説明

半導体製造装置および半導体製造方法

【課題】半導体ウエハに対する加工特性に影響することなく異物を好適に除去し得る半導体製造装置および半導体製造方法を提供する。
【解決手段】処理室11内の圧力を調整可能な圧力調整手段19と、処理室11内に流量が調整された不活性ガスを流入させるガス供給源15bおよびマスフローコントローラ17bとが設けられている。そして、ドライエッチング後に、圧力調整手段19により処理室11内の排気圧力Pをドライエッチング時における処理室11内の圧力よりも高くし、かつ、マスフローコントローラ17bによりガス供給源15bからの不活性ガスの流入ガス流量Qbをドライエッチング時におけるエッチングガスの流入ガス流量Qaよりも高くすることで、処理室11内の排気が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧化された処理室内にて半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造装置および半導体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低圧化された処理室内にて半導体ウエハの所定の部位をドライエッチング等の加工により除去する際には、この加工等に起因して異物が発生する場合がある。このように発生した異物が処理室内に浮遊し半導体ウエハに付着すると、当該半導体ウエハの特性が劣化(変化)するため、上述のような異物を除去する必要がある。
【0003】
そこで、下記特許文献1に開示されるプラズマ処理装置では、異物除去のための放電終了直前、プラズマを発生する処理室下部のマグネットコイルで磁場を発生させ、磁場の発生位置を移動することによりプラズマを移動させる手段を設けている。これにより、帯電した異物をプラズマで拘束し、処理室周辺へと移動し排出している。
【0004】
また、下記特許文献2に開示されるドライエッチング装置では、半導体ウエハが処理面下向きのフェースダウン状態で上部電極部に保持されるとともに、半導体ウエハに対向してエッチング処理ガスを供給するガス供給電極板が下部電極部に設けられている。そして、両電極部の周辺から均等排気する主排気路と、下部電極部に下向きにテーパー状に傾斜した補助排気路とが設けられ、また補助排気路の口にメッシュ状の金属シールド材が配設され、主排気路と補助排気路の排気が下部電極部の直下に設置したターボ分子ポンプにより実施される。このように半導体ウエハ処理面が重力に対して下向きのフェースダウン状態であるために、半導体ウエハ上への異物の付着が抑制される。また、下部電極部が下電極保持部によってターボ分子ポンプ直上に設置されるため、ターポ分子ポンプまでの距離が短くなり、補助排気の排気量を向上させている。
【0005】
また、下記特許文献3に開示されるプラズマエッチング装置では、被エッチング面を上面にした状態で基板を静電吸着方式により下部電極に保持し、プロセスガスを処理室内に導入し、高周波電圧を印加して減圧状態のプラズマガスを生成して基板をエッチング加工する。エッチング加工を終了する際、プロセスガスの供給を停止するとともにパージガスの処理室内への供給を開始し、該開始から所定時間経過後に高周波電圧の印加を停止する。これにより、高周波電圧を停止した瞬間に空中から落下し始める多数のパーティクル(異物)は、パージガス流れに沿って移送されて排出されるので、基板に到達して付着することが防止される。
【0006】
また、下記特許文献4に開示される基板搬送装置のパーティクル除去方法では、基板搬送機構としての搬送アームは、チャンバの底面に配設されて該底面に対する垂直軸周りに回転自在な回転台と、該回転台に接続された棒状の第1の腕部材と、該第1の腕部材に接続された棒状の第2の腕部材と、該第2の腕部材の他端に接続された、基板を載置する載置部と、載置部の温度を制御する温度制御装置とを備えている。そして、この温度制御装置により、載置部に所定の温度勾配が形成される。このように、基板を載置する載置部に所定の温度勾配が形成されるので、基板とパーティクルとの界面に発生する熱応力によりパーティクルが基板から剥離され、基板から遠ざかる方向へ働く熱泳動力により該パーティクルが基板から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−181114号公報
【特許文献2】特開2000−243596号公報
【特許文献3】特開平11−274140号公報
【特許文献4】特開2005−354025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、異物を除去するために、上記特許文献1のようにプラズマを使用したり、上記特許文献3のように高周波電圧を印加すると、静電気破壊等により半導体ウエハの加工状態が変化したり物理的破損が発生する可能性があり、この場合には、半導体ウエハに対する加工特性に影響がでるという問題がある。また、上記特許文献2のように半導体ウエハの加工面を下向きに配置すると、半導体ウエハが落下等して損傷した場合に、半導体ウエハに対する加工特性に影響がでる可能性がある。また、上記特許文献4のように載置部に対して所定の温度勾配を形成する場合でも、載置部の周囲に配置される各部材等との温度差によっては、上述した熱泳動力等が有効に機能せず、特に処理室内を浮遊している異物を十分に除去できないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、半導体ウエハに対する加工特性に影響することなく異物を好適に除去し得る半導体製造装置および半導体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の半導体製造装置では、対向して配置される一対の電極とこれら両電極が収容される処理室とを有し、前記両電極間に半導体ウエハを配置し、前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する除去加工を実施する半導体製造装置において、前記処理室内の圧力を調整可能な圧力調整手段と、前記処理室内に流量が調整された排気用ガスを流入させる流入手段と、を備え、前記除去加工後に、前記圧力調整手段により前記処理室内の圧力を前記除去加工時における圧力よりも高くし、かつ、前記流入手段により前記排気用ガスの流入ガス流量を前記除去加工時における前記除去加工用ガスの流入ガス流量よりも高くすることで、前記処理室内の排気を促進させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の半導体製造装置において、前記流入手段は、前記排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように、前記処理室内に流入させることを特徴とする。
