説明

受信機

【課題】受信装置を搭載した移動体が走行している道路情報を取得し、取得した道路の軌道と受信信号から得られる情報とを用いて測位し、取得する道路情報を限定した受信装置を提供することにある。
【解決手段】移動体に備え付けられる受信装置であって、衛星信号受信手段が衛星から衛星信号を受信し、信号処理手段が前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出し、道路情報取得手段が、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得し、測位計算手段が前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記受信機の位置情報を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星信号に基づいて受信機の位置を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星信号を用いて自動車や電車等の位置を測位する受信機では、衛星信号から取得した情報に基づいた方程式から、受信機位置のx座標、y座標、z座標及び距離誤差の4つの未知数を解くことにより、受信機の位置を特定し、当該受信機の位置から受信機を搭載した自動車等の移動体の位置を特定する。よって、受信機は、上記の未知数を特定するためには、4以上の衛星から衛星信号を取得する必要がある。なお、距離誤差とは、衛星と受信機との時計誤差に起因する距離の誤差をいう。
【0003】
従って、受信機は、衛星信号の受信環境が良くない道路で測位計算しようとすると、4つ以上の衛星から衛星信号を受信することが困難となるため、測位計算ができなくなるという問題点がある。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決する装置の例として、線路の座標情報を保持しておき、過去の位置情報に基づいて走行線路を特定し、当該走行線路の座標情報から特定した走行線路の軌道と、正確に受信できた衛星信号とを用いて測位計算するGPS測位装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、過去の位置情報に基づいて走行方向を特定し、走行方向の軌道と、正確に受信できた衛星信号とを用いて測位計算する移動体搭載測位装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
上記のように、軌道を特定した場合、受信機位置のx、y、zの各座標を媒介変数で置き換えることができるため、未知数が距離誤差と、媒介変数の2つとなり、2衛星から信号を受信できれば、受信機の位置を特定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−56234号公報
【特許文献2】特開2007−278881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のGPS測位装置の場合、保持している情報が線路の座標情報である。受信機を自動車に適用することを考慮すると、自動車の場合、走行道路について3次元の座標情報を全て保持すると膨大なデータ量となるため、多大な記憶容量が必要とされるという問題点がある。また、受信機が膨大なデータを保持していると、データ検索に時間がかかり、測位に必要となる道路情報を特定する処理に時間がかかってしまうという問題点もある。
【0009】
一方、特許文献2の移動体搭載測位装置は、保持している過去の位置情報が古かったり、当該移動体搭載測位装置を搭載している移動体が進行方向を頻繁に変更したりした場合に、正確に測位することができないという問題点がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明の目的は、受信装置を搭載した移動体が走行している道路情報を取得し、取得した道路の軌道と受信信号から得られる情報とを用いて測位し、取得する道路情報を限定した受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、移動体に備え付けられる受信装置であって、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記受信機の位置情報を算出する測位計算手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項9に記載の発明は、移動体に備え付けられる装置で行う装置位置算出方法であって、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信工程と、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理工程と、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得工程と、前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記装置の位置情報を算出する測位計算工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項10に記載の発明は、移動体に備え付けられ、コンピュータを備える装置で行う装置位置算出プログラムであって、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段、前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記受信機の位置情報を算出する測位計算手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【0014】
