説明

半田層及びそれを用いた電子デバイス接合用基板並びに電子デバイス接合用サブマウント

【課題】 接合する電子デバイスなどの特性を低下させない、半田層及びそれを用いた電子デバイス接合用基板を提供する。
【解決手段】 基板11上に形成される鉛を含まない半田層14又はこの半田層を有する電子デバイス接合用基板10であって、半田層14の比抵抗を0.4Ω・μm以下とする。電子デバイス接合用基板10の熱抵抗を0.5K/W以下とし、半田層14の厚みを10μm以下とすることができる。この場合、半田層14内に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下である。基板としては、サブマウント基板を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等の電子デバイスなどを接合する、半田層及びそれを用いた電子デバイス接合用基板並びに電子デバイス接合用サブマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置等の電子デバイスを基板上に形成した回路に組み込む際、鉛(Pb)を主成分とする半田層を用いて電子デバイスを基板に接合し、電気回路や電子回路を形成していた。このPbを含む半田層は電気抵抗が低く、電子デバイスの回路への接合に多用されてきた。
【0003】
しかし、Pb及びスズ(Sn)からなる半田は、近年、使用が制限される傾向となってきている。特に欧州では、RoHS指令(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令)により2006年7月1日から使用が禁止されている。このため、Pbを含む半田の代替半田としてPbを不可避程度にしか含有していない、即ち鉛フリー半田として、例えば、Au−Sn、Ag−Sn、In−Sn、Zn−Sn、Bi−Snなどの半田で形成することが提案されている。
【0004】
非特許文献1及び2では、Pbフリーのオーミック電極材料として、Au−Snなどの半導体への電気的接合性について報告されている。非特許文献3には、Au−Sn半導体層により形成したバンプ電極の形状が報告されている。
【0005】
また、近年の電子回路の集積化に伴い、高い電力で駆動させる電子デバイスが望まれている。しかし、高電力で駆動する電子デバイスは駆動中の発熱量が大きく、その発生した熱により半導体素子等の電子デバイスは電気特性が変化してしまう。さらに、半導体装置、放熱板、半導体装置と放熱板を接合するための半田の各熱膨張率は通常それぞれ異なっているため、半導体装置の発熱が大きい場合には、半導体装置や半田が放熱板から剥離したりする不都合が生じる。そのため、発生する熱を放出させるために種々の工夫がなされている。例えば、半導体装置をパッケージ化する際の基板として、放熱板または放熱器となる熱伝導度の高い基板上に半導体装置を搭載することで、半導体装置から発生する熱を効率良く放出させるようにしている。また、さらに放熱特性を改善して、より高電力駆動される電子デバイスから生じる熱を放出するために、熱伝導率の高い基板を、半導体装置とパッケージの放熱板との間に介在させて、サブマウントとする場合がある。この熱伝導率の高いサブマウント基板として、窒化アルミニウム(AlN)などが挙げられる。
【0006】
特許文献1には、窒化アルミニウム焼結体基板上の一部にTi(チタン)及びPt(白金)からなる密着層、Au(金)からなる電極層、Pt(白金)からなる半田バリア層、Au−Suからなる半田層が順次積層されたサブマウントが開示されている。
【0007】
本発明者等による特許文献2には、窒化アルミニウム焼結体基板と、窒化アルミニウム焼結体基板の表面に形成される電極層と、電極層上に形成される半田層と、からなるサブマウントが開示されている。このサブマウントにおいては、窒化アルミニウム焼結体基板と電極層との間に形成される界面及び/又は電極層と半田層との間に形成される界面における炭素濃度を、1×1020atoms/cm3以下とすれば、窒化アルミニウム焼結体基板とその表面に形成される電極層や半田層同士の密着性を向上できることが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−258360号公報
【特許文献2】特開2006−286944号公報
【非特許文献1】L. BUENE 他4名, “ALLOYING BEHAVIOR OF Au-In AND Au-Sn FILMS ON SEMICONDUCTORS", Thin Solid Films, Vol.34(1), pp.149-152, 1976
【非特許文献2】S.Knight 他1名, “OHMIC CONTACTS FOR GALLIUM ARSENIDE BULK EFFECT DEVICES", Symposium on Ohmic Contacts,pp.102-114, 1969
【非特許文献3】M.Hutter 他6名, “Calculation of Shape and Experimental Creation of AuSn Solder Bumps for Flip Chip Applications", IEEE Electronic Components and Technology Conference, pp.282-288, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、Pbフリー半田により形成した半田層において、半田層をランプ加熱法などにより溶解させた後凝固させると、半田層内に存在するボイドにより半田層の電気抵抗が大きくなる。そのため、Pbフリーの半田層を介して電子デバイスを基板に接合すると、基板に形成された半田層の抵抗が上昇し、その分の電圧降下が生じるために印加する電圧を高くする必要があった。特に、発光ダイオードなどの半導体装置を搭載して光デバイス回路を形成すると、ボイドにより寄生抵抗が生じるため、ノイズが発生したりジュール熱が発生したりすることで特性が低下するという課題がある。
【0010】
特許文献1の技術では、半田層の成膜条件を調整することで、半田層の粒子径の増大を抑制して、成膜後の半田層の表面粗さを小さくしている。しかしながら、電極層をフォトリソグラフィ法により作製しているため、Au電極層の成膜時の加熱により揮発したレジスト成分、またはリフトオフ時に使用した剥離液に含まれる炭素等の元素が電極表面に付着する。このため、電極層上に半田層を成膜する際に電極層表面に付着した炭素等の元素が半田層内に混入し、溶解凝固後の半田層にボイドを形成してしまう。そして、この電極層上に作製した半田層を介して発光素子を接合した際に抵抗が生じていた。また、半田層の形成にはメタルマスク法を用いているため、半田層の位置決めの制御が困難でかつ制御性が悪く、半田層の形成位置がずれてしまい、良品率が低下してしまう。
【0011】
特許文献2の技術では、界面の洗浄を紫外線オゾン処理法又はプラズマアッシャー法で行うことにより、例えば、電極層と半田層との界面における炭素濃度を減少することで、電極層と半田層との界面の密着性を改善している。しかしながら、半田層をフォトリソグラフィ法で成膜しているため、半田層の成膜時にマスク材料が半田層へ混入し、サブマウントの熱抵抗や半田層の比抵抗が高いままとなっていた。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑み、鉛を含まず、かつ、電気抵抗の小さい半田層及びそれを用いた電子デバイス接合用基板並びに電子デバイス接合用サブマウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、溶解凝固前後における鉛を含まない半田層内や半導体装置との接合面でのボイドの密度やボイドの最大径を小さくすることで、半田層の電気抵抗を小さくすることができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一構成による鉛を含まない半田層は、基板上に形成され、比抵抗が0.4Ω・μm以下であることを特徴とする。
