説明

原子層成長及び化学気相成長による薄膜形成方法

【課題】原子層成長と気相化学成長を連続して同一の反応装置に実行することにより、従来できなかった高品質膜を形成する。
【解決手段】上部室と、上部室の下側に配置され、シャワーヘッドの軸方向に見て上部室により覆われ、かつ上部室とガス連通しない下部室とを含むシャワーヘッドを使って、基板上に薄膜を形成する方法は、原子層成長(ALD)膜及び化学気相成長(CVD)膜を連続して形成するか、または熱ALD膜及びプラズマALD膜を連続して形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年12月21日に出願した米国仮特許出願第60/752,728号に基づくものであり、そこでの開示はここに参考文献として組み込む。
【0002】
本発明は半導体ウエハである被処理体を1枚ずつ成膜を行う枚葉式薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0003】
原子層成長のための薄膜形成装置としては、シャワーヘッド方式の場合には、均一なガス濃度により原料を基板表面に供給できるが、層流方式では、上流と下流とでガス濃度が変化する傾向がある。一方、シャワーヘッドでは基板表面に均一にガスを供給するために、シャワーヘッド内に原料ガスをためて、比較的小さいコンダクタンスの分散板より基板に供給することになる。このため、第一のガスを供給した後、第二のガスで残留する第一のガスを排気し、その後第三のガスを流すが、第一の残留ガスが残っていると、気相での化学反応により固形物がシャワーヘッド内部に生成される。このため、第三のガスを供給する場合には、十分に分散装置(シャワーヘッド)内部に残留ガスが残らないようにすることが必要になる。特に、低蒸気圧の原料を用いる場合には、残留ガスの排出時間が長くなり、残留し易くなる。
【0004】
また、二種以上の原料ガスにより気相化学反応により薄膜形成を行う場合には、反応性の高い二種以上のガスを別々に反応室に供給することが必要であり、一般的にポストミックス型のシャワーヘッドを用いている。米国特許出願第10/824,798号(本願出願人に譲渡され、ここに参考文献として組み込む)には、ポストミックス型のシャワーヘッドであり、かつ、それぞれのガス分散室に直接に排気バルブが連通しており、シャワープレートの分散板を通過しなくても、反応ガスが排気バルブより排出できる構造、および、それを用いた原子層成長プロセスが開示されている。
【特許文献1】米国特許出願第10/824798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子層成長プロセスの場合には、交互に原料を供給することを目的とするが、基板表面に均一に反応ガスを供給しなくても、原子層レベルで飽和すれば、それ以上に成長しないという特徴があるので、分散板のガス吐出口の面密度は一定である必要はない。しかしながら、原子層成長プロセスと気相化学反応プロセスを同じ装置で連続して行う場合には、反応ガスは基板表面になるべく一定の濃度で供給する必要がある。従って、ガス分散板の反応ガス吐出口は一定の面密度で設定することが必要となる。また、反応ガスを一定の濃度で供給するためには、シャワーヘッドのガス分散室内の圧力を反応空間よりも比較的大きくする必要がある。従って、シャワーヘッドの分散板の真空コンダクタンスは小さくなる方向である。一方、この分散板を原子層成長に用いる場合には、分散板の真空コンダクタンスが小さいので、シャワーヘッドの分散室内部より反応ガスを排出するには、より長い時間がかかることになり、原子層成長装置としては欠点となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様においては原子層成長と気相化学成長を連続して同一の反応装置に実行することにより、従来できなかった高品質膜を形成することを一つの目的としており、これを達成するための薄膜形成装置、薄膜形成方法について示す。また、ある態様によれば気相化学成長とプラズマ後処理を繰り返し行うようなプロセスにおいても同様な薄膜形成方法を適用することにより、より高い生産性で高品質の薄膜を形成することができる。連続して膜を気相化学成長により形成する場合には、不純物が含有しやすいが、プラズマALDの場合にはプラズマ処理を繰り返し行う(例えば原料供給、パージ、水素プラズマ、パージの繰り返し)ことにより、不純物が低減し(膜中の不純物は繰り返しのプラズマ処理により更に分解し排出されるのでより一層不純物は低減していく方向になる)、高品質の膜を形成することができる。
【0007】
上記目的の少なくともひとつを達成する態様において、本発明は、シャワーヘッドを使って、基板上に薄膜を形成するための方法であって、シャワーヘッドが、上部室と、上部室の下側に配置され、シャワーヘッドの軸方向に見て上部室により覆われ、かつ上部室とガス連通しない下部室とから成り、サセプタに対向するシャワーヘッドの面は、シャワーヘッドの軸方向に見て上部室及び下部室が重なるところのオーラップ領域を有し、そのオーバーラップ領域において、シャワーヘッドは下部室とガス連通することなく上部室とガス連通する第1ボア、及び上部室とガス連通することなく下部室とガス連通する第2ボアを有するところの方法であって、(i)シャワーヘッドの第1ボアを通じて、サセプタ上の基板にむけて上部室から反応空間内へ第1ガスを放出する工程と、(ii)上記工程(i)の後に、シャワーヘッドの第2ボアを通じて、基板にむけて下部室から反応空間内へ第2ガスを放出する工程と、(iii)基板上に第1膜を形成するよう工程(i)及び(ii)を繰り返す工程と、(iv)第1膜と異なる第2膜を第1膜上に形成するよう、第1ボアを通じて上部室から第3ガスを及び前記第2ボアを通じて前記下部室から第4ガスをそれぞれ放出する工程とから成る方法を与える。
【0008】
上記態様は、これに限定されないが、以下の実施例を含む。
【0009】
本発明に係る方法は、さらに、工程(i)と(ii)との間に、パージガスにより上部室をパージする工程(ia)を含む。上記において、上部室は上部室を主に排気するための排気口を具備し、当該方法はさらに、工程(ia)と(ii)との間に、排気口を通じて上部室を排気する工程(ib)を含む。
【0010】
本発明に係る方法は、さらに、工程(ii)と(iii)との間に、パージガスにより下部室をパージする工程(iia)を含む。上記において、下部室は下部室を主に排気するための排気口を具備し、当該方法はさらに、工程(iia)と(iii)との間に、排気口を通じて下部室を排気する工程(iib)を含む。
【0011】
ひとつの実施例において、工程(iv)は、さらに、反応空間へRF電力を印加する工程を含む。
【0012】
ひとつの実施例において、第1膜は熱またはプラズマ原子層成長膜より成る。第2膜は熱またはプラズマ化学気相成長膜より成る。ひとつの実施例において、第2膜は熱またはプラズマ原子層成長膜より成る。ひとつの実施例において、第1ガス及び第3ガスは同じガスであってもよい。第2ガス及び第4ガスは同じガスであってもよい。また、ひとつの実施例において、上部室はその中心に配置されたガス導入口を有し、それを通じて第1ガス及び第3ガスが上部室に供給される。下部室はその外周に配置されたガス導入口を有し、それを通じて第2ガス及び第4ガスが下部室に供給される。
【0013】
ひとつの実施例において、本発明に係る方法は、さらに、工程(i)と(ii)との間に、第2ガスへRF電力を印加する工程(iic)を含む。
【0014】
ひとつの実施例において、工程(iv)は、(iva)シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第3ガスを放出する工程と、(ivb)工程(iva)の後、シャワーヘッドの第2ボアを通じて下部室から反応空間へ基板に向けて第4ガスを放出する工程と、(ivc)第4ガスへRF電力を印加する工程と、(ivd)第1膜上に第2膜を形成するよう、工程(iva)から(ivc)を含む上記工程を繰り返す工程と、から成る。
【0015】
他の実施例において、工程(iv)は、(iva) シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第3ガスを放出する工程と、(ivb)パージガスにより上部室をパージする工程と、(ivc) シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第4ガスを放出する工程と、(ivd)第4ガスへRF電力を印加する工程と、(ive) 第1膜上に第2膜を形成するよう、工程(iva)から(ivd)を含む上記工程を繰り返す工程と、から成る。
