説明

半導体装置並びに封止用エポキシ樹脂組成物及びその製造方法

【課題】半導体素子の各電極パッドと回路基板とを接合する銅製ワイヤが腐食し難く、高温保管性、耐マイグレーション性、耐湿信頼性に優れた半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体素子1と回路基板6を封止用エポキシ樹脂組成物4により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤ3で接合されている半導体装置であって、前記銅製ワイヤが銅純度99.999重量%以上、硫黄含有量5ppm以下の銅製ワイヤであり、前記銅製ワイヤのワイヤ径が25μm以下であり、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置並びにこれに用いる封止用エポキシ樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。特に、半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤで接合されている半導体装置並びにこれに用いる封止用エポキシ樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からダイオード、トランジスタ、集積回路等の電子部品は、主にエポキシ樹脂組成物を用いて封止されている。特に集積回路では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤、及び溶融シリカ、結晶シリカ等の無機充填材を配合した耐熱性、耐湿性に優れたエポキシ樹脂組成物が用いられている。ところが近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、また半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体素子の封止に用いられているエポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。更に半導体装置に対するコストダウンの要求も激しく従来の金線接続ではコストが高いため、アルミ、銅合金、銅などの金属による接合も一部採用されている。しかしながら、特に自動車用途においては、コストに加え、150℃を超えるような高温環境下での高温保管特性、60℃、相対湿度60%を超えるような高温・高湿環境下での耐湿信頼性といった電気的信頼性も要求され、非金ワイヤではマイグレーション、腐食、電気抵抗値の増大といった問題があり必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
特に銅製ワイヤを用いた半導体装置においては、耐湿信頼性試験において銅が腐食し易すく信頼性にかけるといった問題から、ディスクリート用パワーデバイスといった線径の太いものでは使用実績があるものの、ワイヤ線径25μm以下のIC用途、特に回路基板起因の不純物の影響をも受ける片面封止パッケージへの適用は難しいのが現状である。
【0004】
銅製ワイヤ自身の加工性を改善することで接合部の信頼性を向上させようとした提案(例えば、特許文献1参照。)、銅線の純度を規定することで銅線単体としての長期保管時の腐食や空気中での腐食に対して改良をする提案(例えば、特許文献2参照。)など銅製ワイヤ単体での取り組みはあるものの、樹脂で封止されたパッケージすなわち半導体装置としての腐食、耐湿信頼性といった電気的信頼性については考慮されておらず、必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特公平06−017554号公報
【特許文献2】特公平08−004099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体素子の各電極パッドと回路基板とを接合する銅製ワイヤが腐食し難く、高温保管性、耐マイグレーション性、耐湿信頼性に優れた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置は、半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤで接合されている半導体装置であって、前記銅製ワイヤが銅純度99.999重量%以
上、硫黄含有量5ppm以下の銅製ワイヤであり、前記銅製ワイヤのワイヤ径が25μm以下であり、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体装置は、前記封止用エポキシ樹脂組成物がハイドロタルサイトを0.01重量%以上、3重量%以下の割合で含むものとすることができる。
【0009】
本発明の半導体装置は、前記封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる前記ハイドロタルサイトが下記一般式(1)で表される化合物であるものとすることができる。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明の半導体装置は、前記封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる前記ハイドロタルサイトが熱重量分析による250℃での重量減少をA重量%とし、200℃での重量減少をB重量%としたとき、A−B≦5重量%を満足するものとすることができる。
【0012】
本発明の半導体装置は、前記封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる前記ハイドロタルサイトが、予め200〜400℃で、30分間〜24時間熱処理したものとすることができる。
【0013】
自動車のエンジンルーム内で用いられる電子部品、パソコン用電源ユニット周辺の電子部品、家電用電源ユニット周辺の電子部品、及びLAN装置内の電子部品などの、60℃、相対湿度60%以上の高温高湿環境下での動作保証が要求される電子部品に使用されるものとすることができる。
【0014】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤで接合されており、前記銅製ワイヤが銅純度99.999重量%以上、硫黄含有量5ppm以下の銅製ワイヤであり、前記銅製ワイヤのワイヤ径が25μm以下である半導体装置に用いる封止用エポキシ樹脂組成物であって、該封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする。
