説明

半導体装置

【課題】別々の配線から電源電力が供給される半導体素子が形成された互いに独立した複数のウェルを配線の延設方向に沿って隣り合わせて配置することを可能とする。
【解決手段】半導体基板20の第1ウェル領域22に形成された複数の半導体素子の少なくとも一部に電源電力を供給する第1配線36と、第1配線36上に形成された第1絶縁層46と、半導体基板20の第1ウェル領域22とは独立している第2ウェル領域24に形成された複数の半導体素子の少なくとも一部に電源電力を供給する第2配線38と、を設け、第1配線36と第2配線38とを第1絶縁層46によって電気的に絶縁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源配線構造に特徴を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5の平面図及び図6の断面図に従来の半導体装置の構成を示す。図6は、図5のラインa−aに沿った断面図を示す。
【0003】
半導体装置は、第1ウェル12及び第2ウェル14が表面領域に形成された半導体基板10を含む。第1ウェル12と第2ウェル14は、半導体基板10の表面内において互いに接触し合わない独立したウェルとして形成される。そして、第1ウェル12には素子13、第2ウェル14には素子15が形成される。第1ウェル12及び第2ウェル14の領域上を含む半導体基板10上には絶縁膜16が形成され、その絶縁膜16を挟んで半導体基板10上に配線層が形成される。配線層は、アルミニウム、銅又はそれらの合金等の導電体の第1配線18a,第2配線18bを含む。
【0004】
第1配線18aは、第1ウェル12を含む一又は複数のウェルに形成された半導体素子に電源VDD1を供給するために用いられる。第2配線18bは、第2ウェル14を含む電源VDD1が供給されていない一又は複数のウェルに形成された半導体素子に電源VDD2を供給するために用いられる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−330552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1配線18aは、半導体基板10の表面において第1ウェル12の形成領域に沿うように延設される。第2配線18bは、半導体基板10の表面において第2ウェル14の形成領域に沿うように延設される。ここで、絶縁膜16上で第1配線18aと第2配線18bとが交差しないようにするためには第1配線18aと第2配線18bとを平行に延設する必要がある。
【0007】
しかしながら、第1配線18aと第2配線18bとを平行に延設した場合、第1ウェル12に対して第1配線18aの延設方向に隣り合うウェル領域Aには第1配線18aにより電源電力を供給する他なく、第2ウェル14に対して第2配線18bの延設方向に隣り合うウェル領域Bには第2配線18bにより電源電力を供給する他ない。しかしながら、第1配線18aによって供給される電源VDD1によって駆動される一又は複数のウェル領域と、第2配線18bによって供給される電源VDD2によって駆動される一又は複数のウェル領域と、のウェル面積の差が大きいと、第1配線18a又は第2配線18bの延設方向に沿ったウェル領域の面積の差の分だけ空き領域となるため、チップレイアウトにおいて無駄な領域が発生してしまうという問題がある。これに伴って、半導体装置のサイズが無駄に大きくなるという問題も生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、複数の半導体素子が形成された半導体装置であって、半導体基板の第1ウェルに形成された前記複数の半導体素子の少なくとも一部に電源電力を供給する第1配線と、前記第1配線上に形成された第1絶縁層と、前記半導体基板の前記第1ウェルとは独立している第2ウェルに形成された前記複数の半導体素子の少なくとも一部に電源電力を供給する第2配線と、を備え、前記第1配線と前記第2配線とは前記第1絶縁層によって電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記第1配線上に形成された第2絶縁層と、前記第2絶縁層上に形成され、前記第1配線、前記第2配線及び前記半導体基板の少なくとも1つ接続される第3配線と、をさらに備え、前記第1配線と前記第3配線とは前記第2絶縁層を挟んで積層されていると共に、前記第3配線と前記第2配線とは前記第1絶縁層を挟んで積層されていることが好適である。
【0010】
また、前記第1配線における主となる配線方向と、前記第2配線における主となる配線方向と、が同一方向であることが好適である。
【0011】
このような構成において、前記第1配線及び前記第2配線のいずれか一方による電源電力の供給を続けつつ、他方による電源電力の供給を停止させることができる。
【0012】
