説明

半導体装置の製造方法

【課題】炭化ケイ素半導体装置を、表面構造形成工程を前に、裏面構造形成工程を後に実施する製造方法によって製造し、かつ、炭化ケイ素半導体装置の特性を確保する。
【解決手段】表面電極と、裏面電極とを備えた炭化ケイ素半導体装置の製造方法は、表面電極の材料となる表面電極材料層を半導体基板に接して成膜する表面電極材料層の成膜工程と、表面電極材料層をアニール処理する第1アニール工程と、を含む表面構造形成工程と、裏面電極層の材料となる裏面電極材料層を半導体基板に接して成膜する裏面電極材料層の成膜工程と、裏面電極材料層にレーザ照射を行って、裏面電極材料層と半導体基板とをオーミック接合させる第2アニール工程と、を含み、表面構造形成工程の後に行われる裏面構造形成工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素を材料とする半導体ウェハから、半導体装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)を材料とする半導体基板を備えた半導体装置(以下、炭化ケイ素半導体装置という)の表面電極として、例えば、半導体基板とショットキー接合する電極を用い、裏面電極として、半導体基板とオーミック接合する電極を用いる場合がある。この場合、半導体基板と裏面電極とのオーミック接合を確保するために、裏面電極を熱処理する温度は、表面電極を熱処理する温度よりも高くなる。
【0003】
例えば、裏面電極の材料としてニッケル(Ni)を用いる場合、半導体基板と裏面電極とをオーミック接合するためには、900〜1000℃以上の雰囲気温度で熱処理を行う必要がある。一方、表面電極に高温で熱処理を行うと、半導体基板と表面電極とがショットキー接合を形成することができなくなり、リーク電流増大の原因となるため、一般に、表面電極を400℃前後の雰囲気温度でアニール処理する。このため、炭化ケイ素半導体装置では、裏面電極を形成して熱処理を行う工程が、表面電極を形成して熱処理を行う工程よりも前に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−534143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の製造工程においては、表面電極等の半導体装置の表面側の構造を形成する工程(本明細書では、表面構造形成工程と呼ぶ)を前に、裏面電極等の半導体装置の裏面側の構造を形成する工程(本明細書では、裏面構造形成工程と呼ぶ)を後に実施することが好ましい。裏面構造形成工程を表面構造形成工程より前に行うと、例えば半導体ウェハを薄板化する工程は、裏面構造形成工程のさらに前に行わなければならなくなる。半導体ウェハを薄板化する工程を裏面構造形成工程及び表面構造形成工程より前の工程で行うと、その後の工程においては薄板化したウェハを搬送等することになり、ウェハの破損等の不良が発生し易くなる場合がある。
【0006】
また、裏面構造形成工程を表面構造形成工程より前に行うと、例えば、半導体装置の表面側に形成するポリイミド等の表面保護膜を形成する前に裏面電極を形成することになり、表面電極と半導体基板との接触界面が汚染され易くなる場合がある。
【0007】
本願は、炭化ケイ素半導体装置を、表面構造形成工程を裏面構造形成工程より前に実施する製造方法によって製造しても、半導体基板の表面に形成された表面電極等の表面構造を保護することと、裏面電極と半導体基板とのオーミック接合を確保することとを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、炭化ケイ素を材料とする半導体基板と、半導体基板の表面に接する表面電極と、半導体基板の裏面に接する裏面電極とを備えた半導体装置の製造方法を提供する。この製造方法は、表面構造形成工程と裏面構造形成工程を有している。表面構造形成工程は、表面電極の材料となる表面電極材料層を半導体基板に接して成膜する表面電極材料層の成膜工程と、表面電極材料層をアニール処理する第1アニール工程と、を含んでいる。裏面構造形成工程は、裏面電極層の材料となる裏面電極材料層を半導体基板に接して成膜する裏面電極材料層の成膜工程と、裏面電極材料層にレーザ照射を行って、裏面電極材料層と半導体基板とをオーミック接合させる第2アニール工程と、を含んでおり、表面構造形成工程の後に行われる。
【0009】
上記の製造方法では、裏面構造形成工程に含まれる第2アニール工程では、裏面電極材料層にレーザ照射を行って、裏面電極材料層と半導体基板とをオーミック接合させる。レーザ照射を用いるため、第2アニール工程において、半導体基板の表面に既に形成された表面構造が汚染等によって損傷を受けることがない。このため、第1アニール工程を含む表面構造形成工程を前に、第2アニール工程を含む裏面構造形成工程を後に実施することと、炭化ケイ素半導体装置の裏面電極と半導体基板とのオーミック接合を確保することを両立することができる。
【0010】
上記の製造方法では、第1アニール工程で表面電極材料層をアニール処理する温度は、第2アニール工程で裏面電極材料層をレーザアニール処理する温度よりも低い温度であってもよい。
【0011】
上記の製造方法では、表面構造形成工程は、半導体基板の表面側に表面保護膜を形成する表面保護膜形成工程をさらに含んでいてもよい。
【0012】
第2アニール工程では、波長が150nm以上かつ400nm以下のUVレーザを裏面電極材料層に照射することが好ましい。
【0013】
表面構造形成工程と裏面構造形成工程の間に半導体ウェハを薄板化する薄板化工程をさらに含んでいてもよい。薄板化工程は、半導体ウェハを50μm以上かつ250μm以下の厚さに薄板化する工程であってもよい。
【0014】
表面電極は、Ti、Al、Mo、Niからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を主成分とし、裏面電極は、Niを主成分とするものであってもよい。
【0015】
裏面電極材料層をレーザアニール処理する温度は、900℃以上であってもよい。
【0016】
本発明に係る製造方法の第2アニール工程に使用できる製造装置を提供することもできる。この製造装置は、UVレーザ光源と、密閉容器と、密閉容器に設けられており、UVレーザ光を透過させる材料で形成されているレーザ透過窓と、密閉容器内に設置されており、半導体ウェハを載置するステージと、UVレーザ光源からのUVレーザ光を、レーザ透過窓を介してステージに載置された半導体ウェハに照射する照射光学系と、密閉容器内にガスを導入するガス導入ラインと、密閉容器内を減圧する減圧器と、備えている。
【0017】
レーザ透過窓は、石英、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化リチウム(LiF)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を材料とすることが好ましい。
