説明

半導体チップおよびその製造方法、ならびに半導体装置

【課題】配線基板や他の半導体チップに対する接続信頼性が高い半導体チップおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】この半導体チップ31は、機能素子3が形成された半導体基板2と、半導体基板2の一方表面に開口を有する貫通孔4の内部を埋めるように配置されたポリマー32と、ポリマー32上に形成され、機能素子3に電気接続された配線層35と、配線層34のうちポリマー32上にある部分に設けられた突起電極14とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、突起電極を有する半導体チップおよびその製造方法、ならびに突起電極を有する複数の半導体チップを備えたマルチチップ型の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図23は、従来の貫通電極を有する半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
この半導体チップ91は、シリコン(Si)からなる半導体基板90を含んでいる。半導体基板90の一方表面(以下、「表面」という。)には、複数の電極を有する機能素子(デバイス)71が形成されている。機能素子71の側方には、半導体基板90をその厚さ方向に貫通する貫通孔79が形成されている。
【0003】
半導体基板90の表面には、開口72a,72bを有するハードマスク72が形成されている。ハードマスク72は酸化シリコン(SiO2)からなる。半導体基板90を垂直に見下ろす平面視において、開口72a内には機能素子71の電極が存在しており、開口72bと貫通孔79とは内壁面を有する連続した1つの孔を形成している。
貫通孔79および開口72bの内壁面には、酸化シリコンからなる絶縁膜74が形成されている。絶縁膜74上、開口72a内、および開口72bと開口72aとの間のハードマスク72上を含む所定の領域には、タンタルナイトライド(TaN)やチタンナイトライド(TiN)からなる連続した拡散防止膜75が形成されている。
【0004】
貫通孔79および開口72bの内部は、貫通電極80で埋められている。半導体基板90の表面とは反対側の面(以下「裏面」という。)には、貫通電極80と一体で、裏面から突出した裏面側突起電極82が形成されている。貫通電極80および裏面側突起電極82は、銅からなる。裏面側突起電極82は、半導体基板90を垂直に見下ろす平面視において、貫通電極80とほぼ重なるように形成されている。
【0005】
裏面側突起電極82の先端部およびその近傍は、錫(Sn)などの低融点金属からなる低融点金属層83で覆われている。
半導体基板90の表面において、貫通電極80上、ならびに貫通孔79および開口72b外の拡散防止膜75上には、銅からなり貫通電極80と一体の配線部材81が設けられている。開口72a内に露出した機能素子71の電極は、拡散防止膜75、配線部材81、および貫通電極80を介して、裏面側突起電極82に電気接続されている。
【0006】
配線部材81の上には、チタンタングステン(TiW)やチタンからなるUBM(Under Bump Metal)層77を介して、金属(たとえば、金(Au))からなる表面側突起電極(バンプ)78が形成されている。表面側突起電極78は、貫通電極80のほぼ真上に(半導体基板90を垂直に見下ろす平面視において、裏面側突起電極82とほぼ重なるように)配置されている。
【0007】
この半導体チップ91は、半導体基板90を貫通する貫通電極80により、半導体基板90の表面側と裏面側との間の配線長が短くされている。
また、この半導体チップ91は、機能素子71に対して、表面側突起電極78を介して半導体チップ91の表面側から電気接続できるとともに、裏面側突起電極82を介して半導体チップ91の裏面側からも電気接続できる。具体的には、この半導体チップ91は、裏面側突起電極82を介して、配線基板に形成された電極パッド等に接合できる。また、半導体チップ同士を縦方向に積層し、隣接する半導体チップの表面側突起電極78と裏面側突起電極82とを接合することにより、半導体チップ91同士を電気接続できる。
【0008】
裏面側突起電極82を、配線基板に形成された電極パッド等や、他の半導体チップの表面側突起電極78と接合する際、適当な時間、半導体チップ91を低融点金属層83を構成する低融点金属の融点(固相線温度)以上の温度にすることにより、低融点金属の融液を発生させることができる。これにより、裏面側突起電極82と電極パッドや他の半導体チップ91の表面側突起電極78とは、低融点金属層83を介して接合される。
【0009】
図24ないし図26は、図23に示す半導体チップ91の製造方法を説明するための図解的な断面図である。このような製造方法は、下記特許文献1に開示されている。
表面に機能素子71が形成された半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wの当該表面に、所定の部分に開口72a,72bを有するハードマスク72が形成される。開口72a内には、機能素子71の電極が露出するようにされる。また、開口72b内には、ウエハWにおいて機能素子71が形成されていない所定の領域が露出するようにされる。
【0010】
次に、反応性イオンエッチング(RIE)により、開口72b内に露出したウエハWに凹所73が形成される。この間、開口72aは、レジストで塞がれた状態とされ、機能素子71がエッチングされないようにされる。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、凹所73の内表面に絶縁膜74が形成される。この状態が、図24(a)に示されている。続いて、開口72a,72b内および凹所73内を含むウエハW表面側の露出表面全面に、拡散防止膜75が形成される(図24(b)参照)。
【0011】
そして、この拡散防止膜75上に、銅からなるシード層(図示せず)が形成された後、このシード層をシードとした電解めっきにより、ウエハW表面側の露出表面全面に、配線部材81、貫通電極80、および裏面側突起電極82を形成するための金属材料(銅)76が供給される。
これにより、開口72a,72bおよび凹所73の内部は、金属材料76でほぼ完全に埋められる。金属材料76は、拡散防止膜75を介して、ハードマスク72の開口72a内に露出した機能素子71の電極に電気接続される。金属材料76は、開口72a,72bおよび凹所73の外部にも供給され、開口72a内から開口72b内および凹所73内に渡って連続して配置するようにされる。この状態が、図24(c)に示されている。
【0012】
次に、所定のパターンのマスクを用いて、金属材料76および拡散防止膜75のうち、ウエハWを垂直に見下ろす平面視において、凹所73(開口72b)および開口72aを含む所定の領域以外の部分が、エッチングにより除去される。この状態が、図25(d)に示されている。その後、必要により、金属材料76を保護するための表面保護膜が、金属材料76を覆うように形成される。
【0013】
続いて、金属材料76上において、ウエハWを垂直に見下ろす平面視において凹所73とほぼ重なる領域に、UBM層77および表面側突起電極(バンプ)78が順に形成される(図25(e)参照)。金属材料76が表面保護膜で覆われている場合は、UBM層77の形成に先立って、表面側突起電極78の形成領域に表面保護膜が存在しない状態にされる。
【0014】
次に、ウエハWの裏面がドライエッチングされて、ウエハWの厚さが凹所73の深さより小さくされる。この工程は、絶縁膜74のエッチング速度がウエハWのエッチング速度に対して遅くなるようにして実施される。これにより、凹所73は、ウエハWをその厚さ方向に貫通する貫通孔79となり、凹所73内に配置されていた金属材料76は、ウエハWの表面側と裏面側とを電気接続する貫通電極80となる。
【0015】
また、凹所73内に配置されていた金属材料76の一部は、絶縁膜74および拡散防止膜75に覆われた状態で、ウエハWの裏面から突出した裏面側突起電極82となる。金属材料76の残部は、貫通電極80と機能素子71の電極とを電気接続する配線部材81となる。この状態が図25(f)に示されている。
次に、ウエハWの裏面に露出した絶縁膜74が、エッチングにより除去される。これにより、図26(g)に示すように、裏面側突起電極82を覆う拡散防止膜75が露出する。さらに、裏面側突起電極82を覆う拡散防止膜75がエッチングにより除去されて、裏面側突起電極82の先端部およびその近傍が露出する(図26(h)参照)。
【0016】
その後、露出した裏面側突起電極82の表面に、たとえば、電解めっきにより低融点金属層83が形成され、ウエハWが切断されて、図23に示す貫通電極80を有する半導体チップ91の個片にされる。
【特許文献1】特開2001−53218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、このような半導体チップ91を大気中に放置しておくと、錫などからなる低融点金属層83の表面には、容易に酸化膜が形成される。酸化膜は、低融点金属の融液に濡れないため、裏面側突起電極82と電極パッドや他の半導体チップ91の表面側突起電極78との間において、実質的に接合に寄与する部分の面積が小さくなる。
これにより、半導体チップと配線基板や他の半導体チップとの接合強度および電気的な接続信頼性が低下する。
【0018】
また、酸化膜を除去するためにフラックス等の活性剤を使用すると、活性剤を起源とする不純物イオンによるマイグレーションが生じて電気的短絡が形成されたり、裏面側突起電極82と電極パッド等との接合界面に非金属物質が巻き込まれて接続信頼性が低下するおそれがある。
さらに、複数の半導体チップ91が厚さ方向に積層され、隣接する2つの半導体チップ91の表面側突起電極78と裏面側突起電極82とが接合された場合、これらの半導体チップ91の間に応力がかかると、この応力は接合部である低融点金属層83の付近に集中する。
【0019】
図23に示すように、表面側突起電極78およびその近傍が金属からなる半導体チップ91では、このような応力を緩和することができず、接合部である低融点金属層83の付近、またはUBM層77と表面側突起電極78もしくは配線部材81との界面付近が破断することがあった。これにより、2つの半導体チップ91の間の機械的接合および電気接続が破壊されることがあった。
【0020】
そこで、この発明の目的は、配線基板や他の半導体チップに対する接続信頼性が高い半導体チップの製造方法を提供することである。
この発明の他の目的は、配線基板や他の半導体チップに対する接続信頼性が高い半導体チップを提供することである。
この発明のさらに他の目的は、相互に高い信頼性で接続された複数の半導体チップを備えた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、機能素子(3)が形成された半導体基板(2,W)の一方表面に開口する孔(4,9)を形成する工程と、この孔の内部にポリマー(32)を埋め込む工程と、この孔の内部に埋め込まれたポリマーの露出表面上に、上記機能素子に電気接続された配線層(35,41A,41B,41C,41D)を形成する配線層形成工程と、上記ポリマー上の配線層に突起電極(14,40)を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体チップ(31,37,38,39)の製造方法である。
【0022】
