説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】フリップチップ実装された半導体装置において、半導体素子を適切に保護しつつ、半導体装置の反り量を低減する。
【解決手段】半導体素子2と樹脂回路基板4とを、半導体素子2に形成された突起電極3を介してフリップチップ接続し、半導体素子2と樹脂回路基板4間の隙間を第1の樹脂5により封止する。樹脂回路基板4における半導体素子2が実装されている面を、半導体素子2と共に第1の樹脂5とは異なる第2の樹脂6で覆う。さらに、半導体素子2上の第2の樹脂6で覆われている部分に凹部7を設け、凹部7に第1の樹脂5と第2の樹脂6とは異なる第3の樹脂または金属8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが樹脂回路基板にフリップチップにて実装された半導体装置に係り、特に反りを低減する半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板はあらゆる製品に使用されるようになり、また、携帯機器の増加から半導体装置に対して小型化,軽量化が求められている。そのため現状では、BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)において、樹脂製の回路基板が用いられている。
【0003】
従来、半導体素子をフリップチップにより実装した後に、半導体素子を保護する目的ために、半導体素子を覆うようにして回路基板の上面を封止する場合がある。この封止を行うためには、金型を用いて射出成形する方法、あるいはディスペンサを用いて樹脂を塗布する方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、上記のように半導体素子を覆うように封止すると、封止された半導体装置は、常温で凹型に反り、高温時に凸型に反りを発生する。このような大きな反りを持つ半導体装置は、その半導体装置の厚みが厚くなることと同様になり、しかも半導体装置を別の基板に実装する際の接合不良につながる。
【0005】
そこで、本件本出願人は、特願2009−017413として、半導体装置において、フリップチップ接続された半導体素子を覆う樹脂に凹部を設けて、反り量をコントロールする技術に関する発明を出願した。この発明の構成について図7の半導体装置の断面図を参照して説明する。
【0006】
図7において、1は半導体装置、2は半導体素子、3は突起電極、4は樹脂回路基板、5は第1の樹脂、6は第2の樹脂、7は凹部を示す。
【0007】
図7に示す半導体装置1において、樹脂回路基板4における半導体素子2が実装されている第1の面を、半導体素子2と樹脂回路基板4間に設けられる第1の樹脂5とは異なる第2の樹脂6により、半導体素子2と樹脂回路基板4とを含めて覆い、半導体素子2の裏面(図における上面)上の第2の樹脂6により覆われている部分に凹部7を設けている。
【0008】
前記構成によって、半導体素子2を保護しつつ、第2の樹脂6の熱収縮,熱膨張によって半導体装置16の反りを低減し、凹部7の設置数,高,幅によって反り量をコントロールするようにしている。
【0009】
また、前記反りに対応する他の技術として、半導体素子を覆う樹脂をさらに別の樹脂で覆うようにした構成の発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構成について図8を参照して説明する。
【0010】
図8(a)は半導体装置の断面図、図8(b)は図8(a)の半導体装置の底面図であって、1は半導体装置、2は半導体素子、3は突起電極、4は樹脂回路基板、18は第1の樹脂、19は第2の樹脂、20は第3の樹脂を示す。
【0011】
図8に示す半導体装置1において、半導体素子2はフリップチップ方法にて樹脂回路基板4に接合される。半導体素子2と樹脂回路基板4間には第1の樹脂18が設けられ、その後、第1の樹脂18とは異なる第2の樹脂19により半導体素子2を覆い、第1の樹脂18と第2の樹脂19とは異なる第3の樹脂20により第2の樹脂19を覆う。さらに第3の樹脂20は半導体素子2の辺の中央付近よりも角部に向けて長く配置される構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−270454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本件出願人による特願2009−017413の発明では、半導体素子2を覆う第2の樹脂6に凹部7を設けると、半導体装置1の反り量は低減するものの、半導体素子2を保護する目的の第2の樹脂6が少なくなることにより、半導体装置1自体の強度が低下する。また、凹部7の溝の幅,深さによっては、半導体装置1の曲げに対して応力が凹部7の溝に集中し、半導体装置1の強度不足あるいはフリップチップ接合部の接合不良が発生するという課題を有する。