【0012】
また、特許請求の範囲に記載の請求項3の半導体製造装置では、対向して配置される一対の電極とこれら両電極が収容される処理室とを有し、前記両電極間に半導体ウエハを配置し、前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する除去加工を実施する半導体製造装置において、前記処理室内に流量が調整された排気用ガスを流入させる流入手段を備え、前記除去加工後に、前記流入手段により、前記排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように前記処理室内に流入させることで、前記処理室内の排気を促進させることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体製造装置において、前記半導体ウエハと前記処理室の内壁との温度をそれぞれ調整可能な温度調整手段を備え、前記排気時には、前記温度調整手段により前記半導体ウエハの温度を前記内壁の温度以上にすることを特徴とする。
【0014】
また、特許請求の範囲に記載の請求項5の半導体製造装置では、対向して配置される一対の電極とこれら両電極が収容される処理室とを有し、前記両電極間に半導体ウエハを配置し、前記処理室内を低圧化し前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する除去加工を実施する半導体製造装置において、前記半導体ウエハと前記処理室の内壁との温度をそれぞれ調整可能な温度調整手段を備え、前記除去加工後に実施される前記処理室内の排気時に、前記温度調整手段により前記半導体ウエハの温度を前記内壁の温度以上にすることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体製造装置において、前記除去加工は、ドライエッチングにより前記所定の部位を除去することを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体製造装置において、前記半導体ウエハに対して静電気を帯電させることで前記両電極の一方に対して当該半導体ウエハを固定するとともにこの静電気を除去することで前記固定を解除する固定手段を備え、前記固定手段は、前記排気時には、前記半導体ウエハに対する静電気を除去することを特徴とする。
【0017】
また、特許請求の範囲に記載の請求項8の半導体製造方法では、対向して配置される一対の電極間に半導体ウエハを配置し、これら両電極および半導体ウエハが収容される処理室内を低圧化するとともに前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造方法において、前記半導体ウエハが配置された前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記所定の部位を除去する第1工程と、前記第1工程後に、前記処理室内の圧力を前記第2工程における前記処理室内の圧力よりも高くするとともに、排気用ガスをその流入ガス流量が前記第1工程における前記除去加工用ガスの流入ガス流量よりも高くして前記処理室内に流入させることで、前記処理室内の排気を促進させる第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項9の発明は、請求項8に記載の半導体製造方法において、前記第2工程では、前記排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように、前記処理室内に流入させることを特徴とする。
【0019】
また、特許請求の範囲に記載の請求項10の半導体製造方法では、対向して配置される一対の電極間に半導体ウエハを配置し、これら両電極および半導体ウエハが収容される処理室内を低圧化するとともに前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造方法において、前記半導体ウエハが配置された前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記所定の部位を除去する第1工程と、前記第1工程後に、排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように前記処理室内に流入させることで、前記処理室内の排気を促進させる第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項11の発明は、請求項8〜10のいずれか一項に記載の半導体製造方法において、前記第2工程では、さらに、前記半導体ウエハの温度を前記処理室の内壁の温度以上にすることを特徴とする。
【0021】
また、特許請求の範囲に記載の請求項12の半導体製造方法では、対向して配置される一対の電極間に半導体ウエハを配置し、これら両電極および半導体ウエハが収容される処理室内を低圧化するとともに前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造方法において、前記半導体ウエハが配置された前記処理室内を低圧化した状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記所定の部位を除去する第1工程と、前記第1工程後に、前記半導体ウエハの温度を前記処理室の内壁の温度以上にした状態で前記処理室内の排気を実施する第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
請求項13の発明は、請求項8〜12のいずれか一項に記載の半導体製造方法において、前記第1工程では、ドライエッチングにより前記所定の部位が除去されることを特徴とする。
