説明

化学的機械的平坦化後用のアルカリ性洗浄組成物

【課題】CMP後洗浄組成物およびそれを含む方法を提供すること。
【解決手段】洗浄組成物において、その組成物のpHが9.5〜11.5の範囲にあり、水、有機塩基、ならびにアミノポリカルボン酸およびヒドロキシルカルボン酸を含む複数のキレート剤を含むように構成する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体工業において、アルミニウムよりもむしろ銅配線が配線材料としてますます用いられつつある。アルミニウムに対する銅の優れた導電率は、より大きな電流搬送能力、より高速の配線をもたらすことが可能である。現在、銅配線は、いわゆる「ダマシン」または「二重ダマシン」組立工程を用いて形成される。簡単に言えば、ダマシン金属化工程は、半導体ウエハ表面上に形成されるくぼみに導電性金属の堆積により配線を形成する。一般に、半導体デバイス(例えば、集積回路)は半導体基板上に形成される。これらの基板は、一般に、酸化被膜により覆われる。材料は、基板表面内の象眼領域と呼ばれる開口部を造りだす酸化被膜の選択領域から除去することが可能である。これらの象眼領域はデバイスの導体配線を形成する回路配線パターンに対応する。
【0002】
一旦象眼パターンが酸化膜内に形成されたら、パターン化酸化膜を均一に覆う薄いバリア層を作り上げることが可能である。このバリア層は、窒化チタン、窒化タンタル、または窒化タングステンからなることが可能であるがそれらに限定されない。バリア層が形成されてから、好ましくは銅を含む導電性金属のシード層が堆積される。銅のシード層は、物理的スパッタリング、化学蒸着(CVD)、または電気メッキに限定されないがそれらを含む多様な堆積技術により銅のバルク堆積用の基盤を形成する。バルク銅が堆積した後、過剰の銅は、例えば、化学的機械的平坦化(CMP)により除去することが可能である。過剰材料を除去することの他に、CMP法は基板表面の平坦化を達成することを含む。銅層のCMPは、銅、基礎をなす基板材料、および拡散バリア材料が異なる率で除去されるという事実の故に魅力的である。この問題は、多くの場合、「選択性」と呼ばれる。CMP法、特に銅層に関連する他の問題には、銅ディッシング、酸化物腐食、および/またはフィールド損失が挙げられるがそれらに限定されない。
【0003】
CMP法において、研磨および過剰材料の除去は、化学的および機械的手段の組合せを通して達成される。CMP法は、基板表面に対する、化学反応性媒体内に研磨粒子(例えば、アルミナ、シリカ、セラミック、高分子粒子など)を含有するCMPスラリーの塗布を含む。一般的なCMP法において、ウエハ表面は、研磨粒子を含有する化学反応性スラリーが表面を流れる一方で、研磨パッドを介して機械的に磨き上げることが可能である。「固定研磨CMP」と呼ばれるなお別のCMP法において、研磨粒子は、ウエハ表面が化学反応性媒体と接触する一方で、研磨パッド表面内に埋め込まれることが可能である。
【0004】
一般的なCMPスラリーは、研磨粒子、反応剤、界面活性剤、および適する酸化剤からなる水性懸濁液である。スラリーに添加することが可能である反応剤には、有機酸(例えば、クエン酸)、アミノ酸(例えば、グリシン)およびアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)が挙げられる。残念なことに、CMP処理は、スラリーからまたは処理そのものにより生成する粒子、フィルム、金属イオン不純物および酸化物などの残留物を後に残す。一部の、すなわち、ある種のCMPスラリーにおいて用いられる反応剤は、また、残留物を残すと共に、潜在的な腐食源を提供することが可能である。例えば、CMPスラリー内の研磨粒子の使用は、種々の粒子状汚染物が研磨表面上に残ることを引き起こすことが可能である。さらに、ベンゾトリアゾールなどの一部の反応剤は、基板表面上に有機残留物またはフィルムを残すことが可能である。ナトリウム、カリウム、および鉄塩などの一部の塩および/またはスラリー配合物中の化合物などの他の反応剤は、これらの金属イオン不純物の有意な量を後に残すことが可能である。さらに、酸化剤などの反応剤は、CMP処理の間の銅酸化のせいで銅上に残留酸化膜を残すことが可能である。この残留酸化膜は、電子デバイスの電気特性に悪影響を与えることが可能である。
【0005】
