説明

医薬または化粧料

再生促進型マクロファージを優位に増加させる化合物を含有することを特徴とするアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る硬化病変を抑え、選択的に前記病変を修復再生する医薬または化粧料、および再生促進型マクロファージを優位に増加させる化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明の医薬または化粧料は、臓器組織障害に対して病変選択的な再生促進型免疫担当細胞を誘導するので病変選択的に修復と再生をもたらし、胃病変、膵病変および皮膚病変に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、臓器組織障害に対して病変選択的な再生促進型免疫担当細胞、すなわち、病変選択的な調節型Tリンパ球と再生促進型マクロファージを誘導することによって、病変選択的に組織障害を引き起こす細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制し、細胞のアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る過程を阻止し、病変の修復と再生をもたらし、臓器組織の機能を回復温存させ、進行性障害を予防または/および治療することができる医薬および化粧料、ならびに該医薬または化粧料となり得る化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
臓器組織障害は、外傷;高血圧;血行動態の循環不全;虚血再潅流障害;代謝障害;ウイルス、癌もしくは細菌感染症による炎症;拒絶反応;紫外線などの外来ストレスなどさまざまな原因により引き起こされる。原因に対する根治的な治療としては、臓器への血行再建術による虚血障害の回避などが挙げられる。しかし、一般的には、循環器または代謝性疾患では降圧剤や糖代謝改善剤により細胞障害を回避する治療、自己免疫疾患や臓器移植の拒絶反応に対しては免疫抑制療法により組織の温存を図る治療と対症療法がなされている。また、ステロイド剤は多様な作用を有し難治性疾患へは有効であるが、有効な高用量を長期にわたり使用することは副作用の発現から困難となり、進行性の臓器組織障害を進展阻止するには至っていない。
一旦壊死に至った細胞組織の場合、その進行は不可逆的であり修復再生は不可能である。現在までのところ、障害をうけた組織細胞の修復再生に対しては、個体が有する組織固有の修復と再生能に期待する以外にないが、障害の程度によっては病変がアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至り、組織臓器の機能不全に陥る。病変がアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る過程を制御し、個体の有する修復再生能を引き出すことを目的とした遺伝子治療や再生医学による実験的な研究がなされている段階である。病変に対して選択的に修復再生を誘導し、長期にわたり内服を可能とする医薬はまだ存在していない。
個体の有する病変の修復と再生能については、白血球がなんらかの作用を有していることは知られている。たとえば、皮膚創傷治癒の実験的な研究において、マクロファージがなんらかの修復再生に働きを持つことが示唆されている(Cell Tissue Res.,vol.306:p.239−250,2001)。また、臓器の再生について、Manuela Ghielliらは、急性腎不全からの回復過程に腎尿細管の再生に白血球の浸潤が観察されることから、白血球がなんらかの働きを担っていることを示唆している(Renal Failure,1996,vol.18,p.355−375)。しかし、その詳細は明らかではない。
本発明者は、臓器障害後の進行性病変に細胞障害型のマクロファージエフェクターが存在し、腎糸球体病変と腎尿細管・間質病変にそれぞれ対応して産生され、その結果、それぞれの病変に対し選択的に病変の進行(悪化)がもたらされること、そして、それぞれの病変に対応するマクロファージエフェクターを選択的に産生阻害する化合物が存在することを示した(WO01/72730)。
また、M Schafferらは、放射線障害皮膚修復モデルラットにおいて、インターフェロンとTNFの組織内濃度が過剰となっていることを報告しており(J.Surg.Res.,2002,vol.107:93−100)、さらに、VK Rumellaらは、皮膚創傷治癒の慢性障害において、インターフェロンが皮膚表皮細胞の再生を阻害する一方、TNFが皮膚真皮のコラーゲン増生を抑制することを総説している(Plast.Reconstr.Surg.,2001,vol.108:719−733)。このように、皮膚においても、病変選択的に皮膚障害後の進行性病変をもたらす機構が存在することが示唆されている。
しかし、病変に対して選択的に修復再生を誘導する化合物については記載がなく、いまだ明らかにはなっていない。
【発明の開示】
本発明は、臓器組織障害に対して病変選択的な再生促進型免疫担当細胞を誘導し病変選択的に修復と再生をもたらすことによる臓器組織障害の予防または/および治療ための医薬を提供することを目的とする。すなわち、病変選択的な調節型Tリンパ球と再生促進型マクロファージを誘導することによって、病変選択的に組織障害を引き起こす細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制しアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る過程を阻止し、病変の修復と再生をもたらし、臓器組織の機能を回復温存させ、臓器組織障害、特に進行性障害を予防または/および治療するための医薬を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、修復再生の免疫制御応答を選択的に病変部位に誘導する再生促進型免疫担当細胞、すなわち、再生促進型マクロファージあるいは調節型Tリンパ球を病変選択的に誘導する化合物のスクリーニング方法を提供することである。
また、本発明のさらに他の目的は、腎臓の糸球体病変と尿細管・間質病変それぞれに薬効を持つ化合物、すなわち腎臓の糸球体病変と尿細管・間質病変それぞれの組織の修復と再生をもたらす化合物を単独でまたは組み合わせて使用することにより、腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患を治療または予防する医薬を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、皮膚表皮の組織障害に対して、表皮細胞やメラノサイトの再生・増殖を誘導することにより、皮膚創傷治癒、色素異常の予防.改善・治療、皮膚の老化の防止もしくは改善などの皮膚表皮病変の予防治療効果を有する医薬もしくは化粧品を提供することである。加えて、皮膚真皮の組織障害に対して、コラーゲン、弾性線維、腺組織の再生・増殖および血管新生を誘導することにより、皮膚創傷治癒、皮膚のハリの回復、色素異常の予防・改善・治療、皮膚の老化の防止もしくは改善などの皮膚真皮病変の予防治療効果を有する医薬もしくは化粧品を提供することである。さらに、これらの医薬もしくは化粧品を併用することによる皮膚疾患の予防治療効果を有する医薬もしくは化粧品を提供することである。
本発明者は、臓器障害において組織の再生を促進する働きを有するマクロファージが存在するのではないかという着想のもと、マクロファージのケモカインレセプターや接着分子について研究した。その結果、組織が障害を受けると再生促進型マクロファージが誘導され、病変選択的に組織の修復と再生をもたらすという思いがけない知見を得た。より具体的には、CD11bCD2マクロファージは腎臓の糸球体病変の修復と再生に関与し、CD11bCD2マクロファージが腎臓の尿細管・間質病変の修復と再生に関与するという知見を得た。さらに、本発明者は、Tリンパ球についても研究したところ、調節型CD2CD4Tリンパ球が臓器障害後の組織の修復と再生に関与しているという知見を得た。
さらに、本発明者は、腎臓全体の病変を改善するためには、糸球体病変と尿細管・間質病変双方に一致した細胞障害型マクロファージを調整型Tリンパ球の誘導により選択的に抑制し、同時に再生促進型マクロファージを局所病変へ選択的に誘導するという合目的な免疫応答の制御が必要であることを知見した。そして、糸球体病変と尿細管・間質病変それぞれに薬効をもつ化合物を併用して腎疾患を治療する医薬を知見した。
従来技術の欄で述べたように、本発明者は、すでにWO01/72730において、腎糸球体病変と腎尿細管・間質病変それぞれに対応して細胞障害型マクロファージが産生されることを知見しているが、この機構についてさらに検討を加えたところ、腎糸球体病変における細胞障害型マクロファージの産生にはインターフェロンの産生分泌が関与しており、腎尿細管・間質病変における細胞障害型マクロファージの産生にはTNFの産生分泌が関与していることを知見した。すでに述べたように、皮膚創傷治癒の慢性障害において、インターフェロンが皮膚表皮細胞の再生を阻害し、TNFが皮膚真皮のコラーゲン増生を抑制することが知られている(VK Rumellaら,Plast.Reconstr.Surg.,2001,vol.108:719−733)。
前記知見と上記VK Rumellaらの記載から、腎糸球体病変における病変進行と皮膚の表皮病変における病変進行には、インターフェロンの産生分泌によって誘導される細胞障害性マクロファージが関与し、一方で、腎尿細管・間質病変における病変進行と皮膚の真皮病変における病変進行には、TNFの産生分泌によって誘導される細胞障害性マクロファージが関与していると考えられる。そして、病変進行の機構が同じであれば、病変の修復・再生機構も同一であること、すなわち、腎糸球体病変と皮膚の表皮病変とでは同一の修復・再生機構が機能し、一方で、腎尿細管・間質病変と皮膚の真皮病変とでは同一の修復・再生機構が機能していることが十分に考えられる。
このような考察のもと、本発明者は、後記する実施例の結果から、本来、腎臓における病変の場合には糸球体病変と尿細管・間質病変それぞれに対応する再生促進型マクロファージが存在し、糸球体の硬化、尿細管・間質の萎縮、繊維化などの進行性病変をもたらす機序を阻止する機構が存在することを知見した。
また、選択的に糸球体病変または尿細管・間質病変に誘導される細胞障害型マクロファージの産生を阻害する化合物を動物実験にて効果を検討したところ、対応する病変に選択的な再生促進型マクロファージを誘導できる作用を併せ持つ化合物であることを知見した。
さらに、これら化合物の投与実験であきらかになったことは、腎臓全体の病変を改善するためには、糸球体病変と尿細管・間質病変双方に一致した細胞障害型マクロファージを調整型Tリンパ球の誘導により選択的に抑制し、同時に再生促進型マクロファージを局所病変へ選択的に誘導するという合目的な免疫応答の制御が必要であることを知見した。
このように、本発明は、調節型Tリンパ球を誘導し、選択的な病変特有の再生促進型マクロファージを誘導する化合物をスクリーニングできる方法を提供できる。そして、スクリーニングによりえられた化合物は、病変の改善のために細胞障害型マクロファージの選択的な抑制も同時に行うものであることが好ましいことも知見した。
進行性病変における細胞障害のメカニズムおよび組織の修復・再生のメカニズムの考察から、腎臓の糸球体病変の修復と再生に関与するCD11bCD2マクロファージが皮膚表皮細胞の修復・再生にも関与し、腎臓の尿細管・間質病変の修復と再生に関与するCD11bCD2マクロファージが皮膚真皮細胞の修復・再生にも関与するという思いがけない知見を得た。
上記のように、腎臓の糸球体病変の修復と再生に関与するCD11bCD2マクロファージが皮膚表皮細胞の修復・再生にも関与し、腎臓の尿細管・間質病変の修復と再生に関与するCD11bCD2マクロファージが皮膚真皮細胞の修復・再生にも関与するという思いがけない知見を得た。
本発明者は、さらに検討を重ね、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 再生促進型マクロファージを優位に増加させる化合物を含有することを特徴とするアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る硬化病変抑制または/および前記病変修復再生用組成物、
(2) 再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物を含有することを特徴とする腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変の予防または/および治療のための医薬、
(3) 再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル、バシトラシンA(Bacitracin A)、バイオマイシン(Viomycin)、6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン、1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン、2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である上記(2)に記載の医薬、
(4) 再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変の予防または/および治療のための医薬、
(5) 再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステルから選択される少なくとも1の化合物である上記(4)に記載の医薬、
に関する。
また、本発明は、
(6) 上記(2)に記載の化合物と、上記(4)に記載の化合物とを含有することを特徴とする腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の予防または/および治療のための医薬。
(7) 再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の予防または/および治療のための医薬。
(8) 再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である上記(7)に記載の医薬、
に関する。
また、本発明は、
(9) 再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を増加する化合物を含有することを特徴とする化粧料、
(10) 再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル、バシトラシンA(Bacitracin A)、バイオマイシン(Viomycin)、6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン、1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン、2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である上記(9)に記載の化粧料、
(11) 再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする化粧料、
(12) 再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステルから選択される少なくとも1の化合物である上記(11)に記載の化粧料、
(13) 上記(9)に記載の化合物と、上記(11)に記載の化合物とを含有することを特徴とする化粧料、
(14) 再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする化粧料、
(15) 再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である上記(14)に記載の化粧料、
に関する。
また、本発明は、
(16) ヒト末梢血単核球細胞とリポ多糖類とが接触して惹起される再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導に対して被検化合物が示す促進作用を測定することを特徴とする、腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法、
(17) 被検化合物、リポ多糖類およびヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し、CD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の数を測定し、被検化合物が存在しなかったときに比べて、CD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の増加を検出することを特徴とする前記(16)に記載のスクリーニング法、
(18) (i)リポ多糖類およびヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより細胞障害型マクロファージを誘導し、一方で(ii)被検化合物の存在下にヒト末梢血未分画Tリンパ球をリポ多糖類の添加あるいは無添加にて培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(iii)前記(ii)で得られた未分画Tリンパ球の存在下、前記(i)で得られた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球と接触させたときの細胞障害型マクロファージの産生数を測定し、(iv)被検化合物が存在しなかったときに比べて、細胞障害型マクロファージの産生数の減少を検出することを特徴とする、腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法、
(19) (i)被検化合物、ヒトAB型血清およびリポ多糖類の存在下にヒト末梢血単核球細胞を培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(ii)誘導された未分画Tリンパ球中の調節型CD2CD4Tリンパ球の数を測定し、(iii)被検化合物が存在しなかったときに比べて、調節型CD2CD4Tリンパ球の増加を検出することを特徴とする、腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法、
に関する。
また、本発明は、
(20) ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞とが接触して惹起される再生促進型CD11bCD2マクロファージまたは/および調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導に対して被検化合物が示す促進作用を測定することを特徴とする、腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和もしくは治癒できる化合物のスクリーニング方法、
(21) 被検化合物およびヒトAB型血清の存在下に、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより再生促進型CD11bCD2マクロファージまたは/および調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し、CD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の数を測定し、被検化合物が存在しなかったときに比べて、CD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の増加を検出することを特徴とする前記(20)に記載のスクリーニング方法、
(22) (i)ヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより細胞障害型マクロファージを誘導し、一方で(ii)被検化合物の存在下、ヒト末梢血未分画Tリンパ球をマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞の添加あるいは未添加にて培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(iii)前記(ii)で得られた未分画Tリンパ球の存在下、前記(i)で得られた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球と接触させたときの細胞障害型マクロファージの産生数を測定し、(iv)被検化合物が存在しなかったときに比べて、細胞障害型マクロファージの産生数の減少を検出することを特徴とする、腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和もしくは治癒できる化合物のスクリーニング方法、
(23) (i)被検化合物およびヒトAB型血清の存在下にマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞とヒト末梢血単核球細胞とを培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(ii)誘導された未分画Tリンパ球中の調節型CD2CD4Tリンパ球の数を測定し、(iii)被検化合物が存在しなかったときに比べて、調節型CD2CD4Tリンパ球の増加を検出することを特徴とする、腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和もしくは治癒できる化合物のスクリーニング方法、
に関する。
また、本発明は、
(24) (a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)リポ多糖類、さらに所望により(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地を含むことを特徴とする腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング用キット、
(25) (a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)マイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞、さらに所望により(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地を含むことを特徴とする腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング用キット、
さらに、本発明は、上記(2)〜(8)に記載の医薬を患者に投与することを含む、腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変および皮膚の表皮病変、または腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変および皮膚の真皮病変、あるいは腎疾患、膵疾患および皮膚疾患の予防または/および治療方法、上記(2)〜(8)に記載の医薬を製造するための再生促進型CD11bCD2マクロファージを増加させる化合物、並びに再生促進型CD11bCD2マクロファージを増加させる化合物および調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導を促進する化合物の使用に関する。
本発明において、「再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を増加(または促進)する」とは、主として、ヒト抹消血単核球細胞とリポ多糖類が接触して惹起される調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制し再生促進型CD11bCD2マクロファージが量的および質的に優位に機能することをいうが、本機構に限定されず、例えば調節型Tリンパ球を介さない場合をも包め、再生促進型CD11bCD2マクロファージが量的および質的に優位に機能することをいう。 ここで、「CD」とは、cluster of differentiationの略であり、「量的および質的に優位に機能する」とは、マクロファージが量的に増加する場合、マクロファージの機能が支配的になる場合をいう(以下の「CD」および「量的および質的に優位に機能する」も同じ意味である)。また「CD11bCD2マクロファージ」とは、少なくとも「CD11b」および「CD2」に対するモノクロナール抗体で認識できるマクロファージを指し、他のモノクロナール抗体で認識できるCDを除外しているものではない。
「再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する」とは、主として、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト抹消血単核球細胞とが接触して惹起される再生促進型CD11bCD2マクロファージが量的および質的に優位に機能することをいうが、本機構に限定されず、再生促進型CD11bCD2マクロファージが量的および質的に優位に機能することをいう。ここで、「CD11bCD2マクロファージ」とは、少なくとも「CD11b」および「CD2」に対するモノクロナール抗体で認識できるマクロファージを指し、他のモノクロナール抗体で認識できるCDを除外しているものではなく、例えば、「CD11bCD2CD5マクロファージ」などは本願発明における「CD11bCD2マクロファージ」として特に有用である。
上記「再生」とは、損傷の修復も含め、損傷を修復再生することをいう。
上記「調節型CD2CD4Tリンパ球」の「調節」とは、細胞障害性マクロファージと再生促進型マクロファージを支配することをいう。また、「CD2CD4Tリンパ球」とは、少なくとも「CD2」および「CD4」に対するモノクロナール抗体で認識できるTリンパ球を指し、他のモノクロナール抗体で認識できるCDを除外しているものではない。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を増加させる化合物とは、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導が増加または促進する化合物であればどのようなメカニズムを介するものでもよく、例えば調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制し再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進するもの、調節型Tリンパ球を介さず再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進するもの、ヒト末梢血単核球細胞とリポ多糖類(例えばLPSなど)が接触して再生促進型CD11bCD2マクロファージを惹起し、その誘導を促進するものなどが挙げられる。
調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導を促進する化合物とは、調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制する化合物であればどのようなメカニズムを介するものでもよく、例えばヒト末梢血単核球細胞とリポ多糖類(例えばLPSなど)とが接触して再生促進型CD11bCD2マクロファージを惹起し、その誘導を促進するものなどが挙げられる。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物とは、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物であればどのようなメカニズムを介するものでもよく、例えば調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制し再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進するもの、調節型Tリンパ球を介さず再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進するもの、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト同種末梢血単核球細胞が接触して再生促進型CD11bCD2マクロファージを惹起し、その誘導を促進するものなどが挙げられる。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物(以下、再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物という。)としては、
例えばWO01/72730に記載の下記式(II−1);