【0014】
また、特許文献1に記載の発明では、半導体素子2を覆う第2の樹脂6とは異なる第3の樹脂8を、半導体素子2を覆う第2の樹脂6を覆うように設ける。このため樹脂をディスペンスにより塗布すると、塗布される樹脂量,樹脂の濡れ性を精密にコントロールすることが困難である。このため、塗布された第3の樹脂8の高さや幅の形状が不安定になり、結果として、半導体装置1の反り量にばらつきが発生するという課題を有していた。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、半導体装置の強度低下を防ぐことにより保護を図ることができ、しかも反りをコントロールしながら反りの低減化を図ることができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置は、突起電極が形成された半導体素子と、前記半導体素子が前記突起電極を介して実装された回路基板と、前記半導体素子と前記回路基板間の隙間を封止する第1の樹脂と、前記半導体素子の実装面と対向する上面を覆い、かつ前記半導体素子の上部に凹部が形成される第2の樹脂とを備え、第3の樹脂または金属が前記凹部に設けられることを特徴とする。
【0017】
また、前記凹部の高さが、前記第2の樹脂で覆われる部分より低く、かつ前記半導体素子の裏面より高いことを特徴とする。
【0018】
また、前記凹部が少なくとも1本の直線状の溝によって形成され、前記直線状の溝の幅が前記半導体素子の短辺の幅より小さいことを特徴とする。
【0019】
また、複数本の前記溝が、前記半導体素子の中心上で交差することを特徴とする。
【0020】
また、前記第2の樹脂の熱膨張係数が、前記回路基板の熱膨張係数よりも大きく、かつ前記第1の樹脂の熱膨張係数より小さく、前記第3の樹脂または金属の熱膨張係数が前記第2の樹脂の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする。
【0021】
また、前記第2の樹脂のガラス転移温度が前記回路基板のガラス転移温度よりも低く、前記第3の樹脂または金属のガラス転移温度が前記第2の樹脂のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板の一主面に第1の樹脂を塗布する工程と、前記第1の樹脂を介して前記回路基板の一主面上に複数の半導体素子を実装する工程と、実装した前記複数の半導体素子を前記第2の樹脂で封止する工程と、前記第2の樹脂における前記半導体素子の上部に凹部を形成する工程と、前記凹部に第3の樹脂または金属を塗布する工程と、前記半導体素子が少なくとも1個含まれるように前記基板を分割して、それぞれを半導体装置とする工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、半導体装置の強度低下を防ぎながら半導体素子を保護しつつ、半導体装置の反り量を安定してコントロールすることができ、半導体装置を別の基板に実装する際の接合不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1における半導体装置の斜視図、図1(b)は図1(a)におけるA−A’断面図、図1(c)は実施の形態1の変形例の図1(a)におけるA−A’断面図
【図2】本発明の実施の形態1における半導体装置の各部の高さを説明するための断面図
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態2における半導体装置の斜視図、図3(b)は図3(a)におけるA−A’断面図
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態3における半導体装置の斜視図、図4(b)は図4(a)におけるA−A’断面図
【図5】本発明の実施の形態における製造工程に係るフローチャート
【図6】本発明の実施の形態における各製造工程の半導体装置の状態を示す斜視図
