説明

厚さまたは表面形状の測定方法

本発明は、厚さまたは表面形状の測定方法に関するものであって、本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法は、白色光干渉計を用いた、基底層上に積層された薄膜層の厚さまたは表面形状の測定方法であって、互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を想定し、各サンプル薄膜層に対する干渉信号をシミュレーションすることにより、各厚さに対応するシミュレーション干渉信号を生成するステップと、前記薄膜層に白色光を照射して前記薄膜層に入射する光軸方向に対する実際の干渉信号を取得するステップと、前記実際の干渉信号から前記薄膜層の厚さとなり得る複数の予想厚さを求めるステップと、前記予想厚さに対応する厚さを有するシミュレーション干渉信号と前記実際の干渉信号とが実質的に一致するか否かを比較するステップと、前記実際の干渉信号と実質的に一致するシミュレーション干渉信号の厚さを前記薄膜層の厚さに決定するステップとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さまたは表面形状の測定方法に関し、より詳細には、白色光走査干渉法を用いて透過性薄膜層の厚さ及びその薄膜層の表面形状を正確に測定できる厚さまたは表面形状の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工程及びFPD工程において、品質を決定する様々な要因のうち、薄膜層の厚さの制御が占める比重が大きいため、これを工程中において直接モニタすることが必須といえる。「薄膜層」とは、基底層、すなわち、基板の表面に形成させた非常に薄い厚さを有する層であって、一般的に厚さが数十Å〜数μmの範囲内のものをいう。これらの薄膜層を特定の用途に応用するためには、薄膜層の厚さ、組成、照度及びその他の物理的・光学的特性を知ることが必要である。特に、最近では、半導体素子の集積度を高めるために、基板上に超薄膜層を多層形成することが一般的な傾向である。この高集積の半導体素子を開発するためには、特性に大きな影響を与える因子である薄膜層の厚さを含む膜の物性を正確に制御しなければならない。
【0003】
半導体工程及びその他の応用工程などで使用する薄膜層の厚さを測定するには様々な方式があるが、探針(stylus)を用いた機械的方法、光学的方法などが最も一般的である。光学的方法のうち、白色光干渉計(white light interferometer)を用いて薄膜層の厚さを決定することができる。
【0004】
図1は、従来の厚さ測定方法の一例を示す図である。
【0005】
図1に示すように、基底層10上には厚さを測定する透過性薄膜層20a、20bが積層され、薄膜層20a、20bの上側には空気層30が存在する。第1面21a、21bは、空気層30と薄膜層20a、20bとの境界面であり、第2面11a、11bは、薄膜層20a、20bと基底層10との境界面である。左側の薄膜層20aは、右側の薄膜層20bより厚い。
【0006】
一般的な白色光干渉計を用いて相対的に厚い薄膜層20aに向けて白色光を照射すると、第1面21aから生成される第1波形41及び第2面11aから生成される第2波形42が得られる。薄膜層20aの厚さが厚いために、第1波形41と第2波形42とは干渉せずに分離され、両波形41、42の最高値を有するピーク(peak)を選択して薄膜層20aの厚さを求めることができる。
【0007】
しかしながら、相対的に薄い薄膜層20bの場合、上述の方法により薄膜層20bの厚さを求めることは不可能である。つまり、厚さの薄い薄膜層20bに向けて白色光を照射すると、第1面21bから生成される第1波形43及び第2面11bから生成される第2波形44の間に干渉現象が発生する。このような干渉現象が発生すると、第1及び2波形中に現れたピークが実際の建設的干渉によるピークなのか、あるいは第1波形43と第2波形44の干渉によるピークなのかが不明である。このため、両波形43、44の最高値を有するピークを選択して薄膜層20bの厚さを求める方法を利用できない問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、このような従来の問題を解決するためのものであって、互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層に対してシミュレーションを行うことによりシミュレーション干渉信号を生成し、基底層上に積層された薄膜層に対して実際の干渉信号を取得した後、実際の干渉信号とシミュレーション干渉信号とが一致するか否かを比較して薄膜層の厚さを設定することにより、空気層−薄膜層の境界面における干渉信号の波形と薄膜層−基底層の境界面における干渉信号の波形との間で干渉現象が発生する程度の厚さの薄い薄膜層に対して、その厚さまたは表面形状を正確に測定できる厚さまたは表面形状の測定方