例えば、前記第1ウェルに形成されている半導体素子はシフトレジスタを構成し、前記第2ウェルに形成されている半導体素子は前記シフトレジスタに保持されている情報の少なくとも一部を待避するメモリを構成し、前記第1配線による前記シフトレジスタへの電源電力の供給を停止する前に前記メモリに前記シフトレジスタに保持されている情報の少なくとも一部を待避させ、前記第1配線による前記シフトレジスタへの電源電力の供給を再開した後に前記シフトレジスタに前記メモリに保持されている情報の少なくとも一部を戻すことを特徴とする半導体装置とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、別々の配線から電源電力が供給される半導体素子が形成された互いに独立した複数のウェルを配線の延設方向に沿って隣り合わせて配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明実施の形態における半導体装置の構成を図1の平面図及び図2の断面図に示す。図2は、図1の平面図におけるb−bラインに沿った断面図である。なお、図1及び図2に示す半導体装置の構成は特に特定の回路素子を表したものではない。
【0015】
本発明実施の形態における半導体装置は、半導体基板20、第1ウェル領域22、第2ウェル領域24、第1活性領域26、第2活性領域28、第3活性領域30、第4活性領域32、第5活性領域34、第1配線36、第2配線38、第3配線40、接地配線42、ベース絶縁層44、第1絶縁層46及び第2絶縁層48を含んで構成される。
【0016】
半導体基板20は、P型の導電性を有する半導体基板である。半導体基板20は、例えば、シリコン基板、砒化ガリウム基板等とすることができる。
【0017】
第1ウェル領域22は、N型の導電性を有する領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第1ウェル領域22は、半導体基板20と逆の導電性を有するN型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第1ウェル領域22におけるN型ドーパントのドーピング濃度は半導体基板20のP型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。
【0018】
第2ウェル領域24は、N型の導電性を有する領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第2ウェル領域24は、半導体基板20と逆の導電性を有するN型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第2ウェル領域24におけるN型ドーパントのドーピング濃度は半導体基板20のP型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。第2ウェル領域24は、第1ウェル領域22と半導体基板20において平面的に接触しないように分離して形成される。
【0019】
第1活性領域26は、N型の導電性を有するコンタクト領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第1活性領域26は、半導体基板20の表面に形成された第1ウェル領域22に取り囲まれるように形成される。第1活性領域26は、N型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第1活性領域26におけるN型ドーパントのドーピング濃度は第1ウェル領域22のN型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。
【0020】
第2活性領域28は、N型の導電性を有する素子形成領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第2活性領域28は、例えば、半導体装置に形成される電界効果型トランジスタのドレイン領域やソース領域として使用される。第2活性領域28は、半導体基板20の表面における第1ウェル領域22と第2ウェル領域24との間に形成される。第2活性領域28は、N型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第2活性領域28におけるN型ドーパントのドーピング濃度は半導体基板20のP型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。
【0021】
第3活性領域30は、P型の導電性を有する素子形成領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第3活性領域30は、例えば、半導体装置に形成される電界効果型トランジスタのドレイン領域やソース領域として使用される。第3活性領域30は、半導体基板20の表面に形成された第2ウェル領域24に取り囲まれるように形成される。第3活性領域30は、P型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第3活性領域30におけるP型ドーパントのドーピング濃度は第2ウェル領域24のN型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。
