺できるという発見である。
【0026】
ここで、軸重の動的移動の補償により、ピッチ角がより早くなくなるか、又はあまり目立たない程度になるか、又はより弱い波形を有するようになることが有利である。したがって、さらに有利には、車輪荷重の変動が小さくなる。結果として、より高い車輪制動圧力を得ることができる。車輪制動圧力が高いほど、減速が大きいことを意味する。したがって、ABSの作動を遅らせることができることが有利である。すなわち、タイヤがスリップするのがより遅くなる。
【0027】
結果として、ABS制動動作をさらに最適化できることが有利である。カーブでの制動時には、後軸重がより大きいことにより、より高い安定性及びより大きな横力を得ることができる。
【0028】
駆動モーメントの要求に時間制限があることで、ICC群において新たな安定化要素(stabilizing magnitude)、すなわち駆動モーメントが利用可能であることが特に有利である。有利なことに、センサを追加する必要がない。さらに有利なのは、ハードウェアを追加する必要もおそらくないことである。むしろ、本発明による方法は、既存のマイクロプロセッサに搭載するか又は既存の制御装置によって実施することができる、ソフトウェアアプリケーションの形態で再現できることも有利である。
【0029】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴から明らかとなる。
【0030】
したがって、本方法の有利な一実施形態では、例えば以下のステップ、a)例えばESP、EHPS、CDC、ブレーキアシスタント、IDS、UCL等の運転安定性システム又はその構成要素の制御のために例えば統合シャーシ制御システムの枠組み内で用いられる、シャーシ、ブレーキ、及び/又はステアリングの各状況依存性の設定に関する情報項目を供給するために、例えばセンサ等からCANバスを介してマイクロプロセッサ、制御装置等に送ることができるような自動車の現状(prevailing situation)に利用可能なデータを評価するステップと、b)軸重の動的移動を制御又は相殺しなければならない自動車の危機的な状態を判定するステップと、c)要求すべき駆動モーメントの大きさを決定するステップと、d)要求すべき駆動モーメントの持続時間を決定するステップと、e)駆動モーメント要求を与えることによって、所定の大きさ及び所定の持続時間で要求駆動モーメントを開始するステップとを特徴とすることが意図される。
【0031】
したがって、駆動モーメントの要求を与えることは、例えば、いずれの場合も電気的及び/又は電気機械的に作動されることが多いバタフライ弁又は噴射ポンプを適切に制御することによって、構造的に比較的単純に行われることが有利であるため、これも同様にさらなる構造的支出を追加せずに実現可能となる。
【0032】
本方法のさらなる好ましい一実施形態では、急制動動作がABSの支援により行われることが意図される。したがって、駆動モーメントの制御によって軸重の動的移動を意図的に補正する利点を、ABS支援制動プロセスの利点と組み合わせることができる。さらに、自動車のCANバス上でいずれの場合も利用可能なデータは、各制御装置において評価することができ、必要な反応をより適切に手動調整することができ、したがってさらに最適化することができる。
【0033】
好ましい一実施形態では、急制動動作の有無は、ブレーキがかけられる時点を表すABSフラグの検出によって、又はブレーキペダルの傾きの評価によって判定されることが意図される。代替的に、急制動動作の有無は、ブレーキペダル、例えば完全に踏み込まれて終端停止位置に突き当たったブレーキペダルの角度設定の検出によって判定されることが意図されることが有利であり得る。この場合、ブレーキペダルの裏には、圧電結晶、圧力センサ、接点スイッチ、又はブレーキペダルが完全に踏み込まれるとすぐに制御信号を発する同様の要素が設けられることが有利である。代替的に、所定の限界角度を超えると信号を発する角度センサもブレーキペダルに設けることができる。さらに、急制動動作の有無は、マスタブレーキシリンダにおけるブレーキ圧力の上り勾配を評価することによって判定してもよい。
【0034】
このような性質の限界値信号に応じて、駆動モーメントの時限変更が続いて開始され得る。
【0035】
さらなる好ましい一実施形態では、カーブにおける危機的な状況が、ESPからのデータの評価によって判定されることが意図される。この場合、駆動制御装置といずれの場合もドライビングダイナミクスを調整するシステムのためのものであるデータとの間の相互作用を利用することによって、上位制御インスタンス(superior control-instance)が生成され、これを用いて、時間制限付きの駆動モーメントを生じさせることによって、必要に応じて軸重の動的移動の相殺又は補償を得ることができることが有利である。
【0036】
本方法のさらなる好ましい一実施形態によれば、ブレーキをかけた時点又はカーブ運転時の危機的な状況の場合、例えば最初にロールし始めたときに、駆動モーメントの増大、特に250ミリ秒〜750ミリ秒、好ましくは300ミリ秒〜500ミリ秒の持続時間のキックダウン又は全開パルスが開始されることが意図される。駆動モーメントの増大を伴うこの段階、特に全開パルスの時間又は持続時間は、内部コンピュータモデルを用いた本出願人による最初の内部シミュレーションにおいて特に有利であると確定することができた。
【0037】
さらなる好ましい一実施形態では、駆動モーメントの増大、特にキックダウン又は全開パルスは、ブレーキをかけた時点に対して論理的にゼロの時点とみなす、−0.5秒〜+1.0秒、好ましくは−0.01秒〜+0.5秒、最も好ましくは+0.05秒〜+0.25秒の時間窓内で開始されることが意図される。したがって、厳密に正しい時点で駆動モーメントを実施することによって、反力が自動車の少なくとも部分的な立て直しに、又は立て直し前の極めて前方の位置から自動車の事実上均衡の取れた状態への軸重の動的移動の相殺につながるように、極めて小さいがゼロではない傾向がある遅延を伴って、例えばバタフライ弁の開放に反応する駆動装置又は内燃機関の慣性だけでなく、駆動系の慣性も考慮されるため、車輪接触力がより大きくなるとともに制動力及び横力の伝達率が改善されるという上述の利点が実現可能であることが確実になることが有利である。
【0038】
本方法のさらなる好ましい一実施形態では、複数回の駆動モーメントの増大、特にアクセルストローク又は全開パルスによって、キックダウン又は全開パルスをパルス状に発生させることが意図される。ここで、ABS技法から既知であるようなブレーキ圧力の調節の利点は、一種の駆動モーメントの調節による増大、特に調節されたフルアクセルストロークに再び引き継がれる。これにより、システムの制御性、及び駆動モーメントの増大をパルス状に又は調節して加えることによって発生され得る力とモーメントとの調和が改善される。したがってさらに、増大した駆動モーメントをピッチング振動と位相を一致させることが要求され得る。
【0039】
本方法の好ましい一実施形態によれば、駆動モーメントのパルス状の増大は、50ミリ秒〜150ミリ秒、一部では最長1秒、好ましくは約100ミリ秒の持続時間をそれぞれ有することが意図される。
【0040】
さらなる好ましい一実施形態によれば、100ニュートンメートル〜500ニュートンメートル、好ましくは少なくとも250ニュートンメートル、特に好ましくは少なくとも270ニュートンメートルの駆動モーメントが駆動モーメントの短期間の増大によって誘発されることが意図される。このオーダーの大きさの、又は最大350ニュートンメートル、さらには最大500ニュートンメートルというさらにいくらか大きなエンジントルクを用いて、軸重の動的移動の所望の影響を得ることができる。この場合、例えば250ニュートンメートルを超える、270ニュートンメートルを超える、さらには300ニュートンメートルを超えるエンジントルクが、少なくとも約3000ニュートンメートル以上の制動力及びモーメントによってなおも抵抗を受けるため、実際の用途では、制動トルクと駆動モーメントとの間には実際には通常10:1〜20:1のような比が存在する。これにより、自動車の加速を全くなくすことができることが確実に保証される一方で、車両の立て直し及び釣り合い、すなわち軸重の動的移動の最適化が確保される。
【0041】