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の厚さまたは表面形状の測定方法は、白色光干渉計を用いた、基底層上に積層された薄膜層の厚さまたは表面形状の測定方法であって、互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を想定し、各サンプル薄膜層に対する干渉信号をシミュレーションすることにより、各厚さに対応するシミュレーション干渉信号を生成するステップと、前記薄膜層に白色光を照射して前記薄膜層に入射する光軸方向に対する実際の干渉信号を取得するステップと、前記実際の干渉信号から前記薄膜層の厚さとなり得る複数の予想厚さを求めるステップと、前記予想厚さに対応する厚さを有するシミュレーション干渉信号と前記実際の干渉信号とが実質的に一致するか否かを比較するステップと、前記実際の干渉信号と実質的に一致するシミュレーション干渉信号の厚さを前記薄膜層の厚さに決定するステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法において、好ましくは、前記複数の予想厚さを求めるステップは、前記実際の干渉信号から2つ以上のピークを選択し、2つのピークの間のピーク数を用いて前記予想厚さを求める。
【0011】
本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法において、好ましくは、前記複数の予想厚さを求めるステップは、前記実際の干渉信号を、空気層と前記薄膜層との境界面における干渉現象により生成される第1波形と、前記薄膜層と前記基底層との境界面における干渉現象により生成される第2波形とに区分するステップと、前記第1波形及び前記第2波形からそれぞれピークを選択するステップと、前記第1波形のピークと前記第2波形のピークとの間のピーク数を用いて前記予想厚さを求めるステップとを含む。
【0012】
本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法において、好ましくは、前記ピークを選択するステップは、前記第2波形のピークのうち最高値を有するピークを基準ピークに設定するステップと、前記第1波形から複数のピークを選択するステップとを含み、前記予想厚さを求めるステップは、前記第1波形の複数のピークと前記基準ピークとを組合せ、組合せられた各々のケースに対して、前記第1波形のピークと前記基準ピークとの間のピーク数を算出するステップと、前記ピーク数を用いて前記予想厚さを求めるステップとを含む。
【0013】
本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法において、好ましくは、前記ピークを選択するステップは、前記第1波形から複数のピークを選択し、前記第2波形から複数のピークを選択するステップを含み、前記予想厚さを求めるステップは、前記第1波形の複数のピークと前記第2波形の複数のピークとを組合せ、組合せられた各々のケースに対して、前記第1波形のピークと前記第2波形のピークとの間のピーク数を算出するステップと、前記ピーク数を用いて前記予想厚さを求めるステップとを含む。
【0014】
本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法において、好ましくは、前記予想厚さは、以下の数式により求められる。
【数1】

式中、dcanは前記予想厚さであり、Nは前記ピーク数であり、λは前記白色光の実効波長であり、nは前記薄膜層の屈折率である。
【0015】
本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法において、好ましくは、決定された薄膜層の厚さに対応する第1波形のピークに対して、前記薄膜層に入射する光軸方向に対する位置を前記薄膜層の表面高さに設定するステップと、前記薄膜層に沿って移動して前記表面高さを設定するステップを繰り返すことにより、前記薄膜層の表面形状を求めるステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、限られた数の予想厚さを求め、予想厚さに対応するシミュレーション干渉信号のみを選択して実際の干渉信号と比較することにより、最終的に薄膜層の厚さを決定するのにかかる時間を節約することができる。
【0017】
また、計測された実際の干渉信号とシミュレーション干渉信号とが一致するか否かを比較して薄膜層の厚さを決定することにより、互いに異なる境界面における波形間で互いに干渉が発生する程度の厚さの薄い薄膜層に対しても、その厚さを正確に測定することができる。
【0018】
さらに、薄膜層の厚さのみならず、薄膜層の相対的な高さの差を意味する表面形状を同時に求めることができるため、薄膜層に関する総合的な情報を算出及び可視化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の厚さ測定方法の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法を実現するための白色光干渉計の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る厚さまたは表面形状の測定方法のフローチャートである。