なお、括弧内の数字は後述の実施形態における対応構成要素等を示す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、孔の内部に配置されたポリマー上に突起電極が形成された半導体チップを製造できる。金属材料と比べてポリマーは容易に変形できる。したがって、このような半導体チップは、突起電極を介して配線基板に形成された電極パッドや他の半導体チップ等に接合された状態で応力が与えられても、このような応力をポリマーにより緩和できる。このため、突起電極と電極パッドや他の半導体チップの突起電極との接合部が破断し難い。すなわち、この製造方法により、接続信頼性が高い半導体チップを製造できる。
【0023】
ポリマーは凹所内をほぼ完全に満たすように埋め込まれることが好ましく、また、凹所内に埋め込まれたポリマーの露出表面は、半導体基板の表面とほぼ面一にされていることが好ましい。この場合、配線層は、半導体基板の表面とほぼ面一にあるポリマーの露出表面上に形成されるものとすることができる。
ポリマーが配置される孔は、凹所であってもよく、半導体基板を厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよい。
【0024】
ポリマーとしては、たとえば、ポリイミド、エポキシ、フェノール系樹脂、シリコーン、アクリル系樹脂などを用いることができる。特に、ポリイミドは、高い応力緩衝効果を発揮できるとともに、高い靱性を備えた材料として、好的に用いることができる。
請求項2記載の発明は、上記配線層形成工程が、上記孔の縁部と上記配線層との間から上記ポリマーが露出するように上記配線層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体チップの製造方法である。
【0025】
この発明によれば、孔の縁部の一部がポリマー上の配線層と接合されていない半導体チップを製造できる。このような半導体チップにおいて、ポリマー上の配線層および突起電極は自由に動きやすいので、効率的に応力を緩和できる。
孔の縁部と配線層との間からのポリマーの露出面積が大きい程、自由に動きやすくなり、上述の応力緩和の効果が大きくなる。
【0026】
請求項3記載の発明は、上記孔を形成する工程が、上記孔としての凹所(9)を形成する工程を含み、上記機能素子が上記半導体基板の上記一方表面に形成されており、上記凹所を形成する工程の後、上記凹所内に上記ポリマーを供給する工程の前に、上記凹所の内壁面に導電性材料を供給して、上記機能素子に電気接続された導電膜(34)を形成する工程と、上記凹所内にポリマーを供給する工程の後、上記半導体基板を上記一方表面とは異なる他方表面から除去し、上記半導体基板の厚さを上記凹所の深さより小さな厚さに薄型化して上記凹所を上記半導体基板の厚さ方向に貫通する貫通孔(4)とし、上記導電膜が、上記半導体基板の上記一方表面側と上記他方表面側とに渡って配設された状態とする薄型化工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の半導体チップの製造方法である。
【0027】
この発明によれば、導電膜により半導体基板の一方表面側(機能素子)と他方表面側とを、短い配線長で電気接続された半導体チップを製造できる。
上記薄型化工程は、上記導電膜を残した状態で、上記半導体基板を上記凹所の深さより小さな厚さに薄型化する工程を含んでいてもよい。この場合、半導体基板の他方表面から突出し、導電膜に覆われたポリマーを形成することができる。このような製造方法により得られた半導体チップは、半導体チップの他方表面から突出し導電膜に覆われたポリマーを裏面側突起電極として、配線基板に形成された電極パッドや他の半導体チップの突起電極に接合できる。
【0028】
この場合、導電膜(貫通電極)は、不活性な金属材料(たとえば、金、パラジウム、またはこれらの合金)からなることが好ましく、この場合、裏面側突起電極の表面に形成された導電膜は酸化し難いので、配線基板に形成された電極パッドや他の半導体チップの突起電極に良好に接合できる。
請求項4記載の発明は、機能素子(3)が形成された半導体基板(2)と、この半導体基板の一方表面に開口を有する孔の内部を埋めるように配置されたポリマー(32)と、上記孔の内部に埋められたポリマー上に形成され、上記機能素子に電気接続された配線層(35,41A,41B,41C,41D)と、上記配線層のうち上記ポリマー上にある部分に設けられた突起電極(14,40)とを含むことを特徴とする半導体チップ(31,37,38,39)である。
【0029】
この半導体チップは、請求項1記載の製造方法により製造することができ、請求項1記載の製造方法と同様の効果を奏することができる。
請求項5記載の発明は、上記ポリマーが、上記凹所の縁部と上記配線層との間から露出されていることを特徴とする請求項4記載の半導体チップである。
この半導体チップは、請求項2記載の製造方法により製造することができ、請求項2記載の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0030】
請求項6記載の発明は、機能素子(3)が形成された半導体基板(2)と、この半導体基板を厚さ方向に貫通する貫通孔(4)内に配置されたポリマー(32)と、上記貫通孔内に配置されたポリマー上に形成され、上記機能素子に電気接続された配線層(35,41A,41B,41C,41D)と、この配線層のうち上記ポリマー上にある部分に設けられた突起電極(14,40)と、上記貫通孔内で、上記半導体基板の一方表面と他方表面との間に渡って配設され、上記機能素子に電気接続された導電膜(34)とを含むことを特徴とする半導体チップ(31,37,38,39)である。
【0031】
この半導体チップは、請求項3記載の製造方法により製造することができ、請求項3記載の製造方法と同様の効果を奏することができる。
請求項7記載の発明は、厚さ方向に積層された複数の請求項4ないし6のいずれかに記載の半導体チップ(1,21,25,31,37,38,39)を含むことを特徴とする半導体装置(45,55,65,66,68)である。
【0032】
この発明の半導体装置は、いわゆるマルチチップ型の半導体装置であり、隣接する2つの半導体チップの一方の裏面側突起電極が、他方の半導体チップに接合および電気接続されたものとすることができる。これにより、隣接する2つの半導体チップは、高い接合強度および良好な電気接続性を有することができる。
複数の半導体チップは、配線基板(インタポーザ)やリードフレームの上に積層されて接続されていてもよい。また、複数の半導体チップは、他の半導体チップなどの固体装置を介して、配線基板やリードフレームなどに積層されて接続されていてもよい。これらの場合、各半導体チップの機能素子(能動層)が形成された面は、配線基板やリードフレームに側に向けられていてもよく、配線基板やリードフレームとは反対側に向けられていてもよい。固体装置や半導体チップと配線基板やリードフレームとは、たとえば、ボンディングワイヤにより電気接続されていてもよい。
【0033】
この発明に係る半導体装置は、いわゆるBGA(Ball Grid Array)の形態を有していてもよく、QFN(Quad Flat Non-lead)の形態を有していてもよく、その他任意のパッケージ形態を有するものとすることができる。
他の半導体チップ(1,21,25)の製造方法は、表面および裏面を有し上記表面に機能素子(3)が形成された半導体基板(2,W)の上記表面から、この半導体基板の厚さ方向に延びる凹所(9)を形成する工程と、上記凹所の内壁面に不活性な第1の金属材料を供給して、当該第1の金属材料からなる酸化防止膜(8)を形成する工程と、この酸化防止膜を形成する工程の後、上記凹所内に上記第1の金属材料より酸化しやすい金属を含む第2の金属材料(19,20)を供給する工程と、上記凹所内に供給された第2の金属材料と上記機能素子とを電気接続する工程と、上記酸化防止膜を残した状態で、上記半導体基板をその裏面から除去して、その厚さが上記凹所の深さより薄くなるようにし、上記凹所を上記半導体基板の厚さ方向に貫通する貫通孔(4)とし、上記凹所内に配置された上記第2の金属材料を、上記半導体基板の上記表面側と上記裏面側とを電気接続する貫通電極(10)とするとともに上記半導体基板の上記裏面側から突出した裏面側突起電極(15)とする薄型化工程とを含む。
【0034】
この製造方法によれば、酸化防止膜を形成する工程の後、第2の金属材料を供給する工程を実施することにより、凹所内には、酸化防止膜に覆われた第2の金属材料が配置された状態となる。この第2の金属材料は、薄型化工程において、酸化防止膜に覆われたまま半導体基板の裏面側に突出して裏面側突起電極となる。
この製造方法によれば、半導体基板を薄型化することにともなって、酸化防止膜に覆われた裏面側突起電極が形成される。半導体基板を薄型化した後、別途、裏面側突起電極および酸化防止膜の形成を行う場合、薄型化された半導体基板のハンドリングおよび裏面側突起電極形成時のアライメントが困難になる。この製造方法によれば、このような問題は生じず、容易に酸化防止膜に覆われた裏面側突起電極を形成できるので、コストを低減できる。
【0035】
得られた半導体チップにおいて、裏面側突起電極は、不活性な第1の金属材料からなる酸化防止膜で覆われているので、大気中に放置されていた場合でも、容易に酸化せず、また、酸化防止膜自体も酸化しない。このため、裏面側突起電極を介して、この半導体チップを、配線基板や他の半導体チップに接合する際、接合部に酸化膜が介在して、実質的な接合面積が小さくなることはない。したがって、この製造方法により得られた半導体チップは、配線基板や他の半導体チップに高い接合強度で接合できるとともに、電気的に良好に接続できる。すなわち、配線基板や他の半導体チップに対する接続信頼性が高い半導体チップを製造できる。
【0036】
この製造方法により得られる半導体チップを、複数個厚さ方向に積層して上記裏面側突起電極を介して半導体チップ相互間を接合することにより、これらの半導体チップが相互に高い接合強度で接合されるとともに、電気的に良好に接続されたマルチチップ型の半導体装置を製造できる。
また、酸化膜を除去するためにフラックス等の活性剤を使用する必要がない(または、活性剤の使用量を低減できる)ので、活性剤を起源とする不純物イオンによるマイグレーションが生じて電気的な短絡が形成されたり、裏面側突起電極と電極パッド等との接合界面に非金属物質が巻き込まれて接続信頼性が低下するおそれがない(少ない)。
【0037】
凹所内に第2の金属材料を供給する工程は、半導体基板において凹所内から機能素子に至る領域に連続して第2の金属材料を供給する工程を含んでいてもよい。この場合、凹所内に第2の金属材料を供給する工程と、凹所内に供給された第2の金属材料と機能素子とを電気接続する工程とを、一括して行うことができる。
上記第1の金属材料は、たとえば、金およびパラジウムの1種以上であってもよい。金やパラジウムからなる酸化防止膜は、大気中で放置されていても、その露出表面に酸化膜が形成されることはない。この場合、第2の電極材料は、たとえば、銅、タングステン、アルミニウムとすることができる。凹所内に第2の金属材料を供給する工程は、凹所内に、金やパラジウムなどの第1の金属材料と同種の金属材料を供給する工程を含んでいてもよい。
【0038】
また、金の抵抗は低いので、貫通孔内に酸化防止膜を形成することにより、たとえば、貫通電極がタングステンのような抵抗が高い金属からなる場合でも、半導体基板の表面と裏面との間の抵抗値を低くすることができる。
この半導体チップの製造方法は、上記凹所を形成する工程の後、上記酸化防止膜を形成する工程の前に、上記凹所の内壁面に電気的絶縁性を有する材料を供給して、当該電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁膜(5)を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0039】