【図7】従来の半導体装置の一例の断面図
【図8】図8(a)は従来の半導体装置の断面図、図8(b)は図8(a)の半導体装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は本発明の実施の形態1における半導体装置の構成図であって、図1(a)は本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す斜視図である。図1(b)と図1(c)は図1(a)のA−A’線断面図であって、図1(b)にはA−A’線上における半導体素子裏面が露出しない状態において他の樹脂で覆う場合の構成例を示す。図1(c)にはA−A’線上における半導体素子裏面が露出する状態において他の樹脂で覆う場合の構成例を示す。
【0027】
図1において、1は半導体装置、2は半導体素子、3は突起電極、4は樹脂回路基板、5は第1の樹脂、6は第2の樹脂、7は凹部、8は第3の樹脂(または金属)を示す。
【0028】
図1に示す半導体装置1において、半導体素子2は、その電極上に突起電極3を形成し、樹脂回路基板4の基板電極にフリップチップにて接合されている。半導体素子2と樹脂回路基板4間には第1の樹脂5を設け、この第1の樹脂5によって半導体素子2と樹脂回路基板4との接合を維持している。
【0029】
第1樹脂5は、本例では熱硬化性エポキシ樹脂であり、その使用形態としてはフィルム状でも液状の樹脂でもよい。ただし、第1樹脂5がフィルム状の樹脂の場合には、フリップチップ実装する前に樹脂回路基板4に貼り付けられ、熱圧着することにより半導体素子2と樹脂回路基板4間に充填されるようにする。第1樹脂5が液状の場合には、フリップチップ実装する前に樹脂回路基板4に塗布して熱圧着しても、また、フリップチップ実装した後に半導体素子2の側面から流し込み熱硬化させてもよい。第1の樹脂5は、熱圧着により熱硬化して収縮することによって、半導体素子2と樹脂回路基板4との接合を維持させる。
【0030】
さらに、半導体素子2を覆うように、樹脂回路基板4における半導体素子2が搭載される面を熱硬化性エポキシ樹脂からなる第2の樹脂6で封止し、半導体素子2の裏面(図では上面部)上の第2の樹脂6に凹部7を形成する。第2の樹脂6は、金型を用いて射出成形することにより成形する一般的なトランスファーモールド手法を用いて形成することが可能であって、熱硬化する。
【0031】
凹部7は、図1(b)に示すように、半導体素子2の裏面を露出させないように形成しても、図1(c)に示すように、半導体素子2の裏面を露出させるように形成してもよい。
【0032】
凹部7は、樹脂回路基板4を分割する際に用いられるダイシング装置を用いて形成することができるため、ダイシングの刃の幅と、ダイシング回数や切り込み深さとにより、凹部7の数,高さ,幅を容易にコントロールして形成することが可能である。
【0033】
具体的には、10ミリメートル角の半導体素子2を、15ミリメートル角の樹脂回路基板4の中心に実装し、第2の樹脂6をトランスファーモールドして、凹部7を、半導体素子2の中心で交わるように、ダイシング装置を用いて8ミリメートルの幅、かつ500マイクロメートルの高さで形成した。
【0034】
そして本実施の形態では、凹部7に熱硬化性エポキシ樹脂である第3の樹脂8を用いてディスペンスし、第2の樹脂6を43パーセント、当該第3の樹脂8に置き換えた。第3の樹脂8の熱膨張係数を13ppmとして、第2の樹脂6の熱膨張係数25ppmよりも小さいものとした。なお、第3の樹脂8の弾性率は18GPa、第2の樹脂6の弾性率は8GPaとした。第3の樹脂8の熱膨張係数を第2の樹脂6の熱膨張係数よりも小さくするために、第3の樹脂8の弾性率が第2の樹脂6の弾性率よりも大きくなっているが、弾性率の増加ができるだけ少なくなる樹脂を選択した。熱硬化性エポキシ樹脂である第2の樹脂6と第3の樹脂8には、主剤に加えて硬化剤と無機充填剤が含まれる。硬化剤については、フェノール系の硬化剤を一例として用いた。
【0035】
この結果、30℃から240℃までの加熱環境下において、半導体装置1の反り量が低減することを観察した。
【0036】
ここで、加熱環境下では、凹部7および第3の樹脂8を形成しない半導体装置の場合には、第2の樹脂6の熱膨張によって凸型に反りを発生する。しかし、本実施の形態では、凹部7および第3の樹脂8を形成し、第3の樹脂8の熱膨張係数を第2の樹脂6の熱膨張係数より小さい樹脂を用いたことにより、加熱環境下の凹部7の第2の樹脂6と第3の樹脂8との界面において、第2の樹脂6には収縮する方向に力が作用する。よって、その結果、加熱環境下の半導体装置1の凸型の反りは低減した。