【0022】
第4活性領域32は、N型の導電性を有するコンタクト領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第4活性領域32は、半導体基板20の表面に形成された第2ウェル領域24に取り囲まれるように形成される。第4活性領域32は、N型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第4活性領域32におけるN型ドーパントのドーピング濃度は第2ウェル領域24のN型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。
【0023】
第5活性領域34は、P型の導電性を有するコンタクト領域であり、半導体基板20の表面に形成される。第5活性領域34は、半導体基板20の表面において第2ウェル領域24を挟んで第1ウェル領域22と反対側に配設される。第5活性領域34は、接地配線42のコンタクトに使用される。第5活性領域34は、P型ドーパントを半導体基板20の表面に添加して形成される。第5活性領域34におけるP型ドーパントのドーピング濃度は半導体基板20のP型ドーパントのドーピング濃度よりも高くする。
【0024】
第1配線36は、半導体装置における第1の電源ラインとなる配線である。第1配線36は、半導体基板20の表面上にベース絶縁層44を挟んで形成される。すなわち、第1配線36は半導体装置の第1層目の配線層として形成される。第1配線36には電源電圧VDD1が印加され、コンタクトホールを介して第1ウェル領域22に形成された第1活性領域26等に電源電圧VDD1を供給する。
【0025】
第2配線38は、半導体装置における第2の電源ラインとなる配線である。第2配線38は、半導体基板20の表面上にベース絶縁層44,第1絶縁層46及び第2絶縁層48を挟んで形成される。すなわち、第2配線38は半導体装置の第3層目の配線層として形成される。第2配線38は、第1絶縁層46又は第2絶縁層48により第1配線36から電気的に絶縁されている。また、一般的に、第2配線38は、第1配線36とほぼ平行に設けられる。
【0026】
本実施の形態における半導体装置は、第1配線36とは異なる層の配線である第2配線38により電源電圧VDD2を供給する点に1つの特徴を有する。第2配線38には電源電圧VDD2が印加され、コンタクトホールを介して第2ウェル領域24に形成された第4活性領域32等に電源電圧VDD2を供給する。電源電圧VDD2は、電源電圧VDD1とは異なる電圧としてもよい。
【0027】
第3配線40は、半導体装置の第2層目の配線層として形成される。第3配線40は、半導体装置において主に第1配線36及び第2配線38と交差する方向への配線に用いられる。第3配線40は、半導体基板20の表面上にベース絶縁層44及び第1絶縁層46を挟んで形成され、その上に第2絶縁層48が形成される。第3配線40は、コンタクトホールを介して、第1配線36、第2配線38及び半導体基板20の各領域に接続される。
【0028】
接地配線42は、半導体装置における接地ラインとなる配線である。接地配線42は、半導体基板20の表面上にベース絶縁層44を挟んで形成される。すなわち、接地配線42は半導体装置の第1層目の配線層として形成される。接地配線42は接地され、コンタクトホールを介して半導体基板20に形成された第5活性領域34等を接地する。
【0029】
なお、第1配線36、第2配線38、第3配線40及び接地配線42はアルミニウム、銅、銀、金及びそれらの合金等の導電体で形成することができる。また、ベース絶縁層44、第1絶縁層46及び第2絶縁層48は、酸化シリコン、窒化シリコン、チタン酸バリウム等の絶縁材料又は高誘電材料で形成することができる。ただし、本発明の適用範囲はこれらに限定されるものではない。
【0030】
このように、第1配線36と第2配線38とを電気的に絶縁された構成とすることによって、同一のセル内において互いに独立した複数のウェルを配線の延設方向に沿って隣り合わせて配置することができる。例えば、図3の平面図に示すように、第1配線36から電源電圧VDD1が供給される第1ウェル領域22は第1配線36の延設方向に沿って配置し、第2配線38から電源電圧VDD2が供給される第2ウェル領域24は第1ウェル領域22の延設長さよりも短い延設長さを有する領域とすることが可能となる。
【0031】
また、第1配線36と第2配線38とを別々に制御することが可能である。例えば、第1配線36から電源電圧VDD1が供給される第1ウェル領域22に形成される半導体素子と、第2別々の配線から電源電力が供給される第2ウェル領域24に形成された半導体素子と、に対する電源供給を独立に制御することが可能となる。例えば、第1配線36に印加される電源電圧VDD1と第2配線38に印加される電源電圧VDD2とを異なる電圧としてもよい。また、第1配線36及び第2配線38のいずれか一方への電源の供給を停止させ、他方の電源の供給のみ続けることによって半導体装置をスタンバイモードにすることも可能である。