【0023】
請求項14の発明は、請求項8〜13のいずれか一項に記載の半導体製造方法において、前記第1工程では、前記半導体ウエハに対して静電気を帯電させることで前記両電極の一方に対して当該半導体ウエハが固定され、前記第2工程では、前記半導体ウエハに対する静電気が除去されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明では、処理室内の圧力を調整可能な圧力調整手段と、処理室内に流量が調整された排気用ガスを流入させる流入手段とが設けられている。そして、除去加工後に、圧力調整手段により処理室内の圧力を除去加工時における処理室内の圧力よりも高くし、かつ、流入手段により排気用ガスの流入ガス流量を除去加工時における除去加工用ガスの流入ガス流量よりも高くすることで、処理室内の排気が促進される。
【0025】
また、請求項8の発明では、第1工程により、半導体ウエハが配置された処理室内が低圧化されるとともに当該処理室内に除去加工用ガスが流入された状態で両電極間に高周波電力を印加することで、半導体ウエハの所定の部位が除去され、第2工程により、処理室内の圧力を第1工程における処理室内の圧力よりも高くするとともに、排気用ガスをその流入ガス流量が第1工程における除去加工用ガスの流入ガス流量よりも高くして処理室内に流入させることで、処理室内の排気が促進される。
【0026】
このように処理室内の圧力が高くなるとともに排気用ガスの流入ガス流量が高くなるため、排気用ガスの粒子が異物に衝突することで異物が弾き出される可能性が高まるので、半導体ウエハに付着した異物が処理室内の排気に応じて除去されやすくなる。特に、異物除去のためにプラズマ等を使用していないので、半導体ウエハに対する加工特性が低下することもない。
したがって、半導体ウエハに対する加工特性に影響することなく異物を好適に除去することができる。
【0027】
請求項2および請求項9の発明では、排気用ガスが、半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように、処理室内に流入される。これにより、排気(第2工程)時における処理室内には、半導体ウエハの外周近傍の圧力が中央近傍の圧力よりも低くなる圧力勾配ができるため、半導体ウエハの外周近傍を通過する排気が促進されるので、異物を確実に除去することができる。
【0028】
請求項3の発明では、処理室内に流量が調整された排気用ガスを流入させる流入手段が設けられている。そして、除去加工後に、流入手段により、排気用ガスを、半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように処理室内に流入させることで、処理室内の排気を促進させる。
【0029】
また、請求項10の発明では、第1工程により、半導体ウエハが配置された処理室内が低圧化されるとともに当該処理室内に除去加工用ガスが流入された状態で両電極間に高周波電力を印加することで、半導体ウエハの所定の部位が除去され、第2工程により、第1工程後に、排気用ガスを、半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように処理室内に流入させることで、処理室内の排気が促進される。
【0030】
これにより、排気(第2工程)時における処理室内には、半導体ウエハの外周近傍の圧力が中央近傍の圧力よりも低くなる圧力勾配ができるため、半導体ウエハの外周近傍を通過する排気が促進されるので、半導体ウエハに対する加工特性に影響することなく異物を好適に除去することができる。
【0031】
請求項4および請求項11の発明では、排気(第2工程)時には、半導体ウエハの温度が内壁の温度以上にされるため、処理室内の活性化した粒子や異物等が安定化するために温度が低い方、すなわち、内壁に引き寄せられることとなるので、半導体ウエハへの異物の付着を防止することができる。
【0032】
請求項5の発明では、半導体ウエハと処理室の内壁との温度をそれぞれ調整可能な温度調整手段が設けられており、除去加工後に実施される処理室内の排気時に、温度調整手段により半導体ウエハの温度が内壁の温度以上にされる。
【0033】
また、請求項12の発明では、第1工程により、半導体ウエハが配置された処理室内が低圧化された状態で両電極間に高周波電力を印加することで、半導体ウエハの所定の部位が除去され、第2工程により、第1工程後に、半導体ウエハの温度を処理室の内壁の温度以上にした状態で処理室内の排気が実施される。
【0034】
これにより、排気(第2工程)時には、半導体ウエハの温度が内壁の温度以上にされるため、処理室内の活性化した粒子や異物等が安定化するために温度が低い方、すなわち、内壁に引き寄せられることとなるので、半導体ウエハへの異物の付着を防止して排気時に異物を好適に除去することができる。
【0035】
請求項6および請求項13の発明では、除去加工(第1工程)は、ドライエッチングにより上記所定の部位が除去されるため、ドライエッチングのようにエッチングガスを用いて半導体ウエハをエッチングするために異物が発生しやすい除去加工であっても、異物を確実に除去することができる。
【0036】
請求項7および請求項14の発明では、排気(第2工程)時には、半導体ウエハを固定するための静電気が除去されるため、上記静電気のために処理室内の異物が半導体ウエハに吸着されることもないので、上述のように静電気を利用して半導体ウエハを固定する場合であっても、異物を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態に係るエッチング装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の2−2線相当の切断面を概略的に示す断面図である。
【図3】第1実施形態にて実施される加工フローを例示するフローチャートである。
【図4】排気時における排気圧力と異物指数との関係を示すグラフである。
【図5】排気時における処理室内に供給される不活性ガスの流入ガス流量と異物指数との関係を示すグラフである。
【図6】図6(A)は、第2実施形態に係るエッチング装置の構成を概略的に示す断面図であり、図6(B)は、半導体ウエハ近傍での排気圧力の圧力勾配を示すグラフである。