【0015】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、前記封止用エポキシ樹脂組成物がハイドロタルサイトを0.01重量%以上、3重量%以下の割合で含むものとすることができる。
【0016】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ハイドロタルサイトが下記一般式(1)で表される化合物であるものとすることができる。
【0017】
【化1】

【0018】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ハイドロタルサイトが、熱重量分析による250℃での重量減少をA重量%とし、200℃での重量減少をB重量%としたとき、A−B≦5重量%を満足するものとすることができる。
【0019】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ハイドロタルサイトが、予め200〜400℃で、30分間〜24時間熱処理したものとすることができる。
【0020】
自動車のエンジンルーム内で用いられる電子部品、パソコン用電源ユニット周辺の電子部品、家電用電源ユニット周辺の電子部品、及びLAN装置内の電子部品などの、60℃、相対湿度60%以上の高温高湿環境下での動作保証が要求される電子部品に使用される半導体装置に用いるものとすることができる。
【0021】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、前述の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、ハイドロタルサイトを200〜400℃で熱処理するステップと、前記熱処理後のハイドロタルサイトをエポキシ樹脂とともに混合するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うと、半導体素子の各電極パッドと回路基板とを接合する銅製ワイヤが腐食を起こし難く、高温保管性、耐マイグレーション性、耐湿信頼性に優れた片面封止からなる半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の半導体装置及びそれに用いられる封止用エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の半導体装置は、半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤで接合されている半導体装置であって、前記銅製ワイヤが銅純度99.999重量%以上、硫黄含有量5ppm以下の銅製ワイヤであり、前記銅製ワイヤのワイヤ径が25μm以下であり、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする。また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、上記の半導体装置に用いる封止用エポキシ樹脂組成物であって、該封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする。これらにより、半導体素子の各電極パッドと回路基板とを接合する銅製ワイヤが腐食を起こし難く、耐湿信頼性、高温保管性に優れた半導体装置を得ることができるものである。以下、各構成について詳細に説明する。
【0024】
半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなる半導体装置においては、集積度の向上のため狭パッドピッチ、小ワイヤ径が要求され、具体的には、25μm以下、さらに好ましくは23μm以下のワイヤ径が求められている。ワイヤ径を
大きくすることで接合面積を増大し接合面積を増大し接合不足起因の耐湿信頼性の低下を改善するという考え方もあるが、このようにワイヤ径を太くすることによる改善手法では集積度の向上を図ることはできず、片面封止からなる半導体装置として満足出来るものが得られない。
【0025】
本発明の半導体装置に用いられる銅製ワイヤは、銅純度99.999重量%以上の銅製ワイヤ、更に好ましくは99.9995重量%以上の銅製ワイヤであることが好ましい。一般に銅に対して各種元素(ドーパント)を添加することで接合時における銅線先端のボール側形状の安定化を図ることが出来るが、0.001重量%以上の大量のドーパントを添加すると、銅製ワイヤが硬くなることで接合時に半導体素子の電極パッド側にダメージを与え、接合不足起因の耐湿信頼性の低下、高温保管特性の低下、電気抵抗値の増大といった不具合を生じる。これに対し、銅純度99.999重量%以上の銅製ワイヤであれば、銅製ワイヤは充分な柔軟性を有しているため、接合時にパッド側にダメージを与えることがなく、接合不足起因の耐湿信頼性の低下、高温保管特性の低下、電気抵抗値の増大といった不具合が発生する恐れがない。特に銅純度99.9995重量%以上のワイヤでは不純物が極端に低減化されたことにより、耐湿信頼性を飛躍的に向上することができる。
【0026】
また、本発明の半導体装置に用いられる銅製ワイヤは、硫黄含有量が5ppm以下の銅製ワイヤであることが好ましい。銅製ワイヤ中の硫黄含有率が上記範囲内であると、長期保管時の腐食や空気中での腐食に対しての安定性が改善される。
【0027】
本発明の半導体装置に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物は、上記半導体装置に用いる封止用エポキシ樹脂組成物であって、その硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であるものが好ましく、熱水抽出液のpHが4〜6であるものが特に好ましい。このような封止用エポキシ樹脂組成物を用いることで、ワイヤ線径25μm以下のIC用途の場合や、回路基板起因の不純物の影響をも受ける片面封止パッケージの場合においても、封止された成形品の状態で半導体素子の各電極パッドと回路基板とを接合する銅製ワイヤが腐食を起こし難く、耐湿信頼性、高温保管性に優れた半導体装置を得ることができるものである。硬化物の熱水抽出液のpHが上記範囲内である封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止を行うことにより半導体装置の耐湿信頼性を向上することができる理由は、次のように考えられる。
【0028】