【0016】
ひとつの実施例において、基板は、その上に第1膜が形成される絶縁層を有する。ひとつの実施例において、第1膜及び/または第2膜はルテニウムを含む。
【0017】
上記目的の少なくともひとつを達成するひとつの態様において、シャワーヘッドを使って、基板上に薄膜を形成するための方法であって、シャワーヘッドが、上部室と、上部室の下側に配置され、シャワーヘッドの軸方向に見て上部室により覆われ、かつ上部室とガス連通しない下部室とから成り、サセプタに対向するシャワーヘッドの面は、シャワーヘッドの軸方向に見て上部室及び下部室が重なるところのオーラップ領域を有し、そのオーバーラップ領域において、シャワーヘッドは下部室とガス連通することなく上部室とガス連通する第1ボア、及び上部室とガス連通することなく下部室とガス連通する第2ボアを有するところの方法は、(i)シャワーヘッドの第1ボアを通じて、上部室から反応空間内へサセプタ上の基板に向けて第1ガスを放出する工程と、(ii)シャワーヘッドの第2ボアを通じて、基板にむけて下部室から反応空間へ第2ガスを放出する工程と、(iii)基板上に第1膜を形成するよう、反応空間にRF電極を印加する工程と、(iv)基板上の第1膜の表面を処理するよう、第1ボアを通じて上部室及び第2ボアを通じて下部室の少なくともひとつから反応空間へ第3ガスを放出する工程と、から成る。
【0018】
上記態様は、これに限定されないが、以下の実施例を含む。
【0019】
当該方法は、さらに、工程(i)と(iv)との間に、パージガスにより上部室をパージする工程(ia)を含む。上記において、上部室は、上部室を主に排気するための排気口を具備し、当該方法はさらに、工程(ia)と(iv)との間に、排気口を通じて上部室を排気する工程(ib)を含む。
【0020】
本発明に係る方法は、さらに、工程(ii)と(iv)との間にパージガスにより下部室をパージする工程(iia)を含む。上記において、下部室は、下部室を主に排気するための排気口を具備し、当該方法はさらに、工程(iia)と(iv)との間に、排気口を通じて下部室を排気する工程(iib)を含む。
【0021】
ひとつの実施例において、工程(iv)は、さらに、基板の第1膜の表面を処理するよう、第3ガスを励起させる工程を含む。第3ガスの励起は熱またはプラズマにより実行される。ひとつの実施例において、工程(i)から(iv)が繰り返される。
【0022】
ひとつの実施例において、工程(iv)は、(iva)シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第3ガスを放出する工程と、(ivb)工程(iva)の後、シャワーヘッドの第2ボアを通じて下部室から反応空間へ基板に向けて第4ガスを放出する工程と、(ivc)第1膜の処理として第1膜上に第2膜を形成するよう、工程(iva)及び(ivb)を含む上記工程を繰り返す工程と、から成る。
【0023】
ひとつの実施例において、第1膜は熱またはプラズマ化学気相成長膜より成る。第2膜は熱またはプラズマ原子層成長膜より成る。ひとつの実施例において、実質的に第2膜が存在せず、第1膜の表面が表面処理に晒されてもよい。
【0024】
上記すべての実施例において、ひとつの実施例で使用された任意の構成要件は、置換が容易ではなく逆効果である場合を除き、他の実施例において相互に交換してまたは付加して使用可能である。また、2つまたはそれ以上の実施例を適当に組み合わせて使用可能である。さらに、本発明は装置及び方法に同様に応用可能である。
【0025】
本発明及び従来技術に対する利点を要約するために、本発明のある目的及び利点が説明された。もちろん、本発明の任意の特定の実施例に従って、そのすべての目的または利点が必ずしも達成されないことが理解されよう。よって、例えば、ここに教示されまたは示唆される他の目的または利点を必ずしも達成することなく、ここに教示されるようなひとつまたは複数の利点を達成または最適化する方法で、本発明を実施または実行可能であることは当業者の知るところである。
【0026】
本発明の他の態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のある態様においては、ALD(サーマル、プラズマ)とCVD(サーマル、プラズマ)の組み合わせが可能となる。これは、ALDプロセスに必要な機能とCVDに必要な機能とをあわせ持つ装置により実施することができ、該装置はCVDのためには均一ガス分散が可能な一方で複数の分散室を備えている。この場合には、分散室内のガスを頻繁に置換する必要のあるALDプロセスに適用できるようにするため、分散室に排気バルブを設置することで、ALDにもCVDにも適用可能としている。これにより、ALDとCVDの連続プロセスが可能となる。
【0028】
また、他の態様では、CVDプロセスでも頻繁にプラズマ熱処理を入れる場合のように、CVDを実施した後、短時間で反応ガスを排気して、プラズマ処理をする場合には、分散室に設置された排気バルブを使用することにより、繰り返しのスピードを上げることができる。
【0029】
なお、ある態様においては、サーマルALDで複数の分散室を使用することにより、分散室内の膜形成を防止、不純物の生成防止ができるので、サーマルALD+プラズマALDでも効果を発揮する。この場合には、プラズマは分散室内で生成されないので、プラズマALDでは分散室には膜が形成されず、従って必ずしも、複数の分散室を使用する必要はない。
【0030】
本発明は好適実施例について説明されるが、これに限定されない。
【0031】
本発明のある態様によれば、基板を載置するためのサセプタを具備する排気可能反応チャンバへ連結されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体(サセプタ)方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、第一のセクションより反応ガスAを吐出する工程、反応ガスAを停止するとともに、第一のセクションと排気側に連通する開閉バルブを開く工程、第一のセクションにパージ用ガスを導入する工程、第二のセクションより反応ガスBを吐出する工程、反応ガスBを停止するとともに、第二のセクションにパージ用ガスを導入する工程、を繰り返して第一の薄膜を基板上に形成する工程(以後、これを原子層成長工程と称する)と反応ガスCを第一のセクション、反応ガスDを第二のセクションより吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第二の薄膜を第一の薄膜上に形成する工程(以後、これを気相化学成長工程と称する)からなることを特徴とする薄膜形成方法が提供される。
【0032】
本発明の別の態様によれば、基板を載置するためのサセプタを具備する排気可能な反応チャンバへ連結されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体(サセプタ)方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクション、及び、第二のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、第一のセクションより反応ガスAを吐出する工程、反応ガスAを停止するとともに、第一のセクションと排気側に連通する開閉バルブを開く工程、第一のセクションにパージ用ガスを導入する工程、第二のセクションより反応ガスBを吐出する工程、反応ガスBを停止するとともに、第二のセクションと排気側に連通する開閉バルブを開く工程、第二のセクションにパージ用ガスを導入する工程、を繰り返して第一の薄膜を基板上に形成する工程(以後、これを原子層成長工程と称する)と反応ガスCを第一のセクション、反応ガスDを第二のセクションより吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第二の薄膜を第一の薄膜上に形成する工程(以後、これを気相化学成長工程と称する)からなることを特徴とする薄膜形成プロセス、および、薄膜形成方法が提供される。
【0033】