【図7】第3実施形態に係るエッチング装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図8】半導体ウエハおよび下部電極の温度変化と上部電極および内壁の温度変化とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1実施形態]
以下、本発明の半導体製造装置および半導体製造方法をエッチング装置10に適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るエッチング装置10の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1の2−2線相当の切断面を概略的に示す断面図である。
【0039】
エッチング装置10は、加工対象である半導体ウエハW等に対して所定の一部を除去する除去加工としてドライエッチングを実施する装置である。このエッチング装置10には、図1に示すように、半導体ウエハWに対してドライエッチングを実施する際に当該半導体ウエハWが収容される処理室11が備えられている。この処理室11内には、一対の平行平板電極12、13が配置されており、この平行平板電極12、13は、ドライエッチングを施す半導体ウエハWが載置されるステージとして機能する下部電極12と、この下部電極12と対向するように配置された上部電極13とからなる。なお、上部電極13は、図1に例示するように、処理室11の上壁を兼ねるように構成されてもよく、この場合でも、上部電極13は処理室11内に収容されるものとする。
【0040】
下部電極12には、高周波電源(図示略)より例えば13.56MHzの高周波電力(RF電力)が印加できるようになっている。上部電極13には、半導体ウエハWと対向する側において等間隔に配置された複数のガス供給孔13aが形成されており、後述するエッチングガスが半導体ウエハWの中央近傍に向かいシャワー状に流せるように構成されている。また、上部電極13には、図1および図2に示すように、各ガス供給孔13aの周囲にて周方向等間隔に複数のガス供給孔13bが形成されており、後述する不活性ガスが半導体ウエハWの外周近傍を通過するように構成されている。これら下部電極12および上部電極13は、冷却用ガスライン14等に通される冷却用媒体によって冷却可能となっている。
【0041】
本実施形態では、半導体ウエハWを下部電極12に対して固定するために、下部電極12に載置された半導体ウエハWに対して静電気を帯電させている。また、このように帯電させた静電気を除去することで、下部電極12に対する半導体ウエハWの固定が解除される。なお、下部電極12に対する半導体ウエハWの固定およびその解除を固定治具等を用いて物理的な実施してもよい。また、静電気を利用して下部電極12に対する半導体ウエハWの固定・解除を実施する構成は、特許請求の範囲に記載の「固定手段」の一例に相当し得る。
【0042】
また、エッチング装置10には、エッチングガス(除去加工用ガス)として採用される各種ガスを処理室11内に供給するためのガス供給源15aが設けられている。このガス供給源15aには上部電極13の各ガス供給孔13aに連通するガス導入管16aが上部電極13の上方に配置されており、ガス導入管16aより供給された各種ガスが各ガス供給孔13aを通じて処理室11内に供給されるようになっている。また、ガス導入管16aには、処理室11内に流入するガスの流量(以下、流入ガス流量Qaともいう)を調整するためのマスフローコントローラ17aが備えられている。なお、本実施形態では、各種ガスとして、例えば、CHFガス、CFガス、Arガス等が採用されている。
【0043】
また、エッチング装置10には、排気用ガスとして採用される質量が比較的大きな不活性ガスを処理室11内に供給するためのガス供給源15bが設けられている。このガス供給源15bには上部電極13の各ガス供給孔13bに連通するガス導入管16bが上部電極13の上方に配置されており、ガス導入管16bより供給された不活性ガスが各ガス供給孔13bを通じて処理室11内に供給されるようになっている。また、ガス導入管16bには、処理室11内に流入する不活性ガスの流量(以下、流入ガス流量Qbともいう)を調整するためのマスフローコントローラ17bが備えられている。なお、本実施形態では、不活性ガスとして、例えば、Nガス、Arガス等が採用されている。なお、ガス供給源15bおよびマスフローコントローラ17b等は、特許請求の範囲に記載の「流入手段」の一例に相当し得る。
【0044】
また、処理室11の下部には、下部電極12の外周近傍に設けられた排気口18aに連通する排気管18が接続されている。処理室11内のガスは、ガス導入管16bおよび各ガス供給孔13bを通じて供給される不活性ガスにより、排気口18aを通じて排気管18に排気されることとなる。また、この排気管18を通じて、処理室11内を真空ポンプ等の圧力調整手段19によって減圧できるようになっている。このような構成により、ガス供給源15aから各種ガスを供給した状態で、処理室11内を例えば1Pa〜10Pa程度の真空度に保持でき、ガス供給源15bから不活性ガスを供給した状態で、処理室11内を例えば15Pa程度の真空度に保持できるようになっている。
【0045】
このように構成されるエッチング装置10にて実施されるエッチング工程および排気工程を含めた加工フローについて図3に示すフローチャートを用いて説明する。図3は、第1実施形態にて実施される加工フローを例示するフローチャートである。
まず、図3のステップS101の半導体ウエハ搬入工程に応じて、所定の状態まで加工された半導体ウエハWを処理室11内に収容するとともに下部電極12上に載置する。このとき、半導体ウエハWは、上述のように静電気を帯電させることで、下部電極12に対して固定されている。
【0046】
次に、ステップS103の真空化工程に応じて、圧力調整手段19によって処理室11内のガス圧力を所定の値、例えば、5Pa程度に調整する。
【0047】
続いて、ステップS105の流入工程に応じて、処理室11内にガス供給源15aからエッチングガスを導入する。このとき、マスフローコントローラ17aによって処理室11内に供給されるエッチングガスの流入ガス流量を所定の値、例えば、140ml/min程度に調整する。