本発明の他の構成による鉛を含まない半田層は、層内に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下であることを特徴とする。
本発明の他の構成の鉛を含まない半田層は、電子デバイスを接合していて、層内に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下であることを特徴とする。
上記各構成において、半田層の溶解凝固後の厚みは、好ましくは10μm以下である。
【0015】
上記構成によれば、鉛を含まない半田層を溶解凝固して電子デバイス等を半田接合する場合に、半田層による寄生抵抗を低下させることができる。このため、ジュール熱の発生による電力の損失を低減できるため、印加電圧も小さい、必要最低限の電力で駆動する電子回路を形成することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の一構成に係る電子デバイス接合用基板は、基板と基板上に形成される鉛を含まない半田層とを含み、半田層の比抵抗が0.4Ω・μm以下であることを特徴とする。
本発明の他の構成に係る電子デバイス接合用基板は、基板と基板上に形成される鉛を含まない半田層とを含み、半田層内に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下である。
上記各構成において、電子デバイス接合用基板の熱抵抗は、好ましくは、0.5K/W以下である。半田層の溶解凝固後の厚みは、好ましくは10μm以下である。基板は、電子デバイスを接合するためのサブマウント基板であってよい。
【0017】
上記構成によれば、電子デバイスを搭載する半田層で発生する抵抗を小さくすることができ、電子デバイスの動作に影響を及ぼさないようにすることができる。好ましい形態では、半田層の溶解前後の表面粗さは小さいので、半田層内及び半田層及び半導体装置との接合面でのボイドの最大径が小さいため、良好なオーミック接触が可能となる。このため、例えば、発光ダイオードなどの半導体装置を搭載し光デバイス回路を形成しても、寄生抵抗を小さくすることができるので、半導体装置の出力特性におけるノイズやジュール熱の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉛を含まない半田層においても、電気抵抗が小さい半田層を提供することができる。
【0019】
本発明の鉛を含まない半田層を用いた電子デバイス接合用基板又は電子デバイス接合用サブマウントによれば、電気抵抗が小さい半田層を有し、かつ、熱抵抗を小さくすることができる。このため、ジュール熱の発生による電力の損失を低減でき、印加電圧を小さくし、必要最低限の電力で駆動する電子回路を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の半田層は、所定の基板上に形成されており、鉛を含まない半田、即ち、Pbフリー半田から成る。本発明における鉛を含まない半田層とは、故意には鉛を成分としない半田である。鉛を含まない半田層の成分中に精製の際に不可避的に含まれる残留物としての鉛は、環境等に影響を与えない程度が含まれていてもよい。この鉛を含まない半田としては、例えば銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)のうち、2種類以上の元素を含んだ半田を用いるのが好ましい。
【0021】
電子デバイスとしての発光ダイオードチップを半田層に接合した場合、半田層が厚いと接合時に発光ダイオードチップの発光層が半田層内に埋まってしまい、発光ダイオードが発光しなくなる。このため半田層の厚みは、溶解凝固後において10μm以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の半田層は、溶融凝固後に半田層中に存在する空隙(以下、適宜にボイドと称する。)の数が少なく、かつ、ボイドの寸法も小さいため、半田層の比抵抗が小さくなっている。特に、半田層の溶解凝固後の半田層内に含まれるボイドの最大直径を0.5μm以下とすることで、半田層の比抵抗は、溶融凝固後で0.4Ω・μm以下となる。半田層の溶解凝固後の比抵抗を0.4Ω・μm以下にすることにより、この半田層に接合される半導体レーザや発光ダイオードを発光させるのに必要な電圧及び電流に対し、半田層の電気抵抗による抵抗損失の影響が無視できる程度となる。このため、入力電力に対する発光出力の割合、すなわち、効率が改善される。また、余分な抵抗によるジュール熱の発生も抑制できるので、上記発光素子の熱による発光出力の低下も抑制することが可能となる。さらに加えて、ボイド密度も1個/μm2 以下とすることで、半田層の比抵抗を0.2Ω・μm以下とさらに低下させることができる。
なお、溶融凝固とは、基板上に形成された半田層を、一旦融点以上に加熱して溶解させ、その後融点以下に冷却して凝固させることをいう。
【0023】
以上のように、本発明の鉛を含まない半田層は、ボイドの最大径が小さいため半田層の比抵抗を小さくすることができる。これにより、鉛を含まない半田層に発光ダイオードなどの半導体装置を接合して電流を通電しても、半田層内でのジュール熱の発生が抑制されるため、各種の電子デバイスの性能低下も抑制することができる。
ここで、電子デバイスとは、半導体装置、半導体装置による集積回路などの能動素子、抵抗、コンデンサ、インダクタンス、スイッチなどの各種の受動部品を含む回路用部品を意味する。
【0024】
次に、本発明の電子デバイス接合用基板について説明する。
本発明の電子デバイス接合用基板は、セラミック基板やプリント基板などの基板上に、銅やAu(金)を主成分とする電子デバイスを動作させるための電気回路や電子回路配線や金属層が形成され、さらにその配線や金属層上に、電子デバイス接合用基板と電子デバイスを接合するための鉛を含まない半田層が形成されている。そして、この鉛を含まない半田層は、半田層中に存在するボイドの数が少なく、ボイドの寸法も小さいため、半田層の比抵抗が小さくなっている。特に、溶解凝固後のボイドの最大径を0.5μm以下にすることにより、溶解凝固後の半田層の比抵抗を0.4Ω・μm以下とすることができる。半田層は比抵抗が小さいので、ジュール熱の発生や消費電力を抑制することができる。さらに、半田層のボイド密度を1個/μm2 以下とすることで、半田層の比抵抗を0.2Ω・μm以下とすることができる。
【0025】
溶解凝固後に半田層内に発生するボイドの径が小さいので、半田層を溶解凝固させた後の半田層表面の平坦性も保たれる。したがって、半田層表面の光反射率を高くすることができる。このため、電子デバイス接合用基板に発光素子を実装した場合には、発光素子から半田層側に出射してきた光が高確率で反射されるため、発光出力を向上させることができる。
【0026】
半田層内のボイド径が小さく、その密度も低いことから、半田層の熱抵抗が小さくなっている。さらに、電子デバイス接合用基板の電極層と半田層との界面、基板と電極層との界面の炭素濃度を共に1×1020cm-3以下とすることにより、電極層と半田層、基板と電極層との界面の熱抵抗も小さくすることができる。上記の電子デバイス接合用基板によれば、その熱抵抗を0.5K/W以下とすることができ、電子デバイスが駆動中に発生した熱を効率よく基板に伝熱して放熱させることができる。熱抵抗を0.5K/W以下とすることで、半田接合したデバイスの特性及びその信頼性を向上させることができ、従来の携帯電話や民生機器等の小型モジュールのみならず、熱的に負荷が大きい用途、たとえば自動車用途、パワーデバイス用途にも十分使用することができる。
【0027】
半田層の溶解凝固後の厚みは10μm以下であることが好ましい。この範囲を超えると、例えば電子デバイスとしての発光ダイオードチップなどを接合した場合、接合時にチップの発光層が半田層内に埋まってしまい、発光ダイオードが発光できなくなるため好ましくない。
【0028】
以上、本発明の半田層及びそれを備えた電子デバイス接合用基板について説明したが、次に、本発明の実施形態について図面を参照してさらに詳細に説明する。
