説明

厚み測定装置

【課題】煩雑な回転機構を使用することなく、被測定材料表面の広い範囲の厚み分布を速やかに測定する。
【解決手段】パルス状の励起レーザ光Leを全反射ミラー2Aを介して圧延材Mの表面部分M1に向けて照射して当該表面部分M1から圧延材M中へ進行する超音波を生じさせる単一のレーザ光源3と、表面部分M1からの励起レーザ光Leの反射光を再び被測定材料M方向へ反射させて、圧延材Mの他の表面部分M2,M3へ入射させて当該他の表面部分M2,M3から圧延材M中へ進行する超音波を生じさせる全反射ミラー2B,2Cと、各表面部分M1〜M3へ向けて検出レーザ光Ldを照射して当該各表面部分M1〜M3からの、検出レーザ光Ldの反射光に含まれる超音波変調部より各表面部分M1〜M3での圧延材Mの厚みを測定する厚み測定回路5A〜5Cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は厚み測定装置に関し、特に、励起レーザ光によって被測定材料上に超音波を生じさせ、検出レーザ光に含まれる超音波変調部より上記被測定材料の厚みを測定する厚み測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような用途に使用できるレーザ光による超音波受発信装置が特許文献1に示されている。これは、励起レーザ光と検出レーザ光の光路を被測定材料に到達する前に合体させて、合体したレーザ光を回転鏡によって被測定材料の表面上で走査するもので、これによれば、被測定材料の広い領域での超音波による厚み分布の測定が可能である。
【特許文献1】特開昭58−90164
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の装置では、回転鏡の回転操作が機構や制御の点で煩雑であるとともに、被測定材料が熱間圧延材料のように移動するものでは走査速度との兼ね合いで材料全面での測定は困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、煩雑な回転機構を使用することなく、被測定材料表面の広い範囲の厚み分布を速やかに測定できる厚み測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明では、パルス状の励起レーザ光(Le)を被測定材料(M)の表面部分(M1)に向けて照射して当該表面部分から被測定材料中へ進行する超音波を生じさせる単一のレーザ光源(3)と、表面部分(M1)からの励起レーザ光(Le)の反射光を再び被測定材料(M)方向へ反射させて、被測定材料(M)の少なくとも一つの他の表面部分(M2,M3)へ入射させて当該他の表面部分から被測定材料中へ進行する超音波を生じさせる少なくとも一つの光反射手段(2B,2C)と、各表面部分(M1〜M3)へ向けて検出レーザ光(Ld)を照射して当該各表面部分(M1〜M3)からの、検出レーザ光(Ld)の反射光に含まれる超音波変調部より各表面部分(M1〜M3)での被測定材料(M)の厚みを測定する厚み測定手段(5A〜5C,7)とを備える。
【0006】
本第1発明においては、従来のような煩雑な回転機構を使用することなく、被測定材料が高速で移動するものであってもその広い範囲の厚み分布を速やかに測定することができる。
【0007】
本第2発明では、パルス状の励起レーザ光(Le)を出力する単一のレーザ光源(3)と、励起レーザ光(Le)を複数に分割して各分割光(Le1,Le2)を被測定材料(M)の複数の表面部分(M4,M5)へ入射させてこれら表面部分から被測定材料中へ進行する超音波を生じさせる光分割手段(6)と、各表面部分(M4,M5)へ向けて検出レーザ光(Ld)を照射して当該各表面部分(M4,M5)からの、検出レーザ光(Ld)の反射光に含まれる超音波変調部より各表面部分(M4,M5)での被測定材料(M)の厚みを測定する厚み測定手段(5D,5E,7)とを備える。
【0008】
本第2発明においては、従来のような煩雑な回転機構を使用することなく、被測定材料が高速で移動するものであってもその広い範囲の厚み分布を速やかに測定することができる。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の厚み測定装置によれば、煩雑な回転機構を使用することなく、被測定材料表面の広い範囲の厚み分布を速やかに測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1には厚み測定装置1によって被測定材料たる熱間圧延材料(以下、単に圧延材という)Mの厚み分布を測定する例を示す。圧延材Mは一定幅の長尺体で図1の矢印方向へ移動しており、厚み測定装置1は圧延材Mを横切るように設けられている。厚み測定装置1内には圧延材Mを横切る方向へ間隔をおいて、複数(本実施形態では3個)の全反射ミラー2A〜2Cが圧延材Mの表面に対して所定の間隔かつ所定の角度で設けられている。そして、これら全反射ミラー2A〜2Cを挟んで一方に、コンピュータで構成される厚み演算装置7からの指令に基づいてパルス状の励起レーザ光Leを出力する光源3が全反射ミラー2Aに向けて設けてある。また、全反射ミラー2A〜2Cを挟んで他方には、励起レーザ光Leの波長域の光を吸収するフィルタ4が設けられている。光源3から出力された励起レーザ光Leは全反射ミラー2Aで反射されて下方の圧延材Mに向かい、その表面部分M1に入射して当該表面部分M1のごく僅かの材料を瞬時に蒸発飛散させ、この際の圧縮応力によって表面部分M1に超音波を生じさせる。励起レーザ光Leは上記表面部分M1で上方へ反射して全反射ミラー2Bに入射し、ここで再び下方の圧延材Mに向かって反射され、圧延材Mの他の表面部分M2に入射してこの部分に超音波を生じさせる。
【0012】