更には、本発明のある態様によれば、基板を載置するためのサセプタを具備する排気可能反応チャンバへ結合されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体(サセプタ)方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、反応ガスAを第一のセクション、反応ガスBを第二のセクションより所定時間の間、吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第一の薄膜を形成する工程、第一のセクショに連通する排気バルブを開き、該反応ガスAを排出し、また第二のセクションからは反応ガスBを排出し,更にパージ用ガスをそれぞれのセクションに導入する工程、および、第一セクション、もしくは、第二セクションの少なくともいずれかより所定時間の間、反応ガスCを吐出し、その後、反応ガスCを停止し、反応ガスCを排出し、更に、パージ用ガスを該セクションに導入する工程を含むことを特徴とする薄膜形成方法が提供される。
【0034】
更には、本発明のある態様によれば、基板を載置するためのサセプタを具備する排気可能反応チャンバへ結合されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体(サセプタ)方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、反応ガスAを第一のセクション、反応ガスBを第二のセクションより所定時間の間、吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第一の薄膜を形成する工程、第一のセクショに連通する排気バルブ、第二のセクションに連通する排気バルブを開き、該反応ガスA,Bを排出し,更にパージ用ガスをそれぞれのセクションに導入する工程、および、第一セクション、もしくは、第二セクションの少なくともいずれかより所定時間の間、反応ガスCを吐出し、その後、反応ガスCを停止し、第一、もしくは、第二のセクションに連通する排気バルブを開いて、反応ガスCを排出し、更に、パージ用ガスを該セクションに導入する工程を含むことを特徴とする薄膜形成方法が提供される。
【0035】
本発明のある好ましい態様においては前記した米国特許出願第10/824,798号に示す薄膜形成装置を用いることにより、従来の原子層成長プロセスにおける低い生産性を解決するためのプロセスに関するものである。但し、同様の機能を有する装置であれば特に上記の装置に限定されるものではない。
【0036】
図1(a)は本発明のある態様において用いることのできる装置の構成を示す概略図である。図1(b)は図1(a)の装置で用いることのできるガス分散ノズルの構成を示す概略図である。図2は図1(a)の装置を用いて、原子層成長を行った後に、気相化学成長を行うプロセスフローチャートの一例を示している。まず、図2に示す反応ガスAの供給工程、排気、パージ工程、反応ガスBの供給工程、排気,パージ工程を一サイクルとする原子層成長工程を所定の回数繰り返した後、反応ガスC,Dを同時に供給して、気相化学成長を所定時間行った後、薄膜形成工程を終了する。図2のバルブの動作についてまとめたものの一例が図5に示されている。本発明のある態様における特徴である、シャワーヘッドに直接連通された排気バルブ9、32を用いることにより、反応ガスのパージを極めて短くできるとともに、気相化学成長プロセスの際は、分散板のガス吐出口の孔径、孔数を最適化することにより、均一な薄膜形成が可能となる。同様に、図1(a)の装置構成を適用することにより、従来装置ではできないようなプロセスをより生産性良く達成することができる。
【0037】
本発明の別の態様を示す図3では単に生産性の改善だけでなく、膜質の改善を生産性良く実行する方法の一例を示している。気相化学反応により所定の膜厚の薄膜を形成した後、ここで用いた反応ガスをシャワーヘッドの各分散室(セクション)に連通する排気バルブを開くとともに、パージ用ガスをそれぞれに導入することにより短時間で反応ガスA,Bをパージした後、反応ガスEをいずれか一方の分散室に導入して、形成された膜の膜質の改善を行う。この際、反応ガスEは熱反応により形成されている膜に作用する場合、あるいは、反応ガスEを高周波プラズマで励起することにより活性となった反応ガスEが膜に作用する場合、あるいは、紫外線を照射しながら反応ガスを薄膜に作用させることにより、膜に作用する場合などがある。これらの処理を行った後に、反応ガスEはそれを導入した分散室から、シャワーヘッドに連通する排気バルブを介して排出され、更に、パージ用ガスを該分散室に導入することにより短時間で排出される。これらの薄膜形成と膜質改善処理を一サイクルとして、これを繰り返し行うことにより、効率よく膜質を改善することができるので、生産性を大幅にあげることができる。
【0038】
上記の方法によれば、例えば、サイクルを30回繰り返す場合には、薄膜形成工程を3秒とする場合にパージ時間が1秒で終了するか、10秒で終わるか大幅な生産性の違いとなる。本発明の方法ではシャワーヘッドの各分散室に連通する排気バルブのコンダクタンスはシャワープレートである分散板よりも数倍から約一桁(例えば2−100倍、5−30倍)大きく設定されており、更に、パージ用ガスとしては、反応ガスよりも数倍(例えば2−100倍、5−30倍)の大きさの流量を供給することにより、従来は10秒のパージ時間が必要であった場合には、これを1秒程度にすることができる。従って、図3に示すサイクルは本発明の薄膜形成装置を用いれば、合理的な生産性を達成することができる。
【0039】
ここまでは、反応ガスA,B,C,D,Eを用いて説明してきたが、図2、図3の実施例においては、具体的な反応ガスの例を挙げて説明する。例えば、図2に示すある態様の場合、WN膜形成においては、AガスはWF6、BガスはNH3,であり、CガスはWF6、DでガスはNH3であり、図3に示すある態様の場合には、EガスはN2/H2,あるいは、NH3であり、これにRFプラズマを励起する。更に、TiN膜の場合には例えばAガスはTiCl4であり、BガスはNH3,であり、CガスはTiCl4、DガスはNH3であることも可能であり、EガスはNH3ガス、あるいは、N2/H2ガスであり、RFプラズマを印加する場合がある。Ru膜形成の場合には、AガスはRuの有機金属原料であり、BガスはNH3ガスでありRFプラズマを印加する。又、ある態様では、CガスはRuの有機金属原料であり、Dガスは酸素である。また、EガスとしてはO2ガスとすることができる。Ruの有機金属原料としては、例えば、米国特許公開第2006/0177601A1に開示されている環状であるシクロペンタジエニル、例えば、シクロペンタジエニル(Cp), メチルシクロペンタジエニル(MeCp),エチルシクロペンタジエニル(EtCp)、又はイソプロピルシクロペンタジエニル(i-PrCp)が配位したRu原料や、本願と同じ出願人による米国特許出願第11/557,891号に開示のRu(XaXb)の構造でXaもしくはXbの一方が少なくとも非環状ペンタジエニルが配位した分子構造を有するRu原料等(上記公報及び出願の開示はここに参考文献として組み込まれる)を使うことができる。
【0040】
以上のように、図2、図3のプロセスチャートに示すプロセスを良好な生産性により各種の薄膜材料の形成に適用することが可能となる。図2、図3にかかる処理条件の例を以下に示すが、これらの条件は本発明を制限する意図ではない。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
本発明においては、以上の態様を含み下記の態様およびその組み合わせを含む。これら態様は本発明を制限するものではない。また、各プロセス条件は上記の表1、表2の組み合わせにより実施することができる。
【0044】
(1)第一膜(ALD)+第二膜(CVD)
(2)上記(1)において、第一膜はサーマルALD
(3)上記(1)において、第一膜はプラズマALD
(4)上記(1)において、第二膜はサーマルCVD
(5)上記(1)において、第二膜はプラズマCVD
(6)第一膜(CVD)+表面処理
(7)上記(6)において、第一膜はサーマルCVD
(8)上記(6)において、第一膜はプラズマCVD
(9)上記(6)において、「第一膜(CVD)+表面処理」を繰り返す
(10)上記(6)において、表面処理は活性ガスによる処理
(11)上記(6)において、表面処理はALD成膜処理
(12)第一膜(ALD)+第二膜(ALD)
(13)上記(12)において、第一膜はサーマルALD
(14)上記(12)において、第一膜はプラズマALD
(15)上記(12)において、第二膜はサーマルALD
(16)上記(12)において、第二膜はプラズマALD
【0045】
