説明

印刷指示装置およびこれを備える印刷装置、印刷指示装置用プログラム

【課題】 プリンタの高温時における印刷品質をより向上させる。
【解決手段】 印刷要求がなされたときに、プリンタの内部温度が40℃以下であるときには通常時用のLUTを用いて印刷データを生成し(S170)、40℃を超えているときには高温時選択画面を介してユーザに後続動作を選択させる(S120,S130)。印刷続行ボタンが押されると高温時用のLUTを用いて印刷データを生成し(S180)、印刷待機ボタンが押されると冷却コマンドを送信すると共に内部温度が40℃未満となるのを待って通常時用のLUTを用いて印刷データを生成する(S140〜S170)。高温時用のLUTは、通常時用と比較して印刷用の色空間における各色の濃度値が小さくなる傾向で設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷指示装置およびこれを備える印刷装置、印刷指示装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の印刷指示装置に関する技術としては、インクを用紙に噴射して印刷を行なうインクジェット方式のプリンタにおいて、インクを噴射する印字ヘッドなどの温度上昇に伴って印刷動作を停止するものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。この装置では、印字ヘッドなどの温度が所定温度以上となったときに、印刷動作を停止すると共に適切な温度となるのを待って印刷動作を再開することにより、印刷品質の確保などを図っている。
【特許文献1】特開平8−39883号公報
【特許文献2】特開平9−11494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のプリンタでは、印字ヘッドなどの温度上昇に伴って印刷動作を停止してしまうから印刷完了までに要する時間が長くなってしまう。一方、印刷物の内容やユーザの好みによっては、若干の印刷品質の劣化を許容してでも早急に印刷するほうが好ましいこともある。
【0004】
本発明の印刷指示装置およびこれを備える印刷装置、印刷指示装置用プログラムは、プリンタの高温時における印刷品質をより向上させることを目的の一つとする。また、本発明の印刷指示装置およびこれを備える印刷装置、印刷指示装置用プログラムは、高温時におけるプリンタの動作をユーザにより選択できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷指示装置およびこれを備える印刷装置、印刷指示装置用プログラムは、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の印刷指示装置は、
所定部位における温度を検出する温度検出手段を備えるプリンタに印刷を指示する印刷指示装置であって、
印刷要求がなされたときに前記プリンタの温度検出手段により検出された温度を取得する温度取得手段と、
該取得した温度に基づいて前記印刷要求に係る画像データの色空間を印刷用の色空間に変換する色変換処理を施して前記プリンタにより印刷可能な印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
該生成した印刷データの印刷を前記プリンタに指示する印刷指示手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の印刷指示装置では、印刷が要求されたときにプリンタの所定部位における温度を取得し、この取得した温度に基づいて色変換処理を施して印刷データを生成する。即ち、プリンタの温度に基づく色変換処理を行なうことにより、印刷用の色空間における濃度値をプリンタの温度に応じたものとして印刷データを生成することができる。この結果、プリンタの温度による印刷品質への影響をより低減することができ、高温時における印刷品質をより向上させることができる。なお「プリンタの所定部位」としては、プリンタの内部や表面部などの各種部位を挙げることができ、例えば、インクジェット方式のプリンタにおける印字ヘッド付近を挙げることができる。
【0008】
こうした本発明の印刷指示装置において、前記印刷データ生成手段は、前記取得した温度が高いほど印刷用の色空間における濃度値が小さくなる傾向で色変換処理を施して印刷データを生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、プリンタの温度が高いほど印刷用の色空間における濃度値を小さくする傾向で色変換処理を行なうことができる。ここで、プリンタの温度が高いほど印刷用の色空間における濃度値を小さくするのは、プリンタの温度上昇に伴ってインクの吐出量は増大する傾向にあるから、印刷用の色空間における濃度値を小さくすることによりインクの吐出量の増大による印刷品質への影響を抑制することができると考えられることに基づく。
