説明

半導体製造方法

【課題】ウェーハ不純物のエピタキシャル層へのオートドーピングを抑え、特性のばらつきを生じることなく、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体ウェーハ、半導体装置を形成することが可能な半導体製造方法を提供する。
【解決手段】反応室内でウェーハを保持し、反応室内を、所定の圧力に制御し、ウェーハを加熱し、回転させながら、上方からウェーハ上にプロセスガスを整流して供給し、余剰なプロセスガスおよびプロセスガスより生成された反応副生成物を含むウェーハ上の排ガスを、ウェーハの端部上の主流速が0.7〜2.0m/secとなるように制御して、ウェーハ上より外周方向に排出し、ウェーハ上にエピタキシャル層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェーハ上に、加熱しながらプロセスガスを供給し、高速回転しながら成膜を行なう半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造に用いられるSiウェーハとして、高不純物濃度のCZウェーハ上に、低不純物濃度で欠陥の少ないエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハが用いられる。このようなエピタキシャルウェーハを用いることにより、コストの安いCZウェーハを用いながら、接合耐圧が高く、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体装置を形成することができる。
【0003】
このようなエピタキシャルウェーハを形成する際、加熱により高不純物濃度のCZウェーハの裏面あるいは側面より不純物の外方拡散が発生し、エピタキシャル層にドーピングされるいわゆるオートドーピング現象が発生する。そのため、面内抵抗にばらつきが生じるという問題が生じる。そこで、通常は裏面に酸化膜を形成することにより、不純物の外方拡散を抑制する手法がとられている。
【0004】
しかしながら、新たに裏面酸化膜を形成するための工程を要することから、生産性が低下し、コストアップとなってしまう。また、裏面にウェーハと熱膨張率の異なる酸化膜を形成すると、熱履歴により、ウェーハが反り、均一な成膜が困難となるとともに、凹凸に変形してウェーハが跳ね、ウェーハを所望の位置に保持できなくなるといった問題が生じる。
【0005】
オートドーピングを抑制する新規な手法としては、ウェーハ裏面から拡散する不純物を排出する手法が提案されている(例えば特許文献1など参照)。しかしながら、このような手法では、装置構成が複雑になる上、ウェーハ側面からの外方拡散によるオートドーピングを抑制することは困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−41436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特に側面からの外方拡散によるオートドーピングを抑制することが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、ウェーハ不純物のエピタキシャル層へのオートドーピングを抑え、特性のばらつきを生じることなく、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体ウェーハ、半導体装置を形成することが可能な半導体製造方法を提供することを特徴とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体製造方法は、反応室内でウェーハを保持し、反応室内を、所定の圧力に制御し、ウェーハを加熱し、回転させながら、上方からウェーハ上にプロセスガスを整流して供給し、余剰なプロセスガスおよびプロセスガスより生成された反応副生成物を含むウェーハ上の排ガスを、ウェーハの端部上の主流速が0.7〜2.0m/secとなるように制御して、ウェーハ上より外周方向に排出し、ウェーハ上にエピタキシャル層を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体製造方法においては、ウェーハを、600〜1300rpmで回転させることが望ましい。
【0011】
また、本発明の半導体製造方法において、排ガスのウェーハの端部上の流速は、プロセスガスの供給流量を制御することにより調整されることが望ましい。
【0012】
また、本発明の半導体製造方法において、排ガスのウェーハの端部上の流速は、ウェーハを保持するウェーハ保持部材の端部と反応室の壁面との距離を制御することにより調整されることが望ましい。
【0013】
さらに、本発明の半導体製造方法は、ウェーハが、形成されるエピタキシャル層より高濃度の不純物を含み、ウェーハの少なくとも裏面及び側面より不純物が外方拡散されるとき、特に有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体製造方法により、ウェーハ不純物のエピタキシャル層へのオートドーピングを抑え、特性のばらつきを生じることなく、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体ウェーハ、半導体装置を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一態様における半導体製造装置の断面図。
【図2】本発明の一態様におけるガスの流れを示す図。