請求項11に記載の発明は、ナビゲーション装置であって、移動体に備え付けられる受信装置と、限定された道路に関する3次元の道路情報を保持する道路情報保持手段とを備え、前記受信装置は、衛星から前記衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、前記道路情報保持手段から前記道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記道路情報に基づいた軌道と、前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信装置の位置情報を算出する測位計算手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のGPS受信機の概念図である。
【図2】軌道を用いた受信機位置特定方法の概念図(1)である。
【図3】軌道を用いた受信機位置特定方法の概念図(2)である。
【図4】第1実施例に係るGPS受信機のブロック図である。
【図5】道路情報のデータ構造を示す図である。
【図6】道路情報を用いた測位処理のフローチャートである。
【図7】ナビゲーション装置のブロック図である。
【図8】第2実施例に係るGPS受信機のブロック図である。
【図9】ナビゲーション装置で管理する道路情報の説明のための図である。
【図10】第3実施例に係るGPS受信機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態では、移動体に備え付けられる受信装置であって、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記受信機の位置情報を算出する測位計算手段と、を備える。
【0017】
上記受信装置は、具体的には、GPS受信装置等に適用できる。上記の受信装置は、衛星から衛星信号を受信し、所定の方法で上記受信機を搭載した自動車等が走行している道路や走行すると予想される道路に関する3次元の道路情報を取得し、当該道路情報に基づいた道路の軌道と、衛星信号とを用いて受信装置の位置情報を算出する。
【0018】
この場合、受信装置は、3次元の道路情報を取得して、当該道路情報に基づき受信装置を備えた移動体の走行軌道を特定し、当該走行軌道と、受信した衛星信号から得られる衛星位置情報と、擬似距離情報とを用いて受信装置の位置を算出することとなるため、走行軌道を特定している分、必要数(例えば、4つ)分の衛星から衛星信号を取得していなくても受信装置の位置を適切に特定することができる。また、受信装置は、取得する道路情報を限定しているため、道路情報の取得処理負担を最小限に留めている。よって、上記受信装置を自動車等の移動体に適用することが可能となる。
【0019】
ここでいう擬似距離とは、衛星と受信装置との時計が同期していないことによる時計誤差に起因する距離誤差を含んだ、衛星と受信装置との距離をいう。また、衛星位置情報とは、衛星の位置情報をいう。
【0020】
上記の受信装置の一態様では、前記道路情報を前記衛星信号の受信環境が悪いと予想される道路に関する道路情報とする。この場合、受信装置は、受信環境が悪いことにより、衛星から衛星信号を適切に受信できない箇所でも、走行道路の軌道を特定し、特定した軌道と、受信した衛星信号とを用いて、適切に受信装置の位置を特定することができる。
【0021】
ここで、受信環境の悪い道路として、「高架下を通過する道路」、「トンネルがある道路」、「地下駐車場の出口道路」、「ビル間の道路」等がある。
【0022】
上記の受信装置の他の一態様では、前記道路情報を保持する道路情報保持手段をさらに備え、前記道路情報取得手段は、前記道路情報保持手段で保持している道路情報を取得する。この場合、受信装置は、予め保持している道路情報を用いて当該道路情報から移動体の走行軌道を特定することができるので、当該軌道と、衛星信号から得られる情報とを用いて受信装置の位置を特定することができる。
【0023】
上記の受信装置の他の一態様では、他の装置と接続可能な通信手段をさらに備え、前記道路情報取得手段は、前記通信手段を介して前記道路情報を取得する。この場合、受信装置は、大容量の道路情報を記憶することが可能なサーバ装置から受信装置で必要となる道路情報を取得し、当該道路情報から算出した軌道や、衛星信号に基づいた擬似距離情報や衛星位置情報を用いて受信装置の位置を特定することができる。
【0024】
上記の受信装置の他の一態様では、前記測位計算手段は、測位に必要な数の衛星から衛星信号を取得できない場合に、前記軌道と前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信機の位置情報を算出する。この場合、受信装置は、衛星信号から取得できる衛星位置情報と擬似距離情報とから受信機の位置を特定できない場合に、道路情報を取得し、当該道路情報を用いて算出した軌道を用いて、受信装置の位置を特定することができる。
【0025】
上記の受信装置の他の一態様では、前記測位計算手段は、信号レベルが閾値以上の衛星信号を、測位に必要な数以上の衛星から取得していない場合に、前記軌道と前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信装置の位置情報を算出する。この場合、受信装置は、信号レベルの低い衛星信号を用いる代わりに、信頼度の高い道路情報から走行道路の軌道を特定し、当該軌道と、信号レベルの高い衛星信号から算出した情報(衛星位置情報や擬似距離情報)とを用いて受信装置の位置を特定するので、適切に受信装置の位置を特定することができる。
【0026】
上記の受信装置の他の一態様では、前記道路情報取得手段は、前記移動体の位置周辺における道路の道路情報を取得する。この場合、受信装置は、予め移動体周辺の道路の道路情報をまとめて取得するので、必要数分の衛星の衛星信号を受信できないことを検知してから道路情報を取得する場合に比して、早急に受信機の位置を特定することができる。