【0009】
また、本発明の印刷指示装置において、前記印刷データ生成手段は、前記取得した温度が所定温度未満のときには通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成し、前記取得した温度が該所定温度以上のときには該通常時用の色変換テーブルと比較して印刷用の色空間における濃度値が小さくなる傾向で設定された高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、プリンタの温度が所定温度未満のときと所定温度以上のときとで通常時用の色変換テーブルと高温時用の色変換テーブルとを使い分けることにより、高温時には印刷用の色空間における濃度値が小さくなるよう色変換処理を行なうことができる。また、通常時用の色変換テーブルと高温時用の色変換テーブルとを使い分けるだけでよいから、処理を単純なものとすることができる。この態様の本発明の印刷指示装置において、前記温度取得手段により取得した温度が前記所定温度以上のときに印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付ける選択指示受付手段を備え、前記印刷データ生成手段は前記選択指示受付手段により印刷続行の指示を受け付けたときには前記高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成し、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときには前記通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、プリンタの温度が所定温度以上のときには印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付け、印刷続行が指示されたときには高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を行なうと共に印刷待機が指示されたときには通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を行なうことができる。即ち、プリンタの温度が所定温度以上のときに、高温時用の色変換テーブルを用いて印刷を続行するか、印刷を待機した後に通常時用の色変換テーブルを用いて印刷するかをユーザにより選択させることができる。この結果、高温時におけるプリンタの動作をユーザにより選択できるようにすることができる。
【0010】
この選択指示受付手段を備える態様の本発明の印刷指示装置において、前記選択指示受付手段は、プリンタの高温時におけるヘルプ情報を表示すると共に印刷続行か印刷待機かを選択指示可能な高温時選択画面を介して印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付ける手段であるものとすることもできる。こうすれば、高温時選択画面を介して印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付けることができると共にユーザにヘルプ情報を提示することができる。
【0011】
この選択指示受付手段を備える態様の本発明の印刷指示装置において、前記印刷データ生成手段は、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときには前記プリンタの所定部位における温度が前記所定温度未満となるのを待って前記通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成する手段であるものとしたり、前記印刷指示手段は、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときには前記プリンタの所定部位における温度が前記所定温度未満となるのを待って前記印刷データの印刷を前記プリンタに指示する手段であるものとすることもできる。こうすれば、印刷データ生成手段による印刷データの生成や印刷指示手段による印刷の指示を、プリンタの温度が所定温度未満となるのを待って行なうことにより、プリンタの温度が所定温度未満となるまで印刷を待機することができる。
【0012】
この選択指示受付手段を備える態様の本発明の印刷指示装置において、前記プリンタは前記所定部位を冷却可能な冷却手段を備え、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときに前記冷却手段の冷却能力が通常よりも高くなるように前記プリンタに指示する冷却指示手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、印刷を待機する際に、プリンタの冷却手段の冷却能力が高くなるように指示することができる。この結果、プリンタをより早く冷却することができる。この態様の本発明の印刷指示装置において、前記冷却手段は冷却用ファンであり、前記冷却指示手段は前記冷却用ファンの回転数が通常よりも高くなるように前記プリンタに指示する手段であるものとすることもできる。
