説明

半導体層中のドーパント拡散制御プロセス及びそれにより形成された半導体層

【課題】半導体層中のドーパントを所望の不純物濃度に拡散制御するプロセス及びそれにより形成された半導体層を提供する。
【解決手段】(a)拡散を抑制する量の電気的に不活性な不純物を結晶成長流内に導入するステップと、(b)該結晶成長流を使用して少なくとも1つの結晶成長技術により結晶性の半導体基板上に結晶性の第1の半導体層を堆積させるステップと、(c)該第1の半導体層上に第2の半導体層を形成するステップとからなり、該第2の半導体層は、電気的に活性なドーパントを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体層中でのイオン注入ドーパント原子の拡散制御プロセス及びそれにより形成された半導体層に係る。
【背景技術】
【0002】
半導体材料が原子デバイスに有用である1つの特徴は、それらの電気伝導特性が、材料中に少量のドーパント原子を導入することにより、制御できることである。制御可能で、再現性が良く、最も好ましくない副作用のないドーパント原子導入の有用な方法は、イオン注入である。イオン注入中、ドーパント原子はイオン化し、加速され、シリコン基板に向けられる。それらはシリコン基板の結晶格子に入り、シリコン原子と衝突し、徐々にエネルギーを失い、最後に格子内のある深さで静止する。平均の深さは、加速エネルギーを調整することにより、制御できる。ドーパントドーズは注入中、イオン電流をモニターすることにより、制御できる。主要な副作用であるイオンの衝突により生じるシリコン格子の崩壊は、その後の熱処理、すなわちアニーリングにより、除去される。アニーリングは格子損傷を回復し、ドーパント原子を、電気的に活性になるシリコン基板内の置換位置に置くために、必要である。
【0003】
デバイスの寸法がサブミクロンの範囲に減少するとともに、ドーパント原子の拡散は、シリコン基板内の垂直及び横方向の両方に、精密に制御しなければならない。ドーパントの拡散を制御する1つの方法は、急速熱アニーリングである。急速熱アニーリングは、たとえば100秒といった短時間でウエハを加熱し、あらかじめ許容限界とみなされていた範囲内で、ドーパント原子を拡散させ、ほとんど完全に電気的に活性化させられる各種の方法をさす用語である。
【0004】
しかし、急速熱アニーリング技術を用いても、過渡促進拡散(TED)として知られる現象が起ることが、観察されている。過渡促進拡散は注入後のアニーリング中に起り、ドーパント原子、特にホウ素(B)及びリン(P)の拡散が、注入により生じた自己格子間過剰シリコン(Si)により、好ましくないほど促進されるという事実から生じる。注入により過剰の格子間Siが生じることにより、動的クラスタ形成とここで呼ぶ現象も起る。それにより、注入されたドーパント原子は半導体層中に、クラスタ又は集団を形成する。これらのクラスタ又は集団は、動かず、電気的に不活性である。以前は、TED及び動的クラスタ形成は、デバイス作製上の関心事ではなかったが、TED及び動的クラスタ形成は今や、将来のシリコンデバイス技術で達成できる最小デバイス寸法に対する重大な限界を与える恐れが出てきた。
【0005】
最近の研究は、デバイスプロセス中のドーパント原子の拡散を予測するために設計されたシミュレーションプログラムの十分な基礎を作るため、ドーパントの拡散機構を解明することに、向けられてきた。つけ加えるべき挑戦は、ドーパント原子の拡散を制御するプロセスと両立する方法の開発である。
【0006】
ドーパントの拡散を著しく低下させることは、ドーパント注入及びアニーリングの前に、結晶Si基板をアモルファス化することにより、実現できる。しかし、接合漏れを増加させうる最初のアモルファスSi/結晶Si界面近くに存在する欠陥帯を制御することは、困難であることが、わかっている。更に、その後の熱処理中、欠陥帯から格子間原子が注入され、つけ加わり、それによってTEDが接続する。最近、エス・ニシカワ(S.Nishikawa)、エイ・タナカ(A.Tanaka)及びティー・ヤマジ(T.Yamaji)、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett)、60,2270(1992)は、ドーパント拡散は炭素(C)をホウ素と同時に、シリコン基板中に注入した時、低下させられることを報告した。この低下は注入された炭素がアニーリング中過剰の格子間原子の吹い口となるという事実が原因とされてきた。ドーパント拡散を抑える上で、炭素を同時注入する効率は、炭素原子はドーパント及び注入炭素の両方から、イオンで生成した格子間原子を捕獲しなければならないという事実によって、制限される。
