説明

半導体装置、半導体集積回路装置及び半導体装置の電気的特性の調整方法

【課題】互いに独立した複数の回路を搭載した半導体装置において、回路毎に適切な電気的特性の調整を行うことができる半導体装置及び半導体装置の電気的特性の調整方法の提供。
【解決手段】互いに独立した第1の回路10及び第2の回路を有し、前記第1の回路10はパッケージング前に電気的特性が調整され、前記第2の回路20はパッケージング後に電気的特性が調整される半導体装置60であって、前記第1の回路10は、レーザー切断により抵抗値が調整されるレーザーヒューズ30を有し、前記第2の回路20は、電気的溶断により抵抗値が調整される電気溶断式抵抗調整手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体集積回路装置及び半導体装置の電気的特性の調整方法に関し、特に、互いに独立した第1の回路及び第2の回路を有する半導体装置、半導体集積回路装置及び半導体装置の電気的特性の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チップの一部に、ウエハの状態で第1のトリミングを行うための第1のトリミング領域と、チップをウエハから切り出してパッケージした状態で第2のトリミングを行うための第2のトリミング領域とが設けられた半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平3−14230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、半導体装置に1つの用途を有する回路のみが搭載された場合には好適に適用され得るが、各々が別個の用途を有する互いに独立した回路が複数搭載されたときには、各回路に応じたトリミングを適切に行うことができないという問題があった。
【0004】
一方、半導体装置に複数の用途を有する回路が搭載されている場合には、回路の機能や要求されている仕様、周囲回路との関係等から、パッケージング前の半導体ウエハの状態で電気的特性の調整を行うことが可能な回路と、パッケージングしてから、周囲回路との関係を把握しながら電気的特性の調整を行う必要がある回路を含んでいる場合がある。このような場合には、回路の特性に応じたトリミング処理を行うことが要求される。
【0005】
そこで、本発明は、互いに独立した複数の回路を搭載した半導体装置において、回路毎に適切な電気的特性の調整を行うことができる半導体装置及び半導体装置の電気的特性の調整方法について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る半導体装置(60)は、互いに独立した第1の回路(10、10a)及び第2の回路を有し、前記第1の回路(10、10a)はパッケージング前に電気的特性が調整され、前記第2の回路(20、20a)はパッケージング後に電気的特性が調整される半導体装置(60)であって、
前記第1の回路(10、10a)は、レーザー切断により抵抗値が調整されるレーザーヒューズ(30、30a)を有し、
前記第2の回路(20、20a)は、電気的溶断により抵抗値が調整される電気溶断式抵抗調整手段(40,40a)を有することを特徴とする。
【0007】
これにより、パッケージング前に電気的特性の調整が行われる回路には、レーザーヒューズを用いて高精度の抵抗値調整を行うことができ、パッケージング後に電気的特性の調整が行われる回路については、電圧の印加によりパッケージ外部から電気的特性の調整を行うことができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る半導体装置(60)において、
前記電気溶断式抵抗調整手段(40、40a)は、溶断ヒューズ又はザッピングダイオードであることを特徴とする。
【0009】
これにより、電圧の印加による電気的溶断が適切に行われ、パッケージング後の抵抗値調整を高い歩留まりで行うことができる。
【0010】
第3の発明に係る半導体集積回路装置(100)は、第1又は第2の発明に係る半導体装置(60)を有し、
該半導体装置(60)が有するレーザーヒューズ(30、30a)が切断済みの状態でパッケージングされたことを特徴とする。
【0011】