図2は、上記の(2)+(5)の組み合わせ、図3は上記の(7)に該当する。また、上記において第一膜、第二膜のそれぞれの成膜はガス連通性のない第一分散室と第二分散室を使って実施することができる。また、(13)+(16)の組み合わせにおいて(16)のプラズマALD用のプラズマ用のガスは第一分散室か第二分散室の少なくともいずれか一方から吐出することで行うことができる。また、上記(6)において表面処理用のガスは第一分散室か第二分散室の少なくともいずれか一方から吐出することで行うことができる。更に、上記(1)、(6)、(12)において第一分散室から排気する態様と、第二分散室からも更に排気する態様がある。
【0046】
以下、図を参照して、本発明のある態様に掛かる薄膜形成装置の構成を説明するが、これら図は本発明を制限するものではない。
【0047】
図1の薄膜形成装置においては被処理体である半導体基板を真空搬送室(図示せず)より、反応チャンバ1にゲートバルブ16より搬送し、薄膜形成プロセスをこの反応チャンバ1で実施することができる。搬送された基板14は加熱台2に設置され、バルブ27より分子ポンプ29(TMP)により排気することができる(真空ポンプ30により排気することもできるようにバルブ28も設けられている)。この後、基板加熱台2はベローズ15を利用して、シャワープレートから最適な距離となるまで、上方に上昇させる。この結果、シャワープレートより供給された反応ガスは基板14の表面に供給された後、排気ダクト3を経由して排出されるように設計されている。この際、不活性ガスをバルブ31を開き、供給することにより、シャワープレート4より供給された反応ガスがベローズ15のある搬送側に拡散することを防止することができる。
【0048】
この反応チャンバは排気ダクト3、シャワープレート4、上部リッド13、を積層して構成されており、シャワープレート4と上部リッド13の間に、ガス導入管10に連通して、ガス分散ノズル11(図1(b)に構造の模式図を示す)、更に、ガス分散ガイド8がある。更に、ガス分散ガイドに沿って、分散部を排気する排気バルブ9が接続されている。また、シャワープレート4には、ガス導入部5、ガス導入バルブ24、ガス排気用のバルブ32が接続されている。また、パージ用の不活性ガス導入用バルブ23が接続されている。また、ガス導入管10にはガス導入バルブ21、パージ用の不活性ガス導入バルブ20が接続されている。原料ガスはバルブ21より導入される。また、大流量の不活性ガスを導入するためのバルブ22が形成されている。ガス導入管10にバルブ21を介して導入されたガスAはガス分散ノズル11により分散されて、ガス分散ガイド8に沿って流れた後、シャワープレート4を貫通するガス吐出孔12を貫通して、基板14上に供給される。また、ガスバルブ24より供給されたガスBはシャワープレート4内に設けられたガス導入部5を経由して、ガス分散室7内に拡散し、ガス吐出孔6より基板14上に供給される。また、基板14上に供給されたガスは排気ダクト3を経由して、排気バルブ25、圧力制御装置(APC)26を経由して、真空ポンプ30により排気される。一方、反応ガスのパージの際には、ガスバルブ20、及び、22より不活性ガスを導入し、バルブ9を開き、残留するガスAを排気バルブ9より排気する。この際に、ガス吐出孔12を経由して、排気ダクト3からも排気されるが、排気コンダクタンスはバルブ9からの排気は一桁以上(例えば2−100倍、好ましくは5−30倍)高くなるように設計されているので、ほとんどの残留ガスは排気バルブ9を経由して排出される。また、ガスバルブ24より供給されたガスBをパージする場合には、同様に、バルブ23より不活性ガスを導入し(大量に不活性ガスを導入するためバルブ40も設けられている)、排気バルブ32を開き、残留ガスを排出する。この際、ガス吐出孔6より排気ダクト3を経由して、排気されるガスもあるが、ガス吐出孔6に比較して、ガス排出のための排出バルブ32のコンダクタンスは大きい(例えば2−100倍、好ましくは5−30倍)ので、殆どは排気バルブ32を経由して排出される。
【0049】
以上の機能を用いることにより、反応ガスA,Bを交互に供給して行う原子層成長プロセス、もしくは、レイヤーバイレイヤーの薄膜形成プロセスに最適なプロセス装置を供給することができる。
【0050】
更に、ガスA,Bを同時に供給することにより、気相化学成長を行うことができる。この場合にバルブ21より供給された原料Aはガス吐出孔12より基板表面に供給され、バルブ24より供給された原料Bはガス吐出孔6より基板表面に供給され、基板表面でガスAとガスBが反応して、気相化学反応により薄膜が形成される。
【0051】
図2は本発明のある態様における薄膜形成プロセスの手順を示しており、まず、所定の回数だけ原子層成長を行った後、気相化学反応を行う二段階のプロセスを実行することも可能であり、また、図3は気相化学反応を実行した後、薄膜に何らかの処理を加える工程を行い、この二段階のプロセスを繰り返し実行するプロセスを示している。
【0052】
図5は図1の装置を用いて図2の薄膜形成プロセスを実行する場合のガス導入のシーケンスの一例を示したものである。反応ガスA,Bを用いて原子層成長を行い、更に、反応ガスA,Bを用いて気相化学成長を行う場合のプロセスステップを示す。基本的なシーケンスとして、ガスA,Bを交互に導入する場合の代表的なバルブ動作を示している。バルブ20,21は不活性ガス、あるいは、N2ガス用、および、反応ガスA用である。バルブ22は反応ガスをシャワーヘッド内よりパージするための大流量のパージガスであり、バルブ23,24は不活性ガス、あるいは、N2用のバルブ、および、反応ガスB用のバルブである。バルブ25は反応室の排気バルブであり、バルブ9、バルブ32はそれぞれ反応ガスA,Bが導入されるシャワーヘッドの分散室にそれぞれ接続する排気バルブである。
【0053】
Step1では反応ガスA,Bはシャワーヘッドには供給されずに、N2ガスのみが導入されており、排気バルブ25より排気されている。Step2では反応ガスAがシャワーヘッドに供給される。Step3では反応ガスAの供給を停止するとともに、バルブ9を開き、シャワーヘッド内の反応ガスAを迅速に排出する。Step4ではバルブ22より大流量のパージガスを導入し、更に、残留する反応ガスAを更に排出する。Step5では、大流量のパージガスを停止させた後、排気する。Step6では反応ガスBをシャワーヘッドに供給する。Step7では反応ガスBの供給を停止するとともに、バルブ32を開き、シャワーヘッド内の反応ガスBを迅速に排出する。Step 8ではバルブ40を開き、更にパージガスを導入し残留する反応ガスBを更に排出する。このStep1-Step8を所定の回数繰り返した後、Step9では排気した状態で、Step10では反応ガスAと反応ガスBを同時に供給して、気相化学反応を行う。Step11ではバルブ9,32よりシャワーヘッド内の反応ガスを排出し、Steo12ではパージ用ガスをシャワーヘッドのそれぞれの分散室に供給して、反応ガスをパージする。Step13ではパージ用ガスを停止し、シャワーヘッド排気バルブを閉じる。これらのシーケンスにより、例えば、WN膜の場合には20サイクルの原子層成長方法によりで2nm 形成した後、連続して、CVD法により18nm形成するが、CVDでの成長速度が速いので、生産性を高めることができる。
【0054】
図6は図1の装置を用いて、図3に示すプロセスフローを行うためのバルブ操作の一例について示している。Step1ではプロセス開始前の状態であり、Step2では反応ガスA,Bが同時にシャワーヘッドに供給され、気相化学成長による薄膜形成が行われる。Step3は反応ガスが停止されて、シャワーヘッド排気バルブが開き、反応ガスを排出する。Step4ではパージ用ガスが導入され、反応ガスを完全にパージする。Step5でパージ用ガスを停止し、排気バルブを閉める。次に、Step6では反応ガスBのみをシャワーヘッドに供給し、Step7ではRFプラズマを印加し、所定時間に薄膜の改質処理を行う。Step6では異なる反応ガスEを導入することもできる。この改質処理としては、単にガス処理だけ、あるいは、高周波プラズマ、紫外線照射などの最適な処理を行う。次に、Step8では反応ガスB,もしくは、Eを停止して、シャワーヘッドの排出バルブを開き、反応ガスを排出し、更に、パージ用ガスを導入し、完全に排出する。Step9ではStep1の状態にもどる。これらのStep1-9のプロセスを繰り返すことにより、極めて高品質の薄膜を生産性良く形成することができる。
【0055】
この開示において条件及び/または構造が特定されないが、当業者は、通常の技術的創作能力の範囲内で、本発明から、その条件及び/または構造を容易に設定可能である。
【0056】
以下では、具体的な実施例により、本発明の効果について示す。該実施例は本発明を制限するものではない。
【0057】
(実施例1)
