説明

半導体集積回路装置、及び電源電圧制御方法

【課題】短時間に電源電圧を最適値に制御することが可能な半導体集積回路装置を提供することである。
【解決手段】本発明にかかる半導体集積回路装置100は、ターゲット回路2と、ターゲット回路2に電源電圧を供給する電圧供給回路4と、電圧供給回路4の出力電圧を制御する制御回路3と、ターゲット回路2に供給される電源電圧の電圧値を予測する目標電圧予測回路1とを備える。制御回路は、ターゲット回路2の要求動作周波数が第1の動作周波数から第2の動作周波数に変化した際に、電圧供給回路4の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させる。目標電圧予測回路1は、所定の電圧値の変化にともなうターゲット回路2の動作周波数の変化量を検出すると共に、動作周波数の変化量と所定の電圧値との関係に基づいて目標電圧値を算出する。電圧供給回路4は、ターゲット回路2に目標電圧値の電源電圧を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路装置、及び電源電圧制御方法に関し、特に半導体集積回路装置の電源電圧を短時間に最適な電源電圧に制御することが可能な半導体集積回路装置、及び電源電圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)論理ゲートを用いた半導体集積回路装置の消費電力を低減するための方式の一つに、DVFS(Dynamic Voltage and frequency Scaling)がある。DVFSは、要求される動作速度(クロック周波数)に応じて電源電圧を制御する方式である。DVFSにおいて効率的に消費電力を低減させるには、要求される動作速度が変更された時に、最適な電源電圧にできるだけ短時間かつ高精度に制御する必要がある。
【0003】
DVFSにおける電源電圧制御方式としては、遅延モニタを用いて、対象となる半導体集積回路装置の動作速度が要求速度を満たしているかどうかを判定し、その結果に応じて電源電圧を制御する方式がある。図31は、特許文献1に開示されている電源電圧制御装置を示す図である。図31に示す電源電圧制御装置では、遅延モニタによって回路の動作速度と要求される動作速度を比較し、その結果にしたがって電圧の制御量を調節することで電源制御時間の短縮を図っている。
【0004】
図31に示す電源電圧制御装置500は、制御された電源電圧VDDが供給されるターゲット回路としての半導体回路(LSI)509、入力信号生成回路510、LSI509のクリティカルパスの遅延特性をモニタするモニタ回路504、遅延検出回路505、および電源電圧制御回路508を有する。電源電圧制御回路508は、制御回路506、および電圧発生回路507を有する。入力信号生成回路510は、クロック生成回路511と分周回路503を有し、クロック生成回路511はPLL回路501とセレクタ502により構成されている。
【0005】
PLL回路501は、電圧で制御される発振器(VCO)を内蔵し、その発振周波数を、外部から入力される、たとえばLSI駆動クロックCLKを基にロックする。PLL回路501の複数のVCO出力がセレクタ502の各入力に接続され、セレクタ502の第1出力および第2出力が分周回路503の入力に接続されている。セレクタ502は、その第1出力に送る信号inφ0に対し位相がiだけ遅れた信号inφiを、第2出力から出力する。この位相iは、0〜2π内の任意の位相角で表現できる。
【0006】
分周回路503は、第1入力からの信号inφ0を所定の分周比で分周し、モニタ回路504の入力信号outφ0を生成する。また、たとえば同じ分周比で第2入力からの信号inφiを分周し、遅延検出回路505に入力する基準信号outφiを生成する。この基準信号outφiは、モニタ回路504の入力信号outφ0より可変の遅延値Dだけ遅れた信号として生成される。モニタ回路504は、半導体回路509でクリティカルパスとして選定された信号伝送パスと等価な電源電圧−遅延特性をもつ回路として構成されており、電圧発生回路507による電源電圧VDDの供給を受けて動作し、分周回路503からの信号outφ0を入力して伝播させ、遅延後の信号outφ0'を遅延検出回路505に出力する。
【0007】
遅延検出回路505は、基準信号outφiとモニタ回路504の出力信号outφ0'との位相差を検出し、検出結果に応じたxビット(x:任意の自然数)の遅延検知信号を生成して制御回路506に出力する。制御回路506は、遅延検出回路505からの遅延検知信号に基づいて、電圧発生回路507を制御し、LSI509およびモニタ回路504への供給電圧VDDの値を変更する。
【0008】
すなわち、制御回路506は、モニタ回路504の出力outφ0'が基準信号outφiで規定される所定の遅延値より遅いときは、電圧発生回路507に供給電圧VDDを上げるように要求信号を出力し、逆に、モニタ回路504の出力outφ0'が所定の遅延値より早いときは、あるいは、その所定の遅延値から更にあるマージンを引いた遅延値より早いときは、電圧発生回路507に供給電圧VDDを下げるように要求信号を出力する。これにより、電圧発生回路507が新たな電源電圧VDD'を生成し、今までの供給電圧を新たな電源電圧VDD'に変更する。
【0009】
また、特許文献2には、主機能回路の誤動作を抑え、低消費電力化を実現することができる半導体集積回路装置に関する技術が開示されている。特許文献2に開示されている半導体集積回路装置は、予め定められた主機能を有すると共に、駆動時に予め決定された駆動電圧が供給される主機能回路と、主機能回路の特性の変化を検知する検知手段と、検知手段による主機能回路の特性の変化の検知結果に基づいて主機能回路に供給される駆動電圧を決定する決定手段を備える。更に、検知手段に対して、主機能回路の駆動時に決定手段により決定された駆動電圧が供給され、主機能回路の特性の変化の検知時に予め定められた電圧が供給されるように供給電圧を切り替える切替手段を備える。
【0010】
特許文献2に開示されている半導体集積回路装置では、使用環境の変化等による主機能回路の特性の変化を検知する検知手段に対して、主機能回路の駆動時に、決定された駆動電圧が供給され、主機能回路の特性の変化の検知時に予め定められた電圧が供給されるように供給電圧を切り替えている。これにより、検知手段と主機能回路の配線の劣化の程度がほぼ同程度となり、補正電圧に一定のマージンを付加する必要が無くなるため、主機能回路の誤動作を抑え、低消費電力化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−100967号公報
【特許文献2】特開2009−38128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体集積回路装置の電源電圧を短時間に最適値に変化させるためには、電源電圧を変化させる速度すなわち電源電圧の制御速度を大きくする必要がある。電源電圧の制御速度は、内部のレジスタなどで出力電圧の設定値を制御するタイプの電源回路においては、1ステップで変化させる電圧量にあたる。電源電圧の制御速度が大きい場合、速度モニタからレギュレータなどの電源電圧を制御する回路へのフィードバックが遅れることによって、制御された電源電圧が最適値付近で発振し、最適値への収束がかえって遅くなったり収束しなくなったりする可能性がある。
【0013】