これらの問題を改善するために、基礎をなす基板表面への腐食を限定する一方で、上述の残留物を除去するためのCMP後の洗浄段階が必要とされることが可能である。CMP後洗浄段階のさらなる目標には、低誘電率(低−k)表面上のウォーターマークの防止が挙げられるがそれに限定されない。半導体工程用に用いられる進化した低−k誘電表面は本質的に疎水性であり、ウエハ乾燥の間にウォーターマークを形成する傾向がある。洗浄成分は、また、洗浄成分に対するウエハの湿潤性を改善することによりウォーターマーク形成を最小化することが必要とされる。CMP後洗浄段階は、基板表面のエッチングを最小化し、いかなる有意な程度における表面粗さの増大をも避けながら、これらの目標に合致してゆくことが好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において開示されるものは、CMP後洗浄組成物およびそれを含む方法である。ある態様において、組成物のpHが9.5〜11.5であることが可能であり、水、有機塩基、ならびにアミノポリカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸を含む複数のキレート剤、任意に界面活性剤、および任意に腐食防止剤を含む、化学的機械的平坦化後に基板を処理するための組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本明細書に記載されるいくつかの代表的な組成物について静電容量対時間をプロットしたグラフである。
【図2】本発明のいくつかの代表的な溶液についてインピーダンス曲線を比較したグラフである。
【図3】研磨試料および研磨+溶液処理試料についてX線誘発オージェ電子ピークをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
CMP後洗浄組成物およびそれを含む方法が本明細書において開示される。本明細書において記載される組成物および方法は、CMP洗浄処理から生成する残留物を除去するために用いることが可能である。特定の態様において、基板は銅または銅含有材料を含む。用語「銅」および「銅含有材料」は、本明細書において互換性をもって用いられ、純粋銅、Cu−Al合金などの銅含有合金の層を含む基板、およびTi/TiN/CuおよびTa/TaN/Cu多層基板を含むがそれらに限定されない。これらの態様において、本組成物は、アルカリpH範囲において配合されるにも拘わらず、以外にもそして驚くべきことに銅表面の酸化を引き起こさない。さらに、本組成物はまた、金属イオンと結合してキレート化し、例えば、同じものによる処理後の半導体ウエハなどの種々の基板を洗浄することが可能である。
【0009】
本洗浄組成物は、水、有機塩基、複数のキレート剤、任意に界面活性剤、および任意に腐食防止剤を含む。特定の態様において、複数のキレート剤は少なくとも一種のアミノポリカルボン酸および少なくとも一種のヒドロキシカルボン酸からなる。本組成物のpHは9.5〜11.5または10〜11の範囲にあることが可能である。
【0010】
本明細書において記載される組成物には有機塩基が含まれる。本組成物に添加される有機塩基の量は、少なくとも9.5のpHを得るために十分であることが好ましい。有機塩基は、基礎をなす基板、特に銅に対する腐食を引き起こさない。特定の好ましい態様において、有機塩基は第4級アンモニウム水酸化物を含む。第4級アンモニウム水酸化物の特定例には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、水酸化(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウム、水酸化(2−ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウムおよび水酸化(1−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムが挙げられる。ある特定の態様において、本組成物はTMAHなどの第4級アンモニウム水酸化物を含有する。第4級アンモニウム水酸化物以外の他の適する有機塩基の例には、ヒドロキシルアミン、第1級、第2級または第3級脂肪族アミンなどの有機アミン、脂環式アミン、芳香族アミンおよび複素環式アミン、およびアンモニア水が挙げられるがそれらに限定されない。ヒドロキシルアミンの特定例には、ヒドロキシルアミン(NH2OH)、N−メチルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミンおよびN,N−ジエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。第1級脂肪族アミンの特定例には、モノエタノールアミン、エチレンジアミンおよび2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールが挙げられる。第2級脂肪族アミンの特定例には、ジエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、ジプロピルアミンおよび2−エチルアミノエタノールが挙げられる。第3級脂肪族アミンの特定例には、ジメチルアミノエタノールおよびエチルジエタノールアミンが挙げられる。脂環式アミンの特定例には、シクロヘキシルアミンおよびジシクロヘキシルアミンが挙げられる。芳香族アミンの特定例には、ベンジルアミン、ジベンジルアミンおよびN−メチルベンジルアミンが挙げられる。複素環式アミンの特定例には、ピロール、ピロリジン、ピロリドン、ピリジン、モルホリン、ピラジン、ピペリジン、N−ヒドロキシエチルピペリジン、オキサゾールおよびチアゾールが挙げられる。有機塩基は、単独でまたは相互に組み合わせてのいずれかで用いることが可能である。