これにより、レーザーヒューズを有する回路は高精度に調整済みの状態で、かつパッケージング後には電気的溶断による調整の余地を残してあり、高精度で柔軟な電気的特性の調整が可能な半導体集積回路装置とすることができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明に係る半導体集積回路装置(100)において、
前記半導体集積回路装置(100)は、所定の用途の回路に組み込まれてから、前記半導体装置(60)の電気溶断式抵抗調整手段(40、40a)の電気的溶断が行われることを特徴とする。
【0013】
これにより、半導体装置がパッケージングされたチップとなって出荷され、ユーザがチップを用いて所定用途の回路を組んでから、チップの電気的特性の調整を行うことが可能となる。
【0014】
第5の発明に係る半導体装置(60)の電気的特性の調整方法は、互いに独立した第1の回路(10、10a)及び第2の回路(20、20a)を有し、前記第1の回路(10、10a)は抵抗値調整用のレーザーヒューズ(30、30a)を備え、前記第2の回路(20、20a)は抵抗値調整用の電気溶断式抵抗調整手段(40、40a)を備えた半導体装置(60)の電気的特性の調整方法であって、
前記半導体装置(60)がパッケージングされる前に、前記レーザーダイオード(30、30a)を切断して前記第1の回路(10、10a)の電気的特性を調整するステップと、
前記半導体装置(60)がパッケージングされた後に、前記電気溶断式抵抗調整手段(40、40a)に電圧を印加して前記電気溶断式抵抗調整手段(40、40a)を溶断し、前記第2の回路(20、20a)の電気的特性を調整するステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
これにより、個々に別用途を有する複数の回路について、各々に適したタイミングで電気的特性の調整を行うことができる。
【0016】
第6の発明は、第5の発明に係る半導体装置(60)の電気的特性の調整方法において、
前記電気溶断式抵抗調整手段(40、40a)は、溶断ヒューズ又はザッピングダイオードであることを特徴とする。
【0017】
これにより、電気的溶断を確実に行うことができ、電気的溶断における歩留まりを高めることができる。
【0018】
第7の発明は、第5又は第6の発明に係る半導体装置(60)の電気的特性の調整方法において、
前記第2の回路(20、20a)の電気的特性を調整するステップは、パッケージングされた前記半導体装置(60)が所定の用途の回路に組み込まれてから実行されることを特徴とする。
【0019】
これにより、半導体装置をパッケージングしてチップとして出荷してから、ユーザの方で所定用途の回路を組んでから半導体装置の電気的特性の調整を行うことができ、ユーザに使い勝手の良い半導体装置を提供することができる。
【0020】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、互いに独立した回路の用途や種類に応じて、適切なタイミングで電気的特性の調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0023】
図1は、本発明を適用した実施例に係る半導体装置60の半導体ウエハ70上の構成を示した図である。図1において、半導体ウエハ70上に、格子状に本実施例に係る半導体装置60が形成されている。半導体装置60は、半導体チップと呼んでもよい。半導体装置60は、半導体ウエハ70上に複数の半導体チップとして形成された後、格子状のスクライブラインに沿って切り出され、次いで個々がパッケージングされ、半導体集積回路装置として製品化される。従って、パッケージングされる前の半導体ウエハの状態で、半導体装置60には所定用途の回路が形成されている。
【0024】
本実施例に係る半導体装置60は、第1の回路10と第2の回路20とを含む。半導体装置60上には、他にも種々の用途の回路が形成され、全体として所定の機能を有する半導体チップとして構成されてよいが、本実施例に係る半導体装置60においては、第1の回路10と第2の回路20の2つの回路を採り上げて示している。第1の回路10と第2の回路20は、互いに独立している。このように、本実施例に係る半導体装置60は、1チップ内に独立した回路を複数有する。第1の回路10と第2の回路20は、互いが独立しており、異なる回路構成を有する回路であれば、同一機能を有していても、異なる機能を有していてもよい。しかしながら、両者は回路構成が異なるので、異なる機能又は用途を有する場合が多く、本実施例に係る半導体装置60の第1の回路10及び第2の回路20は、用途の異なる回路同士に適用される場合が多い。