【0027】
上記の受信装置の他の一態様では、前記道路情報取得手段は、前記移動体の経路中の道路における道路情報を取得する。この場合、受信装置は、移動体の経路中の道路の道路情報を予め取得することになるので、必要数分の衛星信号を受信できないことを検知してから道路情報を取得する場合に比して、早急に受信機の位置を特定することができる。
【0028】
本発明の他の観点では、移動体に備え付けられる装置で行う装置位置算出方法であって、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信工程と、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理工程と、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得工程と、前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記装置の位置情報を算出する測位計算工程と、を備える。
【0029】
上記の装置位置算出方法でも、3次元の道路情報を取得して、当該道路情報に基づき受信装置の走行軌道を特定し、当該走行軌道と、受信した衛星信号から得られる衛星位置情報と、擬似距離情報とを用いて受信装置の位置を算出することとなるため、走行軌道を特定している分、必要数分の衛星から衛星信号を取得していなくても受信装置の位置を適切に特定することができる。
【0030】
本発明の他の観点では、移動体に備え付けられ、コンピュータを備える装置で行う装置位置算出プログラムであって、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段、前記衛星信号の受信環境が悪いと予想される道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段、前記道路情報に基づいた軌道、前記衛星位置情報、及び前記擬似距離情報に基づいて前記受信機の位置情報を算出する測位計算手段、として前記コンピュータを機能させる。このような、装置位置算出プログラムを、各種装置上で実行することにより、本発明の受信装置を実現することができる。なお、上記装置位置算出プログラムは、記録媒体に記録した状態で好適に取り扱うことができる。
【0031】
本発明の他の観点では、ナビゲーション装置であって、移動体に備え付けられる受信装置と、限定された道路に関する3次元の道路情報を保持する道路情報保持手段とを備え、前記受信装置は、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、前記道路情報保持手段から前記道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記道路情報に基づいた軌道と、前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信装置の位置情報を算出する測位計算手段と、を備える。
【0032】
この場合、ナビゲーション装置に含まれる受信装置は、ナビゲーション装置で保持している道路情報を取得し、当該道路情報から移動体が走行している道路の軌道を特定する。そして、上記受信装置は、上記軌道と、受信した衛星信号から得られる情報(衛星位置情報や擬似距離情報)とを用いて受信装置の位置を算出することとなるため、走行軌道を特定している分、必要数以上の衛星から衛星信号を取得していなくても受信装置の位置を適切に特定することができる。
【実施例】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0034】
[一般的なGPS受信機について]
一般的なGPS受信機の構成を図1に示す。図1に示すGPS受信機100は、アンテナ110、信号処理部120、及び測位計算部170を備える。アンテナ110は、衛星から送信された衛星信号を受信する。信号処理部120は、衛星からの衛星信号を処理して各衛星の位置情報と擬似距離情報とを算出する。測位計算部170は、信号処理部120から衛星位置情報や擬似距離情報を取得し、当該衛星位置情報及び擬似距離情報を使用して、GPS受信機100の位置を計算する。
【0035】
信号処理部120は、衛星からの電波を処理することにより、複数の衛星の位置情報と、GPS受信機100から各衛星までの距離を算出する。GPS受信機100から各衛星までの距離は、電波の送信時刻と受信時刻の差から計算されるが、衛星の時計と、GPS受信機100の時計とは正確に同期していないため、時計誤差に起因する距離誤差が生じる。この誤差が載った距離のことを「擬似距離」という。なお、距離誤差は、受信している全ての衛星に対して同じ量となる。
【0036】
信号処理部120で算出された複数の衛星の位置情報と擬似距離情報が測位計算部170に入力され、測位計算部170は、上記複数の衛星の位置情報と擬似距離情報とに基づいてGPS受信機100の位置を計算する。未知数は、GPS受信機100の位置を示す座標値x、y、zと、時計誤差に起因する距離誤差Tの4つである。
【0037】
よって、通常は4衛星以上の衛星位置情報と擬似距離情報が必要となり、4つ以上の衛星から衛星信号を受信できていない場合、GPS受信機100は、測位することができない。4つの衛星から受信した衛星信号に基づいて測位する場合に使用する連立方程式を以下の式に示す。この連立方程式を解くことにより、GPS受信機100の位置と時計誤差を求めることができる。
【0038】
【数1】

もし、未知数の数を減らすことができれば、4つよりも少ない衛星数で測位することが可能である。未知数の数を減らす方法として、「高度を何らかの方法で予測する」、「時計誤差を何らかの方法で予測する」等が一般的に知られており、この場合、GPS受信機100は、2つ又は3つの衛星から取得した衛星信号に基づいて測位することができる。しかし、上記の方法を適用できる状況は、限定的である。
