説明

可撓性ポリマー基板と原子層蒸着され気体透過バリアとを含む物品。

【課題】本発明は、プラスチックまたはガラス基板と原子層蒸着によって製造された大気透過バリアとを含んでなる物品を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、a)上面および下面を有する可撓性ポリマー基板と、
b)原子層蒸着によって前記基板の上面および下面の一方または両面上に蒸着された厚さ2nm〜100nmを有する気体透過バリアとを含むこと特徴とする物品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックまたはガラス基板と原子層蒸着によって製造された大気透過バリアとを含んでなる物品に関する。該物品は、有機発光ダイオードなどの電気デバイスまたは電子デバイスの部品であってもよい。該物品はまた、気体透過が重要である用途の容器として用いられてもよい。
【背景技術】
【0002】
フェザーバイ(Featherby)およびデヘブン(Dehaven)(特許文献1)は、気密コーティングされたデバイスを開示する。このようなデバイスの形成には、集積半導体回路ダイを提供する工程と、回路ダイを囲む無機材料を含んでなる第1の層を適用する工程と、回路ダイを囲む第2の層を適用する工程とが含まれる。
【0003】
アインティラ(Aintila)(特許文献2)は、原子層エピタキシーを用いて酸化物層を基板上に形成することを含む、後続の工程段階の必要とされる時点において開かれる、基板の表面の金属コンタクトパッド領域上にコンタクトバンプ(contact bump)を形成することを開示する。
【0004】
アフターグット(Aftergut)およびアッカーマン(Ackerman)(特許文献3)は、防湿層を有する気密パッケージ入放射線検出装置を開示する。誘電材料層が、封止構造の一部として原子層エピタキシー技術で蒸着される。
【0005】
アフターグットおよびアッカーマン(特許文献4)には、原子層エピタキシーによって蒸着された誘電材料層を含んでなる防湿層を有する気密パッケージ入放射線検出装置が開示されている。
【0006】
どの文献にも、ポリマーまたはガラス基板を含んでなる透過バリアは開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2001067504号パンフレット
【特許文献2】国際公開第9715070A2号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5641984号明細書
【特許文献4】米国特許第5707880号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
a)プラスチックおよびガラスよりなる群から選択される材料から作製された基板と、
b)原子層蒸着によって前記基板上に蒸着されたフィルムとを含んでなる物品について記載する。
【0009】
本発明はさらに、
a)プラスチックおよびガラスよりなる群から選択される材料から作製された基板と、
b)コーティングされた付着層と、
c)原子層蒸着によって蒸着された気体透過バリアとを含んでなる物品である。
【0010】
本発明の別の実施態様は、
a)プラスチックおよびガラスよりなる群から選択される材料から作製された基板と、
b)有機半導体と、
c)原子層蒸着によって蒸着された気体透過バリアとを含んでなる物品である。
【0011】
本発明のさらに別の実施態様は、
a)プラスチックおよびガラスよりなる群から選択される材料から作製された基板と、
b)液晶ポリマーと、
c)原子層蒸着によって蒸着された気体透過バリアとを含んでなる物品である。
【0012】
本発明はさらに、密閉された容器である実施態様について記載する。
【0013】
本発明の別の実施態様は電気デバイスまたは電子デバイスである。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様は発光ポリマーデバイスである。
【0015】
本発明のさらに別の実施態様は液晶ポリマーデバイスである。
【0016】
本発明はさらに、有機発光ダイオードについて記載する。
【0017】
本発明の別の実施態様はトランジスタである。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様は、発光ポリマーデバイスを含んでなる回路である。
【0019】
さらに別の物品は、有機光電池である。
【0020】
本明細書において教示された第2の物品が複数の層を含んでなり、各層が、上に記載されたような1つの物品を含んでなり、該物品が互いに接触している。この第2の物品の1つの実施態様において、上記の物品は積層手段によって互いに接触している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】バリア基板とバリアトップコートとを有する発光ポリマーデバイスを示す。
【図2】バリア基板とバリアキャッピング層とを有する発光ポリマーデバイスを示す。
【図3】バリア基板とバリアキャッピング層とを有する有機トランジスタを示す。
【図4】バリア基板とバリアキャッピング層とを有する有機トランジスタを示す。