本発明による方法の前述の利点及び好ましい態様は、この目的のために提案されたマイクロプロセッサを用いて、且つこの目的のために提案された制御装置を用いて、同様に実現することができる。これらの利点は、本発明による方法を実施するための対応する制御装置及び/又はマイクロプロセッサを備える本発明による内燃機関を用いて、同じく得ることができる。これらを備える自動車、及び適当なマイクロプロセッサ又は適当な制御装置に搭載されてそこで実施される上記方法を実施するソフトウェアにも、同じことが言える。
【0042】
前述の発明は、図面を用いて例示的な実施形態において以下より詳細に後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
100km/時の直線走行に続いて急制動動作を突然行うことに基づいて進められる第1の例示的な運転状況が、図1a)〜図5b)に示される。
【0044】
急制動を行うと、軸重の動的移動が生じる。これは特に、自動車の重心の高さに応じて変わる。軸重の動的移動は、車輪接触力の変化を引き起こす。車輪制動トルク対駆動モーメントの比は、例えば約10:1〜20:1である。急制動動作時に車輪が動かない状態で、短期間にわたって駆動モーメントを増大させた場合、制動トルクが大きいことにより車輪を加速させることができないため、このモーメントは後軸によってしか支持することができない。この作用により、後軸における車輪接触力が増大し、前軸における車輪接触力が減少する。自動車は比較的大きな質量慣性を有するため、駆動モーメントが有効なのが短期間のみである場合、車両の加速が生じるとしても十分に小さいものであるか又はなくすことができる。
【0045】
ここで、図1a)は、時間に対して測定されたアクセルペダルの位置をパーセントで示す。副図b)において、時間に対して測定されたブレーキペダルの位置又はブレーキ回路信号BLSの波形がパーセントで示される。測定を行ってから約1.8秒の時点で、ブレーキペダルが完全に踏み込まれる、すなわち急制動動作を表すBLS信号が突然生じることが、ここから分かる。副図c)において、時間に対するブレーキシリンダ圧力の波形がバールで示される。ここで、副図b)による急制動動作の開始に伴うブレーキ圧力の急増は、測定と非常によく相関する。さらに、関連する測定ステアリング角が副図d)に示されるが、この角度は、制動動作前には0°であり、急ブレーキをかけた後に0°の線を中心として+/−5°の範囲内でわずかに変動する。
【0046】
図1a)〜d)に示す測定の結果は、前タイヤが270,000Pa(2.7バール)、後タイヤが320,000Pa(3.2バール)のタイヤ圧力を有し、且つタイヤの路面接触面積と乾いた路面との間の摩擦係数がμ=1.1である、ブリジストンブランドのタイプTuranza215/55/R16のタイヤを用いて実施された試験中に記録された。
【0047】
図1a)〜d)に示す運転状況が、図2a)、b)にさらに示される。副図a)は、秒での時間に対するkm/時での基準速度の波形を示す。副図b)は、秒での時間に対するNmでの駆動モーメントの波形を示す。測定値は、細い実線でプロットされている。シミュレーションによるデータ項目は、太い実線で示されている。シミュレーションは、測定データと驚くほどよく一致している。したがって、選択されたシミュレーション、すなわちシミュレーションの基礎を成す複雑な一連の方程式が、測定される運転状態を正確に模倣可能であることが証明された。
【0048】
図3a)〜d)において、秒での時間に対するkm/時での各車輪(左前から右後)の速度が、副図a)〜d)に示される。この場合も、測定データは細い又は薄い実線で示される。シミュレーションは、太い又は濃い実線を用いて示される。左前輪は副図a)に示される。副図b)は右前輪の値を示す。左後輪は副図c)に示される。右後輪は副図d)に示される。シミュレーションと測定との直接比較から、シミュレーションが測定を適切に再現することが明らかになる。
【0049】
図3a)〜d)に載せられた図面の分割形態がこれ以降の図でも用いられることにより、左前から右後までの各車輪に関して示される状態について一貫した符号及び参照体系が副図a)〜d)で利用される。したがって、左上の副図a)は左前輪を表し、右下の副図d)は右後輪を表すことになる。
【0050】
したがって、図4a)〜d)では、左前輪におけるブレーキ圧力が副図a)に示され、右前輪におけるブレーキ圧力が副図b)に示され、左後輪におけるブレーキ圧力が副図c)に示され、右後輪におけるブレーキ圧力が副図d)に示され、この場合も、細い又は薄い実線は測定データを表し、太い又は濃い実線はシミュレーションを表す。ここでも、測定とシミュレーションとは驚くほどよく一致する。
【0051】
図5a)、b)において、時間に対するABSフラグの波形が副図a)に示される。ABSフラグが測定及びシミュレーションの両方においてほぼブレーキペダルの踏み込みによって設定されることが、ここから明らかである。副図b)は、例えば「車両安定化制御」システム、略してVSCで使用可能なVSC信号の波形を示し、シミュレーションと測定とは正確に一致する。
【0052】
図1a)〜図5b)において前述した例示的な状況は、図6a)〜図11b)において再び示され、この状況も同様に、直線走行中の100km/時の初期速度で開始して、その直後に突然急制動を行うが、ここでは、互いに比較され得る2つのシミュレーション、すなわち、一方はキックダウン無しのシミュレーション(太い破線)、他方はキックダウン有りのシミュレーション(細い実線)を用いて示される。
【0053】
ここで、図6a)、b)の副図a)は、急制動の開始とともに直線的に減少する、秒での時間に対するkm/時での基準速度を示す。副図b)は、秒での時間に対するNmでの駆動モーメントを示し、これは比較的一定又は継続的に50ニュートンメートルをやや下回るほどまでになるが、キックダウン有りのシミュレーションの場合、シミュレーションの開始後約1.9秒で短期間にわたって250ニュートンメートルを超えるまでに急上昇し、約0.3秒後には再び急低下する。250Nmを超える機関の駆動モーメントのこの飛躍的増加は、キックダウンによって誘発されるガスの噴出に起因するものであり、動的軸重配分を補償又は相殺するために利用されることが意図される。
【0054】
自動車の4つの車輪の速度は、図7の副図a)〜d)に再び示される。太い又は濃い実線は、キックダウン無しのシミュレーションを示す。細い又は薄い実線は、キックダウン有りのシミュレーションを示す。このシェーディング(陰影)による区別は、シミュレーションデータを示すこれ以降の図の全てにおいて維持される。
【0055】
急制動動作の開始後の時間に対する4つの車輪全ての車輪速度の低下は、図7a)〜d)において確認可能であり、キックダウンが速度低下に影響を及ぼさないことが分かる。車輪速度は、キックダウン無しのシミュレーションの場合及びキックダウン有りのシミュレーションの場合の両方で互いによく一致し、キックダウンによりブレーキをかけた時点で前軸(車輪スリップの開始)において得られる改善をはっきりと示す。したがって、キックダウンにもかかわらず、車両は加速されない。
【0056】
これは、図8a)、b)に示す状況では全く異なる。副図a)は時間に対する車両のピッチ角を示し、副図b)は時間に対するピッチレートを示す。ここで、キックダウン有りの急制動の場合では、ピッチ角はキックダウン無しのピッチ角よりも著しく小さく、その後の振動も弱いことが、非常によく分かる。同様に、ピッチレートはより小さく、その後の振動はより弱い、すなわちより急速に弱まる。したがってこれにより、本発明による方法が、例えばアクセルストロークによって急制動動作中の軸重の動的移動の補償を強化するため又は改善をもたらすのに適していることが、即座に証明される。
【0057】
図9a)〜d)において、図6a)〜図11b)に示す状況に関連する各車輪における接触力が、左前の副図a)から右後のd)まで示される。本明細書では、前輪に関して、キックダウン有りのシミュレーションの細い又は薄い実線は、キックダウン無しの場合(太い又は濃い実線)よりも振れがやや小さく、したがって接触力が小さいことを表すことが明らかである。これは、この場合、車両が走行しているときの前方への軸重の動的移動により通常は予測されるであろう接触力の危機的な状態に達することが阻止されることを意味する。他方、後輪における接触力に基づいた場合、キックダウン有りの状況においてブレーキをかけたまさにその時点では、キックダウン無しの状況よりも接触力が大幅に大きいため、さらにここでは、著しく良好な制動力を伝達することができ、これは全体としてより安定した運転状況につながることが分かる。
