説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】シード層から導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層で形成することで、配線信頼性の向上、微細化によるRC遅延の問題を解決することを可能とする。
【解決手段】基板11上の絶縁膜(層間絶縁膜21)に形成された凹部22の内面にバリア層25を介してシード層26を形成する工程と、シード層26を介して凹部22を導電部(銅)27で埋め込む工程と、層間絶縁膜21上に形成された銅およびシード層26を除去して、凹部22内に銅を主材料とする導電部27を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法であって、シード層26は導電部27表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料で形成され、凹部22内に銅を主材料とする導電部27を形成した後に熱処理を行って導電部27表面に酸化物を形成する金属を含む酸化物層31を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に用いる銅配線上のバリア層の形成が容易な半導体装置の製造方法および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の微細化、高集積化に伴い銅(Cu)配線における銅のマイグレーションによる信頼性の低下の問題が深刻になる。電流印加時に銅配線を形成する金属原子が電子の流れに励起されて移動し、銅配線が断線するエレクトロマイグレーションや熱ストレスによる金属原子の移動により銅配線が断線するストレスマイグレーションもしくはSiV(Stress Induced Voiding)がその主な信頼性問題である。
【0003】
その主たる原因の一つとして銅とその隣接するバリア絶縁膜との密着性の弱さがある。そのため密着性を改善することはこれらの信頼性への耐性を向上させることとなり非常に重要な要素である。
【0004】
電流印加時や熱ストレス印加時には電子の流れとともに銅原子やそれと対として空孔の移動が行われるが、密着性の弱いその界面が空孔の移動経路となり、結果として空隙が生成されることにより配線が断線する。
【0005】
この銅配線とバリア絶縁膜間の密着性の改善方法として、すでに幾つかの手段が報告されている。例えば、コバルトタングステンリン(CoWP)やコバルトタングステンホウ素(CoWB)といったバリア性を有した金属化合物を選択的に銅配線上に形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、銅配線上にバリア性を有する金属膜を選択的に形成する技術では銅配線上にのみに、また銅配線上に一様に形成する技術の確立が未達成である。そのため、信頼性の改善への課題が依然として残っている。
【0006】
また、銅配線の表面上を銅以外の不純物を有する銅合金を形成する方法がある。銅合金は、銅以外の不純物が銅の結晶粒界もしくは粒内に固溶もしくは堆積することにより、銅原子の移動、言い換えれば空孔の移動を抑制する性質がある。例えば銅表面上に銅アルミニウム(Cu−Al)合金を形成する技術(例えば、特許文献2参照。)や、銅シリコン(Cu−Si)合金を形成する技術(例えば、特許文献3参照。)が報告されている。しかしながら、これらの技術では金属と絶縁膜との界面の弱さという観点からは完全な解決策とはなっていない。
【0007】
これまで信頼性の向上策として、銅配線と積層する銅配線間のバリア絶縁膜との密着性の向上のために銅配線上での銅合金の形成事例を示したが、別の発想としてバリア絶縁膜の成膜に代わるバリア性のあるものを成膜するという方法も成り立つ。従来のバリア絶縁膜は窒化シリコン(SiN)や誘電率を下げるために炭素原子を含んだ窒化炭化シリコン(SiCN)を用いている。これらの膜は銅との密着性が弱い。
【0008】
そこで銅配線の表面上に選択的にバリア性のある物質を成膜することにより、バリア絶縁膜を成膜せず直接上層の銅配線の層間絶縁膜を成膜する技術も考えられる。この技術を用いれば、バリア絶縁膜分の容量低減が実現できる。しかしながら、これまでこの性質を満たす技術は考案されていない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−118111号公報
【特許文献2】特開2005−50859号公報
【特許文献3】特開平9−321045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、電極の主材料である銅との密着性が確保されて誘電率の低いバリア膜を形成することができない点である。
【0011】