で示される(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート〔化合物(II−1)〕、下記式(II−2);

で示される2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル〔化合物(II−2)〕、J.Antibiotics,37巻、1546頁(1984年)に記載の下記式(II−3);

で示される〔化合物(II−3)〕、RO88594に記載の例えば下記式(II−4);

で示される〔化合物(II−4)〕、Science,102巻、376頁(1945年)に記載の下記式(II−5);

で示されるバシトラシンA〔Bacitracin A;化合物(II−5)〕、下記式(II−6);

で示されるバイオマイシン〔Viomycin;化合物(II−6)〕、特開昭52−83846号に記載の、例えば下記式(II−7);

(式中、Meはメチル基を表す。)
で示される6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン〔化合物(II−7)〕、特開昭52−139072号に記載の、例えば下記式(II−8);

で示される1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン〔化合物(II−8)〕、EP53015に記載の例えば、下記式(II−9);

で示される1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン〔化合物(II−9)〕、WO01/72730に記載の下記式(II−10);

で示される2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル〔化合物(II−10)〕、または、下記式(II−11);

(式中、Rは炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜16のアラルキル基を表す。)
で示される化合物などが挙げられる。
上記式(II−11)で表される化合物において、置換基Rとしての炭素数6〜14のアリール基には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基またはそれらの一部飽和体である例えば2,3−ジヒドロインデニル基もしくは1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基などが含まれる。置換基Rとしての炭素数7〜16のアラルキル基には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基又はフェニルヘキシル基などが含まれる。置換基Rとしてはベンジル基が好ましい。
これら炭素数6〜14のアリール基または炭素数7〜16のアラルキル基は、化学的に許容される範囲で置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン(好ましくは、フッ素、塩素、臭素)、オキソ基、アルカノイル基(好ましくは、例えばアセチル、プロピオニルなどのC1〜8アルカノイル)、アルカノイルオキシ基(好ましくは、例えばアセチルオキシ、プロピオニルオキシなどのC1〜8アルカノイルオキシ)、アルカノイルアミノ基(好ましくは、例えばアセチルアミノ、プロピオニルアミノなどのC1〜8アルカノイルアミノ)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(好ましくは、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどのC2〜8アルコキシカルボニル)、ハロアルキルカルボニル基(好ましくはC2〜8)、アルコキシ基(好ましくはC1〜8)、ハロアルコキシ基(好ましくは、例えばクロルメトキシ、ブロムエトキシなどのC1〜ハロアルコキシ)、アルキル基(好ましくは、例えばメチル、エチル基どのC〜20アルキル)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはC1〜8)、ジアルキルアミノ基(好ましくはC2〜16)、環状アミノ基(、例えばモルホリノ、ピペリジノなど)、アルキルアミノカルボニル基(好ましくはC2〜8)、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくはC〜8)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくはC1〜8)、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくはC1〜8)、またはフェニル基などが挙げられる。
上記式II−11で表される化合物のうち特に、WO01/72730に記載の下記式(II−11a);

(式中、Bnはベンジル基を表す。)で示される1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステル〔化合物(II−11a)〕またはその薬理学的に許容される塩が好ましい。
本発明に使用される上記再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物のうち、特に(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルが好適である。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物(以下、再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物という。)としては、
例えばWO01/72730に記載の下記式(I−1);

で示される(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート〔化合物(I−1)〕、下記式(I−2);

で示される2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル〔化合物(I−2)〕、下記式(I−3);

で示される1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル〔化合物(I−3)〕、または、下記式(I−4);

(式中、Rは炭素数1〜6の低級アルキル基または炭素数2〜6の低級アルキルニル基を表す。)で示される化合物、
が挙げられる。
式(I−4)で表される化合物において、置換基Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1,1−ジメチルプロピル基もしくは3−メチル−3−ブテニル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基;例えば、ビニル基、アリール基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基もしくは2−ペンテニル基などの炭素数2〜6の低級アルケニル基である。なかでも、エチル基またはブチル基が好ましく、エチル基が特に好ましい。これら炭素数1〜6の低級アルキル基または炭素数2〜6の低級アルキルニル基は、化学的に許容される範囲で置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えばハロゲン、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルバモイル基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基またはアルカノイルアミノ基などが挙げられる。
上記式I−4で表される化合物のうち特に、下記式(I−4a);

で示される1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステル〔化合物(I−4a)〕またはその薬理学的に許容される塩が好ましい。
本発明に使用される上記再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物のうち、特に(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルが好適である。
前記再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物および再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物は、併用して用いることもできる。
また、本発明は、前記両マクロファージの誘導を促進する化合物を使用することもできる。
本発明に使用される前記両マクロファージの誘導を促進する化合物、すなわち再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物としては、例えば特開昭64−34976および特開平4−338331に記載の一般式(III)

(式中、Rは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C1−3アルコキシから選ばれた基を1〜3個有しているフェニル基で置換されていてもよいフェニル基を示し、Rは、例えばアルキル基またはアラルキル基でエステル化されていてもよいカルボキシ基を示し、Xは酸素または酸化されていてもよい硫黄原子を示す。)で示される化合物が挙げられる。具体的には、例えば、下記式(III−1);

で示される2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル〔化合物(III−1)〕、下記式(III−2);