図31で説明した特許文献1に開示されている電源電圧制御装置500では、遅延検出回路505を用いて基準信号outφiとモニタ回路504の出力信号outφ0'との位相差を検出し、この検出結果に基づいて電源電圧の制御速度を制御することでこの問題を解決している。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示されている電源電圧制御装置500では、要求動作周波数毎に遅延検出回路505の出力と電源電圧制御回路508から出力される電圧の制御量との関係を予め設定する必要がある。また、電圧の最適値付近での発振を防ぐためには、やはり電圧の制御量を一定値以下に抑えつつ電圧制御を繰り返す必要があるため、半導体集積回路装置の電源電圧を最適値にするまでに時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる半導体集積回路装置は、電源電圧が可変であるターゲット回路と、前記ターゲット回路に電源電圧を供給する電圧供給回路と、前記電圧供給回路の出力電圧を制御する制御回路と、前記ターゲット回路に供給される電源電圧の電圧値を予測する目標電圧予測回路と、を備え、前記制御回路は、前記ターゲット回路の要求動作周波数が第1の動作周波数から第2の動作周波数に変化した際に、前記電圧供給回路の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させ、前記目標電圧予測回路は、前記所定の電圧値の変化にともなう前記ターゲット回路の動作周波数の変化量を検出すると共に、当該動作周波数の変化量と前記所定の電圧値との関係に基づいて目標電圧値を算出し、前記電圧供給回路は、前記ターゲット回路に前記目標電圧値の電源電圧を供給する。
【0016】
本発明にかかる半導体集積回路装置では、ターゲット回路への要求動作周波数が変化した際に、電源電圧を所定の電圧値だけ変化させ、このときのターゲット回路の動作周波数の変化から、要求動作周波数の変化量に対応する電源電圧の変化量を予測してターゲット回路の電源電圧を変化させることができるので、制御回路が電源電圧を変化させる回数を低減することができる。よって、ターゲット回路へ供給される電源電圧を短時間に制御することができる。
【0017】
本発明にかかるターゲット回路に供給される電源電圧を制御する方法は、前記ターゲット回路の要求動作周波数が第1の動作周波数から第2の動作周波数に変化した際に、前記電圧供給回路の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させ、前記所定の電圧値の変化にともなう前記ターゲット回路の動作周波数の変化量を検出し、前記ターゲット回路に供給される電源電圧を、前記動作周波数の変化量と前記所定の電圧値との関係に基づいて算出する。
【0018】
本発明にかかる電源電圧制御方法では、ターゲット回路への要求動作周波数が変化した際に、電源電圧を所定の電圧値だけ変化させ、このときのターゲット回路の動作周波数の変化から、要求動作周波数の変化量に対応する電源電圧の変化量を予測してターゲット回路の電源電圧を変化させることができるので、電源電圧を変化させる回数を低減することができる。よって、ターゲット回路へ供給される電源電圧を短時間に制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、短時間に電源電圧を最適値に制御することが可能な半導体集積回路装置、及び電源電圧制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備えるリングオシレータの構成を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備えるカウンタ値補正回路の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備える電圧供給回路の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備えるリファレンス電圧生成回路の構成を示す図である。
【図7】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備えるリファレンス電圧生成回路の別の構成を示す図である。
【図10】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備えるリングオシレータの別の構成を示す図である。
【図11】実施の形態1にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路の別の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態2にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態2にかかる半導体集積回路装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】実施の形態2にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】実施の形態2にかかる半導体集積回路装置の初期補正動作を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。
【図17】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置が備える遅延モニタ回路の構成を示す図である。
【図18】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。
【図19】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置の電圧補正動作を示すフローチャートである。
【図20】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置が備える倍率演算回路の構成を示す図である。
【図21】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置が備える最上位ビット検出回路の構成を示す図である。
【図22】実施の形態3にかかる半導体集積回路装置が備えるシフトレジスタの構成を示す図である。
【図23】実施の形態4にかかる半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。
【図24】実施の形態4にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路の構成を示すブロック図である。
【図25】実施の形態4にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。
【図26】実施の形態4にかかる半導体集積回路装置の電圧補正動作を示すフローチャートである。
【図27】実施の形態5にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路の構成を示すブロック図である。
【図28】実施の形態5にかかる半導体集積回路装置が備える遅延時間計測回路の構成を示す図である。
【図29】実施の形態5にかかる半導体集積回路装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図30】本発明にかかる半導体集積回路装置を用いて電源電圧を制御した場合を説明するための図である。