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett. 60(18), PP.2270-2272
【特許文献1】特開平02-205016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
堆積させた半導体層中での、たとえばホウ素、リン、As等のイオン注入ドーパント原子の拡散は、拡散抑制量の電気的に不活性な不純物を、結晶成長技術により、半導体層中に導入することを含むプロセスによって、制御される。置換炭素のような電気的に不活性な不純物は、化学気相堆積及び分子線エピタキシーといった従来の結晶成長技術の間、結晶成長流中に不純物を含む少なくとも1つの物質を加えることにより、半導体層中に導入するのが好ましい。たとえば、炭素を含む気体を、エピタキシャルシリコン層の化学気相堆積中、結晶成長流中に、添加することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例において、電気的に不活性な不純物は、半導体層全体に渡って、半導体層内で垂直又は水平方向にイオン注入ドーパントの拡散を制御するよう調整できる濃度に、導入される。
【0009】
本発明の第2の実施例において、少なくとも2つの独立の領域又は層が内部に形成され、1つの領域又は層は電気的に不活性な不純物を有し、他方の領域又は層は、電気的に不活性な不純物を含まない半導体層を形成する。この構造において、電気的に不活性な不純物を含む領域又は層は、電気的に不活性な不純物を本質的に含まない領域又は層中に注入されたドーパント原子の拡散を阻止する。
【0010】
“半導体層”という用語は、結晶成長技術により基板上に選択的又は一様に成長できる任意の層をさすと、ここでは理解することとする。そのような半導体層の例には、エピタキシャルシリコン、多結晶シリコン及びシリコン−ゲルマニウムが含まれる。
【0011】
“拡散”という用語は、過渡促進拡散(TED)及び動的クラスタ形成の両方を含むと、ここでは理解することとする。
【0012】
“結晶成長技術”という用語は、ここではその広い意味で用い、従って基板上に材料を成長させるのに用いることのできるすべての技術を含むものと、理解することにする。従って、ここで用いることのできる技術には、化学気相堆積(CVD)、分子線エピタキシー、反応性マグネトロンスパッタリング及び同様のものが含まれる。“電気的に不活性な不純物”という用語は、やはり広い意味で用いられ、ここで定義されるように、半導体中に導入された時、半導体の電気的特性に影響を与えない任意の原子又は分子を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に従い導入された電気的に不活性な不純物を含む半導体層は、ビー・ジャヤント・バリガ(B.Jayant Baliga)編、“エピタキシャルシリコン技術”アカデミックプレス(1986)に述べられているような、化学気相堆積(CVD)により形成されたエピタキシャルシリコン層が、好ましい。
【0014】
化学気相堆積は典型的な場合、シリコンを含む気体又は複数の気体を、通常約100ないし約1300℃、好ましくは約800ないし約1200℃の温度の基板上で、通常大気ないし約10mTorrの範囲の圧力で、分解させることを含む。上に半導体層を成長できる基板は、典型的な場合、チョクラルスキ技術により作成したシリコンウエハでよい。ウエハは(100)、(110)又は(111)といった任意の適当な面方位を持ってよく、当業者には周知のように、高濃度又は低濃度に不純物をドープしてよい。半導体層のバックグランドの電気的ドーピングは、たとえばジボラン(B)又はホスフィン(PH)といった適当なドーパント原子を含むわずかの気体を、気体混合物に添加することにより、実現できる。CVD中シラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、四塩化シリコン(SiCl)及び類似のものといった任意の適当なシリコンを含む気体又はそれらの混合物を、用いることができる。
【0015】