【0011】
キレート剤が別のものよりもある金属イオンに関してより選択的であるので、複数のキレート剤またはそれらの塩は本明細書において記載される組成物中において用いられる。これらのキレート剤が基板表面上の金属イオン汚染物に結合され、それらを本組成物中に溶解することが可能であることは信じられる。さらに、特定の態様において、キレート剤は、これらの金属イオンを組成物中に保持し、イオンが基板表面上に再度堆積することを防ぐことができることが好ましい。特定の態様において、本組成物に添加されるキレート剤は、アルカリpHで銅表面の酸化をも防ぐことが可能である抗酸化特性を有することが可能である。
【0012】
本組成物に添加される全体キレート剤の濃度は、50パーツ・パー・ミリオン(ppm)から15%または0.1%〜5重量%の範囲にあることが可能である。使用可能である適当なキレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(NHEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチルクレントリアミン五酢酸(DPTA)、エタノールジグリシン酸塩、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、リン酸、酒石酸、メチルジホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、エチリデン−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビスメチレンホスホン酸、ドデシルアミノビスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ヘキサジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸および1,2−プロパンジアミンテトラメチレンホスホン酸またはアンモニウム塩、有機アミン塩、マロン酸、コハク酸、ジメルカプトコハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、トリカルバリル酸などのポリカルボン酸、プロパン−1,1,2,3−四カルボン酸、ブタン−1,2,3,4−四カルボン酸、ピロメリット酸、グリコール酸などのオキシカルボン酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、ジグリコール酸、サリチル酸、没食子酸、カテコールなどのポリフェノール、ピロガロール、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸、8−オキシキノリンなどの複素環式化合物、α−ジピリジル・アセチルアセトンなどのジケトンが挙げられるが、これらのものに限定されない。
【0013】
特定の態様において、複数のキレート剤はアミノポリカルボン酸およびヒドロキシルカルボン酸を含む。アミノポリカルボン酸は、例えば、組成物内の金属イオンをキレート化することが可能である。しかし、これらのアミノポリカルボン酸のキレート化能力は、アルカリpHで減退することが可能であり、それによって組成物の効力を減少させる。これを改善するために、ヒドロキシカルボン酸が特定pHレベルでの洗浄特性を改善するために添加される。好適なアミノポリカルボン酸の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、n−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびニトリロ三酢酸(NTA)が挙げられる。ヒドロキシルカルボン酸の例には、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸が挙げられる。特定の態様において、三つの異なるキレート剤:アミノポリカルボン酸EDTAおよびヒドロキシルカルボン酸グルコン酸およびクエン酸が用いられる。
【0014】
水もまた本明細書において開示される組成物中に存在する。それは、例えば、水系の有機塩基溶液またはキレート剤溶液などの他の要素の成分として付随的に存在することができるか、またはそれは別個に添加することができる。水の一部の非限定例には、脱イオン水、超純水、蒸留水、二重蒸留水、または低金属含量を有する脱イオン水が挙げられる。好ましくは、約65重量%以上、または約75重量%以上、または約85重量%以上、または約95重量%以上の量で存在する。
【0015】