【0039】
未知数を減らす別の方法として、上述の特許文献1や特許文献2に記載したように受信機の軌道を3次元で予測して利用する方法がある。
【0040】
予測軌道が直線の場合、以下の式の連立方程式を解くことによって、GPS受信機100の位置を求めることができる。
【0041】
【数2】

予測軌道からGPS受信機100の位置を示すx、y、z座標を媒介変数sで置き換えることができ、未知数が距離誤差Tと媒介変数sの2つとなるため、GPS受信機100は、2衛星からの電波を受信するだけで測位することが可能となる。
【0042】
式2が持つ意味を概念的に示した図を図2に示す。距離誤差Tを固定した場合、衛星からの擬似距離は、各衛星を中心とした球を描く。2つの衛星が作る球の交点を距離誤差Tを変化させながらつないでいくと曲面が得られる。この曲面と予測軌道の交点が求めるGPS受信機100の位置となる。なお、簡単のため予測軌道を直線として説明したが、曲面と1点で交わるのであれば、予測軌道は曲線であっても構わない。
【0043】
さらに予測軌道に加えて距離誤差Tが予測できるような場合には、距離誤差Tも未知数とならなくなるため、1衛星の位置情報と擬似距離だけでGPS受信機100の位置を求めることも可能である。このときは図3のように、衛星を中心、擬似距離を半径とする球と予測軌道交点として受信機の位置が求まる。
【0044】
以上のことから、GPS受信機100の軌道を予測することによって受信しなければならない衛星の数を大きく減らせることが分かる。
【0045】
カーナビゲーション装置に搭載されるGPS受信機100においてこの手法を利用するためには、自動車の軌道を予測することが必要である。自動車が走行している道路の軌道を特定することができれば、自動車の軌道を推測することができる。本発明に係るGPS受信機は、道路上の3次元データを取得し、当該道路上の3次元データに基づいて軌道を予測し、予測した軌道を用いてGPS受信機の位置を特定する。
【0046】
[第1実施例]
次に、第1実施例に係るGPS受信機300Aの構成を図4に示す。GPS受信機300Aは、いわゆるGPSモジュール等であり、PDA(Personal Digital Assistant)やノートパソコンやカーナビゲーション装置に接続した状態で使用される。
【0047】
図4に示すように、GPS受信機300Aは、アンテナ110と、信号処理部120と、記憶部330と、道路情報取得部350Aと、測位計算部370とを備える。アンテナ110や信号処理部120は、図1で示したGPS受信機100のアンテナ110や信号処理部120と同様であるので、説明を省略する。なお、アンテナ110が衛星信号受信手段として機能する。
【0048】
記憶部330は、メモリであり、各種データを保存する。具体的に、記憶部330は、道路情報DB335を保持する。道路情報DB335は、道路情報360を管理する。ここで道路情報360のデータ構造について、図5(A)及び図5(B)を用いて説明する。
【0049】
図5(A)に示すように、道路情報360は、道路ID361、始点座標362、終点座標363、及び中間座標群364を有する。
【0050】
道路ID361は、道路を一意に識別し得る情報である。始点座標362は、道路の始点箇所の座標情報である。終点座標363は、道路の終点箇所の座標情報である。中間座標群364は、道路の始点から終点までの間の0以上の座標情報である。なお、始点座標362、終点座標363、及び中間座標群364の座標情報は、x、y、zの3次元の座標情報である。
【0051】
図5(B)に道路の例を示す。点P1から点P2までの道路L1の場合、ほぼ直線の道路であるので、起伏の激しい坂道でない限り、始点と終点の座標を有していれば、適切に軌道を特定し得る。しかし、点P2〜P6で構成される道路L2の場合、道路自体が曲がっているので、GPS受信機300Aは、道路の経由点となる点P3、点P4、点P5の座標情報を中間座標情報群364として保持する。このように、GPS受信機300Aは、道路の始点から終点までの間の座標情報も道路情報360に含める。これにより、GPS受信機300Aは、道路が曲がっている場合や、起伏の激しい坂道の場合に、始点と終点のみから推測してしまい、実際の道路と異なる軌道を算出してしまうことを回避することができる。
【0052】
なお、本実施例における道路情報DB335で管理する道路情報360は、「高架下を通過する道路」、「トンネルがある道路」、「地下駐車場の出口道路」、「ビル間の道路」等の衛星信号の受信環境が悪いと予想される道路に関する道路情報である。このように、GPS受信機300Aは、受信環境が悪いと予想される道路に関する道路情報360に限定して保持することにより、道路情報を保持するために消費するメモリ容量を限定させることができる。
【0053】
道路情報取得部350Aは、道路情報360を道路情報DB335から取得する。道路情報取得部350Aが取得対象の道路情報360を特定する方法として、過去の位置情報に基づいて取得対象の道路情報360を特定する方法等がある。
【0054】
測位計算部370は、道路情報取得部350Aが取得した道路情報360に含まれる始点座標362、終点座標363、及び中間座標群364に基づいてGPS受信機300Aの走行軌道を特定した後に、当該走行軌道と、衛星の位置情報と、擬似距離情報とを用いてGPS受信機300Aの位置情報を算出する。
【0055】
[測位方法]