【0058】
さらに、図8a)、b)において、測定の開始から1.94秒の時点で行われるキックダウンにより、ピッチ角が少なくとも10パーセント減少することにも留意すべきである。
【0059】
さらに、図9a)〜d)において、キックダウン無しの場合、2つの前輪は8000ニュートンを超えるタイヤ接触力に耐えなければならないため、タイヤの線形伝達範囲を離れて危機的な範囲に入ることにも留意すべきである。これに対して、キックダウン有りの場合の接触力は、ほぼ8000ニュートン程度であるため、これは依然として線形範囲内にある。結果として、この状況ではハンドリングの改善を得ることができる。さらに、副図c)及びd)は、反対に、後輪における接触力ではキックダウン無しのシミュレーションと比較して少なくとも200ニュートンの増大が記録されることを示し、したがってこれは、制動力及び横方向のコーナリング力のさらなる伝達を意味する。
【0060】
したがって全体的には、駆動モーメントの及ぼす影響によって軸重の移動を少なくとも部分的に補償できるという結果が得られる。前軸における車輪接触力が減るため、タイヤは、その伝達可能な縦力の限界範囲まで及ぶこともなければ当然入ることもない。限界範囲内では、タイヤは、接触力がすでに増大しているため縦力をそれ以降又はそれ以上伝達することができない。多くのタイヤは、この時点で縦力が弱まることさえある。図7a)〜d)に示す車輪速度を用いてこの作用を確認することができる。ブレーキをかけた時点(約2秒の時点)での前軸における車輪スリップの開始は、軸重の動的移動が部分的に補償されるためそれほど大きなものではない。後軸における車輪接触力は、同じくこの補償プロセスによって著しく大きくなる(図9a)〜d)を参照)。これはさらに、後軸においてより高いレベルのブレーキ圧力を可能にし、これはより良好な減速につながり(図10a)〜d)を参照)、最終的にこれは制動距離の短縮を意味する。前軸におけるブレーキ圧力のレベルも同様に、車輪接触力が小さくなることでタイヤが過負荷状態にならないため、より良好である(図9a)〜図10d)を参照)。したがって、ピッチングモーメントは、ブレーキをかけた時点で駆動モーメントに意図的に影響を及ぼすことによって部分的に補償することができ、それによりピッチング運動の振動がより急速に弱まることが、図8a)、b)から推測され得る。
【0061】
単に完全を期すために、この運転状況を図11a)、b)において参照し、関連する副図a)にはABSフラグが示され、副図b)にはVSC波形が示される。
【0062】
行われた測定に対応する別の例示的な運転状況が、図12a)〜図17b)に示される。108km/時の速度及び直線での初期走行に基づいて、ABSシステムの調整範囲内で制動されるか又はコーンを左右に避けながら運転することを伴う回避操作が、ここではシミュレートされる。
【0063】
図1a)〜d)と同様に、時間に対するアクセルペダルのパーセンテージ位置は、図12の副図a)に示される。時間に対するブレーキペダルの位置は副図b)に記録されている。ここで、測定の開始後約0.8秒の時点でブレーキペダルが突然完全に踏み込まれることが、ここで分かる。したがって、ここではバールで記録されているブレーキシリンダ圧力がそれに対応して発生することが、副図c)から明らかである。ステアリング角は副図d)に示される。この波形から、コーンを避けて運転するプロセスは、急制動が行われるときに始まることが分かる。
【0064】
関連する基準速度は、図13の副図a)に示される。細い又は薄い実線は、前の図2a)、b)の場合のような測定を再び示す。太い又は濃い実線はシミュレーションを示す。シミュレーションと測定とは非常によく一致する。機関に加えられる駆動モーメントは、副図b)に示される。ここでも、測定(細い実線)とシミュレーション(太い実線)とは互いによく一致する。これは、用いられるコンピュータモデルの適用性のさらに別の証拠となる。
【0065】
図14a)〜d)において、時間に対する各車輪速度の波形が、左前の副図a)から右後の副図d)まで再び示される。
【0066】
したがって、図15a)〜d)において、左前から右後までの各車輪において発生するようになっているブレーキ圧力は、一方では測定に関して(細い実線)、また他方ではシミュレーションに関して(太い実線)、副図a)〜d)に示される。ここでも、測定とシミュレーションは驚くほどよく一致しており、さらなるシミュレーションに利用することができる。
【0067】
単に完全を期すために、シミュレーション及び測定の両方に関して、時間に対するABSフラグが図16の副図a)に示され、VSC波形が副図b)に示される。
【0068】
次に、図17a)、b)は、副図a)において時間に対するヨーレートを、副図b)において横加速度を再現し、測定は細い又は薄い実線を用いて示され、シミュレーションは太い又は濃い実線の形態である。横加速度の波形は、走行されるコーンの組み合わせに従った予想経路を辿る。それによって生じるヨーレートについても同じことが言え、ヨーレートは鉛直軸を中心とした車両の回転を表す。
【0069】
108km/時の初期速度、及びコーンを避けて運転しているとき又は回避操作の過程で突然急制動動作を行うことを伴う、図12a)〜図17b)に示す運転状況は、前輪が270,000Pa(2.7バール)、後輪が320,000Pa(3.2バール)のタイヤ圧力を有し、且つ路面接触面積と乾いた路面との間の摩擦係数がμ=1.1である、ブリジストンブランドのタイプTuranza215/55/R16のタイヤを用いて、測定又はシミュレートされた。
【0070】
図12a)〜図17b)ですでに示した運転状況は、急制動動作の開始時に関して、キックダウン無しのシミュレーションの形態(太い実線曲線)及びキックダウン有りのシミュレーションの形態(細い又は薄い実線曲線)で図18a)〜図23d)に示される。これは、制動プロセスが開始されるとキックダウンが行われ、それによりエンジントルクが突然短期間にわたって加えられることにより、運転状況の改善を得ることができることを明確にするためのものである。
【0071】
図18a)、b)において、時間に対する基準速度が副図a)に示される。太い又は濃い実線はキックダウン無しのシミュレーションを示し、細い又は薄い実線はキックダウン有りのシミュレーションを示す。したがって、秒での時間に対するNmでの駆動モーメントは、副図b)に示される。キックダウンは、図示のタイミンググラフによれば、例えばシミュレーションの開始後約0.8秒程度で行われる。この場合、キックダウンの時間の長さは約0.4秒程度であり、ここで説明する例では、この間に全駆動モーメントが250ニュートンメートルをわずかに超えるまでに増大し、続いて−50ニュートンメートルまで急低下する。
【0072】
障害物を避けて運転するために得ることができるか又は望まれるy方向の車両の横変位は、キックダウン無しのシミュレーションの場合よりもキックダウン有りのシミュレーションの場合の方が目立つことが、図19の副図a)即座に明らかとなる。これは、キックダウンにより、車両が操縦しやすくなるため、よりスムーズに(in a better fashion)コーンを避けて運転できるか、又は障害物をより上手く避けることができることを意味する。この状況は、時間に対する車両の横変位が示される副図b)からも明らかである。ここでも、キックダウン有りのシミュレーションは、キックダウン無しのシミュレーションよりも優れたハンドリング特性、したがって優れた車両の制御能力を示す。
【0073】
図20に示す副図a)〜d)は、左前から右後までの車輪の時間に対する車輪速度を再び示すものであり、これらの図から、キックダウンが車輪速度の波形にいかなる影響も及ぼさないことが分かる。望ましくない車両の加速は事実上起こり得ない。
【0074】
図21a)、b)において、この運転状況でシミュレートされるようになっているピッチ角の曲線が、副図a)で時間に対して示される。ここでも、ピッチ角はキックダウン有りのシミュレーションの場合の方がスムーズな又は安定した波形を示すため、より良好な車両の操作が見込まれることが明らかである。同様に、ピッチレートは副図b)に再現される。これによっても、車両の挙動はキックダウン有りのシミュレーションの場合の方が快適になると想定される。
【0075】