【図4】互いに異なる厚さのサンプル薄膜層に対するシミュレーション干渉信号を示す図である。
【図5】図3の厚さまたは表面形状の測定方法において薄膜層に白色光を照射して取得した実際の干渉信号を示す図である。
【図6】各予想厚さに対応するシミュレーション干渉信号と実際の干渉信号とが実質的に一致するか否かを比較する過程を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る厚さまたは表面形状の測定方法のフローチャートである。
【図8】図7の厚さまたは表面形状の測定方法において薄膜層に白色光を照射して取得した実際の干渉信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法の実施形態について、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図2は、本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法を実現するための白色光干渉計の一例を示す図である。
【0022】
図2に示すように、前記干渉計100は、透過性薄膜層20の厚さまたは表面形状を測定するのに一般的に用いられるミラウ干渉計の構成を採用している。前記干渉計100は、白色光源101を具備し、白色光源101としては、ハロゲンランプなどを含む多様なソースのランプが使用可能である。白色光源101から入射した光を、スペクトル特性を変えることなく、単に輝度のみを減らすために、減光フィルタ(Neutral Density filter、「ND filter」ともいう。)102が設けられる。前記干渉計100は、減光フィルタ102を通過した光を集めるための集光レンズ103を備える。集光レンズ103を通過した光は、平行光を生成するためのコリメータ(collimator)104を通過する。
【0023】
コリメータ104を通過した光は、分光器111により反射光53と透過光59に分割され、反射光53は対物レンズ131側に入射する。ここで、分光器111は、反射率と透過率が50:50であるものを利用する。対物レンズ131から入射する光は、分光器132により再び反射光57と透過光55に分割される。前記透過光55は、測定光として透過性薄膜層20及び基底層10側に照射され、前記反射光57は、基準光として基準ミラー133に照射される。前記分光器132は、基準ミラー133から反射された基準光57と、薄膜層20と基底層10との境界面により反射された測定光55を集めて干渉光を生成するためのものである。また、前記基準ミラー133は、分光器132から入射する基準光57を反射させ、再び分光器132に入射させるためのものである。
【0024】
前記干渉計100は、分光器111から入射する干渉光59を結像させるための結像レンズ121と、干渉光59から干渉信号を検出するための検出器122とを備える。一般的に、検出器122としては、測定しようとする領域に適した画素数を有するCCD(Charge Coupled Device)カメラが利用される。
【0025】
また、前記干渉計100は、測定点を、基底層10と交差する方向、すなわち、光軸方向に微小間隔移動して干渉信号を取得するための駆動部140を備える。対物レンズ131を収める鏡筒130は駆動部140に取り付けられ、駆動部140の作動により対物レンズ131の光軸方向への移動が可能になる。ここで、基底層10に入射する垂直な光軸方向Aを、図2のz軸と定義する。このように、対物レンズ131をz軸方向に沿って測定点の上下に数nmの間隔で移動し、検出器122を介して強い干渉信号が検出される位置を見つけるようになる。
【0026】
以下、上述のように構成された干渉計100を用いた、本発明に係る厚さまたは表面形状の測定方法の第1実施形態について、図3〜図6を参照して詳細に説明する。
【0027】
図3は、本発明の第1実施形態に係る厚さまたは表面形状の測定方法のフローチャートであり、図4は、互いに異なる厚さのサンプル薄膜層に対するシミュレーション干渉信号を示す図であり、図5は、図3の厚さまたは表面形状の測定方法において薄膜層に白色光を照射して取得した実際の干渉信号を示す図であり、図6は、各予想厚さに対応するシミュレーション干渉信号と実際の干渉信号とが実質的に一致するか否かを比較する過程を説明するための図である。
【0028】