図1は本発明に係る電子デバイス接合用基板10の構造を示す断面図である。本発明の電子デバイス接合用基板10は、図1に示されているように、基板11と、基板11の上面、即ち、半導体装置を搭載する側の面上に形成される密着層12と、その密着層12上に形成される電極層13と、電極層13上に形成される半田層14と、から構成される。半導体装置を搭載する上面と反対の面、即ち、金属放射体を被着する基板11の裏面の一部又は全部には、密着層15が形成され、密着層15上に半田層16を必要に応じて形成してもよい。基板11の裏面側の密着層15及び半田層16は、それぞれ、上面側の密着層12及び半田層14の材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0029】
基板11として、熱伝導率の高い窒化アルミニウム(AlN)セラミックス基板、シリコンカーバイド(SiC)などの絶縁性基板、シリコンやダイヤモンドIIaなどの半導体単結晶基板を用いることができる。基板11の表面粗さを0.05μm以下とすることで、基板11上に作製する半田層14中のボイドを低減することができ好ましい。基板11と電極層13との密着性を高めるために、図1に示すように基板11の上面に密着層12が形成されている。密着層12は、電極層13とは異なる金属が好ましく、チタン(Ti)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、金(Au)の何れかを用いることができる。
なお、密着層12上に拡散防止層(図示せず)を介在させてもよい。この拡散防止層は白金やパラジウム(Pd)等を用いることができる。
【0030】
電極層13としては金属が好ましく、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン、タングステン(W)の何れかを用いることができる。これらの金属を二種類以上含んでもよい。電極層13は所定の回路パターン状に形成されてもよいし、電極層13の一部には、外部端子との接続のために金線やアルミニウム線を接続して電気回路を形成してもよい。
なお、電極層13と半田層14との間に、半田バリア層(図示せず)を介在させてもよい。この半田バリア層は、電極層13を構成する金などの半田層14への拡散を防止し、半田層14の融点上昇を防止するので、半田拡散防止層とも呼ばれる。なお、半田バリア層は白金やパラジウム(Pd)等を用いることができる。
【0031】
本発明の電子デバイス接合用基板10の半田層14は、溶解凝固後に半田層中に存在するボイドの数が少なく、ボイドの寸法も小さいため、半田層14の比抵抗が小さくなっている。特に、溶解凝固後のボイドの最大径を0.5μm以下にすることにより、溶解凝固後の半田層14の比抵抗を0.4Ω・μm以下とすることができる。さらに加えて、ボイド密度も1個/μm2以下とすることで、半田層14の比抵抗を0.2Ω・μm以下とすることができる。この半田層14は比抵抗が小さいので、ジュール熱の発生や消費電力を抑制することができる。
【0032】
溶解凝固後に半田層14内に発生するボイドの径が小さいので、半田層14を溶解凝固させた後の半田層14表面の平坦性も保たれる。したがって、半田層14表面の光に対する反射率を高くすることができる。そのため、電子デバイス接合用基板10に発光素子を実装した場合には、発光素子の半田層14側に出射してきた光が高確率で反射されるため、発光出力を向上させることができる。
【0033】
半田層14内のボイド径が小さく、その密度も低いことから、半田層14の熱抵抗が小さくなっている。さらに、電子デバイス接合用基板10の電極層13と半田層14との界面、基板11と電極層13との界面の炭素濃度を共に1×1020cm-3以下とすることで、電極層13と半田層14、基板11と電極層13との界面の熱抵抗も小さくなる。
上記の電子デバイス接合用基板10によれば、電子デバイス接合用基板10の熱抵抗を0.5K/W以下とすることができ、発光素子のような電子デバイスが駆動中に発生した熱を効率よく基板11に伝熱して放熱させることができる。
【0034】
次に、図1に示す電子デバイス接合用基板に半導体装置を載置した例について説明する。電子デバイス接合用基板としては、発光素子や半導体レーザダイオードのような比較的面積の小さい素子を搭載するサブマウント基板を用いた電子デバイス接合用サブマウントへの適用例を説明する。
図2は、図1の電子デバイス接合用サブマウント10Aに半導体装置1を搭載して構成した電子部品20の断面を示す図である。図2に示すように、電子部品20は、本発明の電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層14を介して、半導体装置1の下部電極1Aと半田層14とが半田接合されてサブマウント基板11Aに半導体装置1が搭載されている。また、半導体装置1の上部電極1Bは、図示しない外部端子と金線2Bなどによりワイヤボンディングされる。一方、図示するように、半田層14を積層していない電極層13上には、図示しない外部端子と金線2Aなどによりワイヤボンディングされ、半導体装置1と半田層14と電極層13と各金線2A及び2Bで電気回路が形成される。
なお、サブマウント基板11Aは、基板11と同様の材料を用いることができる。半導体装置1は、レーザダイオードや発光ダイオードなどの発光素子や、ダイオード、高周波増幅やスイッチングに使用されるトランジスタやサイリスタなどのような能動素子や集積回路などを挙げることができる。半導体装置1以外には、受動部品、スイッチなどを含む電子デバイスでもよい。
【0035】
ここで、半田層14は、半導体装置1を電子デバイス接合用サブマウント10Aに接合するため、ランプ加熱などにより一旦融点以上に加熱して溶解し、その後冷却して凝固している。図2に示すように、電子デバイス接合用サブマウント10Aに半導体装置1が搭載されている状態では、鉛を含まない半田で構成された半田層14は、その比抵抗が、前述のように、0.4Ω・μm以下と小さい。このため、上記電気回路において、半田層14によるジュール熱の発生を抑制し、半導体装置1の順方向電圧の上昇を抑制し、効率良く動作させることができる。
【0036】
次に、本発明の電子デバイス接合用サブマウント10Aの製造方法について説明する。サブマウント基板11Aを用意し、その両側をラッピング装置により研削する。さらに、ポリッシング装置などを用いて仕上げ研磨を実施する。この研磨により、サブマウント基板11Aの表面粗さを0.05μm以下とすることが好ましい。サブマウント基板11Aの表面粗さを0.05μmより大きくすると、サブマウント基板11A上に形成される電極層13や半田層14の成膜後の表面粗さが大きくなる、すなわち半田層14内の成膜時に半田層内にボイドが生じるため好ましくない。その後、研磨済みのサブマウント基板11Aを洗浄する。
【0037】
次に、フォトリソグラフィ法により密着層12及び電極層13のパターニングを行う。具体的には、サブマウント基板11Aの上面全体にスピナーを用いてレジストを均一に塗布した後、ベーキング炉によって所定のベーキングを行い、マスクアライナー装置を用いてコンタクト露光を行う。露光後、テトラメチルアミン系の現像液により電極層13を成膜する部分のレジストを溶解する。そして、電極層13を作製するサブマウント基板11Aの表面の清浄化を紫外線オゾン処理や酸素プラズマアッシャー法などを用いて行い、サブマウント基板11Aの表面に付着した炭素化合物を除去し、炭素濃度を1×1020cm-3以下とする。この表面清浄化によりサブマウント基板11Aと電極層13との界面の不純物が除去され、電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗を減少させることができる。
次に、真空蒸着装置やスパッタ装置などにより密着層12及び電極層13となる金属を蒸着し、アセトンなどを用いてレジスト全体を溶解させることにより、密着層12及び電極層13となる領域以外の金属をリフトオフにより除去し、所定の密着層12及び電極層13を形成する。