第1実施例に係るGPS受信機300Aが行う測位方法について図6に示すフローチャートを用いて説明する。ここでいう測位方法とは、アンテナ110が取得できた衛星信号の衛星数が必要数(例えば、4つ)に満たない場合に、GPS受信機300Aが走行していると推測し得る道路情報360を取得し、取得できた衛星信号から算出した衛星の位置情報と擬似距離情報と、道路情報360に基づいた軌道とを用いて測位する方法をいう。当該測位方法は、GPS受信機300Aの記憶部330で組み込まれているプログラムを実行することより実現される。上記測位方法は、装置位置算出方法に対応し、GPS受信機300Aの記憶部330で組み込まれているプログラムは、装置位置算出プログラムに対応する。
【0056】
最初に、アンテナ110が衛星信号を取得し、衛星から送信された衛星信号を受信する。信号処理部120は、衛星からの衛星信号を処理して各衛星の位置情報と擬似距離情報とを算出する。測位計算部370は、信号処理部120から各衛星の位置情報と擬似距離情報を取得する。
【0057】
そして、信号処理部120が衛星の位置情報と擬似距離情報とを算出することができた衛星数が十分である場合、即ちアンテナ110が取得できた衛星信号の衛星数が必要数以上である場合(ステップS1;Yes)、GPS受信機350Aは、通常の測位を行って(ステップS2)、処理を終了する。ここでいう通常の測位とは、走行道路の軌道情報を用いることなく、受信した衛星信号に基づいて測位することをいう。
【0058】
一方、当該衛星の位置情報と擬似距離情報とを取得できた衛星数が十分でない場合(ステップS1;No)、GPS受信機300Aが走行している道路を特定する。ここで道路を特定する方法として、直近に正確に取得できた位置情報に基づいて道路を特定したり、予め定められている経路情報に基づいて道路を特定したりする方法等がある。
【0059】
道路情報取得部350Aは、GPS受信機300Aが走行していると推定される道路(以下、「検索対象道路」とも呼ぶ)の道路情報360を道路情報DB335から検索する(ステップS3)。
【0060】
道路情報取得部350Aが検索対象道路の道路情報360を検索した結果、道路情報DB335に検索対象道路の道路情報360がない場合(ステップS4;No)、測位することができないので、測位処理を行わずに(ステップS7)、処理を終了する。
【0061】
道路情報取得部350Aが検索対象道路の道路情報360を検索した結果、道路情報DB335に検索対象道路の道路情報360がある場合(ステップS4;Yes)、道路情報取得部350Aは、検索対象道路の道路情報360を道路情報DB335から取得し(ステップS5)、測位計算部370は、信号処理部120が算出した衛星の位置情報及び擬似距離情報や、検索対象道路の道路情報360から特定した道路の軌道を用いてGPS受信機300Aの位置を算出して(ステップS6)、測位処理を終了する。
【0062】
このように、GPS受信機300Aは、衛星の位置情報等を取得できた衛星数が不十分な場合に、GPS受信機300Aの現在位置を走行していると推測し得る道路の道路情報360を取得し、当該道路情報360から特定し得る走行道路の軌道、取得した衛星の位置情報、及び擬似距離情報を用いてGPS受信機300Aの位置を算出している。
【0063】
これにより、GPS受信機300Aは、衛星の位置情報等を取得できた衛星の数が不十分でも、GPS受信機300Aが走行している道路に基づく軌道を補完的に用いることで、正確にGPS受信機300Aの位置を算出することができる。
【0064】
したがって、GPS受信機300Aを搭載した移動体が、十分な数の衛星から衛星信号を適切に取得できないような箇所(例えば、高いビルに囲まれた道路等)を走行している場合でも、走行中の道路に関する道路情報360から特定し得る軌道を用いることにより適切にGPS受信機300Aの位置を特定することができ、当該GPS受信機300Aを備えた移動体の位置も特定することができる。
【0065】
[第2実施例]
次に、第2実施例に係るGPS受信機について説明する。第2実施例に係るGPS受信機は、ナビゲーション装置に備え付けられており、ナビゲーション装置で保持している道路情報から当該ナビゲーション装置を搭載した移動体の走行軌道を特定し、当該走行軌道や受信した衛星信号から算出した衛星位置情報や擬似距離情報を用いて測位を行う。最初に、ナビゲーション装置の説明をした後に、ナビゲーション装置に接続されているGPS受信機について説明する。
【0066】
(ナビゲーション装置)
最初にナビゲーション装置について、図7を用いて説明する。図7に示すように、ナビゲーション装置200は、自立測位装置10、GPS受信機300B、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、表示ユニット40、音声出力ユニット50、及び入力装置60を備える。
【0067】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、自動車の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、自動車の方向変換時における自動車の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、自動車の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0068】
GPS受信機300Bは、複数の衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から自動車の絶対的な位置を検出するために用いられる。詳細については、後述する。
【0069】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置200全体の制御を行う。