【0025】
第1の回路10及び第2の回路20は、アナログ回路であってもよいし、デジタル回路であってもよい。本実施例に係る半導体装置60は、高精度の電気的特性が求められるアナログ回路に適用されるのが適するが、デジタル回路のビット救済用等に適用されてもよい。
【0026】
第1の回路10は、レーザーヒューズ30を備える。レーザーヒューズ30は、半導体ウエハ70の状態でレーザー照射により切断され、抵抗値の調整を行うためのヒューズである。レーザーヒューズ30は、レーザートリミング装置、レーザー救済装置等のレーザー照射装置によりレーザー照射されて切断され、トリミングにより抵抗値が変化し、第1の回路10の電気的特性が調整される。レーザーヒューズ30は、切断不良が少なく、高精度の抵抗値調整及び電気的特性の調整が可能である。
【0027】
第2の回路20は、電気溶断式抵抗調整手段40を備える。電気溶断式抵抗調整手段40は、過電圧を印加されたときに溶断し、抵抗値の調整を可能とする抵抗値調整手段である。電気溶断式抵抗調整手段40は、両端に電圧を印加することにより切断可能であるので、パッケージに半導体装置60を収容した後も、電気溶断式抵抗調整手段40の両端の接続端子をパッケージの外部に出しておくことにより、溶断することができる。よって、第2の回路20の抵抗値及び電気的特性は、半導体装置60がパッケージングされた後も調整可能である。
【0028】
電気溶断式抵抗調整手段40は、両端に所定値以上の電圧が印加されることにより溶断可能であれば、種々の抵抗調整手段が適用されてよいが、例えば、溶断ヒューズやザッピングダイオードが適用されてよい。溶断ヒューズは、金属製のヒューズであり、高電圧をヒューズ部に印加することにより、溶断して切断できるようになっている。また、ザッピングダイオードは、高電圧をダイオード部に印加することにより、ダイオードが破壊され、電気的に接続されるようになっている。
【0029】
このように、本実施例に係る半導体装置60は、パッケージング前の半導体ウエハ70の状態で抵抗値調整を行うレーザーヒューズ30を備えた第1の回路と、パッケージング後に製品化された半導体チップの状態で抵抗値調整を行う電気溶断式抵抗調整手段40を備えた第2の回路20を含んでいる。
【0030】
図2は、本実施例に係る半導体装置60がパッケージングされて半導体集積回路装置100となった状態を示した図である。図2において、半導体装置60を半導体ウエハ70から切り出して各々チップの状態にし、パッケージングを行ってパッケージ80に収容し、半導体集積回路装置(IC)100として製品化した状態が示されている。
【0031】
図2において、半導体装置60は、互いに独立した第1の回路10と第2の回路20とを有する。第1の回路10は、レーザーヒューズ30を備え、第2の回路20は、溶断ヒューズ41を備えている。溶断ヒューズ41は、ザッピングダイオードが適用されてもよい。図2においては、溶断ヒューズ41を適用した例を挙げて説明するが、ザッピングダイオード等の他の電気溶断式抵抗調整手段40も同様にして適用できる。半導体装置60は、パッケージ80に収容され、パッケージ80からは、端子90が外部に出ている。端子90は、半導体装置60に搭載されている回路を動作させるための入出力端子であり、このうち、第2の回路20に接続されている端子90も含んでいる。
【0032】
図2において、第1の回路10は、図1で示したように、個々の半導体装置60が切り出される前に、半導体ウエハ70の状態でレーザーヒューズ30の切断が行われ、抵抗値の調整により電気的特性が調整済みの状態となっている。つまり、半導体製造工程のいわゆる前工程でレーザートリミングが行われ、抵抗値の調整が終了している。レーザートリミングは、高精度なトリミングが可能であるので、精度良く第1の回路10の電気的特性は調整された状態である。第1の回路10については、半導体装置60がパッケージ80に覆われており、レーザーを照射することはできないので、パッケージングの終了後は抵抗値の調整はできない。