通常、半導体素子上の電極パッドに使用されているアルミニウムは、pH4未満の強酸性域、pH9を超える強アルカリ域では容易に溶解腐食される場合があるが、60℃、相対湿度60%を以上の厳しい温度・湿度条件下では、半導体素子を封止するエポキシ樹脂組成物の硬化物中に含まれる加水分解性塩素、及び/又は、回路基板中に含まれる難燃剤由来の臭素、塩素、燐酸といったイオン性不純物の発生により、電極パッドと銅製ワイヤとの接合部近傍におけるpHが上記範囲内に入ってしまう場合がある。それにより、アルミニウム製電極パッドの腐食が進行し、銅製ワイヤとの接合部に空隙が生じることで、銅製ワイヤ接合部の腐食、クラックといった接合不良が起る。これに対して、硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7である封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止を行うと、60℃、相対湿度60%以上の厳しい温度・湿度条件下において、封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物中から加水分解塩素が発生したり、回路基板中からイオン性不純物が発生したりしても、pH緩衝作用により強酸性域又は強アルカリ域に到達するまでに、かなりの時間を要するようになり、耐湿信頼性を顕著に向上させることができるものである。
【0029】
本発明の半導体装置に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHは、次のように評価した。エポキシ樹脂組成物を成形後、175℃で8時間で後硬化させた後、粉砕した。得られた粉砕品5gに純水を加え50gとし、これを耐圧容器に入れPCT(125℃、圧力2.2×10Pa)で20時間熱水抽出した。得られた抽出液
のpHをpHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM−30S)で測定した。尚、熱水抽出液のpH測定に用いる封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物として、実際の半導体装置から切り出した樹脂硬化物を用いることもできる。
【0030】
本発明の半導体装置に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHを4〜7の範囲となるようにするためには、pH緩衝域がpH4〜7であるpH緩衝剤を用いることが好ましい。pH緩衝域がpH4〜7であるpH緩衝剤としては、例えばハイドロタルサイト、クエン酸/クエン酸ナトリウム、酒石酸/酒石酸ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの中でもハイドロタルサイトが好ましい。ハイドロタルサイトを用いることにより、耐湿信頼性をより向上させることができる。本発明の半導体装置に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物で利用することができるハイドロタルサイトとは水和物であって、水和物でないもの(「焼成ハイドロタルサイト」とも言われる。)を除くものであり、より具体的には、加熱処理を行っていないものであっても、500℃以下の温度で加熱処理を行ったものであってもよい。このようなハイドロタルサイトの場合は、層状で層間に炭酸イオンと水分を含んだ構造を有しているものであり、層間に炭酸イオンと水分を含んでいることでpH緩衝作用を有する。すなわち、水中にpH緩衝性をもつ炭酸イオンを放出することでpHが4〜7程度に維持できる。したがって、封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物中の加水分解塩素が遊離しpHが酸性側に傾くと、炭酸イオンの放出による中和作用でpHを一定に保つことができる。また、ハイドロタルサイトを構成している金属水酸化物の溶解中和により、pHをより安定化させることができる。さらに、層間の炭酸イオンと腐食性の塩素イオンの交換作用も期待できる。
【0031】
なお、pH緩衝剤のpH緩衝域については、次のように評価した。pH緩衝剤500mg、純水225ml、1N−NaCl水溶液25mlを混合し、これに1N−HCl水溶液25mlを加え攪拌し、15分放置した後にpHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM−30S)で測定したpHで評価した。
【0032】
ハイドロタルサイトのうちでは、例えば200〜400℃という比較的低温度で、30分間〜24時間程度熱処理したハイドロタルサイトが好ましく、250〜350℃で30分間〜24時間程度熱処理したハイドロタルサイトが特に好ましい。熱処理条件が上記範囲内であると、特にpH緩衝作用に優れる。上記下限値温度未満であると層間水を除去するのが困難となる場合があり、上記上限温度を超えると炭酸イオンまで除去される場合がある。
【0033】
このようなハイドロタルサイトは、例えば熱重量分析による250℃での重量減少をA重量%とし、200℃での重量減少をB重量%としたとき、A−B≦5%を満たすことが好ましく、A−B≦4%を満たすことが特に好ましい。重量減少が上記範囲内のハイドロタルサイトは、層間水が適度に除去されpH緩衝作用に優れるからである。熱重量分析は、例えば窒素雰囲気中で昇温速度20℃/分で加熱し測定することができる。
【0034】
このようなハイドロタルサイトは、例えば下記式(1)で示すことができ、より具体的には、MgAl(OH)16(CO)・mHO、MgZnAl(OH)12(CO)・mHO、等が挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
ハイドロタルサイトの含有量としては、封止用エポキシ樹脂組成物全体の0.01重量以上、3重量%以下の割合であることが好ましく、0.05重量%以上、2重量%以下の割合であることが特に好ましい。含有量が上記下限値を下回ると銅腐食防止効果が小さく耐湿信頼性を向上する効果が不充分となる場合があり、上記上限値を越えると、吸湿率が大きくなり、耐半田クラック性が低下する場合がある。
【0037】
本発明の半導体装置に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物としては、特に限定はされないが、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材が用いられる。
【0038】