本発明は、導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料でシード層を形成し、凹部内に銅を主材料とする導電部を形成した後に熱処理を行って、導電部表面に酸化物を形成する金属を含む酸化物層を形成して、電極の主材料である銅との密着性が確保されて誘電率の低いバリア膜を形成することを可能にすることを課題とする。
【0012】
本発明はCu合金を用いてCu配線上にのみ選択的に絶縁膜を形成し、バリア絶縁膜の成膜を必ずとも必要としないCu配線を作成する上でのプロセスシーケンスを提案するものであり、配線全体に渡って高いCuのマイグレーション耐性をもつ高信頼性の配線を有した半導体装置の製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法は、基板上の絶縁膜に形成された凹部の内面にバリア層を介してシード層を形成する工程と、前記シード層を介して前記凹部を銅で埋め込む工程と、前記絶縁膜上に形成された前記銅およびシード層を除去して、前記凹部内に銅を主材料とする導電部を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法であって、前記シード層は前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料で形成され、前記凹部内に銅を主材料とする導電部を形成した後に熱処理を行って前記導電部表面に前記酸化物を形成する金属を含む酸化物層を形成することを特徴とする。
【0014】
上記半導体装置の製造方法では、導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料でシード層を形成し、凹部内に銅を主材料とする導電部を形成した後に熱処理を行って導電部表面に酸化物を形成する金属を含む酸化物層を形成することから、この酸化物層が密着層として機能し、その表面に形成される銅の拡散を防止するバリア性を有する酸化膜を形成した際の密着性が高められる。また、上記酸化物を形成する金属を含む酸化物層をバリア膜として用いることができ、バリア膜の形成を省略することができる。
【0015】
本発明の半導体装置は、基板上の絶縁膜に設けられた凹部の内面にバリア層を介して形成されたシード層と、前記シード層を介して前記凹部内に形成された銅を主材料とする導電部とを備えた半導体装置であって、前記導電部表面は前記シード層から前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層からなることを特徴とする。
【0016】
上記半導体装置では、導電部表面はシード層から導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層からなることから、この酸化物層が密着層として機能し、その表面に形成される銅の拡散を防止するとともに酸素の侵入を防止するというバリア性を有する酸化膜の密着性が高められる。また、上記酸化物を形成する金属を含む酸化物層がバリア膜として機能することができ、通常に形成されるバリア膜を省略することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、導電部表面に形成される酸化物を形成する金属を含む酸化物層によって、例えばその表面に形成されるバリア性を有する酸化膜の密着性を高めることができる。これによって、配線の信頼性の向上に寄与できる。また、上記酸化物を形成する金属を含む酸化物層をバリア膜として用いることができるので、バリア膜の形成を省略することができ、工程数の削減という効果が得られる。それとともに、バリア膜を形成しないことにより、配線の容量を低減することができるので、微細化により深刻化するRC遅延の問題を解決することができるという利点がある。
【0018】
本発明の半導体装置は、導電部表面はシード層から導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層からなるため、この酸化物層表面に形成される、例えば銅の拡散を防止するとともに酸素の侵入を防止するというバリア性を有する酸化膜の密着性を高めることができる。これによって、配線の信頼性の向上に寄与できる。また、上記酸化物を形成する金属を含む酸化物層はバリア膜として用いることができるので、通常のバリア膜を省略することができる。それとともに、バリア膜を形成しないことにより、配線の容量を低減することができるので、微細化により深刻化するRC遅延の問題を解決することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