【0018】
UVレーザ光源の波長は、150nm以上かつ400nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半導体装置の表面構造形成工程を前に、裏面構造形成工程を後に実施しても、半導体基板の表面に形成された表面電極等の表面構造を保護することと、裏面電極と半導体基板とのオーミック接合を確保することとを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1で製造する半導体装置の断面図。
【図2】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【図3】実施形態1に係る半導体装置の製造装置の概略を示す図。
【図4】変形例に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【図5】実施形態2で製造する半導体装置の断面図。
【図6】実施形態2に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態1に係る第1の製造方法によって製造される半導体装置5の断面を模式的に示す図である。半導体装置5は、JBS(Junction Barrier Schottky:ジャンクションバリアショットキー)構造を有するダイオードである。半導体基板500は、炭化ケイ素を材料とするn型の基板層501と、基板層501の表面に積層され、炭化ケイ素を材料とするn型のエピタキシャル層502と、エピタキシャル層502の表面に設けられたp型のアノード層503およびp型の耐圧層504とを備えている。アノード層503はJBS構造のアノード層であり、耐圧層504は、周辺耐圧構造として設けられたJTE(Junction Terminal Extension)構造である。
【0022】
半導体基板500の表面(エピタキシャル層502およびアノード層503,耐圧層504が形成されている側の面)には、半導体基板500側から順に、層間絶縁膜531及び表面電極511と、表面接合電極512が積層されている。表面接合電極512の周縁部および層間絶縁膜531の表面は、表面保護膜533によって被覆されている。半導体基板500の裏面(基板層501が形成されている側の面)には、半導体基板500側から順に、裏面電極521、裏面接合電極522が積層されている。
【0023】
表面電極511は、層間絶縁膜531に設けられたコンタクトホール532において、半導体基板500のエピタキシャル層502の表面とショットキー接合している。表面電極511の材料としては、エピタキシャル層502とショットキー接合が可能な金属を用いればよく、例えば、Ti、Al、Mo、Ni等を主成分とする金属や合金を用いることができる。層間絶縁膜531の材料としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜を用いることができる。表面保護膜533の材料としては、例えば、ポリイミド等の樹脂を用いることができる。
【0024】
裏面電極521は、半導体基板500の基板層501の裏面とオーミック接合している。裏面電極521の材料は、基板層501とオーミック接合が可能な金属であればよく、例えば、Ni電極(Ni以外の成分を含有し、Niを主成分とする電極を含む)や、Ni−Al合金、Ni−Ti合金、Ni−Mo合金、Ni−Ta合金、Ni−W合金等のNi合金電極を用いることができる。
【0025】
表面接合電極512および裏面接合電極522は、半導体装置5を外部端子等に電気的に接続する等の目的で設けられており、半導体基板500とは接触していない。表面接合電極512としては、例えば、Al電極を用いることができる。裏面接合電極522としては、例えば、半導体基板側から順に、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)をスパッタ等で積層して得られる、Ti/Ni/Au電極を用いることができる。
【0026】
次に、実施形態1に係る半導体装置5の第1の製造方法について、図1および図2を用いて説明する。半導体装置5は、図1に示す半導体装置5の構造を半導体ウェハに複数形成した後に、ダイシングを行って、半導体ウェハからそれぞれの半導体装置を切り離すことによって、製造される。
【0027】
第1の製造方法では、半導体基板500が備える素子構造が複数形成された半導体ウェハを原料ウェハとして用いる。原料ウェハは、基板層501と、エピタキシャル層502と、アノード層503と、耐圧層504とを備えている。
【0028】
次に、図2に示す製造フローに従って、原料ウェハの表面および裏面に、絶縁膜、電極、保護膜を形成する。図2に示す製造フローは、下記に説明する絶縁膜形成工程(ステップS101)、コンタクトホール形成工程(ステップS103)、表面電極形成工程(ステップS105およびステップS107)、表面接合電極形成工程(ステップS109)、表面保護膜形成工程(ステップS111)、裏面電極形成工程(ステップS113およびステップS115)、裏面接合電極形成工程(ステップS117)を含んでいる。半導体装置5の表面側に形成される、表面電極等の構造を表面構造と呼び、半導体装置5の裏面側に形成される裏面電極等の構造を裏面構造と呼ぶ。表面構造を形成する表面構造形成工程は、例えば、図2に示す絶縁膜形成工程と、コンタクトホール形成工程と、表面電極形成工程と、表面接合電極形成工程と、表面保護膜形成工程とを含む。裏面構造を形成する裏面構造形成工程は、例えば、図2に示す裏面電極形成工程と、裏面接合電極形成工程とを含む。
【0029】
(絶縁膜形成工程)
絶縁膜形成工程では、原料ウェハの表面に層間絶縁膜531を成膜する(ステップS101)。ステップS101で行う層間絶縁膜531の成膜方法としては、CVD法等、通常用いられる絶縁膜を成膜する方法を利用することができる。
【0030】
(コンタクトホール形成工程)
コンタクトホール形成工程では、絶縁膜形成工程で形成した層間絶縁膜531にコンタクトホール532を形成する(ステップS103)。ステップS103は、層間絶縁膜531の表面に、コンタクトホール532に合わせてパターニングされているフォトレジストを形成する工程と、形成されたフォトレジストを用いて層間絶縁膜531を除去する工程とを含む。層間絶縁膜531を除去する工程では、コンタクトホール532を形成する部分の層間絶縁膜531をエッチング等によって除去する。これによって、コンタクトホール532を形成することができる。フォトレジストの材料および形成方法、エッチング方法としては、絶縁膜のフォトエッチングに際して通常用いられている材料および方法を用いることができる。
【0031】