界面活性剤は任意に組成物に添加することが可能である。界面活性剤のあらゆるタイプ、陰イオン/陽イオン/非イオン/両性イオンまたはそれらの組合せは、用いることが可能である。界面活性剤の選択は、湿潤化特性、発泡特性、洗浄力、すすぎ洗い能力などを含む種々の基準に応じて決めることが可能である。これらの態様において、界面活性剤濃度は、1ppm〜10000ppmまたは50ppm〜5000ppmの範囲にあることが可能である。界面活性剤のさらなる例には、シリコーン界面活性剤、ポリ(アルキレンオキシド)界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤が挙げられる。本方法の組成物における使用に適する非イオン界面活性剤には、トリトン(TRITON)(登録商標)X−114、X−102、X−45、X−15などのオクチルおよびノニルフェノールエトキシレートおよびBRIJ(登録商標)56(C1633(OCH2CH210OH)(ICI)、BRIJ(登録商標)58(C1633(OCH2CH220OH)(ICI)などのアルコール・エトキシレートが挙げられるがそれらに限定されない。なお、さらなる代表的な界面活性剤には、アセチレン型アルコールおよびそれらの誘導体、アセチレン型ジオール(非イオンアルコキシル化および/または自己乳化アセチレン型ジオール界面活性剤)およびそれらの誘導体、アルコール(第1級および第2級)エトキシレート、アミンエトキシレート、グルコシド、グルカミド、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−コ−プロピレングリコール)、または文献、McCutcheon‘sEmulsifiers and Detergents,North American Edition for the Year 2000 published by Manufacturers Confectioners Publishing Co.of Glen Rock,N.J.に示される他の界面活性剤が挙げられる。
【0016】
腐食防止剤はまた、洗浄処理の間、銅線を保護するために、任意に添加することが可能である。本明細書に開示の組成物は、また、任意に約15重量%以下、または約0.2〜約10重量の腐食防止剤を含有することができる。参照したことで本明細書に記載したものとする米国特許第5,417,877号に開示されるものなどの類似の用途のための技術上公知のあらゆる腐食防止剤は、用いることが可能である。腐食防止剤は、例えば、有機酸、有機酸塩、フェノール、トリアゾール、ヒドロキシルアミンまたはその酸塩であることが可能である。特定の腐食防止剤の例には、アントラニル酸、没食子酸、安息香酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、D,L−リンゴ酸、マロン酸、フタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、ベンゾトリアゾール(BZT)、レゾルシノール、カルボキシベンゾトリアゾール、ジエチルヒドロキシルアミンおよびその乳酸およびクエン酸塩などが挙げられる。用いることが可能である腐食防止剤のさらなる例には、カテコール、ピロガロール、および没食子酸のエステルが挙げられる。用いることができる特定のヒドロキシルアミンには、ジエチルヒドロキシルアミンおよびその乳酸およびクエン酸塩が挙げられる。なお適する腐食防止剤の他の例には、果糖、チオ硫酸アンモニウム、グリシン、乳酸、テトラメチルグアニジン、イミノ2酢酸、およびジメチルアセトアセタミドが挙げられる。特定の態様において、腐食防止剤は、約4〜約7の範囲にあるpHを有する弱酸を含むことが可能である。弱酸の例には、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼン、および/またはサリチルヒドロキサム酸が挙げられる。
【0017】
本組成物はまた、1種もしくはそれ以上の次のような添加剤を含むことが可能である:化学変性剤、染料、殺生剤、防腐剤、および他の添加剤。これらの添加剤は、それらが組成物のpH範囲に悪影響を及ぼさない程度まで添加することが可能である。
【0018】
本明細書において記載される組成物は、複数のキレート剤を水、有機塩基、および界面活性剤、腐食防止剤、および/または添加される場合の添加剤などの他の成分と混合することにより調製することが可能である。特定の態様において、本明細書において記載される洗浄組成物中に用いられる成分は、個別に、または微量金属イオン汚染を低減させるためにイオン交換法を用いて2以上の成分からなる組成物として精製することが可能である。特定の態様において、混合は、そこに含有される成分の溶解に影響を与えるために約40〜60℃の温度範囲で行うことが可能である。EDTAなどのある種のキレート酸を含有する態様において、溶解度は水中で極めて低い。これらの態様において、他の成分を添加する前に第一に有機塩基を含有する溶液中にこれらの酸を溶解することは、従って、望ましいことが可能である。得られる組成物は、潜在的に基板を害することができるであろうあらゆる不溶解粒子を除去するために、任意に濾過することが可能である。
【0019】
代替的な態様において、複数のキレート剤、有機塩基、任意の界面活性剤、および任意の腐食防止剤を含む濃縮組成物が提供され、それは水中において希釈されて組成物を提供することが可能である。本発明の濃縮組成物、すなわち、「濃縮物」は、濃縮物を望ましい濃度およびpHに希釈することを可能とする。濃縮物は、また、より長い貯蔵寿命およびより容易な製品の出荷および貯蔵を可能とする。