本発明に従うと、たとえばシリコンを含む気体を、ホットウォール又はコールドウォールCVD容器中に導入し、結晶成長流を供給することにより、エピタキシャル成長プロセスが始った後、シリコンのエピタキシャル成長層中に導入すべき物質、すなわち電気的に不活性な不純物を、CVD容器中の結晶成長流に添加する。“結晶成長流”という用語は、ここでは結晶成長を起すために、シリコン基板に供給される物質をさすと、理解することとする。電気的に不活性となる物質の例には、炭素、フッ素、窒素、酸素及びゲルマニウムが含まれる。エピタキシャルシリコン層内の結晶格子構造中の置換位置を占める炭素は好ましい。従って、本発明の好ましい実施例において、炭素を含む気体又は炭素を含む気体の混合物を、エピタキシャルシリコン層の化学気相堆積中、結晶成長流中に加え、それにより堆積させるエピタキシャルシリコン層内に、置換炭素を導入する。そのようなエピタキシャルシリコン層内に置換シリコンが存在することは、拡散すなわちその後イオン注入されるドーパント原子の過渡促進拡散及び動的クラスタ形成を制御する有効な手段であることが、示されている。
【0016】
電気的に不活性な不純物が置換炭素の場合、メタン(CH)、エチレン(C)、アセチレン(C)及びシラシクロブタン(CSiH)といった炭化水素を含む炭素を含む気体又はそれらの混合物を、このプロセスに用いることができる。ここで用いる炭化水素は、高純度すなわちULSI級である必要がある。
【0017】
エピタキシャル成長プロセス中、結晶成長流に炭素を含む気体を添加することは、CVD容器に入る気体流に、炭素を含む気体を添加することにより、実現される。炭素を含む気体を含め、CVD容器に入る気体の流量は、約1sccm(標準立方センチメータ/分)ないし約10slpm(標準リッター/分)と、広範囲にできる。置換炭素は堆積するエピタキシャルシリコン層中に、濃度で表わすと約1×1020C/cm以下の水準で、導入するのが好ましい。約4×1018ないし約1×1020C/cm、より好ましくは約1×1019ないし約3×1019C/cmの範囲の濃度で、エピタキシャルシリコン層内に導入するのが、好ましい。もちろん、エピタキシャルシリコン層中に導入される置換炭素は、エピタキシャル成長プロセス中、気体流に添加される炭素を含む気体の量を制御することにより、制御できる。CVD中気体流に添加される炭素を含む気体又は複数の気体の量は、用いる炭素を含む具体的な気体の反応性に、大きく依存する。たとえば、アセチレンはエチレンより、MBE条件下では、より反応性であることが、わかっている。従って、エチレンはアセチレンに比べ、多量に用いることになる。用いる適切な気体と量は、日常的な実験により、容易に決めることができる。通常、シリコンを含む気体に対する炭素を含む気体の比は、約1:1ないし約1:10,000で、約1:100ないし約1:1000が一般的である。このように、半導体層中に導入される置換炭素の量は、精密に制御できる。
【0018】
従って、本発明の一実施例において、結晶成長技術を用いてシリコンウエハ上に成長させる半導体層の本質的に全体に、電気的に不活性な不純物を導入するプロセスが実現される。その後、B、P、As及び同様のものといったドーパントが、半導体層中の制御できる深さに、注入できる。約20,000Å、好ましくは約2,000Åを越えない深さ、最も好ましくは約500Åを越えない深さが得られる。周知の方法に従い、各種の微細電子デバイスが、半導体層中に作製できる。そのようなデバイスの例には、たとえばn−MOS、p−MOS及びCMOSのようなMOS形デバイス、バイポーラデバイス、BiCMOS、薄膜トランジスタ、ヘテロ接合デバイス及び同様のものが含まれる。
【0019】
電気的に不活性な不純物を、半導体層の選択された領域にのみ、導入することが望ましい場合は、電気的に不活性な不純物を含む物質は、限られた時間だけ、CVD容器に導入される。従って、本発明の第2の実施例においては、エピタキシャルシリコン層の化学気相堆積中の炭素を含む気体の流れは、成長プロセスが完了する前に、停止される。具体的に考える1つの構造は、炭素を含む気体をエピタキシャル成長プロセスの第1の部分で流し、次に成長プロセスの完了前に止め、それによってエピタキシャルシリコンの置換炭素のない層を、エピタキシャルシリコンの置換炭素を含む層の最上部上に成長させた構造である。続いてドーパント原子を炭素を含まない領域又は2つのそのような別々の領域又は層を有するエピタキシャルシリコンの層に注入した時、置換炭素を含む底部層は、本質的に置換炭素を含まない最上部層中に注入されたドーパント原子の拡散を阻止する働きをする。その後、B、P、As及び同様のものといったドーパントを、本実施例に従って生成したエピタキシャルシリコン層中の制御しうる深さに、注入できる。約20,000Åを越えない深さ、好ましくは約2,000Åを越えない深さ、最も好ましくは約500Åを越えない深さが得られる。このように、1ないし複数の上述のような領域又は層を含むエピタキシャルシリコン層に、各種の微細電子デバイスが形成できる。
【0020】
以下の例は本発明の利点を示す。
例1