【0032】
例えば、本実施の形態における半導体装置は、図4に示すようなリテンション機能を有するフリップフロップ回路に適用することが好適である。
【0033】
リテンション機能を有するフリップフロップ回路は、フリップフロップへの電源の供給を停止させた時にデータを保持するためのリテンション用のラッチ部50を含んで構成される。電源供給を停止する前にスレーブ端の値をリテンション用のラッチ部50に保存した後、電源供給を停止させる。電源停止に伴ってマスタスレーブラッチ52,54のデータが消失されても、ラッチ部50に電源を供給し続けることによってラッチ部50に保持されたデータは保持し続けることができる。そして、再びマスタスレーブラッチ52,54に電源を供給した時にラッチ部50に保持されているデータをスレーブ端に戻すことができる。
【0034】
例えば、第1ウェル領域22にはマスタスレーブラッチ52,54を含むシフトレジスタを構成し、第2ウェル領域24にはリテンション用のラッチ部50を形成する。これにより、第1配線36から第1ウェル領域22への電源供給を停止させたときには、第2ウェル領域24には第2配線38からの電源供給を継続し、第2ウェル領域24に形成したラッチ部50にデータを待避させておくことができる。
【0035】
ただし、本実施の形態における半導体装置の適用範囲はこれに限定されるものではなく、他の機能を有する回路に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の具体的な構成例を示す平面図である。
【図4】リテンション機能を有するフリップフロップ回路の構成を示す図である。
【図5】従来の半導体装置の構成を示す平面図である。
【図6】従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 半導体基板、12 第1ウェル、14 第2ウェル、16 絶縁膜、18a 第1配線、18b 第2配線、20 半導体基板、22 第1ウェル領域、24 第2ウェル領域、26 第1活性領域、28 第2活性領域、30 第3活性領域、32 第4活性領域、34 第5活性領域、36 第1配線、38 第2配線、40 第3配線、42 接地配線、44 ベース絶縁層、46 第1絶縁層、48 第2絶縁層、50 ラッチ部、52,54 マスタスレーブラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子が形成された半導体装置であって、
半導体基板の第1ウェルに形成された前記複数の半導体素子の少なくとも一部に電源電力を供給する第1配線と、
前記第1配線上に形成された第1絶縁層と、
前記半導体基板の前記第1ウェルとは独立している第2ウェルに形成された前記複数の半導体素子の少なくとも一部に電源電力を供給する第2配線と、
を備え、
前記第1配線と前記第2配線とは前記第1絶縁層によって電気的に絶縁されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1配線上に形成された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層上に形成され、前記第1配線、前記第2配線及び前記半導体基板の少なくとも1つ接続される第3配線と、をさらに備え、
前記第1配線と前記第3配線とは前記第2絶縁層を挟んで積層されていると共に、前記第3配線と前記第2配線とは前記第1絶縁層を挟んで積層されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置であって、
前記第1配線における主となる配線方向と、前記第2配線における主となる配線方向と、が同一方向であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の半導体装置であって、
前記第1配線及び前記第2配線のいずれか一方による電源電力の供給を続けつつ、他方による電源電力の供給を停止させることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第1ウェルに形成されている半導体素子はシフトレジスタを構成し、
前記第2ウェルに形成されている半導体素子は前記シフトレジスタに保持されている情報の少なくとも一部を待避するメモリを構成し、
前記第1配線による前記シフトレジスタへの電源電力の供給を停止する前に前記メモリに前記シフトレジスタに保持されている情報の少なくとも一部を待避させ、
前記第1配線による前記シフトレジスタへの電源電力の供給を再開した後に前記シフトレジスタに前記メモリに保持されている情報の少なくとも一部を戻すことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−73904(P2010−73904A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240022(P2008−240022)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】