【0013】
本発明の印刷装置は、所定部位における温度を検出する温度検出手段を備えるプリンタと、上述したいずれかの態様の本発明の印刷指示装置、即ち、基本的には、前記プリンタに印刷を指示する印刷指示装置であって、印刷要求がなされたときに前記プリンタの温度検出手段により検出された温度を取得する温度取得手段と、該取得した温度に基づいて前記印刷要求に係る画像データの色空間を印刷用の色空間に変換する色変換処理を施して前記プリンタにより印刷可能な印刷データを生成する印刷データ生成手段と、該生成した印刷データの印刷を前記プリンタに指示する印刷指示手段と、を備える印刷指示装置とを、単一の筐体に備えることを要旨とする。
【0014】
この本発明の印刷装置では、上述したいずれかの態様の本発明の印刷指示装置を備えるから、本発明の印刷指示装置が奏する効果、例えば、プリンタの温度による印刷品質への影響をより低減することができる効果や高温時における印刷品質をより向上させることができる効果、高温時におけるプリンタの動作をユーザにより選択できるようにすることができる効果などを奏することができる。
【0015】
本発明の印刷指示装置用プログラムは、
コンピュータを、所定部位における温度を検出する温度検出手段を備えるプリンタに印刷を指示する印刷指示装置として機能させるプログラムであって、
印刷要求がなされたときに前記プリンタの温度検出手段により検出された温度を取得する温度取得モジュールと、
該取得した温度に基づいて前記印刷要求に係る画像データの色空間を印刷用の色空間に変換する色変換処理を施して前記プリンタにより印刷可能な印刷データを生成する印刷データ生成モジュールと、
該生成した印刷データの印刷を前記プリンタに指示する印刷指示モジュールと、
を備えることを要旨とする。
【0016】
この本発明の印刷指示装置用プログラムでは、コンピュータを、印刷が要求されたときにプリンタの所定部位における温度を取得し、この取得した温度に基づいて色変換処理を施して印刷データを生成する、印刷指示装置として機能させる。即ち、プリンタの温度に基づく色変換処理を行なうことにより、印刷用の色空間における濃度値をプリンタの温度に応じたものとして印刷データを生成することができる。この結果、プリンタの温度による印刷品質への影響をより低減することができ、高温時における印刷品質をより向上させることができる。なお「プリンタの所定部位」としては、プリンタの内部や表面部などの各種部位を挙げることができ、例えば、インクジェット方式のプリンタにおける印字ヘッド付近を挙げることができる。
【0017】
こうした本発明の印刷指示装置用プログラムにおいて、前記印刷データ生成モジュールは、前記取得した温度が所定温度未満のときには通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成し、前記取得した温度が該所定温度以上のときには該通常時用の色変換テーブルと比較して印刷用の色空間における濃度値が小さくなる傾向で設定された高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成するモジュールであるものとすることもできる。こうすれば、プリンタの温度が所定温度未満のときと所定温度以上のときとで通常時用の色変換テーブルと高温時用の色変換テーブルとを使い分けることにより、高温時には印刷用の色空間における濃度値が小さくなるよう色変換処理を行なうことができる。また、通常時用の色変換テーブルと高温時用の色変換テーブルとを使い分けるだけでよいから、処理を単純なものとすることができる。この態様の本発明の印刷指示装置用プログラムにおいて、前記温度取得モジュールにより取得した温度が前記所定温度以上のときに印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付ける選択指示受付モジュールを備え、前記印刷データ生成モジュールは前記選択指示受付モジュールにより印刷続行の指示を受け付けたときには前記高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成し、前記選択指示受付モジュールにより印刷待機の指示を受け付けたときには前記通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成するモジュールであるものとすることもできる。こうすれば、プリンタの温度が所定温度以上のときには印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付け、印刷続行が指示されたときには高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を行なうと共に印刷待機が指示されたときには通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を行なうことができる。即ち、プリンタの温度が所定温度以上のときに、高温時用の色変換テーブルを用いて印刷を続行するか、印刷を待機した後に通常時用の色変換テーブルを用いて印刷するかをユーザにより選択させることができる。この結果、高温時におけるプリンタの動作をユーザにより選択できるようにすることができる。