【0037】
また、室温においては、凹部7および第3の樹脂8を形成しない半導体装置の場合には、第2の樹脂6の熱収縮によって凹型に反りを発生する。しかし、本実施の形態では、第3の樹脂8の熱膨張係数が第2の樹脂6の熱膨張係数よりも小さいために、第3の樹脂8の硬化温度から冷却される過程において、第2の樹脂6の収縮の方が第3の樹脂8よりも大きく、凹部7の第2の樹脂6と第3の樹脂8の界面において、第2の樹脂6は膨張する方向に力が作用する。よって、その結果、室温での半導体装置1における凹型の反りは低減した。
【0038】
半導体素子2の大きさ,厚み、あるいは樹脂回路基板4の大きさ,厚みが変化すれば、半導体装置1の反り量は異なる。本実施の形態では、第2の樹脂6を第3の樹脂(または金属)8に置き換える割合を、凹部7の数,高さ,幅によって自由に変化させることが可能であり、このため半導体装置1の反り量の低減化が可能である。
【0039】
なお、第3の樹脂(または金属)8として、樹脂を使用する場合には熱硬化性エポキシ樹脂が望ましく、金属を使用する場合にはステンレス(SUS)が望ましい。
【0040】
通常、半導体素子2を、第1樹脂5を用いて樹脂回路基板4にフリップチップ実装し、第2の樹脂6を設けない場合、半導体素子2と樹脂回路基板4と第1の樹脂5との各熱膨張係数の差より、半導体装置1は、常温では凸型に、また高温時には凹型に反りを発生する。
【0041】
一方、半導体素子2を保護するために第2の樹脂6を設けることにより、半導体装置は、第2の樹脂6が常温では収縮して凹型に、また高温では膨張して凸型に反りを発生するようになる。
【0042】
ここで、例えば第3の樹脂(または金属)8の熱膨張係数を第2の樹脂6の熱膨張係数より小さくすると、樹脂回路基板4上では半導体素子2を覆う部分の熱膨張係数が見かけ上、小さくなる。このため常温における収縮および高温における膨張が抑えられ、反り量が常温時、高温時ともに低減する。
【0043】
凹部7および第3の樹脂(または金属)8を設けない場合、反り量を低減するためには第2の樹脂6に求められる熱膨張係数は1〜10ppm程度になり、第2の樹脂6の粘度が高くなる。このため、金型を用いて射出成形する一般的なトランスファーモールド手法を用いて第2の樹脂6を形成することが困難になる。
【0044】
また、凹部7に第3の樹脂(または金属)8を設けない場合、凹部7において半導体装置1の曲げに対し応力を集中させることになる。このため本実施の形態のように、半導体装置1の凹部7に第3の樹脂(または金属)8を設けることにより応力集中を回避することができ、半導体装置1の強度が向上する。
【0045】
さらに、半導体素子2は駆動時に発熱するため、凹部7に第3の樹脂(または金属)8を設けることにより、半導体装置1の上面における選択された部位から放熱する作用を期待することができる。なお、凹部7に配置する第3の樹脂(または金属)8を、樹脂にすることにより、これを凹部7の形状に沿って容易に設けることが可能になる。
【0046】
また、第2の樹脂6に凹部7を形成して第3の樹脂(または金属)8を設けるために、半導体装置1の厚みを厚くする必要がなく、半導体装置1の低背化が可能である。
【0047】
本実施の形態1において、図2に示すように、凹部7の高さT1は、0mm以上かつ半導体素子2の裏面から第2の樹脂6の高さT2よりも低く形成し、半導体素子2の裏面を露出しない凹部7を形成する。半導体素子2の裏面を露出させないことにより、凹部7を形成して該凹部7に第3の樹脂(または金属)8を配置するまでの工程間において、半導体素子2を保護することが可能である。無論、既述したように、半導体装置1の放熱作用の効果も期待できる。
【0048】
図3は本発明の実施の形態2における半導体装置の構成図であって、図3(a)は本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)のA−A’線断面図である。なお、以下の説明において、図1の実施の形態1にて説明した構成要素と同じ構成要素については同じ符号を用い、詳しい説明を省略する。
【0049】
