説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材、硬化促進剤及び1×10Ω・cm以上、1×10Ω・cm未満の半導体領域に電気比抵抗値を有する炭素前駆体を必須成分とし、全エポキシ樹脂組成物中に前記無機充填材を65〜92重量%、前記炭素前駆体を0.1〜5.0重量%含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いれば、優れたYAGレーザーマーキング性を得ることができるとともに、配線のショートやリーク電流の発生等の電気不良や金線変形を生ずることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、レーザーマーキング性及び電気特性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
従来、主にエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置は、その組成に着色剤として導電性を有するカーボンブラックを含んでいる。着色剤としてカーボンブラックを含有するエポキシ樹脂組成物を使用すると、半導体素子の遮蔽性に優れると共に、半導体装置に品名やロット番号等を白字でマーキングする際、背景が黒のためより鮮明な印字が得られる。特に、最近では取り扱いが容易なYAGレーザーマーキングを採用する電子部品メーカーが増加しており、YAGレーザーの波長を吸収するカーボンブラックは、半導体封止用エポキシ樹脂組成物における必須の成分となっている。
YAGレーザーマーキングに好適なエポキシ樹脂組成物としては、カーボン含有量が99.5重量%以上、水素含有量が0.3重量%以下であるカーボンブラックを組成物中、0.1〜3重量%含有する熱硬化性樹脂組成物が知られている(特開平2−127449号公報)。
しかし、最近の半導体装置のファインピッチ化に伴い、導電性着色剤であるカーボンブラック等が粗大粒子としてインナーリード間、金線間に存在する場合、配線のショートおよびリーク電流の発生といった電気特性不良を生じることがある。またカーボンブラック等の粗大粒子が狭くなった金線間に挟まることで金線が応力を受け、これも電気特性不良の原因となる。
これらの問題を解決するものとして、特開2001−335677号公報には、カーボンブラックの代替品として、電気抵抗が10Ω以上の非導電性カーボンを含有する封止用エポキシ樹脂組成物が開示されている。該封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置は、YAGレーザーマーク性が良好であり、リーク電流が発生せず、成形性及びパッケージ表面の外観に優れるものである。
しかしながら、電気抵抗が10Ω以上の非導電性カーボンを含有する封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置は、配線のショートやリーク電流の発生を防止することができるものの、絶縁性が高いため静電気により粒径約80μm以上の再凝集物が生成してしまい、該再凝集物が金線間に挟まり金線変形や金線流れを生じるため、電気特性が十分ではないという問題がある。このように、電気比抵抗値が高くかつ静電気による再凝集物が発生しないエポキシ樹脂組成物は未だ報告された例がなく、開発が強く望まれている。
従って、本発明の目的は、優れたYAGレーザーマーキング性を得ることができるとともに、配線のショートやリーク電流の発生が起こらず、金線変形等を生ずることのない半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【発明の開示】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、着色剤として、1×10Ω・cm以上、1×10Ω・cm未満の半導体領域に電気比抵抗値を有する炭素前駆体を含有させたエポキシ樹脂組成物が、優れたYAGレーザーマーキング性を得ることができるとともに、配線のショートやリーク電流の発生が起こらず、金線変形等を生ずることのないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材、硬化促進剤、1×10Ω・cm以上、1×10Ω・cm未満の半導体領域に電気比抵抗値を有する炭素前駆体を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、全エポキシ樹脂組成物中に前記無機充填材を65〜92重量%、前記炭素前駆体を0.1〜5.0重量%含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を提供するものである。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を半導体素子の封止に用いた場合、黒色の背景にYAGレーザーでマーキングした部分が白く、鮮明なコントラストが得られる。また、YAGレーザーによる良好な印字が高速、かつ低電圧で得られるため、生産効率が向上する。また着色剤としてカーボンブラック等の導電性粒子を用いる必要がないため、最近の半導体装置のファインピッチ化に伴い、導電性粒子が配線間に詰まることによる配線のショートやリーク電流の発生を回避することができる。さらに半導体領域の電気比抵抗値を有する炭素前駆体を使用することで、静電気による再凝集を防ぎ、該再凝縮物が金線間に挟まり金線変形を生ずる危険性も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材、硬化促進剤、及び炭素前駆体を必須成分として含有する。本発明に用いるエポキシ樹脂としては、特に制限されず、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであり、例えば、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベンゼン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂及びナフトール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を混合して用いてもよい。また、当該エポキシ樹脂は、エポキシ当量が150〜300であることが、エポキシ樹脂組成物の硬化性の点で好ましい。