図4に示すように、まず、互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を想定し、各サンプル薄膜層に対する干渉信号をシミュレーションすることにより、各厚さに対応するシミュレーション干渉信号151、152、153を生成する(S110)。ここで、サンプル薄膜層は、実際に存在する薄膜層ではなく、シミュレーションを行うための、互いに異なる厚さを有する仮想の薄膜層である。サンプル薄膜層に対する干渉信号をシミュレーションするときは、サンプル薄膜層を、実際にその厚さを測定する透過性薄膜層20と同じ物質として想定し、厚さを測定する薄膜層20の物性値、例えば、屈折率(refractive index)、吸収率(absorption coefficient)を利用してシミュレーションする。
【0029】
生成するシミュレーション干渉信号151、152、153の厚さの下限と上限を予め設定し、上限厚さと下限厚さを一定の間隔で分割した後、各々の厚さに対してシミュレーション干渉信号151、152、153を生成する。シミュレーション干渉信号151、152、153の厚さの下限と上限は、工程で処理される薄膜層20の厚さの上限と下限により決定される。
【0030】
次に、薄膜層20に白色光を照射して薄膜層20に入射する光軸方向Aに対する実際の干渉信号160を取得する(S120)。薄膜層20に対して実際に測定した干渉信号160は図5に示されている。本実施形態において、実際の干渉信号160は、薄膜層20に向けて照射された干渉光の光強度の変化信号である。
【0031】
次に、取得された実際の干渉信号160から薄膜層20の厚さとなり得る複数の予想厚さを求める。前記複数の予想厚さを求めることなく、取得された実際の干渉信号160とすべてのシミュレーション干渉信号151、152、153の各々とが一致するか否かを比較しながら、薄膜層20の厚さを決定することもできる。しかし、すべてのシミュレーション干渉信号151、152、153といちいち比較するとシステムに多くの負荷がかかってしまい、実際の干渉信号160と一致するシミュレーション干渉信号151、152、153を探して最終的に薄膜層20の厚さを決定するのにも多くの時間がかかる問題があった。そこで、本発明のように、複数の予想厚さを求めることにより、予想厚さに対応するシミュレーション干渉信号151、152、153のみを選択して実際の干渉信号160と比較することにより、最終的に薄膜層20の厚さを決定するのにかかる時間を節約することができる。
【0032】
複数の予想厚さを求めるために、まず、取得された実際の干渉信号160を第1波形161と第2波形162とに区分する(S131)。第1波形161は、空気層30と薄膜層20との境界面における干渉現象により生成されるもので、実際の干渉信号160の前半部に位置する。第2波形162は、薄膜層20と基底層10との境界面における干渉現象により生成されるもので、実際の干渉信号160の後半部に位置する。
【0033】
次に、第2波形162のピークのうち最高値を有するピークを基準ピーク163に設定し(S133)、第1波形161から複数のピーク164a、164b、164c、164dを選択する(S135)。本実施形態においては、第1波形161に存在する4つのピークを選択する。第1波形161のピークと基準ピーク163とを組合せると、4つのケース、すなわち、第1ピーク164aと基準ピーク163、第2ピーク164bと基準ピーク163、第3ピーク164cと基準ピーク163、及び第4ピーク164dと基準ピーク163の計4つのケースが生成される。
【0034】
次に、第1ピーク164aと基準ピーク163、第2ピーク164bと基準ピーク163、第3ピーク164cと基準ピーク163、及び第4ピーク164dと基準ピーク163の各々に対して、両ピークの間に存在するピークの数を算出する(S137)。
【0035】
次に、各ケースに対して算出されたピークの数を以下の数式に代入して予想厚さを求める(S139)。
【数1】

式中、dcanは予想厚さであり、Nはピーク数であり、λは白色光の実効波長であり、nは薄膜層20の屈折率である。
【0036】
本実施形態においては、第1波形161のピークと基準ピーク163とを組合せた場合の数が4つであるので、予想厚さも4つ生成される。
【0037】
次に、図6に示すように、予想厚さに対応する厚さを有するシミュレーション干渉信号151、152、153と実際の干渉信号160とが実質的に一致するか否かを比較する(S140)。実質的な一致の有無を確認する過程では、最小二乗法を利用した誤差関数を求めることで最小の誤差関数を有するとき、両干渉信号を「実質的な一致」と判定するが、この方法は当業者にとって広く知られているため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0038】