置換炭素が存在する場合ドーパント拡散、すなわち過渡促進拡散を調べるため、以下のホウ素拡散マーカを準備した。ホウ素ドープ結晶Si(c−Si)超格子を、分子線エピタキシー(MBE)により、600℃で浮遊帯(FZ)Si(100)基板上に、成長させた。これにより、1000Åのc−Siキャップ層下に、800Åで分離された1.5×1013B/cmの〜100Å幅のドーピングスパイクが生じた。そのような構造は、過渡促進拡散の機構を同定する上での拡散マーカとして、非常に有効であることが、明らかになっている。
【0021】
置換炭素はリークバルブを通し、MBE容器中にアセチレンガスを導入することにより、エピタキシャルシリコンの成長中、0.6Å/Sの成長速度で導入した。堆積中に基板温度は、600℃であった。標準的な成長条件、すなわちMBE容器にアセチレンガスを導入しない条件下でのバックグランドの置換炭素レベルは、1×1018C/cmであった。そのような置換炭素のバックグランド濃度は典型的な場合、エピタキシャル層を成長させるのに用いられる装置中に、わずかな濃度の不純物が存在するために、MBEにより成長させるすべてのエピタキシャル層中に、存在する。このバックグランドは従来から、望ましくないとみなされてきた。10−7Torrのアセトンのバックグランド圧下での成長では、置換炭素レベルは、2×1019C/cmに増加した。ホウ素ドーピングスパイクにおける置換炭素の導入は、成長の中断により3倍増加する。透過電子顕微鏡写真(TEM)は、1000℃、1時間の置換炭素を多く含むシリコン層のアニーリングで、カーバイドの析出はないことを示している。このことは、導入された炭素を高温まで、溶液として留ることを、示している。成長させた超格子にはその後、40keVのエネルギー、5×1013/cmのドーズで、室温においてシリコンを注入した。この非アモルファス化注入により、0.1μmC−Si表面層中に結晶損傷が生じ、デバイスプロセスに用いられる典型的なドーパント注入の代表である。試料は化学的に清浄化し、真空中で790℃において10分間アニールし、拡散を起させた。ホウ素拡散プロフィルは2keVOを用いて、4Å/Sのスパッタリング速度で、二次イオン質量分析(SIMS)を使用して測定し、3keVCsを用いた時、12Å/Sで炭素分布が得られた。
【0022】
図1はアニーリング後のホウ素分布のSIMS測定結果を示す。特に図1Aを参照すると、バックグランド濃度の置換炭素、すなわち1×1018C/cmの炭素を含む超格子の場合、イオン注入試料中のホウ素マーカの拡散は、注入により生じる損傷が無い場合の熱拡散に比べ、著しく促進(〜100×)された。拡散が促進されたことは、イオン注入種から、過剰の格子間原子が注入されたことによる。注入損傷に最も近いホウ素スパイクの部分は、不動のままで、それは格子間原子の影響により、Bのクラスタが形成されたことによる。
【0023】
次に、図1Bを参照すると、本発明に従い2×1019C/cmの濃度で置換炭素を含むイオン損傷超格子中のホウ素拡散は、熱拡散に比べ著しい過渡促進拡散を示さず、イオン損傷領域からの格子間原子の注入が抑えられることを、示している。
【0024】
上の例は置換炭素はイオン生成格子間原子の効果的な吹い口として働くことを、示している。理論により限定する意図はないが、炭素と格子間原子は結合し、可動性の炭素格子間原子対を形成し、続いてより大きな炭素−格子間原子の集合体の核生成と成長が起ると確信される。
【0025】
例2
C過剰c−Si中のイオン注入B分布の拡散の振舞い及び電気的特性を、以下のように調べた。この目的のために、p−及びn−ドープ浮遊帯Si(100)ウエハを、0.5、1及び2MeVSi注入種を用い、全ドーズ1.5×1016/cmで〜77Kにおいて、2μmの深さまで、アモルファス化した。ウエハの一部に、10、28、65、130、230及び400keVのエネルギーで、それぞれ1.3、3.2、6.0、8.7、11.3及び13.3×1013/cmのドーズにCを注入した。固相エピタキシー(SPE)によりアモルファスSi(a−Si)層を再成長し、注入されたCをc−Si格子中に入れるため、試料を真空中500℃において1時間、600℃において2時間、900℃で15分間アニールした。a−SiのSPE中、炭素は置換位置に再成長する。得られた置換炭素レベルは、SIMSにより調べたところ、試料の表面1μmで、約4×1018ないし約6×1018C/cmに変化した。Cを多く含む試料(CSPE)及び基準試料(SPE)に、室温で1.5×1014/cm、30keVのBを注入した。試料はチャネリングを最小にするため、イオンビームに対して7°傾けた。拡散アニールは真空中で、800℃で35分及び950℃で15分間行った。