【図5】25nmのAlバリアフィルムでコーティングされた厚さ0.002インチのポリエチレンナフタレート(PEN)を通しての光の透過率の測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ポリマーフィルムを通してのOおよびHO蒸気の透過は容易である。パッケージング用途のために透過性を低減するために、ポリマーが薄い無機フィルムでコーティングされる。Alのコーティングされたポリエステルが一般的である。物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)のいずれかによって作製された光透過性のバリア、主にSiOxまたはAlOもまた、パッケージングにおいて用いられる。後者のフィルムは市販されており、「ガラスのコーティングされた」バリアフィルムとして業界において公知である。それらは、約10倍の大気気体の透過の改良、約1.0ccO/m/日および1.0mlHO/m/日までポリエステルフィルムを通しての透過度の低減をもたらす(M.イズ(M.Izu)、B.ドッター(B.Dotter)、およびS.R.オブシンスキー(S.R.Ovshinsky)、J.Photopolymer Science and Technology、第8巻、1995年、195〜204ページ)。このささやかな改良は多くの高容積パッケージング用途について性能と費用とを適度に両立させるが、この性能は、電子機器のパッケージングの必要条件にはるかに及ばない。電子パッケージングは通常、例えば、飲料容器よりも少なくとも一桁長い所望の寿命を必要とする。例として、可撓性ポリエステル基板上に製造された、有機発光ポリマー(OLED)をベースとする可撓性ディスプレイは、発光ポリマーとCaまたはBaであることが多い感水性金属カソードとの両方を気体がひどく劣化させることがあるので、大気気体の排除のために推定値で10〜10倍のバリアの改良を必要とする。
【0023】
ポリマーの固有透過性は、それらの固有自由体積分率のために、一般に10〜10倍高いので、可撓性OLEDディスプレイなどの電子用途に必要とされる保護レベルを達成することができない。本質的にゼロの透過性を有する無機材料だけが、適切なバリア保護を提供することができる。理想的には、無機材料の欠陥のない、連続した薄いフィルムコーティングは、大気気体に対して不透過性であるのがよい。しかしながら、実状では、コーティングプロセスかまたはバリア性質を損なう基板の欠陥のいずれかのために、薄いフィルムがピンホールなどの欠陥を有する。フィルム中の粒界でも、容易な透過経路を与えることができる。最良のバリア性質を得るために、フィルムは、きれいな環境できれいな欠陥のない基板上に蒸着されるのがよい。このフィルム構造は、非晶質であるのがよい。蒸着方法は非方向性であるのがよく(すなわちPVDよりもCVDが好ましい)、特徴のないミクロ構造を達成するための成長機構は理想的には、粒状ミクロ構造を有する柱状成長を避けるために、逐次積層(layer by layer)である。
【0024】
原子層蒸着(ALD)は、低透過のためのこれらの基準の多くを満たすフィルム成長方法である。原子層蒸着方法の説明は、トゥオモ・スントラ(Tuomo Suntola)著、Thin Solid Films、第216巻(1992年)84〜89ページの「原子層エピタキシー(“Atomic Layer Epitaxy”)」に見出すことができる。その名前が示唆するように、ALDによって成長させられたフィルムは、逐次積層法によって形成される。一般に、フィルム前駆物質の蒸気は、真空チャンバー内の基板上に吸着される。次に、蒸気をチャンバーから吸入排出し、吸着された前駆物質の薄い層、通常、本質的に単層を基板上に残す。次いで、反応体を熱条件下でチャンバーに導入し、吸着された前駆物質との反応を促進して所望の材料の層を形成する。反応生成物をチャンバーから吸入排出する。再び基板を前駆物質の蒸気に暴露し、蒸着方法を繰り返すことによって材料の後続の層を形成することができる。ALDは、基板表面の限られた数の核形成部位において成長が開始されて進行する一般的なCVDおよびPVD方法による成長とは対照的である。後者の技術は、気体透過がそれらに沿って容易となり得る柱間の境界を有する柱状ミクロ構造をもたらす場合がある。ALDは、極度に低い気体透過性を有する非常に薄いフィルムを製造することができ、プラスチック基板上に形成された感受性電子デバイスおよび部品をパッケージングするためのバリア層としてこのようなフィルムを魅力あるものにする。
【0025】