図22a)〜d)において、図9a)〜d)ですでに行ったように、秒での時間に対するニュートンでの接触力が左前の副図a)から右後の副図d)まで再現される。この図から、キックダウン有りのシミュレーションの場合(細い又は薄い曲線)、キックダウン無しの場合(太い又は濃い曲線)の前輪における非常に大きな接触力を意図的に減らすことができ、これにより、これらの車輪が危機的な伝達範囲に入り込まないようになることが、特によく分かる。結果として、かなり大きな制動力を伝達することができる。さらに、キックダウン無しの場合よりも大きな約300ニュートンという2番目に大きな接触力の増大が生じるため、伝達可能な制動力の平均化を得ることができることが、副図b)において即座に確認できる。さらに、後軸の方が大きな制動力を伝達可能であり、伝達可能な制動力及び接触力が均等になるため、カーブの外側でより良好な制動反力を得ることができることが、副図c)及びd)から明らかである。
【0076】
この作用は、図23の左前輪から右後輪までの副図a)〜d)において、伝達可能な横力に関して明らかに確認される。副図b)から分かるように、キックダウン有りのシミュレーションの場合、横力の最初の増大によってキックダウン無しのシミュレーションよりも約300ニュートン大きい横力を右前輪に伝達することができる。右後輪についても同じことが言え、同様に約300ニュートン大きい横力を伝達することができる。これは、より安定し安全な運転状況につながる。
【0077】
さらなる例示的な状況が、図24a)〜図30d)に示される。ここでは、100km/時の速度で右カーブ運転時にABSを用いて急制動を突然行い、この場合も、キックダウン無しのシミュレーションは太い実線で、キックダウン有りのシミュレーションは細い実線で示されている。
【0078】
したがって、図24a)、b)において(前の図6a)、b)及び図18a)、b)におけるように)、その副図a)で、km/時での基準速度が時間に対してプロットされ、副図b)で、Nmでの駆動モーメントが秒での時間に対してプロットされる。ここで、キックダウンは、シミュレーションの開始から約1.94秒で始まり、機関の駆動モーメントを50ニュートンメートル弱から250ニュートンメートルを著しく超えるまでに急増させ、これは続いて、約0.3〜0.4秒後に再び250ニュートンメートル強から約50ニュートンメートルに減少する。
【0079】
図25a)〜d)において、副図a)で、ヨーレートが時間に対して再現される。副図b)は、時間に対する前後加速度を示す。副図c)は、時間に対する横加速度を示す。最後に、副図d)で、姿勢角が時間に対してプロットされる。
【0080】
図26a)〜d)において、再び前の図7a)〜d)及び図20a)〜d)におけるように、左前輪の副図a)から右後輪の副図d)まで、車輪の速度が再現される。ここでも、太い又は濃い実線のキックダウン無しのシミュレーションの場合及び細い又は薄い実線のキックダウン有りのシミュレーションの場合に、車輪速度が互いに大きく異ならず一致することが再び分かる。したがって、カーブ運転時、また他の動作状況においても、キックダウンによる車両の速度の変化は基本的に起こり得ない。
【0081】
図27a)〜d)において、前の図10a)〜d)の場合のように、キックダウンを行った場合及び行わない場合の2つのシミュレーション状況についてのブレーキ圧力が、左前輪の副図a)から右後輪の副図b)まで再び示される。急制動の開始及びキックダウンプロセスにより、キックダウン無しのシミュレーションよりもキックダウン有りのシミュレーションの場合に、大幅に高いブレーキ圧力を後輪において得ることができることが、ここから明らかに分かる。
【0082】
したがって、図28a)、b)のうち時間に対するピッチ角を示す副図a)から、キックダウンはシミュレーションの開始から約1.94秒で始まり、ピッチ角の波形がかなり弱くなり、その振幅が平坦になるとともに、その周波数は徐々に平滑化されることが分かる。副図b)に示されるピッチレートについても同じことが言える。いずれにしても、質的な点で、キックダウン有りのシミュレーションと、制動時又はカーブ運転時に自動車が前輪の上に偏るときの軸重の動的移動を顕著なガスの噴出又はキックダウンによって補償するという予想外の可能性との肯定的評価を見る限り、図28a)、b)の状況は再び、図8a)、b)及び図21a)、b)に示す状況に類似している。
【0083】
次に、図29a)〜d)において、左前輪における接触力から右後輪における接触力までが副図a)〜d)に示される。左前輪の場合、外側において波形の中央部で200ニュートンの接触力の増大が記録される。右前輪の場合、内側において波形の中央部で300ニュートンの減少が記録される。左後輪の場合、外側車輪において波形の中央部で800ニュートンの接触力の増大が記録され、それに対応して右後輪では、副図d)で分かるように、内側において少なくとも150ニュートンメートルの増大がある。これは、キックダウン無しだと右後輪が通常は持ち上がるであろうこの状況でさえも、この場合はこの車輪が依然として路面にしっかりと捉えられているため、この車輪も力を伝達できることを意味する。図29a)〜d)に示す状況は、図9a)〜d)に示す状況及び図22a)〜d)に示す状況と質的に類似している。
【0084】
次に、図30a)〜d)において、車輪の横力が、副図a)の左前から副図d)の右後まで示される。ここでも、キックダウン有りのシミュレーションの場合、伝達可能な横力の400ニュートンの増大が左前輪において記録され得ることが、ここから明らかである。右前輪の場合、200ニュートンメートルの伝達可能な横力の増大が記録され得る。左後輪では、伝達可能な横力の400ニュートンの増大を認めることができ、右後輪では、伝達可能な横力の200ニュートンの増大が記録され得る。したがって、キックダウン無しのシミュレーションの場合に事実上ゼロになる伝達可能な横力を、少なくとも200ニュートンの伝達可能な横力に変えることに再び成功した。
【0085】
100km/時の速度で右カーブ運転時に急制動を突然開始する、図24a)〜図30d)に示す状況から、本発明による方法により、車両がその前輪の上に偏るときの軸重の動的移動の少なくとも部分的な補償が、アクセルストロークを加えることによって、又はキックダウンを意図的に誘発して事実上最大レベルのエンジントルクを短期間にわたって強制的に引き起こすことによって可能になることが分かる。これにより、運転状況が大幅に改善される。車両の制御性が高まる。ハンドリングが簡単になる。危険な状況を克服しやすくなる。
【0086】
ここで、後軸における横方向のコーナリング力は、自動車の安定性に大きな影響を及ぼす。横方向のコーナリング力対車輪接触力の特性曲線は、後軸における車輪接触力の範囲内で急な上り勾配を示す。すなわち、車輪接触力のわずかな変化が、横方向コーナリング力の大きな変化を引き起こす。したがって、カーブでの制動時に、軸重の動的移動の補償によって、より大きな横方向コーナリング力を得ることができるため、カーブでの制動時の車両の安定性がより高くなる。さらに、上述の手順を用いて、車両のオーバーステアリング反応(ローリング又はスキッドの可能性を伴う)を減らすことができる。
【0087】
最後に、例えば図8a)、b)で前述したような状況の場合の、時間(秒)に対する角度におけるピッチ角が図31に示される。細い実線「A」は、キックダウン無しのピッチ角の波形を示す。太い実線「B」は、まさにブレーキをかけた時点でキックダウンが生じる場合のピッチ角の波形を示す。細い鎖線「C」は、ブレーキをかけた時点の0.1秒後にキックダウンが始まる場合のピッチ角の波形を示す。太い破線「D」は、ブレーキをかけた時点の0.2秒後にキックダウンが始まる場合のピッチ角の波形を示す。最後に、中間の濃さの鎖線「E」は、ブレーキをかけた時点の0.3秒後にキックダウンが始まる場合のピッチ角の波形を示す。全体的に見て、キックダウンがピッチ角の波形によい影響を及ぼすことが、質的に見てここからに分かる。これは、一方では振幅が抑えられ、他方では波形が平滑化されるか又はより早く弱まり得る。さらに、例えば、ブレーキをかけた時点から0.05秒〜1.5秒、好ましくは約0.1秒の時間窓内でキックダウンが行われる場合、キックダウン無しの制動プロセスとは対照的に特に良好なピッチ角波形、したがって著しい改善を得ることができることを、図31から認めることができる。
【0088】