【0018】
この選択指示受付モジュールを備える態様の本発明の印刷指示装置用プログラムにおいて、前記プリンタは前記所定部位を冷却可能な冷却手段を備え、前記選択指示受付モジュールにより印刷待機の指示を受け付けたときに前記冷却手段の冷却能力が通常よりも高くなるように前記プリンタに指示する冷却指示モジュールを備えるものとすることもできる。こうすれば、印刷を待機する際に、プリンタの冷却手段の冷却能力が高くなるように指示することができる。この結果、プリンタをより早く冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施例としての印刷指示装置として機能するクライアントコンピュータ20を含むシステムの構成の概略を示す構成図である。実施例のクライアントコンピュータ20は、図示するように、CPU21やROM22,RAM23,HDD24を中心とした汎用のコンピュータとして構成されており、外部インタフェース25を介して通信可能に接続されたプリンタ40に印刷データを送信する。HDD24には、汎用のコンピュータを本発明の印刷指示装置として機能させるためのプリンタドライバ30がインストールされている。
【0021】
プリンタ40は、一般的なインクジェット方式のプリンタとして構成されており、図示するように、装着されたインクカートリッジに充填されているインクを吐出する印字ヘッド41と、印字ヘッド41を用紙の搬送方向と略直交する方向(主走査方向)に移動させるキャリッジ機構42と、用紙を搬送する紙送り機構43と、プリンタ40内部の温度を検出する温度センサ45と、プリンタ40内部を冷却する冷却ファン47と、メッセージなどを表示すると共にユーザからの操作を受け付ける操作パネル48と、クライアントコンピュータ20などの外部機器との接続を司る外部インタフェース49と、プリンタ40全体の動作を制御するコントローラ50とを備え、クライアントコンピュータ20から送信される印刷データに基づいて用紙にインクを吐出して文字や画像などを印刷する。なお、温度センサ45は、プリンタ40内部の適当な位置(例えば、印字ヘッド41の周辺部など)に設けられている。
【0022】
次にこうして構成されたクライアントコンピュータ20の動作、特にプリンタ40に印刷を指示する際の動作について説明する。図2は、クライアントコンピュータ20のCPU21により実行される印刷指示処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、HDD24にインストールされているアプリケーションプログラムなどから画像データの印刷要求がなされたときに実行される。
【0023】
印刷指示処理では、まず、図示するように、温度センサ45により検出されるプリンタ40の内部温度を取得する処理を実行する(ステップS100)。この処理は、内部温度を問い合わせる所定のコマンドをプリンタ40に対して送信することにより行なわれる。
【0024】
続いて、取得した内部温度が40℃を超えているか否かを判定し(ステップS110)、40℃以下であるときには、画像データの色空間(例えば、RGB色空間)を印刷用の色空間(例えば、CMYK色空間)に変換するためのルックアップテーブル(以下、LUTと称する)として通常時用のLUTを用いて印刷を要求された画像データに色変換処理を施して印刷データを生成する(ステップS170)。ここで、LUTは、画像データの色空間における各色の輝度値と印刷用の色空間における各色の濃度値との対応関係を管理するテーブルである。なお、印刷データを生成する際には、色変換処理の他、ディザ法や誤差拡散法を用いた2値化処理なども行なわれる。
【0025】
一方、内部温度が40℃を超えているときには、ユーザに後続の動作を選択させるための高温時選択画面100をクライアントコンピュータ20のモニタ上に表示する(ステップS120)。図3は、高温時選択画面100の一例を示す説明図である。高温時選択画面100は、図示するように、印刷続行ボタン102と印刷待機ボタン104と印刷中止ボタン106とにより後続の動作を選択できると共にプリンタ40が高温状態であるとこを通知する高温時ヘルプ情報108を表示するように画面構成されている。高温時ヘルプ情報108は、プリンタ40が高温状態であるときの留意点などの情報が含まれている。