【0020】
本処理組成物は、好ましくは、CMP処理後の基板の表面を処理するために用いられる。適する基板には、ガリウムヒ素(「GaAs」)、窒化ホウ素(「BN」)シリコン、および結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、シリコンジオキシド(SiO2)、シリコンカーバイド(「SiC」)、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、窒化シリコン(「SiN」)、炭窒化シリコン(「SiCN」)、有機シリカガラス(「OSG」)、有機フルオロシリケートガラス(「OFSG」)、フルオロシリケートガラス(「FSG」)などのシリコン含有組成物などの半導体材料および他の適切な基板またはそれらの混合物が挙げられるが、これらのものに限定されない。基板は、さらに、銅などの金属材料がそこに塗布される多様な層、例えば、拡散バリア層(例えば、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、WN、TiSiN、TaSiN、SiCN、TiSiCN、TaSiCN、またはW(C)N)、反射防止膜、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質有機、無機材料、低誘電率材料、高誘電率材料、および追加の金属層などを含むことが可能である。さらなる代表的な基板には、シリコン、アルミニウム、または高分子樹脂が挙げられる。
【0021】
本明細書において記載される方法は、例えば、研磨粒子、処理残留物、酸化物、金属イオン、塩、またはフィルムまたは粒子残留物として存在するそれらの複合体または組合せなどのCMP処理後残留物を有する基板を、記載の組成物と接触させることにより行うことが可能である。洗浄方法は、洗浄成分および水からなる流体媒体中において高分子ブラシによりウエハを研磨することを含むことが可能である。ウエハ表面を洗浄するための別の方法は、ウエハ表面を洗浄成分により高速で噴霧することを含むことが可能である。洗浄するためのなお別の方法は、洗浄成分の浴中にウエハを浸漬し、適するトランスデューサを用いてメガソニックエネルギーを与えることである。基板の組成物への暴露のための一般的な時間帯は、例えば、0.1〜60分、または1〜30分、または1〜15分の範囲にあることが可能である。本組成物との接触後、基板はすすぎ洗いをし、次に乾燥することが可能である。特定の態様において、脱イオン水すすぎまたは他の添加物と共に脱イオン水を含有するすすぎは、基板を本明細書に記載される組成物と接触させる前、間、および/または後に用いることが可能である。乾燥は、一般的に、不活性雰囲気下で行われる。代替の態様において、乾燥は、また、乾燥の間の欠陥形成を最小化するためにイソプロピルアルコールなどの揮発性溶媒の一定濃度を含有する雰囲気中において行うことが可能である。
【0022】
以下の実施例は、本明細書において開示される組成物および方法をさらに説明するために提供される。
【実施例】
【0023】
特記のない限り、すべての実施例は、電気メッキされた銅界面フィルムを含有する8インチのシリコンウエハ上で行われ、CMPスラリーCP3210(エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(Air Products and Chemicals Inc.)により製造された)を用いる、スピード(Speed)−FAM IPEC472CMPシステムを用いて研磨し、銅表面からあらゆる固有の生成物を除去するために、30秒間にわたり、2ポンド/平方インチ(psi)圧力および50回転/分(RPM)テーブル速度で、100:4比率において30%過酸化水素により希釈した。表Iおよび表IIにおいて、すべての量は重量%で与えられ、100重量%まで加えられる。
【0024】
実施例1:
代表的組成物1〜5の500グラム溶液を以下の成分を用いて配合した:ペンシルベニア州アレンタウンのエアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズにより供給される28.91%精製クエン酸溶液8.62グラム;アクロス・オーガニクス(Acros Organics)から入手の50%グルコン酸溶液5.0グラム;アクロス・オーガニクスからのEDTA粉末2.5グラム;セイケム・ケミカルズ(Sachem Chemicals)からの25.16%TMAH溶液のそれぞれ28.70グラム、29.00グラム、29.55グラム、30.11グラム、および30.88グラム;およびバランス分の水。本明細書において開示される組成物を、すべての固形物が溶解してしまうまで容器中室温で成分を一緒に混合することにより調製した。
【0025】
【表1】

【0026】