で示される2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル〔化合物(III−2)〕、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルなどが挙げられる。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する上記化合物のうち、特に2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステルが好適である。
上記化合物は、上記化合物の誘導体であってもよい。前記誘導体としては特に限定されないが、例えば上記化合物中の水素原子、特にCH、CH、CH、NH、NH、COOHまたはOHにおける水素原子が当技術分野で用いられる通常の置換基で置換されている化合物が挙げられる。前記置換基としては、ハロゲン(好ましくは、フッ素、塩素、臭素)、オキソ基、アルキル基(好ましくはC1〜8)、アルカノイル基(好ましくはC1〜8)、アルカノイルオキシ基(好ましくはC1〜8)、アルカノイルアミノ基(好ましくはC1〜8)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(好ましくはC2〜8)、ハロアルキルカルボニル基(好ましくはC2〜8)、アルコキシ基(好ましくはC1〜8)、ハロアルコキシ基(好ましくはC1〜8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはC1〜8)、ジアルキルアミノ基(好ましくはC2〜16)、環状アミノ基、アルキルアミノカルボニル基(好ましくはC2〜8)、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくはC1〜8)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくはC1〜8)、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくはC1〜8)、フェニル基またはベンジル基などが挙げられる。これら基の具体例は上記と同一であってよい。
また、前記誘導体としては、上記化合物の還元体や酸化体なども挙げられる。さらに、前記誘導体としては、上記化合物の置換基を他の置換基に変換した化合物なども挙げられる。例えば、ハロゲン元素を他のハロゲン元素に変換した化合物、水酸基をメルカプト基に変換した化合物、エーテル結合をチオエーテル結合に変換した化合物、チオエーテル結合をエーテル結合に変換した化合物、複素環基の酸素原子を窒素原子に変換した化合物または複素環基の窒素原子を酸素原子に変換した化合物などが挙げられる。
上記化合物は公知化合物であり、既に知られている方法、例えば、WO01/72730、特開昭52−83846、特開昭52−139072、EP53015、J.Antibiotics,37巻,1546頁(1984年)、RO88594、Science,102巻,376頁(1945年),USP2633445,特開昭64−34986、特開平4−338331などに記載の方法により容易に製造することができる。また上記化合物の誘導体も、当技術分野で公知の方法により上記化合物から容易に製造することができる。
上記化合物が酸性または塩基性を示す場合は、これら化合物の塩を用いることもできる。該化合物の塩としては、薬理学的に許容される酸(例えば、無機酸、有機酸)、塩基(例えば、無機塩基、有機塩基)またはアミノ酸(例えば、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸)などとの塩が挙げられる。具体的には、化合物が塩基性を示す場合、その塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸との塩などの無機酸塩;または例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸との塩などの有機酸塩が挙げられる。この場合、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩など酸性アミノ酸との塩を形成することもできる。化合物が酸性を示す場合、その塩としては、ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムもしくはカルシウムなどのアルカリ土類金属との塩などの無機塩基との塩;または、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどの有機塩基との塩が挙げられる。この場合、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩など塩基性アミノ酸との塩を形成することもできる。
また、前記化合物は、プロドラッグであってもよい。
本発明に使用される化合物は、上記化合物およびそれら化合物の誘導体に限定されるわけではなく、下記スクリーニング方法により得ることができる全ての化合物が包含される。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物、例えば上記化合物(II−1)〜(II−11)、化合物(II−11a)が使用できる腎臓の糸球体病変の具体例としては、例えば、糸球体腎炎、腎炎症候群、並びにウイルス感染症、新生物性疾患、血液疾患および免疫機構の障害、糖尿病などにおける糸球体障害などが挙げられる。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物、例えば上記化合物(II−1)〜(II−11)、化合物(II−11a)が使用できる膵臓のラ氏島病変の具体例としては、例えば、糖尿病などが挙げられる。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物、例えば化合物(II−1)〜(II−11)、化合物(II−11a)が使用できる再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が使用できる皮膚の表皮病変とは、主に皮膚表皮の疾患に伴う病変をいい、該疾患として、例えば接触性皮膚炎、手湿疹、おむつ皮膚炎、アトピー性皮膚炎、老人性乾包症、ダリエー病、黒色表皮腫、湿疹、疱疹状皮膚炎などが挙げられる。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物,例えば化合物(I−1)〜(I−4)、化合物(I−4a)が使用できる腎臓の尿細管・間質病変の具体例としては、例えば尿細管間質性腎炎、閉塞性尿路障害による水腎症、水腎症、逆流性腎症、並びに感染症、新生物性疾患、血液疾患および免疫機構の障害、および代謝などにおける腎尿細管間質性障害などが挙げられる。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物,例えば化合物(I−1)〜(I−4)、化合物(I−4a)が使用できる膵臓の外分泌腺間質病変の具体例としては、例えば膵炎などが挙げられる。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導進化合物,例えば化合物(I−1)〜(I−4)、化合物(I−4a)が使用できる皮膚の真皮病変とは、、主に皮膚真皮の疾患に伴う病変をいい、該疾患として例えば毛嚢炎、色素性蕁麻疹、ケロイド、線維腫症、斑状萎縮症、線状皮膚萎縮症、老人性皮膚萎縮症、キレル病、穿孔性毛包炎、サルコドーシス、異物性肉芽腫、多汗症、汗疹、尋常性指座蒼、円形脱毛症などが挙げられる。なお、真皮病変には、汗腺、毛乳頭などの皮膚付属器、コラーゲン、弾性繊維に加え、脂肪組織の病変を伴う場合も包含される。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物、例えば式(III)で示される化合物は、上記した腎臓の糸球体病変および腎臓の尿細管・間質病変のいずれにも、また両病変を有する場合にも、すなわち、両者を包括した腎疾患全般に有利に使用できる。
本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物、例えば式(III)で示される化合物は、上記した膵臓のラ氏島病変および膵臓の外分泌腺間質病変のいずれにも、また両病変を有する場合にも、すなわち、両者を包括した膵疾患全般に有利に使用できる。
また、本発明に使用される再生促進型CD11b+CD2+マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物、例えば式(III)で示される化合物は、上記した皮膚の表皮および真皮病変のいずれにも、また両病変を有する場合、例えば紅斑性ろうそう、乾癬、色素異常症、水泡性疾患など、すなわち、両者を包括した皮膚疾患全般に有利に使用できる。
上記再生促進型CD11b+CD2+マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージは、腎臓の糸球体病変や腎臓の尿細管・間質病変、また膵臓のラ氏島病変や膵臓の外分泌腺間質病変、あるいは皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変に関連し、これらマクロファージなどの誘導を促進する上記各化合物は、それら化合物単独で、または製薬学的に許容できる添加物などと配合することにより、腎臓の糸球体病変や腎臓の尿細管・間質病変、また膵臓のラ氏島病変や膵臓の外分泌腺間質病変、あるいは皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変の予防または/および治療のための医薬(以下単に、予防治療薬ということもある。)および医薬組成物として製造することができる。また、皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変の効能に関連し、上記マクロファージの誘導を促進する上記各化合物を使用し、化粧料を製造することもできる。
本発明にかかる医薬は、公知の何れの剤形をとってもよく、例えば所望により糖衣を施しまたはフィルムコーティングした錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などの剤形を有し、経口的に投与されるものであってよい。また、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤などの剤形を有し、非経口的に投与されるものであってもよい。上記剤形は、自体公知の方法で製造することができる。
また、本発明にかかる医薬を内服剤とする場合には、例えば、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤など当業界で用いられる添加剤を含有していてもよい。錠剤またはカプセル剤などとする場合、混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントまたはアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロースのような賦形剤;コーンスターチ、ゼラチンまたはアルギン酸などのような膨化剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤;ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。剤型がカプセルである場合には、上記添加剤の他、さらに油脂のような液状担体を含有させることができる。
本発明の医薬を注射剤などの液剤とする場合には、水性液としては、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、またはブドウ糖やその他の例えばD−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど補助薬を含む等張液などが用いられる。このとき、例えば、エタノールなどのアルコール;例えば、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのポリアルコール;例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50などの非イオン性界面活性剤などの適当な溶解補助剤を添加してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられる。安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの溶解補助剤を併用してもよい。また、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などを適宜配合してもよい。調製された注射剤などの液剤は、通常、適当なアンプル、バイアル瓶などに充填される。また、液剤は用時溶解する形態であってもよい。
本発明にかかる医薬を外用剤とする場合には、例えばペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、ローション剤、乳剤、懸濁剤、湿布剤、硬膏剤、リニメント剤、エアゾール剤、シロップ剤、口腔剤、点眼剤または点鼻剤などの剤形とすることもできる。中でも、本発明の皮膚疾患の予防治療薬などは、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、ローション剤、乳剤などの剤形が好ましい。
本発明にかかる医薬が軟膏剤の場合、例えば、ワセリン、流動パラフィン、シリコンもしくは植物油などの油脂性基材;例えば、親水ワセリンもしくは精製ラノリンなどの乳剤性基剤;例えば、マクロゴールなどの水溶性基材などの基材に、本発明化合物または薬理学的に許容され得る塩、および所望により、例えば、陰イオン型もしくは非イオン型界面活性剤などの乳化剤またはパラオキシ安息香酸エステル類などの保存剤などの製剤用添加剤を含有することにより本発明にかかる皮膚疾患の予防治療薬などを製造することができる。
本発明にかかる医薬がゲル剤の場合、水にゲル化剤(例、カルボキシビニル重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはアルギン酸プロピレングリコールエステルなど)などを加えて得られる基材に、本発明化合物または薬理学的に許容され得る塩、および所望により、例えば、低級アルコール、中和剤、界面活性剤または吸収促進剤などの製剤用添加剤を含有することにより本発明にかかる皮膚疾患の予防治療薬などを製造することができる。
本発明にかかる医薬がクリーム剤の場合、例えば高級脂肪酸エステル類(例:ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシル、イソオクタン酸セチルなど)、低級アルコール(例:エタノール、イソプロパノールなど)、炭水化物(例:流動パラフィン、スクワランなど)、多価アルコール(例:プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなど)または高級アルコール(例:2−ヘキシルデカノール、セタノール、2−オクチルドデカノールなど)などを含む基材に、所望により、例えば、乳化剤、防腐剤、吸収促進剤またはかぶれ防止剤などの製剤用添加剤を配合できる。
また、クリーム剤とゲル剤の中間の性質を有するゲル状クリーム剤とするためには、上記のクリーム剤にゲル化剤および中和剤を加えればよい。
本発明にかかる医薬が外用液剤の場合、溶剤および所望により、例えば、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、pH調製剤、溶剤、溶解補助剤、着香剤、ゲル化剤、矯味剤または清涼化剤などなどの製剤用添加剤を配合できる。前記溶剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、ブチレングリコール、水、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ブドウ糖、イプシロンアミノカプロン酸、グリシン、グルタミン酸塩、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール類、カルボキシビニルポリマー類やセタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類、中鎖脂肪酸エステル類やミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル類、ステアリン酸などの高級脂肪酸、スクワラン、流動パラフィン、白色ワセリンまたは精製ラノリンなどを挙げることができる。
ここで、外用液剤としては、洗浄、注入、湿布、吸入、噴霧、坐剤、塗布、薬浴、清拭、消毒、点眼、洗眼、点耳または点鼻など外用に供する液体製剤が包含される。
本発明の外用液剤を通常噴射剤と共に用いることによりエアゾール剤を製造することができる。噴射剤としては通常エアゾールに用いられるジメチルエーテル、液化石油ガス、Nガス、亜酸化窒素ガス、COガス、代替フロンガスなどを挙げることができる。噴射剤を用いないで圧縮空気を用いることもできる。また、これらの混合物を用いてもよい。
本発明にかかる医薬は、本発明の作用・効果を阻害しない限り他の薬理作用成分を含んでいてもよい。
上記本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を含有する医薬は、腎臓の糸球体病変の予防治療薬として、例えば、糸球体腎炎、腎炎症候群、並びにウイルス感染症、新生物性疾患、血液疾患および免疫機構の障害、および糖尿病などにおける糸球体障害などに有用である。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を含有する医薬は、腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬として、例えば尿細管間質性腎炎、閉塞性尿路障害による水腎症、水腎症、逆流性腎症、並びに感染症、新生物性疾患、血液疾患および免疫機構の障害、および代謝などにおける腎尿細管間質性障害などに有用である。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬は、上記した腎臓の糸球体病変および腎臓の尿細管・間質病変のいずれにもその効果が期待できるので、腎疾患の予防治療薬として有用である。
本発明の医薬を腎疾患に使用する場合、再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬を用いるか、腎臓の糸球体病変の予防治療薬と、腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬を併用することがとりわけ好ましい。
上記本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を含有する医薬は、膵臓のラ氏島病変の予防治療薬として、例えば糖尿病などに有用である。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を含有する医薬は、膵臓の外分泌腺間質病変の予防治療薬として、例えば膵炎などに有用である。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬は、上記した膵臓のラ氏島病変や膵臓の外分泌腺間質病変のいずれにもその効果が期待できるので、膵疾患の予防治療薬として有用である。
また、本発明は、以上述べてきた本発明にかかる膵臓のラ氏島病変の予防治療薬と、本発明にかかる膵臓の外分泌腺間質病変の予防治療薬とを併用することもできる。
本発明の医薬を膵疾患に使用する場合、再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬を用いるか、膵臓のラ氏島病変の予防治療薬と、膵臓の外分泌腺間質病変の予防治療薬を併用することがとりわけ好ましい。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を含有する医薬は、例えばメラノサイトもしくは表皮細胞、特に表皮角化細胞の増殖促進作用または表皮細胞機能の正常化作用を有するので、皮膚の表皮病変の予防治療薬として、切り傷の治療、やけどなどのひび割れ、あかぎれ、ただれ、外傷、接触性皮膚炎、手湿疹、おむつ皮膚炎、アトピー性皮膚炎、老人性乾包症、ダリエー病、黒色表皮腫、湿疹、疱疹上皮膚炎、伝染性軟属腫などの治癒促進;こじわ、くすみ、色素沈着、肌荒れなどの皮膚老化の防止または改善に有用である。
本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を含有する医薬は、真皮線維芽細胞におけるコラーゲン合成促進作用、真皮線維芽細胞の代謝活性化作用、弾性線維もしくは腺組織の再生・増殖促進作用または血管新生誘導作用を有するので、皮膚の真皮病変の予防治療薬として、例えば毛嚢炎、色素性蕁麻疹、ケロイド、線維腫症、斑状萎縮症、線状皮膚萎縮症、老人性皮膚萎縮症、キレル病、穿孔性毛包炎、サルコドーシス、異物性肉芽腫、多汗症、汗疹、尋常性指座蒼、円形脱毛症などの治癒促進;こじわ、くすみ、色素沈着、肌荒れなどの皮膚老化の防止または改善;皮膚のハリの向上に有用である。なお、真皮病変の修復再生に際しては、汗腺、毛乳頭などの皮膚付属器、コラーゲン、弾性繊維に加え、脂肪組織を合む場合もある。
また、本発明に使用される再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬は、上記した皮膚の表皮および真皮病変のいずれにも、また皮膚の表皮および真皮の両病変をもたらす、例えば切り傷の治療、やけど等の外傷、潰瘍、褥瘡などの創傷および手術創などの治癒促進、紅斑性ろうそう、乾癬、色素異常症、水泡性疾患などにも有用であるので、ひろく皮膚疾患全般にわたりその予防治療薬として有用である。
また本発明の医薬は、上記皮膚の表皮病変の予防治療薬と、皮膚の真皮病変の予防治療薬とを併用することもできる。
本発明の医薬を皮膚疾患に使用する場合、再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬を用いるか、医薬皮膚の表皮病変の予防治療薬と、皮膚の真皮病変の予防治療薬を併用することがとりわけ好ましい。
前記医薬の併用使用に際しては、例えば腎臓の疾患に使用する場合、腎臓の糸球体病変の予防治療薬と腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬投与時期は限定されず、投与対象に対し同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。このような投与形態としては、例えば、(1)腎臓の糸球体病変の予防治療薬と腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬と所望により医薬添加剤とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)腎臓の糸球体病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤と、腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)腎臓の糸球体病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤と、腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)腎臓の糸球体病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤と、腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)腎臓の糸球体病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤と、腎臓の尿細管・間質病変の予防治療薬および所望により医薬添加剤を別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与などが挙げられる。
本発明にかかる医薬の1日投与量は、対象疾患、投与ルートまたは剤形などにより相違するので、一概には言えないが、好ましくは約0.1〜100mg/kg程度、さらに好ましくは約1〜50mg/kg程度である。本発明に係る医薬が外用剤である場合、有効成分が0.01〜10重量%となるように調整されていることが好ましい。
本発明の化粧料に配合される化合物としては、上記したすべての化合物またはその薬理学的に許容される塩が用いられる。具体的には、上記再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物、例えば化合物(II−1)〜(II−11)、(II−11a)およびそれらの薬理学的に許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの上記した塩など)が挙げられる。本化合物配合の化粧料は、上述した皮膚の表皮病変の予防治療薬と同一の効能、例えばメラノサイトもしくは表皮細胞、特に表皮角化細胞の増殖促進作用または表皮細胞機能の正常化作用を有するので、例えばくすみ、色素沈着、肌荒れなどの防止または改善に使用することが好ましい。
また、再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物、例えば上記化合物(I−1)〜(I−4)、(I−4a)およびそれらの薬理学的に許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの上記した塩など)などが配合された化粧料は、上述した皮膚の真皮病変の予防治療薬と同一の効能を有するので、例えば真皮線維芽細胞におけるコラーゲン合成促進作用、真皮線維芽細胞の代謝活性化作用、弾性線維もしくは腺組織の再生・増殖促進作用または血管新生誘導作用を有するので、こじわなどの皮膚老化の防止または改善;皮膚のハリの向上に使用することができる。
また上記再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物、例えば化合物(III−1)、(III−2)およびそれらの薬理学的に許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの上記した塩など))などが配合された化粧料は、皮膚の表皮病変および皮膚の真皮病変の予防または/および治療と同一の効能を有するため、こじわ、くすみ、色素沈着、肌荒れなどの皮膚老化の防止または改善;皮膚のハリの向上に使用することができる。
前記化粧料のさらに他の態様としては、再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物と再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物との両化合物を配合した化粧料とすることもできる。また他の態様として、再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を配合した化粧料と、再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導促進化合物を配合した化粧料とを併用することが挙げられる。当該化粧料の併用および両化合物を配合した化粧料は、上記再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージ誘導を増加させる化合物を配合した化粧料と同様の効能を得ることができる。化粧料の使用態様としては、上記併用使用および上記両化合物を配合した化粧料の使用がとりわけ好ましい。
本発明の化粧料には、上記必須成分に加え、必要に応じて通常化粧料に配合される成分を含有してもよい。配合成分としては、例えば、油性成分、保湿剤、エモリエント剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、複合脂質、活性酸素消去作用を有する物質、抗炎症作用物質、ビタミンおよびその誘導体類、血行促進剤、抗脂漏剤、有機および無機顔料、皮膚に対して何らかの好ましい作用を示すことが期待される植物抽出物、動物性抽出物、微生物由来成分もしくは藻類抽出物、増粘剤、アミノ酸類、コレステロール類、植物ステロール類、リポプロテイン類、色素、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、肌柔軟剤、水などを挙げることができ、本発明の目的、効果を損なわない質的、量的範囲内で含有可能である。
油性成分としては、アボガド油、パーム油、ピーナツ油、牛脂、コメヌカ油、米胚芽油、ホホバ油、エステル油、シリコン油、カルナウバロウ、ラノリン、流動パラフィン、スクワラン、オキシステアリン酸、イソステアリン酸、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコールなどを挙げることができる。
保湿剤としては、グリセリン、1.3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン酸およびその塩、キチン、キトサンなどを挙げることができる。
エモリエント剤としては、例えば、長鎖アシルグルタミン酸コレステリルエステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸、ロジン酸、ラノリン脂肪酸コレステリルエステルなどを挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、ウロカニン酸、ジイソプロピルケイ皮酸エチルなどを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸ナトリウム、パラヒドロキシアニソールなどを挙げることができる。
界面活性剤としては、例えば、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミン、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、イソステアリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸グリセリンなどを挙げることができる。
防腐剤としては、例えば、エチルパラベン、プチルパラベンなどを挙げることができる。
複合脂質としては、例えば、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
活性酸素消去作用を有する物質としては、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、β−カロチン、油溶性甘草根抽出物、グラブリジン、リコカルコンA、バイカリン、バイカレイン、イチョウ葉抽出物、クジン抽出物、ハマメリス抽出物、黄杞抽出物などを挙げることができる。
抗炎症作用物質としては、例えば、アラントイン、グアイヤアズレン、カマズレン、ビサボロール、グリチルリチン酸およびその塩、グリチルレチン酸およびその誘導体、ステアリルイプシロンイミノカプロン酸、インドメタシン、酸化亜鉛、ヒノキチオールなどを挙げることができる。
ビタミンおよびその誘導体類としては、例えば、レチノール、レチナール、レチン酸、パントテン酸、パンテノール、リボフラビン、ピリドキシン、トコフェロール、アスコルビン酸、葉酸、ニコチン酸などを挙げることができる。
血行促進剤としては、例えば、γ−オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
抗脂漏剤としては、例えば、硫黄、チアントールなどを挙げることができる。
有機および無機顔料としては、例えばケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンカラ、クレー、ベントナイト、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミンおよびカーボンブラックおよびこれらの複合体などの無機粉体;ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、CIピグメントイエロー、CIビグメントオレンジなどの有機粉体;およびこれらの無機粉体と有機粉体の複合粉体などを挙げることができる。