【図31】特許文献1にかかる電源電圧制御装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置100は、電源電圧VDDが可変であるターゲット回路2と、ターゲット回路2に電源電圧VDDを供給する電圧供給回路4と、電圧供給回路4の出力電圧を制御する制御回路3と、ターゲット回路2に供給される電源電圧VDDの電圧値を予測する目標電圧予測回路1と、を備える。
【0022】
制御回路3は、ターゲット回路2の要求動作周波数が第1の動作周波数fから第2の動作周波数fに変化した際に、電圧供給回路4の出力電圧を所定の電圧値ΔVだけ変化させる。目標電圧予測回路1は、所定の電圧値ΔVの変化にともなうターゲット回路2の動作周波数の変化量を検出すると共に、当該動作周波数の変化量と所定の電圧値ΔVとの関係に基づいて目標電圧値Vを算出する。そして、電圧供給回路4は、ターゲット回路2に算出された目標電圧値の電源電圧を供給する。
【0023】
このようにして、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、ターゲット回路2の電源電圧VDDが最適値Vになるように制御している。以下、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置について詳細に説明する。
【0024】
図2は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置100が備える目標電圧予測回路1の詳細な構成を示す図である。目標電圧予測回路1は、リングオシレータ10、カウンタ11、カウンタ値補正回路12、レジスタ13A、13B、13C、カウンタ値比較回路14A、14B、倍率演算回路15を有する。リングオシレータ10にはターゲット回路2と同じ電源電圧VDDが供給される。
【0025】
リングオシレータ10はENABLE=1の期間Tだけ発振する。カウンタ11はENABLE=1になる前に一度リセットされ、ENABLE=1の期間Tにおけるリングオシレータの出力パルス数Cを計測し、その値がカウンタ値補正回路12によってCTEMP=kCに補正された後、レジスタ13Bに格納される。ここで、kは0<k≦1である。また、CTEMPはターゲット回路2に供給されている電源電圧の動作周波数を反映した値である。
【0026】
また、レジスタ13Aおよび13Cにはそれぞれターゲット回路2への要求性能、すなわち要求動作周波数fおよびfに対応するカウンタ値C=T・fおよびC=T・fが格納される。ここで、C、Cはそれぞれ要求動作周波数f、fを満たすために必要なカウンタ値であり、既知の値である。カウンタ値比較回路14Aおよび14Bには、それぞれCTEMP−C、C−CTEMPが格納される。また、カウンタ値比較回路14Aは倍率演算回路15にCTEMP−Cを出力し、カウンタ値比較回路14Bは倍率演算回路15にC−CTEMPを出力する。倍率演算回路15は、(C−CTEMP)/(CTEMP−C)を演算し出力する回路であり、ステップ幅予測回路として機能する。
【0027】
リングオシレータ10の構成例を図3に示す。リングオシレータ10は、NAND20、遅延素子21、バッファ22を有する。遅延素子21の遅延時間はターゲット回路2のクリティカルパス遅延の1/2倍であり、リングオシレータ10の発振周期はクリティカルパス遅延に等しい。
【0028】
図4にカウンタ値補正回路12の構成例を示す。カウンタ値補正回路12は、減算回路23を有し、被減数Cとしてカウンタ11の出力がそのまま入力され、減数C'としてCをiビットだけ下位へビットシフトした数値が入力される。CをNビットの数値とし、上位ビットから順にCNT、CNTN−1、・・・、CNTとすると、C'は上位ビットから順に0、・・・、0、CNT、・・・、CNTi+1となる。ここで、上位には0がiビットだけ入る。このような回路構成を用いることにより、CTEMP=C−C'=kCの補正を簡単に実現できる。ここで、k=1−2^(−i)である。
【0029】
図5に電圧供給回路4の構成例を示す。電圧供給回路4はリファレンス電圧生成回路41、オペアンプ42、およびNMOSFET43を有する。オペアンプの非反転入力端子にはリファレンス電圧生成回路41の出力VREFが入力され、電圧供給回路4の出力VDDはVDD=VREFに制御される。リファレンス電圧生成回路41は制御回路3によって制御され、リファレンス電位VREFが変わることで電源電圧供給回路4の出力VDDが変化する。
【0030】
図6にリファレンス電圧生成回路41の構成例を示す。リファレンス電圧生成回路41は、直列に接続されたn個の抵抗44_1、44_2、・・・、44_n、および抵抗間の各ノードと出力の間に挿入されたn−1個のスイッチから構成される。スイッチのうちいずれか1つだけがオン状態となっており、出力VREFは接続されたノードの電位と一致する。スイッチのオンオフは制御回路3から出力される制御信号により制御される。
【0031】
次に、要求動作周波数がfからfに変化した場合の半導体集積回路装置の動作について、図7に示すタイミングチャートおよび図8に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、初期状態として要求動作周波数fに対してのターゲット回路2の電源電圧、すなわち電圧供給回路4の出力VDDをVとする(t)。ここで、電源電圧Vはターゲット回路2が要求動作周波数fで動作するために必要最小限の電源電圧である。この状態に対してfがfに変わったとき(t)、制御回路3はまず電圧供給回路4の出力電圧がV+ΔVになるように制御する(t、ステップS1)。
【0032】
続いて、目標電圧予測回路1のレジスタ13Aおよび13Cに、それぞれCおよびCの値が格納される(t)。ここで、C=T・f、C=T・fである。さらに、RESET=1(ハイレベル)となって、カウンタ11がリセットされた後(t)、リングオシレータ10に入るENABLEが期間Tだけ1(ハイレベル)となり(t)、期間Tにおけるリングオシレータ10の発振回数に基づくカウント値CTEMPがレジスタ13Bに格納される(t、ステップS2)。
【0033】
各レジスタ13A、13B、13Cに値が格納された後、カウンタ値比較回路14Aおよび14Bには、それぞれCTEMP−C、C−CTEMPが格納される。そして、カウンタ値比較回路14Aは倍率演算回路15にCTEMP−Cを出力し、カウンタ値比較回路14Bは倍率演算回路15にC−CTEMPを出力する。さらに、倍率演算回路15は、(C−CTEMP)/(CTEMP−C)を演算し出力する(ステップS3)。続いて、制御回路3は電圧供給回路4の出力電圧VDDをV=V1+ΔV+(C−CTEMP)/(CTEMP−C)×ΔVに制御する(t、ステップS4)。
【0034】
ここで、一般に電源電圧VDDにおいて回路が動作可能な最大周波数fは次の近似式で表される。

ここで、AおよびVTHは回路構成や温度に依存する定数である。電源電圧をVからVに変化させたときに動作周波数がfからfに変わるとすると、次のように表すことができる。

よって、電源電圧の変化量と動作周波数の変化量は比例する。このことから、電源電圧をVからV+ΔVに変化させたときの動作周波数の変化量をΔfとすると、最終的に次式が成り立つ。

すなわち、要求動作周波数がfからfに変化する場合、ΔVおよびΔfが既知であれば、AやVTHに無関係に、必要な電源電圧Vを決定することができる。さらに、本実施の形態において、各レジスタ13A、13B、13Cに格納される値は、それぞれC=T・f、CTEMP=T・(f+Δf)、C=T・fであるため、式3は、次のように表すことができる。

【0035】