【0038】
続いて、上記電極層13と同様に、フォトリソグラフィ法により、電極層13を作製したサブマウント基板11Aの表面にレジストを作製し、半田層14を形成する部分の電極層13の表面を露出する。その後、紫外線オゾン処理や酸素プラズマアッシャー法などを用いて電極13の表面洗浄化を行い、電極層13の表面に付着した炭素化合物を除去し、電極層13表面の炭素濃度を1×1020cm-3以下とすることが望ましい。これにより、半田層14と電極層13との間に発生する電気抵抗(接触抵抗)、電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗の上昇を抑制することができる。
【0039】
続いて、真空蒸着装置やスパッタ装置を用いて表面清浄化を行った電極層13上に半田層14を形成する。半田層14となる半田の成膜は、ボイドの発生を抑制し、ボイドの径が所定の寸法以下となるよう成膜速度、成膜時の基板温度、成膜時の真空度(バックグランド圧)を制御して行う。
半田層14の形成に際して、好ましい真空度は1×10-3Pa以下である。これよりも低真空の場合には、蒸着時の蒸発原子が残存ガス分子と衝突することでサブマウント基板11Aまで直進できなくなり、その結果、成膜時に均一な膜を形成したり、表面粗さの小さい半田層14を形成することができなくなるので好ましくない。
【0040】
サブマウント基板11Aの加熱温度、即ち基板温度は、好ましくは、100℃以下とする。サブマウント基板11Aの加熱温度を100℃以下に維持することで、レジストからのアウトガスの発生を抑えることができ、半田層14を形成する電極層13表面へのレジスト成分の付着や、半田層14内へのレジストからの放出ガスの混入を抑制できる。サブマウント基板11Aの加熱温度が100℃以上では、蒸着した原子が冷却されるまでに時間がかかり、その間に原子の拡散などが生じて、半田層14表面の粗さが大きくなって好ましくない。さらに、パターン用に塗布したレジストが高温のためにサブマウント基板11Aや電極層13の表面に固着してしまい、リフトオフ工程などができなくなる。サブマウント基板11Aの加熱温度を好ましくは80℃以下に維持することで、サブマウント基板11A自身の反りを抑制でき、均一な半田層14が形成できる。
【0041】
半田層14の成膜速度は、1nm/秒以上5nm以下とすることが好ましく、とくに、1.5nm以上5nm以下とすることが望ましい。半田層14の成膜速度を1nm以上とすることで成膜時間を短縮し、蒸着源によるサブマウント基板11Aの温度上昇を抑制することができる。このため、成膜される半田層14内のボイドを効果的に抑制して緻密な半田層14を形成することができ、半田層14の溶解凝固後の表面粗さを小さくすることができる。特に半田層14の成膜速度を1.5nm以上とすることで、サブマウント基板11Aの温度上昇や温度制御が容易になる。また、成膜速度が5nm/秒以上と速くなり過ぎると、蒸着後の原子の冷却時間に余裕がなくなり、このため、サブマウント基板11Aの温度が上昇したりして、半田層14の表面粗さが悪くなり、ボイドが発生しやすくなるので好ましくない。
【0042】
最後に、得られたサブマウント基板11Aを、ダイシング装置などを用いて所定のサブマウント10の寸法に分割する。
【0043】
以上のようにして製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aは、ランプ加熱法で半田層14を溶解して半導体装置1を接合し、必要となるワイヤボンディングを行うことで、半導体装置1を実装することができる。
【0044】
上記製造方法によれば、電極層13と半田層14との間の金属界面の表面を清浄化し、その清浄化した表面上に溶融凝固後においても含有するボイドの径が小さい半田層14を形成することで、比抵抗及び熱抵抗の小さい半田層14を備えた電子デバイス接合用サブマウント10Aを形成することができる。
【実施例1】
【0045】
以下、本発明の半田層を用いた電子デバイス接合用基板として、電子デバイス接合用サブマウントに関する実施例をさらに詳細に説明する。
高熱伝導性(230W/mK)を有する焼結窒化アルミニウム基板11Aの両面をラッピング装置によって研削し、ポリッシング装置を用いて仕上げ研磨を実施した。このときの窒化アルミニウム基板11Aの表面粗さは、0.03μmであった。表面粗さの測定には、表面粗さ測定装置(Tencor Instruments社製、モデルP−2)を用いて、1mm範囲のライン測定を3回行い、その測定値の平均値を求めた。
次に、研磨した窒化アルミニウム基板11Aを洗浄した。続いて、フォトリソグラフィ法によるパターニングを行うため、窒化アルミニウム基板11Aの表面全体にスピナーを用いてレジストを均一に塗布した後、ベーキング炉によって所定のベーキングを行い、マスクアライナー装置を用いてコンタクト露光を行った。露光用のマスクは窒化アルミニウム基板11A寸法で所定の個分を同時にパターニング出来るようにマスクを設計した。露光後、テトラメチルアンモニウム系の現像液により、電極層13となる部分のレジストを溶解し、窒化アルミニウム基板11Aを露出させた。
露出させた窒化アルミニウム基板11Aの表面を酸素プラズマアッシャー処理(圧力1Pa、高周波電力300W、2分間処理)を行い、窒化アルミニウム基板11Aの表面の炭素濃度を低減化した。
次に、真空蒸着装置により密着層12としてTi、拡散防止層としてPt、電極層13としてAuを蒸着し、アセトンを用いてレジスト全体を溶解させることにより、密着層12及び電極層13を形成する領域以外のTi、白金及びAuをリフトオフで除去した。この電子デバイス接合用サブマウント10Aの密着層12、半田拡散防止層、電極層13の蒸着面積は、2mm×40mmとし、厚みはそれぞれ0.05μm、0.2μm、0.5μmとした。
【0046】
同様に、フォトリソグラフィ法により、電極層13を作製した窒化アルミニウム基板11Aの面全体をレジストでマスクし、半田層14を作製する部分のレジストを溶解して電極層13を露出させた。露出させた電極層13の表面を酸素プラズマアッシャー処理(圧力1Pa、高周波電力300W、2分間処理)を行い、電極層13の表面の炭素濃度を低減化した。その後、真空蒸着装置を用い、厚さが1μm、面積が2mm×25mmの半田層14を形成した。半田層14の組成は、AuとSnの原子比が70:30となるようにした。半田層14の成膜条件は、真空度を5×10-4Pa、窒化アルミニウム基板温度を60℃、成膜速度を2nm/秒、成膜時間を500秒とした。
次に、窒化アルミニウム基板11Aの所定の箇所を、ダイシング装置を用いて切断し、電子デバイス接合用サブマウント10Aを得た。
【0047】
次に、実施例1に対する比較例1について説明する。
(比較例1)
実施例1と同様にして電子デバイス接合用サブマウントを製造した。ただし、比較例1では、実施例1で行なった電極層13の形成前の窒化アルミニウム11基板の表面清浄化と、半田層14の形成前の電極層13の表面清浄化は、行なわなかった。
【0048】
実施例1及び比較例1の各電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層14形成前の電極層13の表面の炭素濃度を、SIMS( Secondary Ion Mass Spectroscopy )及びESCA( Electron Spectroscopy for Chemical Analysis )法により測定した。ESCA測定における炭素濃度は、炭素ピーク強度を電極層13の金ピーク強度で規格化することで算出した。
【0049】
次に、実施例及び比較例において、電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層の溶解前後の表面粗さと電気抵抗を測定した。本測定において、実施例及び比較例の各電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層14を、窒素雰囲気中で300℃までランプ加熱し、10秒維持することにより溶解させ、その後窒素ガスパージにより約1℃/秒で冷却して凝固させた。