本発明は、大気気体の通過を阻止するために有用な、プラスチック基板上にALDによって形成されたバリア層について記載する。本発明の基板としては、Polymer Materials、クリストファー・ホール(Christopher Hall)著(ニューヨーク州、ワイリー(Wiley,New York)、1989年)またはPolymer Permeability、J.コミン(J.Comyn)著(ロンドン、エルセビア(Elsevier,London)、1985年)に記載されているがそれらに限定されないポリマー材料など、ポリマー材料の一般的なクラスが挙げられる。一般的な例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などがあり、ロールでフィルムベースとして市販されている。バリアに適した、ALDによって形成された材料には、周期表のIVB、VB、VIB、IIIA、およびIVA族の酸化物および窒化物およびそれらの組合せがある。SiO、Al、およびSiがこの群において特に重要である。この群の酸化物の利点の1つは、可視光線がデバイスから出入りしなければならない電子ディスプレイおよび光電池にとって魅力的である光透過性である。SiおよびAlの窒化物もまた、可視スペクトルに透過性である。
【0026】
これらのバリア材料を形成するためにALD方法において用いられる前駆物質は、当業者に公知の前駆物質より選択することができ、M.レスケラ(M.Leskela)およびM.リタラ(M.Ritala)著、「ALD前駆物質の化学:発展と将来の課題(“ALD precursor chemistry: Evolution and future challenges”)」、Journal de Physique IV、第9巻、837〜852ページ(1999年)およびそこに記載された文献などの公開文献に要約されている。
【0027】
ALDによってこれらのバリアコーティングを合成するための基板温度の好ましい範囲は、50℃〜250℃である。過度の高温(>250℃)は、プラスチック基板の化学分解または基板の寸法の変化が大きいことによるALDコーティングの破裂のために、温度感受性プラスチック基板の加工に向かない。
【0028】
バリアフィルムの好ましい厚さの範囲は2nm〜100nmである。より好ましい範囲は2〜50nmである。より薄い層は、フィルムに亀裂を生じさせずに、より耐屈曲性になる。これは、可撓性が所望の性質であるポリマー基板には非常に重要である。フィルムの亀裂は、バリア性質を損なう。薄いバリアフィルムはまた、光の入射または出射が重要である電子デバイスの場合、透過性を増加させる。連続したフィルム被覆面積に相応する最小厚さがある場合があり、そのための基板の欠陥部のすべてがバリアフィルムによって覆われる。ほとんど欠陥のない基板については、良好なバリア性質のための限界厚さは少なくとも2nmであると推定されたが、10nmもある場合がある。
【0029】
ALDによってコーティングされた酸化物および窒化物バリア層には、プラスチック基板または保護を必要とする物品への付着を促進するために「出発層」または「付着層」を必要とする場合があるものがある。付着層の好ましい厚さは、1nm〜100nmの範囲である。付着層のための材料は、バリア材料の同じ群より選択される。酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が付着層のために好ましく、同じくALDによって蒸着されてもよいが他の方法、例えば化学蒸着および物理蒸着または本技術分野に公知の他の蒸着方法などもまた、適している場合がある。
【0030】
バリア構造の基礎構成単位は、(A)プラスチックまたはガラス基板上にALDによってコーティングされた、付着層を有するかまたは有さない単一バリア層、または(B)プラスチック基板の各面にALDによってコーティングされた、付着層を有するかまたは有さないバリア層のいずれかである。次に、この基礎構造は、この構成単位を自単位に積層して多数の、単独バリア層を形成することによって任意の数の組合せで結合することができる。物理的に分離した多数の層により、層の数に相応して、単純な乗数倍よりもずっと全バリア性質を改良することができることは、バリアコーティングの技術分野において公知である。これは、例えば、J. Phys. Chem. B 1997年、第101巻、2259〜2266ページ、Y.G.トロプシャ(Y.G.Tropsha)およびN.G.ハーベイ(N.G.Harvey)著、「酸化ケイ素/ポリ(エチレンテレフタレート)複合バリア構造を通しての酸素および水の移動の活性化速度の理論処理(“Activated rate theory treatment of oxygen and water transport through silicon oxide/poly(ethylene terephthalate) composite barrier structures”)」に示されている。拡散気体分子の通路がこの分離されている多数のバリア層にわたってくねっているので、これが起こる。有効な拡散通路は、単一層の厚さの合計よりもずっと大きい。
【0031】
別のバリア構造は、保護を必要とする電子または電気−光デバイスを直接にコーティングすることを必要とする。この点に関して、ALDは、高度に相似コーティングを形成するので、特に関心を引く。従って複雑なトポグラフィーを有するデバイスを完全にコーティングおよび保護することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