ここで、目標電圧予測回路1は、動作周波数fと動作周波数fとの差と、目標電圧値Vと変化前の電源電圧値Vとの差との比が、動作周波数の変化量Δfと所定の電圧ΔVとの比に等しくなるように目標電圧値を決定することができる。
【0036】
したがって、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることで、最終的に制御される電源電圧Vは、ターゲット回路2への要求動作周波数fを満たすのに必要最小限の電源電圧とすることができる。
以上のように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることにより、ターゲット回路2の要求動作周波数が変化した場合、必要最小限の電源電圧に収束させるための電源電圧の制御回数を2回に抑えることができ、電源電圧の制御時間を短くすることができる。
【0037】
図30は本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いて電源電圧を制御した場合を説明するための図である。図30に示すように、本発明を用いると、本発明を用いない場合よりも迅速にターゲット回路に供給される電源電圧をVからVに変更することができる。また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることにより、電源電圧を発振状態に陥らせることなく、短時間に電源電圧を最適値に制御することができる。
【0038】
なお、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、リファレンス電圧生成回路41として図6に示す回路を用いているが、例えば図9に示すような、電流源48および可変抵抗49を有する回路をリファレンス電圧生成回路41として用いてもよい。ここで、電流源48は一定の電流値IREFを流す電流源であり、可変抵抗49は抵抗値Rを有する。この回路の出力VREFは、VREF=IREF×Rとなり、制御回路3により可変抵抗49の抵抗値Rが制御されることで出力VREFを変化させることができる。なお、図9の回路において、可変抵抗49の抵抗値Rを固定して、電流源48の電流値を変化させることでリファレンス電圧を変化させてもよい。この場合は、制御回路3により電流源48の電流値を制御する。
【0039】
さらに、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、レギュレータとしてシリーズレギュレータを用いているが、出力電圧の変化速度を制御できるレギュレータであれば何を用いてもよく、例えばスイッチングレギュレータなどを用いてもよい。
【0040】
また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、リングオシレータ10の発振周期はターゲット回路2のクリティカルパス遅延に等しくしているが、例えば図10に示すリングオシレータ10を用いてもよい。図10に示すリングオシレータ10は、NAND24、2つの遅延素子25、26、バッファ27を有する。ここで、遅延素子25、26の遅延時間は、それぞれターゲット回路2のクリティカルパス遅延の1/2倍、(A−1)/2倍となっており、発振周期はクリティカルパス遅延のA倍となる。ここで、Aは1<Aである。
【0041】
このようなリングオシレータを用いることで、要求動作周波数に対して、ターゲット回路2の動作性能にマージンを持たせることができるため、温度変動などによりターゲット回路2の動作周波数が低下した場合、あるいは遅延素子25の遅延時間と実際のターゲット回路のクリティカルパス遅延の1/2倍の遅延との間に誤差が生じた場合でも、常に要求動作周波数を満たしながら動作させることができる。さらに、A=1/Kとすることで、一定時間におけるリングオシレータの出力パルス数はk倍になるため、図11に示すように目標電圧予測回路1においてカウンタ値補正回路12を省略することができる。
【0042】
また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、レジスタ13Bに格納する値をCTEMP=kCとしているが、これをCTEMP=C−Bとしてもよい。ここで、0<B<CTEMPである。このような回路動作は、図4に示したカウンタ値補正回路12において減数C'としてBを入力することで実現できる。このような値をレジスタ13Bに格納することで、要求動作周波数に対して、ターゲット回路2の動作性能にマージンを持たせることができるため、温度変動などによりターゲット回路2の動作周波数が低下した場合でも常に要求動作周波数を満たしながら動作させることができる。
【0043】
また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、カウンタ値補正回路12を減算器で構成しているが、入力数値をk倍して出力する演算回路であれば何を用いてもよい。 また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置ではカウンタ値補正回路12によってカウンタ11の出力を補正する際の補正係数kを固定値としているが、電圧供給回路4の出力に応じて変えてもよい。
【0044】
また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、リングオシレータ10の発振周期はターゲット回路2のクリティカルパス遅延に等しいとしているが、発振周期がクリティカルパス遅延のn倍のリングオシレータを用いてもよい。ここで、1<nである。このようなリングオシレータを用いることで、カウンタに要求される動作性能を軽減することが出来る。
【0045】
また、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、リングオシレータの出力をカウンタに入力しているが、リングオシレータの出力をN分周したものをカウンタに入力してもよい。ここで1<Nである。この場合、レジスタ13A、13Cには、それぞれTf/N、Tf/Nの値を格納する。このような半導体集積回路装置を用いることで、リングオシレータの回路面積を大きくすることなくカウンタに要求される動作性能を軽減することが出来る。
【0046】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態2にかかる半導体集積回路装置の構成は、図1に示した実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の構成要素のうち目標電圧予測回路1の構成が異なる。これ以外の構成は、図1に示した実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の構成と同様であるので重複した説明は省略する。
【0047】
図12に、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路1の構成例を示す。図12に示す目標電圧予測回路1は、リングオシレータ10、カウンタ11、カウンタ値補正回路12、レジスタ13A、13B、13C、カウンタ値比較回路14A、14B、倍率演算回路15、速度判定回路16を有する。
【0048】
リングオシレータ10にはターゲット回路2と同じ電源電圧VDDが供給され、発振周期はターゲット回路2のクリティカルパス遅延に等しい。リングオシレータ10はENABLE=1の期間Tだけ発振する。カウンタ11はENABLE=1になる前に一度リセットされ、ENABLE=1の期間Tにおけるリングオシレータの出力パルス数Cを計測し、その値がカウンタ値補正回路12によってCTEMP=kCに補正された後、レジスタ13Bに格納される。ここで、kは0<k≦1である。また、CTEMPはターゲット回路2に供給されている電源電圧の動作周波数を反映した値である。