【0050】
本発明の半田層14を成膜した後、その溶融凝固前及び溶融凝固後のそれぞれの表面粗さを、表面粗さ測定装置(Tencor Instruments社製、モデルP−2)を用いて測定した。測定は、1mm範囲のライン測定を3回行い、これらの測定値を算術平均して表面粗さ(Ra)を求めた。
【0051】
図3は、電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層14の比抵抗を四端子法により測定する方法を模式的に示すもので、半田層14と、密着層12、拡散防止層及び電極層13からなる金属層との間に接触抵抗が生じない理想のモデルにおいて、半田層14の比抵抗測定における電子デバイス接合用サブマウントの等価回路を示したものである。図3において、半田層14の抵抗をrs、金属である密着層12、拡散防止層及び電極層13の各抵抗が並列接続されてなる金属層の抵抗をrb(Ti/Pt/Au)、窒化アルミニウム基板11Aの抵抗をr(AlN)とし、絶縁体である窒化アルミニウム基板11Aと密着層12間の電位差を接合容量Cとしている。四端子法による比抵抗の測定は図3に示すように、電流端子32を半田層14上に接触させ、その電流端子32を通して、直流電源31から電流Iを半田層14に通電させる。その電流端子32間に、電流端子32と電圧端子33の間隔、電圧端子33間の間隔が一定間隔Lとなり、かつ電流端子31と電圧端子32とが一直線となる位置に電圧端子33を配置して、電流通電時に電子デバイス接合用サブマウント10Aで生じる電圧を電圧計34で測定する。そして電流端子32間に通電する電流値と、電圧端子33間に生じる電圧から、電子デバイス接合用サブマウント10Aの抵抗Rを測定する。このとき得られる電子デバイス接合用サブマウント10Aの抵抗Rは、半田層14の抵抗rs、金属層の抵抗rbの合成抵抗であり、下記(1)式で表わされる。
【数1】

【0052】
次に、半田層14を形成していない電子デバイス接合用サブマウント10Aの金属層の抵抗rb’を測定する。測定は、上述した電子デバイス接合用サブマウント10Aと同様に、同条件で作製した電極層13表面に電流端子32を接触させ、電流端子32を通して、直流電源31から電流Iを電極層(金属層)に通電する。電流端子32間において、電流端子32と電圧端子33の間隔、電圧端子33間の間隔が一定間隔L’となり、かつ電流端子31と電圧端子33とが一直線となる位置に電圧端子33を配置して、電流通電時に金属層で生じる電圧を電圧計34で測定する。そして電流端子32間に通電する電流値と、電圧端子33間に生じる電圧から、金属層の抵抗rb’を測定する。このとき、電圧端子33間の電流通電方向に対して垂直方向となる金属層の断面積をS2’とすると、金属層の抵抗rb'より金属層の比抵抗ρbを下記(2)式により算出する。
【数2】

【0053】
上記(2)式で得られた半田層14を形成していない電子デバイス接合用サブマウント10Aの金属層の比抵抗ρbが、半田層14を形成した電子デバイス接合用サブマウント10Aの金属層と同一の比抵抗であるとする。この場合、半田層14を作製した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける金属層の抵抗rbは、電子デバイス接合用サブマウント10Aの電極端子33間の電流通電方向に対して垂直方向となる金属層の断面積をS1’とすると、下記(3)式に示すように算出することができる。
【数3】

【0054】
上述の電子デバイス接合用サブマウント10Aの抵抗値Rから、半田層14を作製しない電子デバイス接合用サブマウントの抵抗値を除いた値R’を半田層14の抵抗値とした。そして、電圧端子33間の電流通電方向に対して垂直方向となる半田層14の断面積をSとして、半田層14の比抵抗を下記(4)式で算出した。
【数4】

【0055】
本実施例では、上記比抵抗の測定にはアドバンテスト社製の電圧電流発生器R6240Aを使用し、通電電流(I)を20mAとして測定した。
【0056】
熱抵抗は、作製した電子デバイス接合用サブマウント10Aから任意の個数を抜き出し、発光ダイオード1を実装し、テクノローグ社によって開発された熱抵抗測定法を用いて測定した。発光ダイオード1の実装は、実施例1、比較例1の方法で作製した各電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層14を、窒素雰囲気中においてランプ加熱し、溶融温度300℃で溶融時間として10秒間維持することにより溶解し、発光ダイオード1を半田接合した。発光ダイオード1は、GaAlAs系の赤色発光ダイオードを用いた。この発光ダイオードチップ1の上部には、300μm直径の範囲で2.3Nの荷重を印加して半田接合し、窒素ガスパージにより約1℃/秒で冷却して凝固させた。
【0057】
次に、電子デバイス接合用サブマウント10Aに発光ダイオード1を実装したときの熱抵抗測定について説明する。
図4は、発光ダイオード1を実装した電子デバイス接合用サブマウント10Aをステムに実装した様子を示す模式的な断面図である。図4に示すように、発光ダイオード1が半田接合された電子デバイス接合用サブマウント10Aは、ステム40上に低温半田やAgペースト42を用いて接着することで搭載されており、任意の温度Tja1に保持した恒温槽内に設置される。図4では、発光ダイオード1への配線は示していない。この発光ダイオード1に発熱が無視できる定電流I、例えば1mAを通電し、このときの発光ダイオード1の順方向電圧Vfa1を測定する。次に、恒温槽の温度をTja2に変化させて維持し、定電流Iを通電したときの発光ダイオード1の順方向電圧Vfa2を測定する。恒温槽の温度を変化させて同様の測定を繰り返すことで、発光ダイオード1の周囲温度Tjと順方向電圧Vfの関係が得られる。
【0058】
図5は、上記した測定から得られた発光ダイオード1の周囲温度Tjと順方向電圧Vfの関係を示すグラフである。図5において、縦軸は発光ダイオード1の順方向電圧Vf(任意目盛)であり、横軸は周囲温度Tj(任意目盛)である。
図5に示すグラフから、発光ダイオード1の順方向電圧は、線形近似で下記(5)式で表わされる。
【数5】

ここで、Vf0は定数である。
このように求めた発光ダイオード1の順方向電圧Vfの温度特性から、その温度依存性(ΔVf/ΔTj)を求める。
【0059】
次に、恒温槽を室温(25℃)に戻し、発光ダイオード1に直流定電流を印加してその順方向電圧を測定する。
図6は、発光ダイオード1に直流定電流を流したときのタイムチャートである。図において、縦軸は順方向電圧Vf(任意目盛)であり、横軸は時間(任意目盛)である。図6に示すように、発光ダイオード1には直流定電流をIf1,If2,If1の順に印加し、そのときの順方向電圧をオシロスコープなどで測定する。電流をIf1からIf2,次に、If2からIf1に変化させるときには過渡電圧が生じる。このため、図示するようにIf2の通電時間及びIf2からIf1に戻した際のIf1の通電時間は、それぞれ定常状態のVf2及びVf1値が得られるまで通電した。このとき、電流値をIf2からIf1に変化させた際に、測定電圧が最初に電流値If1を通電したときの順方向電圧Vf1よりも低い値(Vf3)をとった後、一定時間経過後にVf1で安定する。発光ダイオード1の順方向電圧の最低値Vf3と、Vf1の差をΔVfとする。予め求めておいた発光ダイオードのVfの温度依存性(ΔVf/ΔTj)より、ΔTjを導出する。
ここで、熱抵抗の定義である単位電力当りの温度上昇から、下記(6)式のように、発光ダイオード1の熱抵抗Rを求めることができる。
【数6】

なお、上記熱抵抗測定は、デジタルマルチメータ(アドバンテスト社製、R6240A)を用い、電流If1を1mA、電流If2を50mAとして測定した。
【0060】
次に、電子デバイス接合用サブマウント10Aを用いないで、ステム40に直接発光ダイオード1を実装したときの熱抵抗の測定を行った。