したがって、本発明は、自動車の荷重の一部が少なくとも一方の前輪の上に偏るときの軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を初めて提供する。ここで、補償のために駆動モーメントの要求が与えられる。駆動モーメントの要求は、急ブレーキがかけられるときの急制動動作の場合、及びカーブ運転時のカーブ運転が不安定である場合に発せられる。さらに、本発明は、本発明によるこの方法を実施するためのマイクロプロセッサ及び制御装置の使用を初めて提案する。さらに、このような制御装置又はこのようなマイクロプロセッサを備える駆動概念が示される。最後に、本方法を実施するためのソフトウェアが挙げられる。特に、本発明による方法を実施するソフトウェアを実行するためにこのような制御装置又はこのようなマイクロプロセッサを備える、自動車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1a)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図1b)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図1c)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図1d)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の場合に行われる測定からの様々なデータ項目の1つ(太い実線)を示す。
【図2a)】比較のために対応するシミュレーション結果を補足した、図1a)〜d)に示す測定データに関連する基準速度を示し、シミュレーションは太い又は濃い実線の形態で、測定は細い又は薄い実線の形態で表す。
【図2b)】比較のために対応するシミュレーション結果を補足した、関連する駆動モーメントを示し、シミュレーションは太い又は濃い実線の形態で、測定は細い又は薄い実線の形態で表す。
【図3a)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い実線)を比較として示す。
【図3b)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い又は濃い実線)を比較として示す。
【図3c)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い実線)を比較として示す。
【図3d)】図1a)〜図2b)に示す状況に対応する自動車の4つの車輪のうちの1つの車輪速度に関する測定(細い実線)に対するシミュレーションデータ(太い実線)を比較として示す。
【図4a)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図4b)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図4c)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図4d)】図1a)〜図3d)に示す状況に関する車輪の1つにおける関連するブレーキ圧力を示す。
【図5a)】関連するABSフラグを示し、シミュレーションは太い又は濃い破線で、測定は細い実線で表す。
【図5b)】関連するVSC信号波形を示し、シミュレーションは太い破線で、測定は細い実線で表す。
【図6a)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の、キックダウン無しのシミュレーション(太い破線)及びキックダウン有りのシミュレーション(細い実線)を示し、シミュレーションと測定との比較のために図2a)、b)に同様に示したような、時間に対する基準速度を示す。
【図6b)】直線を走行しているときの100km/時からのABS支援急制動動作の、キックダウン無しのシミュレーション(太い破線)及びキックダウン有りのシミュレーション(細い実線)を示し、シミュレーションと測定との比較のために図2a)、b)に同様に示したような、時間に対する駆動モーメントを示す。
【図7a)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図7b)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図7c)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン有りのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図7d)】図6a)、b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示し、この場合も、太い実線はキックダウン有りのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図8a)】図6a)〜図7d)に示す運転状況に関する、自動車の関連するピッチ角を示す。
【図8b)】図6a)〜図7d)に示す運転状況に関する、関連するピッチレートを示す。
【図9a)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図9b)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図9c)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図9d)】図6a)〜図8b)に示す状態での車輪の1つに関連する接触力を示す。
【図10a)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図10b)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図10c)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図10d)】図6a)〜図9d)に示す状況に対応する車輪の1つのブレーキ圧力を示し、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図11a)】関連するABSフラグを示し、キックダウン無しのシミュレーションを太い破線で、キックダウン有りのシミュレーションを細い実線で表す。
【図11b)】関連するVSC信号波形を示し、キックダウン無しのシミュレーションを太い破線で、キックダウン有りのシミュレーションを細い実線で表す。
【図12a)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い又は濃い実線で表す。
【図12b)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い又は濃い実線で表す。
【図12c)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い実線で表す。
【図12d)】直線を走行している場合の図1a)〜d)に前掲されたものと同様であるが、ここでは、障害物を避けて運転するよう試みる場合に左、右、再び左、次に中央に戻るようにステアリングを急速に交互に切り返す場合の、108km/時に基づいた運転状況の種々のデータのうちの1つの測定(太い実線)を示し、測定は、太い実線で表す。
【図13a)】図12a)〜d)に示す運転状況に関連する基準速度をkm/時で示し、ここでは、図2a)〜図5b)で選択された図の形態と同様に、シミュレーションを太い実線で示し、測定は細い又は薄い実線の形態である。
【図13b)】関連する駆動モーメントをNmで示し、ここでは、図2a)〜図5b))で選択された図の形態と同様に、シミュレーションを太い実線で示し、測定は細い実線の形態である。
【図14a)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図14b)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図14c)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図14d)】図12a)〜図13b)に示す運転状況に関する4つの車輪のうちの1つの、シミュレーション車輪速度(太い実線)及び測定車輪速度(細い実線)を示す。