本発明に用いるフェノール樹脂としては、特に制限されず、分子中にフェノール性水酸基を有するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂及びテルペン変性フェノール樹脂等が挙げられる。これらのフェノール樹脂は1種単独又は2種以上を混合して用いてもよい。また当該フェノール樹脂は、水酸基当量が80〜250であることが、エポキシ樹脂組成物の硬化性の点で好ましい。
本発明に用いる無機充填材としては、特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができ、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー及びガラス繊維等が挙げられる。これらの無機充填材の粒度分布としては、特に制限されないが、粒径150μm以下、好ましくは0.1〜75μmのものが、成形時、金型の細部への充填が可能である点で好ましい。
無機充填材の添加量は、全エポキシ樹脂組成物中、65〜92重量%、好ましくは70〜91重量%である。上記の下限値未満だと樹脂成分が多くなりYAGレーザーマーキングにより熱変色を受け易くなり、鮮明なコントラストを得るためには、樹脂成分の熱変色防止剤等の別途の添加剤の添加が必要となる。またエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率が高くなるため、耐半田クラック性や耐湿性等の特性が不充分となる点で好ましくない。また、上記の上限値を越えると、流動性が不充分となるので好ましくない。
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基の反応を促進するものであれば特に制限されず、一般に封止材料に使用されているものを利用することができる。該硬化促進剤を例示すれば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン及び2−メチルイミダゾール等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いる炭素前駆体は、1×10Ω・cm以上、1×10Ω・cm未満、好ましくは1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmの半導体領域に電気比抵抗値を有するものである。また、当該炭素前駆体は、H/C重量%比が、2/97〜4/93、好ましくは2/97〜4/94である。電気比抵抗値が1×10Ω・cm未満又はH/C重量%比が2/97未満では、導電性が高まりリーク電流の原因となる点で好ましくない。また電気比抵抗値が1×10Ω・cmを超えるか又はH/C重量%比が4/93を超えると、絶縁領域へと近づくため、炭素前駆体粒子が静電気によって再凝集を起こしやすくなり、封止成形の際に金線変形等を生ずる恐れがあるので好ましくない。H/C重量%比が2/97〜4/93とは、元素分析による炭素前駆体のカーボン含有量が97〜93重量%であり、水素原子含有量が2〜4重量%のものを言う。また、炭素前駆体は平均粒径が0.5〜50μm、好ましくは0.5〜20μmの微粒子である。炭素前駆体の平均粒径が0.5μm未満であると、YAGレーザーマーキング性が低下し好ましくなく、平均粒径が50μmを越えると着色力が落ち外観を損ねる点で好ましくない。封止成形物中、約80μmを越える凝集物が存在すると金線変形が生じ易くなるが、本発明の炭素前駆体を含有する封止用樹脂組成物を用いればこのような凝集物が生じることがないため、金線に応力がかからず電気特性に優れるものとなる。
上記電気比抵抗値は、公知の方法で求めることができる。具体的にはJISZ3197に準拠した方法で測定することができる。すなわち、くし形パターンのあるガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板のG−10又はSE−4を基材とし、該基材にフラックスを塗布したのち、はんだ付けを行い、温度25℃、相対湿度60%下、抵抗計により直流100Vでの抵抗値を測定する。
本発明に用いる炭素前駆体の製造方法としては、特に制限されないが、例えばレゾール樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル等の芳香族ポリマーを例えば600℃以上、650℃以下の焼成温度で適宜の時間焼成して炭化したものが挙げられる。当該製造方法で得られた炭素前駆体は1種単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
炭素前駆体の添加量は、全エポキシ樹脂組成物中に0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜5.0重量%である。炭素前駆体の添加量が0.1重量%未満であると硬化物の黒色度が低下し、硬化物自体の色が淡灰色になってしまうため、印字の白色と背景の黒色の鮮明なコントラストが得られない点で好ましくない。また、5.0重量%を越えると、半導体封止用エポキシ樹脂の流動性が低下する点で好ましくない。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂は、上記必須の成分の他、必要に応じてカップリング剤、難燃剤、離型剤、低応力剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、上記必須の成分及びその他の添加剤等をミキサー等で均一に常温混合した後、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機で溶融混練し、該混練物を冷却した後粉砕して得られる。