図1は、発光ポリマーデバイスの略図を示す。簡略化のために、発光ポリマーデバイスが、2つの電極間に挟まれた発光ポリマー(LEP)として示される。実施において、正孔伝導層および/または電子伝導層を適切な電極とLEP層との間に挿入してデバイス効率を増加させることができる。アノードは、インジウム−スズ酸化物の層であり、カソードは、Ca/Al複合層である。電極間に印加された電圧によって、アノード側で注入された正孔と、カソード側で注入された電子とが結合して放射性減衰する励起子を形成し、LEPから光を放射する。LEPは典型的に、ポリ−フェニレンビニレン(PPV)またはその誘導体などの感光性ポリマーである。カソードは、しばしばBaまたはCaであり、大気気体、特に水蒸気と非常に反応性である。これらの感受性材料の使用のために、デバイスのパッケージングは、適正なデバイス寿命を達成するために大気気体を取り除く必要がある。図1において、パッケージは、LEPデバイスが上に蒸着されるプラスチックまたはガラスであってもよいバリア−基板と、さらに、トップコートされたバリアフィルムとからなる。基板は、厚さ0.004インチであるポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる。PENフィルムの各面は、アルミニウムの前駆物質としてトリメチルアルミニウムおよび酸化体としてオゾン(O)を用いて、原子層蒸着によって蒸着されるAlの厚さ50nmのフィルムでコーティングされる。蒸着する間の基板温度は150℃である。ALD方法において、機械ポンプを備えた真空チャンバー内にPEN基板を配置する。チャンバーを脱気する。トリメチルアルミニウム前駆物質を約2秒間、500ミリトールの圧力のチャンバーに入れる。次いで、チャンバーを約2秒間、アルゴンでパージする。次に、酸化体のオゾンを約2秒間、約500ミリトールのチャンバーに入れる。最後に、酸化体を約2秒間、アルゴンでパージする。この蒸着方法を約50回繰り返して厚さ約100ナノメートルのコーティングを得る。Al層は可視領域において光透過性である。コーティングされた基板を、コーティングを損なわずに屈曲することができる。Alバリアの1つが、10%(重量%)のSnドープトインジウム酸化物ターゲットからrfマグネトロン・スパッタリングによってインジウム−スズ酸化物透明導体でコーティングされる。ITOフィルムの厚さは150nmである。LEPがITO電極上にスピンコーティングされ、その後、5nmのCaおよび約1μmのAlのカソードが、CaおよびAl金属源からそれぞれ、熱蒸発される。次いで、このLEPデバイスが、再びアルミニウムの前駆物質としてトリメチルアルミニウムおよび酸化体としてオゾン(O)を用いて、原子層蒸着によって蒸着される、Alの厚さ50nmのトップバリア層フィルムでコーティングされる。得られた構造は大気気体に不透過性である。
【0033】
(実施例2)
別種のパッケージング方法を図2に示す。トップコートされたバリアを、上記の実施例1に記載されたようなITO電極を用いない同一の基板バリア構造(Al/PEN/Al)と取り替える。このキャッピングバリア構造は、エポキシ層を用いて基板バリアにシールされる。
【0034】
(実施例3)
図3は、有機トランジスタのためのALDバリアコーティングによる保護方法を示す。示されたトランジスタは、最終層または上層として有機半導体を有する下部ゲート構造である。大部分の有機半導体は空気感受性であり、長時間の暴露はそれらの性質を低下させるので、保護方法が必要である。図3において、パッケージは、トランジスタが上に蒸着され、次いで同じキャッピングバリア構造にシールされるバリア−基板からなる。基板は、厚さ0.004インチのポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる。PENフィルムの各面が、アルミニウムのための前駆物質としてトリメチルアルミニウムおよび酸化体としてオゾン(O)を用いて、原子層蒸着によって蒸着される、Alの厚さ50nmのフィルムでコーティングされる。蒸着する間の基板温度は150℃である。ALD方法において、PEN基板を機械ポンプを備えた真空チャンバー内に置く。チャンバーを脱気する。トリメチルアルミニウム前駆物質を約2秒間、500ミリトールの圧力のチャンバーに入れる。次いで、チャンバーを約2秒間、アルゴンでパージする。次に、酸化体のオゾンを約2秒間、約500ミリトールのチャンバーに入れる。最後に、酸化体を約2秒間、アルゴンでパージする。この蒸着方法を約50回繰り返して厚さ約100ナノメートルのコーティングを得る。厚さ100nmのPd金属のゲート電極を、Alのバリアフィルム上にシャドウマスクを通してイオンビームスパッタリングする。次に、金属ゲートへの接触を可能にするために同様にマスクを通して、250nmのSiのゲート誘電体を、プラズマ増強化学蒸着によって蒸着する。この後に、ゲート誘電体上にイオンビームスパッタリングされた、厚さ100nmのPdソースおよびドレイン電極をパターン化する。最後に上部有機半導体、例えばペンタセンが、ソース−ドレイン電極への接触を可能にするシャドウマスクを通して熱蒸発される。全トランジスタがAl/PEN/Alバリア構造をキャッピングされ、エポキシシーラントで基板バリアにシールされる。
【0035】
(実施例4)