【図15a)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図15b)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図15c)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図15d)】車輪の1つのブレーキ圧力を示す。
【図16a)】ABSフラグの波形を示す。
【図16b)】VSC信号特性曲線の波形を示す。
【図17a)】図12a)〜図16b)に示す状況に関するヨーレートを示す。
【図17b)】図12a)〜図16b)に示す状況に関する横加速度を示す。
【図18a)】図12a)〜図17b)から得ることができる知識に基づいて、再び図12a)〜d)に示すような急制動を伴うステアリングの切り返しを利用する108m/時に基づいた運転状況を、キックダウン無しの第1のシミュレーションの形態(太い実線)と、比較のためにキックダウン有りの本発明による第2のシミュレーションの形態(細い実線)とで示し、基準速度を再現する。
【図18b)】図12a)〜図17b)から得ることができる知識に基づいて、再び図12a)〜d)に示すような急制動を伴うステアリングの切り返しを利用する108m/時に基づいた運転状況を、キックダウン無しの第1のシミュレーションの形態(太い実線)と、比較のためにキックダウン有りの本発明による第2のシミュレーションの形態(細い実線)とで示し、駆動モーメントを再現する。
【図19a)】X軸に沿ってプロットされた走行距離に対してy方向で車両の関連逸脱を示し、図6a)〜図11b)で前に行ったように、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを示し、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図19b)】X軸に沿ってプロットされた時間に対してy軸に沿ってプロットされた車両の切り返しを示し、図6a)〜図11b)で前に行ったように、この場合も、太い実線はキックダウン無しのシミュレーションを示し、細い実線はキックダウン有りのシミュレーションを表す。
【図20a)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図20b)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図20c)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図20d)】図18a)〜図19b)に示す状況に関連する車輪速度を、キックダウン無しのシミュレーション及びキックダウン有りのシミュレーションの両方の形態で示す。
【図21a)】図18a)〜図20d)に示す状況に関連する車両のピッチ角を示す(太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図21b)】関連するピッチレートを示す(太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図22a)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図22b)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図22c)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図22d)】図18a)〜図21b)に示す状況での車輪の1つの関連する接触力を示す。
【図23a)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図23b)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図23c)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図23d)】図18a)〜図22d)による運転状況に関する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図24a)】最初に100km/時で右カーブ運転時にABSを用いて急制動を行った場合の開始状況を示し、この場合も、キックダウン無しのシミュレーションの形態(太い実線)及びキックダウン有りのシミュレーションの形態(細い実線)で、基準速度を示す。
【図24b)】最初に100km/時で右カーブ運転時にABSを用いて急制動を行った場合の開始状況を示し、この場合も、キックダウン無しのシミュレーションの形態(太い実線)及びキックダウン有りのシミュレーションの形態(細い実線)で、駆動モーメントを示す。
【図25a)】図24a)、b)に示す状況の場合のヨーレートに関する関連データを示す。
【図25b)】図24a)、b)に示す状況の場合の前後加速度に関する関連データを示す。
【図25c)】図24a)、b)に示す状況の場合の横加速度に関する関連データを示す。
【図25d)】図24a)、b)に示す状況の場合の姿勢角に関する関連データを示す。
【図26a)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図26b)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図26c)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図26d)】図24a)〜図25d)に示す状況による4つの車輪のうちの1つの車輪速度を示す(前述のように、太い実線はキックダウン無し、細い実線はキックダウン有り)。
【図27a)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図27b)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図27c)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図27d)】図24a)〜図26d)に示す状況に関する4つの車輪のうちの1つの関連するブレーキ圧力を示す。
【図28a)】図24a)〜図27d)に示す状況に関するピッチ角を示す。
【図28b)】図24a)〜図27d)に示す状況に関するピッチレートを示す。
【図29a)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図29b)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図29c)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図29d)】図24a)〜図28b)に示す状況に関する車輪の1つの接触力を示す。
【図30a)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図30b)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図30c)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図30d)】図24a)〜図29d)に示す状況に対応する車輪の1つに伝達可能な横力を示す。
【図31】キックダウン無しの制動時の、時間に対する車両のピッチ角の波形(細い実線「A」)と、これと比較して、キックダウン有りの急制動動作の場合のピッチレートの4つの例示的な線波形「B」〜「E」とを示し、第1の例では、キックダウンがブレーキをかけた時点で直接実施され(太い実線「B」)、第2の例は、ブレーキをかけた時点の0.1秒後のキックダウンを示し(細い鎖線「C」)、第3の例は、ブレーキをかけた時点の0.2秒後のキックダウンを示し(太い破線「D」)、第4の例は、ブレーキをかけた時点の0.3秒後のキックダウンを示す(中間の濃さの鎖線「E」)。
【符号の説明】
【0090】
図31
A 細い実線曲線
B 太い実線曲線
C 細い鎖線曲線
D 太い破線曲線
E 中間の濃さの鎖線曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法であって、補償のために、駆動モーメントを増減させることによって前記自動車の速度は実質的に変わらないことを特徴とする、自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項2】