ここでは、図1に示す構造のプロセス装置により、具体的なプロセスを実行した実施例について示す。ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムRu(C5H4C2H5)2(以下Ru(EtCp)2)とアンモニア(以下、NH3)によりRu膜を形成するプロセスについて示す。シリコン基板を真空搬送室(図示せず)より反応チャンバ1に搬送した後、ターボポンプ29により残留水分、酸素などを十分に排気する。次に、基板加熱台2の上下機構により、所定の位置に基板が移動する。この際、シャワーヘッドプレート4と基板表面とのギャップは20−8mmの範囲で設定されている。本実施例では20mmでプロセスを実施した。
【0058】
本実施例では図5のプロセスのシーケンスに従った。反応チャンバは排気ダクト3より排気される。この際、基板加熱台2と排気ダクト3の間隔を狭めて、反応ガスは殆ど、排気ダクト3より排気される。基板加熱台2と排気ダクト3を接触させて閉じることもできる。ただし、本実施例では、基板加熱台2と排気ダクト3の間隔を狭め(稼動時に接触しない間隔、例えば1mm−3mm程度のクリアランス)、かつ、搬送スペースの圧力を窒素ガスの導入量の制御による圧力制御により制御することにより、基板上の圧力より10−100%、好ましくは10−20%高く差圧制御(例えば反応領域が1Torrの場合には、1.1-1.2Torrに制御)し反応ガスが搬送室側に入る量を抑制した。基板加熱台2は320度に維持した。
【0059】
図5に示すように、Step1はバルブ20、バルブ23よりArガスを500sccm供給する。プロセス開始時には、約30秒程度この状態で排気した後、プロセスを開始した。バルブ21を開き、Ru(EtCp)2ガスを所定時間の間供給した。通常は1秒程度原料を供給する。次に、step3ではバルブ21を閉じると同時に、バルブ9を最大の開度としてシャワーヘッド側からの排気を行った。ほぼ同時にバルブ22を開き約2000sccmのパージガスを導入した。1秒間供給し、ガス導入管10、から、ガス分散ノズル11、ガス分散ガイド8のあるガス分散部内より残留するRu(EtCp)2ガスを除き、バルブ22を閉じて、バルブ9を閉じた。次のstepでは、バルブ24を開き、NH3ガスを1000sccm導入した。
【0060】
通常、1秒供給し、RF導入端子33に13.56MHzのRFプラズマを印加した。パワーは200-1000W の間で最適なパワーを用いた。RF印加を停止し、バルブ24を閉じ、ほぼ同時にバルブ32を開き、分散部7内部を排気した。ほぼ同時にバルブ23からのArガス流量を2000sccmまで増加させて、分散部7をよりはやく排気した。次のstepでは、再度、最初のRu(EtCp)2ガスの導入Stepにもどりこれを目標の膜厚に応じて、所定の回数繰り返すことにより、膜を形成することができた。なお、Ru膜の場合には1サイクル当たりの膜厚は0.2オングストロームから0.3オングストロームである。
【0061】
次に、Ru(EtCp)2ガスをバルブ21より供給(0.1−100sccm、好ましくは1−10sccm)し、酸素をバルブ24より供給(10-50sccm)することにより、NH3プラズマとRu(EtCp)2の供給による原子層成長により形成したRu膜を核として、気相化学成長によりRu膜を更に形成した。即ち、Ru(EtCp)2をバルブ21より供給し、酸素ガスをバルブ24より供給が、酸素ガスと同時にバルブ40より最適な流量の窒素ガスを導入し、酸素ガスを希釈することにより、酸素分圧を最適な値(酸素分圧は全圧の1-5%程度)に制御した。通常は、酸素流量30sccmに対して、窒素流量は1200sccmを供給する。Ru(EtCp)2と酸素ガスはシャワーヘッド内では接触することはないので、極めて反応性が高いものの、反応はシャワーヘッドと基板間において起こり、通常の気相化学成長によりRu膜が堆積する。所定時間の間、Ru膜を形成した後、バルブ21、バルブ24を閉じて、バルブ9, 32を開き、シャワーヘッド内を排気するとともに、パージガスをそれぞれ1000-2000sccmバルブ23,22 より供給することで、更に、反応ガスを速やかにパージした。この工程の後、リアクターへのガス供給を停止して、真空排気し、プロセスを終了して、搬送工程に入る。本プロセスによれば、原子層成長により約1〜2nmの極薄のRu膜を形成した後、成長速度の速い気相化学成長法により5〜10nmのRu膜を形成することができた。320度での成長速度は約10nm/minであり、原子層成長では0.4nm/minであり、約25倍の成長速度を得ることができた。また、気相化学成長では酸素ガスを用いてRu膜を形成するが、原子層成長ではNH3ガスによるプラズマという還元性雰囲気でRu膜を形成することができる。従って、下地の金属を酸化させずに、Ru膜を形成した後、酸素ガスを用いて短時間で所定の膜厚のRu膜を得ることが可能となる。原子層成長と気相化学成長の工程を繰り返すことも可能である。例えば、原子層成長を実施した後、気相成長を実施し、更に原子層成長を行うこともできる。この目的としては平滑なRu膜は原子層成長により形成されるので、気相化学成長によるRu膜の両側に原子層成長によるRu膜ではさむことにより、より平滑表面のあるRu膜を形成することができる。
【0062】
本実施例では、ガス吐出口12は直径1mmで847ヶからなっており、プレートの厚みは30mmである。また、ガス吐出口6は直径0.5mmの穴系で847ヶよりなっており、厚みは10mmである。これに対して、排気バルブのコンダクタンスは直径40mmの排気ダクトより排気する。この場合に、排気バルブを用いない場合には、シャワーヘッドプレートのみから、Ru(EtCp)2原料ガスをパージすると3から10秒程度の長時間のパージが必要であるが、排気バルブ9を用いることにより、約4倍以上のコンダクタンスでパージが可能であり、パージ時間は1秒以下に短縮することができる。同様に、NH3やO2のガスが導入される部分のパージも同様に、極めて短時間にパージが可能である。下部ガス分散室7については、比較的パージしやすいガスを導入するので、ガス種によっては排気バルブ32を設けずに、シャワープレートのガス吐出孔6よりパージを行うこともできる。
【0063】
本実施例の薄膜形成装置によれば、シャワーヘッドに設置した排気バルブにより、Ru(EtCp)2および、NH3、O2を極めて効率よく排出することができるとともに、また、ポストミックス構造としたことにより、シャワーヘッド内での成膜も抑制することができ、極めて生産性良くRu膜を形成することができた。この効果は、原料が例えば、WF6とNH3とか、WF6とTEB(テトラエチルボロン)とNH3とかであっても、同様な効果がえられる。特に、WF6とTEBとNH3の場合には、TEBとNH3を一方のシャワーヘッドから導入することにより、同様に、WF6とNH3の反応を抑制しながら、原子層成長を行うことも、また、気相化学成長によるWN膜、あるいは、WNC膜を形成することもできる。図4(a)、図4(b)は本実施例に用いた面密度一定のガス吐出口を有するポストミックス型シャワーヘッドである。Ru(EtCp)2原料はバルブ21から供給され、図1(a)に示すシャワーヘッド分散板状に導入され、吐出口12より基板側に供給される。同様に、NH3ガスあるいは、O2ガスはバルブ24より供給され、下部分散室7に供給されて、吐出口6より基板表面に供給される。このシャワープレートではガス吐出口12はピッチ9.3mmで直径1mmで900ヶからなっており、プレートの厚みは30mmである。また、ガス吐出口6はピッチ9.3mmであり直径0.5mmの穴系で900ヶよりなっており、厚みは10mmである。これに対して、排気バルブのコンダクタンスは直径40 mmの排気ダクトより排気する。この場合に、排気バルブを用いない場合には、シャワーヘッドプレートのみから、原料ガスをパージすると約4倍以上のパージ時間が必要となる。図4(a)、図4(b)ではシャワープレートへのNH3ガス、O2ガスの導入はシャワープレートのエッジ側より導入したが、シャワープレートの中心よりガスを導入するような設計も可能である。
【0064】
(実施例2)
ここでは、Taの有機金属原料であるターシャリアミルイミドトリス(ジメチルアミド)タンタル:TaN(C4H9)(NC2H6)3とNH3を用いた窒化タンタル膜形成プロセスについて示す。本実施例で用いた装置は、図1(a)に示したもので、33で示すRFフィードスルーを使って、シャワープレート4にRFを印加する。この場合は基板加熱台はアースとなっており、シャワープレート側にRFが印加される。シリコン基板を真空搬送室(図示せず)より反応チャンバ1に搬送した後、ターボポンプ7により残留水分、酸素などを十分に。排気する。次に、基板加熱台2の上下機構により、所定の位置に基板が移動する。この際、分散板4と基板表面とのギャップは8−20mmの範囲で設定されている。本実施例では20mmでプロセスを実施した。