例えば、第3ピーク164cと基準ピーク163との間のピーク数に基づいて予想厚さを求め、その予想厚さに対応する厚さを有するシミュレーション干渉信号153と実際の干渉信号160とが一致するか否かを判別するにあたり、最小二乗法を利用した誤差関数を求める。次に、第4ピーク164dと基準ピーク163との間のピーク数に基づいて予想厚さを求め、その予想厚さに対応する厚さを有するシミュレーション干渉信号152と実際の干渉信号160とが一致するか否かを判別するにあたり、最小二乗法を利用した誤差関数を求める。同じように、第1ピーク164aと基準ピーク163、第2ピーク164bと基準ピーク163の場合にもそれぞれ誤差関数を求め、最小の誤差関数を有する場合を「実質的な一致」と判定する。本実施形態においては、「実質的な一致」に該当する場合を、第4ピーク164dと基準ピーク163として想定し、図6においても、シミュレーション干渉信号と実際の干渉信号とを重畳すると、両干渉信号がほぼ一致する様子を確認することができる。
【0039】
次に、実際の干渉信号160と実質的に一致するシミュレーション干渉信号を選択し、そのシミュレーション干渉信号に対応する厚さを薄膜層20の厚さに最終的に決定する(S150)。
【0040】
一方、実際の干渉信号160と実質的に一致するシミュレーション干渉信号から薄膜層20の厚さを決定するとき、薄膜層20の表面形状も同時に求めることができる。
【0041】
図6に示すように、第4ピーク164dと基準ピーク163との組合せから得た予想厚さが実際の薄膜層20の厚さに決定された場合、薄膜層20に入射する光軸方向(Z)、すなわち、z軸方向に対する第4ピーク164dの位置を空気層30と薄膜層20との境界面と判断することができる。
【0042】
したがって、実際の干渉信号160のグラフにおいて、第4ピーク164dのx座標(z軸方向に対する第4ピークの位置)を表面高さに設定する(S162)。このとき、z軸方向のゼロ(0)ポイントが絶対的な基準を意味するのではないため、第4ピーク164dのx座標の絶対値(個別の第4ピーク164dのx座標)は意味がなく、複数の表面高さの相対的な差が重要な意味をもつ。
【0043】
薄膜層20に沿って移動し、各々の位置で表面高さを設定するステップを繰り返し、これらのすべてをつなげると、全体的に薄膜層20の表面高さの相対的な差、すなわち、表面形状を求めることができる(S164)。この薄膜層20の表面高さの相対的な差により、薄膜層20の表面がどれだけの高低を有して形成されているかを可視化することができるが、薄膜層20の表面高さの相対的な差を、本明細書では「表面形状」と定義する。
【0044】
上述のように構成された本実施形態に係る厚さまたは表面形状の測定方法は、計測された実際の干渉信号とシミュレーションを行うことにより得られたシミュレーション干渉信号のすべてをそれぞれ比較するのではなく、限られた数の予想厚さを求め、予想厚さに対応するシミュレーション干渉信号のみを選択して実際の干渉信号と比較することにより、最終的に薄膜層の厚さを決定するのにかかる時間を節約できる効果が得られる。
【0045】
また、計測された実際の干渉信号とシミュレーション干渉信号とが一致するか否かを比較して薄膜層の厚さを決定することにより、互いに異なる境界面における波形間で互いに干渉が発生する程度の厚さの薄い薄膜層に対しても、その厚さを正確に測定できる効果が得られる。
【0046】
さらに、薄膜層の厚さのみならず、薄膜層の相対的な高さの差を意味する表面形状を同時に求めることができるため、薄膜層に関する総合的な情報を算出及び可視化できる効果が得られる。
【0047】
一方、図7は、本発明の第2実施形態に係る厚さまたは表面形状の測定方法のフローチャートである。図7及び図8において、図3〜図6に示す部材と同じ部材番号が付されている部材は、同じ構成及び機能を有するものであって、これらの各々に関する詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態においては、第2波形から基準ピークを設定するのではなく、実際の干渉信号260の第1波形261から複数のピーク264a、264b、264c、264dを選択し、第2波形262から複数のピーク263a、263b、263cを選択する(S233)。本実施形態においては、第1波形261から4つのピークを、第2波形262から3つのピークを選択する。第1波形261のピークと第2波形262のピークとを組合せると、12のケース、つまり、第1ピーク264aと第5ピーク263a、第2ピーク264bと第5ピーク263a、・・・、第1ピーク264aと第6ピーク263b、第2ピーク264bと第6ピーク263bの計12のケースが生成される。
【0049】
次に、各々のケースに対して、両ピークの間に存在するピークの数を算出し(S235)、そのピーク数を用いて12の予想厚さを求め、薄膜層20の厚さを決定するのに利用することができる。
【0050】
本実施形態の場合、本発明の第1実施形態と比較してケースの数が多くなり得るが、基準ピークの設定を間違える危険性を低減する効果が得られる。
【0051】