この場合、半導体基板と貫通電極との間に絶縁膜を形成することができる。絶縁膜により、貫通電極と半導体基板との間を電気的に絶縁することができる。絶縁膜は、たとえば、酸化シリコン(SiO2)からなるものとすることができる。
薄型化工程において、絶縁膜に対するエッチング速度が半導体基板に対するエッチング速度より小さくなるような条件で、半導体基板の裏面をエッチングすることにより、絶縁膜とともに酸化防止膜を残した状態で、半導体基板の厚さを凹所の深さより小さな厚さにすることができる。
【0040】
この場合、この製造方法は、上記薄型化工程の後、上記半導体基板の上記裏面に露出した上記絶縁膜を除去して、上記酸化防止膜を露出させる絶縁膜除去工程をさらに含むものとすることができる。
この半導体チップの製造方法は、上記凹所を形成する工程の後、上記酸化防止膜を形成する工程の前に、上記凹所の内壁面に、上記貫通孔内から上記半導体基板への金属原子の拡散を抑制する拡散防止膜(7)を形成する拡散防止膜形成工程をさらに含んでもよい。
【0041】
この場合、貫通孔内において貫通電極と半導体基板との間に拡散防止膜を形成することができる。拡散防止膜により、貫通孔内に配置された金属、たとえば、貫通電極や酸化防止膜を構成する金属が半導体基板中に拡散して、デバイス特性が劣化するのを防止することができる。拡散防止膜は、たとえば、チタンタングステン(TiW)やチタンナイトライド(TiN)やタンタルナイトライド(TaN)からなるものとすることができる。
【0042】
貫通孔内において、半導体基板と酸化防止膜との間に、たとえば、酸化シリコンからなる絶縁膜が形成されており、貫通電極が銅からなる場合、絶縁膜により、貫通電極を構成する銅原子が半導体基板中へ拡散することを防ぐことはできない。このような場合でも、チタンタングステンやチタンナイトライドからなる拡散防止膜により、貫通孔内の銅原子が半導体基板中へ拡散することを防止できる。
【0043】
薄型化工程の後、半導体基板の裏面側において、拡散防止膜が酸化防止膜を覆った状態で露出している場合は、この拡散防止膜を除去して酸化防止膜を露出させることとしてもよい。
この半導体チップ(25)の製造方法は、上記酸化防止膜を形成する工程の後、上記凹所に第2の金属材料を供給する工程の前に、上記凹所の内壁面に、上記酸化防止膜と上記第2の金属材料との間の金属原子の拡散を抑制する金属間拡散防止膜(26)を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0044】
この製造方法により、貫通電極および裏面側突起電極と酸化防止膜との間に金属間拡散防止膜が形成された半導体チップを得ることができる。このような半導体チップにおいて、貫通電極や裏面側突起電極(第2の金属材料)が、酸化防止膜を構成する金属(第1の金属材料)と反応しやすい金属からなる場合でも、金属間拡散防止膜により、貫通電極や裏面側突起電極を構成する金属と酸化防止膜を構成する金属との拡散を抑制することができる。
【0045】
これにより、酸化防止膜を構成する金属が、裏面側突起電極中に拡散して、裏面側突起電極を覆う酸化防止膜が消失し、裏面側突起電極の表面が酸化する事態を回避できる。
また、貫通電極や裏面側突起電極を構成する金属原子と、酸化防止膜を構成する金属原子とが相互拡散しやすい場合において、金属間拡散防止膜を設けることにより、それぞれの金属原子の他方の金属中への拡散速度の差に起因して、一方の金属材料中にボイド(いわゆるカーケンドルボイド)が生ずることを防止できる。
【0046】
金属間拡散防止膜は、たとえば、チタンやチタンタングステン(TiW)からなるものとすることができる。
この半導体チップの製造方法は、上記第2の金属材料が、固相線温度が60℃以上かつ370℃以下の温度範囲である低融点金属材料を含み、上記凹所に第2の金属材料を供給する工程が、上記凹所の底部に、当該低融点金属材料を供給して、低融点金属層(19)を形成する低融点金属層形成工程をさらに含んでもよい。
【0047】
この場合、裏面側突起電極の少なくとも先端部側に低融点金属層が形成された半導体チップを得ることができる。このような半導体チップは、裏面側突起電極を配線基板に形成された電極パッド等に接合する際、この半導体チップを当該低融点金属(低融点金属材料)の融点(固相線温度)以上の温度に加熱して、当該低融点金属を溶融および固化させることができる。これにより、裏面側突起電極と配線基板に形成された電極パッド等とを良好に接合できる。
【0048】
この際、酸化防止膜を構成する金属は、すべて低融点金属層中に取り込まれ(拡散し)、また、貫通電極を構成する金属の一部も低融点金属層中に取り込まれて、合金層(金属間化合物や固溶体を含む層、または共晶からなる層)を形成する。
上記低融点金属層形成工程は、上記凹所の底部にのみ当該低融点金属材料を供給するものであってもよく、この場合、上記凹所に第2の金属材料を供給する工程は、上記低融点金属層形成工程の後、上記凹所に上記低融点金属より固相線温度が高い高融点金属材料を供給する工程を含むものとすることができる。これにより、貫通電極および裏面側突起電極のうち、少なくとも貫通電極の一部が高融点金属材料からなる半導体チップを得ることができる。すなわち、低融点金属材料は、貫通電極の少なくとも一部をなす高融点金属材料より、固相線温度が低いものとすることができる。
【0049】
高融点金属材料は、たとえば、銅、タングステン、アルミニウム、金とすることができる。
上記低融点金属材料は、たとえば、錫(Sn)、錫を含む合金(たとえば、錫−銀(Ag)−銅合金)、インジウム(In)、インジウムを含む合金(たとえば、インジウム−錫合金)からなるものとすることができる。これらの低融点金属は、大気雰囲気中に露出されていると容易に酸化するが、この製造方法によれば、低融点金属層が酸化防止膜に覆われた半導体チップを製造できるので、低融点金属層が酸化しないようにすることができる。したがって、裏面側突起電極と電極パッドや他の突起電極との接合部に、金属酸化物が介在しないようにすることができるので、接続信頼性を高くすることができる。
【0050】
上記低融点金属層形成工程は、上記凹所の底部に当該低融点金属からなる粉末を含むペースト(18)を供給するペースト供給工程を含んでいてもよい。
この半導体チップの製造方法は、上記ペースト供給工程の後、上記金属材料供給工程の前に、加熱により当該ペースト中の有機物を除去する工程を含んでいることが好ましい。これにより、低融点金属層中の有機物量を低減して、裏面側突起電極と配線基板に形成された電極パッド等との接合が、有機物により阻害されないようにすることができる。
【0051】
上記ペースト供給工程は、先端に低融点金属ペーストの吐出口が形成されたニードルを備えたディスペンサの当該ニードル先端部を上記凹所に挿入して、当該吐出口から低融点金属ペーストを吐出するペースト吐出工程を含んでいてもよい。
これにより、低融点金属ペーストが凹所の底部にのみ供給されるようにすることができるので、配線基板に形成された電極パッド等に対する接合部である裏面側突起電極の先端部のみに低融点金属層が形成された半導体チップを得ることができる。
【0052】
上記ペースト吐出工程は、ディスペンサの吐出口を上記凹所の底部に近接させた状態で、当該吐出口から低融点金属ペーストを吐出する工程を含んでいてもよく、当該吐出口から微少量の低融点金属ペーストを射出して、低融点金属ペーストを上記凹所の底部に供給するジェットディスペンス工程を含んでいてもよい。
他の半導体チップ(1,21,25)は、表面および裏面を有する半導体基板(2)と、この半導体基板の上記表面に形成された機能素子(3)と、上記機能素子に電気接続され、この機能素子の側方で上記半導体基板を厚さ方向に貫通する貫通孔(4)内に配置され、上記半導体基板の上記表面側と上記裏面側とを電気接続する貫通電極(10)と、上記半導体基板の裏面から突出し、上記貫通電極の側面と連続した側面を有する裏面側突起電極(15)と、上記裏面側突起電極を覆い、上記貫通孔内で上記半導体基板と上記貫通電極との間に配置され、不活性な金属材料からなる酸化防止膜(8)とを含む。
【0053】
この半導体チップは、上記他の半導体チップの製造方法により製造することができ、上記他の半導体チップの製造方法と同様の効果を奏することができる。
上記酸化防止膜は、金およびパラジウムのうち1種以上の金属からなっていてもよい。
この半導体チップは、上記貫通孔内で、上記酸化防止膜と上記半導体基板との間に配置された絶縁膜(5)をさらに含んでもよい。
【0054】
この半導体チップは、上記貫通孔内で、上記酸化防止膜と上記半導体基板との間に配置され、上記貫通孔内から上記半導体基板への金属原子の拡散を抑制する拡散防止膜(7)をさらに含んでもよい。
この半導体チップは、上記貫通孔内で、上記酸化防止膜と上記貫通電極との間に配置され、上記酸化防止膜と上記貫通電極との間の金属原子の拡散を抑制する金属間拡散防止膜(26)をさらに含んでもよい。
【0055】
この半導体チップは、上記裏面側突起電極の少なくとも先端側が、固相線温度が60℃以上かつ370℃以下の温度範囲である低融点金属層(19)からなっていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、突起電極を有する半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
この半導体チップ1は、シリコン(Si)からなる半導体基板2を含んでいる。半導体基板2の一方表面(以下、「表面」という。)には、複数の電極を有する機能素子(デバイス)3が形成されている。機能素子3の側方には、半導体基板2を厚さ方向に貫通する貫通孔4が形成されている。
【0057】
半導体基板2の表面には、開口6a,6bを有するハードマスク6が形成されている。ハードマスク6は酸化シリコン(SiO2)からなる。半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、開口6a内には機能素子3の電極が存在している。開口6bと貫通孔4とは、連続した内壁面を有する1つの孔を形成している。
貫通孔4および開口6bの内壁面には、酸化シリコンからなる絶縁膜5が形成されている。絶縁膜5上、開口6a内に露出した機能素子3の電極上、および開口6bと開口6aとの間のハードマスク6上を含む所定の領域には、チタンタングステン(TiW)やタンタルナイトライド(TaN)やチタンナイトライド(TiN)からなる連続した拡散防止膜7が形成されている。
【0058】
拡散防止膜7の上には、金(Au)、パラジウム(Pd)、または金とパラジウムとの合金からなる酸化防止膜8が形成されている。
貫通孔4および開口6bの内部は、貫通電極10で埋められている。半導体基板2の表面において、貫通電極10上、ならびに貫通孔4および開口6b外の拡散防止膜7上には、貫通電極10と一体の配線部材11が設けられている。貫通電極10および配線部材11は、銅(Cu)、タングステン(W)、金、もしくはアルミニウム(Al)、またはこれらの合金からなる。
【0059】
開口6bに露出した機能素子3の電極は、拡散防止膜7、酸化防止膜8、および配線部材11を介して、貫通電極10に電気接続されている。
配線部材11の上には、チタンタングステン(TiW)やチタンからなるUBM(Under Bump Metal)層13を介して、金または銅からなる表面側突起電極(バンプ)14が形成されている。表面側突起電極14およびUBM層13は、貫通電極10のほぼ真上に(半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、貫通電極10とほぼ重なるように)に配置されている。
【0060】