封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。エポキシ樹脂全体の配合割合としては特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、3重量%以上、15重量%以下であることが好ましく、5重量%以上、13重量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂全体の配合割合が上記範囲内であると、耐半田性の低下、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0039】
封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができる硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、それらの具体例としてはフェノール樹脂系硬化剤、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物及びメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンなどが挙げられこれらを単独で用いても、2種以上の硬化剤を併用しても良い。
【0040】
これらの硬化剤の中でも特にフェノール樹脂系硬化剤を用いることが好ましい。フェノール樹脂系硬化剤は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフタレン骨格を持つもの等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。フェノール樹脂系硬化剤全体の配合割合としては特に限定され
ないが、樹脂組成物全体に対して、2重量%以上、8重量%以下であることが好ましく、2.5重量%以上、7重量%以下であることがより好ましい。フェノール樹脂系硬化剤の配合割合が上記範囲内であると、耐半田性の低下、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0041】
また、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合におけるエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤との配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、又は樹脂硬化物の物性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0042】
封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤(たとえば、フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基)との架橋反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。例えば、1、8−ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。硬化促進剤の配合割合としては特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、0.05重量%以上、1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上、0.5重量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤の配合割合が上記範囲内であると、硬化性の低下や流動性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0043】
硬化促進剤のうちでは、流動性の観点で、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物がより好ましい。ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いられるホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィンなどが挙げられる。また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いられるキノン化合物としては、例えば、1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、メトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノンなどが挙げられる。これらホスフィン化合物とキノン化合物との付加物のうち、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物が好ましい。ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、原料として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物とを両者が溶解する有機溶媒中で付加反応させて単離すればよい。
【0044】
封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、ガラス繊維等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。特に溶融シリカが好ましい。溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、含有量を高め、且つエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状シリカを主に用いる方がより好ましい。更に球状シリカの含有量を高めるためには、球状シリカの粒度分布をより広くとるよう調整することが好ましい。全無機充填材の含有割合は、成形性、信頼性のバランスから樹脂組成物全体に対して、84重量%以上、92重量%以下であることが好ましく、87重量%以上、92重量%以下であることが更に好ましい。上記下限値を下回わらない範囲であれば、低吸湿性、低熱膨張性が得られるため、耐半田性が不十分となる恐れが少ない。また、上記上限値を超えない範囲であれば、流
動性が低下し成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内のワイヤ流れ等の不都合が生じたりする恐れが少ない。
【0045】