(表面電極形成工程)
次に行う表面電極形成工程では、原料ウェハの表面に接する表面電極511を形成する。表面電極形成工程は、表面電極の材料となる電極層(本明細書では、表面電極材料層と呼ぶ)を原料ウェハの表面に接するように成膜する、表面電極材料層の成膜工程(ステップS105)と、成膜した表面電極材料層のアニール処理を行う、第1アニール工程(ステップS107)とを含む。表面電極材料層は、コンタクトホール532において原料ウェハと接するように成膜される。
【0032】
(表面電極材料層の成膜工程)
ステップS105では、例えば、原料ウェハの表面に接するように電極層(例えば、Al層、Mo層、Ti層、Ni層)を成膜した後、成膜した電極層の表面にパターニングされたフォトレジストを形成し、成膜した電極層の一部を、このフォトレジストを用いてエッチングによって除去する。これによって、表面電極材料層を成膜することができる。原料ウェハの表面に接するように電極層を成膜する方法としては、蒸着やスパッタ法を用いることが好ましい。
【0033】
(第1アニール工程)
次に、第1アニール工程を行う(ステップS107)。第1アニール工程では、例えばアニール炉等を用いて、表面電極材料層のアニール処理を行うことができる。アニール炉としては、急昇温および急降温が可能な赤外線ランプRTA炉等が好ましいが、これに限定されない。表面電極材料層が形成された原料ウェハの熱履歴を軽減するために、アニール処理の処理時間は60min以内であり、昇降温速度は、100℃/min以上であることが好ましい。第1アニール工程でアニール処理を行う際のアニール炉内の雰囲気温度は、後述する裏面電極が半導体基板にオーミック接合するために必要な温度よりも低く設定される。表面電極として用いる材料によって異なるが、第1アニール工程におけるアニール炉内の雰囲気温度は、400℃〜900℃程度の範囲内であり、後述する第2アニール工程において裏面電極を半導体基板にオーミック接合させるために必要な温度(本明細書では、裏面オーミック接合温度という。)よりも低い。表面電極として、例えばTi層を用いる場合には、アニール炉内の雰囲気温度を400℃程度とすることが好ましい。また、例えば表面電極にMo層を用いる場合には、アニール炉内の雰囲気温度を900℃程度とすることが好ましい。
【0034】
アニール処理を行う場合の雰囲気ガスとしては、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)等の不活性ガスを用いることができ、10Torr以下の真空下で処理されることが好ましい。雰囲気ガスとして用いるArやHeガスに、数vol%のHガス等の還元性ガスが含まれていることが、より好ましい。
【0035】
(表面接合電極形成工程)
次に、表面接合電極形成工程(ステップS109)を行う。表面接合電極形成工程は、表面電極511の表面に、表面接合電極512の材料となる金属層もしくは合金層をスパッタ等によって成膜する工程と、成膜した金属層もしくは合金層の表面にパターニングされたフォトレジストを形成する工程と、成膜した金属層もしくは合金層の一部をエッチングによって除去する工程とを含む。これによって、表面接合電極512を形成することができる。
【0036】
(表面保護膜形成工程)
次に、表面保護膜形成工程(ステップS111)を行う。表面保護膜533としてポリイミドを用いる場合、表面保護膜形成工程では、まず、ポリイミド膜を原料ウェハの表面側に塗布し、乾燥させる。次に、乾燥させたポリイミド膜の表面にパターニングされたフォトレジストを形成し、このフォトレジストを用いて、ポリイミド膜の一部をエッチングによって除去する。次に、これを熱処理して硬化させる。これによって、原料ウェハの表面の表面接合電極512の周縁部および層間絶縁膜531の表面を被覆するようにパターニングされた、表面保護膜533を形成することができる。表面保護膜として樹脂を用いる場合には、表面保護膜の耐熱温度は、後述する、裏面オーミック接合温度よりも低い。
【0037】
(裏面電極形成工程)
次に、裏面電極形成工程では、原料ウェハの裏面に接する裏面電極521を形成する。裏面電極形成工程は、裏面電極の材料となる電極層(裏面電極材料層)を原料ウェハの裏面に接するように成膜する、裏面電極材料層の成膜工程(ステップS113)と、成膜した裏面電極材料層のアニール処理を行う、第2アニール工程(ステップS115)とを含む。
【0038】
(裏面電極材料層の成膜工程)
ステップS113では、例えば、原料ウェハの裏面に接するように電極層(例えば、Ni層)を蒸着法等によって成膜する。これによって、裏面電極材料層を成膜することができる。ステップS113は、成膜した電極層の裏面にパターニングされたフォトレジストを形成する工程と、成膜した電極層の一部を、このフォトレジストを用いてエッチングによって除去する工程とをさらに含んでいてもよい。これによって、裏面電極材料層をパターニングすることができる。
【0039】
(第2アニール工程)
次に、第2アニール工程を行う(ステップS115)。第2アニール工程では、裏面電極材料層のレーザアニール処理を行う。レーザアニール処理によって、裏面電極材料層は、裏面電極を半導体基板とオーミック接合させるために必要な温度(裏面オーミック接合温度)に加熱される。これによって、原料ウェハとオーミック接合している裏面電極521を得ることができる。第2アニール工程で原料ウェハの裏面を加熱する温度は、裏面オーミック接合温度以上であればよい。例えば、裏面オーミック接合温度が900℃であれば、原料ウェハの裏面を加熱する温度は1000℃程度とすることができる。
【0040】
裏面電極材料層の材料をNi層とした場合、裏面オーミック接合温度は900℃以上である。原料ウェハにオーミック接合する裏面電極を得るために、第2アニール工程では、裏面電極材料層が形成されている原料ウェハの裏面側の温度を、裏面オーミック接合温度である900℃以上の範囲で設定した所定の温度に加熱する。レーザアニール処理を用いれば、原料ウェハの裏面側を加熱する一方で、原料ウェハの表面側は殆ど加熱されないようにすることができる。例えば、原料ウェハの裏面側の温度を900℃以上に加熱する一方で、原料ウェハの表面側の温度を300℃以下の低温に維持することができる。
【0041】
レーザアニール処理に用いるレーザ光は、UVレーザ光が好ましい。UVレーザ光を用いれば、炭化ケイ素を材料とする半導体ウェハへの浸透深さをより浅くすることができる。UVレーザ光を原料ウェハの裏面側に照射する場合には、原料ウェハの裏面側(高温に加熱する側)の温度と、表面側の温度との差を大きくすることができる。本発明者らは、4H−SiCを材料とする半導体ウェハに対して、波長355nmのUVレーザ光を照射した場合のUVレーザ光の浸透深さを実測した。その結果、浸透深さは約48μmであった。
【0042】