【0033】
一方、第2の回路20は、溶断ヒューズ41を備えているが、まだ溶断ヒューズ41は切断されていない状態である。溶断ヒューズ41は、パッケージング後であっても、第2の回路20の溶断ヒューズ41に接続された端子90に、溶断ヒューズ41が溶断されるような電圧を印加することにより、切断して抵抗値の調整を行うことができる。半導体装置60は、パッケージングされたときに応力の影響を受け、パッケージング後の電気的特性が、パッケージング前と比較して変化する場合がある。そのような場合には、パッケージングが終了した後、例えば半導体製造工程の後工程で電気的特性の調整を行うか、または出荷後にユーザ側で電気的特性の調整を行うことが好ましい。よって、第2の回路20には、パッケージングによる応力の影響を受けやすい回路、ユーザ側で更に半導体集積回路装置100を特定用途の回路等に組み込んで使用し、その後に電気的特性の調整を行う必要がある回路、前工程では電気的特性の調整ができない回路等が適用される。このように、溶断ヒューズ41の溶断により、パッケージング後に第2の回路20の抵抗値の調整による電気的特性の調整を行うことができる。
【0034】
図3は、溶断ヒューズ41の溶断方法を示した図である。図3において、溶断ヒューズ41に、溶断ヒューズ41が溶断されるのに十分な大きさの電圧が印加され、溶断ヒューズ41が熱により溶断される状態が示されている。溶断ヒューズ41には、9[V]の電圧が印加され、溶断ヒューズ41の溶断が開始されようとしている。このように、溶断ヒューズ41を用いることにより、溶断ヒューズ41自体は半導体集積回路装置100のパッケージ80内に収容されていても、端子90から溶断ヒューズ30への電圧の印加を行うことができれば、溶断ヒューズ30を溶断でき、第2の回路20の電気的特性の調整が可能である。
【0035】
図4は、溶断ヒューズ41の溶断で発生し易い現象の説明図である。図4(a)は、溶断ヒューズ41が完全に溶断した状態を示した模式図である。図4(a)において、溶断ヒューズ41は、完全に溶断して切断されているので、電気的接続は完全に開放され、抵抗値Rは無限大となる。このような状態では、溶断ヒューズ41による抵抗値の調整は、理想的に行われる。
【0036】
一方、図4(b)は、溶断ヒューズ41が不完全に溶断した状態を示した模式図である。図4(b)に示すように、溶断ヒューズ41の溶断が不完全で、接続が中途半端に残った状態となったときには、例えば元々の溶断前の溶断ヒューズ41の抵抗値RがR=1〔kΩ〕であったときには、R=∞とならずに、R≒1〔MΩ〕のような中途半端な値となる。このような場合には、抵抗値が適切に調整されずに、電気的特性の調整も理想的には行われないことになる。このような溶断不良は、レーザーヒューズ30においては少ないが、溶断ヒューズ41においては、その割合がレーザーヒューズ30よりも増加する。
【0037】
図2に戻り、図4において説明した内容を考慮すると、レーザーヒューズ30の切断は、溶断ヒューズ41よりも高精度であり、切断不良が少ないので、第1の回路10と第2の回路20にどのような回路を適用して配置するかは、このようなヒューズ切断自体の歩留まりとの関係も考慮して決めるようにしてよい。つまり、例えば、パッケージング後の応力の影響が少ない回路については、第2の回路20のように、高精度のレーザーヒューズ30を用いて電気的特性の調整を行うことが好ましい。一方、パッケージング後の応力の影響が大きい回路や、パッケージング後でないと調整が不可能な回路、例えばユーザ側で他の回路に組み込んでからの調整が必要な回路については、第1の回路10のように、溶断ヒューズ41を用いるようにすることが好ましい。
【0038】
このように、本実施例に係る半導体装置60においては、トリミングによる電気的特性の調整のタイミング、歩留まり等を総合的に考慮に入れて、回路の機能や用途に合わせて適切にレーザーヒューズ30又は溶断ヒューズ41を組み合わせて用いることができる。これにより、柔軟で歩留まりの良い半導体装置60及び半導体集積回路装置100とすることができる。
【0039】