【0048】
そして、ステップS107のエッチング工程に応じて、上部電極13をアース電位にし、高周波電源より例えば13.56MHzの高周波電力を下部電極12に印加し、RFパワーが例えば2.5kWとなるようにする。これにより、処理室11内の気体がグロー放電を起こして上部電極13と下部電極12との間にプラズマが発生し、プラズマによって各種ガスがイオンやラジカル、電子に分解され、半導体ウエハWの所定の酸化膜がドライエッチングされる。
【0049】
このドライエッチングは、上部電極13と下部電極12との電位差によって、上記荷電イオンが加速されて上記所定の酸化膜の表面に衝突して物理的に当該所定の酸化膜を除去することにより行われたり、化学的に極めて活性なラジカルが所定の酸化膜の表面に引き込まれて当該所定の酸化膜と反応することにより行われたりする。なお、ステップS103〜S107における工程は、特許請求の範囲に記載の「第1工程」の一例に相当し得る。
【0050】
上述のようにエッチング工程が終了すると、ステップS109の排気工程に応じて、処理室11内の排気が実施される。なお、この排気工程では、半導体ウエハWに対する静電気が解除されている。この工程では、処理室11内の圧力をエッチング工程時における圧力(例えば5Pa)よりも高くし、かつ、不活性ガスの流入ガス流量Qbをドライエッチング時におけるエッチングガスの流入ガス流量Qa(例えば140ml/min)よりも高くした状態で、処理室11内の排気が実施される。
【0051】
具体的には、マスフローコントローラ17bにより各ガス供給孔13bを通じて処理室11内に供給される不活性ガスの流入ガス流量Qbが500ml/min程度に調整された状態で、圧力調整手段19によって処理室11内の圧力が15Pa程度に調整される。これにより、処理室11内のガスは、排気口18aを通じて排気管18に排気されることとなる。このような排気工程が10秒程度なされる。なお、排気状況に応じて排気時間を10秒より長くしてもよい。また、ステップS109における工程は、特許請求の範囲に記載の「第2工程」の一例に相当し得る。
【0052】
ここで、このような排気工程を実施する理由について図4および図5を用いて説明する。図4は、排気時における処理室11内の圧力(以下、排気圧力P1ともいう)と異物指数X1との関係を示すグラフである。図5は、排気時における処理室11内に供給される不活性ガスの流入ガス流量Qbと異物指数X2との関係を示すグラフである。なお、異物指数X1は、排気圧力P1が5Paであるときに半導体ウエハWに付着する異物数を1として、排気圧力P1に応じて半導体ウエハWに付着する異物数を示す指数である。また、異物指数X2は、流入ガス流量Qbが140ml/minであるときに半導体ウエハWに付着する異物数を1として、流入ガス流量Qbに応じて半導体ウエハWに付着する異物数を示す指数である。
【0053】
図4からわかるように、排気圧力P1が大きくなるほど異物指数X1が小さくなっている。特に、排気圧力P1が10Paを超えると、異物指数X1が特に小さくなっている。これは、処理室11内の圧力が高くなると、不活性ガスの密度が増えて、不活性ガスの粒子が半導体ウエハWに付着している異物に衝突することで異物が弾き出される可能性が高まるからである。
【0054】
また、図5からわかるように、流入ガス流量Qbが大きくなるほど異物指数X2が小さくなっている。特に、流入ガス流量Qbが300ml/minを超えると、異物指数X1が特に小さくなっている。これは、処理室11内への不活性ガスの流入ガス流量が高くなると、不活性ガスの粒子が半導体ウエハWに付着している異物に衝突しやすくなり、異物が弾き出される可能性が高まるからである。
【0055】
このように、エッチング工程後に、排気圧力P1および流入ガス流量Qbを大きくした状態で排気工程が実施されることで、処理室11内の排気が促進され、処理室11内に浮遊している異物や付着していた半導体ウエハWから弾き出された異物が、処理室11から好適に除去されることとなる。
【0056】
そして、ステップS111の半導体ウエハ搬出工程に応じて、上述のようにエッチングされた半導体ウエハWが処理室11から搬出することで、本加工フローが終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るエッチング装置10では、処理室11内の圧力を調整可能な圧力調整手段19と、処理室11内に流量が調整された不活性ガスを流入させるガス供給源15bおよびマスフローコントローラ17bとが設けられている。そして、ドライエッチング後に、圧力調整手段19により処理室11内の排気圧力Pをドライエッチング時における処理室11内の圧力よりも高くし、かつ、マスフローコントローラ17bによりガス供給源15bからの不活性ガスの流入ガス流量Qbをドライエッチング時におけるエッチングガスの流入ガス流量Qaよりも高くすることで、処理室11内の排気が促進される。
【0058】
また、エッチング工程等により、半導体ウエハWが配置された処理室11内が低圧化されるとともに当該処理室11内にエッチングガスが流入された状態で両電極12,13間に高周波電力を印加することで、半導体ウエハWの所定の部位が除去され、排気工程により、処理室11内の排気圧力Pをエッチング工程における処理室11内の圧力よりも高くするとともに、不活性ガスをその流入ガス流量Qbがエッチング工程におけるエッチングガスの流入ガス流量Qaよりも高くして処理室11内に流入させることで、処理室11内の排気が促進される。
【0059】
このように処理室11内の排気圧力Pが高くなるとともに不活性ガスをその流入ガス流量Qbが高くなるため、質量が比較的大きな不活性ガスの粒子が異物に衝突することで異物が弾き出される可能性が高まるので、半導体ウエハWに付着した異物が処理室11内の排気に応じて除去されやすくなる。特に、異物除去のためにプラズマ等を使用していないので、半導体ウエハWに対する加工特性が低下することもない。
したがって、半導体ウエハWに対する加工特性に影響することなく異物を好適に除去することができる。
【0060】