【0065】
図6はプロセスのシーケンスの一例を示している。この実施例はTaN膜の形成とTaN膜のプラズマNH3処理による後処理工程からなっており、これを繰り返すことにより低抵抗のTaN膜を形成する方法について示している。
【0066】
図6に示すように、Step1はバルブ20、バルブ23よりArガスを500sccm供給する。プロセス開始時には、約30秒程度この状態で排気した後、プロセスを開始した。バルブ21、バルブ24を開き、TaMOガス、NH3ガスを所定時間の間供給した。それぞれのガスは基板表面にガス吐出口13,6より供給されるのでシャワーヘッド内でガスが接触することはなく、基板表面にて気相化学反応による堆積が進む。所定時間のプロセスを行った後、バルブ21,24を閉じ、排気バルブ9、32を開くとともに、バルブ22、40よりパージ用に窒素ガスを導入して、反応ガスを排出した。この後、バルブ22、40を閉じた後、排気バルブ9、32を閉じる。次に、NH3ガスをバルブ24より及び導入し、RFプラズマを印加してNH3プラズマを生成し、TaN膜をプラズマによる後処理を行った。これにより、TaN膜中に残存する不純物であるハイドロカーボンが除去される。次に、RFプラズマを停止し、バルブ24を閉じ、バルブ32を開き、NH3ガスを排出した。この際、バルブ40を開き、パージ用の窒素ガスを導入した。この後、バルブ32、40を閉じた。上記のTaN膜の堆積とNH3プラズマ処理工程を所定の回数だけ繰り返すことにより、低抵抗なTaN膜(1000mWcm程度)を得ることができた。所定の回数の処理を終了した後、すべてのガスバルブを停止して、真空排気して搬送工程に入る。本実施例のプロセスでは一回でTaN膜を形成した場合に比較して、10回に分割した場合には抵抗率は20-50%低い値が得られており、膜中の不純物が減少したものと推測される。
【0067】
(実施例3:仮想実施例)
本実施例では、図1(a)の装置を用いて、ポアのある低誘電率絶縁膜であるSiOC膜上にCVD反応もしくは、サーマルALDによるプロセスでメタルポアシーリング層を形成した後、プラズマALDによりバリアメタルを形成する例を示している。
【0068】
まず、Taimata(ターシャリアミルイミドトリドー(ジメチルアミド)タンタル)とNH3ガスを別々のシャワーヘッドの分散室より同時に供給する。この際、供給方法は同時に所定時間、それぞれの原料を同時に連続的に供給する場合と、供給時間と供給を止めて排気する時間をそれぞれ、所定の時間として、これを繰り返す場合とがある。後者の場合のプロセス時間を下記の表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
上記で、Taimataは上部のガス導入配管10に供給される(工程1)。また、NH3ガスは下部ガス分散室7に供給される(工程1)。また、それぞれのガスを5秒流した後、それぞれの分散室をアルゴンでパージしながら真空排気する(工程2)。このサイクルを1回以上、数回(2回、あるいは3回以上)繰り返しサーマルALDによる第一のTaNC膜を形成する。
【0071】
次に表4のプロセス条件により第二のTaNC膜を第一のTaNC膜上に形勢する。即ち、シャワーヘッドの第一の分散室にTaimataを供給(工程1)した後、Arガスを導入してパージ(工程2)した後、次に水素を第一の分散室あるいは第二の分散室の少なくともいずれかに水素を導入し水素プラズマを生成させ(工程3)、続いてArガスによりパージし(工程4)、これを所定回数(必要な膜厚を形成するために必要なサイクル数であり、例えばサイクル毎に0.3オングストローム成長する場合であって30オングストロームの膜厚にする場合は約100回)繰り返す方法により、プラズマALDにより第二のTaNC膜を形成する。通常、1−4nm厚に設定する場合は、30−150回程度の繰り返しとなる。
【0072】
【表4】

【0073】
サーマルALDによる第一のTaNC膜(表3)は1ミクロン程度のポアのある低誘電率膜のポアに拡散することなく、TaNC膜を形成しやすい。第一のTaNC膜はプラズマを用いないので、低誘電率絶縁膜を損傷することなく、TaNC膜を表面に形成することができるとともに、接着性も良好である。しかし、抵抗率は1000-3000μΩcmと比較的高い。一方、表4のプラズマを用いた第二のTaNC膜の場合(プラズマ原子層成長)でも、ポアのなかにTaNC膜が入り込むことなく、TaNC膜を形成でき、低抵抗のTaNC膜を形成できるものの、この第二のTaNC膜を低誘電率膜の表面に直接形成すると該低誘電率膜表面を損傷する可能性がある。従って、本実施例ではプラズマを使わないサーマルALDによる第一のTaNC膜を低誘電率膜上に形成した後に、プラズマALDによる第二のTaNC膜を形成することで、低誘電率膜表面を損傷することなく抵抗率が200-1000μΩcm程度(好ましくは300−400μΩcm程度)のTaNC膜を形成することができる。この連続したプロセスを用いることにより、次世代の高速ロジック用の配線プロセスを容易に形成することが可能である。
【0074】
また、本実施例の方法を用いることにより、ポアサイズ1ミクロン程度の低誘電率絶縁膜上に接着性良く、バリアメタルを連続して同一チャンバで実施することができる。
【0075】
なお、表4は分散室が上下に分離したシャワーヘッドを使った態様で、分散室上(第一分散室)には金属原料が流れ内部には金属原料が吸着しており、ここを水素が通過すると内部に膜が形成されるので、水素は分散室下(第二分散室)に流すことにより分散室内部での膜の形成を防止することが望ましいが、金属原料によっては単に水素と接触するだけでは反応しないので、その場合には単一の分散室で処理することもできる。
【0076】
以上説明したように、本発明のある態様によれば、均一に基板表面に二種のガス供給が可能なポストミックス型のシャワーヘッドを用い、シャワーヘッドの分散室に排気用のバルブを設置したことにより、短時間のパージが必要な原子層成長プロセスを達成すると同時、ポストミックス型シャワーヘッドから二種の反応性ガスを供給することにより、気相化学成長を行うことが可能である。また、ある態様によれば、それぞれのガス分散室に専用の排気ポートと高速で開閉するバルブもしくは、コンダクタンス可変可能なバルブを設置することにより、1000msec〜100msecの高速で残留ガスのパージを完全に達成できる。このため、従来では原子層成長プロセスと気相化学反応プロセスを繰り返すとか、あるいは、気相化学成長とプラズマ熱処理を10回とか100回繰り返すようなプロセスは実用的とは考えられなかったが、本発明のある態様による薄膜形成プロセスでは、極めて容易にシャワーヘッド内の反応ガスの置換を行うことが可能であるので、これにより、これらのプロセスを実用的なものとすることができる。更に、副次的には、原子層成長においても、パーティクルを低減できる。また、一方のガスに高周波を印加した時のみ、化学的に活性となるような反応では、プラズマを停止することにより、反応は停止するので、パージをする必要はなく、この場合には、一方の金属原料ガスが導入される分散室にのみ、専用の排気口、排気バルブを設置するだけで、極めて効率良く薄膜を形成することができる。シャワーヘッドの分散室にはそれぞれ排気バルブを設置するのが、望ましいが、金属原料以外の原料の場合には、必ずしも、分散室に排気バルブを設置しなくても、分散室の容積が小さく、パージ量を多くすれば、短時間でパージすることも可能である。ただし、すべての分散室に専用の排気用バルブを設置できれば、最も効率よく反応ガスを排出できるのはもちろんである。
【0077】
本発明は、上記実施例以外に以下の実施例を含む。
【0078】
1)基板を載置するための支持体を具備する排気可能反応チャンバへ連結されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、第一のセクションより反応ガスAを吐出する工程、反応ガスAを停止するとともに、第一のセクションと排気側に連通する開閉バルブを開く工程、第一のセクションにパージ用ガスを導入する工程、第二のセクションより反応ガスBを吐出する工程、反応ガスBを停止するとともに、第二のセクションにパージ用ガスを導入する工程、を繰り返して第一の薄膜を基板上に形成する工程(原子層成長工程)と反応ガスCを第一のセクション、反応ガスDを第二のセクションより吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第二の薄膜を第一の薄膜上に形成する工程(気相化学成長工程)からなることを特徴とする薄膜形成方法。