【0049】
また、レジスタ13Aおよび13Cにはそれぞれターゲット回路2への要求性能、すなわち要求動作周波数fおよびfに対応するカウンタ値C=T・fおよびC=T・fが格納される。カウンタ値比較回路14Aおよび14Bには、それぞれCTEMP−C、C−CTEMPが格納される。また、カウンタ値比較回路14Aは倍率演算回路15にCTEMP−Cを出力し、カウンタ値比較回路14Bは倍率演算回路15にC−CTEMPを出力する。倍率演算回路15は、(C−CTEMP)/(CTEMP−C)を演算し出力する回路であり、ステップ幅予測回路として機能する。また、速度判定回路16はCTEMP−Cが正ならUP=0、DOWN=1を出力し、負ならUP=1、DOWN=0を出力し、0に等しければUP=0、DOWN=0を出力する。
【0050】
次に、要求動作周波数がfからfに変化した場合の半導体集積回路装置の動作について、図13に示すタイミングチャートを用いて説明する。
まず、初期状態として要求動作周波数fに対してのターゲット回路2の電源電圧、すなわち電圧供給回路4の出力VDDをV'とする(t)。この状態に対してfがfに変わったとき(t)、まず、目標電圧予測回路1のレジスタ13Aおよび13Cに、それぞれCおよびCの値が格納される(t)。ここで、C=T・f、C=T・fである。続いて、RESET=1(ハイレベル)となって、カウンタ11がリセットされた後(t)、リングオシレータ10に入るENABLEが期間Tだけ1(ハイレベル)となり(t)、期間Tにおけるリングオシレータ10の発振回数に基づくカウント値CTEMPがレジスタ13Bに格納される(t)。
【0051】
各レジスタ13A、13B、13Cに値が格納された後、カウンタ値比較回路14Aおよび14Bには、それぞれCTEMP−C、C−CTEMPが格納される。そして、カウンタ値比較回路14Aは倍率演算回路15および速度判定回路16にCTEMP−Cを出力し、カウンタ値比較回路14Bは倍率演算回路15にC−CTEMPを出力する。ここで、速度判定回路16の出力にしたがい、CTEMP−C>0であれば電源電圧を下げ、CTEMP−C<0であれば電源電圧を上げるように、電源電圧VDDが制御される(t)。ここで、tからtの動作はCTEMP−C=0になるまで繰り返される。最終的にCTEMP−C=0となったときの電源電圧VDDをVとする。その後は、制御回路3が電圧供給回路4の出力電圧をV+ΔVになるように制御する(t)。以降の動作は実施の形態1の場合と同様である。
【0052】
図14は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャート(図8)のステップS1の前に、上記初期補正工程(ステップS1')が追加されている。初期補正工程では、図13のtからtまでの動作を繰り返している。なお、図14のフローチャートのステップS1からS4までの動作については実施の形態1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
図15は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の電圧補正動作を示すフローチャートである。図15に示すように、まず、CTEMP>Cの条件を満たすか否か判断される(ステップS11)。CTEMP>Cの条件を満たす場合は、電源電圧VDDを下げるように制御回路3が電圧供給回路4の出力を制御する(ステップS12)。一方、CTEMP>Cの条件を満たさない場合は、CTEMP<Cの条件を満たすか否か判断される(ステップS13)。CTEMP<Cの条件を満たす場合は、電源電圧VDDを上げるように制御回路3が電圧供給回路4の出力を制御する(ステップS14)。一方、CTEMP<Cの条件を満たさない場合は、電圧補正動作を終了する。
【0054】
本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることにより、ターゲット回路2の動作周波数が温度変動などの要因により変化した場合でも、制御前の電源電圧値Vを、要求動作周波数fを満たすのに必要最小限の電圧値に一致させることができるため、最終的な目標電圧Vの精度を高めることができる。
【0055】
なお、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置において、速度判定回路16はCTEMP−Cが正ならUP=0、DOWN=1を出力し、負ならUP=1、DOWN=0を出力し、0に等しければUP=0、DOWN=0を出力している。しかし、|CTEMP−C|が一定値以下であればUP=0、DOWN=0を出力するようにしてもよい。このような制御を行うことにより、電圧供給回路4における電源電圧の制御の最小単位を大きくすることができ、CTEMP−Cが0になるように制御できない場合であっても回路動作をさせることができる。
【0056】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図16は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置200の構成を示す図である。図16に示すように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置200は、電源電圧VDDが可変であるターゲット回路2と、ターゲット回路2に電源電圧VDDを供給する電圧供給回路4と、電圧供給回路の出力電圧を制御する制御回路3と、ターゲット回路2に供給される電源電圧VDDの電圧値を予測する目標電圧予測回路1と、遅延モニタ回路5と、を備える。本実施の形態では、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置に遅延モニタ回路5が追加されている。なお、遅延モニタ回路5以外の回路構成および動作は実施の形態1で説明した場合と同様であるので重複した説明は省略する。
【0057】
遅延モニタ回路5の構成例を図17に示す。遅延モニタ回路5は、遅延素子52の前後にフリップフロップ51および53が接続された構成となっている。遅延素子52はターゲット回路2のクリティカルパス遅延に等しい遅延時間Dを持ち、ターゲット回路2と等しい電源電圧がかかっている。また、フリップフロップ51および53はターゲット回路2への要求動作周波数に等しい周波数freqを持つクロックで駆動される。したがって、遅延モニタ回路5では、D<1/freqであれば、あるクロックでフリップフロップ51から出力された信号が次のクロックでフリップフロップ53に取り込まれ、D>1/freqであれば取り込まれない。
【0058】
次に、ターゲット回路2への要求動作周波数がfからfに変化した場合の半導体集積回路装置の動作について説明する。図18は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の動作では、実施の形態1の場合の動作(図8参照)と比べて、電圧補正工程(ステップS5)が追加されている。
【0059】
電圧供給回路4の出力電圧VDDが、要求動作周波数fを満たすのに必要最小限の電源電圧であるVから制御回路3および目標電圧予測回路1にしたがってVに制御されるまでの動作は、実施の形態1の場合と同様である(ステップS1〜S4)。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、その後、遅延モニタ回路5による判定結果(UP/DOWN)が制御回路3に送られる。そして、制御回路3は、UP/DOWN信号に基づいて、UP=1であれば電源電圧VDDを上げ、DOWN=1であれば電源電圧VDDを下げるように電圧供給回路4の出力を制御する。(ステップS5)。