また、半導体ウエハWに対して所定の一部を除去する除去加工として、ドライエッチングにより上記所定の部位が除去されるため、ドライエッチングのようにエッチングガスを用いて半導体ウエハWをエッチングするために異物が発生しやすい除去加工であっても、上述のように異物を確実に除去することができる。
【0061】
さらに、排気工程時には、半導体ウエハWを固定するための静電気が除去されるため、上記静電気のために処理室11内の異物が半導体ウエハWに吸着されることもないので、上述のように静電気を利用して半導体ウエハWを下部電極12に固定する場合であっても、異物を確実に除去することができる。
【0062】
なお、不活性ガスは、ガス導入管16bが各ガス供給孔13aに連通することで、各ガス供給孔13aから処理室11内に供給されてもよい。
【0063】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体製造装置および半導体製造方法について図6を参照して説明する。図6(A)は、第2実施形態に係るエッチング装置10aの構成を概略的に示す断面図であり、図6(B)は、半導体ウエハW近傍での排気圧力Pの圧力勾配を示すグラフである。
【0064】
本第2実施形態に係るエッチング装置10aは、マスフローコントローラ17bに代えて、大流量を制御可能なマスフローコントローラ20が採用される点が、上記第1実施形態に係るエッチング装置と主に異なる。
【0065】
マスフローコントローラ20は、上述したマスフローコントローラ17bにて調整可能な流入ガス流量Qbよりも大きな流量を制御可能な装置であって、例えば、2000ml/minの流入ガス流量Qbを調整可能に構成されている。そして、図6(A)に示すように、上部電極13のガス供給孔13bには、マスフローコントローラ20にて調整された大流量の不活性ガスをガス導入管16bを介して処理室11内に供給するための複数のガス噴射用ノズル21がそれぞれ設けられている。各ガス噴射用ノズル21は、大流量の不活性ガスが半導体ウエハWの外周近傍を通過するように配置されている。
【0066】
これにより、上述した排気工程では、マスフローコントローラ20により、流入ガス流量Qbを2000ml/minに調整された不活性ガスが処理室11内に供給される。このとき、大流量の不活性ガスは、半導体ウエハWの外周近傍を通過するようにして排気口18aを介して排気管18から排気される。なお、本実施形態では、処理室11内の排気圧力Pが圧力調整手段19により15Pa程度に調整されている。
【0067】
このため、図6(B)に例示するように、半導体ウエハWの外周近傍の排気圧力Pが中央近傍の排気圧力Pよりも低くなる圧力勾配ができるので、中央近傍から外周近傍への流れができ、半導体ウエハWの外周近傍を通過する排気が促進されることとなる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係るエッチング装置10aでは、処理室11内に流量が調整された不活性ガスを流入させるガス供給源15bおよびマスフローコントローラ20が設けられている。そして、ドライエッチング後に、マスフローコントローラ20および各ガス噴射用ノズル21により、不活性ガスを、半導体ウエハWの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量Qbが中央近傍に向かう流入ガス流量Qbよりも高くなるように処理室11内に流入させることで、処理室11内の排気が促進される。
【0069】
また、本実施形態に係るエッチング方法としては、排気工程により、エッチング工程後に、不活性ガスを、半導体ウエハWの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量Qbが中央近傍に向かう流入ガス流量Qbよりも高くなるように処理室11内に流入させることで、処理室11内の排気が促進される。
【0070】
これにより、排気工程時における処理室11内には、半導体ウエハWの外周近傍の排気圧力Pが中央近傍の排気圧力Pよりも低くなる圧力勾配ができるため、半導体ウエハWの外周近傍を通過する排気が促進されるので、半導体ウエハWに対する加工特性に影響することなく異物を好適に除去することができる。
【0071】
特に、処理室11内の排気圧力Pをエッチング工程時における圧力よりも高くし、かつ、不活性ガスの流入ガス流量Qbをドライエッチング時におけるエッチングガスの流入ガス流量Qaよりも高くした状態で、上記排気工程がなされることとなるので、上記第1実施形態の効果も奏する。
【0072】
なお、排気工程における処理室11内の排気圧力Pは、圧力調整手段19により15Pa程度に調整されることに限らず、例えば、15Pa以上に調整されてもよいし、エッチング工程時における圧力(例えば5Pa)程度に調整されてもよい。
【0073】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る半導体製造装置および半導体製造方法について図7および図8を参照して説明する。図7は、第3実施形態に係るエッチング装置10bの構成を概略的に示す断面図である。図8は、半導体ウエハWおよび下部電極12の温度変化T1と内壁11aおよび上部電極13の温度変化T2とを示すグラフである。なお、図7では、便宜上、各ガス供給孔13a,13bを省略して図示している。
【0074】
本第3実施形態に係るエッチング装置10bでは、半導体ウエハWおよび下部電極12の温度変化と処理室11を構成する内壁11aおよび上部電極13の温度変化とが制御可能に構成されている点が、上記第1実施形態に係るエッチング装置と主に異なる。
【0075】
具体的には、図7に示すように、内壁11a内および上部電極13内には、加熱用媒体を通すための加熱用ライン31と冷却用媒体を通すための冷却用ライン41とがそれぞれ設けられている。また、下部電極12内には、加熱用媒体を通すための加熱用ライン32と冷却用媒体を通すための冷却用ライン42とが設けられている。また、下部電極12には、半導体ウエハWが載置される載置面に、加熱用ガスを供給するための加熱用ガスライン33と冷却用ガスを供給するための冷却用ガスライン43とが設けられている。
【0076】