皮膚に対して何らかの好ましい作用を示すことが期待される植物抽出物、動物性抽出物、微生物由来成分または藻類抽出物としては、例えば、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、オウゴン抽出物、オウバク抽出物、オウレン抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ根水抽出物、サンシシ抽出物、シコン抽出物、シャクヤク抽出物、ボタンピ抽出物、ジュウヤク抽出物、シラカバ抽出物、西洋トチノキ種子抽出物、トウキンセンカ抽出物、ボタンピ抽出物、ムクロジ抽出物、シナノキ抽出物、ローズマリー抽出物、セイヨウノコギリ草抽出物、ヨモギ抽出物、岩白菜抽出物、ヨクイニン抽出物、アロエ抽出物、ビワ抽出物、モモ抽出物、センキュウ抽出物、セージ抽出物、トウキ抽出物、ヘチマ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、オタネニンジン抽出物、トウガラシ抽出物、甜茶抽出物、茶抽出物、オトギリソウ抽出物、マロニエ抽出物、プルーン抽出物、コラーゲン、加水分解コンキオリン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、プラセンターエキス、ローヤルゼリー、ビフィズス菌培養物、乳酸菌培養物、酵母エキス、レイシ菌糸体抽出物、ブクリョウ抽出物、褐藻抽出物、紅藻抽出物、緑藻抽出物などを挙げることができる。
増粘剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、カルボキシビニルポリマーなどを挙げることができる。
防腐剤としては、例えばメチルパラベンなどのパラベン類、塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩などを挙げることができる。
本発明の化粧料は、溶液、乳化物、練り状混合物などの形態をとることが可能である。具体的には、本発明の化粧料には、洗顔クリーム、洗顔フォーム、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、マッサージクリーム、コールドクリーム、モイスチャークリーム、乳液、化粧水、パック、ファンデーション、アフターシェービングクリーム、日焼け止めクリーム、日焼け用オイル、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアートリートメント、養毛料、育毛料、チック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、セットローション、ヘアスプレー、ヘアダイ、ヘアブリーチ、カラーリンス、カラースプレー、パーマネントウェーブ液、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドー、ハンドクリームなどが含まれる。
本発明の化粧料の使用方法は年齢、個人、使用する部位により異なるが、上記した化合物の濃度が0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度であるものを1日1回〜数回、皮膚に塗布することが望ましいがこれに限定されるものではない。
本発明は、病変に対する選択的な組織障害を引き起こす細胞障害型マクロファージの産生と機能を抑制し、アポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る過程を阻止し、病変の局所免疫応答に対して選択的な再生促進型免疫担当細胞、すなわち、調節型Tリンパ球と再生促進型マクロファージを誘導することによって、病変の修復と再生をもたらし臓器組織の機能を回復温存させ進行性障害を予防または/および治療するための医薬となり得る化合物または皮膚の表皮もしくは真皮の病変を予防、緩和もしくは治癒できる化合物のスクリーニング方法を提供する。
前記スクリーニング方法は、調節型Tリンパ球と再生促進型マクロファージの病変に対応した選択的な誘導が、被検化合物の存在により促進されるか否かを測定することにより行うことができる。
より具体的には、調節型CD2CD4Tリンパ球と再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を被検化合物が促進するか否かを測定することにより、腎臓の糸球体および膵臓のラ氏島の修復再生を促す化合物をスクリーニングすることができる。前記誘導を促進する化合物は、糸球体病変および膵臓のラ氏島病変の予防治療薬となり得る。また、調節型CD2CD4Tリンパ球と再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を被検化合物が促進するか否かを測定することにより、皮膚の表皮細胞またはメラノサイトの修復・再生・増殖を促す化合物をスクリーニングすることができる。前記誘導を促進する化合物は、皮膚の表皮病変の予防治療薬となり得る。なお、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を被検化合物が促進するか否かのみを測定することによっても、前記化合物をスクリーニングすることはできる。
調節型CD2CD4Tリンパ球と再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を被検化合物が促進するか否かを測定することにより、腎臓の尿細管・間質および膵臓の外分泌腺間質病変の修復再生を促す化合物をスクリーニングすることができる。前記誘導を促進する化合物は、腎臓の尿細管・間質病変および膵臓の外分泌腺間質病変の予防治療薬となり得る。また、調節型CD2CD4Tリンパ球と再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を被検化合物が促進するか否かを測定することにより、コラーゲン・弾性線維・腺組織の再生もしくは増殖、または血管新生を促す化合物をスクリーニングすることができる。前記誘導を促進する化合物は、皮膚の真皮病変の予防治療薬となり得る。なお、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を被検化合物が促進するか否かのみを測定することによっても、前記化合物をスクリーニングすることはできる。
本発明のスクリーニング方法において使用する被検化合物は、どのようなものでもよく、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液または血漿などであってよく、公知化合物であっても新規化合物であってもよい。
また、複数の被検化合物を同時にスクリーニングし、陽性であった場合にのみ、個々の化合物について再びスクリーニングを行うなど公知手段を組み合わせてもよい。
本発明のスクリーニング方法を実施するために、調節型Tリンパ球と再生促進型マクロファージを病変に対応して選択的に誘導する方法を以下に述べる。下記方法は、好ましい態様であり、前記誘導方法は下記方法に限定されない。
腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変または皮膚の表皮病変を選択的に修復再生する再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび調節型CD2CD4Tリンパ球は、リポ多糖類とヒト末梢血単核球細胞を接触させることにより誘導される。また、前記調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導は、次の方法により間接的に観察することができる。リポ多糖類およびヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより細胞障害型マクロファージを誘導し、該誘導させた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球と接触させるとき、同時に自己赤血球とロゼット形成能のない末梢血Tリンパ球を添加することにより、細胞障害型マクロファージの産生数を介して調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導を観察することができる。このとき、細胞障害型マクロファージの産生数が少なくなれば、調節型Tリンパ球が誘導されており、その減少の度合いが大きくなるほど調節型Tリンパ球の誘導が促進されている。
腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変または皮膚の真皮病変を修復再生する再生促進型CD11bCD2マクロファージまたは/および調節型CD2CD4Tリンパ球は、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞を接触させることにより誘導される。また、前記調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導は、次の方法により間接的に観察することができる。ヒトAB型血清の存在下に、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより惹起される細胞障害型マクロファージを誘導し、該誘導させた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球と接触させるとき、同時に自己赤血球とロゼット形成能のない末梢血Tリンパ球を添加することにより、細胞障害型マクロファージの産生数を介して調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導を観察することができる。このとき、細胞障害型マクロファージの産生数が少なくなれば、調節型Tリンパ球が誘導されており、その減少の度合いが大きくなるほど調節型Tリンパ球の誘導が促進されている。
上記のように行われ得る調節型Tリンパ球と再生促進型マクロファージの誘導が被検化合物の存在により促進されるか否かは、被検化合物の存在および不存在下で前記誘導を行い、公知の方法により調節型Tリンパ球および再生促進型マクロファージの産生数を測定し、被検化合物が存在していたときの方が、被検化合物が存在していなかったときと比べて前記産生数が増加しているか否かにより、判断することができる。前記公知の方法としては、例えばフローサイトメトリーなどが挙げられる。
また、細胞障害型マクロファージの産生数を介して、調節型Tリンパ球の誘導を観察する場合は、被検化合物を存在させる場合の方が、被検化合物を存在させない場合に比べて、細胞障害型マクロファージの産生数が減少していれば、被検化合物は病変の修復と再生もたらす目的とする化合物であると判断できる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様を以下に述べる。
腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法としては、被検化合物、リポ多糖類およびヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球をRPMI1640培地で培養することにより再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し、フローサイトメトリーによりCD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の数を測定し、被検化合物が存在しなかったときに比べて、CD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の数が増加する化合物をスクリーニングする方法(便宜上、スクリーニング方法Aという。)が挙げられる。
前記リポ多糖類としては、自体公知のものを用いてよい。例えば、サルモネラ菌または大腸菌などのグラム陰性菌由来のリポ多糖類が挙げられる。いわゆるラフ型のものであっても、スムース型のものであってもよい。
リポ多糖類の調製には、自体公知の方法を用いてよく、例えば、微生物から抽出し、所望により毒性を除去する処理を行うという方法が挙げられる。微生物からの抽出方法は、例えば、熱フェノール抽出法(Westphal&Jann.,Methods Carbohydr.Chem.5,83−89(1965))、または微生物をラウリル硫酸ナトリウム(SDS)存在下でプロテナーゼK処理をする方法などを挙げることができる。また、化学的に合成したものを用いてもよいし、市販のものを適宜用いることもできる。本発明においては、適当な溶媒、好ましくはRPMI1640液を用いて溶液としたときに、濃度が約60〜100μg/mL程度、好ましくは約70〜90μg/mL程度、より好ましくは約80μg/mL程度の高濃度のものを用いることが好ましい。
前記ヒト末梢血単核球細胞は、ヒトの末梢血から自体公知の方法により得ることができる。例えば、ヒトの末梢血から単核球細胞を分離する方法としては、5.7%w/vのフィコール400と、9.0%w/vのジアトリゾネイト ナトリウム(Sodium diatrizoate)の水溶液であって比重が1.077g/mLに調整されたフィコール・パック(Ficoll−Paque、登録商標、ファルマシア・ファイン・ケミカルズ(Pharmacia Fine Chemicals)社製)とを用いた遠心分離方法をあげることができる。より具体的には、上記の方法は、(a)予め決められた量のフィコール・パックを試験管の底に設置する工程、(b)そのまま或いは希釈した血液試料を注意深くフィコール・パック上にピペットで移す工程、(c)フィコール・パックの比重よりも大きい比重を有する血液成分が、フィコール・パック中に進むか、あるいはフィコール・パックを通過するように、(b)で作製したフィコール・パック血液調整物を約400〜500×gで約30〜40分間遠心分離する工程、(d)ピペットでフィコール・パックの上方に分離された単核球細胞層を採取する工程からなる。
前記RPMI1640培地は、Goding,J.W.(1980)J.Immunol.Methods 39,285,JAMA 199(1957)519に記載されている。また、市販品(Sigma社製)を用いてもよい。被検化合物、リポ多糖類、ヒトAB型血清およびヒト末梢血単核球細胞は、任意の組み合わせの2種または全てを予め混合してから前記培地に加えてもよいし、それぞれを単独で前記培地に加えてもよい。培地に添加する順序は問わない。しかし、より好ましくは、被検化合物、ヒトAB型血清を予め添加したRPMI1640培地にヒト未処理末梢単核球を添加し、ついでリポ多糖類を添加するのが好ましい。
上記スクリーニング方法Aはより具体的には以下のようにして行う。ヒト正常末梢血単核球細胞(peripheral blood mononuclear cell、以下PBMCと略すこともある。)の分離は、比重遠心法により行う。ヘパリン加滅菌シリンジにて約40mLを末梢血から採血し、血液を直ちにEDTA添加(100mLあたり1.2mlのEDTA)滅菌冷却生理食塩水をなど量入れた50mLプラスチックチューブに入れる。Histopaque d=1.111(Sigma社製)、Ficoll−Paqued=1.078(Pharmacia Biotech社製)をなど量ずつ重層したうえに血液を重層して、遠心してPBMC分画を得る。リポ多糖類(lipopolysaccharide,以下LPSと略すこともある。)はSigma L−4391 E−coli由来のものを使用する。被検化合物、ヒトAB正常血清、2mM L−グルタミン、5μg/mLゲンタマイシン(gentamicin)を含有するRPMI1640培養液に浮遊させた2×10PBMCにLPSを80μg/mLの濃度になるように添加して、37℃、5%CO−95%air下で6日間培養する。このとき被検化合物の濃度は、特に限定されないが、例えば約1μM〜0.001μM程度が好ましく、また種々の濃度の被検化合物を添加することが好ましい。
培養後付着細胞をすべて回収し、1%牛アルブミンを加えたHanks液に浮遊させる。フローサイトメトリーには、以下の標識された抗ヒトCD2,CD4,CD11bモノクローナル抗体を使用する。抗ヒトCD2モノクローナル抗体(anti−human CD2 monoclonal antibody,SFCI3Pt2H9(T11−1),Coulter社製)の抗体にfluorescein isocyanate(FITC製)を標識したもの、抗ヒトCD4モノクローナル抗体(anti−human CD4−allophycocyanin標識抗体、Beckton Dickinson,Immunocytometry Systems社製)、抗ヒトCD11bモノクローナル抗体(anti−human CD11b monoclonal antibody,clone 44 GenzymeTechme社製)にphycoerythrinを標識したものを使用する。FACScanにて、CD11bCD2単球マクロファージ分画、CD2CD4Tリンパ球分画を測定し、被検化合物を加えたときに20%以上の分画が増加した化合物を陽性と判断する。
腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法としては、被検化合物およびヒトAB型血清の存在下に、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより再生促進型CD11bCD2マクロファージまたは/および調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導し、フローサイトメトリーによりCD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の数を測定し、被検化合物が存在しなかったときに比べて、CD11bCD2マクロファージおよびCD2CD4Tリンパ球の数が増加する化合物をスクリーニングする方法(便宜上、スクリーニング方法Bという。)が挙げられる。
前記マイトマイシン処理ヒト末梢単核球細胞は、例えば上記のような公知方法を用いて得られたヒト末梢単核球細胞に、マイトマイシンの最終濃度が約40μg/mL程度となるように添加し、約37℃程度で約20分程度加熱処理することにより得ることができる。
スクリーニング方法Bは、より具体的には上記スクリーニング方法Aと全く同様にして行うことができる。しかし、LPSの代わりに、マイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞を、ヒト末梢血単核球細胞と同じ細胞数を加えて培養する。すなわち、被検化合物、ヒトAB正常血清,2mM L−グルタミン,5μg/mLゲンタマイシンを含有するRPMI1640培養液に、2×10PBMCおよび2×10マイトマイシン処理PBMCを浮遊させて、37℃、5%CO−95%air下で6日間培養する。培養条件とフローサイトメトリーで使用する標識抗体は上記スクリーニング方法Aと同じであり、陽性化合物の判定も同じく実施する。
腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法の他の好ましい態様としては、(i)リポ多糖類およびヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより細胞障害型マクロファージを誘導し、一方で(ii)被検化合物の存在下にヒト末梢血未分画Tリンパ球をリポ多糖類の添加あるいは無添加にて培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(iii)前記(ii)で得られた未分画Tリンパ球の存在下、前記(i)で得られた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球と接触させたときの細胞障害型マクロファージの産生数を測定し、(iv)被検化合物が存在しなかったときに比べて、細胞障害型マクロファージの産生数を減少させる化合物をスクリーニングするという方法(便宜上、スクリーニング方法Cという。)が挙げられる。
具体的には、下記工程にしたがって行うことができる。
(a)細胞障害型マクロファージの誘導について以下に述べる。ヒトAB正常血清、2mM L−グルタミン、5μg/mLゲンタマイシン(gentamicin)を含有するRPMI1640培養液に浮遊させた2×10PBMCにLPSを80μg/mLの濃度になるように添加して、37℃、5%CO−95%air下で6日間培養し、細胞障害型マクロファージを誘導する。なお、前記PBMCはスクリーニング方法Aと同様にして得ることができる。誘導された細胞障害型マクロファージを培養液から回収する。回収には公知方法を用いてよいが、例えばrubber−policemanゴムへらを用いて付着したものを回収するという方法が挙げられる。その後洗浄を行ってもよい。洗浄には、ゲンタマイシン約5μg/mLを添加したHanks液を用いるのが好ましい。
(b)未分画Tリンパ球の誘導について以下に述べる。まず、ヒト末梢血未分画Tリンパ球を以下のようにして分離する。スクリーニング方法Aで述べたように比重遠心法により分離したPBMC分画に、ノイラミニダーゼ処理したヒツジ赤血球を加え37℃20分反応した液を、静かにPercoll不連続比重層を作成したチューブに加え、400×gにて20分室温にて遠心する。Percoll不連続比重層に、ロゼット形成したTリンパ球分画と、d=1.091以上の層に浮遊する単球分画をそれぞれ採取する。ロゼット形成したTリンパ球分画に塩化アンモニウムを加えヒツジ赤血球を溶血させTリンパ球分画を得る。同時に採取された単球分画を洗浄して得る。
ついで、被検化合物の存在下、分離したヒト末梢血未分画Tリンパ球にリポ多糖類を添加あるいは添加せずに培養することにより、未分画Tリンパ球を誘導させることができる。具体的には、ヒトAB正常血清、2mM L−グルタミン,5μg/mLゲンタマイシン(gentamicin)および所望によりリポ多糖類を含有するRPMI1640培養液で、ヒト末梢血未分画Tリンパ球を、37℃、5%CO−95%air下で、6日間培養する。誘導された未分画Tリンパ球を培養液から回収する。回収には公知方法を用いてよいが、例えばラバーポリスマン(rubber−policeman)を用いて付着したものを回収するという方法が挙げられる。
(c)前記(a)で得られた細胞障害型マクロファージと、前記(b)で得られた未分画Tリンパ球とを用いて、SPFC法により被検化合物の組織再生能について評価する。
SPFC法について以下に示す。前記(b)で得られた未分画Tリンパ球の存在下、前記(a)で得られた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球に接触させることにより産生されるSpontaneous Plaque−Forming Cell(以下、SPFCという)の数を測定することにより行うのが好ましい。
まず、単層化された自己赤血球を作成する。単層化された赤血球は自体公知の方法を用いて作成してよいが、以下の方法が好ましい。自己赤血球を血清添加のないHanks液にて約4%濃度とする。自己赤血球は、上述した公知方法により得られる自己赤血球を約0.1重量%のAB血清添加したリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略す)を用いて約4℃で保存したものを使用するのが好ましい。ポリ−L−リジンをTerasakiプレートに加え約37℃程度で、約20分程度処理しPBSにて洗浄後直ちに上記自己赤血球を添加し、約37℃で約30分置き付着していない赤血球を除去し、単層化した自己赤血球を付着したTerasakiプレートを得る。
前記(a)で得られた細胞障害型マクロファージを含む培養PBMCを約2×10個/mL程度になるようにゲンタマイシン約5μg/mL程度を添加したHanks液を添加し細胞数濃度を調整する。
ついで、上記単層化した自己赤血球付着したTerasakiプレートのwellに約1×10個の(a)で得られた細胞障害型マクロファージを添加する。同時に、(b)で得られた未分画培養Tリンパ球も加える。この培養Tリンパ球のなかに細胞障害型マクロファージによるSPFC活性を阻害する調節型Tリンパ球が産生されているかを判定するために、(a)で得られた細胞障害型マクロファージと同数の(b)で得られた未分画培養Tリンパ球を加えた場合、および(a)で得られた細胞障害型マクロファージの1/5の数の(b)で得られた未分画培養Tリンパ球を加えた場合の二段階の細胞数比を設定する。最後にHanks液を1〜10μL添加し、約37℃程度で約2時間静置する。反応終了後はホルマリンで固定するのが好ましい。SPFC産生数は、位相差顕微鏡にて容易に測定できる。SPFC産生数が抑制されたかは、被検化合物は加えずに溶媒のみを用いて同一の操作を行い、被検化合物を添加した場合と比較して、抑制率%を算定する。50%以上の抑制を呈する化合物を陽性と判定する。
腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法の他の好ましい態様としては、(i)ヒトAB型血清の存在下にヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞をRPMI1640培地で培養することにより細胞障害型マクロファージを誘導し、一方で(ii)被検化合物の存在下、ヒト末梢血未分画Tリンパ球をマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞の添加あるいは未添加にて培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(iii)前記(ii)で得られた未分画Tリンパ球の存在下、前記(i)で得られた細胞障害型マクロファージを単層化した自己赤血球と接触させたときの細胞障害型マクロファージの産生数を測定し、(iv)被検化合物が存在しなかったときに比べて、細胞障害型マクロファージの産生数を減少させる化合物をスクリーニングするという方法(便宜上、スクリーニング方法Dという。)が挙げられる。
具体的に、本スクリーニング方法は、LPSの代わりに、マイトマイシン処理PBMCを用いる以外は、前記スクリーニング方法Cと全く同様に行えばよい。
腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法のさらに他の好ましい態様としては、(i)被検化合物、ヒトAB型血清およびリポ多糖類の存在下にヒト末梢血単核球細胞を培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(ii)誘導された未分画Tリンパ球中の調節型CD2CD4Tリンパ球の数をフローサイトメトリーにより測定し、(iii)被検化合物が存在しなかったときに比べて、調節型CD2CD4Tリンパ球の数を増加させる化合物をスクリーニングするという方法(便宜上、スクリーニング方法Eという。)が挙げられる。
具体的に、本スクリーニング方法は、上記スクリーニング方法A〜Dに従って行えばよい。
腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和もしくは治癒できる化合物のスクリーニング方法のさらに他の好ましい態様としては、(i)被検化合物およびヒトAB型血清の存在下にマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞とヒト末梢血単核球細胞を培養することにより未分画Tリンパ球を誘導し、(ii)誘導された未分画Tリンパ球中の調節型CD2CD4Tリンパ球の数をフローサイトメトリーにより測定し、(iii)被検化合物が存在しなかったときに比べて、調節型CD2CD4Tリンパ球の数を増加させる化合物をスクリーニングするという方法(便宜上、スクリーニング方法Fという。)が挙げられる。
具体的に、本スクリーニング方法は、上記スクリーニング方法A〜Dに従って行えばよい。
また、本発明は、上記本発明にかかるスクリーニング方法を実施するためのスクリーニング用キットも提供する。該スクリーニング用キットの形式は特に問わず、自体公知の形式を用いてもよい。
腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防または/および治癒することができる化合物をスクリーニングする際に、好ましいスクリーニング用キットの態様としては、(a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)リポ多糖類を含むキットが挙げられる。本キットは、前記(a)および(b)以外のもの、例えば、(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地などを含んでいてもよい。
腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防または/および治癒することができる化合物をスクリーニングする際に、好ましいスクリーニング用キットの態様としては、(a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)マイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞を含むキットが挙げられる。本キットは、前記(a)および(b)以外のもの、例えば、(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地などを含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明を実施例および製剤例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例および製剤例に制限されるものではない。
以下の実施例1〜3において、被検化合物は、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート〔化合物(I−1)〕、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル〔化合物(I−3)〕、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート〔化合物(II−1)〕、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル〔化合物(II−2)〕および2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル〔化合物(III−1)〕を用いた。
【実施例1】
調節型CD2−CD4Tリンパ球の産生誘導する化合物
方法:
上記スクリーニング方法Cに従って行った。ただし、正常ヒトの末梢血から単球(monocyte)分画と同時に同じTリンパ球分画を得た。細胞障害型マクロファージの誘導は、単球(monocyte)分画にマイトジェンを添加することなく6日間培養して誘導した。化合物(III−1)はエタノールを溶媒にして溶解し、培養開始時の最終濃度を10μg/mLから0.1μg/mLまでの3段階としてTリンパ球分画に培養開始時に添加し同様に6日間培養した。培養終了後に、付着細胞を含めて単球およびTリンパ球を採取した。
化合物(III−1)で処理した培養Tリンパ球のなかに細胞障害型マクロファージによるSPFC活性を阻害する調節型Tリンパ球が産生されているかを判定するために、SPFC法において、上記単層化した自己赤血球付着したTerasakiプレートのwellに約1×10個の培養単球を添加し、同時に、5倍数の化合物(III−1)で処理した培養Tリンパ球加えた。37℃程度で約2時間静置した。
結果は、第1表に示すように、0.1μg/mL以上の濃度でTリンパ球を処理することで、細胞障害型マクロファージの活性を50%以上の抑制を示した。
ヒトTリンパ球のうち、自己赤血球とロゼット形成能を有するautorosette−forming T lymphocytes(ARFC−T)lymphocyteの細胞表面マーカーはCD2であり、non−autorosette−forming T lymphocytes(non−ARFC−T)はCD2である。non−ARFC−Tは細胞増殖活性を有することからCD4が推察