研磨ウエハを、現場での酸化監視の目的でガムリ(Gamry)塗装セルにおける作用電極として用いた。セルを表Iにまとめて示す代表的な組成物で満たした。電気化学インピーダンス分光法を用いて酸化物の増大を監視するために、ガムリPC14コンピュータ制御ポテンシオスタット/ガルバノスタットを用いた。こうした測定を、セルが代表的組成物により満たされた後、約1分、5分、10分および15分で行った。得られた電気化学インピーダンス曲線を、銅−電解質界面の静電容量を得るために曲線適合させた。より低い静電容量は、おそらく表面上での保護酸化物形成の結果としての良好な銅表面保護を示す。曲線適合の結果を図1に示す。pH8.93および9.51での静電容量は最小であり、それによって酸化物が保護性であることが可能であり、Cu2Oが表面上に形成していることが可能であることを示す。より高いpHレベルでは、静電容量はより高くあって、より低い厚さの酸化物または欠陥性酸化物のいずれかであることを示す。10.5付近のpHを有する組成物は、最小の酸化物増大を示し、一部の用途には最適であることが可能である。
【0027】
実施例2:
酸化に関する洗浄成分の効果を外部処理で検討した。実施例1におけるように、代表的なCMP研磨後ウエハを、代表的組成物4中に、1、5、10および15分間にわたり浸漬した。回転−すすぎ−乾燥機において乾燥後、これらのウエハを、酸化監視の目的でガムリ塗装セルにおける作用電極として用いた。セルを水で満たした。電気化学インピーダンス分光法を用いて酸化物の増大を監視するために、ガムリPC14コンピュータ制御ポテンシオスタット/ガルバノスタットを用いた。こうした測定をセルが水で満たされた後約1分に行った。図2に時間の関数として代表的組成物4について得られたインピーダンス曲線を示す。図2はまた、CMP研磨されるが組成物により処理されなかった比較上の、すなわち、「対照」試料に関するデータも提供する。
【0028】
代表的組成物4による処理後、1分および5分後の酸化レベルは、比較試料に比べて幾分低いことが可能である。最低限でも、これは、最初の5分間の暴露中には厳しい酸化発生を引き起こさないことを示唆する。
【0029】
実施例3:
代表的組成物6の1,000グラム溶液を、すべての固形物が溶解してしまうまで容器中室温で以下の成分を一緒に混合することにより調製した:28.91%クエン酸溶液172.95グラム;50%グルコン酸溶液100.0グラム;EDTA50グラム;25.16%TMAH溶液597.32グラム:精製HOSTAPUR・SAS界面活性剤(ウルトラ・ケミカルズ(Ultra Chemicals)から市販されている)10.74%溶液9.35グラムおよび水7.04グラム。表Iに代表的組成物6中成分の重量%量を示す。洗浄組成物に対する暴露後銅表面の酸化がないことを確認するために、電気化学インピーダンス分光法(ESCA)を用いた。CMP研磨後ウエハを、約0.8cm×1.3cm片に切り刻んだ。片の一つを表IIに記載される成分のDI水による10:1希釈により形成される攪拌浴成分中に1分間にわたり浸漬した。次に、試料をDI水中で10秒間にわたりすすぎ洗いをし、窒素噴霧を用いて乾燥した。この試料も、また、組成物により処理を受けない比較CMP研磨試料として、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した。分析の間、X線誘発Cu−LMMピークが、金属銅とその種々の酸化物および水酸化物形態間の良好な分解能を提供することは公知である。図3は、比較試料および組成物処理試料に対するX線誘発オージェ電子ピークを比較する。この図は、明らかに、比較試料に比べて成分処理試料上のより低いレベルの銅酸化物を示す。これは表面から銅酸化物を溶解する能力を示すものである。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例4:
ブラック・ダイアモンド(BLACK DIAMOND)(登録商標)(アプライド・マテリアルズ(Applied Materials Inc.)から市販されている)内の銅構造によるセマテック(Sematech)854パターンを有する8インチパターン化ウエハを、IPEC372研磨機を用いてエア・プロダクツCP3210(30%過酸化水素により体積比100:4に希釈した)によりIC1000(ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ(Rohm & Hass Electronic Materials)から市販されている)CMPパッド上で5分間にわたり研磨して、表面から銅を除去した。この工程の研磨圧力は2.8psiであり、プラテン速度は90RPMであった。次に、エア・プロダクツCP4110Aスラリー(30%過酸化水素により体積比9:1に希釈した)によりポリテックス(POLITEX)(登録商標)シュプリーム(Supreme)(ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズから市販されている)パッド上で1分間にわたり3psi研磨圧力および90RPMテーブル速度で研磨した。ウエハを、オントラク(ONTRAK)(登録商標)シナージー(Synergy)(ラム・リサーチ(Lam Research Corp.)から市販されている)洗浄機を用いて洗浄した。この機械はポリビニルアルコール・ブラシからなる二つのブラシステーションからなった。洗浄成分分配時間5秒およびDI水によるすすぎ洗い40秒を含む全体で45秒間にわたりそれぞれのブラシステーション上で、ウエハを洗浄した。さらに、ブラシを低流量のDI水により連続的に湿めらせた。