前記駆動モーメントを増大させるために、アクセルストロークが加えられることを特徴とする、請求項1に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項3】
急制動動作を行うときの前記軸重の前方への動的移動を補償するために、前記急制動動作中に前記駆動モーメントの要求、好ましくは前記アクセルストロークが加えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項4】
カーブ運転時の前記軸重の斜め前方及び/又は横方向の動的移動を補償するために、前記カーブ運転時に前記駆動モーメントの要求、好ましくは前記アクセルストロークが加えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項5】
例えばエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)、電動油圧パワーステアリングシステム(EHPS)、電動パワーステアリングシステム(EPS又はEPAS)、電子減衰力制御システム(CDC)、ブレーキアシスタント、インタラクティブダイナミックドライビングシステム(IDS)、アンダーステアコントロールロジック(UCL)等、統合シャーシ制御システム(ICC)の枠組み内で用いられる運転安定性システム又はその構成要素を制御するプロセスのために、前記自動車の現在の状況についてセンサによって送られる、該自動車の現状の安定性に関する状況依存性のシャーシデータ、制動データ、及び/又はステアリングデータの項目を評価するステップと、
前記自動車の危機的な状態、及び/又は利用可能な前記データを用いた調整を必要とする前記自動車の状態を判定するステップと、
前記軸重の配分を補償するために要求すべき前記駆動モーメントの大きさを決定するステップと、
前記軸重の配分を補償するために要求すべき前記駆動モーメントの持続時間を決定するステップと、
適切な要求を与えることによって、所定の大きさ及び持続時間を用いて前記要求される駆動モーメントを開始するステップと
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項6】
前記急制動動作はABS支援によって実施されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項7】
前記急制動動作の有無は、ブレーキがかけられる時点を表すABSフラグの検出、ペダルの傾き、又はマスタブレーキシリンダの圧力によって判定されることを特徴とする、請求項6に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項8】
前記急制動動作の有無は、完全に踏み込まれたブレーキペダルに対応するブレーキペダル角度設定を検出するプロセスによって判定されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項9】
カーブ運転時の前記急制動動作の有無又は危機的な状況の有無は、ESPからのデータを評価することによって判定されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項10】
カーブ運転時にブレーキをかけた時点又は危機的な状況が有る場合に、好ましくはキックダウンによって、又は250ms〜750msの持続時間、好ましくは300ms〜500msの持続時間を有するフルパワーパルスによって、駆動モーメントの増大が開始されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項11】
好ましくは前記キックダウンによる、又は前記全開パルスによる前記駆動モーメントの増大は、ブレーキをかけた時点に対してゼロの時点とみなす、−0.5秒〜+1.0秒、好ましくは−0.01秒〜+0.5秒、特に好ましくは+0.05秒〜+0.25秒の時間窓内で開始されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項12】
好ましくは前記キックダウンによる、又は前記全開パルスによる前記駆動モーメントの増大は、複数回の駆動モーメントの増大、好ましくは前記アクセルストローク又は前記全開パルスからパルス状に発生させられることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項13】
前記パルス状の駆動モーメントの増大、好ましくはアクセルストローク又は全開パルスはそれぞれ、50ms〜150ms、好ましくは100msの持続時間を有することを特徴とする、請求項12に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項14】
前記駆動モーメントの増大による、好ましくは前記アクセルストローク又は前記全開パルスによる、少なくとも250Nm、好ましくは少なくとも270Nmの前記駆動モーメントが要求されることを特徴とされる、請求項1〜13に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する、マイクロプロセッサ。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する、制御装置。
【請求項17】
請求項16に記載の制御装置及び/又は請求項15に記載のマイクロプロセッサを含む、自動車駆動装置、好ましくは内燃機関。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する、ソフトウェア。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する請求項18に記載のソフトウェアを実行するために、請求項16に記載の制御装置を含むか、又は請求項15に記載のマイクロプロセッサを含む、自動車。
【請求項1】
自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法であって、補償のために、駆動モーメントを増減させることによって前記自動車の速度は実質的に変わらないことを特徴とする、自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項2】
前記駆動モーメントを増大させるために、アクセルストロークが加えられることを特徴とする、請求項1に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項3】
急制動動作を行うときの前記軸重の前方への動的移動を補償するために、前記急制動動作中に前記駆動モーメントの要求、好ましくは前記アクセルストロークが加えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項4】
カーブ運転時の前記軸重の斜め前方及び/又は横方向の動的移動を補償するために、前記カーブ運転時に前記駆動モーメントの要求、好ましくは前記アクセルストロークが加えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項5】
例えばエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)、電動油圧パワーステアリングシステム(EHPS)、電動パワーステアリングシステム(EPS又はEPAS)、電子減衰力制御システム(CDC)、ブレーキアシスタント、インタラクティブダイナミックドライビングシステム(IDS)、アンダーステアコントロールロジック(UCL)等、統合シャーシ制御システム(ICC)の枠組み内で用いられる運転安定性システム又はその構成要素を制御するプロセスのために、前記自動車の現在の状況についてセンサによって送られる、該自動車の現状の安定性に関する状況依存性のシャーシデータ、制動データ、及び/又はステアリングデータの項目を評価するステップと、
前記自動車の危機的な状態、及び/又は利用可能な前記データを用いた調整を必要とする前記自動車の状態を判定するステップと、
前記軸重の配分を補償するために要求すべき前記駆動モーメントの大きさを決定するステップと、
前記軸重の配分を補償するために要求すべき前記駆動モーメントの持続時間を決定するステップと、
適切な要求を与えることによって、所定の大きさ及び持続時間を用いて前記要求される駆動モーメントを開始するステップと
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項6】