なお、溶断ヒューズ41による抵抗値調整は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)でも代用可能であるが、EEPROMは高価であり、半導体装置60及び半導体集積回路装置100の単価が上昇してしまうという問題がある。本実施例に係る半導体装置60及び半導体集積回路装置100によれば、安価で柔軟な回路特性の調整が可能な半導体装置60及び半導体集積回路装置100を提供することができる。
【0040】
図5は、本実施例に係る半導体装置60及び半導体集積回路装置100を、具体的な用途を有する温度補償水晶発振器50の回路に適用した一例を示した回路ブロック図である。図5において、温度補償水晶発振器50は、基準電圧発生器10aと、レーザーヒューズ30aと、温度センサ21と、温度補償回路20aと、電気溶断抵抗調整手段40aと、水晶振動子51と、電圧制御発振器52と、バッファ53とを有する。
【0041】
温度補償発振器50は、周波数安定度の中で最も影響の大きい温度特性を、温度補償回路20aにより、水晶振動子固有の周波数温度特性より安定化させることを目的とした発振器である。図5において、水晶振動子51で発生した振動の周波数は、電圧制御発振器52で制御され、所望の周波数を得ることができるように構成されている。そして、電圧制御発振器80の基準電圧は、基準電圧発生回路10aにより与えられる。また、温度センサ21で検出された周囲温度は、温度補償回路20aに入力され、温度補償回路20aで温度補償電圧が生成されて電圧制御発振器52に印加される。これにより、電圧制御発振器52は、周囲温度変化に対して安定した周波数を発生させることができる。そして、電圧制御発振器52の発振信号は、バッファ53を介して出力される。
【0042】
ここで、基準電圧発生回路10aの電気的特性は、レーザーヒューズ30aをレーザーで切断することにより、抵抗値を変化させて調整できるようになっている。つまり、基準電圧のバラツキが少なくなるように、レーザーヒューズ30aのトリミングが、パッケージング前の半導体ウエハ70の段階で実行され、調整される。
【0043】
一方、温度補償回路20aから電圧制御発振器52に供給される水晶振動子51のバラツキを吸収するための温度補償電圧は、パッケージング後、半導体集積回路装置100の製品として出荷された後、ユーザ側で調整される。つまり、ユーザ側で、半導体集積回路装置100の端子90に電圧が印加され、電気溶断式抵抗調整手段40aが溶断され、温度補償回路20aの電気的特性が調整される。ユーザ側では、半導体集積回路装置100を受け入れてから、独自の基準により直ちに調整を行うことも可能であるし、温度補償水晶発振器50の半導体集積回路装置100を、他の用途の回路に組み込んで、それから電気溶断式抵抗調整手段40aの切断を行うことも可能である。また、電気溶断式抵抗調整手段40aには、溶断ヒューズ41が適用されてもよいし、ザッピングダイオードが適用されてもよいし、他の電気的溶断により抵抗値を調整する手段が適用されてもよい。
【0044】
このように、第1の回路10には基準電圧発生回路10a、第2の回路20には温度補償回路20aを適用することにより、温度補償水晶発振器50の適切な回路特性の調整を行うことができる。
【0045】
以上、図1〜5を用いて説明したように、本実施例に係る半導体装置60及び半導体集積回路装置100によれば、独立した複数の回路を有する半導体装置60及び半導体集積回路装置100について、各回路に種類の異なるヒューズを設け、これにより抵抗値を調整して回路の電気的特性を調整することにより、各回路の用途や機能に応じた適切な調整を行うことができる。
【0046】
次に、図6を用いて、本実施例に係る半導体装置60の電気的特性の調整方法の処理フローについて説明する。図6は、本実施例に係る半導体装置60の電気的特性の調整方法の処理フロー図である。
【0047】
ステップ100では、半導体装置60の前工程の製造工程が実行される。つまり、半導体ウエハ70の所定の処理が実行され、半導体ウエハ70上に複数の半導体装置60が形成される。
【0048】
なお、本実施例に係る半導体装置60は、複数の独立した回路を有しており、少なくとも、第1の回路10と第2の回路20とを有する。第1の回路10には、抵抗値調整用のレーザーヒューズ30が備えられ、第2の回路20には、同様に抵抗値調整用の電気溶断式抵抗値調整手段40が備えられている。本処理フローにおいては、電気式抵抗値調整手段40には、溶断ヒューズ41が適用されている例を挙げて説明するが、ザッピングダイオード等が適用可能であることは、今までと同様である。