【0026】
そして、高温時選択画面100の印刷続行ボタン102が押されると、LUTとして高温時用のLUTを用いて画像データに色変換処理を施して印刷データを生成する(ステップS180)。高温時用のLUTは、通常時用のLUTと比較して、印刷用の色空間における各色の濃度値が小さくなる傾向で設定されている。ここで、高温時用のLUTを各色の濃度値が小さくなる傾向で設定するのは、高温時にはインク粘度の低下などに起因してインクの吐出量が通常よりも増大してしまう傾向にあるから、印刷用の色空間における各色の濃度値が通常よりも小さくなるように色変換処理を施すことにより、インクの吐出量の増大による印刷品質への影響を低減することができると考えられることに基づく。実施例では、高温時に適したLUTを実験などにより定めて、高温時用のLUTとして予め設定しておくものとした。
【0027】
一方、高温時選択画面100の印刷待機ボタン104が押されると、冷却を指示する冷却コマンドをプリンタ40に対して送信する(ステップS140)。この冷却コマンドは、受信したプリンタ40において冷却ファン47を通常よりも高回転の高温時用回転数で作動させるコマンドとして予め設定されている。
【0028】
こうして冷却コマンドを送信すると、プリンタ40から内部温度を所定の間隔(例えば、1秒毎)で繰り返し取得すると共に内部温度が40℃未満となるまで待機し(ステップS150,S160)、内部温度が40℃未満となったときに、通常時用のLUTを用いて画像データに色変換処理を施して印刷データを生成する(ステップS170)。なお、内部温度が40℃未満となるまで待機する際には、図4に例示する冷却進行表示画面200をクライアントコンピュータ20のモニタに表示するものとした。冷却進行表示画面200では、図示するように、プリンタ40内部の冷却の進行状況(内部温度の下降状況)を示すプログレスバーが表示されている。このプログレスバーは、繰り返し取得する内部温度に基づいて内部温度の下降状況を判定して表示される。
【0029】
このように通常時用のLUTや高温時用のLUTを用いて色変換処理を施して印刷データを生成すると、生成した印刷データをプリンタ40に対して送信し(ステップS190)、この印刷指示処理を終了する。印刷データを受信したプリンタ40では、受信した印刷データに基づいて印字ヘッド41やキャリッジ機構42,紙送り機構43などを駆動して印刷を行なう。なお、ステップS130で高温時選択画面100の印刷中止ボタン106が押されたときには、そのまま処理を終了する。
【0030】
以上説明した実施例のクライアントコンピュータ20によれば、印刷の要求がなされたときにプリンタ40の内部温度を取得し、取得した温度が40℃を超えており印刷続行が指示されたときには高温時用のLUTを用いて色変換処理を施し、取得した温度が40℃以下であったり40℃を超えているが印刷待機が指示されたときには通常時用のLUTを用いて色変換処理を施して、印刷データを生成することができる。即ち、プリンタ40の内部温度に基づく色変換処理を行なうことにより、印刷用の色空間における濃度値をプリンタ40の内部温度に応じたものとして印刷データを生成することができる。この結果、プリンタ40の内部温度による印刷品質への影響をより低減することができ、高温時における印刷品質をより向上させることができる。また、通常時用のLUTと高温時用のLUTとを使い分けるだけでよいから、処理を単純なものとすることができる。さらに、プリンタ40の内部温度が40℃を超えているときに高温時選択画面100を介して印刷続行か印刷待機か印刷中止かの指示を受け付けるから、高温時におけるプリンタ40の動作をユーザに選択させることができる。
【0031】
また、本発明のクライアントコンピュータ20によれば、高温時選択画面100を介して印刷待機が指示されたときに冷却コマンドをプリンタ40に対して送信することによりプリンタ40の冷却ファン47を通常よりも高回転で作動させることができる。この結果、プリンタ40をより早く冷却することができる。
【0032】
ここで、実施例のクライアントコンピュータ20では、ステップS100の処理を実行するCPU21が温度取得手段に相当し、ステップS110〜S130の処理を実行するCPU21が選択指示受付手段に相当し、ステップS140の処理を実行するCPU21が冷却指示手段に相当し、ステップS150〜S180の処理を実行するCPU21が印刷データ生成手段に相当し、ステップS190の処理を実行するCPU21が印刷指示手段に相当する。また、実施例では、プリンタ40の温度センサ45が温度検出手段に相当し、プリンタ40の冷却ファン47が冷却手段に相当する。また、実施例のプリンタドライバ30が印刷指示装置用プログラムに相当する。
【0033】