図4において、実施例3のキャッピングバリアを、アルミニウムの前駆物質としてトリメチルアルミニウムおよび酸化体としてオゾン(O)を用いて、原子層蒸着によって蒸着される厚さ50nmのAlの単一層と取り替えることができる。有機トランジスタデバイスの両方のパッケージング構造は、大気気体に不透過性である。バリアコーティングを有するプラスチック基板もまた、不透過性ガラス基板と取り替えることができる。バリアキャッピング層は、室温においてプラズマ増強化学蒸着によって蒸着された窒化ケイ素の初期付着層と、その次の、実施例3において記載されたように、原子層蒸着によって蒸着された、厚さ50nmのAlバリアとからなる。
【0036】
(実施例5)
厚さ0.002インチの、ポリエチレンテレフタレート(PEN)の基板フィルムは、PEN基板の一方の面に厚さ約25nmのAlで120℃において原子層蒸着によってコーティングされた。その透過性性質を評価する前に、コーティングされたPEN基板を少なくとも1回、少なくとも1.5インチの半径に屈曲し、コーティングされたAl被覆PEN基板を硬質シリコンキャリアウエハから除去し、ALD蒸着する間にカプトン(Kapton)(登録商標)テープでウエハにそれを付着させた。AlをALDによって蒸着させたフィルムを通して50%の相対湿度での酸素輸送率を、市販の計測器(モコン・オックス・トラン(MOCON Ox−Tran)2/20)で測定した。80時間の測定時間の後、測定感度(0.005cc−O/m/日)内で、過酷な先行の屈曲にもかかわらずバリアフィルムを通しての酸素輸送は検出されなかった(<0.005cc/m/日)。比較のために、コーティングされないPEN基板を通しての酸素輸送の測定値は約10cc−O/m/日であった。図5は、このAlのコーティングされたPENバリアおよびコーティングされないPENの光の透過率が同じであることを示し(400nmを超える場合に>80%の透過率)、薄いAlバリアコーティングの透過性を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)上面および下面を有する可撓性ポリマー基板と、
b)原子層蒸着によって前記基板の上面および下面の一方または両面上に蒸着された厚さ2nm〜100nmを有する気体透過バリアとを含むこと特徴とする物品。
【請求項2】
a)上面および下面を有する可撓性ポリマー基板と、
b)コーティングされた付着層と、
c)原子層蒸着によって前記基板の上面および下面の一方または両面上に蒸着された厚さ2nm〜100nmを有する気体透過バリアとを含むこと特徴とする物品。
【請求項3】
a)上面および下面を有する可撓性ポリマー基板と、
b)有機半導体と、
c)原子層蒸着によって蒸着された厚さ2nm〜100nmを有する気体透過バリアとを含むこと特徴とする物品。
【請求項4】
a)上面および下面を有する可撓性ポリマー基板と、
b)液晶ポリマーと、
c)原子層蒸着によって蒸着された厚さ2nm〜100nmを有する気体透過バリアとを含むこと特徴とする物品。
【請求項5】
各気体透過バリアが2nm〜50nmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
基板が、250℃以上で化学分解及び/又は寸法の変化を受けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
密閉された容器である請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
電気デバイスまたは電子デバイスである請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
発光ポリマーデバイスである請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
有機発光ダイオード、トランジスタ、有機光電池、または、液晶ディスプレイである請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
発光ポリマーデバイスを含む回路である請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
トランジスタを含む回路である請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品を各層が含む、複数の層を含有する第2の物品であって、前記物品が互いに接触している、第2の物品。
【請求項14】
積層手段によって互いに接触している請求項13に記載の第2の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−205133(P2011−205133A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136790(P2011−136790)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【分割の表示】特願2006−533109(P2006−533109)の分割
【原出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】