【0049】
ステップ110では、半導体ウエハ70に形成された個々の半導体装置60について、プローブテストが実行され、半導体装置60の電気的試験が行われる。プローブテストは、例えば、プローバを用いて、プローブ針を半導体装置60上に形成されたパッドに接触させ、プローブ針から所定の電圧や電流を供給し、出力を測定することにより実行されてよい。
【0050】
ステップ110において、プローブテストの結果が不良であった場合には、ステップ120に進む。一方、プローブテストの結果が良好であった場合には、ステップ140に進む。
【0051】
ステップ120では、レーザーヒューズトリミングが実行される。つまり、第1の回路10に備えられたレーザーヒューズ30が、所望の抵抗値を得るべく選択的に切断されて調整される。これにより、第1の回路10の電圧値や電流値等の電気的特性が適正な範囲となるように調整される。
【0052】
ステップ130では、レーザーヒューズトリミング後の再度のプローブテストが実行される。つまり、レーザーヒューズトリミングにより、半導体装置60の第1の回路10が適正な電気的特性を示すようになったか否かを試験する。
【0053】
ステップ130において、再度のプローブテストで、半導体装置60が良品と判定された場合には、ステップ140に進む。一方、再度のプローブテストで、半導体装置60が不良品と判定された場合には、ステップ190に進む。
【0054】
ステップ190においては、半導体装置60は不良品と判定され、処理フローを終了する。
【0055】
一方、ステップ140では、半導体装置60のパッケージングが行われ、半導体装置60は、パッケージ80に収容される。これにより、半導体装置60が半導体集積回路装置100として製品化される。
【0056】
ステップ150では、半導体集積回路装置100の選別テストが実行される。これは、半導体集積回路装置100のパッケージ80の外部の端子90を用いて実行される。選別テストは、例えば、端子90に、所定の電圧や電流が供給され、その出力を測定することにより行われてよい。
【0057】
ステップ150において、半導体集積回路装置100が良品と判定された場合には、ステップ180に進み、不良品と判定された場合には、ステップ160に進む。
【0058】
ステップ160では、溶断ヒューズ41に選択的に電圧が印加されて溶断され、トリミングが行われて所望の抵抗値を得る調整が行われる。これにより、第2の回路20の電圧値や電流値等の電気的特性の調整が行われる。そして、半導体集積回路装置100が適正に動作するように調整が行われる。
【0059】
ステップ170では、2度目の選別テストが実行される。ステップ160において、溶断ヒューズ41を用いて第2の回路20の抵抗値及び電気的特性の調整が行われたので、再度の選別テストを行い、電気的特性が適正となったか否かを検査する。
【0060】
ステップ170において、選別テストに不合格で、半導体集積回路装置100が不良と判定された場合には、ステップ190に進み、不良品と決定されて処理フローを終了する。一方、2度目の選別テストに合格し、良品と判定された場合には、ステップ180に進む。
【0061】
ステップ180では、良品の結果を受けて、半導体集積回路装置100の出荷が行われ、処理フローを終了する。
【0062】
このように、本実施例に係る半導体装置60の電気的特性の調整方法によれば、半導体装置60が搭載する回路10、20の用途に応じて、適切なトリミング方法を行うことができ、高精度の電気的特性の調整を行うことができる。
【0063】
なお、図6の処理フローにおいては、パッケージング後の、出荷前の後工程で選別テストを行う例を説明したが、ユーザ側で溶断ヒューズ41の調整を行う場合には、ステップ140のパッケージングの後にステップ180をすぐ行って出荷をし、ユーザ側でステップ150〜170を実行するようにしてもよい。または、ステップ150の選別テストにおいて、不合格となった半導体集積回路装置100は不良品として扱い、ステップ190にすぐ移動して不良品との決定を行うようにしてもよい。
【0064】