実施例のクライアントコンピュータ20では、プリンタ40の内部温度が40℃を超えているか否かを判定するものとしたが、40℃に限られないのは勿論である。また、高温時用のLUTと通常時用のLUTとを使い分けることによりプリンタ40の内部温度に応じた色変換処理を行なうものとしたが、これに限られず、高温時の印刷用の色空間における濃度値が小さくなる傾向で色変換処理を施すことができればよい。例えば、通常時用のLUTを用いて色変換処理を施した後に、プリンタ40の内部温度が高いほど濃度値が小さくなるようなデータ処理を施すものとしてもよい。また、プリンタ40の内部温度に応じて色変換処理を施すものであれば、その他の各種の色変換処理を施すものとしてもよい。
【0034】
実施例のクライアントコンピュータ20では、プリンタ40の内部温度が40℃を超えているときには高温時選択画面100を表示してユーザに後続の動作を選択させるものとしたが、こうした高温時選択画面100を介した後続動作の選択を行なわないものとしても差し支えない。この場合、プリンタ40の内部温度が40℃を超えているときには、常に印刷を続行するものとし、高温時用のLUTを用いた色変換処理を施して印刷データを生成するものとすればよい。
【0035】
実施例のクライアントコンピュータ20では、高温時選択画面100に高温時ヘルプ情報108を表示するものとしたが、表示しなくても構わない。
【0036】
実施例のクライアントコンピュータ20では、冷却コマンドは、プリンタ40において冷却ファン47を通常よりも高回転の高温時用回転数で作動させるコマンドとして予め設定されているものとしたが、冷却ファン47に限られず、プリンタ40が冷却ファン47以外の冷却手段を備える場合には、この冷却手段を通常よりも高い冷却能力で作動させるコマンドとして設定するものとしてもよい。また、こうしたプリンタ40に対する冷却の指示を行なわないものとしても差し支えない。
【0037】
実施例のクライアントコンピュータ20では、プリンタ40から内部温度を所定の間隔で繰り返し取得すると共に内部温度が40℃未満となるまで待機するものとしたが、必ずしも内部温度を繰り返し取得しなくてもよく、所定の待機時間が経過するまで待機するものとしてもよい。
【0038】
実施例のクライアントコンピュータ20では、プリンタ40に対して冷却コマンドを送信した後に、プリンタ40の内部温度が40℃未満となるまで待機して印刷データを生成するものとしたが、冷却コマンドを送信した後に印刷データを生成し、その後、内部温度が40℃未満となるまで待機して印刷データを送信するものとしてもよい。また、クライアントコンピュータ20側では待機せず、プリンタ40側で内部温度が40℃未満となるまで待機してから印刷データを印刷するようにしてもよい。この場合、このようにプリンタ40を動作させる制御コマンドを伴って印刷データを送信するものとすればよい。
【0039】
実施例では、プリンタ40の温度センサ45は、プリンタ40内部の適当な位置に設けたが、プリンタ40の表面部などに設けるものとしても差し支えない。
【0040】
実施例では、プリンタ40はインクジェット方式のプリンタとして構成されるものとしたが、これに限られず、電子写真方式などのその他のプリンタであっても構わない。
【0041】
実施例では、プリンタ40の内部温度に基づいて色変換処理を施して印刷データを生成する本発明をクライアントコンピュータ20の形態として説明したが、プリンタ40を本発明の印刷指示装置として機能させる印刷装置の形態としてもよい。この場合、図2の印刷指示処理に相当する処理をプリンタ40のコントローラ50などにより実行するものとすればよい。
【0042】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】クライアントコンピュータ20を含むシステムの構成の概略を示す構成図。
【図2】印刷指示処理の一例を示すフローチャート。
【図3】高温時選択画面100の一例を示す説明図。
【図4】冷却進行表示画面200の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0044】
20 クライアントコンピュータ、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 HDD、25 外部インタフェース、30 プリンタドライバ、40 プリンタ、41 印字ヘッド、42 キャリッジ機構、43 紙送り機構、45 温度センサ、47 冷却ファン、48 操作パネル、49 外部インタフェース、50 コントローラ、100 高温時選択画面、102 印刷続行ボタン、104 印刷待機ボタン、106 印刷中止ボタン、108 高温時ヘルプ情報、200 冷却進行表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部位における温度を検出する温度検出手段を備えるプリンタに印刷を指示する印刷指示装置であって、