半導体基板2の表面とは反対側の面(以下「裏面」という。)には、貫通電極10に接続され、裏面から突出した裏面側突起電極15が形成されている。裏面側突起電極15は、半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、貫通電極10および表面側突起電極14とほぼ重なるように形成されている。裏面側突起電極15は、貫通電極10の側面と連続した側面を有している。
【0061】
裏面側突起電極15の先端側は、低融点金属の粉末の集合物である低融点金属層19となっており、裏面側突起電極15の残部12は銅からなり、貫通電極10と一体となっている。裏面側突起電極15は、大部分、低融点金属層19で占められている。低融点金属の粉末は、たとえば、錫(Sn)、錫を含む合金(たとえば、錫−銀(Ag)−銅合金)、インジウム(In)、インジウムを含む合金(たとえば、インジウム−錫合金)からなる。
【0062】
裏面側突起電極15は、貫通孔4内から続く酸化防止膜8に覆われており、露出していない。
以上のような構成により、機能素子3対して、表面側突起電極14を介して半導体チップ1の表面側から電気接続できるとともに、裏面側突起電極15を介して半導体チップ1の裏面側からも電気接続できる。
【0063】
具体的には、この半導体チップ1は、裏面側突起電極15を介して、配線基板に形成された電極パッド等に接合できる。また、半導体チップ1同士を縦方向に積層し、隣接する半導体チップ1の表面側突起電極14と裏面側突起電極15とを接合することにより、半導体チップ1同士を機械的に接合できるとともに、電気接続できる。半導体基板2を貫通する貫通電極10により、半導体基板2の表面側と裏面側との間の配線長を短くすることができる。
【0064】
裏面側突起電極15を、配線基板に形成された電極パッド等や、他の半導体チップの表面側突起電極14と接合する際、適当な時間、低融点金属層19を構成する金属の融点(固相線温度)以上の温度にすることにより、低融点金属層19を溶融および固化させることができる。これにより、裏面側突起電極15と電極パッドや他の半導体チップ1の表面側突起電極14とが接合される。
【0065】
この際、裏面側突起電極15を覆う酸化防止膜8は、裏面側突起電極15中に取り込まれて、合金層(金属間化合物や固溶体を含む層、または共晶からなる層)を形成する。たとえば、酸化防止膜8が金からなり、低融点金属層19が錫からなる場合、金と錫との金属間化合物および錫を含む合金層が形成される。また、貫通電極10が銅や金からなる場合は、これらの銅や金の一部も低融点金属層19中に取り込まれて、低融点金属との合金を形成する。
【0066】
この半導体チップ1の裏面側突起電極15は酸化防止膜8に覆われているので、大気中に放置していても、裏面側突起電極15の表面に酸化膜が形成されることはない。また、金やパラジウムからなる酸化防止膜8自体も酸化することはない。このため、裏面側突起電極15と電極パッドや他の半導体チップ1の表面側突起電極14とを接合する際、これらの間に酸化物が介在することはない。したがって、この半導体チップ1は、配線基板や他の半導体チップに対して、接合強度を高くして接合できるとともに、電気的な接続信頼性を高くすることができる。
【0067】
また、酸化膜を除去するためにフラックス等の活性剤を使用する必要がない(または、活性剤の使用量を低減できる)ので、活性剤を起源とする不純物イオンによるマイグレーションが生じて電気的短絡が形成されたり、裏面側突起電極15と電極パッド等との接合界面に非金属物質が巻き込まれて接続信頼性が低下するおそれがない(少ない)。
このような半導体チップ1を、複数個厚さ方向に積層して裏面側突起電極15を介して半導体チップ1相互間を接合することにより、これらの半導体チップ1が相互に高い接合強度で接合されるとともに、電気的に良好に接続されたマルチチップ型の半導体装置を製造できる。
【0068】
また、貫通電極10および配線部材11がタングステンからなり、酸化防止膜8が金からなる場合、機能素子3と裏面側突起電極15との間は、貫通電極10および配線部材11(タングステン)に加えて、タングステンより電気抵抗(比抵抗)の低い金からなる酸化防止膜8により電気接続される。この場合、酸化防止膜8が設けられていなかった場合と比べて、機能素子3と裏面側突起電極15との間の電気抵抗を低くすることができる。
【0069】
貫通孔4内において、半導体基板2と、貫通電極10、酸化防止膜8、および拡散防止膜7との間に、絶縁膜5が設けられていること、ならびに、半導体基板2の表面側において、半導体基板2と、配線部材11、酸化防止膜8、および拡散防止膜7との間に、ハードマスク6が設けられていることにより、機能素子3の電極から裏面側突起電極15に至る導電経路は、半導体基板2と電気的に絶縁されている。
【0070】
半導体基板2(絶縁膜5およびハードマスク6)と、貫通電極10、配線部材11、および酸化防止膜8との間に、拡散防止膜7が設けられていることにより、半導体チップ1の製造時および製造後に、貫通電極10、配線部材11、および酸化防止膜8を構成する金属原子の半導体基板2中への拡散が防止(抑制)される。これにより、半導体チップ1のデバイス特性が劣化するのを防止できる。
【0071】
図2ないし図5は、図1に示す半導体チップ1の製造方法を説明するための図解的な断面図である。複数の半導体チップ1が、1枚の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wから作成されるが、図2ないし図5では、ウエハWにおける1つの半導体チップ1の一部に相当する部分のみを示す。図2ないし図5に示すウエハWは、図1に示す最終形態の半導体チップ1に対応する領域が、ウエハWの面内方向に、複数個密に配されたものである。
【0072】
表面に機能素子3が形成されたウエハWの当該表面に、所定の部分に開口6a,6bを有するハードマスク6が形成される。開口6a内には、機能素子3の電極が露出するようにされる。また、開口6b内には、ウエハWにおいて機能素子3が形成されていない所定の領域が露出するようにされる。
次に、反応性イオンエッチング(RIE)により、開口6b内に露出したウエハWがエッチングされて、凹所9が形成される。この間、開口6aは、レジストで塞がれた状態とされ、機能素子3がエッチングされないようにされる。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、凹所9の内表面に酸化珪素が供給されて絶縁膜5が形成される。この状態が、図2(a)に示されている。続いて、開口6a,6b内および凹所9内を含むウエハW表面側の露出表面全面に、タンタルまたはチタン、および窒素が供給されて、拡散防止膜7が形成される(図2(b)参照)。
【0073】
そして、この拡散防止膜7上、すなわち、凹所9内を含むウエハW表面側の露出表面全面に、スパッタ法、CVD法、無電解めっき法などにより金やパラジウムが供給されて、酸化防止膜8が形成される。この状態が、図2(c)に示されている。
次に、ディスペンサにより、凹所9の底部に、低融点金属の粉末および有機物を含む低融点金属ペースト18が供給される。ディスペンサは、先端に低融点金属ペースト18の吐出口が形成されたニードル17を備えており、ニードル17の先端部が凹所9内に挿入され、吐出口が凹所9の底面に近接された状態で、この吐出口から低融点金属ペースト18が吐出される(図3(d)参照)。
【0074】
この工程は、微少量の低融点金属ペースト18を射出して、所定の領域(凹所9の底部)に供給するジェットディスペンスにより行ってもよい。
続いて、ウエハWが適当な温度に加熱されて、低融点金属ペースト18中の有機物が除去される。これにより、図3(e)に示すように、低融点金属の粉末の集合物である低融点金属層19が、凹所9の底部にのみ配置された状態となる。
【0075】
次に、貫通電極10および配線部材11と同種の金属材料からなるシード層(図示せず)が、凹所9内を含むウエハW表面側の露出表面全面に形成される。そして、このシード層をシードとした電解めっきにより、配線部材11、貫通電極10、および裏面側突起電極15の残部12を形成するための金属材料(銅、タングステン、金、およびアルミニウムの1種以上)20が供給される。
【0076】
これにより、開口6a,6bおよび凹所9の内部は、金属材料20でほぼ完全に埋められる。金属材料20は、拡散防止膜7および酸化防止膜8を介して、ハードマスク6の開口6aに露出した機能素子3の電極に電気接続される。金属材料20は、凹所9外の酸化防止膜8(シード層)上にも供給され、開口6a内から開口6b内および凹所9内に渡って連続して配置するようにされる。この状態が、図3(f)に示されている。
【0077】
金属材料20を供給する工程は、無電解めっき、スパッタ法、CVD法などにより行ってもよく、これらの場合、シード層を形成する工程は実施しなくてもよい。
次に、所定のパターンのマスクを用いて、金属材料20(電解めっきにより形成される場合は、シード層を含む。)、酸化防止膜8、および拡散防止膜7のうち、ウエハWを垂直に見下ろす平面視において、凹所9(開口6b)および開口6aを含む所定の領域以外の部分が、エッチングにより除去される。この状態が、図4(g)に示されている。
【0078】
その後、必要により、金属材料20を保護するための酸化珪素や窒化珪素(Si3N4)からなる表面保護膜(図示せず)が、金属材料20を覆うように形成される。
続いて、金属材料20上に、UBM層13および表面側突起電極14が順次形成される。UBM層13および表面側突起電極14は、ウエハWを垂直に見下ろす平面視において、凹所9とほぼ重なる領域に形成される(図4(h)参照)。また、金属材料20の上に表面保護膜が形成されている場合は、UBM層13の形成に先立って、表面側突起電極14の形成領域に表面保護膜が存在しない状態にされる。
【0079】
次に、ウエハWの裏面がドライエッチングされて、ウエハWの厚さが、凹所9の深さ(金属材料20と低融点金属層19との界面が存在する深さ)より小さくされる。この工程は、絶縁膜5のエッチング速度がウエハWのエッチング速度に対して遅くなるようにして実施される。これにより、凹所9は、ウエハWをその厚さ方向に貫通する貫通孔4となり、凹所9内に配置されていた金属材料20は、ウエハWの表面側と裏面側とを電気接続する貫通電極10となる。
【0080】
また、凹所9内に配置されていた低融点金属層19と金属材料20の一部とは、絶縁膜5および拡散防止膜7に覆われた状態で、ウエハWの裏面から突出した裏面側突起電極15となる。金属材料20の残部は、貫通電極10と機能素子3の電極とを電気接続する配線部材11となる。この状態が図4(i)に示されている。
次に、ウエハWの裏面に露出した絶縁膜5が、エッチングにより除去される。これにより、図5(j)に示すように、裏面側突起電極15を覆う拡散防止膜7が露出する。さらに、裏面側突起電極15を覆う拡散防止膜7がエッチングにより除去されて、裏面側突起電極15を覆う酸化防止膜8が露出する。
【0081】
その後、ウエハWが切断されて、図1に示す貫通電極10を有する半導体チップ1の個片にされる。
この製造方法によれば、ウエハWを薄型化することにともなって、酸化防止膜8に覆われた裏面側突起電極15が形成される。ウエハWを薄型化した後、別途、裏面側突起電極15および酸化防止膜8の形成を行う場合、薄型化されたウエハWのハンドリングおよび裏面側突起電極15形成時のアライメントが困難になる。この製造方法によれば、このような問題は生じず、容易に酸化防止膜8に覆われた裏面側突起電極15を形成できるので、コストを低減できる。
【0082】
図6は、突起電極を有する他の半導体チップの図解的な断面図である。図1に示す半導体チップ1の各部に対応する部分には、図6に同一符号を付して説明を省略する。