これにより、溶断ヒューズ41による調整は行われておらず、ユーザ側で自由に溶断ヒューズ41を選択的に溶断して半導体集積回路装置100の電気的特性の調整を行える状態で出荷を行うことができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施例に係る半導体装置60の半導体ウエハ70上の構成を示した図である。
【図2】本実施例に係る半導体装置60がパッケージングされた状態を示した図である。
【図3】溶断ヒューズ41の溶断方法を示した図である。
【図4】溶断ヒューズ41の溶断で発生し易い現象の説明図である。図4(a)は、溶断ヒューズ41が完全に溶断した状態を示した模式図である。図4(b)は、溶断ヒューズ41が不完全に溶断した状態を示した模式図である。
【図5】本実施例に係る半導体装置60及び半導体集積回路装置100を温度補償水晶発振器の回路に適用した一例を示す回路ブロック図である。
【図6】本実施例に係る半導体装置60の電気的特性の調整方法の処理フロー図である。
【符号の説明】
【0067】
10、10a 第1の回路
20、20a 第2の回路
21 温度センサ
30、30a レーザーヒューズ
40、40a 電気溶断式抵抗値調整手段
41 溶断ヒューズ
50 温度補償水晶発振器
51 水晶振動子
52 電圧制御発振器
53 バッファ
60 半導体装置
70 半導体ウエハ
80 パッケージ
90 端子
100 半導体集積回路装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した第1の回路及び第2の回路を有し、前記第1の回路はパッケージング前に電気的特性が調整され、前記第2の回路はパッケージング後に電気的特性が調整される半導体装置であって、
前記第1の回路は、レーザー切断により抵抗値が調整されるレーザーヒューズを有し、
前記第2の回路は、電気的溶断により抵抗値が調整される電気溶断式抵抗調整手段を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記電気溶断式抵抗調整手段は、溶断ヒューズ又はザッピングダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置を有し、
該半導体装置が有するレーザーヒューズが切断済みの状態でパッケージングされたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記半導体集積回路装置は、所定の用途の回路に組み込まれてから、前記半導体装置の電気溶断式抵抗調整手段の電気的溶断が行われることを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
互いに独立した第1の回路及び第2の回路を有し、前記第1の回路は抵抗値調整用のレーザーヒューズを備え、前記第2の回路は抵抗値調整用の電気溶断式抵抗調整手段を備えた半導体装置の電気的特性の調整方法であって、
前記半導体装置がパッケージングされる前に、前記レーザーヒューズを切断して前記第1の回路の電気的特性を調整するステップと、
前記半導体装置がパッケージングされた後に、前記電気溶断式抵抗調整手段に電圧を印加して前記電気溶断式抵抗調整手段を溶断し、前記第2の回路の電気的特性を調整するステップと、を有することを特徴とする半導体装置の電気的特性の調整方法。
【請求項6】
前記電気溶断式抵抗調整手段は、溶断ヒューズ又はザッピングダイオードであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の電気的特性の調整方法。
【請求項7】
前記第2の回路の電気的特性を調整するステップは、パッケージングされた前記半導体装置が所定の用途の回路に組み込まれてから実行されることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置の電気的特性の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−283506(P2009−283506A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131264(P2008−131264)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】