図7は、本発明の電子デバイス接合用サブマウント10Aを用いないで、発光ダイオード1をステム40に直接実装した様子を示す模式的な断面図である。図7に示すように、上記の熱抵抗測定を行った電子デバイス接合用サブマウント10Aを搭載した同じステム40に低温半田やAgペースト等の導電ペースト42により発光ダイオード1を直接実装する。この場合の熱抵抗は、上記と同じ方法により測定した。このステム40に直接発光ダイオード1を実装したときの熱抵抗と、ステム40に電子デバイス接合用サブマウント10Aを介して発光ダイオード1を実装したときの熱抵抗との差が、半田層14を含む本発明の電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗となる。
【0061】
表1には、上述した実施例1及び比較例1の電子デバイス接合用サブマウント10Aにおいて、SIMS、ESCA測定で得られたAu電極層13の表面の炭素濃度と、半田層14の溶融凝固前、溶融凝固後それぞれの半田層14の表面粗さと比抵抗、半田層14の溶融凝固後の熱抵抗を示している。また、電子デバイス接合用サブマウント10Aに発光ダイオード1を実装し、150mAの順方向電流を通電したときの発光ダイオード1の順方向電圧も併せて示している。
表1から明らかなように、SIMSによれば、実施例1及び比較例1において、Au電極層13表面の炭素濃度は、それぞれ、9×1019atoms/cm3、3×1020atoms/cm3であった。ESCA測定においては、Au電極層13表面における炭素の信号強度は、金の信号強度に対してそれぞれ、0.025倍、0.085倍であった。SIMS及びESCAの測定から、実施例1のAu電極層13表面の清浄化を行った場合に、その表面の炭素濃度が減少していることが分かった。
【表1】

【0062】
表1に示すように、実施例1で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の表面粗さは、溶解凝固前後でそれぞれ、0.037μm、0.039μmとなり、溶解凝固前後でも半田層14の表面粗さは殆ど同じであった。
一方、比較例1で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の表面粗さは、溶解凝固前後でそれぞれ、0.04μm、0.305μmであり、半田層14の形成前に清浄化工程を行わなかった比較例1では、半田層14の溶解凝固前の表面荒さは実施例1とほぼ同等の値であるが、半田層14の溶解凝固後の表面荒さは著しく大きくなることが判明した。上記結果から、半田層14の形成前にAu電極層13表面の清浄化工程を行い、Au電極層13表面の炭素濃度を低くした実施例1では、半田層14の溶解凝固前後の表面荒さが変化しないことが分かった。
【0063】
実施例1で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の比抵抗は、溶解凝固前後で、それぞれ、0.077Ω・μm、0.103Ω・μmであった。
一方、比較例1で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の比抵抗は、溶解凝固前後でそれぞれ、0.498Ω・μm、0.503Ω・μmであった。上記結果から、半田層14の形成前に清浄化工程を行い、Au電極層13表面の炭素濃度を低くした実施例1の場合に、半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は殆ど変化しなかった。
しかしながら、半田層14の形成前に清浄化工程を行わなかった比較例1の場合には、半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、実施例1の約5倍の大きさとなり、Au電極層13表面の炭素濃度が高くなると半田層14の比抵抗が大きくなることが判明した。
【0064】
また、Au電極層13、半田層14の形成前にそれぞれ、サブマウント基板11A表面、Au電極層13表面の清浄化工程を行い、サブマウント基板11A表面及びAu電極層13表面の両方の炭素濃度を低減化した実施例1の電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は、0.28K/Wと低い値であった。しかしながら、どちらの清浄化工程も施さなかった比較例1の熱抵抗は0.98K/Wと実施例1の約4倍であり、Au電極層13表面の炭素濃度が高くなると熱抵抗が大きくなることが分かった。
【0065】
実施例1及び比較例1で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aに半田接合した発光ダイオード1の順方向電圧は、それぞれ、2.67V、2.98Vであった。上記結果から、半田層14の形成前に清浄化工程を行い、Au電極層13表面の炭素濃度を低くした実施例1の電子デバイス接合用サブマウント10Aに実装した発光ダイオード1の順方向電圧も比較例1の場合の約90%に低減できることが分かった。
【実施例2】
【0066】
上記実施例1の結果から、半田層14の厚みが3μmとなるよう、半田層14の成膜時間を実施例1の3倍の1500秒とした以外は、上記実施例1と同様にして電子デバイス接合用サブマウント10Aを製造した。
【実施例3】
【0067】
半田層14の厚みを6.5μmとなるよう、半田層14の成膜時間を実施例1の6.5倍の3250秒とした以外は、実施例1と同様にして電子デバイス接合用サブマウント10Aを製造した。
【実施例4】
【0068】
半田層14の形成時の基板温度を80℃とした以外は、実施例2と同様にして電子デバイス接合用サブマウント10Aを製造した。
【実施例5】
【0069】
半田層14の組成をAuとSnの比を60:40とした以外は、実施例2と同様にして電子デバイス接合用サブマウント10Aを製造した。
【実施例6】
【0070】
半田層14の組成をAgとSnの比を95:5とした以外は、実施例2と同様にして電子デバイス接合用サブマウント10Aを製造した。
【0071】
(比較例2)
実施例2との比較のために、半田層14を形成する際の成膜条件を、基板温度を120℃とした以外は、実施例2と同様にして比較例2の電子デバイス接合用サブマウントを製造した。
【0072】
表2に、上記した実施例及び比較例における、半田層組成(原子比)、半田層成膜時の真空度(Pa)、窒化アルミニウム基板2の温度(℃)、成膜速度(nm/秒)、成膜時間(秒)及び半田層14の厚み(μm)の電子デバイス接合用サブマウント10Aの製造条件を纏めて示す。
【表2】

【0073】
表3は、実施例及び比較例の電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後における厚さ、表面粗さ及び比抵抗と、電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗、発光ダイオード1を搭載したときの順方向電圧、発光出力を示す表である。ここで、順方向電圧は、電子デバイス接合用サブマウント10Aに発光ダイオード1を実装し、150mAの順方向電流を通電しデジタルマルチメータ(アドバンテスト社製、TR6143)を用いて測定した。発光出力は積分球(オプトロニクス社製、4インチ積分球740−BC)及びパワーメータ(オプトロニクス社製、730A)を用いて測定した。
【表3】

【0074】
表3に示すように、実施例2で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後の厚さは、それぞれ3μm、2.96μmであった。半田層14の溶解凝固前後の表面粗さは、それぞれ0.04μm、0.095μmであった。半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、それぞれ0.093Ω・μm、0.107Ω・μmであった。電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は0.29K/Wであり、発光ダイオード1の順方向電圧は2.68Vで、発光出力は6.28mWであった。
【0075】