UVレーザ光の波長は、150〜400nmであることが好ましい。原料ウェハの厚さが比較的薄く、100μm程度であっても、UVレーザ光の波長が400nm以下であれば、UVレーザ光を原料ウェハの裏面側に照射し、原料ウェハの裏面側を1000℃以上に加熱しても、原料ウェハの表面側の温度を300℃以下にすることができる。
【0043】
レーザアニール処理は、例えば、図3に示す製造装置7を用いて行うことができる。図3に示すように、製造装置7は、UVレーザ光源701と、照射光学系750と、密閉容器706と、ステージ707と、密閉容器に設けられているレーザ透過窓708と、減圧器709と、ガス導入ライン711とを備えている。減圧器709と密閉容器706との間には減圧バルブ710が設置されており、ガス導入ライン711にはガスバルブ712が設置されている。製造装置7は、コントローラ720を備えている。コントローラ720は、UVレーザ光源701と、ステージ707と、減圧器709と、減圧バルブ710と、ガスバルブ712とを制御する。
【0044】
ステージ707に原料ウェハ780を載置することによって、密閉容器706内に原料ウェハ780を設置することができる。原料ウェハ780は、裏面電極材料層が形成されている裏面側がレーザ透過窓708側となるように、ステージ707上に載置される。ステージ707は、ステージ707と原料ウェハ780の間に電圧を印加し、両者の間に発生した力によってウェハを吸着して保持する(いわゆる静電チャックである)。ステージ707には、原料ウェハ780を冷却する冷却ユニット(図示しない)が設けられている。
【0045】
参照番号770は、UVレーザ光の光路を模式的に示すのもである。UVレーザ光源701からのUVレーザ光770は、照射光学系750によってステージ707上の原料ウェハ780に導かれる。照射光学系750は、例えば、ミラー702と、アパーチャ703と、エキスパンダ704と、レンズ705によって構成することができる。この場合、UVレーザ光源701からのUVレーザ光770は、ミラー702によって反射され、アパーチャ703に入射する。アパーチャ703は絞り機能を有しており、絞られたUVレーザ光770はエキスパンダ704によってビーム径が拡大され、レンズ705に入射する。レンズ705はフォーカスレンズであり、レンズ705を通過したUVレーザ光770は、レンズ透過窓708を透過して、密閉容器706内の原料ウェハ780上に照射される。
【0046】
UVレーザ光源701としては、例えば、ArF(波長193nm)、KrF(波長248nm)、XeCl(波長308nm)、XeF(波長353nm)、F(波長157nm)等のエキシマレーザや、YAG等の固体レーザを好適に用いることができる。UVレーザ光源は、150〜400nmの波長のUVレーザ光の光源であることが好ましいが、これに限定されない。
【0047】
レーザ透過窓708は、UVレーザを透過させることができる材料によって形成されている。レーザ透過窓708の材料としては、石英、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化リチウム(LiF)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を材料とすることが好ましい。
【0048】
減圧器709および減圧バルブ710を制御することによって、密閉容器706内を減圧することができる。ガスバルブ712を制御することによって、密閉容器706内にガスを導入することができる。減圧器709としては、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ等の真空ポンプを好適に用いることができる。ガス導入ライン711によって、不活性ガス、還元性ガス等を密閉容器706内に導入することができる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)等を用いることができる。還元性ガスとしては、例えば、数vol%のHガス等の還元性ガスを用いることができる。
【0049】
レーザアニール処理は、密閉容器内を1×10−5Torr以下の高真空化とした状態で行われることが好ましく、雰囲気ガスとして用いるArやHeガスに、数vol%のHガス等の還元性ガスが含まれていることがより好ましい。
【0050】
コントローラ720は、実験等の結果に基づいて予め設定された所定の制御条件に基づいて、UVレーザ光源701と、ステージ707と、減圧器709と、減圧バルブ710と、ガスバルブ712とを制御することができる。また、製造装置7が温度センサや圧力センサを備えている場合は、コントローラ720は、その温度センサや圧力センサの検知値に基づいて、UVレーザ光源701と、ステージ707と、減圧器709と、減圧バルブ710と、ガスバルブ712等を制御してもよい。例えば、原料ウェハ780の裏面温度(レーザ光を照射する側の温度)を検知する温度センサが、製造装置7に備えられている場合、コントローラ720は、この温度センサが検知する原料ウェハ780の裏面温度に基づいて、UVレーザ光源701等を制御してもよい。
【0051】
(裏面接合電極形成工程)
次に、裏面接合電極形成工程(ステップS117)を行う。裏面接合電極形成工程は、裏面電極521の裏面に接するように、裏面接合電極522の材料となる金属層もしくは合金層をスパッタ等によって成膜する工程を含んでいる。ステップS117は、成膜した金属層もしくは合金層の表面にパターニングされたフォトレジストを形成する工程と、成膜した金属層もしくは合金層の一部をエッチングによって除去する工程とをさらに含んでいてもよい。これによって、裏面接合電極をパターニングすることができる。
【0052】
さらに、ダイシング等を行って半導体ウェハを切断すると、1つの半導体装置5として切り分けることができる。これによって、図1に示す半導体装置5を得ることができる。
【0053】
上記のとおり、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、表面構造形成工程を行った後で、裏面構造形成工程を行う。裏面構造形成工程に含まれる第2アニール工程では、裏面電極材料層にレーザ照射を行って、裏面電極材料層をアニール処理し、裏面電極と半導体基板とをオーミック接合させる。このため、裏面電極材料層をレーザアニール処理する温度(レーザ光を照射する、半導体ウェハの裏面側の温度)よりも低い温度で、第1アニール工程を実施する場合であっても、半導体基板の表面に形成された表面電極等の表面構造を保護することができる。半導体基板の表面に形成された表面電極等の表面構造を保護することと、裏面電極と半導体基板とのオーミック接合を確保することとを両立させることができる。
【実施例1】
【0054】
次に、上記で説明した、第1実施形態をより具体化した実施例1を挙げ、さらに詳細に説明する。