【0070】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して利用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0071】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0072】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としても良いし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしても良く、また、テレビチューナを内蔵したハードディスクレコーダでも良い。
【0073】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データや施設データや、道路情報DB335に含まれる道路情報360などのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶する。
【0074】
通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信カードなどにより構成され、通信用インタフェース37を介して、VICS(Vehicle Information Communication System)センタから配信される渋滞や交通情報などの道路交通情報を受信したり、所定のサーバからの種々の情報(例えば、天気情報等)を受信したりする。
【0075】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データを、ディスプレイなどの表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0076】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、ディスクドライブ31、又はRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0077】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式である場合には、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0078】
(第2実施例に係るGPS受信機)
次に、第2実施例に係るGPS受信機300Bを図8に示す。GPS受信機300Bは、アンテナ110と、信号処理部120と、道路情報取得部350Bと、測位計算部370とを備える。アンテナ110や信号処理部120は、図1で示したGPS受信機100のアンテナ110や信号処理部120と同様であるので、説明を省略する。また、測位計算部370は、第1実施例のGPS受信機300Aの測位計算部370と同様であるので、説明を省略する。道路情報取得部350Bは、第1実施例とは異なり、ナビゲーション装置200のデータ記憶ユニット36で保持している道路情報DB335から道路情報360を取得する。ここでいう道路情報DB335内の道路情報360は、第1実施例の道路情報DB335内の道路情報360とデータ構造が同一であるものとする。また、ナビゲーション装置200のデータ記憶ユニット36では、上記道路情報DB335以外に、一般的なナビゲーション装置で保持している地図情報DB160を有している。
【0079】
データ記憶ユニット36で保持している道路情報DB335と地図情報DB160で管理している情報を図9で概念的に示す。第2実施例では、地図情報DB160で有している道路情報の内、受信環境が悪いと考えられる道路については、別途道路情報DB335で、3次元の座標値を管理する道路情報360を有する。
【0080】
例えば、図9に示すように、トンネルTNを通過する道路L11、ビルB1〜ビルB4の谷間にある道路L12、地下駐車場PKを出た場所に位置する道路L13、高速道路HWの下を通過する道路L14については、衛星信号の受信環境が悪いと推定することができるので、道路L11〜L14の3次元の座標を管理した道路情報360を道路情報DB335で管理する。他の各地図情報については、2次元座標で地図情報DB160が管理する。
【0081】
第2実施例に係るGPS受信機300Bが行う測位方法は、道路情報取得部350Bが道路情報360を取得する方法が第1実施例の測位方法と異なるだけで、他の方法は同じである。
【0082】
このように、衛星信号の受信環境が悪いと予想される道路について3次元の座標を有する道路情報360を管理する道路情報DB335をナビゲーション装置200のデータ記憶ユニット36で保持しているので、GPS受信機300Bは、衛星信号の受信環境が悪いと予想される箇所でも、衛星信号から算出した衛星位置情報と擬似距離情報と、道路情報360から導いた軌道とを用いることにより、適切にGPS受信機300Bの位置を算出することができる。
【0083】
[第3実施例]
次に、第3実施例に係るGPS受信機300Cについて図10を用いて説明する。GPS受信機300Cは、いわゆるGPSモジュール等であり、PDAやノートパソコンやカーナビゲーション装置に接続した状態で使用される。第3実施例に係るGPS受信機300Cは、通信装置を介して道路情報360を取得する点で異なる。
【0084】
GPS受信機300Cは、アンテナ110、信号処理部120、道路情報取得部350C、測位計算部370、及び通信部380を備える。
【0085】
通信部380は、公知の種々の通信装置である。アンテナ110、信号処理部120、及び測位計算部370は、第1実施例、第2実施例のGPS受信機300A及びBの同一符号の構成要素と同一のため、説明を省略する。道路情報取得部350Cは、通信部380を介して外部サーバ500で保持している道路情報DB335の道路情報360を取得する。
【0086】
第3実施例に係るGPS受信機300Cが行う測位方法は、道路情報取得部350Cが行う道路情報360の取得方法が異なるだけで、他の方法については、第1実施例の測位方法と同じである。