【0026】
図2はSIMSにより測定したホウ素拡散前及び後のホウ素分布を示す。図2Aを参照すると、800℃、35分間のアニール後の基準試料中のホウ素の拡散分布は、TEDのすべての特徴を示している。すなわち、注入された分布の尾の部分のホウ素は、〜700Å拡散したが、このアニールの平衡拡散長Leqは、わずか〜25Åである。加えて、1×1018/cm以上の分布のピーク位置は、過剰の格子間原子により促進されたホウ素のクラスタ形成により、不動のままであった。
【0027】
次に、図2Bを参照すると、C過剰基板CSPEの拡散の振舞いは、非常に異っている。第1に、ホウ素分布の尾の部分におけるホウ素の拡散は、800及び950℃の両方で、著しく減少している。加えて、ホウ素分布のピークにおける不動ホウ素クラスタの顕著な信号は無い。このことは、置換炭素は格子間原子を捕獲する働きをし、それによって過渡促進ホウ素拡散とホウ素の格子間原子によって促進されるクラスタ形成の両方が、抑えられることを示している。
【0028】
図3の広がり抵抗測定は、ホウ素分布の主要部分(〜80%)は、950℃のアニーリング工程後、電気的に活性であることを、示している。加えて、n形、C過剰基板中のホウ素分布のホール測定は、800℃における拡散後に電気的に活性な割合は約60%で、950℃におけるアニールで更に〜85%に増加することを、示している。FZ基板中に注入し、同じ条件下でアニールしたホウ素分布でも、同程度の活性化率が見い出されている。これらの電気的データは、C又はC−格子間原子集合体の存在は、許容できない水準で、ドーピング効率に悪影響を及ぼさないことを、示している。
【0029】
本発明について、各種の実施例を具体的に示し、述べてきたが、当業者には、特許請求の範囲で規定される本発明の精神及び視野を離れることなく、本発明の修正及び変更ができることは、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】Aは、エピタキシャルシリコン中のホウ素拡散の深さ方向の分布を、二次イオン質量分析で測定した結果を、グラフで示す図である。 Bは、エピタキシャルシリコン中のホウ素拡散の深さ方向の分布を、二次イオン質量分析で測定した結果を、グラフで示す図である。
【図2】Aは、エピタキシャルシリコン中のホウ素拡散の深さ方向の分布を、二次イオン質量分析で測定した結果を、グラフで示す図である。 Bは、エピタキシャルシリコン中のホウ素拡散の深さ方向の分布を、二次イオン質量分析で測定した結果を、グラフで示す図である。
【図3】エピタキシャルシリコン中の原子状及び電気的ホウ素の深さ分布を、グラフで示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超小型電子デバイスを製造する方法であって、
(a)拡散を抑制する量の電気的に不活性な不純物を結晶成長流内に導入するステップと、
(b)該結晶成長流を使用して少なくとも1つの結晶成長技術により結晶性の半導体基板上に結晶性の第1の半導体層を堆積させるステップと、
(c)該第1の半導体層上に第2の半導体層を形成するステップとを含み、該第2の半導体層は、電気的に活性なドーパントを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該電気的に不活性な不純物は、炭素、フッ素、窒素、酸素及びゲルマニウムから成る類から選択される方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、該電気的に不活性な不純物は、置換炭素であり、該半導体層内に導入された置換炭素の量は、概ね1×1020C/cm より小さい方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、該半導体層内に導入された置換炭素の量は、概ね4×1018乃至1×1020C/cm の範囲にある方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、該半導体層内に導入された置換炭素の量は、概ね1×1019乃至3×1019C/cm の範囲にある方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、該第1の半導体層と該第2の半導体層は、エピタキシャルシリコン、多結晶シリコン及びシリコン−ゲルマニウムから成る類から選択される方法。
【請求項7】
置換炭素が導入されている半導体層を成長させる方法であって、