【0055】
(原料ウェハの準備)
直径φ=100mm、厚さ:350μmの4H−SiCのn型の半導体ウェハ(不純物濃度:8×1018cm−3)の表面に、n型のエピタキシャル層(不純物濃度:5×1015cm−3、層厚さ:10μm)を成膜した。この半導体ウェハは、図1に示す基板層501に相当し、このエピタキシャル層は、図1に示すエピタキシャル層502に相当する。さらに、p型のJTE構造を形成するために、エピタキシャル層の表面にAlイオン注入を行い、次に、p型のJBS構造を形成するために、エピタキシャル層の表面にAlイオン注入を行った。その後、アニール処理を行い、p型のJTE構造(不純物濃度:1×1019cm−3、幅:50μm、深さ:1μm)と、p型のJBS構造(ストライプ構造、不純物濃度:1×1019cm−3、間隔:5μm、幅:2μm、深さ:1μm)とを形成した。このp型のJTE構造は、図1に示す耐圧層504に相当し、このp型のJBS構造は、図1に示すアノード層503に相当する。
【0056】
上記の方法によって、半導体ウェハ上に、チップサイズが6mm×6mmであるJBS構造のダイオードを複数個作製した。この状態の半導体ウェハを原料ウェハとして用いて、図2に示すフローに従って、原料ウェハの表面および裏面に電極を形成する。
【0057】
(絶縁膜形成工程)
絶縁膜形成工程(ステップS101)では、原料ウェハの表面に層間絶縁膜531としてのシリコン酸化膜(SiO膜)を成膜した。成膜方法としては、減圧CVD法を用い、厚さ1μmのSiO膜を成膜した。
【0058】
(コンタクトホール形成工程)
次のコンタクトホール形成工程(ステップS103)では、まず、絶縁膜形成工程で形成したSiO膜の表面にフォトレジストを形成した。さらに、SiO膜のうち、コンタクトホールを形成する部分をエッチングによって除去し、コンタクトホールを形成した。このコンタクトホールは、図1に示すコンタクトホール532に相当する。本実施例では、コンタクトホールの大きさは、ダイオードのアクティブサイズが5.5mm×5.5mmとなるように調整した。
【0059】
(表面電極形成工程)
次に、表面電極形成工程(ステップS105およびステップS107)を行って、表面電極を形成した。表面電極の材料としてTiを用いた。
(表面電極材料層の成膜工程)
まず、図2のステップS105に示すように、表面電極材料層の成膜工程を行って、原料ウェハの表面側(層間絶縁膜が形成されている側)に表面電極材料層としてのTi層を成膜した。このTi層は、120℃で蒸着法を用いて、100nmの厚さに成膜した。さらに、成膜したTi層のうち、エッチングしない部分のTi層の表面に、パターニングされたフォトレジストを形成した。次に、アンモニア水/H溶液を用いて、成膜したTi層の一部をエッチングによって除去した。これによって、表面電極材料層を得ることができた。
【0060】
(第1アニール工程)
次に、第1アニール工程を行い、表面電極材料層(成膜したTi層)のアニール処理を行った。赤外線ランプRTA炉内に原料ウェハを設置して、400℃の処理温度で、表面電極材料層のアニール処理を行った。アニール処理を行う場合の雰囲気ガスは、Arに3vol%のHを含むガスを用い、10Torr以下でアニール処理を行った。雰囲気温度は400℃、昇降温速度は100℃/min、処理時間は30minとした。これによって表面電極と原料ウェハとの界面のバリアハイトを1.1eVにすることができ、表面電極を原料ウェハの表面にショットキー接合させることができた。
【0061】
(表面接合電極形成工程)
次の表面接合電極形成工程(ステップS109)では、表面接合電極512として、Al電極を形成した。まず、スパッタによって、Al層を3μmの厚さに形成した。さらに、成膜したAl層のうち、エッチングしない部分のAl層の表面に、パターニングされたフォトレジストを形成した。次に、リン酸/硝酸/酢酸溶液を用いて、Al層の一部をエッチングによって除去した。これによって、表面接合電極512としてのAl電極を形成した。
【0062】
(表面保護膜形成工程)
次の表面保護膜形成工程(ステップS111)では、表面保護膜533として、ポリイミド層を形成した。ポリイミドを原料ウェハの表面側に5μmの厚さに塗布し、乾燥した後、パターニングを行い、表面接合電極の一部を露出させた。こうして得られたポリイミド膜を300℃で熱処理して硬化させた。
【0063】
(裏面電極形成工程)
次の裏面電極形成工程(ステップS113およびステップS115)では、原料ウェハの裏面に接する裏面電極521としてNi電極を形成した。
【0064】
(裏面電極材料層の成膜工程)
裏面電極材料層を成膜する工程(ステップS113)では、裏面電極材料層として、Ni層を成膜した。スパッタ法を用いて、原料ウェハの裏面にNi層を100nmの厚さに成膜した。
【0065】
(第2アニール工程)
次に、第2アニール工程(ステップS115)を行った。第2アニール工程では、図3に示す半導体装置の製造装置7を用いて、成膜した裏面電極材料層(Ni層)のレーザアニール処理を行った。レーザ光源としては、波長248nmのエキシマレーザを用い、原料ウェハの裏面を1000℃に加熱した。これによって、Ni層と原料ウェハとの間にニッケルシリサイド(例えばNiSi)が形成され、原料ウェハとオーミック接合しているNi電極を得ることができた。
【0066】
(裏面接合電極形成工程)
次の裏面接合電極形成工程では、スパッタ法によって、裏面電極が形成された原料ウェハの裏面側から順に、Ti層、Ni層、Au層をこの順序で形成した。Ti層の厚さは100nmとし、Ni層の厚さは100nmとし、Au層の厚さは50nmとした。
【0067】
(ダイシング工程)
さらに、ダイシング等を行って、チップサイズが6mm×6mmで、アクティブサイズが5.5mm×5.5mmのJBS構造のダイオードを製造した。
【0068】
上記の製造方法によって製造したダイオードを用いて、表面電極と半導体基板との界面のバリアハイトを測定した。尚、バリアハイトは、4142BモジュラDCソース/モニタ装置(Agilent Technologies社製)を用いて、0〜3Vの順方向電圧を0.01Vステップで印加して順方向のI−V特性を測定し、次に、得られたI−V特性を下記の式(1)に適用して、算出した。
【0069】
Jo=ATexp(−qφ/(kT)) … (1)
ここで、Jo:電流密度(順方向電圧が0V時の電流/アクティブ面積)A:リチャードソン定数(146A/K・cm)、T:絶対温度(293K)、q:電荷(1.602×10−19C)、k:ボルツマン定数(1.381×10−23J/K)である。
【0070】