【0079】
2)基板を載置するための支持体を具備する排気可能反応チャンバへ連結されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクション、及び、第二のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、第一のセクションより反応ガスAを吐出する工程、反応ガスAを停止するとともに、第一のセクションと排気側に連通する開閉バルブを開く工程、第一のセクションにパージ用ガスを導入する工程、第二のセクションより反応ガスBを吐出する工程、反応ガスBを停止するとともに、第二のセクションと排気側に連通する開閉バルブを開く工程、第二のセクションにパージ用ガスを導入する工程、を繰り返して第一の薄膜を基板上に形成する工程(原子層成長工程)と反応ガスCを第一のセクション、反応ガスDを第二のセクションより吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第二の薄膜を形成する工程(気相化学成長工程)からなることを特徴とする薄膜形成方法。
【0080】
3)上記(1),(2)のいずれかにおいて、該気相化学成長を行った後、該原子層成長を行うことを特徴とする薄膜形成方法。
【0081】
4)上記(1)、(2)のいずれかにおいて、該原子層成長を行った後に、該気相化学成長を行うことを特徴とする薄膜形成方法。
【0082】
5)上記(1),(2),(3),(4)のいずれかにおいて、反応ガスAと反応ガスCは同一であることを特徴とする薄膜形成方法。
【0083】
6)上記(1),(2),(3),(4),(5)のいずれかにおいて、反応ガスBと反応ガスDは同一であることを特徴とする薄膜形成方法。
【0084】
7)上記(1),(2),(3),(4),(5),(6)のいずれかにおいて、少なくとも該化学気相成長あるいは該原子層成長工程の後に、形成された薄膜を後処理する工程を含み、少なくとも、1回以上、これらの工程を繰り返すことを特徴とする薄膜形成方法。
【0085】
8)上記(7)において、該形成された薄膜を後処理する工程は、熱処理であること、もしくは、高周波を印加したプラズマ処理であること、もしくは、光を照射する処理であること、もしくは、活性化されたガスによる処理であることのいずれかであることを特徴とする薄膜形成方法。
【0086】
9)上記(1)〜(8)のいずれかにおいて、該シャワーヘッドのそれぞれのセクションからのガスの吐出口が少なくとも、基板よりも大きな面積に渡って、一定の面密度で配置されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【0087】
10)上記(1)〜(9)のいずれかにおいて、第一セクションへの反応ガスの導入は第一セクションの中心より導入することを特徴とする薄膜形成方法。
【0088】
11)上記(1)〜(9)のいずれかにおいて、第二セクションへの反応ガスの導入は第二セクションの部より導入することを特徴とする薄膜形成方法。
【0089】
12)基板を載置するための支持体を具備する排気可能反応チャンバへ連結されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、反応ガスAを第一のセクション、反応ガスBを第二のセクションより所定時間の間、吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第一の薄膜を形成する工程、第一のセクショに連通する排気バルブを開き、該反応ガスAを排出し、第二のセクションより反応ガスBを排出し,更にパージ用ガスを導入する工程、および、第一セクション、もしくは、第二セクションのいずれかより所定時間の間、反応ガスCを吐出し、その後、反応ガスCを停止し、反応ガスCを排出し、更に、パージ用ガスを該セクションに導入する工程を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【0090】
13)基板を載置するための支持体を具備する排気可能反応チャンバへ結合されるよう構成されたガス供給装置であって、ヘッド表面を通じてチャンバ内にガスを導入するためのガス分散ヘッドであって、支持体方向へヘッド表面を通じてガスを吐出するための第一セクションと、支持体方向へヘッド表面を通じてガス吐出するための第二セクションとから成り、前記第一及び第二のセクションはガス分散ヘッド内部で互いにガス連通性がないように分離積層され、第一のセクションがヘッド表面を通過することなく対応するセクション内部に存在するガスをそこからパージするための排気システムと結合されているところのガス分散ヘッドを有する薄膜形成装置を用いて、薄膜形成の過程として、反応ガスAを第一のセクション、反応ガスBを第二のセクションより所定時間の間、吐出して、該基板表面にて気相化学成長をさせることにより第一の薄膜を形成する工程、第一のセクショに連通する排気バルブ、第二のセクションに連通する排気バルブを開き、該反応ガスA,Bを排出し,更にパージ用ガスをそれぞれのセクションに導入する工程、および、第一セクション、もしくは、第二セクションのいずれかより所定時間の間、反応ガスCを吐出し、その後、反応ガスCを停止し、第一、もしくは、第二のセクションに連通する排気バルブを開いて、反応ガスを排出し、更に、パージ用ガスを該セクションに導入する工程を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【0091】
14)上記(12),(13)のいずれかにおいて、該反応ガスCを吐出する所定時間の内に、高周波プラズマを生成させることを特徴とする薄膜形成方法。
【0092】
15)上記(12),(13)のいずれかにおいて、反応ガスCが反応ガスBと同一ガスであることを特徴とする薄膜形成方法。
【0093】
16)上記(12),(13),(14),(15)のいずれかにおいて、第一の薄膜を形成する工程と、反応ガスCを吐出する工程を複数回繰り返すことを特徴とする薄膜形成方法。
【0094】
本発明の思想から離れることなく、さまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の態様を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1(a)は、本発明のある態様における薄膜形成プロセスに用いた装置の断面構造模式図を示している。図1(b)は該装置において用いることのできる分散ノズルの斜視模式図を示している。
【図2】図2は、本発明のある態様における薄膜形成プロセスフローチャートを示している。
【図3】図3は、本発明のある態様における薄膜形成プロセスフローチャートを示している。
【図4A】図4(a)は、本発明のある態様における薄膜形成プロセスに用いたシャワープレート(ポストミックス型シャワーヘッド)を示した一部断面斜視図である。
【図4B】図4(b)は、本発明のある態様における薄膜形成プロセスに用いたシャワープレート(ポストミックス型シャワーヘッド)を示した断面図である。
【図5】図5は図1に示す構造の反応装置を用い、図2のプロセスフローチャートを実行した場合のプロセスのバルブ動作を一例を示している。
【図6】図6は図1に示す構造の反応装置を用い、図3のプロセスフローチャートを実行した場合のプロセスのバルブ動作の一例を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーヘッドを使って、基板上に薄膜を形成するための方法であって、前記シャワーヘッドが、上部室と、前記上部室の下側に配置され、シャワーヘッドの軸方向に見て前記上部室により覆われ、かつ前記上部室とガス連通しない下部室とから成り、サセプタに対向する前記シャワーヘッドの面は、シャワーヘッドの軸方向に見て前記上部室及び前記下部室が重なるところのオーラップ領域を有し、そのオーバーラップ領域において、シャワーヘッドは下部室とガス連通することなく上部室とガス連通する第1ボア、及び上部室とガス連通することなく下部室とガス連通する第2ボアを有するところの方法であって、
(i)前記シャワーヘッドの前記第1ボアを通じて、サセプタ上の基板にむけて前記上部室から反応空間内へ第1ガスを放出する工程と、