無機充填材の最大粒径については、特に限定されないが、無機充填材の粗大粒子が狭くなったワイヤ間に挟まることによって生じるワイヤ流れ等の不具合の防止を考慮すると、105μm以上の粒子が1重量%以下であることが好ましく、75μm以上の粒子が1重量%以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明の半導体装置に用いる封止用エポキシ樹脂組成物は、更に必要に応じて、水酸化ジルコニウム等のアルミニウム腐食防止剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;シリコーンゴム等の低応力成分;カルナバワックス等の天然ワックス、合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤;酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。更に、必要に応じて無機充填材をエポキシ樹脂又はフェノール樹脂で予め処理して用いてもよく、処理の方法としては、溶媒を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や、直接無機充填材に添加し、混合機を用いて混合処理する方法等がある。
【0047】
本発明の半導体装置に用いる封止用エポキシ樹脂組成物は、前述の各成分を、例えば、ミキサー等を用いて常温混合したもの、更にその後、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したものを用いることができる。
【0048】
本発明の半導体装置は封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形して得られる。
【0049】
本発明で封止を行う半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
【0050】
本発明の半導体装置の形態としては、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、クワッド・フラット・ノンリード(QFN)等が挙げられる。上記トランスファーモールドなどの成形方法で封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0051】
図1は、本発明に係る片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。回路基板6上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドと回路基板6上の電極パッドとの間は銅製ワイヤ3によって接続されている。封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体4によって、回路基板6の半導体素子1が搭載された片面側のみが封止されている。回路基板6上の電極パッドは基板6上の非封止面側の半田ボール7と内部で接合されている。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
【0053】
(実施例1)
封止用エポキシ樹脂組成物の製造
エポキシ樹脂としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(E−1:日本化薬(株)製、EOCN1020、軟化点55℃、エポキシ当量196)15.28重量部と、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(H−1:住友ベークライト(株)製、PR−HF−3軟化点80℃、水酸基当量104)8.02重量部と、無機充填材として溶融球状シリカ(平均粒径26.5μm、105μm以上の粒子1%以下)75重量部と、pH緩衝剤としてpH緩衝剤(P−1):250℃で6時間熱処理したハイドロタルサイト(MgAl(OH)16(CO)・mHO、pH緩衝域4.7、熱重量分析による250℃の重量減少Aが13.23重量%、かつ200℃での重量減少Bが12.91重量%、A−B=0.32重量%)0.5重量部と、着色剤としてカーボンブラック0.3重量部と、シランカップリング剤としてエポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.2重量部と、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)0.3重量部と、離型剤としてカルナバワックス0.40重量部と、を常温でミキサーを用いて混合し、次に70〜100℃でロール混練し、冷却後粉砕して封止用エポキシ樹脂組成物を得た。mは0以上の整数である。
【0054】
なお、pH緩衝剤のpH緩衝域は、pH緩衝剤500mg、純水225ml、1N−NaCl水溶液25mlを混合し、これに1N−HCl水溶液25mlを加え攪拌し、15分放置した後にpHメーターで測定したpHで評価した(以下、同じ)。
【0055】
耐マイグレーション性、高温保管特性、耐湿信頼性評価に使用したワイヤは銅製ワイヤ(Cuワイヤ5N:銅純度99.999重量%、硫黄含有量0.1ppm、線径20μm)である。
【0056】
封止用エポキシ樹脂組成物を表1、表2に記載の配合とし、使用したワイヤは銅製ワイヤ(Cuワイヤ5N)の線径を表1、表2に記載のものとした以外は、実施例1と同様にした。下記に使用したエポキシ樹脂等について説明する(すでに説明済みのものは、省略する)。
【0057】
封止用エポキシ樹脂組成物を表3に記載の配合とし、使用したワイヤは下記のものとした以外は、実施例1と同様にした。
実施例20〜22には、銅製ワイヤ(Cuワイヤ5.5N:銅純度99.9995重量%、硫黄含有量0.12ppm、線径25μm)を用い、実施例23〜25には、銅製ワイヤ(Cuワイヤ6N:銅純度99.9999重量%、硫黄含有量0.05ppm、線径25μm)を用いた。
【0058】
エポキシ樹脂:
ビフェニル型エポキシ樹脂(E−2:ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000、融点105℃、エポキシ当量190)
ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(E−3:日本化薬(株)製、NC3000、軟化点58℃、エポキシ当量274)
【0059】
硬化剤:フェノールアラルキル樹脂(H−2:三井化学(株)製、XLC−4L、軟化点62℃、水酸基当量168)
ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(H−3:明和化成(株)製、MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量203)
【0060】