本発明の半導体装置は、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体等の電子部品を封止することにより製造される。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて電子部品を封止する方法としては、例えばトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
第1表の配合成分をミキサーで常温混合し、80〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、該混練物を冷却した後、粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物は以下の評価方法で評価した。その結果を第2表に示す。


<評価方法>
(スパイラルフロー)
EMMI−1−66に準じた金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒下の流動距離を測定(cm)した。スパイラルフロー判定の基準は、100cm未満を不合格、100cm以上を合格とした。
(YAGレーザーマーキング性)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒で80pQFP(2.7mm厚)を成形し、更に175℃、8時間でポストキュアした。次に、マスクタイプのYAGレーザー捺印機(日本電気社製)を用い、印加電圧2.4kV、パルス幅120μsの条件でマーキングし、印字の視認性(YAGレーザーマーキング性)を評価した。印字が鮮明であるものを合格とした。
(外観観察)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間70秒で80pQFP(14×20×2.0mm厚)を成形し、12個のパッケージを得た。外観(硬化物の色)を目視観察した。黒色を合格とし、灰色を不合格とした。
(耐半田クラック性)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒で80pQFP(2.7mm厚)を22個成形し、更に175℃、8時間でポストキュアした。次に、150℃で20時間乾燥させた後、恒温恒湿槽(85℃、相対湿度60%)に168時間加湿処理後、JEDEC条件のピーク温度235℃でIRリフロー処理し、外部クラックの有無を光学顕微鏡にて観察した。不良品の個数がn個であるとき、n/22と表示した。また吸湿前後の重量変化から吸湿率を重量%で算出した。
(高温リーク特性)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力7.8MPa、保圧時間90秒で金線接合間が60μmピッチのテスト用チップに径30μmの金線を施した144pTQFPを100個封止成形した。次に、ADVANTEST製の微少電流計8240Aを用いてリーク電流を測定した。判断基準は175℃においてリーク電流がそのメジアン値より2オーダー高くなった場合を不良とした。不良品の個数がn個であるとき、n/100と表示した。
(凝集物評価)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒で100mmφの円板を成形した。この表面を研磨し研磨面を蛍光顕微鏡(「BX51M−53MF」オリンパス社製)にて観察し、80μm以上の凝集物個数を測定した。
(金線変形評価)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力7.8MPa、保圧時間90秒で金線接合間が60μmピッチのテスト用チップに長さ3mm、径25μmの金線を施した144pTQFPを封止成形した。次に、X線を照射してパッケージ内部の金線を非破壊で観察できる軟X線装置PRO−TEST−100(ソフテックス社製)を用いて金線流れを測定した。金線の長さ方向に対して垂直な方向における変形の最大変形量をaとし、金線長さをbとしたとき、a/b×100(%)を最大金線流れ率とした。判断基準は最大金線流れが3%以上になった場合を不良とした。
【実施例2〜実施例4】
炭素前駆体Aの配合量1.0重量部に代えて、1.8重量部(実施例2)、3.0重量部(実施例3)、0.5重量部(実施例4)とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。なお、炭素前駆体Aの配合量の変化に応じて、球状溶融シリカの配合量を調整した。
【実施例5】
炭素前駆体Aに代えて、下記炭素前駆体Bを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を第2表に示す。
炭素前駆体B;平均粒径15μmの球状フェノール樹脂を乾燥させた後、650℃で4時間焼成して炭素前駆体Bを収率99%で得た。得られた炭素前駆体Bの物性は水素/炭素重量%比=2/97、平均粒径10μm、最大粒径30μm、電気比抵抗値1×10Ω・cmであった。
【実施例6】
炭素前駆体A1.0重量部に代えて、下記炭素前駆体C3.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。なお、炭素前駆体Aの配合量の変化に応じて、球状溶融シリカの配合量を調整した。その結果を第2表に示す。
炭素前駆体C;平均粒径65μmの球状フェノール樹脂を乾燥させた後、600℃で4時間焼成して炭素前駆体Cを収率99%で得た。得られた炭素前駆体Cの物性は水素/炭素重量%比=3/96、平均粒径45μm、最大粒径60μm、電気比抵抗値1×10Ω・cmであった。
【実施例7】
炭素前駆体Aに代えて、下記炭素前駆体Dを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を第2表に示す。