【0060】
図19は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の電圧補正動作を示すフローチャートである。図19に示すように、まず、D<1/fの条件を満たすか否か判断される(ステップS21)。D<1/fの条件を満たす場合は、電源電圧VDDを下げるように制御回路3が電圧供給回路4の出力を制御する(ステップS22)。一方、D<1/fの条件を満たさない場合は、D>1/fの条件を満たすか否か判断される(ステップS23)。D>1/fの条件を満たす場合は、電源電圧VDDを上げるように制御回路3が電圧供給回路4の出力を制御する(ステップS24)。一方、D<1/fの条件を満たさない場合は、電圧補正動作を終了する。
【0061】
以上で説明したように、遅延モニタ回路5は、ターゲット回路2の電源電圧が目標電圧予測回路1により算出された目標電圧値Vに制御された後、ターゲット回路2の動作周波数と要求動作周波数fとを比較している。そして、制御回路3は、ターゲット回路2の動作周波数と要求動作周波数fとが実質的に等しくなるように、電圧供給回路4の出力を制御している。
【0062】
本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることにより、目標電圧予測回路1にしたがって制御された電源電圧VDDが、ターゲット回路2が要求動作周波数fを満たすのに必要な最小限の電源電圧Vminからずれていた場合でも、電源電圧VDDをVminに収束させることが可能となる。これにより、ターゲット回路2の動作可能周波数が要求動作周波数に満たない状態になることを防ぐことができるとともに、必要以上の電源電圧をかけることによる消費電力の増加を防ぐことができる。
【0063】
なお、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、倍率演算回路15で(C−CTEMP)/(CTEMP−C)を演算して出力しているが、例えば、次式を満たす2^(a−b)の値を出力するような回路を用いてもよい。
(C−CTEMP)>2^a≧(C−CTEMP)/2 ・・・式5
(CTEMP−C)>2^b≧(CTEMP−C)/2 ・・・式6
【0064】
式5、式6を満たす2^(a−b)の値を出力する倍率演算回路15の構成例を図20に示す。図20に示す倍率演算回路15は、最上位ビット検出回路55A、55Bおよびシフトレジスタ56A、56Bを有する。最上位ビット検出回路およびシフトレジスタの構成例を図21および図22にそれぞれ示す。図21に示すように、最上位ビット検出回路55は、複数の論理回路が互いに接続されて構成されている。また、図22に示すように、シフトレジスタ56は、複数のレジスタ71_1、71_2、・・・、71_Nが接続されて構成されている。
【0065】
最上位ビット検出回路を用いることにより、Nビットの入力数値に対して、1となるビットの内、最上位のビット以外をすべて0にすることができる。したがって、最上位ビット検出回路55Aは(C−CTEMP)を入力し、2^aを出力する。また、最上位ビット検出回路55Bは(CTEMP−C)を入力し、2^bを出力する。シフトレジスタ56A、56Bにはそれぞれ2^a、2^bが入力される。
【0066】
その後、クロック信号CLKSHIFTに同期してシフトレジスタ56A、56Bに格納されたデータが下位ビットへとシフトしていく。最終的にシフトレジスタ56Bの出力が1となった時点でのシフトレジスタ56Aの出力が2^(a−b)の値になる。
【0067】
このような回路を用いることにより、演算を簡単な回路で実現できるため、回路面積を小さくすることができる。なお、目標電圧の精度には最大で50%の誤差が生じるが、遅延モニタ回路のみに基づく従来の電源制御と比較すると電源制御回数を少なくとも約半分以下にすることができるため、従来と比べて電源電圧の制御時間を短縮することができる。
【0068】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図23は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置300の構成を示す図である。図23に示すように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置300は、電源電圧VDDが可変であるターゲット回路2と、ターゲット回路2に電源電圧VDDを供給する電圧供給回路4と、電圧供給回路の出力電圧を制御する制御回路3と、ターゲット回路2に供給される電源電圧VDDの電圧値を予測する目標電圧予測回路1と、を備える。なお、目標電圧予測回路1以外の回路構成および動作は実施の形態1で説明した場合と同様であるので重複した説明は省略する。
【0069】
図24に、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路1の構成例を示す。図24に示す目標電圧予測回路1は、リングオシレータ10、カウンタ11、カウンタ値補正回路12、レジスタ13A、13B、13C、カウンタ値比較回路14A、14B、倍率演算回路15、速度判定回路17を有する。
【0070】
リングオシレータ10にはターゲット回路2と同じ電源電圧VDDが供給され、発振周期はターゲット回路2のクリティカルパス遅延に等しい。リングオシレータ10はENABLE=1の期間Tだけ発振する。カウンタ11はENABLE=1になる前に一度リセットされ、ENABLE=1の期間Tにおけるリングオシレータの出力パルス数Cを計測し、その値がカウンタ値補正回路12によってCTEMP=kCに補正された後、レジスタ13Bに格納される。ここで、kは0<k≦1である。また、CTEMPはターゲット回路2に供給されている電源電圧の動作周波数を反映した値である。
【0071】
また、レジスタ13Aおよび13Cにはそれぞれターゲット回路2への要求性能、すなわち要求動作周波数fおよびfに対応するカウンタ値C=T・fおよびC=T・fが格納される。カウンタ値比較回路14Aおよび14Bには、それぞれCTEMP−C、C−CTEMPが格納される。また、カウンタ値比較回路14Aは倍率演算回路15にCTEMP−Cを出力し、カウンタ値比較回路14Bは倍率演算回路15にC−CTEMPを出力する。倍率演算回路15は、(C−CTEMP)/(CTEMP−C)を演算し出力する回路であり、ステップ幅予測回路として機能する。また、速度判定回路17はC−CTEMPが正ならUP=1、DOWN=0を出力し、負ならUP=0、DOWN=1を出力し、0に等しければUP=0、DOWN=0を出力する。
【0072】
次に、ターゲット回路2への要求動作周波数がfからfに変化した場合の半導体集積回路装置の動作について説明する。図25は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の動作を示すフローチャートである。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の動作では、実施の形態1の場合の動作(図8参照)と比べて、電圧補正工程(ステップS5')が追加されている。
【0073】