(a)概ね1:1乃至1:10,000の比率で炭素含有気体とシリコン含有気体とを含む混合気体を導入するステップを含み、該混合気体は、結晶性半導体基板が備えられている容器内に導入されるドーパントを含んでおり、
(b)化学蒸着の条件下で該混合気体を分解させ、拡散を抑制する量の炭素と該ドーパントとを含むシリコンエピタキシャル層を該結晶性の半導体基板上に形成するステップとを含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、該シリコン含有気体は、シラン、ジシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン及び四塩化シリコンから成る類から選択される方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、該炭素含有気体は、メタン、エチレン、アセチレン及びシラシクロブタンから成る類から選択される方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、該ドーパント原子を含む気体は、ジボラン及びホスフィンから成る類から選択される方法。
【請求項11】
超小型電子デバイスを製造する方法であって、
(a)シリコンと置換炭素とを含む結晶成長流を使用して結晶性シリコン半導体層を堆積させ、少なくとも1つの結晶成長技術により基板を形成するステップと、
(b)該基板の該結晶性シリコン半導体層内にドーパントを導入し、該結晶性シリコン半導体層内にデバイスを形成するステップとを含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、該デバイスを形成するステップは、該結晶性シリコン半導体層内にドーパントをイオン注入するステップを含む方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、該イオン注入されたドーパントは、ホウ素、リン及びヒ素から成る類から選択される方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、該ドーパントは、該結晶性シリコン半導体層内の概ね20,000Åを越えない深さまで注入される方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、該ドーパントは、該結晶性シリコン半導体層内の概ね2,000Åを越えない深さまで注入される方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法において、ドーパントは、該結晶性シリコン半導体層内の概ね500Åを越えない深さまで注入される方法。
【請求項17】
半導体デバイスであって、該デバイスを構成する半導体層が、
拡散を抑制する電気的に不活性な不純物が少なくとも1つの第1の結晶成長技術によって導入された第1の半導体領域と、
少なくとも1つの第2の結晶成長技術によって該第1の半導体領域上に形成された第2の半導体領域とを含み、該第2の半導体領域は、電気的に不活性な不純物を実質的に含んでおらず、概ね20,000Åを超えない深さにまで導入されたドーパント原子を含み、
該第1の領域の電気的に不活性な不純物は、該第2の領域から該第1の領域への該ドーパント原子の拡散をブロックするように動作する半導体デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体デバイスにおいて、該電気的に不活性な不純物は、炭素、フッ素、窒素、酸素及びゲルマニウムから成る類から選択される半導体デバイス。
【請求項19】
請求項17に記載の半導体デバイスにおいて、該ドーパント原子は、該半導体層内の概ね2,000Åを超えない深さにまで拡散される半導体デバイス。
【請求項20】
請求項17に記載の半導体デバイスにおいて、該電気的に不活性な不純物は、置換炭素である半導体デバイス。
【請求項21】
請求項20に記載の半導体デバイスにおいて、実質的に置換炭素を含まない領域又は層を含む半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−211222(P2008−211222A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52155(P2008−52155)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【分割の表示】特願平7−313395の分割
【原出願日】平成7年12月1日(1995.12.1)
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【Fターム(参考)】