半導体素子2の裏面の上に設けられている第2樹脂6の凹部7の形成としては各種の構造が考えられる。実施の形態2では、半導体素子2の裏面の上に設けられている第2樹脂6の凹部7は、一方向にのみ延在する1本の直線状をなす溝からなるものであって、実施の形態1と同様に、凹部7に第3の樹脂(または金属)8が設けられている。
【0050】
このように、半導体装置1の樹脂回路基板4の配線パターンや残銅率による反りの方向、当該半導体装置1が実装される他の基板の反り量を考慮して、半導体装置1の反りの方向性と反り量とをコントロールするために、凹部7を少なくても1本の直線的な溝として形成し、凹部7に第3の樹脂(または金属)8を配置する。
【0051】
方向性のある反り低減をする場合、反りを低減したい方向と平行する方向に凹部7の溝を形成し、第3の樹脂(または金属)8を設けるようにする。
【0052】
また、凹部7の溝の幅は、大きくても半導体素子2の短辺の長さ以下とする。反りを低減するためには、凹部7の有無にかかわらず、半導体素子2の裏面上に第2の樹脂6が配置されていることが必要である。
【0053】
無論、凹部7溝の幅を制御することにより、2本以上、例えば4本,8本でもよく、その場合、各凹部7の溝内に第3の樹脂(または金属)8を配置する。凹部7の溝の本数を増やすことによって、半導体装置1内の小さい領域ごとに反り量を低減することができ、半導体装置1全体の反り量を低減することが可能になる。
【0054】
前記実施の形態1では、図1に示すように、半導体装置1に設けられる凹部7の溝を2本以上(図1では2本を示す)とし、各溝が半導体素子2の中心を通り、半導体素子2の各辺に対して鉛直方向、かつ互いに直交する方向に延在するようにしている。
【0055】
図4は本発明の実施の形態3における半導体装置の構成図であって、図4(a)は本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を示す斜視図であり、図4(b)は図4(a)のA−A’線断面図である。
【0056】
実施の形態3では、図4に示すように、半導体装置1に設けられる凹部7の溝を2本以上(図4では2本を示す)とし、各溝が半導体素子2の中心、および半導体素子2の略各角部を通り、かつ互いに直交する方向に延在するようにしている。
【0057】
通常、半導体装置1の反りは、凹部7を形成せずに第2の樹脂6のみの場合、半導体素子2の中心が最も高い凸型、あるいは半導体素子2の中心が最も低い凹型の形状に発生する。
【0058】
そのために、上記した実施の形態のように複数本の凹部7の溝を形成し、該凹部7内に第3の樹脂(または金属)8を設ける構成の場合、複数本の溝は、半導体素子2の中心を通って互いに直交する構造にすることが望ましい。既述したように、凹部7の溝幅を制御することにより、複数本の凹部7の溝を形成してもよく、その場合、各凹部7の溝に第3の樹脂(または金属)8を設けるようにする。凹部7の溝の本数を増やすことにより、半導体装置1内の小さい領域ごとに反り量を低減することができ、半導体装置1全体の反り量を低減することが可能になる。
【0059】
なお、本実施の形態において、第2の樹脂6の熱膨張係数は、樹脂回路基板4の熱膨張係数よりも大きく、かつ第1の樹脂5の熱膨張係数より小さいものとし、さらに第3の樹脂(または金属)8が樹脂の場合、第3の樹脂8の熱膨張係数が第2の樹脂6の熱膨張係数よりも小さいものとする。通常、第1の樹脂5は熱硬化性のエポキシ樹脂と、熱膨張係数を下げるために30〜60重量%の無機質充填材料を含み、30〜50ppmの熱膨張係数を有している。
【0060】
また、樹脂回路基板4は、通常、ガラス繊維などが編みこまれていることから、9〜20ppmの熱膨張係数を有している。第2の樹脂6は、反りを低減効果を発揮させるために、樹脂回路基板4の熱膨張係数より大きくする必要がある。
【0061】
さらに、凹部7を設けずに第2の樹脂のみで半導体素子2を覆う場合よりも反りを低減するためには、第3の樹脂(または金属)8は第2の樹脂6よりも熱膨張係数を小さくする必要がある。
【0062】
半導体素子2と樹脂回路基板4との接合は、第1の樹脂5で維持されていることから、第2の樹脂6の熱膨張係数は、第1の樹脂5の熱膨張係数よりも小さい必要がある。第1の樹脂5より熱膨張係数が大きい第2の樹脂6を用いると、第1の樹脂5の熱膨張に加えて、さらに第2の樹脂6の熱膨張により、接合部に存在する突起電極3に加わる応力は大きくなり、温度サイクルなどの負荷が半導体装置1に加わった場合、接合を維持することができなくなる。