実施例3で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後の厚さは、それぞれ6.5μm、6.51μmであった。半田層14の溶解凝固前後の表面粗さは、それぞれ0.046μm、0.312μmであった。半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、それぞれ0.108Ω・μm、0.125Ω・μmであった。電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は0.37K/Wであり、発光ダイオード1の順方向電圧は2.72Vで、発光出力は5.93mWであった。
【0076】
実施例4で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後の厚さは、それぞれ3μm、2.95μmであった。半田層14の溶解凝固前後の表面粗さは、それぞれ0.039μm、0.295μmであった。半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、それぞれ0.099Ω・μm、0.258Ω・μmであった。電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は0.44K/Wであり、発光ダイオード1の順方向電圧は2.77Vで、発光出力は5.68mWであった。
【0077】
実施例5で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後の厚さは、それぞれ3μm、2.95μmであった。半田層14の溶解凝固前後の表面粗さは、それぞれ0.035μm、0.093μmであった。半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、それぞれ0.086Ω・μm、0.099Ω・μmであった。電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は0.24K/Wであり、発光ダイオード1の順方向電圧は2.65Vで、発光出力は5.41mWであった。
【0078】
実施例6で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後の厚さは、それぞれ3μm、2.96μmであった。半田層14の溶解凝固前後の表面粗さは、それぞれ0.037μm、0.103μmであった。半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、それぞれ0.035Ω・μm、0.042Ω・μmであった。電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は0.12K/Wであり、発光ダイオード1の順方向電圧は2.63Vで、発光出力は6.76mWであった。
【0079】
比較例2で製造した電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける半田層14の溶解凝固前後の厚さは、それぞれ、3μm、2.98μmであった。半田層14の溶解凝固前後の表面粗さは、それぞれ、0.277μm、0.524μmであった。半田層14の溶解凝固前後の比抵抗は、それぞれ、0.106Ω・μm、0.419Ω・μmであった。電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗は0.52K/Wであり、発光ダイオード1の順方向電圧は2.9V、発光出力は4.68mWであった。
【0080】
上記測定結果において、実施例1〜3を比較すると、基板温度を60℃、成膜速度2nm/秒とし、半田層14の厚みを6.5μm未満とすることで、溶解凝固後の半田層14の比抵抗が略0.4Ωμm以下、かつ、電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗が0.5K/W以下になることが判明した。
【0081】
実施例2、5、6を比較すると、半田層14の組成の異なる場合であっても、半田層14の表面粗さ及び比抵抗は、溶解凝固の前後いずれにおいても、略同等の値を示すことがわかる。これにより、半田層14の基板温度を60℃、成膜速度を2nm/秒とすることで、半田層14の溶解凝固後においてもその比抵抗が略0.4Ωμm以下、かつ、電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗が0.5K/W以下になることが判明した。
【0082】
実施例2、4及び比較例2を比較すると、基板温度を60℃とした実施例2及び基板温度を80℃とした実施例4は、溶解凝固の半田層14の比抵抗は0.4Ω・μmと小さいものであった。特に基板温度を60℃とした実施例2の半田層14の表面粗さ及びその比抵抗は、溶解凝固の前後で変化は小さいことが分かる。
一方、基板温度を120℃とした比較例2において、半田層14の表面粗さは溶融凝固後で約2倍に増加し、比抵抗も溶融凝固後で約4倍に増加した。そして、電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗も0.5K/W以上となり、その結果発光ダイオード1の発光出力も低下することが分かる。
これにより、半田層14の成膜温度を80℃以下、成膜速度を2nm/秒とすることで、半田層14の溶解凝固後においてもその比抵抗が略0.4Ωμm以下、かつ電子デバイス接合用サブマウント10Aの熱抵抗が0.5K/W以下になることが判明した。
【0083】
ここで、実施例及び比較例の半田層14の比抵抗について比較する。
半田層14の溶解凝固後の比抵抗について検討すると、実施例1〜6の比抵抗は、比較例1及び2よりも小さい。これにより、発光ダイオードの順方向電圧も、2.67V前後に抑えられる。このため、電子デバイス接合用サブマウント10Aにおいて、半田層14の溶解凝固後の比抵抗は、0.4Ω・μm以下であることがよいことが判明した。また、半田層14の溶解前の表面粗さは0.05μm以下、溶解凝固後の表面粗さは0.4μm以下であることがよいことも判明した。さらに、半田層14の表面粗さを0.4μm以下と小さくすることが可能となり、光の反射率も向上させることが可能となった。このため、電子デバイス接合用サブマウント10Aに搭載した発光ダイオードで生じる光を効率良く表側に出射することができた。
【0084】
次に、製造した実施例2、比較例2の電子デバイス接合用サブマウントを、半田層14を溶解凝固させずに切断して、その切断面を研磨した後、半田層14の切断面を走査型電子顕微鏡で観察した。電子の加速電圧は15kVで倍率は5000倍である。その結果、実施例2及び比較例2において溶解凝固前の半田層14内には何れもボイドは殆ど観察されなかった。
【0085】
次に、発光ダイオード1を搭載した実施例2、比較例2の電子デバイス接合用サブマウント10Aを切断し、同様に切断面を研磨した後、半田層14の切断面を走査型電子顕微鏡で観察した。発光ダイオード1の接合は、電子デバイス接合用サブマウント10Aの半田層14を、窒素雰囲気中においてランプ加熱し、溶融温度300℃で溶融時間として10秒間維持することにより溶解し、発光ダイオード1を半田接合した。この発光ダイオード1のチップ上部には、300μm直径の範囲で2.3Nの荷重を印加して半田接合し、窒素ガスパージにより約1℃/秒で冷却して凝固させた。
図8(a),(b)は、実施例2の電子デバイス接合用サブマウントに発光ダイオードを搭載し、その切断面を観察したときの走査型電子顕微鏡像とその説明図である。図8から分かるように、半田層14は発光ダイオード1との接合面が平坦であり、半田層14中にボイドは殆ど観察できなかった。なお、符号1aは、発光ダイオードの基板である。
【0086】
図9(a),(b)は、比較例2の電子デバイス接合用サブマウントに発光ダイオードを搭載し、その切断面を観察したときの走査型電子顕微鏡像とその説明図である。この図から分かるように、半田層14は発光ダイオードとの接合面が凸凹であり、半田層14中にボイドが確認できた。
【0087】