配線信頼性の向上、微細化によるRC遅延の問題を解決するという目的を、配線や接続部が形成される凹部内に埋め込まれて形成される導電部表面を、シード層から導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層で形成することで実現した。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態の第1例を、図1の製造工程断面図によって説明する。
【0021】
図1(1)に示すように、基板(例えば半導体基板)11上に形成された層間絶縁膜21に凹部22を形成する。この凹部22は、例えば配線溝23とその配線溝23の底部に形成された接続孔24とからなる。上記配線溝23は、その内部に形成される配線の最小線幅が、例えば55nmから120nmの間の幅となるように形成される。したがって、上記接続孔24も上記配線溝23に合わせた寸法に形成される。
【0022】
次に、図1(2)に示すように、上記凹部22の各内面にバリアメタル層25を形成する。このバリアメタル層25は、例えば、タンタル(Ta)単層膜、タンタル(Ta)と窒化タンタル(TaN)との積層膜、チタン(Ti)単層膜、もしくはチタン(Ti)と窒化チタン(TiN)との積層膜からなる。上記バリアメタル層25は、例えばスパッタリング法もしくは化学的気相成長法(CVD法)によって形成され、その膜厚は、例えば5nmから15nmの厚さに形成される。
【0023】
次に、図1(3)に示すように、上記バリアメタル層25表面にシード層26を形成する。このシード層26は、例えば、上記凹部22を埋め込んで形成される導電部(図示せず)の表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料で形成される。例えば、上記酸化物を形成する金属は、銅(Cu)中を銅よりも拡散係数が大きく、銅よりも酸化され易い特性を有する金属からなり、そのような金属の一例としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、インジウム(In)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)がある。上記シード層26は、これらの金属のうち、少なくとも1種もしくは複数種を不純物元素としてもつ銅(Cu)合金で形成され、その形成方法は、例えばスパッタリング法により、例えば45nm〜60nmの厚さに成膜される。
【0024】
上記各酸化物を形成する金属は、酸化膜の生成自由エネルギーが銅(Cu)よりも低く、かつCu中の拡散速度がCuよりも高いことが分かっている。そのため熱処理により拡散と酸化が効率よく行われることが可能である(D.B.Butrymowicz: Diffusion Rate Data and Mass Transport Phenomena for Copper、J.F.Elliott、M.Gleiser:Thermochemistry for Steelmaking, Vol.1:1960参照)。
【0025】
上記酸化物を形成する金属の含有率に関して、以下に一例を説明する。銅表面上への酸化物を例えば5nm程度の厚さになるように行うためには、上記酸化物を形成する金属は酸素原子の量を考えるとその半分程度の原子数が必要である。その原子数をシード層26として成膜したCu合金により供給するためには、それと同等量を含有していなければならない。例えばシード層26を50nm成膜している場合、上記酸化物を形成する金属は少なくとも0.05atm%含有していることが必要であると見積もられる。
【0026】
ただし、配線溝23や接続孔24の幅およびアスペクト比が縮小化してくると、前述のシード層26の膜厚想定値は50nmからさらに薄膜化していくことが必至である。このため、Cu合金中の酸化物を形成する金属の含有率は前述の0.05atm%より多く含有することが必要であることが予想される。逆に酸化物を形成する金属の含有率が多すぎると不必要に膜厚の厚い酸化膜層が導電部上に形成されてしまうため導電率に影響を及ぼすことが懸念される。そのため約5nmの酸化膜を形成することを想定し上限を例えば5.0atm%と規定する。
【0027】
次に、図1(4)に示すように、例えばめっき法により、凹部22を埋め込むとともに、上記層間絶縁膜21上に、導電部27を形成する。この導電部27は、例えば銅(Cu)もしくは銅(Cu)を主成分とする金属で形成され、例えば600nm〜1.20μmの厚さに形成される。
【0028】
その後、上記層間絶縁膜21上の余剰な導電部27およびシード層26、バリアメタル層25を、例えば化学的機械研磨(CMP)法によって除去し、図1(5)に示すように、上記凹部22内部にバリアメタル層25、シード層26を介して導電部27からなる接続プラグ28、配線29を形成する。
【0029】