【0063】
このため、樹脂回路基板4と第1の樹脂5との組み合わせにもよるが、第2の樹脂6の熱膨張係数は20〜45ppm、第3の樹脂(または金属)8は1〜40ppm程度であり、熱膨張係数は第3の樹脂(または金属)<第2の樹脂<第1の樹脂とすることが望ましい。第3の樹脂(または金属)8は、必ずしも樹脂回路基板4の熱膨張係数より大きい必要はない。
【0064】
また、金型を用いて射出成形する一般的なトランスファーモールド法では、金型が高価であるために、半導体装置1の半導体素子2のサイズや厚み、あるいは樹脂回路基板4の配線パターンや厚みなどを変更した場合に、同様の反り低減効果を得るために第2の樹脂6の厚みを変更することはコストがかかる。
【0065】
また、ディスペンス法などにより第2の樹脂6を設ける方法は、第2の樹脂6の厚みのばらつきが大きく、その結果、半導体装置1の反り量がばらつくことになる。そこで、第2の樹脂6の熱膨張係数を樹脂回路基板4の熱膨張係数以上、かつ第1の樹脂5の熱膨張係数以下にし、さらに凹部7を設けることによって定量的に反りをコントロールすることが必要になる。
【0066】
凹部7の寸法は、具体的な一例として、10ミリメートル角の半導体素子2を実装している場合、凹部7を2本の直線状の溝とすると、8ミリメートル程度の幅、50マイクロメートル程度の高さで形成すればよい。その後、第3の樹脂(または金属)8が樹脂の場合、第3の樹脂8を設ける際に凹部7が所定の寸法に加工されているために、ディスペンスなどで第3の樹脂8を配置しても、反りのばらつきは大きくない。
【0067】
しかし、第3の樹脂(または金属)8が金属の場合には、所定の寸法に加工された凹部7に、所定の寸法に加工された金属8を配置することになるため、反りのばらつきは大きくならない。
【0068】
また、第2の樹脂6のガラス転移温度は、樹脂回路基板4のガラス転移温度より低いことが望ましい。さらに、第3の樹脂(または金属)8は、第2の樹脂6よりも低いガラス転移温度であることが望ましい。通常、樹脂回路基板4は150〜220℃のガラス転移温度である。また、第2の樹脂のガラス転移温度は120〜190℃であり、第3の樹脂は100〜170℃のガラス転移温度である。
【0069】
樹脂は、ガラス転移温度以上の温度になると、その弾性率は急激に低くなる。弾性率が低くなれば、反りを発生するための応力は小さくなり、反りは低減される。このため第2の樹脂6の一部が、第3の樹脂8に置き換わることにより、特に、高温時の樹脂回路基板4上で半導体素子2を覆う部分の弾性率が見かけ上小さくなり、反りを発生する応力が抑えられ、反り量が低減される。第3の樹脂8のみの弾性率が低くなることにより、半導体装置1の反りを部分的に緩和する効果もある。
【0070】
無論、既述したように、金型を用いて射出成形することにより第2の樹脂6を成形する一般的なトランスファーモールド手法や、ディスペンスなどで第2の樹脂6を設ける方法と比べて、凹部7を設けて、所定の寸法に形成された凹部7に第3の樹脂(または金属)8を配置することが、定量的に反りをコントロールするために有効であることは言うまでもない。
【0071】
次に、本発明における半導体装置の製造方法について説明する。本発明における半導体装置は、フリップチップ実装工程、封止樹脂形成工程、封止樹脂凹部形成工程、凹部樹脂塗布工程、半導体装置切断工程などを経て製造される。樹脂回路基板は、半導体装置が多数個取れるように形成されているものとする。
【0072】
図5は本発明の半導体装置の製造方法に係る実施の形態の製造工程のフローチャート、図6は本実施の形態における各製造工程の半導体装置の状態を示す斜視図である。
【0073】
ステップ(S1)において、図6(a)に示すフリップチップ実装が行われ、実施の形態1にて説明したように、半導体素子2が樹脂回路基板4に接合される。接合のために半導体素子2と樹脂回路基板4間の隙間に熱硬化性エポキシ樹脂である第1の樹脂5が設けられて、フリップチップ実装された樹脂回路基板9となる。
【0074】
次に、ステップ(S2)において、図6(b)に示す封止樹脂形成が行われ、フリップチップ接合された樹脂回路基板9上に第2の樹脂6を形成する。本実施の形態では、金型を用いて射出成形する一般的なトランスファーモールド手法を用いて、第2の樹脂6を熱硬化により成形して、第2の樹脂6が形成された樹脂回路基板10となる。
【0075】