その結果、表面電極と半導体基板との界面のバリアハイトは、1.1eVであり、表面電極は半導体基板のエピタキシャル層にショットキー接合していた。本実施例では、表面電極と半導体基板との界面のバリアハイトが1.1eVとなる条件で、表面電極形成工程を行った。表面電極形成工程で調整されたバリアハイトの値が、第2アニール工程等を含む裏面構造形成工程を経過した後でも、維持されていた。
【0071】
また、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて、上記の製造方法によって製造したダイオードの表面接合電極および表面保護膜の観察を行った。その表面が荒れたり、その表面が溶解する等の異常は、表面接合電極、表面保護膜のいずれにおいても観察されなかった。
【0072】
上記のとおり、実施例1においては、裏面電極と半導体基板とをオーミック接合させるために、第2アニール工程では、原料ウェハの裏面を1000℃に加熱する条件でレーザアニール処理を行った。裏面電極の材料としてNi層を用いる場合、裏面オーミック接合温度は900℃以上である。900℃よりも低い温度(400℃)で第1アニール工程を実施する場合であっても、第1アニール工程を含む表面構造形成工程を第2アニール工程を含む裏面構造形成工程より前に実施して、しかも、表面電極と半導体基板のエピタキシャル層とのショットキー接合を維持することができた。また、900℃よりも低い温度(300℃)で表面保護膜形成工程を実施する場合であっても、表面保護膜形成工程を含む表面構造形成工程を第2アニール工程を含む裏面構造形成工程より前に実施して、しかも、表面保護膜の表面の荒れや溶解が観察されなかった。本実施例によれば、表面構造形成工程を前に、裏面構造形成工程を後に実施する製造方法によって、炭化ケイ素半導体装置を製造しても、半導体基板の表面に形成された表面電極等の表面構造を保護することと、裏面電極と半導体基板とのオーミック接合を確保することとを両立させることができることが明らかになった。
【0073】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法では、裏面構造形成工程よりも前に行う必要のある工程を、全製造工程のより後で行うことができる。例えば、半導体装置の製造工程は、原料ウェハを薄板化する、薄板化工程を含む場合がある。薄板化工程では、原料ウェハの裏面側を構成する半導体基板(例えば、図1における基板層501の裏面)を削る。原料ウェハを薄くすると、半導体装置の寄生抵抗が低減され、半導体装置の損失が低減される一方、原料ウェハを薄くし過ぎると、原料ウェハの強度が低下し、製造装置への搬出入時等に、ウェハの曲がりや割れが発生する。原料ウェハの裏面側を削るため、薄板化工程は、裏面構造形成工程よりも前に行う必要がある。
【0074】
実施形態1に係る半導体装置の製造方法において薄板化工程を行う場合には、図4に示すように、表面構造形成工程に含まれるステップS101〜ステップS111を薄板化工程(ステップS112)よりも前の工程で行うことができる。半導体ウェハを薄板化する工程を製造プロセスのより後の工程で行うことができるため、ウェハの破損等が発生しにくくなる。すなわち、表面構造形成工程を薄板化工程の前に行うことができるため、表面構造形成工程においてウェハの破損等が発生しにくくなる。薄板化工程(ステップS112)では、原料ウェハの基板層501の厚さは、50μm以上かつ250μm以下となる程度まで薄板化することが好ましく、100μm以上かつ200μm以下となるように薄板化することが特に好ましい。
【0075】
<実施形態2>
本発明に係る製造方法によって製造できる半導体装置は、半導体基板の表面側に接する表面電極と、半導体基板の裏面側に接する裏面電極とを有する半導体装置であればよい。実施形態1において説明したダイオード以外の半導体装置の一例として、実施形態2では、図5に示すMOSFETを例示して説明する。
【0076】
図5は、実施形態2に係る第2の製造方法によって製造される半導体装置9の断面を模式的に示す図である。半導体装置9は、MOSFETである。半導体基板900は、炭化ケイ素を材料とする半導体基板を材料とするn型のドレイン層901と、ドレイン層901となる半導体基板の表面に積層されており、炭化ケイ素を材料とするn型のエピタキシャル層によって形成されたドリフト層902と、ドリフト層902の表面に設けられたp型のボディ層903および耐圧層906と、ボディ層903の表面に形成されたn型のソース層904およびp型のコンタクト層905とを備えている。半導体基板900の表面側からボディ層903を貫通して、ドリフト層502に達するトレンチゲート940が形成されている。トレンチゲート940は、半導体基板900に形成されたトレンチ941と、トレンチ941の内表面に形成されたゲート絶縁膜942と、ゲート絶縁膜942によって被覆されているゲート電極943とを備えている。耐圧層906は、周辺耐圧構造であって、ボディ層903、ソース層904、コンタクト層905、トレンチゲート940等を取り囲むように形成されている。
【0077】
半導体基板900の表面(ソース層904およびコンタクト層905,耐圧層906が形成されている側の面)には、半導体基板900側から順に、層間絶縁膜931、935、表面電極911、表面接合電極912が積層されている。
【0078】
表面電極911は、ソース電極であって、半導体基板900のソース層904およびコンタクト層905の表面とオーミック接合している。表面電極911の材料としては、例えば、Ni等を主成分とする金属や合金を用いることができる。層間絶縁膜931、935および表面保護膜933の材料としては、例えば、実施形態1で説明した材料と同様の材料を用いることができる。
【0079】
層間絶縁膜931は、半導体基板900の表面に露出した、ドリフト層902および耐圧層906の表面に形成されており、層間絶縁膜935は、ゲート電極943と表面電極911とを絶縁している。
【0080】
表面接合電極912の周縁部および層間絶縁膜931の表面は、表面保護膜933によって被覆されている。半導体基板900の裏面(ドレイン層901が形成されている側の面)には、半導体基板900側から順に、裏面電極921、裏面接合電極922が積層されている。
【0081】
裏面電極921は、ドレイン電極であって、半導体基板900のドレイン層901の裏面とオーミック接合している。裏面電極921の材料は、半導体基板900とオーミック接合させることが可能な金属であればよく、例えば、実施形態1で説明した材料と同様の材料を用いることができる。
【0082】
半導体装置5と同様に、表面接合電極912および裏面接合電極922は、半導体装置9を外部端子等に電気的に接続する等の目的で設けられており、半導体基板900とは接触していない。表面接合電極912、裏面接合電極922の材料は、実施形態1で説明した材料と同様の材料を用いることができる。
【0083】