炭素前駆体D;平均粒径1.5μmの球状フェノール樹脂を乾燥させた後、600℃で4時間焼成して炭素前駆体Dを収率99%で得た。得られた炭素前駆体Dの物性は水素/炭素重量%比=3/96、平均粒径1μm、最大粒径10μm、電気比抵抗値1×10Ω・cmであった。
比較例1
配合成分の添加量を第2表に示す値とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、比較例1は球状溶融シリカの配合量をエポキシ樹脂組成物中、92重量部を越える93重量部としたものである。その結果を第3表に示す。
比較例2
炭素前駆体Aの配合量1.0重量部に代えて、配合量7.0重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。なお、炭素前駆体Aの配合量の変化に応じて、球状溶融シリカの配合量を調整した。その結果を第3表に示す。
比較例3
炭素前駆体Aの配合量1.0重量部に代えて、配合量0.1重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。なお、炭素前駆体Aの配合量の変化に応じて、球状溶融シリカの配合量を調整した。その結果を第3表に示す。
比較例4
炭素前駆体Aに代えて、下記炭素前駆体Eを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を第3表に示す。
炭素前駆体E;平均粒径80μmのフェノール樹脂を乾燥させた後、500℃で4時間焼成して炭素前駆体Eを収率99%で得た。得られた炭素前駆体Eの物性は水素/炭素重量%比=6/92、平均粒径55μm、最大粒径70μm、電気比抵抗値1×1010Ω・cmであった。
比較例5
炭素前駆体Aに代えて、下記炭素前駆体Fを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を第3表に示す。
炭素前駆体F;平均粒径4.5μmのフェノール樹脂を乾燥させた後、520℃で4時間焼成して炭素前駆体Fを収率99%で得た。得られた炭素前駆体Fの物性は水素/炭素重量%比=5/92、平均粒径3μm、最大粒径15μm、電気比抵抗値1×10Ω・cmであった。
比較例6
炭素前駆体Aに代えて、下記炭素前駆体Gを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を第3表に示す。
炭素前駆体G;平均粒径4.5μmのフェノール樹脂を乾燥させた後、550℃で4時間焼成して炭素前駆体Gを収率99%で得た。得られた炭素前駆体Gの物性は水素/炭素重量%比=5/93、平均粒径3μm、最大粒径15μm、電気比抵抗値1×10Ω・cmであった。
比較例7
炭素前駆体A1.0重量部に代えて、下記カーボンブラックA0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。なお、炭素前駆体Aの配合量の変化に応じて、球状溶融シリカの配合量を調整した。その結果を第3表に示す。
カーボンブラックA;「MA600」,(三菱化学社製,水素/炭素重量%比=1.5/98、アグリゲートサイズ300nm、アグロメレートサイズ100μm、電気比抵抗値4×10−1Ω・cm)


【産業上の利用可能性】
本発明の半導体装置は、半導体装置製造分野及び該半導体装置を使用する電子部品に有用であり、特に狭い金線間を持ち且つYAGレーザーマーキングを採用する半導体装置に適している。また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特に狭い金線間を持ち且つYAGレーザーマーキングを採用する半導体装置を封止するエポキシ樹脂を製造する際に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材、硬化促進剤、及び1×10Ω・cm以上、1×10Ω・cm未満の半導体領域に電気比抵抗値を有する炭素前駆体を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、全エポキシ樹脂組成物中に前記無機充填材を65〜92重量%、前記炭素前駆体を0.1〜5.0重量%含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭素前駆体は、元素分析によるH/C重量%比が、2/97〜4/93である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭素前駆体は、平均粒径が0.5〜50μmの微粒子である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭素前駆体は、平均粒径が0.5〜20μmの微粒子である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭素前駆体の電気比抵抗値は、1×10Ω・cm以上、1×10Ω・cm未満であることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
全エポキシ樹脂組成物中に前記無機充填材を70〜91重量%含むものであることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記炭素前駆体は、フェノール樹脂を600℃以上、650℃以下の焼成温度で焼成して炭化したものであることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【国際公開番号】WO2004/096911
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505863(P2005−505863)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005773
【国際出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】