この半導体チップ21は、半導体チップ1と類似した構造を有するが、裏面側突起電極22は、低融点金属層19(図1参照)を含んでおらず、裏面側突起電極22の全体が、貫通電極10と同種の材料(銅、タングステン、もしくはアルミニウム、またはこれらの合金)からなる。貫通電極10と裏面側突起電極22とは、一体に形成されている。裏面側突起電極22は、半導体チップ1の裏面側突起電極15と同様に、酸化防止膜8で覆われている。
【0083】
この半導体チップ21は、裏面側突起電極22を配線基板に形成された電極パッドや、他の半導体チップ1,21の表面側突起電極14に接合して、これらの配線基板や半導体チップ1,21に接続できる。この際、半導体チップ21および配線基板または他の半導体チップ1,21を適当な温度に加熱し、裏面側突起電極22を、電極パッドや他の半導体チップ1,21の表面側突起電極14に適当な圧力で押しつけ、必要によりこれらの接触部に超音波が与えられる。これにより、裏面側突起電極22の融点(固相線温度)以下の温度で裏面側突起電極22と、電極パッドや他の半導体チップ1,21の表面側突起電極14とを接合できる。
【0084】
この半導体チップ21を大気中で放置していた場合でも、酸化防止膜8により、裏面側突起電極22の表面が酸化することはない。したがって、裏面側突起電極22と、電極パッドや他の半導体チップ1,21の表面側突起電極14との接合界面に、金属酸化物が介在することはなく、高い接合強度を得ることができる。
図7は、図6に示す半導体チップ21の製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【0085】
酸化防止膜8の形成(図2(c)参照)までが、半導体チップ1の製造方法と同様に実施される。その後、低融点金属ペースト18を供給する工程(図3(d)参照)が実施されることなく、金属材料20を供給する工程(電解めっきによる場合は、シード層を形成する工程を含む。)が、半導体チップ1の製造方法(図3(f)参照)と同様に実施される。これにより、図7に示すように、凹所9内がその底部を含めて金属材料20で満たされる。
【0086】
その後、金属材料20(電解めっきにより形成される場合は、シード層を含む。)、酸化防止膜8、および拡散防止膜7のうち所定の領域以外の部分を除去する工程(図4(g)参照)以下が、半導体チップ1の製造方法と同様に実施されて、図6に示す半導体チップ21が得られる。
図8は、突起電極を有するさらに他の半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。図6に示す半導体チップ21の各部に対応する部分には、図8に同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
この半導体チップ25は、図6に示す半導体チップ21と類似した構造を有するが、酸化防止膜8と貫通電極10および配線部材11との間に、金属間拡散防止膜26が介装されている。金属間拡散防止膜26は、チタンタングステンまたはチタンからなる。
酸化防止膜8を構成する金属と貫通電極10および配線部材11を構成する金属とが反応しやすい場合、たとえば、酸化防止膜8が金からなり、貫通電極10および配線部材11が銅からなる場合、金属間拡散防止膜26により、これらの間の反応を防止できる。これにより、裏面側突起電極22を覆う酸化防止膜8を構成する金属原子が、裏面側突起電極22中に拡散して、酸化防止膜8が消失することを防止でき、裏面側突起電極22の表面が酸化する事態を回避できる。
【0088】
また、貫通電極10、裏面側突起電極22、および配線部材11を構成する金属原子と、酸化防止膜8を構成する金属原子とが相互拡散しやすい場合(たとえば、貫通電極10等が銅からなり、酸化防止膜8が金からなる場合)において、金属間拡散防止膜26を設けることにより、それぞれの金属原子の他方の金属中への拡散速度の差により、一方の金属材料中にボイド(いわゆるカーケンドルボイド)が生ずることを防止できる。これにより、貫通電極10、裏面側突起電極22、および配線部材11と酸化防止膜8との機械的な接合強度および電気的な接続信頼性が劣化することを防止できる。
【0089】
さらに、金属間拡散防止膜26が機能素子3と配線部材11との間に設けられていることにより、配線部材11を構成する金属原子が機能素子3中に拡散して、機能素子3の特性が劣化するのを防止できる。
一方、酸化防止膜8が金からなり、貫通電極10等がニッケル(Ni)からなる場合や、酸化防止膜8の種類によらず貫通電極10等がタングステンからなる場合などは、酸化防止膜8を構成する金属と貫通電極10等を構成する金属とが反応し難い。このような場合は、金属間拡散防止膜26は設けなくてもよい。
【0090】
図9は、図8に示す半導体チップ25の製造方法を説明するための図解的な断面図である。
酸化防止膜8の形成(図2(c)参照)までが、半導体チップ1の製造方法と同様に実施された後、低融点金属ペースト18を供給する工程(図3(d)参照)が実施されることなく、凹所9内を含むウエハW表面側の露出表面全面に、チタンおよびタングステン、またはチタンが単独で供給されて金属間拡散防止膜26が形成される(図9(a)参照)。この工程は、無電解めっき、スパッタ法、CVD法などにより実施できる。
【0091】
次に、金属材料20を供給する工程(電解めっきによる場合は、シード層を形成する工程を含む。)が、半導体チップ1の製造方法(図3(f)参照)と同様に実施される。これにより、図9(b)に示すように、凹所9内がその底部を含めて金属材料20で満たされる。
続いて、金属材料20(電解めっきにより形成される場合は、シード層を含む。)、金属間拡散防止膜26、酸化防止膜8、および拡散防止膜7のうち、凹所9内、開口6a,6b内、およびこれらの間のハードマスク6上を含む所定の領域以外の部分が除去される。この状態が、図9(c)に示されている。その後、UMB層13および表面側突起電極14を形成する工程(図4(h)参照)以下が、半導体チップ1の製造方法と同様に実施されて、図8に示す半導体チップ25が得られる。
【0092】
図10は、本発明の一実施形態に係る半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。図6に示す半導体チップ21の各部に対応する部分には、図10に同一符号を付して説明を省略する。
この半導体チップ31は、図6に示す半導体チップ21と類似した構造を有するが、貫通電極10および配線部材11は設けられておらず、貫通孔4内には、ポリイミド、エポキシ、フェノール系樹脂、シリコーン、アクリル系樹脂などからなるポリマー32が埋められている。また、酸化防止膜8の代わりに、金、パラジウム、またはそれらの合金からなる導電膜34が設けられている。
【0093】
ポリマー32は、半導体基板2の裏面から突出しており、この突出部は、導電膜34で覆われて、裏面側突起電極33を構成している。導電膜34は、貫通孔4内を経て、半導体基板2の表面側に続くように設けられており、貫通孔4内ではポリマー32と拡散防止膜7との間に介装されており、半導体基板2の表面側では拡散防止膜7上に設けられている。裏面側突起電極33は、導電膜34および拡散防止膜7により機能素子3に電気接続されている。
【0094】
半導体基板2の表面において、ポリマー32の表面とその近傍の拡散防止膜7の表面とは、ほぼ面一になっており、ポリマー32の表面およびその近傍の拡散防止膜7を覆うように、配線層35が設けられている。ポリマー32は、導電膜34と配線層35との間から露出していない。配線層35と導電膜34とは、電気接続されている。
配線層35の上には、表面側突起電極14が形成されている。表面側突起電極14は、半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、ポリマー32より大きく、ポリマー32の形成領域は表面側突起電極14の形成領域内に完全に含まれている。表面側突起電極14は、配線層35、導電膜34、および拡散防止膜7を介して、機能素子3に電気接続されている。
【0095】
この半導体チップ31は、半導体チップ1,21,25と同様、裏面側突起電極33により、配線基板に形成された電極パッドや他の半導体チップ1,21,25,31の表面側突起電極14に接続できる。また、この半導体チップ31は、表面側突起電極14により、他の半導体チップ1,21,25,31の裏面側突起電極15,22,33に接続できる。
【0096】
金属材料と比べてポリマー32は容易に変形できる。したがって、この半導体チップ31は、表面側突起電極14を介して他の半導体チップ1,21,25,31に接合された状態で応力が与えられても、このような応力をポリマー32により緩和できる。特に、ポリイミドからなるポリマー32は、高い応力緩衝効果を発揮できるとともに、高い靱性を有している。
【0097】
このため、表面側突起電極14と他の半導体チップ1,21,25,31の裏面側突起電極15,22,33との接合部が破断し難い。すなわち、この半導体チップ31は、接続信頼性が高い。
図11は、図10に示す半導体チップ31の製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【0098】
拡散防止膜7の形成(図2(b)参照)までが、半導体チップ1の製造方法と同様に実施された後、酸化防止膜8の形成(図2(c)参照)と同様にして、導電膜34が形成される。
次に、液状のポリマー32が凹所9内に充填された後、固化される。ポリマー32の表面とその近傍の拡散防止膜7の表面とは、ほぼ面一になるようにされる。この状態が、図11(a)に示されている。
【0099】
続いて、所定のパターンのマスクを用いて、導電膜34および拡散防止膜7のうち、ウエハWを垂直に見下ろす平面視において、凹所9(開口6b)および開口6aを含む所定の領域以外の部分が、エッチングにより除去される。この状態が、図11(b)に示されている。
次に、ウエハWの表面において、ポリマー32の表面およびその近傍の拡散防止膜7を覆うように、配線層35が形成され、さらに、配線層35の上に、表面側突起電極14が形成される。
【0100】
その後、ドライエッチングにより、ウエハWが裏面から除去されて、ウエハWの厚さを凹所9の深さより薄くする工程(図4(i)参照)以下が、半導体チップ1の製造方法と同様に実施されて、図10に示す半導体チップ31が得られる。
図12ないし図14は、図10に示す半導体チップ31の変形例に係る半導体チップの構造を示す図解的な断面図(図12(a)ないし図14(a))および平面図(図12(b)ないし図14(b)および図14(c))である。半導体チップ31の各部に対応する部分には、図12ないし図14に同一符号を付して説明を省略する。
【0101】
これらの半導体チップ37,38,39は、いずれも、半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、ポリマー33より小さな表面側突起電極40を備えており、表面側突起電極40の形成領域はポリマー33の形成領域内に完全に含まれている。貫通孔4、ポリマー32、および表面側突起電極40の平面形状は、四角形(ほぼ正方形)である。
図12に示す半導体チップ37では、貫通孔4(導電膜34の内周部)の1辺の長さより大きな幅を有する帯状の形状を有する配線層41Aが、ポリマー32を完全に覆うように設けられている(図12(b)参照)。表面側突起電極40は、配線層41Aの上に設けられている。
【0102】
この場合、配線層41Aは、貫通孔4の縁部の全周に渡って導電膜34に接合されているので、半導体基板2に対して大きく動けない。このため、表面側突起電極40が他の半導体チップ1,21,25,31の裏面側突起電極15,22,33などに接合された状態で、半導体チップ37に応力が加えられると、この応力はポリマー32により充分緩和されない。