【0032】
ウエハを洗浄するために代表的組成物6を用いた。脱イオン(DI)水のみにより洗浄することにより、比較試料を運転した。オーボット(ORBOT)(登録商標)Duo736度量衡機(オーボット・システムズ(Orbot Systems)から市販されている)を用いることにより、欠陥を分析した。表IIIは、ブラシステーション中に分配される代表的な組成物6ありおよびなしでの洗浄後の各種欠陥範疇における欠陥数を比較する。表IIIは、代表的な組成物6による処理が脱イオン水のみの場合に比べてウエハ上の欠陥数を減少させたことを示す。
【0033】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが9.5〜11.5であり、水、第4級アンモニウム水酸化物を含む有機塩基、ならびにアミノポリカルボン酸およびヒドロキシルカルボン酸を含む複数のキレート剤を含む、化学的機械的平坦化後の基板を洗浄するための組成物。
【請求項2】
さらに腐食防止剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
腐食防止剤が、アントラニル酸、没食子酸、安息香酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、D,L−リンゴ酸、イソフタル酸、フタル酸、乳酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、カテコール、ピロガロール、没食子酸のエステル、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、果糖、チオ硫酸アンモニウム、グリシン、テトラメチルグアニジン、イミノ2酢酸、ジメチルアセトアセタミド、チオグリセロール、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼン、サリチルヒドロキサム酸、およびそれらの混合物から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
アミノポリカルボン酸が、エチレンジアミン四酢酸、n−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、およびそれらの塩および混合物から選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アミノポリカルボン酸がエチレンジアミン四酢酸を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ヒドロキシルカルボン酸が、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、およびそれらの塩および混合物から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ヒドロキシルカルボン酸がクエン酸およびグルコン酸を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第4級アンモニウム水酸化物が水酸化テトラメチルアンモニウムを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
水、有機塩基、アミノポリカルボン酸およびヒドロキシルカルボン酸を含む複数のキレート剤を含み、9.5〜11.5の範囲にあるpHを有する組成物に基板を接触させることを含む、CMP処理された基板から残留物を除去するための方法。
【請求項11】
9.5〜11.5の範囲にあるpHを有し、
アミノポリカルボン酸およびヒドロキシルカルボン酸を含む複数のキレート剤、
有機塩基、
界面活性剤、および
水、
を含む、CMP処理された基板から残留物を除去するための組成物。
【請求項12】
有機塩基が第4級アンモニウム水酸化物を含む請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
腐食防止剤をさらに含む請求項11又は12に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−177702(P2010−177702A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−94048(P2010−94048)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2005−82369(P2005−82369)の分割
【原出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】