される。
以上より、化合物(III−1)は細胞障害型マクロファージの誘導に選択性を示さない化合物であるが、調節型CD2CD4Tリンパ球を誘導する。
【実施例2−1】
動物実験における病変選択的な免疫調節再生促進型細胞のうち再生促進型マクロファージの誘導効果を示す化合物の評価−14日間一側尿管完全閉塞後の閉塞解除モデルを用いた検討
方法I:
8−9週齢、約280gのSDラット雄を用いて、石橋が考案確立した方法(石橋道男ほか:日本腎臓学会誌42:248,2000)により実験モデルを作成した。すなわち、ラットをエーテル麻酔下にて開腹し左腎下極の高さで尿管を7−0ナイロンで結紮閉腹した。閉塞14日目に閉塞を解除しカフを用い尿路を再建した。すなわち、14日後に結紮された閉塞尿管を部分切除し、25ゲージポリエチレンチューブ(日本シャーウッド製)をカフとして、下方正常尿管断端より内腔に挿入留置し、次に上方の拡張した尿管内にもカフを留置し、それぞれ7−0ナイロンにて結紮固定し尿路を再建した。同時に、対側の右腎を摘出した。閉塞解除後に体重を測定し、解除後2日目、5日目および7日目に採血して血清クレアチニンを測定し、7日目には麻酔のもと犠死させ、左閉塞解除腎を摘出した。
摘出した腎について腎重量の測定、腎機能の指標として血漿中のクレアチニン濃度mg/dlの測定、腎病理形態学的検査に加え、閉塞解除腎に浸潤する白血球細胞についてED1マクロファージ、CD11b(ED8)陽性マクロファージ、CD5陽性リンパ球についての細胞表面マーカーを用いて免疫病理学的検討を行った。陽性細胞数の記載は、5個の糸球体に存在した陽性数を測定し糸球体1ヶあたりの細胞数、尿細管・間質については200倍視野に存在する細胞数を5ヶ所選びその総和の細胞数とした。マクロファージについては、糸球体にあるCD11b陽性細胞数はCD11bCD2マクロファージとして糸球体1個あたり1個以上の陽性細胞例を陽性(+)とした。尿細管・間質ではCD11b陽性数が60個以下を陽性(+)と、CD11bCD2マクロファージが優位に増加した例と判定した。尿細管・間質病変の判定スコアは、+を軽度病変で1点;++を中等度病変として2点;+++を高度病変として3点で、数値化した。糸球体病変の改善は、病変糸球体数の割合が40%以下に減少したもの、尿細管・間質病変は病変の程度が4以下を呈したものを改善とみなした。
このモデルにおいて、下記のように本発明に係る化合物を投与しない場合は、2週間完全閉塞期間中と閉塞解除後の経時的な病理形態学的検討において、尿細管・間質病変を主体に腎構造の線維化、萎縮をきたすものが閉塞解除により再生腎増大を呈し修復の過程を伴う。閉塞期間中にみられる細胞浸潤としてはCD5陽性T細胞の増加はマクロファージほど著明ではなく、ED1陽性マクロファージが10日目に優位となる。
糸球体病変については、ボーマン嚢壁肥厚と糸球体硝子化を呈する糸球体を数え有病変糸球体の比率を求めた。尿細管・間質病変は尿細管基底膜の肥厚と間質の繊維化を定性化して病変の程度を表した。
方法II:
試験管内において、リポ多糖類とヒト末梢血単核球細胞を接触させることにより惹起されることを特徴とする腎臓の糸球体病変を選択的に傷害する細胞障害型マクロファージの産生を阻害する化合物(以下、II群化合物という)群として、化合物(II−1)および化合物(II−2)が公知のものとして存在する。
また、試験管内において、ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞を接触させることを特徴とする腎臓の尿細管・間質病変を選択的に傷害する細胞障害型マクロファージの産生を阻害する化合物(以下、I群化合物という)群として化合物(I−1)が公知のものとして存在する。
このモデルを用いて、本発明に係るγ−ラクトン誘導体のin vivoの生物学的な効果を検討した。被検化合物は、アラビアゴムとともに被検化合物の原末を滅菌生理食塩水に溶解し、アラビアゴムは5%、被検化合物は30mg/mLに調整した。連日30mg/kgおよび3mg/kgを経口および皮下注射した。14日間の閉塞期間と7日間の閉塞解除の21日間連日投与した。
なお、被検化合物としては、I群のallo−MLC刺激によるSPFC産生を抑制する化合物、すなわちallo−MLC存在下におけるエフェクターマクロファージの誘導を選択的に抑制する化合物として、化合物(I−1)を用い、II群のLPS刺激によるSPFC産生を抑制する化合物、すなわちLPS存在下におけるエフェクターマクロファージの誘導を選択的に抑制する化合物として化合物(II−1)および化合物(II−2)を用いた。
実験群としては、単独投与群、両群を併用した群およびアラビアゴムの溶媒投与の対照群を設け、腎機能、形態的な評価に加えて、免疫病理学的な方法によりED1、CD5、CD11b陽性細胞数を比較した。
その結果を第2−1表に示す。
対照群において、糸球体内に再生促進型CD11bCD2マクロファージ、尿細管・間質病変に再生促進型CD11bCD2マクロファージが、存在することがわかる。しかしながら、それぞれの病変に認められた再生促進型マクロファージがともに増加する一致した応答を示した動物は対照群には存在していないことが重要な結果として注目される。対照群における病変の程度は、糸球体の54%から83%に病変が認められ、尿細管・間質病変も尿細管基底膜の肥厚と間質の繊維化が定性7.5から11のレベルに認められた。
まず、治療群I群化合物である化合物(I−1)は、公知の化合物であり選択的に尿細管・間質病変をきたす細胞障害型マクロファージの誘導を阻害するものとして知られている。このI群化合物である化合物(I−1)による選択的な、すなわち尿細管・間質病変に対する病変修復再生CD11bCD2