【0103】
図13に示す半導体チップ38では、半導体チップ37の配線層41Aの代わりに、貫通孔4(導電膜34の内周部)の1辺の長さより小さく、かつ、表面側突起電極40の幅より大きなほぼ一定の幅を有する帯状の配線層41Bが設けられている。図13(b)を参照して、配線層41Bは、貫通孔4(導電膜34の内周部)の4辺のうち3辺とは接しておらず、この3辺と配線層41Bとの間から、ポリマー32が露出している。表面側突起電極40は、配線層41Bの上に設けられている。
【0104】
この場合、図12に示す半導体チップ37の配線層41Aと比べて、配線層41Bは、ポリマー32周辺における導電膜34との接合部が著しく少なくなっており、これにより、ポリマー32上の配線層41Bは、半導体基板2に対して、特に半導体基板2に垂直な方向に関して(導電膜34との接合部を中心に回動するように)大きく動くことができる。このため、表面側突起電極40が他の半導体チップ1,21,25,31の裏面側突起電極15,22,33などに接合された状態で、半導体チップ38に応力が加えられると、この応力はポリマー32により効果的に緩和される。
【0105】
図14に示す半導体チップ39においても、配線層41Cの幅は、貫通孔4(導電膜34の内周部)の1辺の長さより小さくされているが、配線層41Cにおいて、ポリマー32上から導電膜34上に延設されている部分(以下、「延設部」という。)の幅は、ポリマー32上の中央部にある部分(以下、「ポリマー上部」という。)の幅より小さくされている。
【0106】
これにより、図13に示す半導体チップ38と比べて、配線層41Cと導電膜34との接合部がさらに少なくなっており、貫通孔4の縁部(導電膜34の内周部)と配線層41Cとの間からのポリマー32の露出面積は、さらに大きくなっている。このため、ポリマー32上の配線層41Cは、半導体基板2に対してさらに大きく動くことができる。したがって、表面側突起電極40が他の半導体チップ1,21,25,31の裏面側突起電極15,22,33などに接合された状態で、半導体チップ39に応力が加えられると、この応力はポリマー32により、さらに効果的に緩和される。
【0107】
図14(b)に示す配線層41Cでは、ポリマー上部の縁部と延設部の縁部とが、角を形成している。この場合、ポリマー上部と延設部との間に亀裂が生じて断線しやすい。
一方、図14(c)に示す配線層41Dは、いわゆるティアードロップ形状を有しており、ポリマー上部の縁部と延設部の縁部とは曲線をなしている。この場合、ポリマー上部と延設部との間に亀裂は生じ難い。すなわち、断線しにくい。
【0108】
図15は、図1に示す半導体チップ1を複数個含む第1の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。この半導体装置45は、いわゆるBGA(Ball Grid Array)タイプのパッケージ形態を有しており、配線基板46、および配線基板46の上に積層された複数(この実施形態では3つ)の半導体チップ1を備えている。
配線基板46は絶縁体からなる。配線基板46には、配線基板46を厚さ方向に貫通する貫通電極47が形成されている。配線基板46の一方表面側で貫通電極47には金属ボール(たとえば、半田ボール)48が接合されている。配線基板46の金属ボール48側とは反対側の面には、所定のパターンの配線49が形成されている。配線49は貫通電極47に電気接続されており、配線49の所定の部分には金属からなるバンプ50が形成されている。
【0109】
複数の半導体チップ1は、いずれも半導体基板2が配線基板46とほぼ平行になるように配置されている。この実施形態では、半導体チップ1の表面(機能素子3が形成されている側の面)が、配線基板46側とは反対側に向けられているが、半導体チップ1の表面が配線基板46側に向けられていてもよい。
配線基板46のバンプ50は、半導体チップ1の裏面側突起電極15と接合されている。隣接する2つの半導体チップ1において、一方の半導体チップ1の表面側突起電極14と、他方の半導体チップ1の裏面側突起電極15とが接合されている。
【0110】
裏面側突起電極15の低融点金属層19と表面側突起電極14との間には、合金層52(金属間化合物や固溶体を含む層、または共晶からなる層)が形成されている。合金層52は、低融点金属層19を構成する金属と表面側突起電極14を構成する金属とを含む。同様に、裏面側突起電極15の低融点金属層19とバンプ50との間には、合金層53が形成されている。合金層53は、低融点金属層19を構成する金属とバンプ50を構成する金属とを含む。
【0111】
さらに、低融点金属層19と貫通電極10との間には、低融点金属層19を構成する金属と貫通電極10を構成する金属とを含む合金層54が形成されている。合金層54と合金層52との間、および合金層54と合金層53との間には、低融点金属層19が存在している。
また、低融点金属層19を覆う酸化防止膜8(図1参照)は、半導体装置45においては、低融点金属層19(裏面側突起電極15)や合金層52,53,54に取り込まれて消失している。
【0112】
このようにして、3つの半導体チップ1は厚さ方向に積層されている。複数の半導体チップ1、および配線基板46の配線49が形成された面は、封止樹脂(モールド樹脂)51で封止されている。
以上のような構成により、各半導体チップ1に備えられた機能素子3は、配線部材11、貫通電極10、裏面側突起電極15、表面側突起電極14、バンプ50、配線49、および貫通電極47を介して、所定の金属ボール48に電気接続されている。各半導体チップ1に備えられた貫通電極10はほぼ直線上にのるように配列されているので、配線基板46に隣接していない半導体チップ1の機能素子3も、短い距離で配線基板46上の配線49に接続されている。
【0113】
この半導体装置45は、金属ボール48を介して他の配線基板に実装できる。これにより、機能素子3を他の配線基板に電気接続できる。複数の半導体チップ1が積層されていることにより、この半導体装置45の実装面積は小さくなっている。
最上段の(配線基板46から最も遠い)半導体チップ1の機能素子3が形成された面が、配線基板46側とは反対側に向けられていることにより、この半導体装置45は以下のような利点を有する。
【0114】
第1の利点は、最上段の半導体チップ1の機能素子3を受光素子や発光素子とすることができ、この受光素子や発光素子を介した受発光ができることである。この場合、封止樹脂51は透光性樹脂からなるものとすることができる。これにより、最上段の半導体チップ1で半導体装置45外部からの光を受けて電気信号に変換したり、与えられた電気信号に基づいて半導体チップ1で光を生成して半導体装置45の外部に取り出すことができる。
【0115】
半導体装置45は、たとえば、イメージセンサモジュールとすることができ、この場合、最上段の半導体チップ1は、たとえば、機能素子3として複数の受光素子を備えたCCD(Charge-Coupled Devices;電荷結合素子)チップであってもよく、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor;相補型金属酸化物半導体)センサチップであってもよい。
【0116】
また、半導体装置45は赤外線通信を行うためのものであってもよく、この場合、最上段の半導体チップ1は、機能素子3として赤外線発光・受光素子を備えたものとすることができる。
他の(最上段以外の)半導体チップ1は、制御用チップやメモリ用チップを含んでいてもよい。
【0117】
第2の利点は、最上段の半導体チップ1の機能素子3が形成された面に、所定の配線を設けて、この配線をレーザ光などによりトリミングして半導体チップ1の電気的特性を調整できることである。この場合、配線基板46上にすべての半導体チップ1を積層して電気接続した後、封止樹脂51をモールド成型する前に、最上段の半導体チップ1に対して上述のトリミングを行うことにより、半導体装置45全体の電気的特性を調整する(たとえば、複数の半導体チップ1間を電気的に同期させる)ことができるので、半導体装置45の歩留まりを向上させることができる。
【0118】
半導体装置45の構成は必要により変更することができ、たとえば、最上段の半導体チップ1の表面には、表面側突起電極14は設けられていなくてもよい。
このような半導体装置45は、配線基板46上に順次半導体チップ1を積層して接合することにより形成できる。この際、裏面側突起電極15と表面側突起電極14またはバンプ50とが接触された状態で、半導体チップ1が、低融点金属層19を構成する低融点金属の固相線温度以上(好ましくは液相線温度以上)の温度に、所定時間加熱される。
【0119】
これにより、低融点金属層19の融液が生じ、この融液に表面側突起電極14、バンプ50、貫通電極10(裏面側突起電極15の残部12)、および酸化防止膜8をそれぞれ構成する金属が取り込まれ、この融液が固化することにより合金層52,53,54が形成される。接合前の裏面側突起電極15が酸化防止膜8に覆われていることにより、裏面側突起電極15の表面には酸化膜は形成されていないので、このような合金層52,53は容易に形成される。
【0120】
裏面側突起電極15と表面側突起電極14およびバンプ50とは、合金層52,53を介して高い接合強度で接合されるとともに、良好に電気接続される。
図16は、図15に示す半導体装置45の変形例に係る半導体装置の製造工程における構造を示す図解的な断面図である。図15の半導体装置45の各部に対応する部分には、図16に同一符号を付して説明を省略する。
【0121】
この半導体装置は、配線基板46と半導体チップ1とを接合する際、および半導体チップ1同士を接合する際の加熱条件を、図15に示す半導体装置45の場合とは変更して得ることができる。
隣接する2つの半導体チップ1の接合部には、低融点金属層19は存在しておらず、一方の半導体チップ1の表面側突起電極14と他方の半導体チップ1の貫通電極10との間には、合金層52Aが形成されている。合金層52Aは、低融点金属層19を構成する金属と、表面側突起電極14を構成する金属と、貫通電極10を構成する金属と、酸化防止膜8を構成する金属とを含む。
【0122】
また、最下部の(最も配線基板46に近い)半導体チップ1と配線基板46との接合部には、低融点金属層19は存在しておらず、当該半導体チップ1の貫通電極10と配線基板46のバンプ50との間には、合金層53Aが形成されている。合金層53Aは、低融点金属層19を構成する金属と、バンプ50を構成する金属と、貫通電極10を構成する金属と、酸化防止膜8を構成する金属とを含む。
【0123】
このような半導体装置は、半導体装置45を製造する場合と比べて、配線基板46と半導体チップ1とを接合する際、および半導体チップ1同士を接合する際の加熱温度を高くおよび/または加熱時間を長して得ることができる。これにより、低融点金属層19の融液と、表面側突起電極14、貫通電極10、バンプ50、および酸化防止膜8との反応がより進み、表面側突起電極14、貫通電極10、バンプ50、および酸化防止膜8をそれぞれ構成する金属が、より多く当該融液中に取り込まれ、当該融液の全体に拡散する。このような融液が固化することにより、合金層52A,53Aが形成される。
【0124】
また、同一の加熱条件に対しても、低融点金属層19の量が多い場合は、図15に示す半導体装置45のように、貫通電極10と表面側突起電極14またはバンプ50との間(合金層54と合金層52または53との間)に低融点金属層19が存在する構造が得られやすくなり、低融点金属層19の量が少ない場合は、図16に示す半導体装置のように、低融点金属層19を有しない構造が得られやすい。
【0125】