本発明の権利範囲は、上述した実施例及び変形例に限定されず、添付した特許請求の範囲内で多様な形態の実施形態が実現可能である。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、変形可能な多様な範囲が本発明の請求範囲内にすべて属することが分かるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、白色光走査干渉法を用いて透過性薄膜層の厚さ及びその薄膜層の表面形状を正確に測定できる厚さまたは表面形状の測定方法に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光干渉計を用いた、基底層上に積層された薄膜層の厚さまたは表面形状の測定方法であって、
互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を想定し、各サンプル薄膜層に対する干渉信号をシミュレーションすることにより、各厚さに対応するシミュレーション干渉信号を生成するステップと、
前記薄膜層に白色光を照射して前記薄膜層に入射する光軸方向に対する実際の干渉信号を取得するステップと、
前記実際の干渉信号から前記薄膜層の厚さとなり得る複数の予想厚さを求めるステップと、
前記予想厚さに対応する厚さを有するシミュレーション干渉信号と前記実際の干渉信号とが実質的に一致するか否かを比較するステップと、
前記実際の干渉信号と実質的に一致するシミュレーション干渉信号の厚さを前記薄膜層の厚さに決定するステップとを含むことを特徴とする厚さまたは表面形状の測定方法。
【請求項2】
前記複数の予想厚さを求めるステップは、
前記実際の干渉信号から2つ以上のピークを選択し、2つのピークの間のピーク数を用いて前記予想厚さを求めることを特徴とする請求項1に記載の厚さまたは表面形状の測定方法。
【請求項3】
前記複数の予想厚さを求めるステップは、
前記実際の干渉信号を、空気層と前記薄膜層との境界面における干渉現象により生成される第1波形と、前記薄膜層と前記基底層との境界面における干渉現象により生成される第2波形とに区分するステップと、
前記第1波形及び前記第2波形からそれぞれピークを選択するステップと、
前記第1波形のピークと前記第2波形のピークとの間のピーク数を用いて前記予想厚さを求めるステップとを含むことを特徴とする請求項2に記載の厚さまたは表面形状の測定方法。
【請求項4】
前記ピークを選択するステップは、
前記第2波形のピークのうち最高値を有するピークを基準ピークに設定するステップと、
前記第1波形から複数のピークを選択するステップとを含み、
前記予想厚さを求めるステップは、
前記第1波形の複数のピークと前記基準ピークとを組合せ、組合せられた各々のケースに対して、前記第1波形のピークと前記基準ピークとの間のピーク数を算出するステップと、
前記ピーク数を用いて前記予想厚さを求めるステップとを含むことを特徴とする請求項3に記載の厚さまたは表面形状の測定方法。
【請求項5】
前記ピークを選択するステップは、
前記第1波形から複数のピークを選択し、前記第2波形から複数のピークを選択するステップを含み、
前記予想厚さを求めるステップは、
前記第1波形の複数のピークと前記第2波形の複数のピークとを組合せ、組合せられた各々のケースに対して、前記第1波形のピークと前記第2波形のピークとの間のピーク数を算出するステップと、
前記ピーク数を用いて前記予想厚さを求めるステップとを含むことを特徴とする請求項3に記載の厚さまたは表面形状の測定方法。
【請求項6】
前記予想厚さは、以下の数式により求められることを特徴とする請求項4または5に記載の厚さまたは表面形状の測定方法。
【数1】

(式中、dcanは前記予想厚さであり、Nは前記ピーク数であり、λは前記白色光の実効波長であり、nは前記薄膜層の屈折率である。)
【請求項7】
決定された薄膜層の厚さに対応する第1波形のピークに対して、前記薄膜層に入射する光軸方向に対する位置を前記薄膜層の表面高さに設定するステップと、
前記薄膜層に沿って移動して前記表面高さを設定するステップを繰り返すことにより、前記薄膜層の表面形状を求めるステップとを含むことを特徴とする請求項3に記載の厚さまたは表面形状の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−526692(P2011−526692A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516101(P2011−516101)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000250
【国際公開番号】WO2010/002085
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(509170165)エスエヌユー プレシジョン カンパニー,リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SNU PRECISION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Dong−a town #201, Bong−chun 7−dong 1692−2,Kwanak−gu,Seoul 152−818(KR)
【Fターム(参考)】