pH緩衝剤(P−2):250℃で16時間熱処理したハイドロタルサイト(MgZnAl(OH)12(CO)・mHO、pH緩衝域4.3、熱重量分析による250℃の重量減少Aが6.07重量%、かつ200℃での重量減少Bが4.30重量%、A−B=1.78重量%)
pH緩衝剤(P−3):230℃で1時間熱処理したハイドロタルサイト(MgAl(OH)16(CO)・mHO、pH緩衝域5.5、熱重量分析による250℃の重量減少Aが8.76重量%、かつ200℃での重量減少Bが4.12重量%、A−B=4.64重量%) mは0以上の整数である。
【0061】
(比較例1)
実施例同様に封止用エポキシ樹脂組成物を作成した。使用したワイヤは銅製ワイヤ(Cuワイヤ4N:銅純度99.99重量%、硫黄含有率13ppm、線径20μm)である。
【0062】
(比較例2〜19)
封止用エポキシ樹脂組成物を表1、表2に記載の配合とし、使用したワイヤを表1、表2に記載のものとした以外は、実施例1と同様にした。下記に使用したエポキシ樹脂等について説明する(すでに説明済みのものは、省略する)。
【0063】
pH緩衝剤:
pH緩衝剤(P−4):炭酸マグネシウム(神島化学工業(株)製、炭酸マグネシウム金星、強熱減量54.0重量%、MgO42.6重量%)、pH緩衝域9.3
【0064】
銅製ワイヤ:
銅製ワイヤ(Cuワイヤ5NS:銅純度99.999重量%、硫黄含有率6ppm、線径23μm)
【0065】
各実施例及び各比較例で得られた封止用エポキシ樹脂組成物について、以下の評価を行った。得られた結果を表1、表2、表3に示す。
【0066】
評価方法
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し
、流動長を測定した。単位はcm。80cm以下であるとパッケージ未充填などの成形不良が生じる場合がある。
【0067】
硬化物の熱水抽出液のpH:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入、成形して、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作製したのち、後硬化として175℃で8時間加熱処理し、更にΦ0.5mm以下の粒径となるように粉砕を行った。得られた粉砕品5gに純水を加え50gとし、これを耐圧容器に入れPCT(125℃、圧力2.2×10Pa)で20時間熱水抽出した。得られた抽出液のpHをpHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM−30S)で測定した。
【0068】
吸湿率:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入、成形して、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作製したのち、後硬化として175℃で8時間加熱処理した。試験片の吸湿処理前の重量と、85℃、相対湿度60%の環境下で168時間加湿処理した後の重量を測定し、試験片の吸湿率を百分率で示した。単位は重量%。
【0069】
高温保管特性:アルミニウム電極パッドを形成したTEG(TEST ELMENT
GROUP)チップ(3.5mm×3.5mm)を352ピンBGA(基板は厚さ0.56mm、ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、パッケージサイズは30×30mm、厚さ1.17mm)のダイパッド部に接着し、TEGチップのアルミニウム電極パッドと基板側端子をデージーチェーンになるようにワイヤボンディングした。これを、低圧トランスファー成形機(TOWA製、Yシリーズ)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分の条件でエポキシ樹脂組成物により封止成形して、352ピンBGAパッケージを作製した。作製したパッケージを、175℃、8時間で後硬化した後、高温保管試験(200℃)を行った。配線間の電気抵抗値が初期値に対し20%増加したパッケージを不良と判定し、不良になるまでの時間を測定した。不良時間はn=5ヶの平均値。単位は時間。全てのパッケージで192Hrまで不良発生のなかったものは192<とした。
【0070】
耐マイグレーション性1:アルミニウム電極パッドを形成したTEGチップ(3.5mm×3.5mmアルミニウム回路は保護膜なしの剥き出し)を352ピンBGA(基板は厚さ0.56mm、ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、パッケージサイズは30×30mm、厚さ1.17mm)のダイパッド部に接着し、TEGチップのアルミニウム電極パッドとリードフレームの各リードとをワイヤボンディングした。これを、低圧トランスファー成形機((TOWA製、Yシリーズ)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分の条件でエポキシ樹脂組成物により封止成形して、352ピンBGAパッケージを作製した。作製したパッケージを、175℃、8時間で後硬化した後、導通していない隣同士の端子間に85℃/85%RH中で20Vの直流バイアス電圧を168Hr掛けて、端子間の抵抗値変化をみた。n=5で試験を行い、初期値の1/10に抵抗値が低下したものをマイグレーション発生と判定した。不良時間はn=5ヶの平均値。全てのパッケージで168時間まで初期値の1/10までの抵抗値低下がなかったものは168<とした。
【0071】
耐マイグレーション性2:上記耐マイグレーション性1の評価において、試験条件を85℃/85%RH中で40Vの直流バイアス電圧とした他は、耐マイグレーション性1と同様にして評価を行った。尚、この耐マイグレーション性2の評価については、実施例15、16、18及び実施例20〜25のみにおいて実施した。
【0072】
耐湿信頼性1:アルミニウム回路を形成したTEGチップ(3.5mm×3.5mm、アルミニウム回路は保護膜なしの剥き出し)を352ピンBGA(基板は厚さ0.56mm、ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、パッケージサイズは30×30mm、厚さ1.17mm)のダイパッド部に接着し、アルミニウムパッドと基板側端子をワイヤボンディングした。これを、低圧トランスファー成形機(TOWA製、Yシリーズ)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分の条件でエポキシ樹脂組成物により封止成形して、352ピンBGAパッケージを作製した。作製したパッケージを、175℃、8時間で後硬化した後、IEC68−2−66に準拠しHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験を行った。試験条件は130℃85%RH20V印加、168時間処理をして回路のオープン不良有無を測定した。1パッケージあたり4端子を持ち5パッケージで計20回路を評価に用いた。単位は不良回路の個数。