次に、実施形態2に係る半導体装置9の第1の製造方法について、図6等を用いて説明する。半導体装置9は、図5に示す半導体装置9の構造を半導体ウェハに複数形成した後に、ダイシングを行って、半導体ウェハからそれぞれの半導体装置を切り離すことによって、製造される。
【0084】
第2の製造方法では、半導体基板900が備える素子構造が複数形成された半導体ウェハを原料ウェハとして用いる。原料ウェハは、ドレイン層901と、ドリフト層902と、ボディ層903と、ソース層904と、コンタクト層905と、耐圧層906とを備えている。
【0085】
ソース層904およびコンタクト層905は、例えば、次のような手順で形成することができる。まず、ドレイン層901と、ドリフト層902と、ボディ層903とを備えている半導体ウェハの表面側(ボディ層903が形成されている側)にパターニングしたレジストを形成して、このレジストを介して、半導体ウェハの表面側から、イオン注入を行う。その後で、この半導体ウェハをアニール処理する。これによって、ソース層904およびコンタクト層905が形成される。
【0086】
次に、図6に示す製造フローに従って、原料ウェハの表面および裏面に、例えば、絶縁膜、電極、保護膜を形成する。図6に示す製造フローは、下記に説明する絶縁膜形成工程(ステップS201)、ゲートトレンチ形成工程(ステップS203)、表面電極形成工程(ステップS205およびステップS207)、表面接合電極形成工程(ステップS209)、表面保護膜形成工程(ステップS211)、裏面電極形成工程(ステップS213およびステップS215)、裏面接合電極形成工程(ステップS217)を含んでいる。半導体装置9の表面側に形成される、表面電極等の構造を表面構造と呼び、半導体装置9の裏面側に形成される裏面電極等の構造を裏面構造と呼ぶ。表面構造形成工程は、例えば、図6に示す絶縁膜形成工程と、ゲートトレンチ形成工程と、表面電極形成工程と、表面接合電極形成工程と、表面保護膜形成工程とを含む。裏面構造形成工程は、例えば、図6に示す裏面電極形成工程と、裏面接合電極形成工程とを含む。
【0087】
(絶縁膜形成工程)
絶縁膜形成工程では、原料ウェハの表面に層間絶縁膜931および935を成膜する(ステップS201)。ステップS201で行う層間絶縁膜931の成膜方法としては、実施形態1と同様に、CVD法等、通常用いられる絶縁膜を成膜する方法を利用することができる。
【0088】
(ゲートトレンチ形成工程)
ゲートトレンチ形成工程は、原料ウェハにトレンチを形成するトレンチ形成工程と、トレンチの内壁にゲート酸化膜を形成するゲート酸化膜形成工程と、その内壁にゲート酸化膜が形成されたトレンチの内部にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とを含んでいる。トレンチ形成工程では、例えば、原料ウェハのボディ層の表面にパターニングされたフォトレジストを形成し、フォトレジストを利用してエッチングを行って、原料ウェハのボディ層を貫通し、ドリフト層に達するトレンチを形成する。ゲート酸化膜形成工程では、従来と同様の方法によって、トレンチ内壁面にゲート酸化膜を形成することができる。また、ゲート電極形成工程では、例えば、CVD法等によって、酸化膜内に導電性材料(例えば、ポリシリコン等)を充填することで、ゲート電極を形成することができる。
【0089】
(表面電極形成工程)
次に行う表面電極形成工程では、原料ウェハの表面に接する表面電極911を形成する。表面電極911はMOSFETのソース電極である。表面電極形成工程は、表面電極911の材料となる電極層(表面電極材料層)を原料ウェハの表面に接するように成膜する、表面電極材料層の成膜工程(ステップS205)と、成膜した表面電極材料層のアニール処理を行う、第1アニール工程(ステップS207)とを含む。
【0090】
(表面電極材料層の成膜工程)
ステップS205では、例えば、表面電極の材料となる層を原料ウェハの表面に接するように成膜した後、成膜した層の表面にパターニングされたフォトレジストを形成し、このフォトレジストを利用して、成膜した層の一部をエッチングによって除去する。これによって、表面電極材料層を成膜することができる。
【0091】
(第1アニール工程)
次に、第1アニール工程を行う(ステップS207)。第1アニール工程では、実施形態1と同様に、例えばアニール炉等を用いて、表面電極材料層のアニール処理を行うことができる。また、第1アニール工程でアニール処理を行う際のアニール炉内の雰囲気温度は、後述する裏面電極が半導体基板にオーミック接合するために必要な温度よりも低く設定される。
【0092】
(表面接合電極形成工程)
次に、表面接合電極形成工程(ステップS209)を行う。表面接合電極形成工程は、実施形態1で説明したステップS109と同様の工程であるため、重複説明を省略する。
【0093】
(表面保護膜形成工程)
次に、表面保護膜形成工程(ステップS211)を行う。実施形態1において説明したステップS111と同様に、表面保護膜の材料としては、例えば、ポリイミド等の樹脂を用いることができ、実施形態1と同様の方法によって形成することができる。表面保護膜として樹脂を用いる場合には、表面保護膜の耐熱温度は、裏面電極が半導体基板にオーミック接合するために必要な温度よりも低くなる。
【0094】
(裏面電極形成工程)
次に行う裏面電極形成工程では、原料ウェハの裏面に接する裏面電極921を形成する。裏面電極921はMOSFETのドレイン電極である。実施形態1と同様に、裏面電極形成工程は、裏面電極の材料となる電極層(裏面電極材料層)を原料ウェハの裏面に接するように成膜する、裏面電極材料層の成膜工程(ステップS213)と、成膜した裏面電極材料層のアニール処理を行う、第2アニール工程(ステップS215)とを含む。
【0095】
(裏面電極材料層の成膜工程)
ステップS213では、例えば、裏面電極材料層を原料ウェハの裏面に接するように成膜する。ステップS213は、裏面電極材料層をパターニングする工程をさらに含んでいてもよい。
【0096】
(第2アニール工程)
次に、第2アニール工程を行う(ステップS215)。第2アニール工程では、裏面電極材料層にレーザアニール処理を行う。これによって、原料ウェハとオーミック接合している裏面電極921を得ることができる。実施形態2においても、レーザアニール処理は、実施形態1において説明した方法と同様の方法によって行うことができる。実施形態1と同様に、レーザアニール処理に用いるレーザ光は、UVレーザ光が好ましく、UVレーザ光の波長は、150〜400nmであることが好ましい。また、図3に示す半導体装置の製造装置7は、実施形態2においても同様に利用できる。実施形態1と同様に、図3に示す製造装置7のレーザ透過窓708の材料としては、石英、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化リチウム(LiF)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