電圧供給回路4の出力電圧VDDが、要求動作周波数fを満たすのに必要最小限の電源電圧であるVから制御回路3および目標電圧予測回路1にしたがってVに制御されるまでの動作は、実施の形態1の場合と同様である(ステップS1〜S4)。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、その後、目標電圧予測回路1が図7に示すタイミングチャートのt5からt8の期間の動作を繰り返し、UP/DOWN信号を制御回路3に送信する。そして、制御回路3は、UP/DOWN信号に基づいて、UP=1であれば電源電圧VDDを上げ、DOWN=1であれば電源電圧VDDを下げるように電圧供給回路4の出力を制御する。(ステップS5')。
【0074】
図26は、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置の電圧補正動作を示すフローチャートである。図26に示すように、まず、CTEMP<Cの条件を満たすか否か判断される(ステップS31)。CTEMP<Cの条件を満たす場合は、電源電圧VDDを下げるように制御回路3が電圧供給回路4の出力を制御する(ステップS32)。一方、CTEMP<Cの条件を満たさない場合は、CTEMP>Cの条件を満たすか否か判断される(ステップS33)。CTEMP>Cの条件を満たす場合は、電源電圧VDDを上げるように制御回路3が電圧供給回路4の出力を制御する(ステップS34)。一方、CTEMP>Cの条件を満たさない場合は、電圧補正動作を終了する。
【0075】
以上のように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることにより、電源電圧VDDをターゲット回路2が要求動作周波数fを満たすのに必要な最小限の電源電圧Vminに収束させることが可能となる。これにより、ターゲット回路2の動作可能周波数が要求動作周波数に満たない状態になることを防ぐことができるとともに、必要以上の電源電圧をかけることによる消費電力の増加を防ぐことができる。また、遅延モニタ回路を必要としないため、回路面積を抑えることができる。
【0076】
なお、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置において、速度判定回路17は、C2−CTEMPが正ならUP=1、DOWN=0を出力し、負ならUP=0、DOWN=1を出力し、0に等しければUP=0、DOWN=0を出力しているが、|C2−CTEMP|が一定値以下であればUP=0、DOWN=0を出力するようにしてもよい。このような制御を行うことにより、電源電圧について必要以上の制御を抑制することができ、電力消費量を抑えるとともに電源電圧の安定性を向上させることができる。
【0077】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について説明する。本発明の実施の形態5にかかる半導体集積回路装置の構成は、図1に示した実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の構成要素のうち目標電圧予測回路1の構成が異なる。これ以外の構成は、図1に示した実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の構成と同様であるので重複した説明は省略する。
【0078】
図27に、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置が備える目標電圧予測回路1の構成例を示す。図27に示す目標電圧予測回路1は、遅延時間計測回路18、計測値補正回路19、レジスタ13A、13B、13C、比較回路30A、30B、倍率演算回路15を有する。
【0079】
図28に遅延時間計測回路18の構成例を示す。遅延時間計測回路18は、直列接続されたN個の遅延素子81_1、81_2、・・・、81_Nの各接続ノードにフリップフロップ82_1、82_2、・・・、82_Nが接続された構成となっている。各遅延素子にはターゲット回路2と等しい電源電圧がかかっている。また、それぞれの遅延素子による遅延時間は等しく、ターゲット回路2のクリティカルパス遅延Dのα倍である。
【0080】
各フリップフロップは周期Tのクロック信号CLKで同期して駆動され、あるクロックでフリップフロップ83からパルス信号が出力され、次のクロックでフリップフロップ82_1、82_2、・・・、82_Nによってデータが取り込まれる。取り込まれたデータは到達位置判定回路84に入力され、最終的にフリップフロップ83から出力された信号が1クロック周期で到達したノードの数Kの値が到達位置判定回路84から出力される。
【0081】
次に、要求動作周波数がfからfに変化した場合の半導体集積回路装置の動作について、図29に示すタイミングチャートを用いて説明する。
まず、初期状態として要求動作周波数fに対してのターゲット回路2の電源電圧、すなわち電圧供給回路4の出力VDDをVとする(t)。ここで、電源電圧Vはターゲット回路2が要求動作周波数fで動作するために必要最小限の電源電圧である。この状態に対してfがfに変わったとき(t)、制御回路3はまず電圧供給回路4の出力電圧がV+ΔVになるように制御する(t)。続いて、目標電圧予測回路1のレジスタ13Aおよび13Cに、それぞれK=T・f/αおよびK=T・f/αの値が格納される(t)。ここで、K、Kはそれぞれ要求動作周波数f、fを満たすために必要な既知の値である。さらに、遅延時間計測回路18にクロックが2回入力されると(t)、計測値補正回路19は遅延時間計測回路18からの出力値Kに基づいてKTEMP=mKの値を生成し、レジスタ13BにKTEMPを格納する(t)。ここで、mは、0<m≦1である。
【0082】
各レジスタ13A、13B、13Cに値が格納された後、比較回路30Aおよび30Bには、それぞれKTEMP−K、K−KTEMPが格納される。そして、比較回路30Aは倍率演算回路15にKTEMP−Kを出力し、比較回路30Bは倍率演算回路15にK−KTEMPを出力する。倍率演算回路15は、KTEMP−K、K−KTEMPの値に基づき(K−KTEMP)/(KTEMP−K)の値を演算し、制御回路3にこの値を出力する。制御回路3は電圧供給回路4の出力電圧VDDをV=V+ΔV+(K−KTEMP)/(KTEMP−K)×ΔVになるように制御する(t)。
【0083】
以上のように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置を用いることにより、ターゲット回路2の要求動作周波数が変化した場合、必要最小限の電源電圧に収束させるための電源電圧の制御回数を2回に抑えることができ、電源電圧の制御時間を短くすることができる。さらに、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置ではカウント動作が不要になるため、カウンタの動作性能による時間的制約のない回路設計を行うことができる。また、ターゲット回路の動作周波数は要求性能に対して(1−m)倍のマージンを持つため、温度変動などによりターゲット回路2の動作周波数が低下した場合でも常に要求動作周波数を満たしながら動作させることができる。
【0084】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
1 目標電圧予測回路
2 ターゲット回路
3 制御回路
4 電圧供給回路
5 遅延モニタ回路
10 リングオシレータ
11 カウンタ
12 カウンタ値補正回路
13A、13B、13C レジスタ
14A、14B カウンタ値比較回路
15 倍率演算回路
16、17 速度判定回路