そして、加熱用ライン31、32は、調整弁31a,32aにより流量等が調整された加熱用媒体が供給されるように加熱用媒体供給源30にそれぞれ連結されている。また、冷却用ライン41、42は、調整弁41a,42aにより流量等が調整された冷却用媒体が供給されるように冷却用媒体供給源40にそれぞれ連結されている。なお、加熱用ライン31、32、冷却用ライン41、42等は、特許請求の範囲に記載の「温度調整手段」の一例に相当し得る。
【0077】
このように構成されるエッチング装置10bにおいて、上記エッチング工程では、内壁11aおよび上部電極13を加熱するとともに、下部電極12および半導体ウエハWを冷却した状態で、上述のようにドライエッチングを実施する。具体的には、加熱用ライン31に所定量の加熱用媒体を通すように調整弁31aを制御することで内壁11aおよび上部電極13を加熱する。また、冷却用ライン42に所定量の冷却用媒体を通すように調整弁42aを制御するとともに、冷却用ガスライン43に所定量の冷却用ガスを供給することで、下部電極12および半導体ウエハWを冷却する。
【0078】
そして、上記排気工程では、内壁11aおよび上部電極13を冷却するとともに、下部電極12および半導体ウエハWを加熱した状態で、上述のように処理室11内の排気を実施する。具体的には、冷却用ライン41に所定量の冷却用媒体を通すように調整弁41aを制御することで内壁11aおよび上部電極13を冷却する。また、加熱用ライン32に所定量の加熱用媒体を通すように調整弁32aを制御するとともに、加熱用ガスライン33に所定量の加熱用ガスを供給することで、下部電極12および半導体ウエハWを加熱する。
【0079】
すなわち、図8に示すように、エッチング工程では、半導体ウエハWの温度を内壁11aや上部電極13の温度未満にし、排気工程では、半導体ウエハWの温度を内壁11aや上部電極13の温度以上にする。なお、図8では、半導体ウエハWおよび下部電極12の温度変化をT1にて示し、内壁11aおよび上部電極13の温度変化をT2にて示す。
【0080】
このように、本実施形態では、排気工程にて、半導体ウエハWの温度が内壁11aや上部電極13の温度以上にされるため、処理室11内の活性化した粒子や異物等が安定化するために温度が低い方、すなわち、内壁11aや上部電極13に引き寄せられることとなるので、半導体ウエハWへの異物の付着を防止することができる。
【0081】
特に、処理室11内の排気圧力Pをエッチング工程時における圧力よりも高くし、かつ、不活性ガスの流入ガス流量Qbをドライエッチング時におけるエッチングガスの流入ガス流量Qaよりも高くした状態で、上述した排気工程を実施することで、上記第1実施形態の効果も奏する。
【0082】
さらに、不活性ガスを、半導体ウエハWの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量Qbが中央近傍に向かう流入ガス流量Qbよりも高くした状態で、上述した排気工程を実施することで、上記第2実施形態の効果も奏する。
【0083】
なお、本実施形態では、冷却用ライン41に所定量の冷却用媒体を通すように調整弁41aを制御することのみ、加熱用ライン32に所定量の加熱用媒体を通すように調整弁32aを制御することのみ、または、加熱用ガスライン33に所定量の加熱用ガスを供給することのみで、排気工程時における半導体ウエハWの温度を内壁11aや上部電極13の温度以上にしてもよい。また、排気工程時における半導体ウエハWの温度を内壁11aや上部電極13の温度に等しくなるようにしてもよい。
【0084】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明の半導体製造装置および半導体製造方法は、ドライエッチングを実施するエッチング装置10に適用されることに限らず、処理室11内を低圧化するとともに当該処理室11内に除去加工用ガスを流入させた状態で両電極12,13間に高周波電力を印加することで、半導体ウエハWの所定の部位を除去する除去加工を実施する製造装置および製造方法に適用されてもよい。
【0085】
(2)排気工程では、処理室11内に不活性ガスを供給することに限らず、例えば、クラスタガス等を排気用ガスとして供給してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10,10a,10b…エッチング装置(半導体製造装置)
11…処理室
11a…内壁
12…下部電極
13…上部電極
13a,13b…ガス供給孔
15a,15b…ガス供給源(流入手段)
17a,17b…マスフローコントローラ(流入手段)
18…排気管
19…圧力調整手段
20…マスフローコントローラ(流入手段)
30…加熱用媒体供給源(温度調整手段)
31,32…加熱用ライン(温度調整手段)
40…冷却用媒体供給源(温度調整手段)
41,42…冷却用ライン(温度調整手段)
P…排気圧力
Qa,Qb…流入ガス流量
X1,X2…異物指数
W…半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置される一対の電極とこれら両電極が収容される処理室とを有し、
前記両電極間に半導体ウエハを配置し、前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する除去加工を実施する半導体製造装置において、
前記処理室内の圧力を調整可能な圧力調整手段と、
前記処理室内に流量が調整された排気用ガスを流入させる流入手段と、を備え、
前記除去加工後に、前記圧力調整手段により前記処理室内の圧力を前記除去加工時における圧力よりも高くし、かつ、前記流入手段により前記排気用ガスの流入ガス流量を前記除去加工時における前記除去加工用ガスの流入ガス流量よりも高くすることで、前記処理室内の排気を促進させることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記流入手段は、前記排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように、前記処理室内に流入させることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
対向して配置される一対の電極とこれら両電極が収容される処理室とを有し、