以上のように、適当な加熱条件や低融点金属層19の量を選択することにより、図15に示す構造を有する半導体装置45または図16に示す構造を有する半導体装置を選択的に得ることができる。
図17は、図1に示す半導体チップ1を複数個含む第2の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。図15の半導体装置45の各部に対応する部分には、図17に同一符号を付して説明を省略する。
【0126】
この半導体装置55も、BGAタイプのパッケージ形態を有しており、配線基板(インタポーザ)56および金属ボール48を備えている。配線基板56の上には、半導体チップなどの固体装置57、複数(この実施形態では3つ)の半導体チップ1、および貫通電極を有しない半導体チップ60が、順に積層されている。
配線基板56および固体装置57を厚さ方向に見下ろす平面視において、配線基板56は固体装置57より大きく、固体装置57および半導体チップ1,60を厚さ方向に見下ろす平面視において、固体装置57は半導体チップ1,60より大きい。複数の半導体チップ1および半導体チップ60は、これらを厚さ方向に見下ろす平面視において、ほぼ同じ大きさおよび形状を有しており、ほぼ重なるように配置されている。
【0127】
半導体チップ60の一方表面には、半導体チップ1と同様の機能素子が形成されており、この機能素子が形成された面は、固体装置57側に向けられている。また、この実施形態では、複数の半導体チップ1の機能素子3(能動層)が形成された面は、いずれも固体装置57側に向けられているが、固体装置57とは反対側に向けられていてもよい。
配線基板56の一方表面外周部で、固体装置57が対向していない領域には、電極パッド(図示せず)が設けられており、この電極パッドは、配線基板56の内部や表面で再配線されて、配線基板56の他方表面に設けられた金属ボール48に電気接続されている。
【0128】
固体装置57の一方表面(配線基板56とは反対側の面)外周部で半導体チップ1が対向していない領域には、電極パッド59が形成されている。配線基板56に設けられた電極パッドと、固体装置57の電極パッド59とは、ボンディングワイヤ62により電気接続されている。
固体装置57の上記一方表面内方の領域には、半導体チップ1の表面側突起電極14に対応する位置に、電極パッド58が形成されている。固体装置57に隣接する半導体チップ1の表面側突起電極14は、電極パッド58に接合されている。また、隣接する2つの半導体チップ1において、一方の半導体チップ1の表面側突起電極14と、他方の半導体チップ1の裏面側突起電極15とは、図15に示す半導体装置45または図16に示す半導体装置と同様にして接合されている。
【0129】
半導体チップ60の機能素子が形成された面には、この機能素子に電気接続され半導体チップ1の裏面側突起電極15に対応する位置に設けられた突起電極63が形成されており、突起電極63は、最上部の(固体装置57から最も遠い)半導体チップ1の裏面側突起電極15に接合されている。
各半導体チップ1,60の間、および半導体チップ1と固体装置57との間の空隙は、層間封止材61で封止されている。
【0130】
図1および図17を参照して、以上のような構成により、各半導体チップ1,60に備えられた機能素子3は、配線部材11、貫通電極10、突起電極63、裏面側突起電極15、表面側突起電極14、電極パッド58、固体装置57、電極パッド59、ボンディングワイヤ62、および配線基板56を介して、所定の金属ボール48に電気接続されている。
【0131】
図18は、図1に示す半導体チップ1を複数個含む第3の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。図17の半導体装置55の各部に対応する部分には、図18に同一符号を付して説明を省略する。
この半導体装置65は、図17に示す半導体装置55と類似した構造を有するが、固体装置57を含んでおらず、配線基板56の上には、半導体チップ60、複数の半導体チップ1、半導体チップ1Aが順に積層されている。最上部の(配線基板56から最も遠い)半導体チップ1Aは、半導体チップ1と類似した構造を有するが、表面側突起電極14の代わりに、電極パッド14Pが設けられている。電極パッド14Pは、ボンディングワイヤ62を介して、配線基板56の電極パッドに接続されている。
【0132】
半導体チップ1,60,1Aの機能素子3が形成された面は、この実施形態では、いずれも配線基板56とは反対側に向けられている。配線基板56と半導体チップ60との間には、層間封止材61は介在されておらず、配線基板56と半導体チップ60とは直接接合されている。
図1および図18を参照して、以上のような構成により、各半導体チップ60,1A,1に備えられた機能素子3は、配線部材11、貫通電極10、突起電極63、裏面側突起電極15、表面側突起電極14、電極パッド14P、ボンディングワイヤ62、および配線基板56を介して、所定の金属ボール48に電気接続されている。
【0133】
図19は、ボンディングワイヤ62と電極パッド14Pとの接続部近傍を拡大して示す図解的な断面図である。
電極パッド14Pは、その上に容易にワイヤボンディングできるように、半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において表面側突起電極14より大きな面積を有するようにされている。電極パッド14Pの面積が充分広い場合、電極パッド14P上の任意の位置にボンディングワイヤ62を接合できる。
【0134】
また、ボンディングワイヤ62は、配線部材11に直接接合されるのではなく、配線部材11の上に設けられた電極パッド14Pに接合される。このため、配線部材11を構成する材料が、ボンディングワイヤ62との接合に適さないものであった場合でも、電極パッド14Pを構成する材料として適当なものを選択することにより、ボンディングワイヤ62を電極パッド14Pに良好に接合できる。
【0135】
さらに、ワイヤボンディングする際の衝撃は、ある程度電極パッド14Pに吸収されるので、配線部材11より下(半導体基板2側)に存在する構造部に与えられる衝撃は緩和される。このため、機能素子3に損傷を与えることなく、ボンディングワイヤ62を、たとえば、電極パッド14P上において機能素子3の上方の位置またはその近傍に接合することも可能である。
【0136】
図20は、半導体装置65の変形例に係る半導体装置65A,65B,65Cの構造を示す図解的な断面図である。図18の半導体装置65の各部に対応する部分には、図20に同一符号を付して説明を省略する。図20では、ボンディングワイヤ62と半導体チップとの接続部近傍を拡大して示している。
図20(a)に示す半導体装置65Aは、半導体チップ1Aに相当する半導体チップ1Bを備えている。この半導体チップ1Bは、配線部材11上から、半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、配線部材11の形成領域外(ハードマスク6上)に延設された電極パッド14Pを備えている。
【0137】
配線部材11の延設部は、図20(a)では、半導体基板2の表面において、貫通電極10を挟んで機能素子3とは反対側に設けられているが、半導体基板2表面の任意の位置に引き回されていてもよい。ボンディングワイヤ62は、配線部材11の当該延設部に接合されている。UBM層13は、電極パッド14Pとハードマスク6との間にも介在されている。
【0138】
このように、電極パッド14Pは、図19に示す半導体チップ1Aのように、半導体基板2を垂直に見下ろす平面視において、配線部材11の形成領域内に含まれるように形成されている必要はなく、配線部材11の形成領域外でワイヤボンディングしやすい位置(領域)に延設されたものとすることができる。換言すれば、配線部材11は、半導体基板2上でワイヤボンディングしやすい位置(領域)を含むように形成する必要はない。
【0139】
図20(b)に示す半導体装置65Bは、半導体チップ1Aに相当する半導体チップ1Cを備えている。半導体チップ1Cには、半導体チップ1,1A,1Bの配線部材11に相当する配線部材11Pが設けられている。配線部材11Pの上には、表面側突起電極14や電極パッド14P、およびUBM層13は設けられておらず、ボンディングワイヤ62は、配線部材11Pに直接接合されている。すなわち、配線部材11Pは、機能素子3と貫通電極10とを電気接続する配線としての役割と、ボンディングワイヤ62を接合するための電極パッドの役割とを兼ね備えている。
【0140】
ボンディングワイヤ62は、配線部材11P上の任意の位置に接合できる。また、配線部材11Pは、ボンディングワイヤ62を接合するのに適した電極パッド部を備えていてもよく、このような形状の配線部材11Pは、金属材料20を所定のパターンにエッチングして得ることができる(図4(g)参照)。
配線部材11Pを厚く形成することにより、ワイヤボンディングする際の衝撃を、ある程度配線部材11Pで吸収して、配線部材11Pより下に存在する構造部に与えられる衝撃を緩和できる。配線部材11Pの厚さは、電解めっきなどによりウエハWの表面に金属材料20を供給する工程(図3(f)参照)における当該金属材料20の供給量を調整することにより容易に制御できる。
【0141】
また、この半導体装置65Bは、電極パッド14PおよびUBM層13を有しないことにより、製造プロセスを単純にできる。
図20(c)に示す半導体装置65Cは、半導体チップ1Aに相当する半導体チップ1Dを備えている。半導体チップ1Dのハードマスク6には、半導体チップ1,1A,1B,1Cのハードマスク6に形成された開口6aより大きな開口6cが形成されている。
【0142】
機能素子3は、素子部とその電極とを含んでおり、開口6c内には、機能素子3において電極のみが露出されている。ボンディングワイヤ62は、当該電極に直接接合されている。すなわち、ボンディングワイヤ62は、機能素子3に対して素子部を回避して接合されている。
配線部材11は、機能素子3の当該電極(ボンディングワイヤ62が接合されている電極)には電気接続されておらず、図外の位置で機能素子3の他の電極に電気接続されている。
【0143】
この半導体装置65Cは、半導体チップに対する従来のワイヤボンディングプロセスを適用して製造できる。
図21は、図1に示す半導体チップ1を複数個含む第4の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。図17の半導体装置55の各部に対応する部分には、図21に同一符号を付して説明を省略する。
【0144】
この半導体装置66は、図17に示す半導体装置55と類似した構造を有するが、いわゆる、QFN(Quad Flat Non-lead)タイプのパッケージ形態を有しており、配線基板56および金属ボール48の代わりに、リードフレーム67が設けられている。リードフレーム67は板状で、固体装置57や半導体チップ1,60とほぼ平行に配置されている。
リードフレーム67は、固体装置57を下方(半導体チップ1とは反対側)から支持する支持部67aと、支持部67aの側方で支持部67aとほぼ同一平面内に配置された複数のリード端子部67bとを備えている。
【0145】
支持部67aおよび固体装置57を厚さ方向に見下ろす平面視において、支持部67aは固体装置57より小さく、固体装置57のほぼ中央部を支持している。リード端子部67bと固体装置57とは対向しておらず、固体装置57の電極パッド59とリード端子部67bとは、ボンディングワイヤ62で接続されている。
図1および図21を参照して、以上のような構成により、各半導体チップ1,60に備えられた機能素子3は、配線部材11、貫通電極10、突起電極63、裏面側突起電極15、表面側突起電極14、電極パッド58、固体装置57、電極パッド59、およびボンディングワイヤ62を介して、所定のリード端子部67bに電気接続されている。