【0087】
この場合でも、GPS受信機300Cは、外部サーバ500から道路情報360を取得することができるので、受信環境が悪いことにより、必要数以上の衛星から適切な衛星信号を受信することができなくても、過去の位置情報等から特定した道路情報360を用いてGPS受信機300Cを搭載した移動体の走行軌道を特定し、当該特定した走行軌道と、衛星信号から算出した情報(衛星位置情報や擬似距離情報)とを用いてGPS受信機300Cの位置を特定することができる。なお、外部サーバ500の場合、一般的に記憶容量が多いため、大量の道路情報360を保持しておくことができる。
【0088】
以上説明したように、移動体に備え付けられるGPS受信機300A〜C(以下、総括して「GPS受信機300」とも呼ぶ)は、衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ衛星から受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段と、道路情報に基づいた軌道、衛星位置情報、及び擬似距離情報に基づいて受信機の位置情報を算出する測位計算手段と、を備える。
【0089】
GPS受信機300は、3次元の道路情報を取得して、当該道路情報に基づき受信装置を備えた移動体の走行軌道を特定し、当該走行軌道と、受信した衛星信号から得られる衛星位置情報と、擬似距離情報とを用いてGPS受信機300の位置を算出することとなるため、走行軌道を特定している分、必要数の衛星から衛星信号を取得していなくても受信装置の位置を適切に特定することができる。また、GPS受信機300は、取得する道路情報を限定しているため、道路情報の取得処理負担を最小限に留めている。よって、上記GPS受信機300を自動車等の移動体に適用することが可能となる。
【0090】
[他の実施例]
上述の実施例では、取得できた衛星信号の衛星数が必要数に満たない場合に、GPS受信機300が道路情報360を取得して、当該道路情報360から軌道を特定してGPS受信機300の位置を特定する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、GPS受信機300の現在地周辺に受信環境が悪いと予想される道路がある場合に、予め道路情報取得部350A〜C(以下、総括して「道路情報取得部350」とも呼ぶ)が、GPS受信機300の現在地周辺の受信環境が悪いと予想される道路の道路情報360を取得するようにしても良い。
【0091】
この場合、GPS受信機300は、予め道路情報360を取得しているので、必要数以上の衛星から衛星信号を受信できないことを検知してから道路情報360を取得する場合に比して、早急にGPS受信機300の位置を特定することができる。
【0092】
上述の実施例では、必要数以上の衛星から衛星信号を受信できなかった場合に、道路情報360を取得して、道路情報360から軌道を特定してGPS受信機300の位置を特定する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、衛星信号のレベルが所定以上である衛星信号を必要数以上の衛星から取得していない場合に、道路情報取得部350が道路情報360を取得して、当該道路情報360の軌道を特定してGPS受信機300の位置を特定するようにしても良い。
【0093】
この場合、GPS受信機300は、信号レベルの低い衛星信号を用いる代わりに、信頼度の高い道路情報360から走行道路の軌道を特定し、当該軌道と、信号レベルの高い衛星信号から算出した情報(衛星位置情報や擬似距離情報)とを用いてGPS受信機300の位置を特定するので、適切にGPS受信機300の位置を特定することができる。
【0094】
上述の実施例では、必要数以上の衛星から衛星信号を受信できなかった場合に、GPS受信機300が道路情報360を取得して、道路情報360から軌道を特定して、GPS受信機300の位置を特定する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、衛星信号の受信状況に関わらず、GPS受信機300の位置周辺に対応する道路情報360を取得できる場合には、取得した道路情報360から特定した軌道を用いて、GPS受信機300の位置を特定するようにしても良い。
【0095】
この場合、GPS受信機300は、道路情報360における各種座標情報の精度が高い場合、衛星信号にはノイズ等が含まれていることを考慮すると、衛星信号のみからGPS受信機300の位置を特定する場合に比して、精度の高い位置検出をすることができる。
【0096】
上述の実施例では、必要数以上の衛星から衛星信号を受信できなかった場合に、道路情報360を取得して、道路情報360から軌道を特定してGPS受信機300の位置を特定する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、GPS受信機300を搭載している移動体の経路中の道路に関する道路情報360を予め取得するようにしても良い。
【0097】
この場合、GPS受信機300は、予め道路情報360を取得しているので、必要数以上の衛星信号を受信できないことを検知してから道路情報360を取得する場合に比して、早急にGPS受信機300の位置を特定することができる。
【0098】
上述の第2実施例では、GPS受信機300Bが特定した過去の位置から現状の走行道路を特定する場合について、述べたが、本発明は、これに限られず、過去の位置と、加速度センサ11等の各種センサの情報も加味して、現状の走行道路を特定するようにしても良い。
【0099】
上述の実施例では、GPS受信機300を、GPSの受信装置として適用する場合について述べたが、本発明は、これに限られず、例えば、Galileoに代表されるGPS以外の測位衛星システムにおける受信装置にも適用することができる。