次に、上記実施例1及び比較例2の走査型電子顕微鏡像における半田層14の一部を画像処理し、粒径解析プログラムを用いてボイドの断面形状を円近似してボイド径の解析を行った。即ち、先ず所定領域の走査型電子顕微鏡像を画像解析ソフト(Scion Image) を用い、2値化して各ボイドの面積を算出した。次にこの算出した面積を有する円を求め、円の直径をボイドの直径とした。実施例1では12.91μm2 、比較例2では16.83μm2 の各領域(図8及び9で点線の囲み部分)について行った。
【0088】
表4は、実施例1及び比較例2における半田層14のボイド径の解析結果を示す表である。表4に示す面積分率、ボイド総面積及びボイド個数密度は、次のように定義される数値である。面積分率は測定全面積に対するボイドの総面積の割合である。ボイド総面積は画像処理により計測されたボイドの面積であり、換算後のボイド直径から求めた面積ではない。ボイド個数密度は、測定したボイドの個数を測定面積で割った値である。
【表4】

【0089】
実施例1では、その測定面積中のボイドの数は6個であり、上述の方法で測定したボイド径のうち、最大ボイド径は0.21μm、平均ボイド径は0.11μmであり、ボイド総面積は0.07μm2 であった。これらの値に基づいて計算したところ、ボイド面積分率は0.01%、ボイド個数密度は0.46個/μm2 であった。
一方、比較例2では、その測定面積中のボイドの数は31個であり、上述の方法で測定したボイド径のうち、最大のボイド径(以下、最大ボイド径と呼ぶ)は0.61μm、平均ボイド径は0.16μmであり、ボイド総面積は0.93μm2 であった。これらの値に基づいて計算したところ、ボイド面積分率は0.06%、ボイド個数密度は1.84個/μm2 であった。
【0090】
図10は、実施例1及び比較例2における半田層内に含まれるボイド径分布を示す図である。縦軸は個数(個)、横軸はボイド直径(μm)を示す。黒丸(●)プロットが実施例1の値であり、黒三角(▲)プロットが比較例2の値を示す。
実施例1では、比較例2と比較して、ボイド数のピークはその最大径が0.1μm近傍にあり、比較例2と比較して小さくなっており、ボイドの最大径は、0.5μm程度であることが判明した。また、観測されるボイドの数も比較例に比べ少なくなっていることが分かる。
【0091】
以上の結果から、実施例1は比較例2と比べて最大ボイド径、ボイド面積分率やボイド個数密度は小さいため、比抵抗が低いことが分かる。即ち、ボイド径を円近似で計算した値の最大値が、約0.5μm以下であることが必要なことが分かる。
【0092】
以上の実施例から分かるように、電子デバイス接合用サブマウント10Aにおける鉛を含まない半田層14中のボイドの寸法を小さくし、ボイドの数も抑えることにより、比抵抗を小さくすることができ、さらには、表面粗さも小さくすることができる。鉛を含まない半田層14の溶解凝固後の比抵抗は0.4Ω・μm以下、好ましくは0.2Ω・μm以下とすることで、搭載した半導体装置1の特性を劣化させない電子デバイス接合用サブマウント10Aとすることができる。
上記実施例では、鉛を含まない半田層14はAu−Sn、Ag−Snで形成されているが、銀、金、銅、亜鉛、ニッケル、インジウム、ガリウム、ビスマス、アルミニウム、スズのうち、2種類以上の元素を含んでいてもよい。
【0093】
本発明は上記実施例に記載の電子デバイス接合用サブマウントに限定されることなく、基板上に形成された半田層や電子デバイス接合用基板についても、特許請求の範囲に記載した発明の範囲で種々変形、変更及び適用が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る電子デバイス接合用サブマウントの構造を示す断面図である。
【図2】図1の電子デバイス接合用サブマウントに半導体装置を搭載した構造を模式的に示す断面図である。
【図3】実施例の電子デバイス接合用サブマウントの等価回路と、その半田層の比抵抗を四端子法により測定する方法を模式的に示す図である。
【図4】発光ダイオードを実装した電子デバイス接合用サブマウントをステムに実装した様子を示す模式的な断面図である。
【図5】測定から得られた発光ダイオードの周囲温度Tjと順方向電圧Vfの関係を示すグラフである。
【図6】発光ダイオードに直流定電流を流したときのタイムチャートを示す図である。
【図7】本発明の電子デバイス接合用サブマウントを用いないで、発光ダイオードをステムに直接実装した様子を示す模式的な断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、実施例2の電子デバイス接合用サブマウントに発光ダイオードを搭載し、その切断面を観察したときの走査型電子顕微鏡像とその説明図である。
【図9】(a)及び(b)は、比較例2の電子デバイス接合用サブマウントに発光ダイオードを搭載し、その切断面を観察したときの走査型電子顕微鏡像とその説明図である。
【図10】実施例1及び比較例2における半田層内に含まれるボイド径分布を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1:半導体装置(発光ダイオード)
1a:発光ダイオードの基板
1A:下部電極
1B:上部電極
2A,2B:金線
10:電子デバイス接合用基板
10A:電子デバイス接合用サブマウント
11:基板
11A:サブマウント基板
12,15:密着層
13:電極層
14,16:半田層
20:電子部品
31:直流電源
32:電流Iの流入端子
33:電圧端子
40:ステム
42:低温半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される鉛を含まない半田層であって、
上記半田層の比抵抗が0.4Ω・μm以下であることを特徴とする、半田層。
【請求項2】
基板上に形成される鉛を含まない半田層であって、
上記半田層内に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下であることを特徴とする、半田層。
【請求項3】
電子デバイスを接合した鉛を含まない半田層であって、
上記半田層内に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下であることを特徴とする、半田層。
【請求項4】
前記半田層の溶解凝固後の厚みが10μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の半田層。
【請求項5】
基板と該基板上に形成される鉛を含まない半田層とを含む電子デバイス接合用基板であって、
上記半田層の比抵抗が0.4Ω・μm以下であることを特徴とする、電子デバイス接合用基板。
【請求項6】
基板と該基板上に形成される鉛を含まない半田層とを含む電子デバイス接合用基板であって、
上記半田層に含まれるボイドの最大径が0.5μm以下であることを特徴とする、電子デバイス接合用基板。
【請求項7】
前記電子デバイス接合用基板の熱抵抗が0.5K/W以下であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の電子デバイス接合用基板。
【請求項8】
前記半田層の厚みが10μm以下であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の電子デバイス接合用基板。
【請求項9】
基板と該基板上に形成される鉛を含まない半田層とを含む電子デバイス接合用サブマウントであって、
上記半田層の厚さが5μm以下であり、その比抵抗が0.4Ω・μm以下であることを特徴とする、電子デバイス接合用サブマウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−294899(P2007−294899A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67629(P2007−67629)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】