【0146】
半導体装置66の底面(リードフレーム67が配置された側の面)において、リードフレーム67は封止樹脂51から露出されており、リードフレーム67の露出表面と封止樹脂51の表面とはほぼ面一にされている。リード端子部67bは、半導体装置66の側面からも露出されている。リード端子部67bの露出部には半田めっきが施されており、この半田を介して、半導体装置66を、他の配線基板等に実装することができる。
【0147】
支持部67aおよび固体装置57を厚さ方向に見下ろす平面視において、支持部67aが固体装置57より小さくされていることにより、支持部67aとリード端子部67bとの間隔が広くされており、このため、実装時に、半田により支持部67aとリード端子部67bとが電気的に短絡(ショート)されることはない。
一方、半田により、支持部67aとリード端子部67bとが電気的に短絡するおそれがない限り、支持部67aおよび固体装置57を厚さ方向に見下ろす平面視において、支持部67aが固体装置57より大きくされて、支持部67aとリード端子部67bとの間隔が狭くされていてもよい。
【0148】
図22は、図1に示す半導体チップ1を複数個含む第5の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。図18および図21の半導体装置65,66の各部に対応する部分には、図22に同一符号を付して説明を省略する。
この半導体装置68は、図21に示す半導体装置66と類似した構造を有するが、固体装置57を含んでおらず、支持部67aの上には、半導体チップ60、および複数の半導体チップ1、半導体チップ1Aが順に積層されている。半導体チップ1,1A,60の機能素子3が形成された面は、この実施形態では、いずれも支持部67aとは反対側に向けられている。支持部67aと半導体チップ60との間には、層間封止材61は介在されておらず、支持部67aと半導体チップ60とは直接接合されている。
【0149】
最上部に配置された半導体チップ1Aの電極パッド14Pは、ボンディングワイヤ62を介して、リード端子部67bに接続されている。
図1および図22を参照して、以上のような構成により、各半導体チップ60,1,1Aに備えられた機能素子3は、配線部材11、貫通電極10、突起電極63、裏面側突起電極15、表面側突起電極14、電極パッド14P、およびボンディングワイヤ62を介して、所定のリード端子部67bに電気接続されている。
【0150】
この発明の実施形態の説明は、以上の通りであるが、この発明は他の形態でも実施できる。たとえば、図10に示す半導体チップ31は、半導体基板2の一方表面側からのみ、配線基板や他の半導体チップ1,21,25,31に接続する場合は、貫通孔4の代わりに、ポリマー32で満たされた凹所が形成されていてもよく、この場合、裏面側突起電極33や導電膜34は、設けられていなくてもよい。
【0151】
図12ないし図14では、貫通孔4、ポリマー32、表面側突起電極40の平面形状は、四角形(ほぼ正方形)としているが、四角形以外の多角形や円形であってもよい。
図15ないし図22の半導体装置45,55,65,66,68は、いずれも複数の半導体チップ1が積層された構造を有するが、半導体チップ1の代わりに、半導体チップ21,25,31,37,38,39が積層されていてもよい。また、半導体装置45,55,65,66,68は、同種の半導体チップ1が積層されている例であるが、異なる種類の複数の半導体チップ1,21,25,31,37,38,39が積層されていてもよい。
【0152】
半導体装置が、半導体チップ31,37,38,39を含む場合、半導体チップ31,37,38,39と、他の半導体チップ1,21,25,31,37,38,39,60や固体装置57との接合部にかかる応力を緩和して、高い接続信頼性を確保できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】突起電極を有する半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
【図2】図1に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図3】図1に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図4】図1に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図5】図1に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図6】突起電極を有する他の半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
【図7】図6に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図8】突起電極を有するさらに他の半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
【図9】図8に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
【図11】図10に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図12】図10に示す半導体チップの変形例に係る半導体チップの構造を示す図解的な断面図および平面図である。
【図13】図10に示す半導体チップの他の変形例に係る半導体チップの構造を示す図解的な断面図および平面図である。
【図14】図10に示す半導体チップのさらに他の変形例に係る半導体チップの構造を示す図解的な断面図および平面図である。
【図15】図1に示す半導体チップを複数個含む第1の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。
【図16】図15に示す半導体装置の変形例に係る半導体装置の製造工程における構造を示す図解的な断面図である。
【図17】図1に示す半導体チップを複数個含む第2の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。
【図18】図1に示す半導体チップを複数個含む第3の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。
【図19】図18に示す半導体装置のボンディングワイヤと電極パッドとの接続部近傍を拡大して示す図解的な断面図である。
【図20】図18に示す半導体装置の変形例に係る半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。
【図21】図1に示す半導体チップを複数個含む第4の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。
【図22】図1に示す半導体チップを複数個含む第5の半導体装置の構造を示す図解的な断面図である。
【図23】従来の貫通電極を有する半導体チップの構造を示す図解的な断面図である。
【図24】図23に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図25】図23に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図26】図23に示す半導体チップの製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【符号の説明】
【0154】
2 半導体基板
3 機能素子
4 貫通孔
5 絶縁膜
9 凹所
14,40 表面側突起電極
15 裏面側突起電極
31,37,38,39 半導体チップ
32 ポリマー
34 導電膜
35,41A,41B,41C,41D 配線層
45,55,65,66,68 半導体装置
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能素子が形成された半導体基板の一方表面に開口する孔を形成する工程と、
この孔の内部にポリマーを埋め込む工程と、
この孔の内部に埋め込まれた上記ポリマーの露出表面上に、上記機能素子に電気接続された配線層を形成する配線層形成工程と、
上記ポリマー上の配線層に突起電極を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体チップの製造方法。
【請求項2】
上記配線層形成工程が、上記孔の縁部と上記配線層との間から上記ポリマーが露出するように上記配線層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体チップの製造方法。
【請求項3】
上記孔を形成する工程が、上記孔としての凹所を形成する工程を含み、
上記機能素子が上記半導体基板の上記一方表面に形成されており、
上記凹所を形成する工程の後、上記凹所内に上記ポリマーを供給する工程の前に、上記凹所の内壁面に導電性材料を供給して、上記機能素子に電気接続された導電膜を形成する工程と、
上記凹所内にポリマーを供給する工程の後、上記半導体基板を上記一方表面とは異なる他方表面から除去し、上記半導体基板の厚さを上記凹所の深さより小さな厚さに薄型化して上記凹所を上記半導体基板の厚さ方向に貫通する貫通孔とし、上記導電膜が、上記半導体基板の上記一方表面側と上記他方表面側とに渡って配設された状態とする薄型化工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の半導体チップの製造方法。
【請求項4】
機能素子が形成された半導体基板と、
この半導体基板の一方表面に開口を有する孔の内部を埋めるように配置されたポリマーと、
上記孔の内部に埋められたポリマー上に形成され、上記機能素子に電気接続された配線層と、
上記配線層のうち上記ポリマー上にある部分に設けられた突起電極とを含むことを特徴とする半導体チップ。
【請求項5】
上記ポリマーが、上記凹所の縁部と上記配線層との間から露出されていることを特徴とする請求項4記載の半導体チップ。
【請求項6】
機能素子が形成された半導体基板と、
この半導体基板を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置されたポリマーと、
上記貫通孔内に配置されたポリマー上に形成され、上記機能素子に電気接続された配線層と、
この配線層のうち上記ポリマー上にある部分に設けられた突起電極と、
上記貫通孔内で、上記半導体基板の一方表面と他方表面との間に渡って配設され、上記機能素子に電気接続された導電膜とを含むことを特徴とする半導体チップ。
【請求項7】
厚さ方向に積層された複数の請求項4ないし6のいずれかに記載の半導体チップを含むことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−194669(P2007−194669A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105203(P2007−105203)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【分割の表示】特願2003−406446(P2003−406446)の分割
【原出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構からの委託研究「超高密度電子SI技術の研究開発(エネルギー使用合理化技術開発)」、産業活力再生特別措置法30条の適用を受けるもの
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】