【0073】
耐湿信頼性2:上記耐湿信頼性1の評価において、試験条件を140℃/85%RH中で20V印加とした他は、耐湿信頼性1と同様にして評価を行った。尚、この耐湿信頼性2の評価については、実施例15、16、18及び実施例20〜25のみにおいて実施した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1、表2から明らかなように、実施例1〜19は、高温保管特性、耐マイグレーション性、耐湿信頼性に優れ、特に実施例7〜9及び実施例18、19は流動性にも優れていた。また、表3から明らかなように、実施例20〜25は、より過酷な試験条件下における耐マイグレーション性、耐湿信頼性においても良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明により得られる半導体装置は、半導体素子の各電極パッドと回路基板とを接合する銅製ワイヤがマイグレーションを起こし難く、耐湿信頼性、高温保管性に優れたものであるため、工業的な樹脂封止型半導体装置、特に片面封止からなる表面実装用の樹脂封止型半導体装置の製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 銅線
4 封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体
5 ソルダーレジスト
6 回路基板
7 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤで接合されている半導体装置であって、前記銅製ワイヤが銅純度99.999重量%以上、硫黄含有量5ppm以下の銅製ワイヤであり、前記銅製ワイヤのワイヤ径が25μm以下であり、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記封止用エポキシ樹脂組成物がハイドロタルサイトを0.01重量%以上、3重量%以下の割合で含むものである請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる前記ハイドロタルサイトが下記一般式(1)で表される化合物である請求項2に記載の半導体装置。
【化1】

【請求項4】
前記封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる前記ハイドロタルサイトが熱重量分析による250℃での重量減少をA重量%とし、200℃での重量減少をB重量%としたとき、A−B≦5重量%を満足するものである請求項2又は請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる前記ハイドロタルサイトが、予め200〜400℃で熱処理したものである請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
自動車のエンジンルーム内で用いられる電子部品、パソコン用電源ユニット周辺の電子部品、家電用電源ユニット周辺の電子部品、及びLAN装置内の電子部品などの、60℃、相対湿度60%以上の高温高湿環境下での動作保証が要求される電子部品に使用されるものである請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体素子と回路基板を封止用エポキシ樹脂組成物により片面封止してなり、前記半導体素子の各電極パッドと前記回路基板との電気的接続が銅製ワイヤで接合されており、前記銅製ワイヤが銅純度99.999重量%以上、硫黄含有量5ppm以下の銅製ワイヤであり、前記銅製ワイヤのワイヤ径が25μm以下である半導体装置に用いる封止用エポキシ樹脂組成物であって、該封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱水抽出液のpHが4〜7であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記封止用エポキシ樹脂組成物がハイドロタルサイトを0.01重量%以上、3重量%以下の割合で含むものである請求項7に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記ハイドロタルサイトが下記一般式(1)で表される化合物である請求項8に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

【請求項10】
前記ハイドロタルサイトが、熱重量分析による250℃での重量減少をA重量%とし、200℃での重量減少をB重量%としたとき、A−B≦5重量%を満足するものである請求項8又は請求項9に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記ハイドロタルサイトが、予め200〜400℃で熱処理したものである請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
自動車のエンジンルーム内で用いられる電子部品、パソコン用電源ユニット周辺の電子部品、家電用電源ユニット周辺の電子部品、及びLAN装置内の電子部品などの、60℃、相対湿度60%以上の高温高湿環境下での動作保証が要求される電子部品に使用される半導体装置に用いるものである請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項7記載の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、ハイドロタルサイトを200〜400℃で熱処理するステップと、前記熱処理後のハイドロタルサイトをエポキシ樹脂とともに混合するステップと、を有することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−152561(P2009−152561A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287524(P2008−287524)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】