【図3】本発明の一態様における半導体製造装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1に本実施形態に用いられる半導体製造装置の断面図を示す。図に示すように、ウェーハwが成膜処理される反応室11には、導入されたウェーハを保持するウェーハ保持部材であるホルダー12が設けられ、その下部にホルダー12を支持するリング13が設けられている。このリング13の内部には、ウェーハを加熱するインヒータ14a、アウトヒータ14bと、リフレクタ15が設置されている。そして、このリング13は、反応室11下部の開口部を介して、ウェーハwを回転させる回転駆動機構16と接続されている。
【0018】
反応室11上部には、ガス種およびその流量を制御する機構(図示せず)と接続され、反応室11に所定流量のプロセスガスを供給するガス供給口17と、圧力計(図示せず)、ポンプ(図示せず)などから構成される反応室11内を所定の圧力に制御する機構と接続され、反応室11より所定の流量でガスを排出するガス排出口18が設置されている。
【0019】
そして、回転体13の上方には、供給されたプロセスガスを整流してウェーハ上に供給する整流板19が設けられ、反応室11の壁面を覆うライナー20と一体化されている。
【0020】
このような半導体製造装置を用いて、例えばSiウェーハ上にSiエピタキシャル膜を形成する。先ず、例えば高濃度に不純物(B:ホウ素)がドープされたSiからなるφ200mmのウェーハwを、反応室11に導入し、ホルダー12上に載置する。なお、ウェーハwには、オートドーピングを抑制するために有効な裏面酸化膜は形成されていない。そして、ウェーハwの温度が1080℃となるように、インヒータ14a、アウトヒータ14bの温度を制御するとともに、ウェーハwを、回転駆動機構16により、例えば900rpmで回転させる。
【0021】
そして、ガス供給口17より、プロセスガスを、例えばジクロロシラン(以下DCSと記す):0.145SLM(0.245Pa・m/s)、H(キャリアガス):58.5SLM(98.9Pa・m/s)で導入し、整流板19を介して整流状態でウェーハw上供給する。さらに、ガス排出口18からの排出量を調整し、反応室11内の圧力を40kPaとなるように制御して、ウェーハw上にSiエピタキシャル膜を成長させる。
【0022】
図2に、ウェーハw端部におけるガスの流れと不純物の移動を模式的に示す。ウェーハw上に供給され、余剰となったDCSを含むプロセスガス、反応副生成物であるHClなどの排ガスは、矢印で示すように、ウェーハwの回転により外周方向に排出される。一方、ウェーハw中の不純物(B)は、その一部が加熱による固相拡散により、形成されるエピタキシャル層に移動するとともに、破線矢印で示すように、その裏面および側面より、外方拡散によりウェーハwとホルダー12との間隙をとおり上方に移動する。
【0023】
このとき、ウェーハw上には、例えば7mm程度の反応境界層が形成されており、ウェーハwの端部上の主流速、すなわち反応境界層上の流速が0.7〜2.0m/secとなるように制御されている。そして、このように制御されることにより、ウェーハwの端部上の排ガスの主流は、端部上方で対流を発生させることなく層流となるとともに、反応境界層はウェーハw表面から主流まで速度勾配を有する層流となる。外方拡散した不純物(B)は、ウェーハw上で対流しないため、ウェーハw上のエピタキシャル層にオートドーピングされることなく、排ガスとともにウェーハwの外周方向に排出される。
【0024】
このようにして、裏面酸化膜を形成することなくオートドーピングを抑制することができ、特性のばらつきを生じることなく、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体ウェーハ、半導体装置を形成することが可能となる。
【0025】
(実施形態2)
図3に本実施形態に用いられる半導体製造装置の断面図を示す。図に示すように、反応室11の構成は実施形態1とほぼ同様であるが、整流板の下部に環状の整流フィンが固定されている点で異なっている。
【0026】
すなわち、上端の内径より下端の内径が大きく、石英、SiCなどで形成され、ウェーハw上から外周方向に排出されるガスを下方に整流するための環状の整流フィン21が、整流板19および反応室11の壁面を覆うライナー20と一体化されている。そして、昇降機構22と接続され、昇降可能となっている。
【0027】
このような半導体製造装置を用いて、先ず、実施形態1と同様に、例えばφ200mmのウェーハwを、反応室11に導入し、ホルダー12上に載置する。次いで、昇降機構22によりライナー20を降下させて、整流板19とウェーハw、および整流フィン21とホルダー上面を近づけ、ホルダー12と反応室の壁面を構成する整流フィン21との距離を所定の値となるように制御する。このとき、水平距離より垂直距離を制御することがより有効である。そして、このように制御することにより、ウェーハwの端部上の排ガスの主流速を、0.7〜2.0m/secとする。
【0028】
なお、壁面とは、必ずしも反応室自体の壁面ではなく、排ガスが到達する面を意味する。具体的には、整流フィンの斜面、ライナーの壁面などである。
【0029】
そして、実施形態1と同様に、例えばSiウェーハ上にSiエピタキシャル膜を形成する。このとき、成膜条件は、例えばウェーハ温度:1080℃、ウェーハ回転速度:900rpm、プロセスガスの導入条件を、DCS:0.25SLM(0.423Pa・m/s)、H(キャリアガス):50SLM(84.5Pa・m/s)、反応室11内の圧力:40kPaとする。
【0030】
外方拡散した不純物(B)は、実施形態1と同様に、ウェーハw上で対流しないため、ウェーハw上のエピタキシャル層にオートドーピングされることなく、排ガスとともにウェーハwの外周方向に排出される。
【0031】
このようにして、整流フィンを設け、壁面との距離を制御することにより、ウェーハwの端部上の排ガスの主流速を所定の速度に制御することができる。そして、実施形態1と同様に、オートドーピングを抑制することができ、特性のばらつきを生じることなく、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体ウェーハ、半導体装置を形成することが可能となる。