【0100】
上述の実施例では、衛星信号の受信環境が悪いと予想される道路に関する情報を取得する場合について述べたが、本発明は、これに限られず、利用頻度の高い道路等、ある一定の特定範囲の道路情報を取得するようにしても良い。
【符号の説明】
【0101】
110 アンテナ
120 信号処理部
300 GPS受信機
330 記憶部
350 道路情報取得部
360 道路情報
370 測位計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備え付けられる受信装置であって、
衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、
前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、
限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記道路情報に基づいた軌道と、前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信機の位置情報を算出する測位計算手段と、を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記道路情報は、前記衛星信号の受信環境が悪いと予想される道路に関する道路情報であることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記道路情報を保持する道路情報保持手段をさらに備え、
前記道路情報取得手段は、前記道路情報保持手段で保持している道路情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
他の装置と接続可能な通信手段をさらに備え、
前記道路情報取得手段は、前記通信手段を介して前記道路情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項5】
前記測位計算手段は、測位に必要な数の衛星信号を取得できない場合に、前記軌道と前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信機の位置情報を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記測位計算手段は、信号レベルが閾値以上の衛星信号を、測位に必要な数以上の衛星から取得していない場合に、前記軌道と前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信機の位置情報を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記道路情報取得手段は、前記移動体の位置周辺における道路情報を取得することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項8】
前記道路情報取得手段は、前記移動体の経路中の道路における道路情報を取得することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項9】
移動体に備え付けられる装置で行う装置位置算出方法であって、
衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信工程と、
前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理工程と、
限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得工程と、
前記道路情報に基づいた軌道と、前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記装置の位置情報を算出する測位計算工程と、を備えることを特徴とする装置位置算出方法。
【請求項10】
移動体に備え付けられ、コンピュータを備える装置で行う装置位置算出プログラムであって、
衛星から衛星信号を受信する衛星信号受信手段、
前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段、
限定された道路に関する3次元の道路情報を取得する道路情報取得手段、
前記道路情報に基づいた軌道と、前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信機の位置情報を算出する測位計算手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする装置位置算出プログラム。
【請求項11】
移動体に備え付けられる受信装置と、限定された道路に関する3次元の道路情報を保持する道路情報保持手段とを備え、
前記受信装置は、
衛星から前記衛星信号を受信する衛星信号受信手段と、
前記衛星信号から衛星位置情報と、誤差を含んだ前記衛星から前記受信装置までの距離である擬似距離情報とを算出する信号処理手段と、
前記道路情報保持手段から前記道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記道路情報に基づいた軌道と、前記衛星位置情報と、前記擬似距離情報とに基づいて前記受信装置の位置情報を算出する測位計算手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−266267(P2010−266267A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116322(P2009−116322)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】