前記急制動動作はABS支援によって実施されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項7】
前記急制動動作の有無は、ブレーキがかけられる時点を表すABSフラグの検出、ペダルの傾き、又はマスタブレーキシリンダの圧力によって判定されることを特徴とする、請求項6に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項8】
前記急制動動作の有無は、完全に踏み込まれたブレーキペダルに対応するブレーキペダル角度設定を検出するプロセスによって判定されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項9】
カーブ運転時の前記急制動動作の有無又は危機的な状況の有無は、ESPからのデータを評価することによって判定されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項10】
カーブ運転時にブレーキをかけた時点又は危機的な状況が有る場合に、好ましくはキックダウンによって、又は250ms〜750msの持続時間、好ましくは300ms〜500msの持続時間を有するフルパワーパルスによって、駆動モーメントの増大が開始されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項11】
好ましくは前記キックダウンによる、又は前記全開パルスによる前記駆動モーメントの増大は、ブレーキをかけた時点に対してゼロの時点とみなす、−0.5秒〜+1.0秒、好ましくは−0.01秒〜+0.5秒、特に好ましくは+0.05秒〜+0.25秒の時間窓内で開始されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項12】
好ましくは前記キックダウンによる、又は前記全開パルスによる前記駆動モーメントの増大は、複数回の駆動モーメントの増大、好ましくは前記アクセルストローク又は前記全開パルスからパルス状に発生させられることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項13】
前記パルス状の駆動モーメントの増大、好ましくはアクセルストローク又は全開パルスはそれぞれ、50ms〜150ms、好ましくは100msの持続時間を有することを特徴とする、請求項12に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項14】
前記駆動モーメントの増大による、好ましくは前記アクセルストローク又は前記全開パルスによる、少なくとも250Nm、好ましくは少なくとも270Nmの前記駆動モーメントが要求されることを特徴とされる、請求項1〜13に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する、マイクロプロセッサ。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する、制御装置。
【請求項17】
請求項16に記載の制御装置及び/又は請求項15に記載のマイクロプロセッサを含む、自動車駆動装置、好ましくは内燃機関。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する、ソフトウェア。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動車における軸重の動的移動を少なくとも部分的に補償する方法を実施する請求項18に記載のソフトウェアを実行するために、請求項16に記載の制御装置を含むか、又は請求項15に記載のマイクロプロセッサを含む、自動車。
【図1a)】
【図1b)】
【図1c)】
【図1d)】
【図2a)】
【図2b)】
【図3a)】
【図3b)】
【図3c)】
【図3d)】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図4d)】
【図5a)】
【図5b)】
【図6a)】
【図6b)】
【図7a)】
【図7b)】
【図7c)】
【図7d)】
【図8a)】
【図8b)】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図10a)】
【図10b)】
【図10c)】
【図10d)】
【図11a)】
【図11b)】
【図12a)】
【図12b)】
【図12c)】
【図12d)】
【図13a)】
【図13b)】
【図14a)】
【図14b)】
【図14c)】
【図14d)】
【図15a)】
【図15b)】
【図15c)】
【図15d)】
【図16a)】
【図16b)】
【図17a)】
【図17b)】
【図18a)】
【図18b)】
【図19a)】
【図19b)】
【図20a)】
【図20b)】
【図20c)】
【図20d)】
【図21a)】
【図21b)】
【図22a)】
【図22b)】
【図22c)】
【図22d)】
【図23a)】
【図23b)】
【図23c)】
【図23d)】
【図24a)】
【図24b)】
【図25a)】
【図25b)】
【図25c)】
【図25d)】
【図26a)】
【図26b)】
【図26c)】
【図26d)】
【図27a)】
【図27b)】
【図27c)】
【図27d)】
【図28a)】
【図28b)】
【図29a)】
【図29b)】
【図29c)】
【図29d)】
【図30a)】
【図30b)】
【図30c)】
【図30d)】
【図31】
【図1b)】
【図1c)】
【図1d)】
【図2a)】
【図2b)】
【図3a)】
【図3b)】
【図3c)】
【図3d)】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図4d)】
【図5a)】
【図5b)】
【図6a)】
【図6b)】
【図7a)】
【図7b)】
【図7c)】
【図7d)】
【図8a)】
【図8b)】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図10a)】
【図10b)】
【図10c)】
【図10d)】
【図11a)】
【図11b)】
【図12a)】
【図12b)】
【図12c)】
【図12d)】
【図13a)】
【図13b)】
【図14a)】
【図14b)】
【図14c)】
【図14d)】
【図15a)】
【図15b)】
【図15c)】
【図15d)】
【図16a)】
【図16b)】
【図17a)】
【図17b)】
【図18a)】
【図18b)】
【図19a)】
【図19b)】
【図20a)】
【図20b)】
【図20c)】
【図20d)】
【図21a)】
【図21b)】
【図22a)】
【図22b)】
【図22c)】
【図22d)】
【図23a)】
【図23b)】
【図23c)】
【図23d)】
【図24a)】
【図24b)】
【図25a)】
【図25b)】
【図25c)】
【図25d)】
【図26a)】
【図26b)】
【図26c)】
【図26d)】
【図27a)】
【図27b)】
【図27c)】
【図27d)】
【図28a)】
【図28b)】
【図29a)】
【図29b)】
【図29c)】
【図29d)】
【図30a)】
【図30b)】
【図30c)】
【図30d)】
【図31】
【公表番号】特表2007−536155(P2007−536155A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512082(P2007−512082)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005080
【国際公開番号】WO2005/110835
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506425295)ジーエム グローバル テクノロジー オペレーションズ,インク. (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005080
【国際公開番号】WO2005/110835
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506425295)ジーエム グローバル テクノロジー オペレーションズ,インク. (22)
【Fターム(参考)】
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