次に、図1(6)に示すように、上記基板11を熱処理して、上記シード層26に含まれている導電部の表面に拡散して酸化物を形成する金属を、凹部22内に埋め込まれた上記導電部27表面に拡散させて、酸化物層31を形成する。上記熱処理は、例えば250℃〜400℃で、例えば30分〜180分行うことが好ましい。また、上記凹部22の内面にはバリア層25が形成されていることから、シード層26から導電部27内を拡散する酸化物を形成する金属は凹部22の側壁方向に拡散せず、上方に拡散し易くなっている。
【0030】
Cu合金中に含まれる不純物元素を化学的機械的研磨法での処理の後、続けて熱処理により拡散させCu配線表面上に酸化膜を形成するのに必要な熱処理としては250℃から400℃の温度範囲で、且つ処理時間が30分から180分の範囲である事が好ましい。
【0031】
次に、図1(7)に示すように、上記酸化物層31、層間絶縁膜21上に、バリア絶縁膜32を形成する。このバリア絶縁膜32は、例えば炭化シリコン系絶縁膜もしくは窒化シリコン系絶縁膜で形成することができ、例えばCVD法により、例えば30nm〜50nmの厚さに成膜する。
【0032】
次に、図1(8)に示すように、上層の配線層が形成される層間絶縁膜41を例えば75nm〜500nmの厚さに成膜する。以下、上記図1によって説明した配線形成工程もしくは次に説明する第2例の配線形成工程を繰り返し行うことによって、多層配線構造を形成することができる。
【0033】
上記半導体装置の製造方法では、導電部27表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料でシード層26を形成し、凹部22内に銅を主材料とする導電部27を形成した後に熱処理を行って導電部27表面に酸化物を形成する金属を含む酸化物層31を形成することから、この酸化物層31が密着層として機能し、その表面に形成される銅の拡散を防止するバリア性を有するバリア絶縁膜32を形成した際の密着性が高められる。これによって、配線の信頼性の向上に寄与できる。また、上記酸化物を形成する金属を含む酸化物層31をバリア膜として用いることができるので、バリア絶縁膜32の形成を省略することができ、工程数の削減という効果が得られる。それとともに、バリア絶縁膜32を形成しないことにより、配線の容量を低減することができるので、微細化により深刻化するRC遅延の問題を解決することができるという利点がある。
【0034】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態の第2例を、図2の製造工程断面図によって説明する。
【0035】
図2(1)に示すように、基板(例えば半導体基板)11上に形成された層間絶縁膜21に凹部22を形成する。この凹部22は、例えば配線溝23とその配線溝23の底部に形成された接続孔24とからなる。上記配線溝23は、その内部に形成される配線の最小線幅が、例えば55nmから120nmの間の幅となるように形成される。したがって、上記接続孔24も上記配線溝23に合わせた寸法に形成される。
【0036】
次に、図2(2)に示すように、上記凹部22の各内面にバリアメタル層25を形成する。このバリアメタル層25は、例えば、タンタル(Ta)単層膜、タンタル(Ta)と窒化タンタル(TaN)との積層膜、チタン(Ti)単層膜、もしくはチタン(Ti)と窒化チタン(TiN)との積層膜からなる。上記バリアメタル層25は、例えばスパッタリング法もしくは化学的気相成長法(CVD法)によって形成され、その膜厚は、例えば5nmから15nmの厚さに形成される。
【0037】
次に、図2(3)に示すように、上記バリアメタル層25表面にシード層26を形成する。このシード層26は、例えば、上記凹部22を埋め込んで形成される導電部(図示せず)の表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料で形成される。例えば、上記酸化物を形成する金属は、銅(Cu)中を銅よりも拡散係数が大きく、銅よりも酸化され易い特性を有する金属からなり、そのような金属の一例としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、インジウム(In)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)がある。上記シード層26は、これらの金属のうち、少なくとも1種もしくは複数種を不純物元素としてもつ銅(Cu)合金で形成され、その形成方法は、例えばスパッタリング法により、例えば45nm〜60nmの厚さに成膜される。
【0038】
上記各酸化物を形成する金属は、前記説明したように、酸化膜の生成自由エネルギーが銅(Cu)よりも低く、かつCu中の拡散速度がCuよりも高いことが分かっている。そのため熱処理により拡散と酸化が効率よく行われることが可能である。