18 遅延時間計測回路
19 計測値補正回路
20、24 NOR論理
21、25、26 遅延素子
22、27 バッファ
23 減算回路
30A、30B 比較回路
41 リファレンス電圧生成回路
42 オペアンプ
43 NMOSFET
44_1、44_2、44_N 抵抗
48 電流源
49 抵抗
51、53 フリップフロップ
52 遅延素子
55、55A、55B 最上位ビット検出回路
56、56A、56B シフトレジスタ
71_1、71_2、・・・、71_N レジスタ
81_1、81_2、・・・、81_N 遅延素子
82_1、82_2、・・・、82_N フリップフロップ
83 フリップフロップ
84 到達位置判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が可変であるターゲット回路と、
前記ターゲット回路に電源電圧を供給する電圧供給回路と、
前記電圧供給回路の出力電圧を制御する制御回路と、
前記ターゲット回路に供給される電源電圧の電圧値を予測する目標電圧予測回路と、を備え、
前記制御回路は、前記ターゲット回路の要求動作周波数が第1の動作周波数から第2の動作周波数に変化した際に、前記電圧供給回路の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させ、
前記目標電圧予測回路は、前記所定の電圧値の変化にともなう前記ターゲット回路の動作周波数の変化量を検出すると共に、当該動作周波数の変化量と前記所定の電圧値との関係に基づいて目標電圧値を算出し、
前記電圧供給回路は、前記ターゲット回路に前記目標電圧値の電源電圧を供給する、半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記目標電圧予測回路は、前記第2の動作周波数と前記第1の動作周波数との差と、前記目標電圧値と変化前の電源電圧値との差と、の比が、前記動作周波数の変化量と前記所定の電圧との比に等しくなるように前記目標電圧値を算出する、請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記制御回路が変化させる前記所定の電圧値は、前記制御回路が前記電圧供給回路の出力を制御し得る最小単位の電圧値である、請求項1または2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記目標電圧予測回路は、前記ターゲット回路の動作周波数が前記第2の動作周波数を満たすのに必要な最小限の電源電圧に一致するように前記目標電圧値を算出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記ターゲット回路の要求動作周波数が前記第1の動作周波数から前記第2の動作周波数に変化した際に、
前記制御回路は、前記制御回路が前記電圧供給回路の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させる前に、前記電圧供給回路の出力を、前記ターゲット回路の動作周波数が前記第1の動作周波数を満たすような電源電圧に制御する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記第1の動作周波数を満たす電源電圧は、前記第1の動作周波数を満たす必要最小限の電圧である、請求項5に記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
前記目標電圧予測回路は、リングオシレータとカウンタとを備え、
前記リングオシレータは、前記ターゲット回路の電源電圧に応じて発振周期が変化し、
前記カウンタは、所定の期間内における前記リングオシレータの出力パルス数を計測し、
前記目標電圧予測回路は、前記出力パルス数の変化により前記動作周波数の変化量を検出する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項8】
前記目標電圧予測回路は、直列に接続された複数の遅延素子を備え、
前記遅延素子は前記ターゲット回路の電源電圧に応じて遅延時間が変化し、
前記目標電圧予測回路は、所定の期間内において信号が伝搬可能な遅延素子数の変化量により前記動作周波数の変化量を検出する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項9】
前記ターゲット回路の動作周波数と前記要求動作周波数とを比較する遅延モニタ回路をさらに備え、
前記電圧供給回路の出力は、前記目標電圧予測回路が算出した前記目標電圧値に制御された後、さらに前記遅延モニタ回路からの出力値に基づいて制御される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項10】
前記ターゲット回路の動作周波数と前記要求動作周波数とが実質的に等しくなるように、前記電圧供給回路の出力が制御される、請求項9に記載の半導体集積回路装置。
【請求項11】
前記目標電圧予測回路の一部に前記ターゲット回路の動作周波数に対応する値と前記第2の動作周波数に対応する値とを比較する速度判定回路を設け、当該速度判定回路を前記遅延モニタ回路として用いる、請求項9または10に記載の半導体集積回路装置。
【請求項12】
ターゲット回路に供給される電源電圧を制御する方法であって、
前記ターゲット回路の要求動作周波数が第1の動作周波数から第2の動作周波数に変化した際に、前記電圧供給回路の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させ、
前記所定の電圧値の変化にともなう前記ターゲット回路の動作周波数の変化量を検出し、
前記ターゲット回路に供給される電源電圧を、前記動作周波数の変化量と前記所定の電圧値との関係に基づいて算出する、電源電圧制御方法。
【請求項13】
前記第2の動作周波数と前記第1の動作周波数との差と、前記目標電圧値と変化前の電源電圧値との差と、の比が、前記動作周波数の変化量と前記所定の電圧との比に等しくなるように前記目標電圧値を算出する、請求項12に記載の電源電圧制御方法。
【請求項14】
前記ターゲット回路の動作周波数が前記第2の動作周波数を満たすのに必要な最小限の電源電圧に一致するように前記ターゲット回路の電源電圧を制御する、請求項12または13に記載の電源電圧制御方法。
【請求項15】
前記ターゲット回路の要求動作周波数が前記第1の動作周波数から前記第2の動作周波数に変化した際に、前記電圧供給回路の出力電圧を所定の電圧値だけ変化させる前に、前記ターゲット回路の動作周波数が前記第1の動作周波数を満たすように前記ターゲット回路の電源電圧を制御する、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の電源電圧制御方法。
【請求項16】
前記第1の動作周波数を満たす電源電圧は、前記第1の動作周波数を満たす必要最小限の電圧である、請求項15に記載の電源電圧制御方法。
【請求項17】
前記ターゲット回路の動作周波数と前記要求動作周波数とが実質的に等しくなるように、前記ターゲット回路に電源電圧を供給する、請求項12乃至16のいずれか一項に記載の電源電圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−66791(P2011−66791A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217168(P2009−217168)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】