クロファージが誘導されているかをみると、4例中3例が尿細管・間質病変に対する再生促進型マクロファージが増加している一方、糸球体病変の再生促進型マクロファージは4例中2例と対照群の場合に比して変わりなかった。病理学的な病変の改善については、尿細管・間質病変のみが4例中3例に改善し糸球体病変には改善がなかった。血清クレアチニンには差がなかった。
II群化合物の化合物(II−1)とII群化合物の化合物(II−2)は、公知の化合物であり選択的に尿細管・間質病変をきたす細胞障害型マクロファージの誘導を阻害するものとして知られている。II群化合物である化合物(II−1)の治療群をみると、糸球体病変の再生促進型CD11bCD2マクロファージの増加が5例中すべてに認められたのに加えて、尿細管・間質病変の修復再生CD11bCD2マクロファージも5例中4例に増加していた。II群化合物はI群化合物と異なり他の病変を修復再生するマクロファージが誘導されていた。病理学的な病変の改善については、糸球体病変も5例中4例に改善を示し、尿細管・間質病変には改善はなく選択性がみられた。
II群化合物である化合物(II−2)投与群の効果は、II群化合物である化合物(II−1)と同様で、再生促進型マクロファージは双方の病変にも増加しており、病変の改善もII群化合物である化合物(II−1)と同様な糸球体病変の改善に選択性を示した。
以上の結果については、I群化合物である化合物(I−1)で示される化合物については再生促進型マクロファージの誘導と病変の改善が一致し選択性が認められるが、II類化合物の二種類では、糸球体病変の改善とに選択性の相関が見られるのに、糸球体病変と尿細管・間質病変の再生促進型マクロファージの誘導には相関がなかった。それで、CD87、すなわち、uPAR(receptor of urokinase plasminogen activator)についての表現型の違いが考えられ、糸球体病変の再生促進型マクロファージではCD11bCD2CD87−であり、尿細管・間質病変の再生促進型マクロファージではCD11bCD2CD87+の可能性が考えられる。
さらに、上記の結果を踏まえI群化合物とII群化合物を併用した場合には、糸球体病変と尿細管・間質病変に選択性がより明確になるかを検討した。
I群化合物である化合物(I−1)を経口投与としII群化合物である化合物(II−1)を10倍少ない量で皮下中した併用群、そして、II群化合物である化合物(II−2)を経口投与としI群化合物である化合物(I−1)を10倍少ない量で皮下中した併用群、のふたつの実験群では、糸球体病変、尿細管・間質病変への両病変にみられる再生促進型マクロファージの一致例は9例中8例と増え、しかも糸球体病変と尿細管・間質病変双方の改善も糸球体病変は全例、尿細管・間質病変は9例中7例に改善が示された。とくにII群化合物である化合物(II−2)を経口投与としI群化合物である化合物(I−1)を10倍少ない量で皮下中した併用群にその効果が優れていた。
【実施例2−2】
動物実験における病変選択的な免疫調節再生促進型細胞のうち再生促進型マクロファージの誘導効果を示す化合物の評価−14日間一側尿管完全閉塞後の閉塞解除モデルを用いた検討
方法I:
実施例2−1、方法Iと同様に行った。閉塞解除腎に浸潤する白血球細胞の細胞表面マーカーは、ED1、CD11b(ED8),CD5およびCD2を用いた。陽性細胞数、CD11b陽性細胞数、および判定法は、実施例2−1、方法Iと同様におこなった。CD5は、糸球体1個あたり20個以上を陽性と判断した。糸球体病変については、ボーマン嚢壁肥厚、糸球体硝子化、さらに尿腔極の開大と壁細胞(parietal cell)の肥大を特徴とするので、50個の糸球体を評価し、病的な糸球体の比率を求めた。尿細管・間質病変は尿細管基底膜の肥厚、尿細管の拡大と萎縮と間質の繊維化を定性化して病変の程度を表した。+を軽度病変で1点;++を中等度病変として2点;+++を高度病変として3点で、数値化した。細胞浸潤の程度は、前記3段階に定性評価した。糸球体病変の改善は、病変糸球体数の割合が20%以下に減少したもの、尿細管・間質病変は、病変の程度が6.5以下を呈したものを改善とみなした。
方法II:
実験群として、化合物I−3(I群化合物)の単独投与群,化合物II−1(II群化合物)の単独投与群、および化合物I−3と化合物II−1の併用投与群とする以外は、実施例2−1、方法IIと同様に行った。
免疫病理学的な方法によりCD11b(ED8),CD2,CD5の陽性細胞数を比較し、糸球体における再生促進型マクロファージとしてCD11bCD2マクロファージ,尿細管・間質病変への再生促進型マクロファージとしてCD11bCD2CD5マクロファージを定義し、それぞれがの細胞群が量的に優位になっているかを評価した。
その結果を第2−2表に示す。
対照群において、糸球体内に再生促進型CD11bCD2マクロファージが優位となっている動物は6匹中2匹、尿細管・間質病変に再生促進型CD11bCD2CD5マクロファージが6匹中1匹存在したが、それぞれの病変に認められた再生促進型マクロファージがともに優位となる一致した応答を示した動物は対照群には存在しない。対照群における病変の程度は、糸球体の28%から52%に病変が認められ、尿細管・間質病変も5.5から9.0の程度に認められた。I群化合物の化合物1−3投与群では、尿細管・間質病変に対する選択的な病変修復再生促進型CD11bCD2CD5マクロファージが、4例中3例に尿細管・間質病変に優位となり、一方、糸球体内に再生促進型CD11bCD2マクロファージも4例中3例に優位となっていた。病理学的な病変の改善の程度は、尿細管・間質病変では4例中2例に改善が認められ、糸球体病変では4例ともに改善が認められた。一方、II群化合物の化合物II−1投与群では、糸球体病変の再生促進型CD11bCD2