【0039】
次に、図2(4)に示すように、例えばめっき法により、凹部22を埋め込むとともに、上記層間絶縁膜21上に、導電部27を形成する。この導電部27は、例えば銅(Cu)もしくは銅(Cu)を主成分とする金属で形成され、例えば600nm〜1.20μmの厚さに形成される。
【0040】
その後、上記層間絶縁膜21上の余剰な導電部27およびシード層26、バリアメタル層25を、例えば化学的機械研磨(CMP)法によって除去し、図1(5)に示すように、上記凹部22内部にバリアメタル層25、シード層26を介して導電部27からなる接続プラグ28、配線29を形成する。
【0041】
次に、図2(6)に示すように、上記基板11を熱処理して、上記シード層26に含まれている導電部の表面に拡散して酸化物を形成する金属を、凹部22内に埋め込まれた上記導電部27表面に拡散させて、酸化物層31を形成する。上記熱処理は、例えば
300℃〜400℃で、例えば30分〜180分行う。また、上記凹部22の内面にはバリア層25が形成されていることから、シード層26から導電部27内を拡散する酸化物を形成する金属は凹部22の側壁方向に拡散せず、上方に拡散し易くなっている。
【0042】
次に、図2(7)に示すように、上記酸化物層31、層間絶縁膜21上に、上層の配線層が形成される層間絶縁膜41を成膜する。以下、前記図1もしくは前記図2によって説明した配線形成工程を繰り返し行うことによって、多層配線構造を形成することができる。
【0043】
上記第2例は、前記第1例で形成したバリア絶縁膜32を形成せずに、層間絶縁膜41を形成する製造方法であり、バリア絶縁膜32を形成しない分だけ、工程数の削減が可能になり、また配線容量の低減が可能となる。その他の作用効果は前記第1例と同様である。
【0044】
次に、本発明の半導体装置に係る一実施の形態例を、図3の概略構成断面図によって説明する。
【0045】
図3に示すように、半導体基板11上に層間絶縁膜21が形成され、その層間絶縁膜21に凹部22が形成されている。この凹部22は、例えば配線溝23とその配線溝23の底部に形成された接続孔24とからなる。上記配線溝23は、その内部に形成される配線の最小線幅が、例えば55nmから120nmの間の幅となるように形成されている。したがって、上記接続孔24も上記配線溝23に合わせた寸法に形成されている。
【0046】
上記凹部22の各内面にはバリアメタル層25が形成されている。このバリアメタル層25は、例えば、タンタル(Ta)単層膜、タンタル(Ta)と窒化タンタル(TaN)との積層膜、チタン(Ti)単層膜、もしくはチタン(Ti)と窒化チタン(TiN)との積層膜からなり、その膜厚は、例えば5nmから15nmの厚さに形成されている。
【0047】
上記バリアメタル層25表面にはシード層26が形成されている。このシード層26は、例えば、上記凹部22を埋め込んで形成される導電部(図示せず)の表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料からなる。例えば、上記酸化物を形成する金属は、銅(Cu)中を銅よりも拡散係数が大きく、銅よりも酸化され易い特性を有する金属からなり、そのような金属の一例としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、インジウム(In)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)がある。上記シード層26は、これらの金属のうち、少なくとも1種もしくは複数種を不純物元素としてもつ銅(Cu)合金で形成され、その形成方法は、例えばスパッタリング法により、例えば45nm〜60nmの厚さに成膜されている。
【0048】
上記酸化物を形成する金属は、前記説明したように、酸化膜の生成自由エネルギーが銅(Cu)よりも低く、かつCu中の拡散速度がCuよりも高いことが分かっている。そのため熱処理により拡散と酸化が効率よく行われる。
【0049】
上記酸化物を形成する金属の含有率に関して、以下に一例を説明する。銅表面上に酸化物を例えば5nm程度形成するためには、上記酸化物を形成する金属は、酸素原子の量を考えるとその半分程度の原子数が必要である。その原子数をシード層26として成膜したCu合金により供給するためには、それと同等量を含有していなければならない。例えばシード層26を50nm成膜している場合、上記酸化物を形成する金属は少なくとも0.05atm%含有していることが必要であると見積もられる。
【0050】