表面部分M2で上方へ反射された励起レーザ光Leは全反射ミラー2Cで反射されて圧延材のさらに他の表面部分M3に入射し、この部分に超音波を生じさせる。当該表面部分M3で上方へ反射された励起レーザ光Leはフィルタ4へ入射してここで吸収される。厚み測定装置1内には複数(本実施形態では三個)のレーザ干渉計5A〜5Cが設けてあり、これらレーザ干渉計5A〜5Cは上記厚み演算装置7に接続されている。各レーザ干渉計5A〜5Cからはそれぞれ上記各表面部分M1〜M3に向けて検出レーザ光Ldが照射されており、これら検出レーザ光Ldは上記各表面部分M1〜M3で反射されて再び上記各レーザ干渉計5A〜5C方向へ戻る。
【0013】
上記各表面部分M1〜M3に超音波を生じると検出レーザ光Ldが変調されるから、レーザ干渉計5A〜5Cでこれを抽出検出する。厚み演算装置7は抽出検出された超音波変調部より、最初に超音波が検出された時点から、当該超音波が圧延材M内を下方へ伝播して下面で反射され再び上記各表面部分M1〜M3にエコー超音波として戻るまでの時間を計測して、圧延材M内での既知の超音波の伝播速度より、各表面部分M1〜M3での圧延材Mの厚みを算出する。このようにして、煩雑な回転機構を使用することなく、高速で移動する圧延材Mの広い範囲の厚み分布を速やかに測定することができる。なお、全反射ミラー2A〜2Cとレーザ干渉計5A〜5Cの設置数を増やせば圧延材Mの厚み分布をさらに詳細に測定することができる。本実施形態において、全反射ミラー2Aを省略して、光源3からの励起レーザ光Leを直接圧延材Mの表面部分M1に向けて照射するようにしても良い。
【0014】
(第2実施形態)
図2には厚み測定装置1によって圧延材Mの厚み分布を測定する他の例を示す。圧延材Mを横切るように設けられた厚み測定装置1内にはビームスプリッター6が設けてあり、コンピュータで構成される厚み演算装置7からの指令に基づいて光源3から出力されたパルス状の励起レーザ光Leが水平方向からビームスプリッター6に入力している。励起レーザ光Leはビームスプリッター6で互いに逆方向へ向かう各分割光Le1,Le2に分割されて、圧延材Mの幅方向の異なる表面部分M4,M5に入射し、この部分に超音波を生じさせる。各表面部分M4,M5で上方へ反射された分割光Le1、Le2は、厚み測定装置1の両端部にそれぞれ設けられたフィルタ4A,4Bに入力してここで吸収される。厚み測定装置1内には複数(本実施形態では二個)のレーザ干渉計5D,5Eが設けてあり、これらレーザ干渉計5D,5Eは上記厚み演算装置7に接続されている。各厚み測定回路5D,5Eからはそれぞれ上記各表面部分M4,M5に向けて検出レーザ光Ldが照射されている。
【0015】
検出レーザ光Ldは上記各表面部分M4,M5で反射されて再び上記レーザ干渉計5D,5E方向へ戻る。各表面部分M4,M5に超音波を生じると検出レーザ光Ldが変調されるから、レーザ干渉計5D,5Eでこれを抽出検出する。厚み演算装置7は抽出検出された超音波変調部より、最初に超音波が検出された時点から、当該超音波が圧延材M内を下方へ伝播して下面で反射され再び上記各表面部分M4,M5にエコー超音波として戻るまでの時間を計測して、圧延材M内での既知の超音波の伝播速度より、各表面部分M4,M5での圧延材Mの厚みを算出する。このようにして、本実施形態によっても、煩雑な回転機構を使用することなく、高速で移動する圧延材Mの広い範囲の厚み分布を速やかに測定することができる。なお、ビームスプリッター6とレーザ干渉計5D,5Eを増設することによって圧延材Mの厚み分布をさらに詳細に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る厚み測定装置の構成を示す透視斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る厚み測定装置の構成を示す透視斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1…厚み測定装置、2B,2C…全反射ミラー(光反射手段)、3…レーザ光源、5A,5B,5C,5D,5E…レーザ干渉計(厚み測定手段)、6…ビームスプリッター(光分割手段)、7…厚み演算装置(厚み測定手段)、Ld…検出レーザ光、Le…励起レーザ光、Le1,Le2…分割光、M…被測定材料、M1,M2,M3,M4,M5…表面部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状の励起レーザ光を被測定材料の表面部分に向けて照射して当該表面部分から前記被測定材料中へ進行する超音波を生じさせる単一のレーザ光源と、前記表面部分からの励起レーザ光の反射光を再び被測定材料方向へ反射させて、測定材料の少なくとも一つの他の表面部分へ入射させて当該他の表面部分から被測定材料中へ進行する超音波を生じさせる少なくとも一つの光反射手段と、前記各表面部分へ向けて検出レーザ光を照射して当該各表面部分からの、検出レーザ光の反射光に含まれる超音波変調部より前記各表面部分での被測定材料の厚みを測定する厚み測定手段とを備える厚み測定装置。
【請求項2】
パルス状の励起レーザ光を出力する単一のレーザ光源と、励起レーザ光を複数に分割して各分割光を被測定材料の複数の表面部分へ入射させてこれら表面部分から前記被測定材料中へ進行する超音波を生じさせる光分割手段と、前記各表面部分へ向けて検出レーザ光を照射して当該各表面部分からの、前記検出レーザ光の反射光に含まれる超音波変調部より前記各表面部分での被測定材料の厚みを測定する厚み測定手段とを備える厚み測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−322126(P2007−322126A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149128(P2006−149128)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】