その後、ステップ(S3)において、図6(c)に示す封止樹脂凹部形成が行われ、第2の樹脂6が形成された樹脂回路基板10に凹部7を形成する。本実施の形態では、第2の樹脂6が形成された樹脂回路基板10に、回転ブレード11を移動させることによって凹部7を形成して樹脂回路基板12を得る。例えば、凹部7を形成するために、回転ブレード11を複数回往復移動する。
【0076】
次に、ステップ(S4)において、図6(d)に示す凹部樹脂塗布が行われ、本実施の形態では、ディスペンサ13によって凹部7に第3の樹脂8を供給する。あらかじめ凹部7が形成されているために、その凹部7に容易に第3の樹脂8を流し込むことが可能である。その後、第3の樹脂8が熱硬化して、第3の樹脂8が設けられた樹脂回路基板14となる。
【0077】
ステップ(S5)において、図6(e)に示す半導体装置切断が行われ、樹脂回路基板14を分割する。本実施の形態では、回転ブレード15により樹脂回路基板14を分割し、図6(f)に示す個々の半導体装置1が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、樹脂回路基板に半導体素子がフリップチップ実装される小型軽量の半導体装置およびその製造方法に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 半導体装置
2 半導体素子
3 突起電極
4 樹脂回路基板
5 第1の樹脂
6 第2の樹脂
7 凹部
8 第3の樹脂または金属
9 フリップチップ実装された樹脂回路基板
10 第2の樹脂により封止樹脂が形成された樹脂回路基板
11,15 回転ブレード
12 封止樹脂に凹部を形成した樹脂回路基板
13 ディスペンサ
14 第3の樹脂により封止樹脂が形成された樹脂回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起電極が形成された半導体素子と、前記半導体素子が前記突起電極を介して実装された回路基板と、前記半導体素子と前記回路基板間の隙間を封止する第1の樹脂と、前記半導体素子の実装面と対向する上面を覆い、かつ前記半導体素子の上部に凹部が形成される第2の樹脂とを備え、第3の樹脂または金属が前記凹部に設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記凹部の高さが、前記第2の樹脂で覆われる部分より低く、かつ前記半導体素子の裏面より高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹部が少なくとも1本の直線状の溝によって形成され、前記直線状の溝の幅が前記半導体素子の短辺の幅より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数本の前記溝が、前記半導体素子の中心上で交差することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の樹脂の熱膨張係数が、前記回路基板の熱膨張係数よりも大きく、かつ前記第1の樹脂の熱膨張係数より小さく、前記第3の樹脂または金属の熱膨張係数が前記第2の樹脂の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の樹脂のガラス転移温度が前記回路基板のガラス転移温度よりも低く、前記第3の樹脂または金属のガラス転移温度が前記第2の樹脂のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
基板の一主面に第1の樹脂を塗布する工程と、前記第1の樹脂を介して前記回路基板の一主面上に複数の半導体素子を実装する工程と、実装した前記複数の半導体素子を前記第2の樹脂で封止する工程と、前記第2の樹脂における前記半導体素子の上部に凹部を形成する工程と、前記凹部に第3の樹脂または金属を塗布する工程と、前記半導体素子が少なくとも1個含まれるように前記基板を分割して、それぞれを半導体装置とする工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243624(P2011−243624A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112023(P2010−112023)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】