ただし、配線溝23や接続孔24の幅およびアスペクト比が縮小化してくると、前述のシード層26の膜厚想定値は50nmからさらに薄膜化していくことが必至である。このため、Cu合金中の酸化物を形成する金属の含有率は前述の0.05atm%より多く含有することが必要である。逆に酸化物を形成する金属の含有率が多すぎると不必要に膜厚の厚い酸化膜層が導電部上に形成されてしまうため、導電率に影響を及ぼすことが懸念される。そのため約5nmの酸化膜を形成することを想定し上限を例えば5.0atm%と規定する。
【0051】
上記凹部22内部には、上記バリアメタル層25、シード層26を介して導電部からなる接続プラグ28、配線29が形成されている。上記配線29表面は、上記シード層26中の酸化物を形成する金属が上記導電部表面に拡散して形成された酸化物層31が形成されている。
【0052】
上記酸化物層31、層間絶縁膜21上には、バリア絶縁膜32が形成されている。このバリア絶縁膜32は、例えば炭化シリコン系絶縁膜もしくは窒化シリコン系絶縁膜で形成することができ、例えば30nm〜50nmの厚さに成膜されている。
【0053】
さらに、バリア絶縁膜32上には、上層の配線層が形成される層間絶縁膜41が例えば75nm〜500nmの厚さに成膜されている。以下、上記構成の配線構造が積層して形成されることによって、多層配線構造を成すことができる。
【0054】
また、上記構成では、バリア絶縁膜32が形成されているが、このバリア絶縁膜32は省略することもできる。バリア絶縁膜32を形成しない構成では、バリア絶縁膜32の分だけ、工程数の削減が可能になり、また配線容量の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態の第1例を示した製造工程断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態の第2例を示した製造工程断面図である。
【図3】本発明の半導体装置に係る一実施の形態例を示した概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0056】
11…基板、21…層間絶縁膜、22…凹部、25…バリア層、26…シード層、27…導電部、31…酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の絶縁膜に形成された凹部の内面にバリア層を介してシード層を形成する工程と、
前記シード層を介して前記凹部を銅で埋め込む工程と、
前記絶縁膜上に形成された前記銅およびシード層を除去して、前記凹部内に銅を主材料とする導電部を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記シード層は前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属を含む銅材料で形成され、
前記凹部内に銅を主材料とする導電部を形成した後に熱処理を行って前記導電部表面に前記酸化物を形成する金属を含む酸化物層を形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属は、銅よりも拡散速度が速く、銅よりも酸化されやすい金属からなる
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属は、アルミニウム、クロム、インジウム、スズ、チタン、マンガン、バナジウムのうちの少なくとも1種もしくは複数種からなる
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板上の絶縁膜に設けられた凹部の内面にバリア層を介して形成されたシード層と、
前記シード層を介して前記凹部内に形成された銅を主材料とする導電部とを備えた半導体装置であって、
前記導電部表面は前記シード層から前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層からなる
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層は、銅よりも拡散速度が速く、銅よりも酸化されやすい金属の酸化物で形成されている
ことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電部表面に拡散して酸化物を形成する金属の酸化物層は、アルミニウム、クロム、インジウム、スズ、チタン、マンガン、バナジウムのうちの、少なくとも1種からなる酸化物もしくは複数種からなる酸化物で形成されている
ことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−59734(P2007−59734A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245182(P2005−245182)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】