【0097】
(裏面接合電極形成工程)
次に、裏面接合電極形成工程(ステップS217)を行う。裏面接合電極形成工程は、実施形態1で説明したステップS117と同様の工程であるため、重複説明を省略する。
【0098】
最後に、ダイシング等を行って半導体ウェハを切断すると、1つの半導体装置9として切り分けることができる。これによって、図5に示す半導体装置9を得ることができる。
【0099】
上記のとおり、実施形態2によれば、表面構造形成工程を行った後で、裏面構造形成工程を行う製造方法によって、炭化ケイ素を材料とする半導体基板を備えているMOSFETを製造することができる。また、実施形態1と同様に、実施形態2は、原料ウェハを薄板化する薄板化工程をさらに含んでいてもよい。この場合、薄板化工程は、表面保護膜形成工程(ステップS211)と裏面電極材料層の成膜工程(ステップS213)との間に実施することが好ましい。
【0100】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0101】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0102】
5 半導体装置
501 基板層
502 エピタキシャル層
503 アノード層
504 耐圧層
511 表面電極
512 表面接合電極
521 裏面電極
522 裏面接合電極
531 層間絶縁膜
532 コンタクトホール
533 表面保護膜
7 製造装置
701 レーザ光源
702 ミラー
703 アパーチャ
704 エキスパンダ
705 レンズ
706 密閉容器
707 ステージ
708 レーザ透過窓
709 減圧器
710 減圧バルブ
711 ガス導入ライン
712 ガスバルブ
720 コントローラ
750 照射光学系
770 レーザ光
780 原料ウェハ
9 半導体装置
901 ドレイン層
902 ドリフト層
903 ボディ層
904 ソース層
905 コンタクト層
906 耐圧層
911 表面電極
912 表面接合電極
921 裏面電極
922 裏面接合電極
931,935 層間絶縁膜
933 表面保護膜
940 ゲートトレンチ
941 トレンチ
942 ゲート絶縁膜
943 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素を材料とする半導体基板と、
半導体基板の表面に接する表面電極と、
半導体基板の裏面に接する裏面電極とを備えた半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の表面側に表面構造を形成する表面構造形成工程と、
半導体基板の裏面側に裏面構造を形成する裏面構造形成工程と、を有しており、
表面構造形成工程は、表面電極の材料となる表面電極材料層を半導体基板に接して成膜する表面電極材料層の成膜工程と、
表面電極材料層をアニール処理する第1アニール工程と、を含み、
裏面構造形成工程は、裏面電極の材料となる裏面電極材料層を半導体基板に接して成膜する裏面電極材料層の成膜工程と、
裏面電極材料層にレーザ照射を行って、裏面電極材料層と半導体基板とをオーミック接合させる第2アニール工程と、
を含み、表面構造形成工程の後に行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
第1アニール工程で表面電極材料層をアニール処理する温度は、第2アニール工程で裏面電極材料層をレーザアニール処理する温度よりも低い温度である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
表面構造形成工程は、半導体基板の表面側に表面保護膜を形成する表面保護膜形成工程をさらに含んでいる、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
第2アニール工程では、波長が150nm以上かつ400nm以下のUVレーザを裏面電極材料層に照射する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
表面構造形成工程と裏面構造形成工程の間に半導体ウェハを薄板化する薄板化工程(S112)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項6】
薄板化工程では、半導体ウェハを50μm以上かつ250μm以下の厚さに薄板化する、請求項5に記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項7】
表面電極は、Ti、Al、Mo、Niからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を主成分とし、
裏面電極は、Niを主成分とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項8】
裏面電極材料層をレーザアニール処理する温度は、900℃以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の半導体装置を製造する方法の第2アニール工程に用いる半導体装置の製造装置であって、
UVレーザ光源と、
密閉容器と、
密閉容器に設けられており、UVレーザ光を透過させる材料で形成されているレーザ透過窓と、
密閉容器内に設置されており、半導体ウェハを載置するステージと、
UVレーザ光源からのUVレーザ光を、レーザ透過窓を介してステージに載置された半導体ウェハに照射する照射光学系と、
密閉容器内にガスを導入するガス導入ラインと、
密閉容器内を減圧する減圧器とを備えている、半導体装置の製造装置。
【請求項10】
レーザ透過窓は、石英、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化リチウム(LiF)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を材料とする、請求項9に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項11】
UVレーザ光源の波長は、150nm以上かつ400nm以下である、請求項9または10に記載の半導体装置の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171551(P2011−171551A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34595(P2010−34595)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】