マクロファージが5例中すべてに優位であったが、尿細管・間質病変に再生促進型CD11bCD2CD5マクロファージはすべて陰性で変化が認められなかった。病理学的な病変の改善は、糸球体病変の認められた5例中すべてにその改善を示したが、尿細管・間質病変に対しては1例を除き改善は認められなかった。このことは、病変の修復・再生に、マクロファージの選択性がみられることを示している。
病変の修復・再生に対する選択性について、未治療においては、尿細管・間質病変に糸球体病変に比べて種々のサイトカイン濃度勾配(gradient)があるため、糸球体病変が助長されるが、I群化合物の化合物I−3が、選択的に尿細管・間質病変に再生促進型CD11bCD2CD5マクロファージを誘導することで、尿細管・間質病変と糸球体病変間のサイトカイン濃度勾配を解消し、あるいは 再生促進型CD11bCD2マクロファージを誘導するある種のサイトカインを誘導分泌することで、糸球体病変が改善している可能性があることを示唆している。一方、糸球体病変を修復再生する化合物II−1の場合、糸球体病変と尿細管・間質病変間にサイトカイン濃度勾配は見られないこと、および尿細管・間質病変の改善には関わらないことが判明した。
次いで、I群化合物の化合物I−3とII群化合物の化合物II−1を併用した場合には、糸球体病変と尿細管・間質病変に選択性がより明確になるかを検討した。
I群化合物の化合物I−3を経口投与としII群化合物の化合物II−1を10倍少ない量で皮下中した併用群では、糸球体病変、尿細管・間質病変への両病変にみられる再生促進型CD11bCD2CD5マクロファージの一致例は5例中2例であり、糸球体病変と尿細管・間質病変双方の改善も糸球体病変は全例、尿細管・間質病変は5例中4例に改善が認められた。ここで、注目されるのは、細胞浸潤の程度は対照群と併用群間に差がないことである。このことは、化合物I−3と化合物II−1を併用投与することにより、量的にも再生促進型マクロファージが優位になったものと考えられた。
以上の結果から、選択的に糸球体病変および尿細管・間質病変に誘導される細胞障害型マクロファージの産生を阻害する化合物は、対応する病変に選択的な再生促進型マクロファージの表現型を誘導できる作用を併せ持つ化合物であることが判明した。
【実施例3】
動物実験における病変選択的な免疫調節再生促進型細胞の誘導効果を示す化合物の評価−完全皮膚切除モデルを用いた検討
方法:
自然発症2型糖尿病モデルであるSDTラット、雄28〜30週齢を用いて、Breitbout ASらの方法(Ann Plast Surg 1999,43:632)を一部改変して、完全皮膚切除の創傷治癒における修復・再生促進効果を検討した。すなわち、エーテル麻酔下にて背部を剃毛し、2×2cm大の皮膚を浅在筋膜とともに同じ大きさに切除する完全皮膚切除創を2個/匹作成した。
術後1日目、4日目、7日目、12日目、15日目、21日目、そして28日目に、切除創の治癒を観察した。切除創の面積は、最も創の長い部位を上下、左右で計測し、その各平均の積として求めた。この完全皮膚切除創モデルでは、切除創の面積の縮小と瘢痕形成の程度を知ることにより、真皮と表皮との損傷に対する修復と再生について、被検化合物の活性を知ることができる。
このモデルを用い、<実施例2>において生物学的な効果がみられたI群化合物(I−1)とII群化合物(II−1)が、完全皮膚切除創の創傷治癒への生物学的な効果があるかを検討した。被検化合物はアラビアゴムとともに滅菌生理食塩水に溶解した。アラビアゴムは5%、被検化合物は10mg/mLとなるよう調整した。連日10mg/kgを皮下注射した。投与は、術前6日前から開始し、術後28日間投与した。
結果:
第3表に結果を示す。I群化合物(I−1)は、対照群およびII群化合物(II−1)よりも術後7日目から12日目までの創傷治癒の促進効果が見られた。また、28日目の治癒時期にも、良好な創傷治癒の促進効果が見られた。II群化合物(II−1)は、対照群に比べて12日目に有意な創傷治癒の促進効果が見られた。なお、表中、1)は、創傷数(1匹あたり2個の切除創×実験動物数)を、2)は術後日数を示す。また。*は5%アラビアゴム投与群に対する有意差(p>0.05)を、**は、5%アラビアゴム投与群に対する有意差(p>0.01)を示す。