印刷要求がなされたときに前記プリンタの温度検出手段により検出された温度を取得する温度取得手段と、
該取得した温度に基づいて前記印刷要求に係る画像データの色空間を印刷用の色空間に変換する色変換処理を施して前記プリンタにより印刷可能な印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
該生成した印刷データの印刷を前記プリンタに指示する印刷指示手段と、
を備える印刷指示装置。
【請求項2】
前記印刷データ生成手段は、前記取得した温度が高いほど印刷用の色空間における濃度値が小さくなる傾向で色変換処理を施して印刷データを生成する手段である請求項1記載の印刷指示装置。
【請求項3】
前記印刷データ生成手段は、前記取得した温度が所定温度未満のときには通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成し、前記取得した温度が該所定温度以上のときには該通常時用の色変換テーブルと比較して印刷用の色空間における濃度値が小さくなる傾向で設定された高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成する手段である請求項1または2記載の印刷指示装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷指示装置であって、
前記温度取得手段により取得した温度が前記所定温度以上のときに印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付ける選択指示受付手段を備え、
前記印刷データ生成手段は、前記選択指示受付手段により印刷続行の指示を受け付けたときには前記高温時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成し、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときには前記通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成する手段である、
印刷指示装置。
【請求項5】
前記選択指示受付手段は、プリンタの高温時におけるヘルプ情報を表示すると共に印刷続行か印刷待機かを選択指示可能な高温時選択画面を介して印刷続行か印刷待機かの選択指示を受け付ける手段である請求項4記載の印刷指示装置。
【請求項6】
前記印刷データ生成手段は、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときには前記プリンタの所定部位における温度が前記所定温度未満となるのを待って前記通常時用の色変換テーブルを用いて色変換処理を施して印刷データを生成する手段である請求項4または5記載の印刷指示装置。
【請求項7】
前記印刷指示手段は、前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときには前記プリンタの所定部位における温度が前記所定温度未満となるのを待って前記印刷データの印刷を前記プリンタに指示する手段である請求項4または5記載の印刷指示装置。
【請求項8】
請求項4ないし7いずれか記載の印刷指示装置であって、
前記プリンタは、前記所定部位を冷却可能な冷却手段を備え、
前記選択指示受付手段により印刷待機の指示を受け付けたときに前記冷却手段の冷却能力が通常よりも高くなるように前記プリンタに指示する冷却指示手段を備える、
印刷指示装置。
【請求項9】
請求項8記載の印刷指示装置であって、
前記冷却手段は、冷却用ファンであり、
前記冷却指示手段は、前記冷却用ファンの回転数が通常よりも高くなるように前記プリンタに指示する手段である、
印刷指示装置。
【請求項10】
前記プリンタと請求項1ないし9いずれか記載の印刷指示装置とを単一の筐体に備える印刷装置。
【請求項11】
コンピュータを、所定部位における温度を検出する温度検出手段を備えるプリンタに印刷を指示する印刷指示装置として機能させるプログラムであって、
印刷要求がなされたときに前記プリンタの温度検出手段により検出された温度を取得する温度取得モジュールと、
該取得した温度に基づいて前記印刷要求に係る画像データの色空間を印刷用の色空間に変換する色変換処理を施して前記プリンタにより印刷可能な印刷データを生成する印刷データ生成モジュールと、
該生成した印刷データの印刷を前記プリンタに指示する印刷指示モジュールと、
を備える印刷指示装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15494(P2006−15494A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192580(P2004−192580)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】