前記両電極間に半導体ウエハを配置し、前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する除去加工を実施する半導体製造装置において、
前記処理室内に流量が調整された排気用ガスを流入させる流入手段を備え、
前記除去加工後に、前記流入手段により、前記排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように前記処理室内に流入させることで、前記処理室内の排気を促進させることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項4】
前記半導体ウエハと前記処理室の内壁との温度をそれぞれ調整可能な温度調整手段を備え、
前記排気時には、前記温度調整手段により前記半導体ウエハの温度を前記内壁の温度以上にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
対向して配置される一対の電極とこれら両電極が収容される処理室とを有し、
前記両電極間に半導体ウエハを配置し、前記処理室内を低圧化し前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する除去加工を実施する半導体製造装置において、
前記半導体ウエハと前記処理室の内壁との温度をそれぞれ調整可能な温度調整手段を備え、
前記除去加工後に実施される前記処理室内の排気時に、前記温度調整手段により前記半導体ウエハの温度を前記内壁の温度以上にすることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項6】
前記除去加工は、ドライエッチングにより前記所定の部位を除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記半導体ウエハに対して静電気を帯電させることで前記両電極の一方に対して当該半導体ウエハを固定するとともにこの静電気を除去することで前記固定を解除する固定手段を備え、
前記固定手段は、前記排気時には、前記半導体ウエハに対する静電気を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
対向して配置される一対の電極間に半導体ウエハを配置し、これら両電極および半導体ウエハが収容される処理室内を低圧化するとともに前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造方法において、
前記半導体ウエハが配置された前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記所定の部位を除去する第1工程と、
前記第1工程後に、前記処理室内の圧力を前記第2工程における前記処理室内の圧力よりも高くするとともに、排気用ガスをその流入ガス流量が前記第1工程における前記除去加工用ガスの流入ガス流量よりも高くして前記処理室内に流入させることで、前記処理室内の排気を促進させる第2工程と、
を備えることを特徴とする半導体製造方法。
【請求項9】
前記第2工程では、前記排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように、前記処理室内に流入させることを特徴とする請求項8に記載の半導体製造方法。
【請求項10】
対向して配置される一対の電極間に半導体ウエハを配置し、これら両電極および半導体ウエハが収容される処理室内を低圧化するとともに前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造方法において、
前記半導体ウエハが配置された前記処理室内を低圧化するとともに当該処理室内に除去加工用ガスを流入させた状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記所定の部位を除去する第1工程と、
前記第1工程後に、排気用ガスを、前記半導体ウエハの外周近傍を通過することで排気される流入ガス流量が中央近傍に向かう流入ガス流量よりも高くなるように前記処理室内に流入させることで、前記処理室内の排気を促進させる第2工程と、
を備えることを特徴とする半導体製造方法。
【請求項11】
前記第2工程では、さらに、前記半導体ウエハの温度を前記処理室の内壁の温度以上にすることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の半導体製造方法。
【請求項12】
対向して配置される一対の電極間に半導体ウエハを配置し、これら両電極および半導体ウエハが収容される処理室内を低圧化するとともに前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記半導体ウエハの所定の部位を除去する半導体製造方法において、
前記半導体ウエハが配置された前記処理室内を低圧化した状態で前記両電極間に高周波電力を印加することで、前記所定の部位を除去する第1工程と、
前記第1工程後に、前記半導体ウエハの温度を前記処理室の内壁の温度以上にした状態で前記処理室内の排気を実施する第2工程と、
を備えることを特徴とする半導体製造方法。
【請求項13】
前記第1工程では、ドライエッチングにより前記所定の部位が除去されることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の半導体製造方法。
【請求項14】
前記第1工程では、前記半導体ウエハに対して静電気を帯電させることで前記両電極の一方に対して当該半導体ウエハが固定され、
前記第2工程では、前記半導体ウエハに対する静電気が除去されることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の半導体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−84656(P2012−84656A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228661(P2010−228661)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】