(ii)上記工程(i)の後に、前記シャワーヘッドの前記第2ボアを通じて、基板にむけて前記下部室から反応空間内へ第2ガスを放出する工程と、
(iii)基板上に第1膜を形成するよう上記工程(i)及び(ii)を繰り返す工程と、
(iv)第1膜と異なる第2膜を前記第1膜上に形成するよう、前記第1ボアを通じて上部室から第3ガスを及び前記第2ボアを通じて前記下部室から第4ガスをそれぞれ放出する工程と、
から成る方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、工程(i)と(ii)との間に、パージガスにより上部室をパージする工程(ia)を含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、上部室は上部室を主に排気するための排気口を具備し、さらに、工程(ia)と(ii)との間に、前記排気口を通じて上部室を排気する工程(ib)を含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、さらに、工程(ii)と(iii)との間に、パージガスにより下部室をパージする工程(iia)を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、下部室は下部室を主に排気するための排気口を具備し、さらに、工程(iia)と(iii)との間に、前記排気口を通じて下部室を排気する工程(iib)を含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、工程(iv)は、さらに、反応空間へRF電力を印加する工程を含む、ところの方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、第1膜は原子層成長膜より成る、ところの方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、第2膜は化学気相成長膜より成る、ところの方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記第1ガス及び第3ガスは同じガスである、ところの方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記第2ガス及び第4ガスは同じガスである、ところの方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、上部室はその中心に配置されたガス導入口を有し、それを通じて第1ガス及び第3ガスが上部室に供給される、ところの方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、下部室はその外周に配置されたガス導入口を有し、それを通じて第2ガス及び第4ガスが下部室に供給される、ところの方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、さらに、工程(i)と(ii)との間に、第2ガスへRF電力を印加する工程(iic)を含む、ところの方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、工程(iv)は、
(iva)シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第3ガスを放出する工程と、
(ivb)工程(iva)の後、シャワーヘッドの第2ボアを通じて下部室から反応空間へ基板に向けて第4ガスを放出する工程と、
(ivc)第4ガスへRF電力を印加する工程と、
(ivd)第1膜上に第2膜を形成するよう、工程(iva)から(ivc)を含む上記工程を繰り返す工程と、
から成る方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、工程(iv)は、
(iva) シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第3ガスを放出する工程と、
(ivb)パージガスにより上部室をパージする工程と、
(ivc) シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第4ガスを放出する工程と、
(ivd)第4ガスへRF電力を印加する工程と、
(ive) 第1膜上に第2膜を形成するよう、工程(iva)から(ivd)を含む上記工程を繰り返す工程と、
から成る方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、基板は、その上に第1膜が形成される絶縁層を有する、ところの方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、第1膜はルテニウムを含む、ところの方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、第2膜はルテニウムを含む、ところの方法。
【請求項19】
シャワーヘッドを使って、基板上に薄膜を形成するための方法であって、前記シャワーヘッドが、上部室と、前記上部室の下側に配置され、シャワーヘッドの軸方向に見て前記上部室により覆われ、かつ前記上部室とガス連通しない下部室とから成り、サセプタに対向する前記シャワーヘッドの面は、シャワーヘッドの軸方向に見て前記上部室及び前記下部室が重なるところのオーラップ領域を有し、そのオーバーラップ領域において、シャワーヘッドは下部室とガス連通することなく上部室とガス連通する第1ボア、及び上部室とガス連通することなく下部室とガス連通する第2ボアを有するところの方法であって、
(i)前記シャワーヘッドの前記第1ボアを通じて、前記上部室から反応空間内へサセプタ上の基板に向けて第1ガスを放出する工程と、
(ii)前記シャワーヘッドの前記第2ボアを通じて、基板にむけて前記下部室から反応空間へ第2ガスを放出する工程と、
(iii)基板上に第1膜を形成するよう、反応空間にRF電極を印加する工程と、
(iv)基板上の第1膜の表面を処理するよう、前記第1ボアを通じて上部室及び前記第2ボアを通じて下部室の少なくともひとつから反応空間へ第3ガスを放出する工程と、
から成る方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、さらに、工程(i)と(iv)との間に、パージガスにより上部室をパージする工程(ia)を含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、上部室は、上部室を主に排気するための排気口を具備し、さらに、工程(ia)と(iv)との間に、前記排気口を通じて上部室を排気する工程(ib)を含む方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、さらに、工程(ii)と(iv)との間にパージガスにより下部室をパージする工程(iia)を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、下部室は、下部室を主に排気するための排気口を具備し、さらに、工程(iia)と(iv)との間に、前記排気口を通じて下部室を排気する工程(iib)を含む方法。
【請求項24】
請求項19に記載の方法であって、工程(iv)は、さらに、基板の第1膜の表面を処理するよう、第3ガスを励起させる工程を含むところの方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、第3ガスの励起は熱またはプラズマにより実行される、ところの方法。
【請求項26】
請求項19に記載の方法であって、工程(i)から(iv)が繰り返される、ところの方法。
【請求項27】
請求項19に記載の方法であって、工程(iv)は、
(iva)シャワーヘッドの第1ボアを通じて上部室から反応空間へ基板に向けて第3ガスを放出する工程と、
(ivb)工程(iva)の後、シャワーヘッドの第2ボアを通じて下部室から反応空間へ基板に向けて第4ガスを放出する工程と、
(ivc)第1膜の処理として第1膜上に第2膜を形成するよう、工程(iva)及び(ivb)を含む上記工程を繰り返す工程と、
から成るところの方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公開番号】特開2007−173824(P2007−173824A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342611(P2006−342611)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】