【0032】
(実施形態3)
本実施形態においては、実施形態2と同様の半導体製造装置が用いられるが、プロセスガスとしてトリクロロシラン(以下TCSと記す)を用いている点で異なっている。
【0033】
先ず、実施形態1と同様に、例えばφ200mmのウェーハwを、反応室11に導入し、ホルダー12上に載置し、ホルダー12の端部と壁面を構成する整流フィン21との距離dを所定の距離に制御する。このようにウェーハwの端部と壁面との距離(最短距離)を制御することにより、ウェーハwの端部上の排ガスの主流速を、0.7〜2.0m/secとする。
【0034】
そして、実施形態1と同様に、例えばSiウェーハ上にSiエピタキシャル膜を形成する。このとき、成膜条件は、例えばウェーハ温度:1145℃、ウェーハ回転速度:900rpm、プロセスガスの導入条件を、TCS:3.3SLM(5.58Pa・m/s)、H(キャリアガス):74.2SLM(125.4Pa・m/s)、反応室11内の圧力:93.3kPaとする。
【0035】
外方拡散した不純物(B)は、実施形態1と同様に、ウェーハw上で対流しないため、ウェーハw上のエピタキシャル層にオートドーピングされることなく、排ガスとともにウェーハwの外周方向に排出される。
【0036】
このように、濃度(粘性)の高いTCSを用いた場合でも、ウェーハwの端部上の排ガスの主流速を所定の速度に制御することにより、実施形態1と同様に、オートドーピングを抑制することができる。そして、特性のばらつきを生じることなく、信頼性の高い、良好な特性を有する半導体ウェーハ、半導体装置を形成することが可能となる。
【0037】
なお、これら実施形態において、ウェーハwの端部上の主流速を所定の速度としたが、0.7〜2.0m/secであればよい。0.7m/sec未満では、排ガス速度が遅すぎて、ウェーハwの端部上部に対流が発生するため、外方拡散した不純物がウェーハw上にオートドーピングされてしまう。一方、2.0m/secを越えると、外周方向への排ガス速度が大きくなりすぎ、反応室壁面からの逆流により対流が発生するため、外方拡散した不純物がウェーハw上に到達し、オートドーピングされてしまう。
【0038】
そして、これら実施形態によれば、半導体ウェーハwの裏面に酸化膜を形成することが不要になるため、エピタキシャル膜の成膜プロセスを高い生産性で形成することが可能となる。そして、ウェーハ製造の歩留り向上と共に、素子分離工程及び素子形成工程を経て形成される半導体装置の歩留りの向上、素子特性の安定を図ることが可能となる。
【0039】
特にN型ベース領域、P型ベース領域や、絶縁分離領域などに100μm以上の厚膜成長が必要な、パワーMOSFETやIGBTなどのパワー半導体装置のエピタキシャル形成工程に適用されることにより、良好な素子特性を得ることが可能となる。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、Si基板上にSi単結晶層を形成する場合を説明したが、ポリSi層形成時にも適用できる。また、化合物半導体基板上に、例えばGaAs層、GaAlAsやInGaAsなど他の化合物半導体層を形成する場合にも適用可能である。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
w…ウェーハ
11…反応室
12…ホルダー
13…リング
14a…インヒータ
14b…アウトヒータ
15…リフレクタ
16…回転駆動機構
17…ガス供給口
18…ガス排出口
19…整流板
20…ライナー
21…整流フィン
22…昇降機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室内でウェーハを保持し、
前記反応室内を、所定の圧力に制御し、
前記ウェーハを加熱し、回転させながら、上方から前記ウェーハ上にプロセスガスを整流して供給し、
余剰な前記プロセスガスおよび前記プロセスガスより生成された反応副生成物を含む前記ウェーハ上の排ガスを、前記ウェーハの端部上の主流速が0.7〜2.0m/secとなるように制御して、前記ウェーハ上より外周方向に排出し、
前記ウェーハ上にエピタキシャル層を形成することを特徴とする半導体製造方法。
【請求項2】
前記ウェーハを、600〜1300rpmで回転させることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。
【請求項3】
前記排ガスの前記ウェーハの端部上の流速は、前記プロセスガスの供給流量を制御することにより調整されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体製造方法。
【請求項4】
前記排ガスの前記ウェーハの端部上の流速は、前記ウェーハを保持するウェーハ保持部材の端部と前記反応室の壁面との距離を制御することにより調整されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体製造方法。
【請求項5】
前記ウェーハは、形成される前記エピタキシャル層より高濃度の不純物を含み、前記ウェーハの少なくとも裏面より前記不純物が外方拡散されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−66225(P2011−66225A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215868(P2009−215868)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】