また、第4表には、治癒への到達時期の28日目には、対照群では50%の修復創の表面に痂皮形成を生じていたが、I群化合物(I−1)、II群化合物(II−1)には痂皮形成はなく創傷表面の治癒が良好であった。

この結果より、I群化合物(I−1)には、浅在筋膜をふくめた真皮、表皮の治癒促進効果があり、一方、II群化合物(II−1)には表皮の治癒促進効果を有することが判明した。
以上のことから、本発明の化合物は、完全皮膚切除創に対する創傷治癒に選択的な修復・再生促進することが判明した。
〔製剤例1〕
錠剤
(1)化合物(I−1) 10g
(2)乳糖 90g
(3)トウモロコシ澱粉 29g
(4)ステアリン酸マグネシウム 1g
130g
成分(1)、(2)および24gの成分(3)を水と共に混和して顆粒化し、この顆粒に5gの成分(3)と成分(4)を加えて混和し、混合物を圧縮錠剤機で圧縮し、錠剤1錠当り成分(1)を10mg含有する直径7mmの錠剤1000個を製造する。
〔製剤例2〕
化合物(I−1)の代わりに、化合物(I−3)、化合物(II−1)、化合物(II−2)、化合物(III−1)、化合物(III−2)を用いて前記と同様に錠剤を製造する。
〔製剤例3〕
化合物(I−1)10gの代わりに、化合物(I−1)5gおよび化合物(II−2)5g、または化合物(I−3)5gおよび化合物(II−1)5gを用いて前記と同様に錠剤を製造する。
〔製剤例4〕
カプセル剤
(1)化合物(I−1) 50mg
(2)乳糖 14mg
(3)トウモロコシ澱粉 29mg
(4)ヒドロキシプロピルセルロース 6mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 1mg
1カプセルあたり 100mg
上記の成分(1)、(2)、(3)、(4)を混和した後、常法に従って顆粒化する。これに成分(5)を加え、常法に従ってゼラチンカプセルに封入し、カプセル剤とする。
〔製剤例5〕
化合物(I−1)の代わりに、化合物(I−3)、化合物(II−1)、化合物(II−2)、化合物(III−1)、化合物(III−2)を用いて前記と同様にカプセル剤を製造する。
〔製剤例6〕
化合物(I−1)10gの代わりに、化合物(I−1)5gおよび化合物(II−1)5g、または化合物(I−3)5gおよび化合物(II−1)5gを用いて前記と同様にカプセル剤を製造する。
〔製剤例7〕
軟膏剤
(1)化合物(I−3) 1g
(2)化合物(II−1) 9g
(3)白色ワセリン 適量(全100g)
上記の成分(1)、(2)、(3)を混和し、軟膏剤とする。
〔製剤例8〕
乳液
(処方)
(1)スクワラン 5.0重量%、(2)白色ワセリン 2.0重量%、(3)ミツロウ 0.5重量%、(4)ソルビタンセスキオレエート 0.8重量%、(5)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20EO) 1.2重量%、(6)パラオキシ安息香酸メチル 0.1重量%、(7)プロピレングリコール 5.0重量%、(8)精製水 全量が100となる量、(9)カルボキシビニルポリマー1.0重量%水溶液 20.0重量%、(10)水酸化カリウム 0.1重量%、(11)エタノール 5.0重量%、(12)香料 0.2重量%、(13)ヒアルロン酸ナトリウム 0,3重量%、(14)化合物(I−4a)のナトリウム塩 0.5重量%
(製法)
(1)〜(5)の油相成分を混合し75℃に加熱して溶解後、均一化する。一方(6)〜(8)の水相成分を混合、溶解して75℃に加熱し、油相成分を添加して予備乳化する。(9)を添加した後ホモミキサーにて均一に乳化し、(10)を加えてpHを調整する。冷却後40℃にて(11)〜(14)を添加、混合、均一化する。
〔製剤例9〕
化合物(I−4a)10gの代わりに、化合物(I−3)5gおよび化合物(II−1)5g、または化合物(I−4a)5gおよび化合物(II−11a)5g、あるいは化合物(I−4a)3gおよび化合物(II−1)7g、を用いて前記と同様に乳液を製造する。
〔製剤例10〕
化粧水
(処方)
(1)エタノール 10.0重量%、(2)1,3−ブチレングリコール 5.0重量%、(3)化合物(II−11a)のナトリウム塩 0.1重量%、(4)牛胎盤抽出物 0.1重量%、(5)香料 0.1重量%、(6)精製水 84.7重量%
(製法)
(1)〜(5)を順次(6)に添加して均一に混合,溶解する。
〔製剤例11〕
皮膚用クリーム
(処方)
(1)ミツロウ 6.0重量%、(2)セタノール 5.0重量%、(3)還元ラノリン 8.0重量%、(4)スクワラン 27.5重量%、(5)グリセリル脂肪酸エステル 4.0重量%、(6)親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0重量%、(7)ポリオキシエチレン(20EO) ソルビタンモノラウリン酸エステル 5.0重量%、(8)プロピレングリコール 5.0重量%、(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1重量%、(10)精製水 36.7重量%、(11)化合物(I−4a)のナトリウム塩 0.5重量%、(12)乳酸 0.2重量%
(製法)
(1)〜(7)の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、(8)〜(10)の水相成分を混合、溶解して75℃に加熱する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却後40℃にて(11),(12)を添加、混合する。
〔製剤例12〕
乳液状ファンデーション
(処方)
(1)ステアリン酸 2.0重量%、(2)スクワラン 5.0重量%、(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0重量%、(4)セタノール 1.0重量%、(5)デカグリセリルモノイソパルミチン酸エステル 9.0重量%、(6)1,3−ブチレングリコール 6.0重量%、(7)水酸化カリウム 0.1重量%、(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1重量%、(9)精製水 53.3重量%、(10)酸化チタン 9.0重量%、(11)タルク 7.4重量%、(12)ベンガラ 0.5重量%、(13)黄酸化鉄 1.1重量%、(14)黒酸化鉄0.1重量%、(15)香料 0.1重量%、(16) 化合物(II−11a)のナトリウム塩 0.15重量%、(17)2−ヒドロキシ酢酸 0.15重量%、(製法)
(1)〜(5)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方(6)〜(9)の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(10)〜(14)の顔料を添加しホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて均一に乳化した後冷却し、40℃にて(15)〜(17)を添加,混合する。
【産業上の利用可能性】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージは、それぞれ病変選択的に、例えば腎臓の糸球体病変や腎臓の尿細管・間質病変、また皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変に関連し、これらマクロファージの誘導を促進する化合物を含有する本発明の医薬は、腎臓の糸球体病変や腎臓の尿細管・間質病変、また皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変の予防治療薬として利用できる。また、皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変の効能に関連し、マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する組成物は化粧料としても利用できる。
また、本発明の再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージなどの誘導を惹起させる化合物を検索にすることにより、それぞれ病変選択的に、例えば腎臓の糸球体病変や腎臓の尿細管・間質病変、また皮膚の表皮病変や皮膚の真皮病変の予防治療薬のスクリーニング方法に利用できる。
本出願は日本で出願された特願2002−265884および特願2003−159975を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、本明細書において引用された特許および特許出願を含む文献は、引用したことによってその内容のすべてが開示されたと同程度に本明細書中に組み込まれるものである。さらに、本発明は、前述の説明および実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかであるので、上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変および変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生促進型マクロファージを優位に増加させる化合物を含有することを特徴とするアポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る硬化病変抑制または/および前記病変修復再生用組成物。
【請求項2】
再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物を含有することを特徴とする腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変の予防または/および治療のための医薬。
【請求項3】
再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル、バシトラシンA(Bacitracin A)、バイオマイシン(Viomycin)、6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン、1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン、2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第2項に記載の医薬。
【請求項4】
ヒト再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変の予防または/および治療のための医薬。
【請求項5】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第4項に記載の医薬。
【請求項6】
請求の範囲第2項に記載の化合物と、請求の範囲第4項に記載の化合物とを含有することを特徴とする腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の予防または/および治療のための医薬。
【請求項7】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の予防または/および治療のための医薬。
【請求項8】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第7項に記載の医薬。
【請求項9】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を増加する化合物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項10】
再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル、バシトラシンA(Bacitracin A)、バイオマイシン(Viomycin)、6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン、1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン、2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第9項に記載の化粧料。
【請求項11】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項12】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第11項に記載の化粧料。
【請求項13】
請求の範囲第9項に記載の化合物と、請求の範囲第11項に記載の化合物とを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項14】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項15】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第14項に記載の化粧料。
【請求項16】
ヒト末梢血単核球細胞とリポ多糖類とが接触して惹起される再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導に対して被検化合物が示す促進作用を測定することを特徴とする、腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング方法。
【請求項17】
ヒト末梢血単核球細胞とマイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞とが接触して惹起される再生促進型CD11bCD2マクロファージまたは/および調節型CD2CD4Tリンパ球の誘導に対して被検化合物が示す促進作用を測定することを特徴とする、腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和もしくは治癒できる化合物のスクリーニング方法。
【請求項18】
(a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)リポ多糖類、さらに所望により(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地を含むことを特徴とする腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング用キット。
【請求項19】
(a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)マイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞、さらに所望により(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地を含むことを特徴とする腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング用キット。
【請求項20】
(a)ヒト末梢血単核球細胞および(b)マイトマイシン処理ヒト末梢血単核球細胞、さらに所望により(c)ヒトAB型血清または/および(d)RPMI1640培地を含むことを特徴とする皮膚の真皮病変を予防、緩和または治癒できる化合物のスクリーニング用キット。
【請求項21】
再生促進型マクロファージを優位に増加させる化合物を、患者に投与することを含む、アポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る硬化病変を抑制または/および再生する方法。
【請求項22】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬を、患者に投与することを含む、腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変の治療方法。
【請求項23】
再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル、バシトラシンA(Bacitracin A)、バイオマイシン(Viomycin)、6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン、1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン、2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第22項に記載の治療方法。
【請求項24】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を含有する医薬を、患者に投与することを含む、腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変の治療方法。
【請求項25】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第24項に記載の治療方法。
【請求項26】
請求の範囲第22項に記載の医薬と、請求の範囲第24項に記載の医薬とを、患者に併用投与することを含む、腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の治療方法。
【請求項27】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物を、患者に投与することを含む、腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の治療方法。
【請求項28】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物を、患者に併用投与することを含む、である請求の範囲第27項に記載の治療方法。
【請求項29】
アポトーシス死、変性、線維化と萎縮に至る硬化病変を抑制または/および再生する医薬を製造するための、再生促進型マクロファージを優位に増加させる化合物の使用。
【請求項30】
腎臓の糸球体病変、膵臓のラ氏島病変、または皮膚の表皮病変の予防および/または治療する医薬を製造するための、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物の使用。
【請求項31】
化粧料を製造するための、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物の使用。
【請求項32】
再生促進型CD11bCD2マクロファージを優位に増加させる化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(R)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−フルオロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル、バシトラシンA(Bacitracin A)、バイオマイシン(Viomycin)、6,7−ジメトキシ−1−モルホリノメチル−イソクロマン、1−ジエチルアミノメチル−5−ブトキシ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(4−フルオロフェニルチオ)−2−メチルアミノプロパノン、2−クロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第30項または第31項に記載の使用。
【請求項33】
腎臓の尿細管・間質病変、膵臓の外分泌腺間質病変、または皮膚の真皮病変の予防および/または治療する医薬を製造するための、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物の使用。
【請求項34】
化粧料を製造するための、再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物の使用。
【請求項35】
再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、(R)−1−ナフタレン−2−イルエチル(S)−2−(4−フルオロフェノキシ)−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボキシラート、2−ベンジル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび1−(2−オキソヘミグルタル酸)エチルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第33項または第34項に記載の使用。
【請求項36】
腎疾患、膵疾患、または皮膚疾患の予防または/および治療する医薬を製造するための、再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物の使用。
【請求項37】
化粧料を製造するための、再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物の使用。
【請求項38】
再生促進型CD11bCD2マクロファージおよび再生促進型CD11bCD2マクロファージの誘導を促進する化合物が、2−(4−クロロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル(III−1、2−(4−フルオロフェニル)オキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸エチルエステル(III−2)、2−(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステル、2−フェノキシ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンズヒドリルエステル、2−(4−フルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(4−メトキシフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、2−(2,4−ジフルオロフェニル)チオ−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸および2−(4−フルオロフェニル)スルホニル−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸ベンジルエステルから選択される少なくとも1の化合物である請求の範囲第36項または第37項に記載の治療方法。

【国際公開番号】WO2004/024185
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571937(P2004−571937)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011600
【国際出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(500138054)
【Fターム(参考)】